説明

吸水性物品

【課題】軟便のような固形分を含む排泄物や粘液といった粘性の高い排泄物に対しても、十分な保持能力、吸収力、及び、透過性を持ち、製造が容易で、安価な吸収性物品を提供することを目的とする。
【解決手段】着用者の肌に接するトップシートと、液不透過性のバックシートと、これらトップシートとバックシートの間に配置される吸収体とを含む吸収性物品である。トップシートは、厚さが2〜6mmであり、トップシートの厚さ方向に貫通する直径5〜10mmの孔が複数個、トップシートの面内に分布形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物用吸収性物品、特に、尿等の水分を主体とする排泄物だけでなく、軟便のように固形分を含む排泄物や粘液といった比較的粘性の高い排泄物に対しても、優れた吸収性を発揮し得る吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、消化器系の疾病患者は、術後に少量で頻回の排泄をする傾向があるが、この場合の便は、軟便(泥状便)であることが多く、また、粘液が出ることも多い。この場合の排泄物処理対策として、常時、紙おむつ等を使用し、かつ、おむつの交換回数を増やして肌を清潔に保つことが望ましいが、交換の手間や術後の状況等を考えると、ある程度の排泄物は吸収・保持して、次のおむつ交換までは肌と排泄物との接触をできる限り減らすことが好ましい。このような目的で使用される吸収性物品は、着用していることが目立ち難く、さらに交換や廃棄が比較的容易であることが好ましいため、従来は、失禁パッドや生理用ナプキンをこの目的に使用することが多かった。しかし、失禁パッドや生理用ナプキンは、軟便等の吸収を目的としたものではなかったため、軟便の固形分が表面に残り、着用者の肌に触れるため、排泄物による不快感、肌荒れ等の障害が起きる場合も多かった。
【0003】
このような問題に対処するための従来の提案として、特開平2−65861号公報(特許文献1)に記載された「紙おむつ」や、特開2001−269362号公報(特許文献2)及び特開2001−276125号公報(特許文献3)に記載された「使い捨て着用物品」がある。しかし、これらの特許文献により提案された物品は、いずれも、上部のシートと内部の吸収体との間に軟便を受けるための大きな空間を設ける構造であり、全体として嵩高になり、着用性が悪い。
最近の従来例を挙げると、例えば、特許第4346596号公報(特開2007−97643号公報、特許文献4)は、着用者の肌に接する表面シートとして多数の孔を設けた孔開きシートを用い、該表面シートの下側に排泄液を透過する透過シートを配置し、さらに該透過シートの下側に綿状パルプ層を含む吸収要素を配置した構成の吸収性物品を開示している。この特許文献4に開示された吸収性物品は、表面シートの軟便透過速度が透過シートの軟便透過速度より大きく、透過シートの軟便透過速度が綿状パルプ層の軟便透過速度より大きい。さらに、綿状パルプ層はティッシュペーパ等により覆われることなく、露出された状態で上層の透過シートに接するように配置される。特許文献4では、この構成により、逆戻りすることなく軟便を吸収できると説明している。また、この特許文献4では、軟便を速やかに透過させることができるように、表面シートの孔径を比較的大きな値、例えば、直径2〜10mm(開口面積3〜75mm2)程度に設定している。尚、孔の深さ、或いは、表面シートの厚みについては、直接の記載はないが、不織布を構成する繊維の繊度は4〜10dtex、その目付け量は5〜45g/m2が好ましい、と記載されていることから、通常の薄い表面シートを使用していると考えられる。この構造においては、着用者の肌に接する表面シートは、このように薄いシート状構成であるため、軟便に含まれる固形分が表面に付着したまま残り、肌に触れることになる。したがって、この構造は、軟便処理の課題を十分に解消するものではない。
【0004】
