説明

吸液バンドおよび防錆剤漏出部の保護方法

【課題】車体から漏出する防錆剤を吸収し、かつ着脱の容易な吸液バンドおよびこれを用いた防錆剤漏出部の保護方法を提供する。
【解決手段】吸液バンド10は、ゴム、弦巻バネ、伸長性を有する織物の様な、弾性品伸縮性部材を管状とした伸縮性中空管であり、管の内側に、平均繊維径10μm以下の親油疎水性繊維からなり、目付が300g/m2以下の極細繊維層からなる不織布を装着する。さらに伸縮性部材の片面に、吸液性部材が装着された帯状吸液バンドでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸液バンドに関し、特に車体の水抜き穴等から漏出する防錆剤を吸収し、防錆剤による車の汚れを防止し、また着脱の容易な吸液バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体のドア、フェンダー部の内部下部には、そこに浸入した水を排水するために水抜き穴が形成されている(特許文献1)。
【0003】
これら車体構造の内部は車体外部表面に比べて塗層が少なく、薄いため、経時的に浸入した水などによって錆が発生しやすい。これを防ぐために車体構造の内部に防錆剤を浸透させている。近年防錆性を向上させるために高級脂肪酸エステル、脂肪族炭化水素および炭酸カルシウムなどからなる無溶剤型車体防錆ワックスと呼ばれるような高浸透性防錆剤が用いられてきている。無溶剤型車体防錆ワックスによれば、車体構造の内部の隙間にも防錆剤が浸透するため、優れた防錆効果が期待される。
【0004】
しかし、これら無溶剤型車体防錆ワックスは、乾燥までに約1週間の時間がかかり、また浸透性が高いため、乾燥期間中に車体下部の水抜き穴や鋼板同士の接合面から無溶剤型車体防錆ワックスがもれてしまうことがあった(以下、これら防錆剤が漏出する部分を「防錆剤漏出部」と総称する。)車体製造時にこれらの防錆加工が行われるため、製造ライン上で防錆剤が漏れてしまうという問題が発生した。このため、製造ラインや車体の清掃が必要となる。また、完成車を搬送するキャリアカーにおいても、上部に積載された車体から防錆剤が漏出すると下部に積載された車体を汚染するため、これも清掃が必要となる。
【0005】
防錆剤の漏出を防ぐために、防錆剤漏出部に不織布を当てクリップ止めしている。しかし、不織布の固定にクリップを使用しているため、対応できる部材の形状が制限される。すなわち、小さな形状の部分に対しては小型のクリップを用い、大きな形状の部分に対しては大型のクリップを用いる必要があり、数種類のクリップを準備する必要がある。さらに、クリップの装着時、脱離時に車体に傷を付ける危険性もあり、改善が要望されていた。
【特許文献1】特開平8−142673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決し、車体から漏出する防錆剤を吸収し、かつ着脱の容易な吸液バンドおよびこれを用いた防錆剤漏出部の保護方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ところで、上記の防錆剤の漏出は、多くの場合、車体下部のサイドシル部に設けられたジャッキアップ部において顕著に見られる(図1参照)。図1に示すように、ジャッキアップ部JはL字型の金属部材Aからなり、金属部材Aには強度を付与するためのエンボス部Bが形成されている。ジャッキアップ部Jは、車体下部のサイドシル部Sから車体下方に向けて延在する。ジャッキアップ部Jは、その上部を覆うようサイドシル部Sに接合されている。ジャッキアップ部Jのエンボス部Bの上部はサイドシル部Sに接合されるが、エンボス間には車体構造内部に連通する空隙Cが形成される。また、エンボス部Bが形成される結果、ジャッキアップ部Jとサイドシル部Sとの間の接合面は必ずしも密着しているわけではなく、エンボス部Bの近傍に若干の空隙Dが存在することがある。空隙CおよびDは、水抜き穴として機能するが、同時に車体構造内部に連通する「防錆剤漏出部」でもある。
