説明

吸水性樹脂粒子の製造方法

高い生産性で、粒度を制御したうえで、吸水性樹脂の基本物性(吸収倍率や加圧下吸収倍率)を向上させる吸水性樹脂粒子の製造方法を提供する。不飽和単量体の水溶液の架橋重合工程、該架橋重合で得られる水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)の細粒化工程、細粒化ゲルの乾燥工程、乾燥物の粉砕工程を含む吸水性樹脂粒子の製造方法であって、水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)の細粒化工程で、水を添加して膨潤させた前記架橋重合体(a)の固形分と異なる固形分、または前記架橋重合体(a)の吸水倍率と異なる吸水倍率を有する水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)を共存させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水膨潤性架橋重合体である吸水性樹脂の製造方法に関する。さらに、詳しくは、粒度が制御され、且つ吸収倍率や可溶分といった基礎物性にも優れた吸水性樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料には、その構成材として、体液を吸収させることを目的としたポリアクリル酸塩架橋重合体などの吸水性樹脂(吸水剤)が幅広く使用されている。
【0003】
このような吸水性樹脂は、体液などの水性液体に接した際に優れた吸液量や吸水速度、ゲル強度、ゲル通液性、水性液体を含んだ基材から水を吸い上げる吸引力などに優れた物性を備えることが要求されている。さらに、近年は、非常に粒度分布が狭い吸水性樹脂粉末や、吸収倍率が高く水可溶分が少ない吸水性樹脂粉末が求められ、加圧下吸収倍率や加圧下通液性などの高いことが必須に求められるようになっている。
【0004】
米国再発行特許第32649号では、ゲル強度,可溶分,吸水倍率に優れた吸水性樹脂が提案されている。英国特許第2267094号Bでは無加圧通液性、吸水速度、吸水倍率に優れた吸水性樹脂が提案されている。特定の粒度分布を規定した技術として米国特許第5051259号、米国特許第5419956号、米国特許第6087002号、欧州特許第0629441号なども提案されている。また、各種荷重での加圧下吸水倍率に優れた吸水性樹脂やその測定法も多く提案され、加圧吸水倍率単独ないし他の物性との組み合わせた吸水性樹脂が欧州特許第0707603号、欧州特許第0712659号、欧州特許第1029886号、米国特許第5462972号、米国特許第5453323号、米国特許第5797893号、米国特許第6127454号、米国特許第6184433号、米国特許第6297335号、米国再発行特許Re37021号などで提案されている。
【0005】
これら物性の中でも粒度は吸水性樹脂の他の物性にも大きく影響を与えるために、多くの粒度制御方法が提案されている。例えば、粒度制御方法として、米国特許第6228930号、米国特許第4950692号(発行1990年 8月21日)、米国特許第4970267号(発行1990年11月13日)、米国特許第5064582号(発行1991年11月12日)などの微粉のみを分離して造粒ないしゲル化して回収する方法、米国特許第5432899号、米国特許第5455284号、米国特許第6867269号などの吸水性樹脂の粉末をモノマーと重合する方法、米国特許第4734478号、米国特許第5369148号などの吸水性樹脂全体を造粒する方法が提案されている。
【0006】
また、高い生産性と物性を維持する重合方法やゲル粉砕方法も米国特許第6906159号、米国特許公開2004−092688号、米国特許公開2004−234607号などで提案されている。
【0007】
しかし、米国再発行特許第32649号、英国特許第2267094号B、米国特許第5051259号、米国特許第5419956号、米国特許第6087002号、欧州特許第0629441号、欧州特許第0707603号、欧州特許第0712659号、欧州特許第1029886号、米国特許第5462972号、米国特許第5453323号、米国特許第5797893号、米国特許第6127454号、米国特許第6184433号、米国特許第6297335号、および米国再発行特許Re37021号の手法で吸水性樹脂の物性を向上(例えば、粒度制御、吸収倍率向上、水可溶分低減など)させようとすると生産性の低下や副原料の使用を伴うことが多く、吸水性樹脂がおむつなどの使い捨て原料である観点からも、吸水性樹脂の製造に関するコストアップは望ましくない。
【0008】
米国特許第6228930号、米国特許第4950692号、米国特許第4970267号、米国特許第5064582号、米国特許第5432899号、米国特許第5455284号、米国特許第6867269号、米国特許第4734478号、および米国特許第5369148号の粒度制御方法では、粒度制御がいまだ不十分で、さらに、新たな粒度制御工程(造粒や微粉回収)が追加されるためにコストアップを伴うだけでなく、場合により、粒度以外の他の物性が低下する場合が見られた。また、米国特許第6906159号、米国特許公開2004−092688号、および米国特許公開2004−234607でも改善の余地があった。
【発明の開示】
【0009】
すなわち、本発明は上記現状に鑑みなされたものである。本発明は高い生産性で、粒度を制御したうえで、吸水性樹脂の基本物性(例えば、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、可溶分)を向上させる吸水性樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の製造方法は、水溶性不飽和単量体の水溶液の架橋重合工程、架橋重合工程で得られる水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)の細粒化工程、細粒化ゲルの乾燥工程、乾燥物の粉砕および分級工程を含む吸水性樹脂粒子の製造方法であって、水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)の細粒化工程で、架橋重合体(a)の固形分含有率(重量%)と異なる固形分含有率(重量%)、または架橋重合体(a)の吸水倍率(CRC(centrifuge retention capacity))と異なる吸水倍率(CRC(centrifuge retention capacity))である水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)を共存させることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば安価に高い生産性で、吸水性樹脂の粒度制御(例えば微粉低減)が達成される。また、吸水性樹脂の基本物性(例えば、無加圧下吸収倍率、加圧下吸収倍率、可溶分)を向上させることも可能である。
【0012】
本発明のさらに他の目的、特徴、および利点は、以下の説明に例示される好ましい実施の形態を参酌することによって、明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであって、下記の具体的な形態によって制限されるべきではない。
【0014】
≪架橋重合工程≫
(a)不飽和単量体
本発明では、吸水性樹脂の不飽和単量体として好ましくはアクリル酸および/またはその塩が用いられ、その含有量は不飽和単量体全体の好ましくは50〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。上記の吸水性樹脂は、以下、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂またはポリアクリル酸(塩)系架橋重合体と称する。
【0015】
アクリル酸塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩等の一価塩が挙げられる。アクリル酸が上記塩によって中和される場合の中和率としては、30モル%〜100モル%、さらには50モル%〜90モル%、特には60モル%〜80モル%がより好ましい。なお、アクリル酸の中和は含水重合体を得る前の不飽和単量体を調製する段階で予め中和しておいてから重合反応を開始してもよく、また、重合中あるいは重合反応終了後に得られた該架橋重合体のポリアクリル酸を中和してもよいし、それらを併用してもよい。
【0016】
本発明でアクリル酸以外に用いられる単量体としては、例えば、後述の米国特許または欧州特許に例示される単量体が挙げられ、具体的には例えば、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等の水溶性または疎水性不飽和単量体等が挙げられる。
【0017】
(b)内部架橋剤
本発明で用いられる架橋方法としては特に制限なく、例えば、重合中や重合後に架橋剤を添加して後架橋する方法、ラジカル重合開始剤によりラジカル架橋する方法、電子線等により放射線架橋する方法、等が挙げられる。予め所定量の内部架橋剤を単量体に添加して重合を行い、重合と同時または重合後に架橋反応させることが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる内部架橋剤としては、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(β−アクリロイルオキシプロピオネート)、ポリ(メタ)アリロキシアルカンなどの重合性内部架橋剤、ポリグリシジルエーテル(エチレングリコールジグリシジルエーテルなど)、ポリオール(エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトールなど)などのカルボキシル基との反応性内部架橋剤、の1種または2種以上が用いられる。なお、1種以上の内部架橋剤を使用する場合には、得られる吸水性樹脂の吸収特性等を考慮して、重合性内部架橋剤を必須に用いることが好ましい。
【0019】
内部架橋剤は物性面から、前記単量体に対して0〜3モル%、好ましくは0.005〜2モル%、より好ましくは0.01〜1モル%、さらに好ましくは0.05〜0.2モル%である。
【0020】
(c)水溶液