一方、例えば、特許第3681320号公報(特開2001−276121号公報、特許文献5)には、透過性表面シートと不透過性裏面シートとこれら2つのシート間に介在する吸収性コアとからなる体液吸収性着用物品において、その後部域と中間域とにおける表面シートの外面にマット状のパネルを取り付けた構成を有する吸収性物品が開示されている。該マット状のパネルは、圧縮復元弾性を有する繊維ウエブから形成されており、該繊維ウエブは、厚さ方向に貫通する複数の開口部と、該開口部の各々を囲繞する網目状の障壁部とを有する。障壁部は、表面シート側に位置する低密度繊維層と該低密度繊維層の上に位置する高密度繊維層とから構成される。この構造において、開口の深さ、つまり、層の厚みは、2〜30mm程度に、また、開口の大きさは、開口面積として規定されており、開口面積10〜1600mm2程度に設定するものとされている。この構成では、軟便等は、吸収性物品の頂面、即ち、高密度繊維層の頂面に滞留し、高密度繊維層に直ちには滲入せず、着用者の肌と頂面とが擦れ合ううちに、孔の内部、即ち、下部の低密度繊維層側へ流入すると説明されている。低密度繊維層へ流入し、表面シート11に到達した軟便のうち、水分については、表面シートを透過して表面シート下側に配置された吸液性のコアに吸収され、一方、軟便の固形分は水分の一部とともに低密度繊維層へ滲入することになる。この特許文献5に記載された体液吸収性着用物品は、網目状の障壁部が上層の高密度繊維層と下層の低密度繊維層とから構成されるため、意図する吸収特性を達成するためには、高密度繊維層と低密度繊維層の密度管理を精度良く行う必要があり、低価格で、安定した品質での製造は容易ではない。また、軟便の固形分は水分の一部とともに低密度繊維層へ滲入すると説明されているが、低密度繊維層に軟便の固形分が十分に吸収されず、マット状パネルの表面に残って着用者の肌に触れることになる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−65861号公報
【特許文献2】特開2001−269362号公報
【特許文献3】特開2001−276125号公報
【特許文献4】特許第4346596号公報
【特許文献5】特許第3681320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4に記載の吸収性物品では、着用者の肌に接する表面シートが薄いシート状構成であるため、特に軟便の固形分の保持、吸収が不十分になり、軟便に含まれる固形分が透過シートに吸収されずに表面シートの表面に付着したまま残り、肌に触れることになるといった問題がある。また、特許文献5に記載の体液吸収性着用物品では、マット状パネルに開口が形成されており、この開口に軟便がある程度は保持されることになるが、軟便の吸収が十分でなく、マット状パネルの表面に軟便が付着することは避けられず、しかも、障壁部の製造を、低価格で、安定した品質で行うのは容易ではない、といった問題がある。
本発明は、このような従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、軟便のような固形分を含む排泄物や粘液といった粘性の高い排泄物に対しても、十分な保持能力、吸収力、及び、透過性を持ち、製造が容易で、安価な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、着用者の肌に接するトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置される吸収体とを含む吸収性物品であって、該トップシートは、厚さが2〜6mmであり、該トップシートの厚さ方向に貫通する直径5〜10mmの孔が複数個、該トップシートの面内に分布するように配置されている吸収性物品を特徴とする。トップシートに形成される多数の孔は、その直径とトップシートの厚さ全体にわたる深さにより、軟便の固形分を保持するのに十分な容積をもたらす。トップシートと吸収体との間には、直径1〜4mmの小孔が面内に分布形成されたセカンドシートを配置することができる。このセカンドシートは、トップシートの孔を通り抜けた軟便に含まれる水分を、急速に下層の吸収体に導くように作用する。
【0008】
本発明による吸収性物品において、トップシートは、撥水性を有する材料により形成することが好ましい。該トップシートは、好ましくは、サーマルボンド不織布、サーマルボンド不織布とスパンボンド不織布との貼り合せ、ポリエチレンフォーム又はウレタンフォームのいずれかにより形成することができる。
【0009】
本発明の吸収性物品において、トップシートに形成される孔には、該トップシートの表側の面に隣接する入口周縁に、該トップシートの表側の面から厚さ方向に、孔の径を狭める、例えば円錐形状の傾斜面のような傾斜面が設けられることが好ましい。さらに、該トップシートの孔は、該トップシートの吸収体側の面、すなわち裏側の面に隣接する出口周縁に、該トップシートの裏側の面に向かって該孔の径を拡げる、例えば円錐形状の傾斜面のような傾斜面が設けられることが好ましい。この場合には、孔の最大孔径は5〜10mmとすることが好ましい。孔の入口周辺に形成される傾斜面は、排泄された固形分を含む軟便を急速に該孔の中に導き入れるように働き、孔の出口周辺に形成される傾斜面は、孔に導かれた軟便が表面方向に逆流するのを防止するように働く。