【0008】
このように、防錆剤の漏出は、ジャッキアップ部Jとサイドシル部Sとの間の接合面において最も顕著に見られる。
【0009】
本発明者らは上記のような実情に鑑み、鋭意検討したところ、ジャッキアップ部JにおけるL字型金属部材Aの存在に着目し、防錆剤を吸収する部材を、L字型金属部材Aを利用して設置することを着想するに至った。
【0010】
すなわち、上記課題の解決を目的とした本発明は、以下の事項を要旨として含む。
【0011】
(1)伸縮性部材の少なくとも一部に、吸液性部材が装着されてなる吸液バンド。
【0012】
(2)前記伸縮性部材がメッシュ状の伸縮性中空管であり、該中空管の内部に吸液性部材が充填されてなる(1)に記載の吸液バンド。
【0013】
(3)全体として環状である(1)または(2)に記載の吸液バンド。
【0014】
(4)環状の伸縮性部材の内周部に、吸液性部材が装着されてなる(1)に記載の吸液バンド。
【0015】
(5)帯状の伸縮性部材の両端部に、帯状の吸液性部材の両端部が接合されてなる(1)に記載の吸液バンド。
【0016】
(6)取手を有する(1)〜(5)の何れかに記載の吸液バンド。
【0017】
(7)全体として帯状であり、両端部に係止部材を有する(1)または(2)に記載の吸液バンド。
【0018】
(8)取手を有する(7)に記載の吸液バンド。
【0019】
(9)前記吸液性部材が、吸油性部材である(1)〜(8)の何れかに記載の吸液バンド。
【0020】
(10)前記吸油性部材が、平均繊維径10μm以下の親油疎水性繊維からなり、目付け300g/m以下の極細繊維層を有する不織布からなる(9)に記載の吸液バンド。
【0021】
(11)上記(9)または(10)に記載の吸液バンドを、車体の防錆剤漏出部に、吸液性部材が当接するように着脱自在に設置することを特徴とする防錆剤漏出部の保護方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、車体から漏出する防錆剤を吸収し、かつ着脱の容易な吸液バンドが提供される。本発明の吸液バンドは、伸縮性部材を利用しているため、車体のジャッキアップ部等に容易に設置できる。また、車体等の納品時には、吸液バンドを引っ張ることで、容易に取り外すことができ、車体等に損傷を与えることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について図面を参照しながら、さらに具体的に説明する。
【0024】
図面に示すように、本発明に係る吸液バンド10等は、伸縮性部材1の少なくとも一部に、吸液性部材2が装着されてなることを特徴としている。
【0025】
伸縮性部材1は、所定の引張力により伸長し、引張力を除いた後には、元の形状に復帰する性質を有する部材であれば特に限定はされず、様々な弾性品を利用できる。このような弾性品は、たとえば、ゴム、弦巻バネ、伸長性を有する織物(ニット地等)であってもよい。また、ゴムの場合には、ゴムと糸とを織った織りゴム(丸ゴム)、ゴムと糸とを編んだ平ゴム(コールゴム)などであってもよい。また、繊維状ゴムや合成樹脂繊維、糸、あるいはこれらの混合物をメッシュ状に編んだ伸縮性の中空管1Aであってもよい。さらにまた、伸縮性中空管1Aは、弾性のある合成樹脂からなるメッシュ状のチューブであってもよい。また、弦巻バネの場合には、金属製のバネであってもよく、合成樹脂製のバネでもよい。バネを使用する場合には、吸液バンドが取り付けられる車体等の損傷を防止するため、バネを布や樹脂フィルムなどで被覆してもよい。バネは伸縮性中空管1Aとして使用することもできる。
【0026】
吸液性部材2は、水や油脂などの所定の液体を吸収しうる部材であれば特に限定はされず、さまざまな吸収材を利用できる。本発明の吸液バンドを、水または水系塗料の漏出を防止するために使用する場合には、吸収材としては、吸水性ポリマーや水との親和性の高い不織布が好ましく用いられる。また、本発明の吸液バンドを、油脂、油性塗料または油性防錆剤の漏出を防止するために使用する場合には、吸収材としては、吸油性ポリマーや油脂との親和性の高い不織布が好ましく用いられる。