本発明においては、不飽和単量体の水溶液を用いて架橋重合を行う。重合工程において逆相懸濁重合や水溶液重合を行う場合、必要により内部架橋剤を含む水溶液とされる。この水溶液(以下、単量体水溶液と称する)中の不飽和単量体成分の濃度は、物性面から好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜65重量%、さらに好ましくは30〜55重量%である。なお、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではないが、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類が例示される。併用して用いられる溶媒は、水に対して例えば0〜50重量%で使用される。
【0021】
さらに、重合に際して単量体に対して、水溶性樹脂および/または吸水性樹脂(粒子状(球形、不定形、または破砕状)吸水性樹脂または微粒子吸水性樹脂)を例えば0〜50重量%、好ましくは0〜20重量%、各種の発泡剤(炭酸塩、アゾ化合物、気泡など)、界面活性剤、キレート剤、および次亜リン酸(塩)等の連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種を例えば0〜5重量%、好ましくは0〜1重量%添加して、吸水性樹脂の諸物性を改善してもよい。
【0022】
(d)重合工程
前記不飽和単量体水溶液を重合するに際して、性能面や重合の制御の容易さから、水溶液重合または逆相懸濁重合により行われることが好ましい。これらの重合は空気雰囲気下でも実施できるが、好ましくは、窒素やアルゴンなどの不活性気体雰囲気(例えば、酸素1%以下)で行われ、また、単量体成分は、その溶解酸素が不活性気体で十分に置換(例えば、酸素1ppm未満)された後に重合に用いられることが好ましい。本発明では、高生産性で高物性の吸水性樹脂を得るための、重合制御が困難であった水溶液重合に特に好適であり、特に好ましい水溶液重合として、連続ベルト重合、連続またはバッチニーダー重合が挙げられる。
【0023】
水溶液重合は分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許第4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号などの米国特許や、欧州特許0811636号、同0955086号,同0922717号、同1178059号、同1711541号、同1799721号などの欧州特許に記載されている。これらの特許に記載の単量体、架橋剤、重合開始剤、およびその他添加剤も本発明では適用できる。
【0024】
上記重合方法の中では、不飽和単量体水溶液の重合開始温度が40℃以上、さらには50℃以上、よりさらに60℃以上、特に70℃以上の高温重合が好ましい。かかる高温重合(高温開始重合)で得られた含水ゲルに対して本発明を適用すると、粒度制御を含め本発明の効果が最大限に発揮できる。なお、上限は水溶液の沸点以下、好ましくは105℃以下である。
【0025】
また、重合温度のピーク温度が95℃以上、より好ましくは100℃以上、さらには105℃以上の高温重合(沸騰重合)が好ましい。かかる沸騰重合で得られた含水ゲルに対して本発明を適用すると、粒度制御を含め本発明の効果が最大限に発揮できる。なお、上限は沸点以下、好ましくは130℃以下、さらには120℃以下で十分である。
【0026】
なお、重合時間も特に限定されるものではなく、親水性単量体や重合開始剤の種類、反応温度などに応じて適宜決定すればよいが、通常0.5分〜3時間、好ましくは1分〜1時間である。
【0027】
単量体水溶液を重合する際には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などのハイドロパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などのアゾ化合物、2−ヒドロキシ−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル等の重合開始剤と、さらに、これら重合開始剤の分解を促進するL−アスコルビン酸などの還元剤とを併用したレドックス系開始剤等が用いられる。重合開始剤の使用量は単量体に対して通常0.001〜1モル%、さらには0.001〜0.5モル%の範囲である。
【0028】
また、重合開始剤を用いる代わりに、反応系に放射線、電子線、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより重合反応を行ってもよいし、放射線、電子線、紫外線増感の重合開始剤等との併用や、前記重合開始剤と併用してもよい。
【0029】
得られた含水ゲル状架橋重合体(以下、含水ゲル)の重合率は、70モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。その後、乾燥工程などで、さらに重合率を高める(好ましくは99モル%以上、さらに好ましくは99.9モル%以上)ことが最も好ましい。
【0030】
≪細粒化工程≫
本発明は、水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)(以下、含水ゲル(a)とも呼ぶ)の細粒化工程で、架橋重合体(a)の固形分と異なる固形分、または架橋重合体(a)の吸水倍率と異なる吸水倍率を有する水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)(以下、含水ゲル(b)とも呼ぶ)を共存させることを特徴とする。架橋重合体(a)および(b)は、好ましくは、いずれも上記ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体である。
【0031】
「細粒化工程」とは、ゲルを解砕する工程を指す。
【0032】
共存とは、細粒化装置内で含水ゲル(a)と含水ゲル(b)とが、存在している状態を指し、好適には細粒化工程の間中、含水ゲル(a)と含水ゲル(b)とがともに細粒化装置内に存在する。例えば、含水ゲル(a)と含水ゲル(b)とを同時に細粒化装置内への投入を始め、同時に投入を終える形態;細粒化装置の投入前に含水ゲル(a)と含水ゲル(b)とを混合し、細粒化装置に投入する形態;が挙げられる。含水ゲル(a)と含水ゲル(b)との混合は、連続、半連続、回分(バッチ)のいずれで行ってもよい。
【0033】
以下、細粒化工程で用いられる材料、装置について詳述する。
【0034】
(水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a))
本発明では架橋重合工程によって得られた水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)は乾燥前に細粒化される。細粒化後の含水ゲル(a)の粒子径(標準ふるい分級で規定)は粒度制御や物性面から、質量平均粒子径0.1〜20mmが好ましく、0.5〜10mmがより好ましく、1〜5mmがさらに好ましい。また、含水ゲル(a)の95重量%以上が粒子径25mm以下であることが好ましい。なお、ゲルの分級は溶媒を使用して湿式で行ってもよく、溶媒を使用して乾式で行ってもよい。
【0035】
細粒化前の含水ゲル(a)の形状は重合方法によって、粒子状、帯状、板状、フィルム状、ブロック状など種々の形態をとり得る。本発明では含水ゲル(a)が何れの形態であっても細粒化できるが、好ましくはベルト重合などで得られる帯状物である。ゲル細粒化装置(特に後述のスクリュー押出し機)に帯状ゲルを供給すると、回転翼に帯状物が絡みつき、効率的に細粒化できるからである。帯状の含水ゲル(a)は、厚さが好ましくは1〜100mm、より好ましくは3〜50mm、4〜20mmである。この範囲から外れると、物性低下や粒度制御が困難になる場合がある。また、帯状の含水ゲル(a)は、幅が好ましくは0.1〜10m、より好ましくは0.5〜5mである。
【0036】
細粒化時の含水ゲル(a)の固形分は20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは40〜75重量%、さらには45〜65重量%である。重合後(必要により水の添加または乾燥によって)上記範囲の固形分量の含水ゲルとなる場合には、本発明の細粒化(解砕)方法によって解砕することができる。特に本発明では細粒化時の固形分が40重量%以上、好ましくは45重量%以上、より好ましくは50重量%以上の場合に好適に適用でき、粒度の制御が可能となる。本発明において、「固形分」は、含水ゲル中の固形分含有率(重量%)を指し、後述する実施例に記載の方法で求められる値を採用する。
【0037】
本発明では、アクリル酸などの不飽和単量体、重合開始剤、および不飽和単量体中和用のアルカリ水溶液とを連続的に混合・撹拌してモノマー液を調製し、これを連続的にベルト上に供給して中和・重合熱を利用して短時間に重合し、連続的に帯状の含水ゲル(a)を得る方法が好ましく使用できる。好ましい単量体水溶液の温度や重合温度は前述の範囲(前記の高温開始重合)である。
【0038】
好ましくはゲル細粒化時の含水ゲル(a)の温度は、粒度制御や物性面から通常40℃以上、好ましくは40〜120℃、より好ましくは50〜100℃、特に好ましくは60〜90℃である。かかる温度にするためには重合温度を制御したり、重合後の重合ゲルを必要により保温または加熱すればよい。細粒化時の含水ゲル(a)の温度が上記範囲よりも高い場合には、放熱または冷却すればよいし、含水ゲル(a)の温度が40℃よりも低い場合、上記含水ゲル(a)を40℃以上に加熱することが好ましい。上記含水ゲル(a)(または後述の含水ゲル(b))の加熱方法は特に限定されず、種々の加熱装置が使用できる。
【0039】
含水ゲル(a)は重合器から取り出して、好ましくは1時間以内、より好ましくは10分以内、さらに好ましくは1分以内に、含水ゲル(a)と含水ゲル(b)が共存する細粒化工程が行うことが、上記細粒化時の好ましい温度範囲が維持されるため、好ましい。
【0040】
(粗砕工程)
なお、上記細粒化工程の前に粗く砕く(粗砕する)粗砕工程を実施してもよい。含水ゲル(a)を粗砕することによって、含水ゲル(a)を供給し易くなるとともに、後述の細粒化装置に充填し易くなり、細粒化工程をより円滑に実施することが可能となる。上記粗砕工程に用いられる粗砕手段としては、含水ゲルを練らないように粗く砕くことができるものが好ましく、たとえばギロチンカッターなどを挙げることができる。
【0041】
