説明

吸湿緩衝材

【課題】乾燥剤が直に錠剤に当たらないように被包し、しかも、被包した部材の作用により乾燥剤が容器(瓶)中の湿気を徐々に吸収するようにした湿緩衝材を提供する。
【解決手段】本願吸湿緩衝材1は、円盤状に梱包された乾燥剤2を、それより径大にして素材自体が通気力を備えた2つのシート部材3a、3bにより被包してなり、少なくとも一方のシート部材を高発泡スポンジ体にし、乾燥剤が錠剤に直に当たらないように被包するとともに乾燥剤による錠剤からの湿気の吸収を徐々に行い得るようにし、緩衝効果と吸湿効果の両機能が発揮できるように構成している。また、請求項2記載の吸湿緩衝剤は、前記高発泡スポンジ体に、前記乾燥剤の被包空間に通じる1個以上の穴を備え、乾燥剤による湿気の吸収力を、錠剤の種類に合わせて調整できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓶などの容器に収容した錠剤(素錠を含む)が、その移送中に割れたり傷付いたりすることを防止するとともに、容器中の湿気を吸収できるようにした吸湿緩衝材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、瓶などの容器中に収容して販売される錠剤(特に素錠)は、製薬会社から医者や患者など需要者の手元に渡るまでの移送中に割れたり傷付いたり、また、瓶中の湿気を吸ってしまうことがあり、見た目の形態を損なわすだけでなく、薬効を阻害することとなっていた。このため、錠剤の割れや湿気の吸収を防止するための技術として特開平11−56965号公報(緩衝マット)が公開されている。この技術は、円形の合成樹脂板の外周に、中心に向けて多数の切込みを設け、その切込み間を緩衝片とし、合成樹脂板の中心部に円盤状に梱包された乾燥剤を取り付けた緩衝マットを、錠剤瓶の中底に敷いて用いるようにしたものである。
【特許文献1】特開平11−56965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記文献の緩衝マットは、合成樹脂板の中心部に乾燥剤がむき出しであったため、錠剤瓶の中底に敷いて用いたときに、瓶中の湿気を一気に吸収してしまい、錠剤の種類によっては、徐々に吸収する方が良いものもあって問題であった上に、むき出しの乾燥材は乾燥剤成分を固めて透湿紙などで円盤状に梱包してなるもので、表面が硬く、これに瓶中の錠剤が直に当たっていると、移送中の振動により割れたり表面に傷が付いて形態を悪くしたり、薬効を阻害させることも考えられていた。
【0004】
本発明は、上記の種々の問題点を一挙に解決するためのもので、その目的とするところは、乾燥剤が直に錠剤に当たらないように被包し、しかも、被包した部材の作用により乾燥剤が容器(瓶)中の湿気を徐々に吸収できる湿緩衝材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る吸湿緩衝材は、円盤状に梱包された乾燥剤を、それより径大にして素材自体が通気力を備えた2つのシート部材により被包してなり、少なくとも一方のシート部材を高発泡スポンジ体にしたことを特徴とし、錠剤からの湿気の吸収を徐々に行えるようにするとともに、乾燥剤がむき出しにならないようにして錠剤に対する緩衝効果を高め得るように構成した。
【0006】
また、請求項2に記載の発明に係る吸湿緩衝材は、前記高発泡スポンジ体に、前記乾燥剤の被包空間に通じる1個以上の穴を備えたことを特徴とし、穴のないスポンジ体がはじめからもっている通気力及び1個以上の穴をあけたときの湿気の吸収力を、錠剤の種類に合わせて決定できるように構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明(請求項1)によれば、乾燥剤が錠剤に直に当たらないように被包し、乾燥剤による錠剤からの湿気の吸収を徐々に行い得るようにしたもので、緩衝効果と吸湿効果の両機能を同時に発揮できるという優れた効果を奏するものである。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記高発泡スポンジ体に、前記乾燥剤の被包空間に通じる1個以上の穴を備え、乾燥剤による湿気の吸収力を、錠剤の種類に合わせて調整できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の最良の実施形態を添付した図面に基づいて説明する。図1は本願吸湿緩衝材の分解斜視図、図2は2つのシート部材の態様を示す断面図で、(a)は両方スポンジ体、(b)はスポンジ体と不織布の場合、図3は要緩衝面のスポンジ体の穴数を示す断面図で、(a)は2個、(b)は4個の場合、図4は本願吸湿緩衝材の使用状態を示す包装容器の断面図、図5は本願吸湿緩衝材及びむき出し乾燥材の飽和吸着量に対する吸湿率を示す表、図6は本願吸湿緩衝材及びむき出し乾燥材の乾燥スピードとして捉えたグラフである。