【0027】
防錆剤、特に前述したような、高級脂肪酸エステル、脂肪族炭化水素および炭酸カルシウムなどからなる無溶剤型車体防錆ワックスと呼ばれるような高浸透性防錆剤の吸収を目的とした場合、吸収材として、平均繊維径10μm以下の親油疎水性繊維からなり、目付け300g/m以下の極細繊維層を有する不織布が好ましく用いられる。この不織布は円筒状であってもシート状であってもよい。
【0028】
上記不織布を構成する極細繊維層は、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−ブテン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ4−メチルペンテン−1等の親油疎水性を示す熱可塑性重合体からなることが好ましい。親油疎水性繊維の平均繊維径は、10μm以下、好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは2〜8μm、特に好ましくは3〜5μmである。親油疎水性繊維の平均繊維径が10μmを超えて太くなり過ぎると毛細管現象による吸収速度が低下する傾向が顕著になり、一方平均繊維径が2μm未満では、吸収能力、油保持性は向上するが、極細繊維層が剥離し易くなり、破れたりはがれたりして強度、使い易さが低下するおそれがある。なお、平均繊維径は、極細繊維層表面の200ないし1000倍の電子顕微鏡写真を撮影し、任意に30点以上の繊維径を、ノギスを用いて測定し、平均値を求める。
【0029】
不織布を構成する極細繊維層は、上記熱可塑性重合体からなる極細繊維をメルトブロー法で製造し、シート化して得られる。ここで、メルトブロー法とは、熱可塑性重合体を一定温度および圧力で、規定の直径および長さのオリフィスから押し出して、高温エアーで飛散させこれを捕集面で受けとめて、極細繊維からなる不織布を製造する方法である。極細繊維製造方法として、メルトブロー法のほかに、トウ開繊法、分割繊維不織布製造法等が挙げられるが、メルトブロー法が繊維径の細化、均一化が容易に図られるため好ましい。
【0030】
不織布を構成する極細繊維層の目付量は300g/m以下、好ましくは150〜250g/mである。目付量がこの範囲であると極細繊維層を含む不織布の全体の厚みが増大しすぎるのを防止でき、取り扱いが容易になると共に、不織布の強度が向上し、使用時に破損を防止でき、かつ不織布シートの柔軟性を損なわない。なお、目付(weight)は、織布、不織布などの繊維成形体の単位面積あたりの重量を意味する。
【0031】
不織布を構成する極細繊維層の厚みは、特に限定はされないが、取り扱い性、強度および柔軟性などの観点から、好ましくは0.5〜7mm、さらに好ましくは1〜5mmである。
【0032】
本発明で用いられる不織布は上述した極細繊維層のみからなる物でも良いが、該極細繊維層の厚さと不織布全体の厚さを適正に保ったまま、不織布の強度を向上し、使用時の破損を防止するために、該極細繊維層の片面もしくは両面に、補強層を設けてもよい。補強層の材質は特に限定はされず、各種の不織布、織布が用いられる。なお、極細繊維層の両面に補強層を設ける場合には、極細繊維層に防錆剤を吸収させるために、少なくとも片面(後述する部材に当接する面)の補強層は防錆剤を透過する性質を有する。
【0033】
このような補強層としては、連続長繊維から構成された繊維層が特に好ましい(以下、「補強繊維層」と記載する)。なお、補強繊維層は、不織布の柔軟性を損なうことがないようにするために、比較的柔軟な繊維から形成され、また厚みも比較的薄く、好ましくは0.01〜1mm、さらに好ましくは0.05〜0.8mmである。
【0034】