粗砕工程で得られる含水ゲルの粗砕生成物の大きさや形状は、用いられる重合方法によっても異なるので、細粒化手段に充填できる程度の大きさや形状であれば特に限定されるものではない。しかし、一般に、含水ゲル(a)の粗砕生成物の大きさや形状は、その長い部分の一辺の長さが、好ましくは5〜500mm、より好ましくは10〜150mm、さらに好ましくは30〜100mmである。上記の一辺の長さが5mm未満であれば、細粒化手段で粉砕する意味が少なくなる。一方、上記の一辺の長さが500mmを超えれば、含水ゲルを細粒化手段に充填する際に大きな隙間ができ易くなり、粉砕効率を低下させる恐れがある。
【0042】
(水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b))
以下、水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)について説明する。なお、含水ゲルは水を含んで膨潤しているものであるが、水以外の溶媒(親水性溶媒、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類)を含む形態も可能である。この場合、水以外の溶媒は、水に対して0〜50重量%であることが好ましい。
【0043】
本発明では、好適には細粒化前の含水ゲル(a)に含水ゲル(b)を加えた後、細粒化装置(好ましくはスクリュー押出し機)で、該スクリュー押出し機の押出口付近の圧縮力を高めた状態で連続的に含水ゲル(a)および(b)を押し出す方法を用いる。これによって、含水ゲル(a)のみを用いる場合に比べて処理量が向上し、吸水性樹脂の粒度も制御され、好ましくは基本物性(例えば、後述の吸水倍率、可溶分など)も向上する。
【0044】
従来は解砕の際に、練りの発生や解砕物の相互付着を防止するため、シリコンオイルなどの付着防止剤や界面活性剤などの粘着防止剤を含水ゲル状重合体に添加していた。しかしながら、このような界面活性剤は含水ゲル状重合体の表面張力を低下させるため吸収性能を低下させ、シリコンオイル等はその親油性によって吸水特性を低下させ、吸水性樹脂の品質を低下させる一因となる。本発明によれば、従来の簡便な装置を使用し、添加物として含水ゲル(b)を使用することで練りや解砕物の相互付着を防止した効率的な解砕を行い、オムツや生理用品に使用した場合にも添加物の影響がなく、安全性に優れる吸水性樹脂の製造ができる。
【0045】
含水ゲルをスクリュー押出し機で解砕することは知られていたが、その際練りや相互付着を防止するために各種付着防止剤や粘着防止剤が添加されてきた。しかし含水重合体をスクリュー押出し機で解砕する際に含水ゲル(b)を供給することで練りや相互付着が防止できる。したがって、本発明においては、界面活性剤やシリコンオイルなどの付着防止剤の添加を必ずしも必要とせず、吸水性樹脂の物性向上の観点からは、界面活性剤および付着防止剤の添加量は、含水ゲル(a)100重量%に対して、0〜5重量%であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
本発明においては含水ゲル(a)と含水ゲル(b)との固形分または吸水倍率(CRC(centrifuge retention capacity))が異なる。含水ゲル(a)と含水ゲル(b)との固形分の差は、物性向上の観点から好ましくは1〜60、より好ましくは2〜55、さらに好ましくは2〜50である。「固形分の差」とは、含水ゲル(a)固形分(重量%)から含水ゲル(b)固形分含有率(重量%)を引いた値の絶対値を指す。例えば、実施例1の場合、含水ゲル(a)の固形分が53.0重量%、含水ゲル(b)の固形分が50.0重量%であるから、固形分の差は、「3」となる。
【0047】
含水ゲル(b)の好ましい一実施形態は、固形分濃度の低い含水ゲル(b2)である。かような形態において、固形分濃度は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である。含水ゲル(b)の固形分濃度がある程度低い、すなわち粘度が低いと、含水ゲル(b)が潤滑剤の役割を果たし、含水ゲル(a)同士が付着したり、粘着により練りが発生することを抑制する。付着防止または粘着防止の観点から、含水ゲル(b)の固形分が含水ゲル(a)より低いことが好ましい。また、含水ゲル(b)の固形分の下限は特に限定されるものではないが、微粒子低減の観点から、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上である。含水ゲル(b2)は、含水ゲル(a)と同一組成で固形分濃度が低いものが好適に用いられ、具体的には、架橋重合工程で得られた含水ゲル(a)に水を添加することによって得ることができる。かような形態によれば、生産上非常に効率的であり、また、同一の成分であるため物性の観点からも好ましい。なお、後述する含水ゲル(b1)と異なり、含水ゲル(b2)の効果は、含水前の架橋重合体の粒子径には依存せず、例えば、150μm以下の微粒子からなる架橋重合体の含水ゲルであっても、架橋重合工程で得られた含水ゲル(a)の含水ゲルであっても、固形分含量が上記の範囲内である限り、発明の効果は同様である。
【0048】
また、さらに含水ゲル(b)の別の好ましい実施形態としては、吸水性樹脂微粉に水を添加して得られる含水ゲル(b1)である。ここで、微粉とは、好ましくは粉末の90重量%以上が212μm未満、より好ましくは180μm未満、さらに好ましくは150μm未満の粒子径を有することを指す。150(180、212)μm未満の粒子径を有するとは、150(180、212)μmのJIS標準篩をパスするものを指す。含水ゲル(b1)は、含水ゲル(b2)と同様に、潤滑剤の役割を果たすとともに、細粒化装置内で混合されることによって、含水ゲル(a)から製造される吸水性樹脂の微粉が低減され、また含水ゲル混合物の均一性も向上する。
【0049】
含水ゲル(b1)中の固形分は10〜70重量%であることが好ましく、20〜60重量%であることがより好ましく、30〜60重量%であることがさらに好ましい。なお、上述の(b2)と比較して、含水ゲル(b1)の固形分はやや高くとも本発明の効果が発揮されうる。これは、微粒子の場合、ある程度固形分が高くともゲルの粘性が低く、含水ゲル(a)同士の潤滑剤としての役割を果たすことができるためである。
【0050】
すなわち、含水ゲル(b2)および(b1)は、粘性の低い含水ゲルとして、一群をなすものであり、かような粘性の低い含水ゲルが潤滑剤として作用し、含水ゲル(a)の解砕の際、相互に付着または粘着することを抑制することができ、本発明の効果を発揮する。
【0051】
また、含水ゲル(a)と含水ゲル(b)との吸収倍率の差は、好ましくは吸収倍率(CRC)の差で好ましくは1〜20g/g、より好ましくは2〜15g/gである。なお、含水ゲル(a)の吸水倍率(固形分あたりの吸収倍率CRC)は10〜40g/g程度が好ましい。本発明において、含水ゲルの吸水倍率(CRC)とは、含水ゲル中の架橋重合体(固形分)に対して、後述する実施例に記載の方法で求められる値を採用する。
【0052】
また、好ましくは、含水ゲル(b)の吸水倍率が含水ゲル(a)より低い。好ましくは吸収倍率(CRC)の差で1〜20g/g、さらには2〜15g/g程度低いことが好ましい。
【0053】
含水ゲル(b)は好ましくは、吸水性樹脂製造工程で廃棄されるべき吸水性樹脂から製造される。本来は廃棄されるものをリサイクルできるばかりではなく、廃棄されるべき吸水性樹脂を細粒化工程で用いることによって吸水性樹脂の微粒子が軽減されるという効果がある。具体的には、以下の(b1)または(b2)が用いられる。
【0054】
(b1)吸水性樹脂粉末に水を添加して得られる含水ゲル
一例として、分級工程後の吸水性樹脂粉末に水を添加して得られる含水ゲル(b)が好ましい。乾燥工程、粉砕工程に次ぐ、分級工程にて所定範囲内の粒子のみを選別し、これを吸水性樹脂とする。このときの分級方法についても特に限定されるものではなく、篩などが好適に用いられる。例えば、粉砕生成物の大きさの範囲を212〜850μmとした場合には、先に850μmの篩で粉砕生成物を篩分級した後、該篩をパスした粉砕生成物を212μmで篩分ける。この212μm篩上に残存する粉砕生成物が所望の範囲内の吸水性樹脂となる。
【0055】
含水ゲル(b)に用いる吸水性樹脂粒子としては、上述したように、吸水性樹脂の製造過程、例えば上記分級工程で分級される微粉、後述する表面架橋工程や吸水性樹脂の輸送工程で発生する微粉、粉砕工程でバグフィルターに捕集される微粉などが挙げられ、好ましくは、表面架橋前後の分級で得られる微粉である。また、別の製造ラインや工場で発生する吸水性樹脂の微粉を用いることもできる。微粉は乾燥状態でも湿潤状態でもよいが、微粉の含水率は好ましくは0〜15重量%、より好ましくは0〜10重量%、特に好ましくは0〜5重量%である。
【0056】
粒径150μm未満(または212μ未満;標準篩で規定)の微粉は吸水性樹脂として用いると、その物性や取り扱い性が低下する。具体的には、作業時に発塵し易く、作業環境の悪化や目詰まりを起こし、吸水時に、ダマ(ママコ)を生成し易く、液の拡散を阻害してしまう。一方、この微粉をそのまま廃棄すれば、廃棄のためのコストや手間が別途必要な上、吸水性樹脂における歩留りが低下する。そこで、含水ゲル(b)に用いる吸水性樹脂粉末として、好ましくは粒径212μm未満、より好ましくは粒径180μm未満、さらに好ましくは150μm未満の微粉を回収して再利用することが非常に好ましい。150(180、212)μm未満の粒径とは、150(180、212)μmのJIS標準篩をパスするものを指す。
【0057】
吸水性樹脂粉末に水を添加して得られる含水ゲル(b1)中の固形分は10〜70重量%であることが好ましく、20〜60重量%であることがより好ましく、30〜60重量%であることがさらに好ましい。
【0058】
(b2)吸水性樹脂の重合ゲルに水を添加して得られる含水ゲル
上記の含水ゲル(b)は、好ましくは、吸水性樹脂製造装置の水洗浄工程で得られる。水洗浄工程は、吸水性樹脂の製造終了後、吸水性樹脂製造装置を洗浄する工程を指す。ゲルの付着した重合機やゲル粉砕機などの製造装置を連続または回分式に水洗浄して、得られたゲルやその水分散物をそのまま含水ゲル(b)とすればよい。すなわち、含水ゲル(b2)は好ましくは、架橋重合工程から得られる重合ゲルに水を添加して固形分を低下せしめた含水ゲルが好ましい。好ましい実施形態として、連続ベルト重合でベルトゲルを剥離後のベルトを連続的に水洗して得られた水膨潤ゲルを含水ゲル(b)として使用すればよい。
【0059】
