説明

吸着容量が改善されたリン酸ジルコニウム粒子及び該リン酸ジルコニウム粒子を合成する方法

リン酸ジルコニウム粒子は、水性溶媒中に溶解させたオキシ塩化ジルコニウムの溶液を準備すること、少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を溶液に添加すること、及びこの溶液を加熱したリン酸又はリン酸塩と組み合わせて、ゾルゲル沈殿によりリン酸ジルコニウム粒子を得ることによって合成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔度、BET表面積及び/又はアンモニウムイオン吸着特性が改善されたリン酸ジルコニウム粒子、及びゾルゲル合成等によってリン酸ジルコニウム粒子を製造する方法に関する。
【0002】
本願は、2008年10月3日付けで出願された、先の米国仮特許出願第61/102,466号(参照により本明細書中に完全に援用される)の米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子は、イオン交換体として使用され、再生型透析(regenerative dialysis)用の吸着材(sorbent material)として特に有用である。リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子は、出発原料としてオキシ塩化ジルコニウム(ZOC)(塩化ジルコニルとも称される)を用いるゾルゲルプロセスによって、合成することができる。ZOCは、豊富に存在しかつ低価格で市販されているため、好ましい出発原料である。
【0004】
ゾルゲル沈殿とは、この用語を本明細書中で使用する場合、一般的に、水和金属イオン(第III族及び第IV族)を沈殿剤と反応させることによってコロイド粒子(ゾルと称される)を形成した後、コロイド粒子の重合により、ゲル粒子を形成する、セラミック又は触媒を形成するプロセスを表す。例えば、Bogdanov SG et al., “Structure of zirconium phosphate gels producedby the sol-gel method,” J. PHYS.: CONDENS.MATTER, Vol. 9,4031-4039 (1997)(参照により本明細書中に援用される)を参照されたい。ゾルゲル沈殿は、室温で実行することができる直接的な一段階変換プロセスであるため、オキシ塩化ジルコニウムからリン酸ジルコニウムを得る、とりわけ有益な方法である。それゆえ、ゾルゲル沈殿は、他のプロセスに比べ効率及び製造コストの面で優れた利点を示す。その上、ゾルゲル沈殿により得られるリン酸ジルコニウム粒子は一般的に、アンモニアに対するそれらの吸着容量を高める、高多孔度及び高BET表面積を有する。さらに、ゾルゲル沈殿法の使用により、生成物の粒径及び形態の制御、並びに不純物レベルの制御が可能となる。リン酸ジルコニウム粒子に関するこれらの特徴は、透析用途のためのアンモニア吸着及びカートリッジ設計に関して重要なものである。
【0005】
これらの利点を全てもってしても、ゾルゲル沈殿は、製造スケールの観点から達成することが容易でない。難点は主に、原材料(例えば、ZOC)の性質、制御し難い反応の速い速度、及び適切なプロセス制御法の不足(流量、撹拌速度、濃度等)によって生じる。これらの難点は以下のように説明することができる。
【0006】
ゾルゲルリン酸ジルコニウムは、沈殿剤としてリン酸を用いてオキシ塩化ジルコニウム溶液から直接沈殿する場合、広範な粒径を有するソフトゲル粒子の形態である。このことが起こる理由の1つは、オキシ塩化ジルコニウムの溶液中のジルコニウムイオンが、高度に水和された単量体であり、即ち、多数の配位水分子によって取り囲まれているためである。リン酸ジルコニウムの形成中、ソフトゲル粒子は、生成スラリーが反応プロセス中により粘性になるとき、又は粒子が濾過及び乾燥プロセス中に充填されるときに、凝集する傾向にある。この凝集の結果として、乾燥後に大きな凝集体が最終生成物中に存在するため、易流動性の粉末を得るのに磨砕又は粉砕が必要とされ、磨砕によって多くの極めて微細な粒子が生成するというさらなる欠点を伴う。凝集はまた、カラム用途又は分離用途に望ましくない程度にまで粒径を増大させる。
【0007】
最終生成物の広範な粒径は、沈殿が続くにつれて次第に減少する反応物の濃度に粒径が依存し、より小さい粒子の形成が生じるというさらなる理由に関する従来のゾルゲル沈殿プロセスの共通する結果である。よって、単一の反応物の添加技法を用いて粒径を制御することは難しい。大きな粒子はアンモニアの漏出及びより小さい吸着容量をもたらすおそれがある一方、微粒子は吸着剤カートリッジ中の流動抵抗及び圧力低下を増大させるおそれがあるため、大きな粒子及び極めて微細な粒子は両方とも、透析用途に望ましくない。
【0008】
さらに、沈殿プロセス中のゾルゲルリン酸ジルコニウムの凝集は、スラリー濃度が増大するにつれて、反応物の撹拌及び混合に干渉し、過剰な数の微粒子の形成をもたらす。
【0009】
ゾルゲルリン酸ジルコニウムの粒径は、リン酸の量及び濃度を増大させることによって(例えば、ZrO:POの比率を1:3とすることによって)、増大し得るが、リン酸の増大はまた、ZrP中の過剰なH格子がHO分子と結びつくため、ゲル化作用を高める。
【0010】
ゾルゲル沈殿における近年の進歩は、ソフトゲル粒子の生成を回避し、かつ/又はリン酸ジルコニウムゲル粒子の凝集を回避する、リン酸ジルコニウム粒子を合成する方法を提供する。特許文献1(参照により本明細書中に完全に援用される)は、生成物の粒径を制御するために、ゲル化及び凝集を抑制するような有機化学添加剤を利用する、リン酸ジルコニウム粒子を合成する方法を記載している。添加剤は、オキシ塩化ジルコニウム溶液に添加され、溶液中でジルコニウムイオンと錯体を形成し、それにより、ジルコニウムイオンの水和が低減し得る。その後、溶液はリン酸又はリン酸塩と組み合わされ、ゾルゲル沈殿によりリン酸ジルコニウム粒子を得ることができる。該方法は、制御された粒径又は粒度分布を有するリン酸ジルコニウム粒子を合成し得る。この方法により合成されるリン酸ジルコニウム粒子は、例えば、60ミクロンを超え120ミクロンまでの範囲で20%未満、30ミクロン〜60ミクロンの範囲で80%超、30ミクロン未満の範囲で10%未満の粒度分布を有し得る。粒子はまた、100mg/dLのNH−N/g濃度に曝した場合、約15mg〜20mg NH−N/g ZrPの、透析溶液中におけるアンモニア容量を有し得る。