【0010】
本発明の好ましい態様においては、トップシートの孔は、排泄箇所、例えば吸収性物品の前後方向中間部から後部にわたる領域に集中的に、すなわちパターン状に分布させる。典型的には、本発明の吸収性物品は、使用時の寸法が長さ20〜35cm、幅7〜15cmである。本発明の特定的な態様においては、吸収性物品は軟便吸収パッドである。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成を有する本発明によれば、固形分を含む軟便や、粘性の高い粘液性の排泄物に対しても、十分な保持能力及び吸収力をもち、一旦吸収された軟便が逆流することがない、安価で製造容易な吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の好適な実施形態による軟便吸収パッドの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の軟便吸収パッドの平面図である。
【図3】図2のI−I線の概略断面図である。
【図4】図3の一部部分拡大図である。
【図5】本発明の軟便吸収パッドの変形例を示す平面図である。
【図6】本発明の一つの実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一つの好適な実施形態による吸収性物品について説明する。
尚、吸収性物品のうち、ここでは特に、軟便等の吸収に適した軟便吸収パッド30を例示する。但し、単なる例示であって、勿論、本発明をこれに限定する意図ではない。本発明の吸収性物品は、軟便吸収パッド30だけでなく、失禁パッドや生理用ナプキン等の他の吸収性物品にも広く応用することができる。また、本発明の吸収性物品は、おむつの使用面にあてがうようにして、又は、下着の所定箇所に装着して、おむつ等とともに使用される様々なタイプのものを含む。
【0014】
図1は、本発明による軟便吸収パッド30の外観を示す斜視図、図2は、その平面図である。これらの図から明らかなように、本発明の軟便吸収パッド30は、全体として細長い片状をなし、四つの角部20は曲線状に面取りされ、股部に装着し易いものとなっている。
【0015】
軟便吸収パッド30には、少なくとも、トップシート2と、バックシート4、更に、これらトップシート2とバックシート4の間に配置される吸収体(後述する図3、図4によく示されている)が含まれる。これらの部材は互いに重ね合わされ、層状を成している。
【0016】
軟便吸収パッド30の使用時の寸法は、長さ(図2の矢印「ア」)20〜35cm、幅(図2の矢印「イ」)7〜15cmに設定されている。図示の例は、長さ27cm、幅10.5cmとして記載した。このようなサイズとすることにより、局部的な排泄にも対応することができ、また、着用感を向上させることができる。更に、着用中に軟便等が軟便吸収パッド30の内部で広がることを抑制し、交換時の皮膚の清拭等の手間を減らし、廃棄を容易にすることもできる。
【0017】
バックシート4には、その幅方向両側縁から延長されるように、撥水性の不織布から成る撥水性シート12が固定され、更に、この撥水性シート12の幅方向両側縁から延長されるように、サイドシート13が、トップシート2の上に立ち上がるように固定される。立ち上がり部分は、尿等の横漏れを防止する、いわゆる立体ギャザーを形成する部分となる。使用時には、軟便吸収パッド30を、その長手方向に沿って使用者の股部の前後に渡し、サイドシート13で股部を両脇から覆う。
【0018】
次いで、図3、図4を参照して、図1、図2に示した軟便吸収パッド30の構成を更に詳細に説明する。ここで、図3は、図2のI−I線の概略断面図、図4は、図3の一部部分拡大図である。
【0019】
表面に露出した最上層のトップシート2は、使用時には、着用者の肌に直接触れる部分となる。それ故、トップシート2は、感触が柔らかで、皮膚に刺激を与えない、着用性の優れた材質で形成する必要がある。また、トップシート2は、排泄物を直接受ける部分となるから、尿等の水分に対しても耐力を有する材質で形成されていなければならない。