上記水洗浄工程で得られた含水ゲル(b2)は通常は飽和膨潤しているため、その固形分が0.1〜10重量%、さらには0.3〜5重量%、特に0.5〜2重量%程度であり、本願発明の好適な範囲の含水ゲル状架橋重合体(a)とは異なる固形分で得られる。かかる低固形分の含水ゲル(b)を使用することで、重合で得られた含水ゲル(a)が均一に粉砕でき、乾燥後の吸水性樹脂の粒度制御や物性向上が達成される。また、含水ゲル(b2)を用いると、細粒化装置内のゲルが装置に付着することが抑制でき、セルフクリーニング性が向上する。
【0060】
含水ゲル(b)は、含水ゲル(a)と同様、不飽和単量体が架橋重合されたものである。含水ゲル(b)に用いられる不飽和単量体は、上述の含水ゲル(a)で記載したものが用いられる。不飽和単量体の構成は、含水ゲル(a)(好ましくはポリアクリル酸(塩)系架橋重合体)と同じであることが得られる吸水性樹脂の物性の観点から好ましい。
【0061】
(使用量)
含水ゲル(b)は細粒化装置に含水ゲル(a)と共に供給されるが、その使用量は特に限定されず、含水ゲル(b)の形態によって異なる。例えば、固形分濃度が低い含水ゲル(b2)の場合、重量比で好ましくは含水ゲル(a):含水ゲル(b)=100:0.001〜100、より好ましくは100:0.001〜50である。また、微粉含水ゲル(b1)の場合、好ましくは100:0.1〜50であり、より好ましくは100:0.1〜30である。かような範囲であれば、含水ゲル(b)の添加の効果が十分に発揮され、解砕時に練りが発生することが少ない。また、細粒化物を乾燥する熱エネルギーや乾燥時間が過量に必要となることがなく、また吸水性樹脂の物性低下も少ない。
【0062】
含水ゲル(a)および含水ゲル(b)の混合物の固形分は好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜60重量%、さらに好ましくは45〜55重量%である。混合後または細粒化後の温度も前述の含水ゲル(a)の範囲であることが好ましい。
【0063】
(細粒化装置)
使用する細粒化装置(ゲル粉砕機)としては、粉体工学便覧(粉体工学会編、初版)の表1.10で分類されている粉砕機種名のうちでも、剪断粗砕機、衝撃破砕機、高速回転式粉砕機に分類されて、切断、剪断、衝撃、摩擦といった粉砕機構のうちの1つ以上の機構を有するものが好ましく使用でき、それら機種に該当する粉砕機の中でも切断、剪断機構が主機構である粉砕機が特に好ましく使用できる。
【0064】
粉砕機種名として粉砕機はロール転動型、ロールミル(ロール回転形)に分類され、粉砕機構として圧縮機構も有するものについては、剪断・切断効果が強い場合には使用できるが、剪断・切断効果が少なく圧縮効果が強い場合には使用することができないことがある。また、圧縮破砕機、粉体層打槌式などの粉砕機種は圧縮機構が主たる粉砕機構のため使用されない。これは含水重合体は圧壊されにくいことによる。また、自生粉砕機やボール媒体ミルといった粉砕機種も剪断や切断機構をほとんど持たないため使用されない。
【0065】
本発明において用いることができる粉砕機または切断・せん断ミルの具体例を以下に挙げる。
【0066】
【表1】

【0067】
これらの細粒化装置中でも、連続または回分式ニーダー、シュレッター、ミートチョッパー、ドームグランなどが例示できる。例えば、ミートチョッパーは、含水ゲルを多孔板より押し出すことで細粒化(破砕)するもので、押し出す機構としては、スクリュー型、回転ロール型によるもの等、含水ゲルをその供給口から多孔板に圧送する形式が用いられる。スクリュー型押し出し機は、一軸あるいは多軸でもよく、通常、食肉、ゴム、プラスチックの押し出し成型に使用されるもの、あるいは、粉砕機として使用されるものでもよい。
【0068】
本発明で好ましく使用される細粒化装置は、スクリュー押出し機であり、安価に入手でき、コンパクトで操作も簡便である。含水重合体をスクリュー押出し機に供給すると、帯状物が連続的に回転翼に絡まり、解砕されつつ多孔板側に移送される。
【0069】
本発明で好ましく使用される細粒化装置は、静止したバレル内でスクリュー回転により物質を軸方向に移送する機能を有したスクリュー押出し機である。本願ではスクリュー押出し機として、細粒化対象物の含水ゲル供給口と解砕物の押出口とを有するケーシングに、含水ゲルを至適サイズに解細粒化するための多孔板と回転刃、および含水ゲルを前記多孔板に移送させるスクリューを内蔵した装置であれば、スクリューの本数が単軸、二軸、四軸等の何れでもでもよく、また二軸の回転方向が同方向でも反対方向でもよい。いわゆるミートチョッパーやスクリュー押出し機等がある。
【0070】
含水ゲル(a)を押し出す多孔板ないし多孔面(例;球状)において、その孔径は好ましくは0.3〜25mmの多孔構造である。孔の形状としては、円形、正方形、長方形、などの四方形、三角形、六角形など、特に限定されないが、好ましくは、円形の孔から押し出される。なお、前記の孔径とは、目開き部の外周を円の外周に換算した場合の直径で規定できる。孔径はより好ましくは2〜20mm、さらに好ましくは5〜15mmである。多孔構造の孔径が0.3mmよりも小さいと、ゲルが紐状になったり、あるいは、ゲルを押出すことができない可能性がある。多孔構造の孔径が25mmよりも大きいと、本発明の効果を発揮できない可能性がある。なお、多孔板の孔の数は多孔板ないし多孔面の大きさなどで適宜決定され、孔は多孔板1枚あたり1個でよいが、通常2個以上、さらに3〜10000個、より好ましくは5〜5000個である。装置あたりの多孔板は1つでもよく、複数でもよい。
【0071】
また、上記多孔板17(図1)の厚さは1〜20mmの範囲内である。上記多孔板の開口率は、好ましくは20〜55%、より好ましくは25%〜35%、特に好ましくは27〜33%である。開口率が20%未満であると、含水ゲルが押し出されにくくなり生産性が低下する。また、含水ゲルが押し出されにくくなることから、多孔板への圧送部位で含水ゲルが過度に細かく細粒化されるため好ましくない。一方、55%を超えると、押し出し時に、含水ゲルに十分な圧縮力が加えられなくなり、含水ゲルが十分に分散されなくなる恐れがある。なお、上記開口率とは、多孔板の総面積(実質的には、ケーシングの断面積と同一と見なせる)に対する全ての孔の合計面積に対する比率を指す。上記多孔板、孔の径とその開口率とを上述したように設定したものであれば、スクリュー押出し機に投入された含水ゲルは、押出口近傍で大きな圧縮力が加えられることになる。
【0072】
なお、本発明においては、微粉の混合性の向上や、細粒化含水ゲルの粒子制御のために、多段にしたスクリュー押出し機を用いてもよいし、あるいは、同じ押出機で数回押出してもよい。
【0073】
(スクリュー押出し機)
本発明で好ましく使用する細粒化装置として、スクリュー押出し機があり、以下、さらに説明する。
【0074】
スクリュー押出し機としては、たとえば、図1に示すように、ケーシング11、台12、スクリュー13、供給口14、ホッパー15、押出口16、多孔板17、回転刃18、リング19、逆戻り防止部材20、モータ21、筋状突起22などを備えている構成を好適に用いることができる。
【0075】
上記ケーシング11は円筒状となっており、その内部にケーシング11の長手方向に沿ってスクリュー13が配置されている。円筒状のケーシング11における一方の端部には、含水ゲルを押し出して粉砕する押出口16が設けられており、もう一方の端部には、スクリュー13を回転させるためのモータ21や駆動系などが設けられている。ケーシング11の下方には台12が設けられており、これによってスクリュー式押出機を床に安定して配置させることができる。一方、ケーシング11の上方には、含水ゲルを供給するための供給口14が設けられており、好ましくは、含水ゲルを供給し易くするためのホッパー15が備えられている。
【0076】
上記ケーシング11の形状や大きさは、スクリュー13の形状に対応するような円筒状の内面を有していれば特に限定されるものではない。また、スクリュー13の回転数は、スクリュー押出し機の形状によって適宜異なるため特に限定されるものではないが、後述するように、含水ゲルの供給量に応じてスクリュー13の回転数を変化させることが好ましい。回転数として例えば1〜1000rpm、さらには10〜500rpmである。
【0077】
上記スクリュー13の回転方向については特に限定されるものではない。本発明では、モータ21を接続している側の端部から見て、スクリュー13は右まわりに回転するようになっている。
【0078】
上記押出口16には、複数の孔17aを有する多孔板17が配置されている。また、この多孔板17は、リング19によって押出口16に着脱可能に固定されている。これは、多孔板17の孔17aの径によって細粒化含水ゲルの粒子の大きさが決定されるため、含水ゲルの粒子の大きさを調節するためには孔17aの径が異なる多孔板17を適宜取り替える必要が生じるためである。
【0079】
以下に本発明の一実施形態を示す。図1に示すように、供給口14からケーシング11内に投入された含水ゲル(a)と含水ゲル(b)とは十分に混合されない。ケーシング11内に供給された含水ゲル(a)と含水ゲル(b)とはスクリュー13の回転により混合(混練)されるが、このスクリュー13の回転では、混合よりも押出口16側に搬送されるために含水ゲル(a)に外力が加えられる。そのため、含水ゲル(a)が圧縮しない程度に均一な圧力が加えられることになる。なお、このような均一な圧力が含水ゲル(a)に加えられるケーシング11内の大部分を、図1に示すように、均圧部とする。
【0080】
これに対して、押出口16には多孔板17が設けられているので、押出口16近傍では含水ゲルは容易に押し出されず、スクリュー13の回転によって圧縮される。しかも、上述したように、ケーシング11内の含水ゲル(a)および含水ゲル(b)は、スクリュー13の回転によって押出口16側に搬送されるため、圧縮力はさらに高まる。その結果、含水ゲル(a)および含水ゲル(b)は圧縮されながら(図1参照)撹拌・混合され、押出口16(多孔板17)から押し出されることになる。なお、このような大きな圧縮力が加えられる押出口16近傍を、図1に示すように、圧縮部とする。
【0081】
通常の撹拌・混合では、含水ゲル(a)および含水ゲル(b)が圧縮されない(図1における均圧部参照)ので、含水ゲル(a)に添加された含水ゲル(b)は十分に分散せずダマ(ママコ)になり易い。これに対して、上記スクリュー式押出機による撹拌・混合では、含水ゲル(a)および含水ゲル(b)が圧縮されながら混合されるため、含水ゲル(b)が含水ゲル(a)に密着した状態で撹拌される(図1における圧縮部参照)。