【0011】
制御された粒径及び狭い粒度分布にもかかわらず、リン酸ジルコニウム粒子は、所望のものよりも大きな粒径、及び予想されるものよりも低いアンモニウムイオン吸着容量を示すことがある。残留有機添加剤がZrP格子と強く結合し、結果として、粒子の多孔度及びBET表面積が予想されるものよりも小さいことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0140840号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、上述の欠点の1つ又は複数を克服する、リン酸ジルコニウム粒子を合成する方法の改善に対する要求が存在する。
【0014】
ゾルゲルZrP生成物からいずれの残留有機添加剤も除去することにより、多孔度、BET表面積及びNH吸着容量を改善する、ゾルゲル沈殿法に対する要求が存在する。
【0015】
携帯用吸着剤透析システムを含む吸着剤用途のための高いNH吸着容量のゾルゲルZrP粒子を有し得る、約5ミクロンよりも小さいZrP粒子に対する特段の要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の特徴は、上述の欠点の1つ又は複数を回避するリン酸ジルコニウム粒子を提供することである。
【0017】
本発明の特徴は、所望の硬度、粒径、粒径範囲、形状、充填密度、多孔度、吸着に関するBET表面積、及び/又は吸着容量を有するリン酸ジルコニウム粒子を提供することである。
【0018】
本発明の別の特徴は、多孔度、BET表面積、及び/又はアンモニウムイオン吸着容量が改善されたリン酸ジルコニウム粒子を提供することである。
【0019】
本発明の別の特徴は、5ミクロン未満の平均粒径を有するリン酸ジルコニウム粒子を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる特徴は、粒子に結合する残留有機分子を全く(又は本質的に)有しない、ゾルゲル沈殿により調製されるリン酸ジルコニウム粒子を提供することである。
【0021】
本発明の特徴は、上述の欠点の1つ又は複数を回避する、ゾルゲル技法によりリン酸ジルコニウム粒子を合成する方法を提供することである。
【0022】
本発明の別の特徴は、ソフトゲル粒子の生成を回避し、かつ/又はリン酸ジルコニウムゲル粒子の凝集を回避し、また、多孔度、BET表面積、及び/又はアンモニア吸着容量を低減させるような、粒子に結合する残留有機分子をもたらさない、ゾルゲル技法によりリン酸ジルコニウム粒子を合成する方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる利点は、或る程度以下の説明に記載されおり、或る程度は該説明から明らかであり、そうでなければ、本発明の実施により知ることができる。本発明の目標及び利点は、とりわけ添付の特許請求の範囲において指摘される要素によって実現及び達成されるであろう。
【0024】
上記の目標を成し遂げるために、また本発明の目的によれば、本明細書中で具現化されかつ広く記載される場合、本発明は、水性溶媒中でオキシ塩化ジルコニウムを少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤と組み合わせることによって形成される水溶性ジルコニウム含有重合錯体(polymer complex)を水溶液中に含む組成物を提供する。添加剤は、溶液中でジルコニウムイオンと錯体を形成し得る。
【0025】
本発明はまた、強く結合した残留有機化合物を含まない、ゾルゲル沈殿により合成されるリン酸ジルコニウム粒子を提供する。
【0026】
本発明はさらに、以下の特徴:5ミクロン未満の平均粒径、100mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも15mg NH−N/g ZrPの、透析溶液中におけるアンモニア容量、及び/又は少なくとも約10m/g ZrPのBET表面積の1つ又は複数を有するリン酸ジルコニウム粒子を提供する。
【0027】
本発明はさらに、かかるリン酸ジルコニウム粒子を含有する容器を備える、携帯用透析システムを提供する。
【0028】
本発明はさらに、以下の特徴:約40ミクロン〜50ミクロンの平均粒径、100mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも15mg NH−N/g ZrPの、透析溶液中におけるアンモニア容量、及び/又は少なくとも約10m/g ZrPのBET表面積の1つ又は複数を含むリン酸ジルコニウム粒子を提供する。
【0029】
本発明はさらに、かかるリン酸ジルコニウム粒子を含有するカートリッジを含む、透析カートリッジを提供する。
【0030】
本発明はさらに、以下の特徴:約45ミクロン〜90ミクロンの平均粒径、20mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも15mg NH−N/g ZrPの、透析溶液中におけるアンモニア容量、及び/又は少なくとも約2m/g ZrPのBET表面積の1つ又は複数を含むリン酸ジルコニウム粒子を提供する。
【0031】
本発明はさらに、かかるリン酸ジルコニウム粒子を含有するカートリッジを含む、透析カートリッジを提供する。
【0032】
本発明はさらに、以下の特徴:少なくとも0.0071mL/gの細孔容積、少なくとも0.5mL/g(STP)の単層容積、及び/又は少なくとも30%の20nm〜80nmの孔径含有率の1つ又は複数を有するリン酸ジルコニウム粒子を提供する。これらの多孔度及び孔径の特性は、本明細書中に示される任意の粒径範囲を含む任意の粒径に当てはまり得る。また、例えば、これらの粒子は、少なくとも約2m/g ZrP、又は少なくとも約5m/g ZrP、又は少なくとも約10m/g ZrPのBET表面積を有し得る。