これらの条件を満足するため、トップシート2は、撥水性を有する材料で形成するのが好ましく、原料コストや加工の容易性を考慮すれば、例えば、エアスルー等のサーマルボンド不織布(ポリプロピレン/ポリエチレンやPET/ポリエチレン)、ポリエチレンフォーム又はウレタンフォームが好ましいと考えられる。また、サーマルボンド等の不織布を用いる場合には、裏面にスパンボンド不織布(ポリプロピレン)などの長繊維不織布を貼り合わせたものが強度上からも好ましい。
【0020】
これらの条件に加え、トップシート2は、尿等の水分を主体とする排泄物のみならず、軟便に含まれる固形分や粘液といった比較的粘性の高い排泄物を、着用者の肌から迅速且つ確実に引き離すことができる機能を有することが望ましい。例えば、トップシート2に軟便の固形分等が付着したままであると、着用者の肌に触れ、不快感を生じさせ、また、肌荒れ等の障害を引き起すためである。上記の機能を付与するため、本発明では、トップシート2に所定の厚みを持たせ、且つ、その面内に厚さ方向に貫通した所定の深さと直径を有する複数個の孔3を分布配置している。このような孔3を設けることにより、軟便のような固形分を含む排泄物や粘液といった粘性の高い排泄物に対する、保持能力及び吸収力を強化し、また、透過性を付与するものである。
【0021】
孔3の深さは、実質的に、トップシート2の厚み(図3、図4の矢印「ウ」)によって決定される。トップシート2にパンチング等によって開けた穴が、そのまま孔3として使用されるからである。実験及び経験から、最適な孔3の深さ、即ち、トップシート2の厚みは、2〜6mmであると考えられる。2mm未満であると軟便等の収納が十分でなくなり、また、6mmを超えると軟便等が透過しにくくなり、トップシート内部に軟便が滞留しやすくなるからである。
【0022】
孔3の直径(図4の矢印「エ」)は、5〜10mm(開口面積19.6〜78.5mm2)に設定する。尿等の水分を主体とする排泄物だけでなく、軟便のように固形分を含む排泄物や粘液といった比較的粘性の高い排泄物も、孔3をスムーズに透過させるように、このように比較的大きな直径が要求される。尚、この孔径は、一度収納された軟便等が飛び出す危険を少なくするものと考えられる。
【0023】
このように、孔3は、それらの直径とトップシート2の厚さ全体にわたる深さとにより、軟便のうちの固形分や粘液等を、保持、吸収するのにも十分な容積をもたらすものと考えられ、また、それらを迅速に透過させるものと考えられる。よって、孔3を形成したトップシート2を用いることにより、軟便の固形分などがトップシート2の表面に付着したまま残るといった従来の問題は解消されることとなる。
【0024】
尚、例えば、上述したサーマルボンド不織布等でトップシート2を形成した場合、孔3は、パンチング加工によって容易に作り出すことができる。よって、低価格で、且つ、安定した品質で、トップシート2を容易に製造することができる。また、これらの孔3は、患者の体重等によって簡単に破壊されてしまうようなものであってはならないが、上記の材質によれば、所定の弾性を持たせることでき、潰れにくい材質となるから、このような要求をも満足する。
【0025】
図4の拡大図によく示されているように、孔3の周縁に傾斜面3を設けて、トップシート2の機能を強化することができる。
例えば、図4の(a)に示すように、トップシート2に形成される孔3において、トップシート2の表側の面5aに隣接する入口周縁に、トップシートの表側の面5aから厚さ方向(図示矢印「ウ」方向)に該孔の径を狭める、例えば円錐形状の傾斜面3aのような傾斜面を設けてもよい。このような傾斜面3aは、排泄された固形分を含む軟便を急速に孔3の中に導き入れるように働き、また、トップシート2と使用者の肌との接触面積を低減させて装着感を向上させるものとなる。
また、図4の(b)に示すように、トップシート2に形成される孔3において、トップシート2の裏側の面5bに隣接する出口周縁に、トップシートの裏側の面5bに向かって孔の径を拡げる、例えば円錐形状の傾斜面3bのような傾斜面を設けてもよい。このような傾斜面3bは、孔3に導かれた軟便が表面方向に逆流するのを防止するように働く。
尚、上述したトップシート2の材質によれば、これらの傾斜面3a、3bは、例えば、孔3の周縁を圧縮することによって簡単に作ることができから、加工コストも安価である。
【0026】