【0082】
さらに、本発明に用いられる上記スクリュー押出し機には、好ましくは、少なくとも押出口16近傍に、逆戻り防止部材20が備えられている。そのため、押出口16近傍でより一層十分な圧縮力を加えることが可能となる。上記逆戻り防止部材20が押出口16(多孔板17)近傍に設けられていると、孔17aの径がかなり小さい場合であっても含水ゲル(a)が供給口14側へ逆戻りしない。それゆえ、押出口16近傍で含水ゲル(a)により一層十分な圧縮力が加えられて含水ゲル(b)を確実に分散・混合することができるとともに、含水ゲルの押し出しが円滑に行われるため、生産性の低下を回避することができる。
【0083】
逆戻り防止部材20は、含水ゲル(a)が押出口16から供給口14側に逆戻りすることを防止するものであれば、その形状は特に限定されるものではない。たとえば、逆戻り防止部材20としては、図1に示すようなラセン状の帯状突起20aや、同心円状の帯状突起20b、あるいはスクリュー13の進行方向に平行な筋状突起22(図1参照)、粒状、球状または角状の突起などが挙げられる。
【0084】
逆戻り防止部材20とスクリュー13との隙間は、0.1〜5mmの範囲内であることが好ましい。隙間が0.1mm未満となると、逆戻り防止部材20がスクリュー13の回転を妨げることになるため好ましくない。一方、隙間が5mmを超えると、逆戻り防止部材20が含水ゲルの逆戻りを防止できなくなるため好ましくない。
【0085】
押出口16には、モータ21に接続されていない側のスクリュー13の端部が近接しているが、上記多孔板17と上記スクリュー13の端部との間には、多孔板17の表面に実質的に接触して作動するように上記回転刃18が配置されている。この回転刃18を用いることによって、多孔板17から押し出される含水ゲルの粒子の大きさをより小さく、かつ均一な粒度分布とすることが可能となる。
【0086】
回転刃18の構成としては特に限定されるものではないが、たとえば、十文字型の構成のものを好適に用いることができる。また、この回転刃18の回転方向についても特に限定されるものではなく、たとえば、本発明では、回転刃18はスクリュー13の回転方向と同一の方向に回転するようになっている。さらに、回転刃18の回転数も特に限定されるものではない。
【0087】
含水ゲル供給量の変化に対応するスクリュー13の回転数の変化幅も、ある特定の幅に限定されるものではなく、細粒化の条件、たとえば、用いられるスクリュー式押出機の形状(ケーシング11の容積やスクリュー13の形状、多孔板17の孔17aの径など)や、含水ゲルの物性などによって最適の変化幅を規定することが可能である。それゆえ、上記回転数は用いられるスクリュー式押出機や含水ゲルに応じて適宜規定することが好ましい。
【0088】
(細粒化条件)
本発明者らは、含水ゲル(a)と含水ゲル(b)とが細粒化装置内で共存する際に、細粒化装置内をゲルが通過する時間が、細粒化の条件を設定する際に、重要な因子であることを見出した。さらに、ゲルが装置内を速く通過することが、最終的な吸水性樹脂の微粒子軽減のために好ましいことも見出した。詳細なメカニズムは不明であるが、ゲルが装置内を速く通過すると含水ゲル(a)が練られることが低減するため、吸水性樹脂の微粒子が軽減されると考えられる。
【0089】
好ましい形態であるスクリュー押出し機を例に図1を用いて説明すると、細粒化装置内をゲルが通過する時間とは図1のケーシング11内をゲルが通過する時間を指す。本発明では、次式;ゲル滞留時間(秒)=(ゲル滞留量(kg)/ゲル投入量(kg/h))×3600(秒/h);で表されるゲル滞留時間をゲルがケーシング内を通過する時間とする。なお、ゲル滞留量およびゲル投入量は、実施例で用いられる値を採用する。
【0090】
ゲル滞留時間は、微粉低減の観点から、0を越えて30秒以下であることが好ましく、25秒以下であることがより好ましく、20秒以下であることがさらに好ましく、15秒以下であることが特に好ましい。
【0091】
(水以外の添加剤)
また、本発明ではその他の添加剤を含水ゲルや吸水性樹脂に加えることもできる。すなわち、種々の機能を付与させるため、添加剤として、酸化剤、亜硫酸(水素)塩などの還元剤、アミノカルボン酸などのキレート剤、シリカや金属石鹸等の水不溶性無機ないし有機粉末、消臭剤、抗菌剤、高分子ポリアミン、パルプや熱可塑性繊維などを吸水性樹脂中に0〜3重量%、好ましくは0〜1重量%添加しても良い。
【0092】
なお、上記した添加剤については国際公開第2006/109844号パンフレットに詳細に記載され、かかる記載も本願に準用される。これら添加剤の中でも、好ましくは、米国特許第6599989号、第6469080号などに例示のキレート剤を吸水性樹脂中に好ましくは0.001%〜3重量%、より好ましくは0.01〜2重量%含む。
【0093】
≪乾燥工程≫
細粒化工程で得られる細粒化ゲルは、その後、前述のような乾燥工程、粉砕工程、および分級工程を経て所定範囲内の大きさを有する粒子状の吸水性樹脂となる。なお、粉砕工程および分級工程の後に得られた微粉は、好ましくは、再び上述した方法により再利用される。
【0094】
乾燥には、通常の乾燥機や加熱炉を用いることができる。例えば、通気バンド乾燥機、撹拌乾燥機、回転乾燥機、円盤乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、赤外線乾燥機、マイクロ波乾燥、熱風乾燥、赤外線乾燥、ドラムドライヤ乾燥、攪拌乾燥法等などが採用できる。本発明では、乾燥物の物理的破損や摩擦による微粉末の発生などを防止するために、通気バンド乾燥機などのように、乾燥対象物を動かさずに熱風等による乾燥方法が好ましい。
【0095】
乾燥温度や時間は乾燥方式によって異なるが、通常、100〜250℃で3〜120分で十分である。このようにして得られる乾燥物は、固形分が、通常85〜99重量%であり、好ましくは90〜98重量%である(180℃×3時間での乾燥減量)。
【0096】
≪粉砕工程≫
乾燥工程後に吸水性樹脂は粉砕される(粉砕工程)。このときの粉砕方法についても限定されるものではなく、上記乾燥物の粉砕は、振動ミル、ロールグラニュレーター、ナックルタイプ粉砕機、ロールミル、高速回転式粉砕機、円筒状ミキサーなどによって行なうことができる。
【0097】
本発明において、吸水性樹脂の微粉の発生が軽減されるため、下記に示す分級工程前であっても、吸水性樹脂中の微粉の含有量が少ない。好ましくは、本発明において、分級前の吸水性樹脂中の150μm未満の粒子の含有量は、10重量%以下、より好ましくは8重量%以下である。
【0098】
≪分級工程≫
上記乾燥物は、微粉の発生量が従来のものに比べて少ないので、そのまま吸水性樹脂として用いることもできるが、分級して所定のサイズの粒子状吸水性樹脂として用いることもできる。このような分級は、振動ふるい装置、気流分級装置等を使用して行なうことができる。上記のようにして得られた吸水性樹脂は、球状、鱗片状、不定形破砕状、繊維状、顆粒状、棒状、略球状、偏平状等の種々の形状であってもよい。
【0099】
前述の含水ゲル状架橋重合体を乾燥する工程後、必要により乾燥後に粒度を調整してもよいが、後述の表面架橋での物性向上のため、好ましくは特定粒度にされる。粒度は重合(特に逆相懸濁重合)、粉砕、分級、造粒、微粉回収などで適宜調整できる。
【0100】
吸水性樹脂の質量平均粒子径(D50)としては200〜600μm、好ましくは200〜550μm、より好ましくは250〜500μm、よりさらに好ましくは300〜450μm、特に好ましくは350〜400μmに調整される。また、150μm未満粒子が少ないほどよく、通常0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、特に好ましくは0〜1重量%に調整される。さらに、850μm以上粒子が少ないほどよく、通常0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、特に好ましくは0〜1重量%に調整される。粒度分布の対数標準偏差(σζ)が好ましくは0.20〜0.40、より好ましくは0.27〜0.37、さらに好ましくは0.25〜0.35とされる。
【0101】
≪表面架橋工程≫
上記のようにして得られた吸水性樹脂は、加圧下での吸収倍率向上のために必要により表面架橋処理を施し、表面架橋された吸水性樹脂を得ることができる。表面架橋により、吸水性樹脂の加圧下吸収倍率、通液性、吸収速度等が向上する。表面架橋処理には、吸水性樹脂の表面架橋処理に用いられる公知の表面架橋剤と公知の表面架橋方法を用いることができる。
【0102】
上記表面架橋剤としては、上述した単量体成分を重合させる際に用いられる架橋剤と同様のものを用いることができる。そして、これら架橋剤は、1種のみを用いてもよく、または、2種以上を併用してもよい。その中でもエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、エチレンカーボネート、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン−エピクロルヒドリンなどが好ましい。この表面架橋剤の使用量としては、表面架橋前の吸水性樹脂に対して0.01重量%〜10重量%の範囲内であることがより好ましく、0.05重量%〜5重量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0103】
表面架橋剤は通常表面架橋剤溶液として用いられる。表面架橋剤を溶解するには、溶媒として水を用いることが好ましく、水の使用量は、吸水性樹脂の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂の固形分100重量部に対して、0を超え、20重量部以下が好ましく、0.5〜10重量部の範囲内がより好ましい。
【0104】
また、吸水性樹脂と表面架橋剤とを混合する際には、必要に応じて、溶媒として水に可溶な有機溶媒(親水性有機溶媒)を用いてもよい。親水性有機溶媒としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、アルコキシポリエチレングリコール等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂の固形分100質量部に対して0〜20質量部が好ましく、より好ましくは0〜10質量部、さらに好ましくは0〜5質量部、特に好ましくは0〜1質量部である。