【0033】
本発明はさらに、かかるリン酸ジルコニウム粒子を含有するカートリッジを含む、透析カートリッジを提供する。
【0034】
本発明はまた、水性溶媒中でオキシ塩化ジルコニウムと少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤とを組み合わせて、溶液を形成することにより、リン酸ジルコニウム粒子を製造する方法を提供する。低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤(複数可)は、溶液中でジルコニウムイオンと錯体を形成し、それにより、ジルコニウムイオンの水和を低減し得る。有機添加剤は、ゾルゲル沈殿においてリン酸ジルコニウム粒子の凝集を防ぐことにより、粒子の多孔度及び/又はBET表面積を増大させることができる。多孔度及び/又はBET表面積が増大したリン酸ジルコニウム粒子は、改善されたアンモニア吸着容量を有し得る。
【0035】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤(複数可)は、リン酸ジルコニウム粒子に結合又は強く結合しない。したがって、本方法は、溶液をリン酸又はリン酸塩と組み合わせること、及びその後、低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を除去して、ゾルゲル沈殿により残留添加剤を全く(又は本質的に)有しないリン酸ジルコニウム粒子を得ることをさらに含む。低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤は、例えば蒸発させることによって除去され、残留有機添加剤を全く(又は本質的に)有しないリン酸ジルコニウム粒子を得ることができる。リン酸又はリン酸塩は、沸点、例えば、約90℃〜100℃、又は約96℃の温度で存在し得る。低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤は、リン酸ジルコニウム粒子を、例えば水で洗浄して残留有機添加剤を除去すること等によっても除去することができる。他の除去法を使用してもよい。
【0036】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤は、任意の技法によって、例えば加熱及び/又は洗浄等によって除去することができる。本発明の目的で、添加剤の「除去」には、添加剤の完全な除去、及び/又は、除去前に存在する添加剤の総重量に基づき、残る添加剤が好ましくは1wt%未満(例えば、0wt%〜0.9wt%、0.0001wt%〜0.7wt%、0.001wt%〜0.5wt%、0.01wt%〜0.25wt%)であるといった添加剤の実質的な除去が含まれ得る。リン酸ジルコニウム粒子をリン酸の沸点等の熱にかけると、低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を蒸発させ、残留添加剤をリン酸ジルコニウム粒子から除去することができるため、任意に、多孔度及び/又はBET表面積が増大する。加熱工程は、粒子に対して硬化作用を有し、かつ/又は粒子の結晶構造を改善し得る。硬化されたリン酸ジルコニウム粒子は、粒子崩壊及び/又は凝集を被ることなく乾燥し得る。本方法は任意に、リン酸ジルコニウム粒子を含有する水性スラリーを、例えば約1時間〜2時間、例えば約90℃〜100℃の温度におけるさらなる熱処理にかけることをさらに含み得る。
【0037】
本発明はさらに、制御された粒径又は粒度分布を有するリン酸ジルコニウム粒子を合成する方法を提供する。本方法は、オキシ塩化ジルコニウムと低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤との溶液を、リン酸又はリン酸塩の溶液と組み合わせること、及び低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を蒸発させて、ゾルゲル沈殿によりリン酸ジルコニウム粒子を得ることを含む。例えば、本方法は、撹拌機を有する反応ベッセルを準備すること、及び、ジルコニウムイオンがリン酸又はリン酸塩と反応して、ゾルゲル沈殿によりリン酸ジルコニウム粒子が得られるように、オキシ塩化ジルコニウムの溶液とリン酸又はリン酸塩の溶液とを、例えば同時に(又は他の添加順序で)、反応ベッセルに添加することを含み得る。得られるリン酸ジルコニウム粒子の粒径及び/又は粒度分布は、下記パラメータ:オキシ塩化ジルコニウムの溶液を反応ベッセルに添加する速度、リン酸又はリン酸塩の溶液を反応ベッセルに添加する速度、リン酸又はリン酸塩の溶液のpH、反応ベッセル内の各成分、即ち、オキシ塩化ジルコニウム、低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤、及び/又はリン酸若しくはリン酸塩の濃度、該反応への塩酸(HCl)の添加、撹拌機の速度、又はそれらの組合せの少なくとも1つ又は複数を制御することによって、制御することができる。
【0038】
本発明はさらに、水性溶媒中でオキシ塩化ジルコニウムと少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤とを組み合わせることであって、低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤(複数可)がジルコニウムイオンと錯体を形成することにより、ジルコニウムイオンの水和が低減され得る溶液を形成する、組み合わせること、該溶液とリン酸又はリン酸塩とを組み合わせること、及び少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を蒸発させて、ゾルゲル沈殿によりリン酸ジルコニウム粒子を得ることによって、リン酸ジルコニウム粒子を合成する方法を提供する。本方法は、リン酸ジルコニウム粒子を含有する水性スラリーを熱処理にかけることをさらに含み得る。
【0039】