好適な補強繊維層は、連続長繊維から構成された不織布層であり、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−ブテン共重合体、ポリ4−メチルペンテン−1などのポリオレフィン系の他、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性繊維からなる平均繊維径が15〜40μmの層である。また、この繊維は2種以上の異なる樹脂からなるサイドバイサイド型やシースコア型の複合繊維でもよい。連続長繊維からなる不織布の代表的な製法は、スパンボンド法で紡糸し、熱エンボス装置で部分的に熱融着することにより交絡させるものであるが、熱風や接着剤処理によってボンディングしたものでも良く、製法や交絡方法は特に限定されない。繊維径は、15〜40μmが好ましく、20〜30μmがより好ましい。この範囲にすることによって不織布の強度を維持して極細繊維層に対する保護の効果が高くなるとともに、極細繊維層からの繊維くずや毛羽立ちを防止するカバー効果が得られる。
【0035】
シート状の不織布は、上記の極細繊維層と補強層とを積層し、一体化して得られる。一体化する手段としては、ニードルパンチ、パウダーボンディング、ステッチボンディング、超音波法、ヒートエンボス、ウォータジェット等が用いられる。また円筒状の不織布は、上記のシート状不織布を捲回して得られる。
【0036】
本発明で使用する不織布のA重油吸着量は、好ましくは12g/g以上、さらに好ましくは14〜20g/gであり、B重油吸着量は、好ましくは14g/g以上、さらに好ましくは16〜22g/gである。重油吸着量は、国土交通省型式承認試験基準に準拠し、10cm×10cmに切断した不織布シートの試験片を20°C±1°CのA重油、B重油の油面に浮かべ5分間静置した後、これをふるい目の大きさが17mmのメッシュ状の直径1mmの針金で編んだ金網上に5分間静置し試験片の重量を測定し、試験片1gあたりの吸着量を算出する。
【0037】
不織布が上記のような吸着性を有すると、昨今利用が急増している高浸透性防錆剤を確実、迅速に吸収できる。上記のような不織布の詳細は、たとえば特許第3710278号公報等に記載されている。
【0038】
本発明の吸液バンドは、上記伸縮性部材1の少なくとも一部に、吸液性部材2が装着されてなる。吸液性部材2の装着形態は特に限定はされず、吸液性部材2が伸縮性部材1に安定して保持され、かつ吸液バンドを車体の防錆剤漏出部に設置した際に、吸液性部材2の少なくとも一部が防錆剤漏出部に当接するような形態であればよい。たとえば、吸液性部材2は、伸縮性部材1に接合されていてもよく、またメッシュ状の伸縮性中空管1Aに充填されていてもよい。
【0039】
本発明の吸液バンドについて、図面を参照しながら、その具体的態様をさらに詳細に説明する。
【0040】
第1の具体的態様に係る吸液バンドは、吸液性部材2が充填されたメッシュ状伸縮性中空管1Aを有し、全体として環状の吸液バンドである。代表的には、図2に示すように、吸液性部材2が充填されたメッシュ状伸縮性中空管1Aの両端を接合し、環状にした吸液バンド10が挙げられる。なお、図において「1A(2)」は、吸液性部材2が充填された伸縮性中空管1Aを示す。図2は、吸液バンド10の斜視図であり、図3は図2のX−X線断面図である。吸液性部材2は、上記のようにシート状であっても、また円筒状であってもよい。伸縮性中空管1Aの両端における接合は、熱融着や接着剤による接合であってもよく、両端を金具などでかしめてもよく、さらに単なる結び目であってもよい。この接合部は、吸液バンド10の外方向に延在する取手3としても機能し、吸着バンド10を着脱する際の起点となる。すなわち、吸着バンド10に取手3を設けることで、吸着バンド10の着脱が容易になる。さらに、取手3を接合部以外の箇所に別途設けても良い。また、取手3は一箇所のみに設けられていても良く、また二箇所以上に設けても良い。
【0041】
第1の具体的態様に係る吸液バンド10の変形例(環状吸液バンド11)を図4に示す。図4は、吸液性部材2が充填されたメッシュ状伸縮性中空管1Aを二本用い、これらを両端部で接合した形態を示す。この環状吸液バンド11は、全体として環状であり、対向する二箇所に取手3を有する。
【0042】