【0105】
上記水と水に可溶な有機溶媒(併用する場合)とからなる溶液の使用量は、表面架橋前の吸水性樹脂に対して50重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%〜20重量%の範囲内であることがさらに好ましく、1重量%〜10重量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0106】
上記表面架橋剤溶液をベースポリマー(粒子状の表面架橋処理前の吸水性樹脂)に混合させれば、表面架橋剤溶液中の水などにより吸水性樹脂が膨潤する。そこで、膨潤した吸水性樹脂は加熱により乾燥される。このときの加熱温度(乾燥温度)としては80〜220℃であることが好ましい。また、加熱時間(乾燥時間)は10〜120分であることが好ましい。
【0107】
なお、これらの表面架橋方法は、欧州特許第0349240号、同0605150号、同0450923号、同0812873号、同0450924号、同0668080号などの各種欧州特許や、日本国特開平7−242709号、同7−224304号などの各種日本特許、米国特許第5409771号、同5597873号、同5385983号、同5610220号、同5633316号、同5674633号、同5462972号などの各種米国特許、国際公開WO99/42494号、WO99/43720号、WO99/42496号などの各種国際公開特許にも記載されており、これらの表面架橋方法も本発明に適用できる
なお、表面架橋時または表面架橋後に必要により造粒工程を設けてもよい。
【0108】
(吸水性樹脂)
本発明の吸水性樹脂は上記表面架橋を達成手段の一例として、4.8kPaの加圧下での0.9重量%の塩化ナトリウムに対する吸収倍率(AAP)が好ましくは15(g/g)以上、より好ましくは18(g/g)以上、さらに好ましくは20(g/g)以上に制御される。上限は特に問わないが、他の物性のバランスから、好ましくは35(g/g)以下、より好ましくは30(g/g)以下である。
【0109】
本発明の吸水性樹脂は上記表面架橋を達成手段の一例として、加圧下通液性(0.69重量%の塩化ナトリウム水溶液流れ誘導性、SFC)が、好ましくは5(×10−7・cm・s・g−1)以上、より好ましくは10(×10−7・cm・s・g−1)以上、さらに好ましくは30(×10−7・cm・s・g−1)以上、よりさらに好ましくは50(×10−7・cm・s・g−1)以上、特に好ましくは70(×10−7・cm・s・g−1)以上、最も好ましくは100(×10−7・cm・s・g−1)以上に制御される。SFCの測定方法については、日本国特表平9−509591号公報記載の食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じることができる。
【0110】
本発明の吸水性樹脂は上記を達成手段の一例として、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率(CRC)は、好ましくは10g/g以上であり、より好ましくは20g/g以上、さらに好ましくは25g/g以上、特に好ましくは30g/gに制御される。CRCは高いほど好ましく上限値は特に限定されないが、他の物性のバランスから、好ましくは50(g/g)以下、より好ましくは45(g/g)以下、さらに好ましくは40(g/g)以下である。
【0111】
また、吸水性樹脂の粒度は、本発明に係る細粒化工程を経ることで、150μm未満の粒子の割合が著しく低減される。150μm未満の粒子の割合は、本発明の方法によって製造された吸水性樹脂粒子に対して、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下、最も好ましくは1.5重量%以下である。なお、150μm未満の粒子の割合は、後述する実施例の方法により算出される。
【0112】
≪吸水性樹脂の用途≫
以上のような本発明にかかる製造方法により得られた吸水性樹脂は、優れた吸収性能によって種々の用途に適用できる。例えば、紙オムツや生理用ナプキン、失禁パッド、創傷保護材、創傷治癒材等の衛生材料(体液吸収物品);建材や土壌用保水材、止水材、パッキング材、ゲル水嚢等の土木建築用資材、農園芸用物品等、に用いられる。
【実施例】
【0113】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と、「ミリリットル」を単にmlと記すことがある。また、「重量%」を「wt%」と記すことがある。さらに、吸水性樹脂は、25℃±2℃、相対湿度約50%±5%RHの条件下で使用(取り扱い)した。また、生理食塩水として0.90重量%塩化ナトリウム水溶液を用いた。
【0114】
なお、おむつ中の吸水性樹脂など市販品を分析する際、吸湿している場合、適宜、減圧乾燥して含水率を5%程度に調整して測定すればよい。
【0115】
<吸収倍率(CRC)>
吸水性樹脂0.2gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、20℃〜25℃に調温した大過剰(通常500ml程度)の生理食塩水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン製、遠心機:型式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の重量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いないで行い、その時の重量W2(g)を測定した。そして、これらW1、W2から、次式に従って吸収倍率(g/g)を算出した。
【0116】
【数1】

【0117】
<加圧下吸収倍率(AAP)>
図3に示す装置を用い、内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網101(目の大きさ38μm)を融着させ、該網上に吸水性樹脂102 0.900gを均一に散布し、その上に、吸水性樹脂に対して4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒との隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストン103と荷重104とをこの順に載置し、この測定装置一式の重量W6(g)を測定した。
【0118】
直径150mmのペトリ皿105の内側に直径90mmのガラスフィルター106(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、生理食塩水108(20℃〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙107(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0119】
上記測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その重量W7(g)を測定した。そして、W6、W7から、下記の式に従って圧力に対する加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
【0120】
【数2】

【0121】
<可溶分(量)>
250ml容量の蓋付きプラスチック容器に、生理食塩水184.3gを量り取り、その水溶液中に吸水性樹脂1.00gを加えて16時間攪拌することにより樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを量り取り測定溶液とした。
【0122】
はじめに生理食塩水だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。同様の滴定操作を測定溶液についても行うことにより滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。例えば、既知量のアクリル酸とその塩からなる吸水性樹脂の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂中の可溶分量(抽出された水溶性重合体が主成分)を、下記の式(2)、
【0123】
【数3】

【0124】
により算出することができる。また、未知量の場合には、滴定により求めた中和率(次の式(3))
【0125】
【数4】

【0126】
を用いてモノマーの平均分子量を算出する。
【0127】
<質量平均粒子径(D50)および対数標準偏差(σζ)>
吸水性樹脂を、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、45μmのJIS標準篩で篩い分けし、残留百分率を対数プロットした。なお、吸水性樹脂の粒径により、篩は必要により適宜追加して測定する。これにより、R=50重量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0128】
【数5】

【0129】
篩い分けは吸水性樹脂10.0gを、上記JIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm、(株)飯田製作所製)に仕込み、ロータップ型ふるい振盪機((株)飯田製作所製、ES−65型ふるい振盪機)により5分間分級した。
【0130】
なお、質量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報などにあるように、一定目開きの標準ふるいで粒子全体の50重量%に対応する標準ふるいの粒子径のことである。
【0131】
<150μm未満粒子の割合>
吸水性樹脂を目開き150μmのJIS標準篩で篩い分けし、篩った吸水性樹脂の全量に対する150μmのJIS標準篩を通過した粒子の割合を下記式で算出した。
【0132】
【数6】

【0133】
<ゲル滞留量および滞留時間>
ミートチョッパーへのゲルの供給および、ミートチョッパーの回転を同時に止め、ミートチョッパー内に残存したゲルの量(kg)を計量しゲル滞留量とした。また、ゲルのミートチョッパー内での滞留時間は、ミートチョッパーへのゲル投入量(kg/h)を計量し、下記の式にて算出した。
【0134】
【数7】

【0135】
<残存モノマーの測定>