上記の概略的な説明及び下記の詳細な説明は両方とも例示的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載される本発明を限定するものでないことを理解されたい。
【0040】
本願の一部に組み込まれかつこれを構成するものである添付の図面は、本発明の実施形態の幾つかを例示しており、明細書と併せて、本発明の原理を説明する役割を担うものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】カートリッジのNH−N吸着容量に基づく製品の品質−カートリッジ性能の試験に使用される吸着剤カートリッジの横断面図である。
【図2】ゾルゲル生成のためのリン酸による沈殿前にオキシ塩化ジルコニウムと組み合わされる添加剤に対する粒子の膨潤の依存度を、膨潤体積(cm/kg)として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は一部分において、多孔度、BET表面積及び/又はアンモニウムイオン吸着容量が改善されたリン酸ジルコニウム粒子に関する。リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子は、例えば、以下の特徴:5ミクロン未満、例えば、約2ミクロン〜4.9ミクロン、若しくは約1ミクロン〜約3ミクロン、若しくは約0.5ミクロン〜約4ミクロンの平均粒径、100mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも15mg NH−N/g ZrPの、透析溶液中におけるアンモニア容量、及び/又は少なくとも約10m/g ZrP(例えば、10m/g ZrP〜100m/g ZrP以上、15m/g ZrP〜100m/g ZrP、若しくは20m/g ZrP〜100m/g ZrP)のBET表面積の1つ又は複数を有し得る。好ましくは、ZrP粒子は、100mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも20mg NH−N/g ZrP、より好ましくは少なくとも25mg NH−N/g ZrP、又は少なくとも30mg NH−N/g ZrP(21mg NH−N/g ZrP〜35mg NH−N/g ZrP等)の透析溶液中におけるアンモニア容量を有し得る。ZrP粒子は、例えば、100mg/dLのNH−Nに曝した場合、約23mg NH−N/g ZrP〜26mg NH−N/g ZrPの透析溶液中におけるアンモニア容量、及び/又は例えば、10mg/dLのNH−Nに曝した場合、約7mg NH−N/g ZrP〜9mg NH−N/g ZrPのアンモニア容量を有し得る。
【0043】
本発明の目的で、「透析溶液」とは、血液透析又は腹膜透析において使用することができ、例えば、約105mEqの塩化ナトリウム濃度及び約35mEqの炭酸水素ナトリウム濃度を有する溶液を意味する。透析溶液のナトリウム濃度は、ZrPアンモニア容量に影響を及ぼす可能性があり、ZrP粒子は、透析溶液中におけるアンモニア容量よりも大きい純水中におけるアンモニア容量を有し得る。ZrP粒子は、例えば、100mg/dLのNH−Nに曝した場合、35mg NH−N/g ZrPよりも大きい、20mg/dLのNH−Nに曝した場合、30mg NH−N/g ZrPよりも大きい、例えば約30mg NH−N/g ZrP〜38mg NH−N/g ZrP、10mg/dLのNH−Nに曝した場合、20mg NH−N/g ZrPよりも大きい、例えば約20mg NH−N/g ZrP〜28mg NH−N/g ZrPの、純水中におけるアンモニア容量を有し得る。
【0044】
本発明のリン酸ジルコニウム粒子は、例えば、水性溶媒中でオキシ塩化ジルコニウム(ZOC)を少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤と組み合わせて溶液(有機添加剤−ZOC溶液)を形成すること、溶液をリン酸と組み合わせること、及び、低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を蒸発させかつ/又は洗い流して、ゾルゲル沈殿により、残留有機添加剤を全く(又は本質的に)有しないリン酸ジルコニウム粒子を得ることによって、合成することができる。低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤は、例えば、減圧及び/又は加熱によって蒸発させることができる。有機添加剤−ZOC溶液は、有機添加剤を蒸発させるのに十分高い温度、例えば最大、リン酸の沸点で加熱したリン酸、又は例えば約90℃〜100℃の温度のリン酸と組み合わせることができる。
【0045】
本発明はまた一部分において、以下の特徴:約25ミクロン〜65ミクロン、例えば約40ミクロン〜50ミクロンの平均粒径、100mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも15mg NH−N/g ZrPの、透析溶液中におけるアンモニア容量、及び少なくとも約10m/g ZrP(例えば、10m/g ZrP〜100m/g ZrP以上、15m/g ZrP〜100m/g ZrP、又は20m/g ZrP〜100m/g ZrP)のBET表面積の1つ又は複数を有するリン酸ジルコニウム粒子に関する。好ましくは、ZrP粒子は、100mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも20mg NH−N/g ZrP、より好ましくは少なくとも25mg NH−N/g ZrP、又は少なくとも30mg NH−N/g ZrP(例えば、25mg NH−N/g ZrP〜35mg NH−N/g ZrP)の、透析溶液中におけるアンモニア容量を有し得る。ZrP粒子は、例えば、100mg/dLのNH−Nに曝した場合、約21mg NH−N/g ZrP〜23mg NH−N/g ZrPの、透析溶液中におけるアンモニア容量、及び/又は例えば、10mg/dLのNH−Nに曝した場合、約6mg NH−N/g ZrP〜8mg NH−N/g ZrPのアンモニア容量を有し得る。
【0046】