さらに、第1の具体的態様に係る吸液バンド10の他の変形例(環状吸液バンド12)を図5に示す。図5は、吸液性部材2が充填されたメッシュ状伸縮性中空管1Aを一本用い、また一本の伸縮性部材1を用い、これらを両端部で接合した形態を示す。この環状吸液バンド12は、全体として環状であり、対向する二箇所に取手3を有する。
【0043】
上記のような第1の態様およびその変形例によれば、車体等の防錆剤漏出部に吸液バンドを設置すると、伸縮性中空管1Aのメッシュ部の空隙を通して、防錆剤が吸液性部材2に吸収されるため、防錆剤の漏出を防止でき、防錆剤漏出部が保護される。また、伸縮性を有し、環状であることから、ジャッキアップJのL字型金属部材Aに容易に設置でき、さらに取り外しも容易である。すなわち、設置時には環状吸液バンド10を若干引き延ばし、L字型金属部材Aの上部に、防錆剤漏出部と伸縮性中空管1Aとが当接するように位置合わせを行う。ここで引き延ばしの力を解除すると、伸縮性部材1および伸縮性中空管1Aが縮むため、図15に示すように、L字型金属部材Aの上部に環状吸液バンドが密着して固定される。この状態で車体の搬送等を行っても、漏出する防錆剤は、伸縮性中空管1Aのメッシュ部を通して、吸液性部材2に吸収される。一方、納車時には、環状吸液バンド10を若干引き延ばし、L字型金属部材Aから取り外せばよい。
【0044】
本発明の吸液バンドの第2の具体的態様20は、図6に示すように、環状の伸縮性部材1の内周部に、吸液性部材2が装着されてなる。
【0045】
環状の伸縮性部材1は、輪ゴムのような形状であってもよく、また一本の伸縮性部材1の両端を互いに接合したものであってもよく、さらに二本の伸縮性部材1の両端同士を接合したものであってもよい。伸縮性部材1の接合は、上記と同様に、熱融着や接着剤による接合であってもよく、両端を金具などでかしめてもよく、さらに単なる結び目であってもよい。この接合部は、取手3としての機能を有するが、接合部以外の箇所に別途取手3を設けても良い。
【0046】
吸液性部材2は、上記の環状の伸縮性部材1の内周部に装着される。吸液性部材2の装着は、たとえば、吸液性部材2の両端部を一定の距離を離して伸縮性部材1の内周部に接合して行う。また吸液性部材2を安定して保持するために、吸液性部材2の略中央部においても、伸縮性部材1との接合を行うことが好ましい。吸液性部材2と伸縮性部材1との接合は、熱融着や接着剤による接合であってもよく、金具などでかしめてもよい。
【0047】
吸液性部材2を伸縮性部材1に接合する際には、伸縮性部材1の伸びを阻害しないように、吸液性部材2をある程度長めに接合する。すなわち、吸液性部材2の伸び性は、伸縮性部材1の伸び性よりも低いため、両者を同一の長さで接合すると、吸液バンド20を引き延ばしても、吸液性部材2が伸びないため、吸液バンド20の伸び量が不十分になり、吸液バンドを所望の箇所に設置できない場合がある。このため、図6に示すように、吸液性部材2をある程度長めにして、吸液性部材2を波打たせて伸縮性部材1に接合する。このように吸液性部材2を伸縮性部材1に接合すると、吸液性部材2の余剰部分(あそび)が伸びしろとなり、吸液バンド20を十分に引き延ばせ、吸液バンドを所望の箇所に容易に設置できる。
【0048】
第2の具体的態様に係る吸液バンド20の具体的使用方法は、上記第1の態様と同様である。
【0049】
さらに、第3の具体的態様に係る吸液バンド30は、図7に示すように、帯状の伸縮性部材1の両端部に、帯状の吸液性部材2の両端部が接合されてなる。伸縮性部材1と吸液性部材2との接合は、熱融着や接着剤による接合であってもよく、両端を金具などでかしめてもよく、さらに単なる結び目であってもよい。この接合部は、取手3としての機能を有するが、接合部以外の箇所に別途取手3を設けても良い。
【0050】
第3の具体的態様に係る吸液バンド30の具体的使用方法は、上記第1の態様と同様である。
【0051】