【0010】
本願吸湿緩衝材1は、円盤状に梱包された乾燥剤2をその径より径大にして素材自体が通気力を備えた2つのシート部材3a、3bにより挟み、その周縁4を糊着或いは熱溶着することにより完全に被包してなる。該シード部材3a、3bのうち、少なくとも一方は高発泡スポンジ体にて構成されている。これは乾燥剤2が、その乾燥剤成分(例えば、シリカゲル)を固めて透湿紙などで包んでなり、表面が硬くなるために、錠剤(或いは素錠を含む)が接する面、すなわち、要緩衝面(容器の中底に敷くときはその上面、容器の口側に充填するときはその下面)を錠剤に柔らかく当たるようにしている。
【0011】
前記高発泡スポンジ体は、クッション性に優れるとともに、素材自体が通気力を備えている。したがって、望ましくは、図2(a)の如く、両方共に高発泡スポンジ体Sとし、表裏を選ばないで使用できるようにすればよいが、図2(b)の如く、緩衝面となる面の方を高発泡スポンジ体Sとし、他方を不織布(通気性はもつがスポンジのようなクッション性を持たない素材)S′としても良い。勿論、不織布には紙を含む。
【0012】
前記高発泡スポンジ体Sは、発泡倍率を30倍以上(本実施例では67倍)で発泡させている。高発泡の場合には、たとえ独立気泡であっても素材自体が通気力を備えている。この通気力は、図3の如く、前記乾燥剤2の被包空間5に通じる1個以上の穴6を設けることにより、乾燥剤2の吸湿速度を高速化することとなる。
【0013】
前記穴6は、図3(a)の場合には1個、図3(b)の場合には5個設けている。該穴6の径を大きくするか個数を増やすことにより乾燥剤2の吸湿速度の高速化がより進む。前記穴6は緩衝面として使う側のスポンジ体Sにあればよいが、必ずしも緩衝面には限らない。
【0014】
上記本願吸湿緩衝材1は、例えば、図4に示す如く、内径45.5mm、高さ40mmの胴部がズンドウ型のガラス瓶7内に詰められ、該ガラス瓶7の上部に設けたネジ付き頸部に金属製の蓋8がネジ止めして販売される。なお、上記本願吸湿緩衝材1は、瓶の中底のみならず、錠剤の上面に、瓶口部から要緩衝面を下向きに装填して使用したり、瓶の中底と錠剤の上面の双方に使用する場合もある。
【0015】
次に、本願吸湿緩衝材の性能試験について述べる。
シリカゲルを円盤状に固めて透湿紙で包んでなる乾燥剤を、これより大きい径に打ち抜いた4mm厚(以下「4t」という。)、又は、2mm厚(以下「2t」という。)のポリエチレン高発泡シート(気泡率67%)の層間に被包し、周囲を熱溶着で接着して本願吸湿緩衝材を得た。
【0016】
上記本願吸湿緩衝材は、4t+4tの穴なしのもの「サンプル1」と、4t+4tの2Φの穴を1個あけたもの「サンプル2」と、4t+4tの2Φの穴を5個あけたもの「サンプル3」と、4t+2tの穴なしのもの「サンプル4」と、4t+2tの2Φの穴を1個あけたもの「サンプル5」とに分けた。なお、ポリエチレン高発泡シートで被包しない乾燥剤むき出しのものを「サンプル6」とした。
【0017】
上記サンプル1〜6を、環境:気温=25°C、相対湿度=90%の室内に放置し、初期重量からの1日毎の重量増加を測定し、下記計算式で初期重量に対する重量増加率=吸湿率を、24時間(1日)毎に14日目まで測定した。この測定結果は、飽和吸着量に対する何%の能力を消費したかを図5の表に示している。また、消費までの時間を乾燥スピードとして捉えて図6のグラフに示している。
記 (変化重量−初期重量)÷初期重量=重量変化率
【0018】