孔3は、図2の例に示すように、均等に分布させてもよいが、図5の変形例に示すように、排泄箇所、例えば吸収性物品の前後方向中間部から後部にわたる領域に集中的に、すなわちパターン状に分布させてもよい。図5は、図2と同様の方法で軟便吸収パッドを示した平面図である。この図に示すように、孔3Aを局部に集中させて、孔数を少なくすることによって、トップシート2Aの強度を増すこともできる。また、孔の形状は、円、楕円等の他、図5に示すように正方形等の矩形とすることもできる。更に、孔径に関しても、図5に示すように、局部については比較的大きな径とし、その他の部分については比較的小さな径に設定してもよい。孔の形状や孔径は、このように、所定の範囲で自由に変更可能である。
【0027】
トップシート2と吸収体6の間に、セカンドシート8や消臭シート10を配置してもよい。
セカンドシート8は、例えば、ホットメルト接着剤を塗布することによって、トップシート2にドット状に(間欠的に)貼り合わされる。セカンドシート8は、例えば、エアースルー等のサーマルボンド不織布(目付20〜50g/m2)によって形成することができ、親水処理が施され、また、セカンドシート8の面内には、トップシート2と同様に、多数の貫通した小孔9が分布形成される。但し、セカンドシート8は、尿や軟便に含まれる水分のみを通過させる働きを有すれば足り、形成される小孔9の直径は、トップシート2のそれより小さく、例えば、1〜4mm程度(図4の矢印「オ」)である。セカンドシート8は、トップシート2の孔3を通り抜けた軟便に含まれる水分を奪うとともに、水分が奪った軟便を下層の吸収体6に急速に導くように作用する。水分を奪われた軟便は、セカンドシート8の表面に付着状態となる。一旦付着した軟便はトップシート2側に容易には逆流しない。よって、セカンドシート8を設けることにより、軟便等に対する保持能力や吸収力が強化されることになる。
尚、消臭シート10には、従来同様、例えば、ゼオライトに銀や銅等の金属イオンを担時した不織布やクレープ紙を用いることができる。
【0028】
吸収体6は、例えば、木材パルプフラッフのような、フラッフのウェブの親水性繊維マトリックスを、公知の高吸水性樹脂(SAP)の粒子と混合して形成することができる。特に図示しないが、吸収体6の表面にエンボスを施してもよい。これらのエンボスは、尿等の拡散をコントロールすると共に、使用者の体型に応じて吸収体6を容易に変形させる。フラッフとしては、木材パルプフラッフの代わりに合成繊維、ポリマー繊維などを使用してもよい。又、木材パルプフラッフとしては、嵩が低く、解繊装置の所要動力(パルプをフラッフ化する際の解繊機の消費電力)が抑えられるトリートメントパルプを用いることが好ましい。
【0029】
バックシート4は、吸収体6内において保持している液体などが下着に漏れないような防水性を有する液不透過性の材料から形成されていればよい。例えば、ポリエチレンフィルムなどの薄いプラスチックフィルムとすることができるが、着用中にカサカサした音がしやすく、柔らかさを付与するよう、バックシート4にマイクロエンボスを施したり、プラスチックフィルムの外側に不織布を貼合わせたクロスライクバックシートを用いることもできる。又、バックシート4については、透湿性のフィルムを用いてムレを低減することが好ましい。更に、バックシート4の外面に、軟便吸収パッド30を下着等に固定する際のずれを防止するずれ止め、例えば、粘着シート18のような固定手段を設けてもよい。
【0030】
立体ギャザーを形成するため、バックシート4の長辺よりも外側に、軟便吸収パッド30の各長手方向に沿って第1の弾性部材14を配置し、更に、各サイドシート13の最も立ち上がる先端部分に、軟便吸収パッド30の各長手方向に沿って第2の弾性部材16を配置する。尚、これら第1弾性部材14と第2弾性部材16としては、エラストマー性ポリマー材料からなるストランド、リボン、ポリウレタン、合成ゴム、天然ゴム等を用いることができるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
第1の弾性部材14は、撥水性シート12によって囲い込まれ、一方、第2の弾性部材16は、撥水性シート12に一体につながるサイドシート13によって囲い込まれる。このような構成とすることにより、撥水性シート12及びサイドシート13は、第1の弾性部材14及び第2の弾性部材16の弾性力によってこれらの間に展張され、撥水性シート12及びサイドシート13の立ち上がり部を立体形成し、小型ながら軟便等のサイド方向への横漏れを有効に防止する立体ギャザーが形成され得る。尚、撥水性シート12とサイドシート13は、バックシート4と同様の材料から形成することができ、撥水性の不織布(目付け17〜20g/m2)から形成してもよい。又、撥水性シート12はバックシート4と別個に取付けてもよいが、バックシート4から延長されて形成されてもよい。更に、サイドシート13は撥水性シート12から延長されて形成されてもよいが、撥水性シート12とは別個に設けて、これに後付けしてもよい。