本発明はまた一部分において、以下の特徴:約45ミクロン〜840ミクロン、例えば約45ミクロン〜90ミクロンの平均粒径、20mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも15mg NH−N/g ZrPの、透析溶液中におけるアンモニア容量、及び少なくとも約2m/g ZrP(例えば、2m/g ZrP〜100m/g ZrP以上、又は5m/g ZrP〜100m/g ZrP、又は10m/g ZrP〜100m/g ZrP、又は15m/g ZrP〜75m/g ZrP、又は20m/g ZrP〜50m/g ZrP)のBET表面積の1つ又は複数を有するリン酸ジルコニウム粒子に関する。好ましくは、ZrP粒子は、20mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも15mg NH−N/g ZrP、より好ましくは少なくとも20mg NH−N/g ZrP、又は少なくとも25mg NH−N/g ZrP(例えば、20mg NH−N/g ZrP〜35mg NH−N/g ZrP、又は21mg NH−N/g ZrP〜30mg NH−N/g ZrP、又は22mg NH−N/g ZrP〜25mg NH−N/g ZrP)の、透析溶液中におけるアンモニア容量を有し得る。ZrP粒子は、また、30mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも20mg NH−N/g ZrP、又は少なくとも25mg NH−N/g ZrP、又は少なくとも30mg NH−N/g ZrP(20mg NH−N/g ZrP〜35mg NH−N/g ZrP、又は22mg NH−N/g ZrP〜30mg NH−N/g ZrP、又は24mg NH−N/g ZrP〜28mg NH−N/g ZrP等)の、透析溶液中におけるアンモニア容量を有し得る。ZrP粒子はまた、20mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも25mg NH−N/g ZrP、又は少なくとも30mg NH−N/g ZrP、又は少なくとも40mg NH−N/g ZrP(25mg NH−N/g ZrP〜55mg NH−N/g ZrP、又は30mg NH−N/g ZrP〜50mg NH−N/g ZrP、又は35mg NH−N/g ZrP〜45mg NH−N/g ZrP等)の、純水中におけるアンモニア容量を有し得る。ZrP粒子はまた、30mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも30mg NH−N/g ZrP、又は少なくとも35mg NH−N/g ZrP、又は少なくとも45mg NH−N/g ZrP(30mg NH−N/g ZrP〜65mg NH−N/g ZrP、又は35mg NH−N/g ZrP〜60mg NH−N/g ZrP、又は40mg NH−N/g ZrP〜55mg NH−N/g ZrP等)の、純水中におけるアンモニア容量を有し得る。
【0047】
本発明はまた一部分において、以下の特徴:少なくとも0.0071mL/g(例えば、0.0071mL/g〜0.15mL/g、又は0.0075mL/g〜0.125mL/g、又は0.01mL/g〜0.1mL/g、又は0.02mL/g〜0.09mL/g)の細孔容積、少なくとも0.5mL/g(STP)(例えば、0.5mL/g(STP)〜10mL/g(STP)、又は1mL/g(STP)〜8mL/g(STP)、又は2.5mL/g(STP)〜6.5mL/g(STP)、又は3mL/g(STP)〜5mL/g(STP))の(ラングミュア)単層容積、及び/又は少なくとも30%(例えば、30%〜60%、又は32%〜55%、又は38%〜52%、又は42%〜50%)の20nm〜80nmの孔径含有率の1つ又は複数を有するリン酸ジルコニウム粒子に関する。上述のように、これらの多孔度及び孔径の特性は、本明細書中に示される任意の粒径範囲を含む任意の粒径に当てはまり得る。孔径含有率は、20nm〜80nmの範囲の孔径を有する全粒子表面の細孔のパーセンテージを表す。
【0048】
これらの多孔度及び孔径を有する粒子はまた、例えば、例えば限定するものではないが、約45ミクロン〜90ミクロンの平均粒径を有するZrP粒子を含む、本明細書中に示したような任意のZrP粒子に関する、BET表面積、透析溶液中におけるアンモニア容量、及び/又は純水中におけるアンモニア容量の1つ又は複数を有し得る。平均粒径として本明細書中に示した粒径範囲値は付加的に又は代替的に粒径割合を表し得る。例えば、本明細書中で45ミクロン〜90ミクロンとして与えられる粒径はまた、粒子がその範囲内の絶対粒径を有する粒状サンプルの割合を表し得る。
【0049】
本発明のリン酸ジルコニウム粒子は、例えば、水性溶媒中でオキシ塩化ジルコニウム(ZOC)を少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤と組み合わせて、溶液を形成すること、濃塩酸(HCl)のような酸を溶液に添加すること、その後、溶液をリン酸のような酸と組み合わせること、及び低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を本質的に全て蒸発させ、さもなければ除去して、ゾルゲル沈殿によりリン酸ジルコニウム粒子を得ることによって、合成することができる。HClのような酸の添加は平均リン酸ジルコニウム粒径に影響を及ぼすことがある。リン酸ジルコニウム粒子のサイズは、所望のサイズ、例えば、約10ミクロン〜100ミクロン、約10ミクロン〜25ミクロン、約20ミクロン〜40ミクロン、約25ミクロン〜65ミクロン、又は約40ミクロン〜50ミクロンの平均粒径の粒子を得るように様々な値をとることができる。いかなる理論にも拘束されるものではないが、HClのような酸は、リン酸ジルコニウム重合反応から官能性OH基を除去することによって粒径に作用するため、重合反応を継続させ、粒径を増大させ得る。
【0050】