脱イオン水1000gに吸水性樹脂0.5gを加え、4cmスターラーで攪拌下で2時間抽出した後、濾紙を用いて膨潤ゲル化した吸水性樹脂を濾別し、濾液中の残存モノマー量を液体クロマトグラフィーで分析した。一方、既知濃度のモノマー標準溶液を同様にして分析して得た検量線を外部標準とし、濾液の希釈倍率を考慮して、吸水性樹脂中の残存モノマー量を求めた。
【0136】
<固形分>
吸水性樹脂粒子1.00gを底面の直径が約50mmのアルミカップに量り取り、吸水性樹脂、およびアルミカップの総重量W8(g)を測定した。その後、雰囲気温度180℃のオーブン中に3時間静置して乾燥した。3時間後、オーブンから取り出した吸水性樹脂、およびアルミカップをデシケーター中で十分に室温まで冷却した後、乾燥後の吸水性樹脂、およびアルミカップの総重量W9(g)を求め、次式に従って固形分を求めた。
【0137】
【数8】

【0138】
また、含水ゲルに関しては乾燥時間を16時間にする以外は、上記測定方法と同様にして固形分を求めた。
【0139】
〔参考例1〕
48.5wt%の水酸化ナトリウム水溶液(A)、54.3wt%のアクリル酸水溶液(B)、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量:523)が9.33wt%、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが0.30wt%、46wt%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液が0.37wt%、アクリル酸45.0wt%および工業用純水45.0wt%からなる溶液(C)、ならびに、3.0wt%過硫酸ナトリウム水溶液(D)を別々に調製し、水溶液(A)を貯蔵するタンク31、水溶液(B)を貯蔵するタンク32、溶液(C)を貯蔵するタンク33、および水溶液(D)を貯蔵するタンク34(図2参照)に各溶液を入れた。各タンク内の溶液の液温は、水溶液(A)が33℃、水溶液(B)が11℃、溶液(C)が24℃および水溶液(D)が24℃となるようにした。なお、図2においては、ポンプ35が各タンクに配置されている。
【0140】
図2に示す連続重合装置を用い、各溶液の供給量(流量)を水溶液(A)が17.5kg/h、水溶液(B)が40.0kg/h、溶液(C)が1.7kg/hおよび水溶液(D)が0.8kg/hとなる設定で、供給配管37中においてこれら溶液を混合し水溶性不飽和単量体水溶液(1)を調製した。この際、不飽和単量体水溶液の温度は102℃であった。上記混合に際しては、図2における分散機36より下流の供給配管37中に、200mL/minの流量で窒素ガスを導入した。供給配管37中の水溶性不飽和単量体水溶液(1)の温度は97℃で安定させた。供給配管37中の水溶性不飽和単量体水溶液(1)の溶存酸素量(a)は8.6mg/Lであった。なお、図2においては、供給配管37上には、ガス抜き装置41が配置されている。
【0141】
供給配管37内の水溶性不飽和単量体水溶液(1)を、続けて重合系としてのベルト重合機38に供給し、重合を行った。ベルト重合機38は、表面がフッ素樹脂コーティングされた長さ3.8m、幅60cmのエンドレスベルト39を備え、該ベルト39上にUVランプが設置され、ベルト39の底面側およびベルト重合機8の周囲が約100℃に加熱され且つ保湿され、中央部に蒸発水を回収するための吸気配管を備えている。重合工程への供給の際の溶存酸素を脱気した後の水溶性不飽和単量体水溶液(1)の溶存酸素量(b)は3.5mg/Lであった。水溶性不飽和単量体水溶液(1)を供給配管から上記ベルト39上に連続的に供給して重合を行い、帯状の重合ゲル40を得た。
【0142】
得られた帯状の含水ゲル状架橋重合体(a1)(厚み5〜10mm)10を、連続的にミートチョッパー42(株式会社平賀工作所製、TB32型)で粒子状に粉砕した。この時のミートチョッパーの回転数は105rpmで、ミートチョッパーへのゲルの投入量は50.9kg/hで、ミートチョッパーのゲル滞留量は0.36kgであった。
【0143】
ミートチョッパーで砕かれて得られた粒子状の含水ゲル状架橋重合体(a1)を、目開き850μmのステンレス金網に広げ、180℃の熱風で30分間乾燥した後、乾燥物をロールミルで粉砕して、粒子状の吸水性樹脂を得た。該粒子状の吸水性樹脂の吸収倍率(CRC)は34g/gであった。
【0144】
得られた吸水性樹脂をJIS160μm標準篩により分級し、D50が97μmでかつ160μm以下の粒子径を有するポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粒子(A)を得た。また、その吸水性樹脂粒子(A)の吸収倍率(CRC)は32g/gであった。
【0145】
〔実施例1〕
参考例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)2.7kg/hと、イオン交換水2.7kg/hをKRCニーダー(株式会社栗本鐵工所製、S2型)にて混合して固形分50重量%の含水ゲル状架橋重合体(b1)43(図2参照)を得たのち、参考例1と同様にして得られる含水ゲル状架橋重合体(a1)(固形分53重量%の重合ゲル)とともに連続的にミートチョッパーに投入し、粉砕した。この時のミートチョッパーへのゲルの投入量の総和(含水ゲル状架橋重合体(a1)および(b1))は56.3kg/hで、ミートチョッパーのゲル滞留量は0.27kgであった。
【0146】
ミートチョッパーで砕かれて得られた含水ゲル状架橋重合体(a1)、(b1)を、目開き850μmのステンレス金網に広げ、180℃の熱風で30分間乾燥した後、乾燥物をロールミルで粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得た。得られた粒子状吸水性樹脂の150μm未満の粒子径を有する粒子の割合は7.1重量%であった。
【0147】
得られた吸水性樹脂をさらにJIS850μm、600μm、300μm、150μm、45μm標準篩で分級調合することで、D50が461μmでかつ850μm以上の粒子径を有する粒子の割合が0重量%、600μm以上850μm未満の粒子径を有する粒子の割合が28重量%、150μm未満の粒子径を有する粒子の割合が7.1重量%、対数標準偏差(σζ)が0.364である吸水性樹脂粉末(1)を得た。
【0148】
得られた吸水性樹脂粉末(1)100重量部に、1,4−ブタンジオール0.3重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水2.7重量部の混合液からなる表面処理剤溶液を均一に混合した。表面架橋剤溶液を混合した吸水性樹脂を、攪拌翼を備えたジャケット付き加熱装置(ジャケット温度:210℃)で任意の時間加熱処理した。加熱処理後、得られた吸水性樹脂をJIS850μm標準篩を通過せしめ、表面が架橋された粒子状吸水性樹脂(1)を得た。粒子状吸水性樹脂(1)の諸物性を表1に示した。
【0149】
〔実施例2〕
参考例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)0.05kg/hと、イオン交換水5.0kg/hをKRCニーダー(株式会社栗本鐵工所製、S2型)にて混合して得られた固形分1重量%の水膨潤ゲル(含水ゲル状架橋重合体(b2))を、参考例1と同様にして得られる含水ゲル状架橋重合体(a1)とともに連続的にミートチョッパーに投入し、粉砕した。この時のミートチョッパーへのゲルの投入量の総和((a1)+(b2))は55.95kg/hで、ミートチョッパーのゲル滞留量は0.23kgであった。
【0150】
ミートチョッパーで砕かれて得られたゲルを、実施例1と同様にして乾燥、粉砕を行い、粒子状吸水性樹脂を得た。得られた粒子状吸水性樹脂の150μm未満の粒子径を有する粒子の割合は7.8重量%、850μm以上の粒子径を有する割合は0重量%であった。
【0151】
得られた吸水性樹脂を、実施例1と同様にして表面架橋処理、JIS850μm標準篩をして、粒子状吸水性樹脂(2)を得た。粒子状吸水性樹脂(2)の諸物性を表1に示した。
【0152】
〔実施例3〕
参考例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)2.7kg/hと、イオン交換水1.8kg/hをKRCニーダー(株式会社栗本鐵工所製、S2型)にて混合して得られた固形分60重量%の含水ゲル状架橋重合体(b3)を、参考例1と同様にして得られる含水ゲル状架橋重合体(a1)(固形分53重量%の重合ゲル)とともに連続的にミートチョッパーに投入し、粉砕した。この時のミートチョッパーへのゲルの投入量の総和は55.4kg/hで、ミートチョッパーのゲル滞留量は0.30kgであった。
【0153】
ミートチョッパーで砕かれて得られたゲルを、実施例1と同様にして乾燥、粉砕を行い、粒子状吸水性樹脂を得た。得られた粒子状吸水性樹脂の150μm未満の粒子径を有する粒子の割合は8.9重量%、850μm以上の粒子径を有する粒子の割合は0重量%であった。
【0154】
得られた吸水性樹脂を、実施例1と同様にして表面架橋処理、JIS850μm標準篩をして、粒子状吸水性樹脂(3)を得た。粒子状吸水性樹脂(3)の諸物性を表1に示した。
【0155】
〔実施例4〕
参考例1の溶液(C)の組成比を、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量:523)が5.60wt%、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが0.30wt%、46wt%ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液が0.37wt%、アクリル酸45.0wt%および工業用純水48.73wt%とした以外は、参考例1と同様にして得られる含水ゲル状架橋共重合体(a2)(固形分濃度54.2重量%)を得た。
【0156】
実施例1と同様に、参考例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)2.7kg/hと、イオン交換水2.7kg/hをKRCニーダー(株式会社栗本鐵工所製、S2型)にて混合して得た含水ゲル状架橋重合体(b1)(膨潤ゲル)を得た後、含水ゲル状架橋共重合体(a2)とともに、連続的にミートチョッパーに投入し、粉砕した。この時のミートチョッパーへのゲルの投入量の総和は55.2kg/hで、ミートチョッパーのゲル滞留量は0.33kgであった。