上記図5及び図6によれば、乾燥剤むき出しの「サンプル6」では、1日後に23.2%となり、2日後に22.6%、その後、ほぼ横這いに推移した。これに対し、「サンプル1」では、1日後に1.5%、2日後に3.1%、3日後に4.5%、4日後に5.8%、7日後に9.3%、8日後に10.3%の如く徐々に数値を上げ、14日後に15.1%となった。また、「サンプル2」では、1日後に8.0%、2日後に13.8%、3日後に18.6%、その後、ほぼ横這いに推移した。さらに、「サンプル3」では、1日後に21.4%、2日後に21.8%、その後、ほぼ横這いに推移した。これは乾燥剤むき出しの「サンプル6」より低いが接近した数値になっている。さらに、「サンプル4」では、1日後に2.5%、2日後に4.6%、3日後に6.7%、4日後に8.6%、7日後に13.2%、8日後に14.4%の如く徐々に数値を上げ、14日後に17.7%となった。さらに、「サンプル5」では、1日後に14.1%、2日後に16.8%、3日後に17.6%、その後、ほぼ横這いに推移していることが判る。
【0019】
このように、穴なしの「サンプル1」及び「サンプル4」は、これを上記ガラス瓶の中底に敷いたときは、瓶内を徐々に吸湿して行くもので、急激な乾燥の必要がないソフトカプセル錠に適している。また、2Φの穴(1個)をあけた「サンプル2」及び「サンプル5」は、適度な乾燥スピードを必要とするコーティング錠に適している。さらに、2Φの穴(5個)をあけた「サンプル3」は、乾燥スピードが必要なOD錠に適している。乾燥材むき出しの「サンプル6」吸湿能力については「サンプル3」とほぼ同等であるが、乾燥剤がスポンジ体で保護されていない点で錠剤の割れの不安がある。
【0020】
次いで、本願吸湿緩衝材である「サンプル1」〜「サンプル5」と、乾燥剤むき出しの「サンプル6」とを、上記ガラス瓶7の中底に敷き、OD錠を50個詰め、移送時の振動を想定して次の振動試験を行った。
(1)振動方向:上下、左右、前後方向の合成振動。
(2)振動加速度:1.5G。
(3)振動数: 10〜50Hz(毎分1往復)。
(4)加振時間: 20分間。
上記振動試験の結果、「サンプル1」〜「サンプル5」を敷いた瓶内のOD錠には、表面の傷を含め割れは、全くなかったが、「サンプル6」では錠剤の割れが3個、表面の傷が15個見つかった。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本願吸湿緩衝材は、包装容器(例えば瓶)中において、収容した錠剤(素錠を含む)の割れからの保護と、湿気の吸収とを同時に達成できるもので、薬(錠剤)のみならず、精密部品の包装や、食品の包装などにも高い性能を発揮できるきるもので、産業上の利用可能性は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願吸湿緩衝材の分解斜視図である。
【図2】シート部材の断面図で、(a)両方スポンジ体、(b)スポンジ体と不織布である。
【図3】スポンジ体の穴数を示す断面図で、(a)1個、(b)は4個の場合である。
【図4】本願吸湿緩衝材の使用状態を示す包装容器の断面図である。
【図5】本願吸湿緩衝材及びむき出し乾燥材の飽和吸着量に対する吸湿率を示す表である。
【図6】本願吸湿緩衝材及びむき出し乾燥材の乾燥スピードとして捉えたグラフである。
【符号の説明】
【0023】
1 本願吸湿緩衝材
2 乾燥剤
3a、3b シート部材
4 周縁
5 被包空間
6 穴
7 ガラス瓶
8 蓋
S 高発泡スポンジ体
S′ 不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状に梱包された乾燥剤を、それより径大にして素材自体が通気力を備えた2つのシート部材により被包してなり、少なくとも一方のシート部材を高発泡スポンジ体にしたことを特徴とする吸湿緩衝材。
【請求項2】
前記高発泡スポンジ体に、前記乾燥剤の被包空間に通じる1個以上の穴を備えたことを特徴とする請求項1に記載の吸湿緩衝材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−30829(P2012−30829A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171166(P2010−171166)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(593099001)高久産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】