本発明はさらに、上記のように、オキシ塩化ジルコニウム溶液を低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤と組み合わせて、水溶性重合錯体を形成することにより本発明の方法における中間体として形成される組成物に関する。低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤の量は、特定の添加剤に応じて決めることができ、性能研究によって容易に求めることができる。低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤の量は、生成物の粒径を改善するのに有効である最小限の量であってもよい。好適な量の例を以下に示す。
【0051】
本明細書中に記載のリン酸ジルコニウム粒子を含有するカートリッジを含む透析カートリッジも本発明の一部である。透析カートリッジは、リン酸ジルコニウム粒子が少なくとも1つの層として存在し得るリン酸ジルコニウム粒子を含有するカートリッジであってもよく、透析カートリッジは、吸着材の少なくとも1つの他の層(複数可)をさらに含んでいてもよい。本明細書中に記載のリン酸ジルコニウム粒子を含有する容器を備える携帯用透析システムも本発明の一部である。容器は例えば、上記のような、例えば5ミクロン未満、例えば約2ミクロン〜5ミクロンの平均粒径、100mg/dLのNH−Nに曝した場合、少なくとも25mg NH−N/g ZrPの、透析溶液中におけるアンモニア容量、及び少なくとも約10m/g ZrPのBET表面積を有するリン酸ジルコニウム粒子を含有し得る。
【0052】
本発明のZrPは、米国特許出願公開第2002−0112609号及び米国特許第6,878,283号に記載されている吸着剤カートリッジに、またSorbのREDYカートリッジ(例えば、"Sorbent DialysisPrimer, "COBE Renal Care, Inc. Sep. 4, 1993 edition, and "Rx Guide toCustom Dialysis, "COBE Renal Care, Inc. Revision E, Sep., 1993を参照されたい)(全て参照により本明細書中に完全に援用される)におけるZrP層として又はさらなるZrP層として、ZrPを使用し、また使用することができる任意の用途に使用され得る。これらの公開された出願におけるZrPを使用する全ての実施形態は、本発明のZrPを使用する本願の実施形態となる。単に例示の目的で、管状ハウジング又はカートリッジ内の様々な濾材セクションを、本発明のZrP粒子と併せて使用してもよい。ハウジング又はカートリッジは、顆粒状活性炭セクション、固定化酵素セクション、粉末状アルミナ(Al)セクション、リン酸ジルコニウム、及び/又はアセテート形態の含水酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムとの混合物若しくは炭酸ジルコニウムナトリウムを単独で含むセクションのような吸着材を含み得る。透析カートリッジは、1つ又は複数の層又は帯域として、リン酸ジルコニウム粒子を含有するカートリッジであってもよく、ここで、透析カートリッジは、第1の端から始まり第2の端で終わる配置を含む複数の濾材セクション(又は層)、活性炭セクション、固定化酵素セクション、粉末状アルミナセクション、リン酸ジルコニウムセクション、及び炭酸ジルコニウムナトリウム又はアセテート形態の含水酸化ジルコニウムの混合物、及び炭酸ジルコニウムナトリウムセクションを有する。血液透析に関して、透析液のための基剤として高精製水を使用しない限り、塩素を水道水から除去するのに適する濾材が好ましい。濾材は活性炭であってもよい。活性炭は、重金属、酸化剤及びクロラミンと結合する濾材として使用され得る。尿素分解酵素等の固定化酵素を濾材において使用し、酵素による変換により尿素を炭酸アンモニウムに変換してもよい。尿素分解酵素は、吸着、共有結合、分子間架橋、架橋ポリマー(polymers)内における封入(entrapment)、マイクロカプセル封入、及び半透膜部材内における封じ込め(containment)により、固定化することができる。アルミナ(Al)、活性炭、アニオン交換樹脂、及び珪藻土を吸着体(adsorbents)として使用してもよい。尿素分解酵素は、水不溶性ポリマーと共有結合して、活性化手法を介した酵素ポリマー接合体又は反応性ポリマーを形成するのに使用することができる。多官能性試薬、例えば、グルタルアルデヒド及びヘキサメチレンジアミンを使用して、尿素分解酵素の分子間架橋に作用させてもよい。尿素分解酵素を、例えばポリアクリルアミドゲル等の架橋ポリマー内に封入してもよい。尿素分解酵素を、例えば、ナイロン、硝酸セルロース、エチルセルロース又はポリアミドを用いてマイクロカプセル封入してもよい。尿素分解酵素は、幾つかの透過性膜部材、例えば、Fisher Scientific(Pittsburgh, PA)から入手可能なAMICOM限外濾過セル、又はThe Dow Chemical Co.(Midland, MI)から入手可能なDOW中空糸ビーカー部材(hollowfiber beaker device)等の中に閉じ込めることができる。塩素を除去するのに活性炭を使用する場合、該使用は、塩素が酵素を不活性化する可能性があるため、固定化酵素媒体の使用前に行われ得る。カチオン交換体は、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及び他のカチオン、並びに水道水中の有害微量金属と結合するのに使用され得る。これらの濾材の別の機能は、尿素加水分解による炭酸塩を、炭酸水素塩に変換することであり得る。このようなカチオン交換体としては、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン又はゼオライトが挙げられ得る。アニオン交換濾材は、リン酸塩、フッ化物、及び他の重金属と結合する。アニオン交換濾材の副生成物としては、患者の血液の代謝性アシドーシスも補正する酢酸塩及び炭酸水素塩が挙げられ得る。このような濾材としては、アセテート形態の含水酸化ジルコニウム、含水シリカ、酸化第二スズ、酸化チタン、アンチモン酸、含水酸化タングステン又は炭酸ジルコニウムナトリウムが挙げられ得る。
【0053】