上記第1〜第3の態様に係る環状吸液バンドの大きさは特に限定はされず、所望の部位に安定して設置できる大きさであればよい。たとえば、吸液バンドをジャッキアップ部JのL字型金属部材Aに設置する際には、吸液バンドの内周長さが、L字型金属部材Aの上部の外周長さよりも、やや短めになるように、吸液バンドの大きさを調整する。このような大きさの吸液バンドであれば、吸液バンドを若干引き延ばして、L字型金属部材Aの上部に設置すると、吸液バンドの収縮力により、吸液バンドが密着して固定される。また、納車時には、環状吸液バンド10を若干引き延ばすことで、容易に取り外すことができる。
【0052】
以上、本発明の吸液バンドが環状の場合を例にとり説明したが、吸液バンドが所望の部分に安定して設置できる限り、吸液バンドの形状は特に限定はされない。
【0053】
たとえば、全体として帯状の吸液バンドであっても、その両端部に係止部材を有する構造とすることで、吸液バンドを所望の部分に設置できる場合がある。
【0054】
帯状の吸液バンドは、図8に示すように、伸縮性部材1の片面に、吸液性部材2が装着されてなる帯状吸液バンドであってもよく、また図9に示すように、メッシュ状の伸縮性中空管1Aの内部に吸液性部材2が充填されてなる帯状吸液バンドであってもよい。
【0055】
上記の帯状吸液バンドの両端に設けられる係止部材4は、特に限定はされず、たとえば、フック4Aであってもよく、リング4Bであってもよく、また吸液バンドの端部に穿孔された貫通孔4Cであってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
【0056】
以下では、吸液バンドが、図9に示す構造である場合について図面を参照して説明するが、吸液バンドは図8に示す構造であっても同様である。
【0057】
第4の具体的態様に係る吸液バンド40は、図10に示すように、両端部にフック4Aを有する。フック4Aの大きさは、ジャッキアップ部JのL字型金属部材Aに設置できる大きさであればよい。また、図示はしていないが、取手3を別途形成してもよい。一方のフック4Aを、金属部材Aの端部に引っ掛け、吸液バンド40を引き延ばして、他方のフック4Aを金属部材Aの他端に引っ掛けることで、吸液バンド40を金属部材Aに設置できる。
【0058】
さらに、吸液バンドの設置部分の形状が許せば、係止部材4は、リング4Bであってもよく、また吸液バンドの端部に穿孔された貫通孔4Cであってもよい。この場合、吸液バンドの設置部分には、リング4Bや貫通孔4Cを引っ掛けることができる突起等が形成されている必要がある。
【0059】
すなわち、第5の具体的態様に係る吸液バンド50は、図11に示すように、両端部にリング4Bを有する。図示はしていないが、取手3を別途形成してもよい。一方のリング4Bを、設置部分に形成されている突起に引っ掛け、吸液バンド50を引き延ばして、他方のリング4Bを設置部分に形成されている他の突起に引っ掛けることで、吸液バンド50を所定の部分に設置できる。リング4Bは、たとえばゴムなどからなることが好ましい。
【0060】
第6の具体的態様に係る吸液バンド60は、図12に示すように、両端部に穿孔された貫通孔4Cを有する。図示はしていないが、取手3を別途形成してもよい。一方の貫通孔4Cを、設置部分に形成されている突起に引っ掛け、吸液バンド60を引き延ばして、他方の貫通孔4Cを設置部分に形成されている他の突起に引っ掛けることで、吸液バンド60を所定の部分に設置できる。
【0061】
さらにまた、上記においては、吸液バンドの設置部分の形状にあわせて、フック4Aとリング4Bとを併用してもよく、フック4Aと貫通孔4Cとを併用してもよく、またリング4Bと貫通孔4Cとを併用してもよい。すなわち、吸液バンドの一端にフック4Aを形成し、他端にリング4Bを形成してもよい。
【0062】
また、吸液バンドを金属部材Aに捲き回して設置する場合には、係止部材4は、図13に示すように、フック4Aとフック止め4Dとの組み合わせでもよく(第7の態様、吸液バンド70)、また図14に示すように、貫通孔4Cとこれに嵌合する突起4Eとの組み合わせであっても良い(第8の態様、吸液バンド80)。この場合でも、上記と同様に、取手3を別途形成してもよい。