【実施例】
【0032】
表1

表2

本発明の実施例のモニター結果を市販品による比較例とともに上の表1に示した。以下に詳細を説明する。
【0033】
<実施例1>
基本構造は、図3の構造と同様と考えてよい。全体の寸法は、長さ27cm、幅10.5cmである。トップシート2は、厚さ5mmのエアースルー不織布(45g/m2、ポリプロピレン(PP)/ポリエチレン(PE))と若干の厚み(α)を有するスパンボンド不織布(12g/m2、ポリプロピレン(PP))の貼り合せであって孔径(直径)8mmφの開口を多数設けたもの、セカンドシート8は、親水処理したエアースルー不織布(30g/m2)に孔径(直径)3mmφの開口を多数吸収体上全面に設けたものである。セカンドシート8は、ホットメルト接着剤により、トップシート2にドット状に塗布して貼り合わされている。更に、これら表面材としてのシート2、8の下側に、消臭シート10、吸収体6、バックシート4を積層し、全体として、長さ27cm×幅10.5cmに寸法決めした。厚さ方向に沿って、トップシートに設けた孔3には、周縁を圧縮することによって傾斜面3aが形成されている。更に、このようなパッド本体の両側部に、弾性部材を配した上述の不織布(18g/m2)からなる立体ギャザー13と粘着シート18を付与した。
【0034】
<実施例2>
トップシート2は、厚さ6mmのポリエチレン(PE)フォームであって孔径10×10mmの方形の開口を多数吸収体上全面に設けたもの、セカンドシート8は、実施例1と同様に親水処理したエアースルー不織布(30g/m2)であるが、ここでは孔径(直径)4mmφの開口を設けた。その他の構成については、実施例1と同様である。
【0035】
<実施例3>
実施例3の構成を、図6に、図5と同様の方法で示す。実施例3と実施例1の実質的な相違点は、1)トップシート2Bの厚み、2)開口を設けた領域「カ」、「キ」、「キ’」、3)領域「カ」、「キ」、「キ’」の開口3B、3B’、4B、4B’の寸法、形状、及び配列方法にある。
より詳細には、実施例3のトップシート2Bには、実施例1より薄い、厚さ3mmのエアースルー不織布が用いられている。また、開口を設ける領域は、一辺が参照番号「36」で規定される矩形領域「カ」と、この矩形領域「カ」を長手方向に沿って両側から挟み込む、矩形領域「キ」、「キ’」、すなわち、一辺が参照番号37、37’で規定される領域、の2種類である。
矩形領域「カ」は、トップシート2Bの長手方向中央やや後方の領域として規定されており、孔径(直径)8mmφの開口3Bと、最大孔径8mmのやや縦長の開口3B’の2種類の開口が、長手方向に沿って190mmにわたり複数段に交互に設けられている。一方、矩形領域「キ」、「キ’」には、最大孔径5mmのやや縦長の開口4B、4B’が、長手方向に沿って40mmにわたり複数段に設けられている。
【0036】
<実施例4>
実施例4の基本構成は、実施例3と同様である。故に、便宜上、図6に示す参照番号を用いて説明する。
実施例4と実施例3の実質的な相違点は、1)トップシート(2B)の厚み、2)矩形領域(カ)の長手方向における寸法、3)矩形領域(カ)、(キ)、(キ’)の開口(3B)、(3B’)、(4B)、(4B’)に傾斜面を設けた点にある。
より詳細には、実施例4におけるトップシート(2B)には、実施例3より長い(が実施例1と同じ)、厚さ5mmのエアースルー不織布が用いられている。また、矩形領域(ア)の長手方向における寸法は、実施例3より短く、150mmに設定されている。更に、矩形領域(カ)における開口(3B)、(3B’)による孔の入口周辺には、図4の(a)で示した傾斜面3aが、一方、矩形領域(キ)、(キ’)における開口(4B)、(4B’)による孔の出口周辺には、図4の(b)で示した傾斜面3bが、それぞれ設けられている。
【0037】
<比較例>
市販の吸収性物品を比較例として用いた。特に、全体の寸法、及び、トップシートとセカンドシートの材質及び構成に関して、本願の実施品との相違に注目していただきたい。比較例の全体の大きさは、長さ56cm、幅30cmであり、トップシートは、略一定の厚みを有する厚さ2mm未満のエアースルー材質から成る。トップシートには、孔径4×2mmの長円(最大径4mm、最小径2mmの楕円状のもの)の開口が多数設けられており、セカンドシートにも、これらと同様の大きさ及び形状の開口が多数設けられている。