本発明は一部分において、溶液中におけるジルコニウムイオンの水和を低減したオキシ塩化ジルコニウムの溶液を用いたゾルゲル技法によってリン酸ジルコニウム粒子を合成する方法に関する。これは、例えば、オキシ塩化ジルコニウム溶液中における添加剤(単数又は複数)の使用により、溶液中のジルコニウムイオンを、高度に水和した単量体形態から、多数の重合体単位及び水和水の低減による可溶性重合体ジルコニウム錯体へ変えることによって達成することができる。
【0054】
本発明は、(a)水性溶媒中で少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤をオキシ塩化ジルコニウムと組み合わせることであって、該低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤がジルコニウムイオンと錯体を形成する溶液を形成する、組み合わせること、及び(b)(a)で得られる溶液をリン酸と組み合わせると共に、該低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を蒸発させることであって、ゾルゲル沈殿によりリン酸ジルコニウム粒子を得る、組み合わせると共に蒸発させることを含む、リン酸ジルコニウム粒子を製造する方法に関する。典型的な非限定的な量として、少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤は、オキシ塩化ジルコニウムの重量基準で約20wt%〜70wt%(例えば、25wt%〜60wt%、30wt%〜50wt%の添加剤)の量で存在していてもよく、かつ/又はリン酸に対するオキシ塩化ジルコニウムのモル比は1:2.8〜1:3.2であり得る。これらの範囲未満の、またこれらの範囲を超える他の量及びモル比を使用してもよい。水性溶媒は脱イオン水又は逆浸透(RO)水であってもよい。オキシ塩化ジルコニウムは、水性溶媒中に溶解(そうでなければ、混合)されていてもよく、その後、低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を添加して、工程(a)の溶液を形成してもよい。オキシ塩化ジルコニウムは、水性溶媒中に溶解(そうでなければ、混合)されていてもよく、その後、低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を添加して、工程(a)の溶液を形成してもよい。オキシ塩化ジルコニウムは、水性溶媒中に飽和濃度又は他の濃度レベルまで存在し得る。低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤は、水性溶媒中に溶解(そうでなければ、混合)されていてもよく、その後、オキシ塩化ジルコニウムを添加して、工程(a)の溶液を形成してもよい。低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤は、溶液中のジルコニウムイオンの全て又は実質的に全てを錯体に変換するのに十分なモル量で工程(a)の溶液中に存在し得る。低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤はジルコニウムイオンと可溶性重合錯体を形成することができる。
【0055】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤が、ゾルゲルプロセスにおいて形成されるリン酸ジルコニウムの特徴にどのように作用し得るかを説明するためには、添加剤の非存在下におけるオキシ塩化ジルコニウム溶液中でのジルコニウムイオンの性質を理解することが助けになる。オキシ塩化ジルコニウム溶液中におけるジルコニウムイオン自体が、4個〜8個のHO分子が各ジルコニウム(Zr)原子に配位する、高度に水和されたジルコニウム種である。水和イオンは、溶液の濃度に応じて単量体(ZrOOH)から四量体(Zr(OH)+8)までの範囲の重合体単位を形成し得る。リン酸を室温でオキシ塩化ジルコニウム溶液と混合すると、ゾルゲルリン酸ジルコニウム沈殿物が極めて急速に形成され、ゲル粒子中の多数の配位水分子(又は、H格子がHO分子と結び付いてHを形成するため、ヒドロニウムイオン)を捕捉して、ソフトゲルが形成される。上述のように、これらのソフトゲル粒子は、スラリーの濃度が増大するとき、また該材料が濾過中にフィルタ上又は乾燥中にトレイ上に充填される場合に、凝集する傾向を有し得る。
【0056】
少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を用いることにより好ましくは、少数の配位水分子と高次重合体(high polymer)単位とを有する溶液中に新たなジルコニウム重合体種が形成されるため、これらのジルコニウム重合体種がリン酸と反応する場合、過剰な水和により起こる上記の問題は生じない。とりわけ、リン酸塩とのジルコニウムイオンの反応が緩慢になり、これにより、反応物の濃度をより容易に制御することが可能になるため、沈殿により形成される粒子の粒径及び/又は粒度分布を制御することができる。水含有量の低減に起因して、沈殿により形成される粒子は、より硬質となり、かつ/又はより凝集しにくくなり、かつ/又はより微細化された分子構造を有する。使用される低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤が乳化剤の特性も有する場合、沈殿により形成される粒子の形状を、不規則なものからおおよそ若しくは略球形又は球形に改善することが可能である。このようにすると、凝集問題が乾燥中に緩和又は解消することがあり、これにより易流動性の粉末の形成が可能になる。粒径を小さく維持しても、カラム用途のための流動性能を改善することができる。本明細書中で別段の定めがある場合を除き、ゾルゲルプロセスによるリン酸ジルコニウム粒子の合成は、既知のゾルゲル技法に従って実行することができる。例えば、オキシ塩化ジルコニウムを初めに溶解するのに使用される水溶液は、逆浸透によって精製された水(RO水)、若しくはリン酸ジルコニウム粒子の意図される最終用途に許容可能な汚染物質の十分低いレベルを提供する任意の他の方法によって、微量金属等のイオン性不純物を除去するように精製された水であってもよく、又は脱イオン水であってもよい。ゾルゲル沈殿の実行には、リン酸又はリン酸塩の塩溶液のいずれを使用してもよい。高pH(例えば、pH約4以上)では、リン酸塩(phosphate salt)の使用により、アンモニウム容量が低減された生成物がもたらされる。リン酸への言及としては、オルトリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、トリメタリン酸、及び/又は無水リン酸、又はそれらの組合せが挙げられ得る。リン酸は、1モル/L以上、例えば1.5モル/L〜3モル/L、又は2.6モル/L〜2.8モル/Lのモル濃度を有し得る。