【0063】
以上、本発明の吸液バンドの具体的態様を説明したが、本発明は上記の具体的態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形例を含む。たとえば、上記の説明では、車体のジャッキアップ部に取り付け、防錆剤漏出部を保護する場合を例にとり説明したが、本発明の吸液バンドは、車体以外にも適用することができ、また吸液性部材を適宜に選択することで、防錆剤以外の塗料等の漏出を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】車体下部のジャッキアップ部の概略を示す斜視図
【図2】本発明の第1の態様に係る吸液バンドを示す概略図
【図3】図2のX−X線断面図
【図4】本発明の第1の態様の変形例を示す概略図
【図5】本発明の第1の態様の他の変形例を示す概略図
【図6】本発明の第2の態様に係る吸液バンドを示す概略図
【図7】本発明の第3の態様に係る吸液バンドを示す概略図
【図8】帯状吸液バンドの一例を示す概略図
【図9】帯状吸液バンドの他の一例を示す概略図
【図10】本発明の第4の態様に係る吸液バンドを示す概略図
【図11】本発明の第5の態様に係る吸液バンドを示す概略図
【図12】本発明の第6の態様に係る吸液バンドを示す概略図
【図13】本発明の第7の態様に係る吸液バンドを示す概略図
【図14】本発明の第8の態様に係る吸液バンドを示す概略図
【図15】本発明の吸液バンドの設置例を示す概略図
【符号の説明】
【0065】
1・・・伸縮性基材
1A・・・メッシュ状伸縮性中空管
2・・・吸液性部材
1A(2)・・・吸液性部材が充填されたメッシュ状伸縮性中空管
3・・・取手
4・・・係止部材
4A・・・フック
4B・・・リング
4C・・・貫通孔
4D・・・フック止め
4E・・・突起
10,11,12,20,30,40,50,60,70、80・・・吸液バンド
A・・・L字型金属部材
B・・・エンボス部
C・・・空隙(水抜き穴、防錆剤漏出部)
D・・・空隙(防錆剤漏出部)
J・・・ジャッキアップ部
S・・・サイドシル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性部材の少なくとも一部に、吸液性部材が装着されてなる吸液バンド。
【請求項2】
前記伸縮性部材がメッシュ状の伸縮性中空管であり、該中空管の内部に吸液性部材が充填されてなる請求項1に記載の吸液バンド。
【請求項3】
全体として環状である請求項1または2に記載の吸液バンド。
【請求項4】
環状の伸縮性部材の内周部に、吸液性部材が装着されてなる請求項1に記載の吸液バンド。
【請求項5】
帯状の伸縮性部材の両端部に、帯状の吸液性部材の両端部が接合されてなる請求項1に記載の吸液バンド。
【請求項6】
取手を有する請求項1〜5の何れかに記載の吸液バンド。
【請求項7】
全体として帯状であり、両端部に係止部材を有する請求項1または2に記載の吸液バンド。
【請求項8】
取手を有する請求項7に記載の吸液バンド。
【請求項9】
前記吸液性部材が、吸油性部材である請求項1〜8の何れかに記載の吸液バンド。
【請求項10】
前記吸油性部材が、平均繊維径10μm以下の親油疎水性繊維からなり、目付け300g/m以下の極細繊維層を有する不織布からなる請求項9に記載の吸液バンド。
【請求項11】
請求項9または10に記載の吸液バンドを、車体の防錆剤漏出部に、吸液性部材が当接するように着脱自在に設置することを特徴とする防錆剤漏出部の保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−116644(P2010−116644A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290801(P2008−290801)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】