【0038】
以上3つの対象製品について、5名のモニターにより評価を行った。評価項目は、「装着感」、「肌の汚れ」、「着脱・廃棄(の容易さ)」の3項目とし、評価結果は、◎(非常に良い)、○(良い)、△(普通)、×(悪い)の四段階とした。
【0039】
この結果、上記の表1、2に示す通り、本発明の実施品は、ほぼ全ての項目において良好な結果を得た。実施例2、3における装着感を除けば、全ての項目において、本発明の実施品は市販品を上回る。尚、この実施例2における装着感の評価結果からも、トップシートの厚み、つまり、孔の深さは、2〜6mm程度が好ましいと考えられる。また、実施例1と実施例2の比較により、使用者の肌に直接触れるトップシートについては、エアースルーの方がフォームよりも一般には好ましいと考えられる。さらに実施例3や実施例4より、吸収性物品の前後方向中間部から後部にわたる領域に開口をパターン状に分布させることも好ましいと考えられ、実施例3と実施例4の比較より明らかなように、開口の傾斜面を設けることも有効であると考えられる。
【符号の説明】
【0040】
2 トップシート
3 孔
3a、3b 傾斜面
4 バックシート
6 吸収体
8 セカンドシート
9 孔
10 消臭シート
12 撥水性シート
13 サイドシート
14 第1弾性部材
16 第2弾性部材
18 粘着シート
20 角部
30 吸収性物品(軟便吸収パッド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の肌に接するトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートの間に配置される吸収体とを含む吸収性物品であって、該トップシートは、厚さが2〜6mmであり、該トップシートの厚さ方向に貫通する直径5〜10mmの孔が複数個、該トップシートの面内に分布形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記トップシートと前記吸収体との間に、直径1〜4mmの小孔が面内に分布形成されたセカンドシートが配置されている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記トップシートは、撥水性を有する材料により形成されている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記トップシートは、サーマルボンド不織布、サーマルボンド不織布とスパンボンド不織布との貼り合せ、ポリエチレンフォーム又はウレタンフォームのいずれかにより形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記トップシートに形成される孔には、該トップシートの表側の面に隣接する入口周縁に、該トップシートの表側の面から厚さ方向に該孔の径を狭める傾斜面が設けられている請求項1乃至4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記トップシートに形成される孔には、該トップシートの裏側の面に隣接する出口周縁に、該トップシートの裏側の面に向かって該孔の径を拡げる傾斜面が設けられている請求項1乃至4のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記トップシートの孔は、排泄箇所に集中的に分布している請求項1乃至6のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
使用時の寸法が長さ20〜35cm、幅7〜15cmである請求項1乃至7のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の吸収性物品を用いた軟便吸収パッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−239835(P2011−239835A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112338(P2010−112338)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000183462)日本製紙クレシア株式会社 (112)
【Fターム(参考)】