【0157】
ミートチョッパーで砕かれて得られたゲルを、実施例1と同様にして乾燥、粉砕を行い、粒子状吸水性樹脂を得た。得られた粒子状吸水性樹脂の150μm未満の粒子径を有する粒子の割合は6.6重量%、850μm以上の粒子径を有する粒子の割合は0重量%であった。
【0158】
得られた吸水性樹脂を、実施例1と同様にして表面架橋処理、JIS850μm標準篩をして、粒子状吸水性樹脂(4)を得た。
【0159】
〔実施例5〕
参考例1の水溶液(B)の濃度を33wt%とした以外は参考例1と同様にして得られる含水ゲル状架橋重合体(a3)(固形分濃度43.0重量%)を得た。次いで、参考例1で得られた吸水性樹脂粒子(A)2.7kg/hと、イオン交換水2.7kg/hをKRCニーダー(株式会社栗本鐵工所製、S2型)にて混合した含水ゲル状架橋重合体(b1)と、含水ゲル状架橋重合体(a3)を連続的にミートチョッパーに投入し、粉砕した。この時のミートチョッパーへのゲルの投入量の総和は58.4kg/hで、ミートチョッパーのゲル滞留量は0.22kgであった。
【0160】
ミートチョッパーで砕かれて得られたゲルを、実施例1と同様にして乾燥、粉砕を行い、粒子状吸水性樹脂を得た。得られた粒子状吸水性樹脂の150μm未満の粒子径を有する粒子の割合は6.3重量%、850μm以上の粒子径を有する粒子の割合は0重量%であった。
【0161】
得られた吸水性樹脂を、実施例1と同様にして表面架橋処理、JIS850μm標準篩をして、粒子状吸水性樹脂(5)を得た。
【0162】
〔比較例1〕
参考例1の重合にて得られる重合ゲル(含水ゲル状架橋重合体(a1))の粉砕物と、実施例1にてKRCニーダー(株式会社栗本鐵工所製、S2型)にて混合して得られる水膨潤ゲル状物(含水ゲル状架橋重合体(b1))を、同所定量取り、目開き850μmのステンレス金網に広げ、180℃の熱風で30分間乾燥した後、乾燥物をロールミルで粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得た。得られた粒子状吸水性樹脂の150μm未満の粒子径を有する粒子の割合は14.4重量%、850μm以上の粒子径を有する粒子の割合は0重量%であった。
【0163】
得られた吸水性樹脂を、実施例1と同様にして、表面架橋処理、JIS850μm標準篩をして、比較粒子状吸水性樹脂(1)を得た。
【0164】
〔比較例2〕
参考例1と同様にして得られた粒子状の吸水性樹脂(膨潤ゲル(含水ゲル状架橋重合体(b1))を添加せず)をさらにJIS850μm、600μm、300μm、150μm、45μm標準篩で分級調合することで、比較吸水性樹脂粉末(2)を得た。
【0165】
得られた比較吸水性樹脂粉末(2)を、実施例1と同様にして表面架橋処理、JIS850μm標準篩をして、比較粒子状吸水性樹脂(2)を得た。
【0166】
〔比較例3〕
実施例5において、膨潤ゲル(含水ゲル状架橋重合体(b1))を添加せずに、実施例5の重合にて得られる重合ゲル(含水ゲル状架橋重合体(a3))のみをミートチョッパーで粉砕した。次いで、実施例5と同様に目開き850μmのステンレス金網に広げ、180℃の熱風で30分間乾燥した後、乾燥物をロールミルで粉砕して、粒子状吸水性樹脂を得た。得られた粒子状吸水性樹脂の150μm未満の粒子径を有する粒子の割合は8.0重量%、850μm以上の粒子径を有する粒子の割合は0重量%であった。
【0167】
得られた吸水性樹脂を、実施例1と同様にして表面架橋処理、JIS850μm標準篩をして、比較粒子状吸水性樹脂(3)を得た。
【0168】
(結果)
上記の粒子状吸水性樹脂(1)〜(5)および比較粒子状吸水性樹脂(1)〜(3)の諸物性を表1に示した。
【0169】
【表2】

【0170】
(表の補足説明)
水膨潤ゲル(含水ゲル状架橋重合体(b1))を存在させて重合ゲル(含水ゲル状架橋重合体(a3))を細粒化する実施例1〜3は、水膨潤ゲルを用いないで含水ゲル状架橋重合体(a3)を細粒化する比較例2に比べて、ゲル滞留時間が24〜42%短縮され(参考例1 25.5秒、実施例1〜5 14.8〜21.5秒)処理量が向上するのみならず、ロールミル粉砕後の150μm未満の微粒子も37〜22%低減され、さらに、吸収倍率や加圧下吸収倍率も向上し、特に、水膨潤ゲルの固形分が低い場合、可溶分も低減する。
【0171】
同様の効果は、固形分の低い重合ゲル(含水ゲル状架橋重合体(a3)においても、実施例5と比較例3の比較で、水膨潤ゲル(含水ゲル状架橋重合体(b1))を存在させることで、ゲル滞留時間が短縮され処理量が向上するのみならず、150μm未満の微粒子も低減されている。なお、実施例1〜3と実施例5を比較して、本願の効果は含水ゲル状架橋重合体(a)の固形分がより高いところで発揮されることが分かる。
【0172】
実施例1において、重合ゲル(ゲル状架橋重合体(a1))の細粒化後に水膨潤ゲル(含水ゲル状架橋重合体(b1))を混合する比較例1では、実施例1や比較例2(含水ゲル状架橋重合体(b1)なし)に比べて、吸収倍率や加圧下吸収倍率も低い。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明にかかる製造方法は、新たな副原料や添加剤も特に使用せずに、安価に高い生産性で、粒度制御(例えば微粉低減)や基本物性向上(例えば吸水倍率、加圧下吸収倍率、可溶分)が可能であるため、吸水性樹脂の製造方法として好ましく適用できる。
【0174】
本出願は、2006年9月29日に出願された、日本国特許出願第2006−2667567号に基づいており、その開示内容は、全体として参照により本明細書中に引用されている。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】図1は本発明で使用できるゲル細粒化装置(ミートチョッパー)の概念図である。
【図2】図2は本発明の製造方法を実施できる連続重合装置およびゲル粉砕機の配置構造の概略図である。
【図3】図3は実施例で用いられる加圧下吸収倍率(AAP)の測定装置の概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和単量体の水溶液を架橋重合して水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)を製造する;
該水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)を細粒化して細粒化ゲルを製造する;
該細粒化ゲルを乾燥して乾燥物を得る;
該乾燥物を粉砕することを含む吸水性樹脂粒子の製造方法であって、該水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)の細粒化工程で、前記架橋重合体(a)の固形分と異なる固形分、または前記架橋重合体(a)の吸水倍率と異なる吸水倍率を有する水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)を共存させる、吸水性樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥工程の後に、さらに表面架橋工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記細粒化工程で用いられる細粒化装置内での前記架橋重合体(a)と前記架橋重合体(b)との混合物の滞留時間が30秒以内である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記細粒化装置がスクリュー押出し機である、請求項1〜3記載の製造方法。
【請求項5】
細粒化される前記水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)の固形分が40重量%以上である、請求項1〜4記載の製造方法。
【請求項6】
前記水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)の固形分が前記水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)より低い請求項1〜5記載の製造方法。
【請求項7】
前記水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)の固形分が0.1〜10重量%である請求項1〜6記載の製造方法。
【請求項8】
前記水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)の吸収倍率が前記水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)より低い、請求項1〜7記載の製造方法。
【請求項9】
前記水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(a)および(b)の混合物の固形分含有率(重量%)が40〜60重量%である、請求項1〜8記載の製造方法。
【請求項10】
前記水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)が吸水性樹脂製造工程のリサイクルで得られる請求項1〜9記載の製造方法。
【請求項11】
前記水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)が架橋重合工程の重合ゲルから得られる請求項1〜10記載の製造方法。
【請求項12】
前記水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)が分級工程後の吸水性樹脂粒子に水を添加して得られる請求項1〜10記載の製造方法。
【請求項13】
前記水膨潤性含水ゲル状架橋重合体(b)が吸水性樹脂製造装置の水洗浄工程で得られる請求項1〜10記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−505003(P2010−505003A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553409(P2007−553409)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/JP2007/069516
【国際公開番号】WO2008/038840
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】