【0057】
本発明で使用される低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤は、オキシ塩化ジルコニウムの水溶液中でジルコニウムイオンに配位しかつ好ましくはジルコニウムイオン間を架橋して(bridge)水溶性重合体種を形成し得る水分子を変位させることを可能にし得る。2種以上の添加剤、例えば混合物を使用してもよい。添加剤は、水分子が、リン酸ジルコニウムを形成するリン酸又はリン酸塩との反応中にジルコニウムイオンから変位し得るように、選択することができる。添加剤は、好ましくは水に可溶性の重合体種の形成を導き得る。したがって、本発明で好まれる添加剤としては、単一の官能基(即ち、単官能性)を含む、水に可溶性のアルコール及び/又はカルボン酸が挙げられる。本発明の目的で、単官能性化合物は、化学構造が単一の反応性部位(例えば単一の反応性OH基)を有する有機化合物であり得る。
【0058】
本発明で使用され得る低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤の例としては、式R−OH(式中、RはC1−6アルキル基、好ましくはC1−3アルキル基である)を有するアルコール、及び式R−COOH(RはC1−6アルキル基、好ましくはC1−3アルキル基である)を有するカルボン酸が挙げられる。アルコール及びカルボン酸は非分岐状又は分岐状の異性体であってもよい。使用され得る添加剤の非限定的な具体例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酢酸、プロピオン酸、又はそれらの組合せである。低分子量の例としては、約20〜80、好ましくは約30〜60の分子量が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤と、オキシ塩化ジルコニウム溶液中に形成されるジルコニウム重合錯体との典型的な例は以下の通りである。
【0060】
アルコール
【化1】

カルボン酸塩又はカルボン酸
【化2】

【0061】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤がジルコニウムイオンと錯体を形成する溶液は、オキシ塩化ジルコニウムを含有する溶液に添加剤を添加することによって、又は添加剤を含有する溶液にオキシ塩化ジルコニウムを添加することによって形成することができる。言い換えると、水性溶媒への添加剤とオキシ塩化ジルコニウムとの添加の順序は重要でない。
【0062】
ゾルゲル沈殿により得られるリン酸ジルコニウム粒子の特性は、使用されるリン酸溶液のpHを調節することによって任意に変更することができる。例えば、本発明の方法で使用される沈殿剤は、NaOHのような塩基で約1〜約4のpHに滴定されるオルトリン酸であってもよい。部分滴定されたリン酸はゾルゲルZrPの酸性度を下げるため、水和水が減少し得る。そうでない場合には、H格子がHOと結び付いて、ヒドロニウムイオンを形成し得る。それゆえ、リン酸塩のより高いpHでゾルゲル沈殿を実行することは、ZrPゲルの硬化を促すのに役立つ。しかしながら、アルカリ性pHで沈殿反応を実行することは、アルカリ性リン酸塩によって沈殿するリン酸ジルコニウムが低いアンモニア吸着性を有し得ることから、あまり好ましくない。この技法は、上記のような、少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤の使用と併せて実行することができる。
【0063】
本発明はまた一部分において、得られるリン酸ジルコニウム粒子の粒径及び/又は粒度分布が、有機添加剤を含有する、オキシ塩化ジルコニウムの溶液を反応ベッセルに添加する速度、リン酸の溶液を反応ベッセルに添加する速度、反応ベッセル内の反応物、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、有機添加剤、リン酸及び/若しくは塩酸の濃度、並びに/又は反応混合物の撹拌の速度及び方法を制御することによって、制御される、ゾルゲル沈殿によりリン酸ジルコニウム粒子を合成する方法に関する。とりわけ、ゾルゲル沈殿により得られる粒径が反応物の濃度に部分的に依存し得ることが見出された。オキシ塩化ジルコニウムの溶液をリン酸の溶液に添加する場合、反応が進むにつれてリン酸の濃度が減少するため、徐々に小さい粒子の形成がもたらされ得る。結果として、望ましくない広い範囲の粒径が作られるおそれがある。これがことによると起こるのを防止するために、両方の反応物、即ち、添加剤を含有する、オキシ塩化ジルコニウムの溶液とリン酸とを、任意で反応ベッセルに同時(又は略同時)に添加することができ、添加を例えば10分〜30分以上といった或る一定期間続けることにより、反応溶液中のリン酸の濃度を沈殿プロセスの間中一定かつ制御可能に維持することが可能である。さらなる例として、リン酸の溶液の一部を反応ベッセルに添加してもよく、添加剤を含有する、オキシ塩化ジルコニウムの溶液と、リン酸溶液の残りとを制御速度で反応ベッセルに同時に添加して、反応溶液中のリン酸の濃度を沈殿プロセスの間中一定かつ制御可能にさらに維持することも可能である。
【0064】
オキシ塩化ジルコニウムとリン酸溶液との同時添加に加えて、オキシ塩化ジルコニウム溶液の添加方法及び反応物の混合方法を含む他のパラメータを制御して、より効率的な反応をもたらし、粒径範囲を制御することができる。添加剤を含有する、オキシ塩化ジルコニウムの溶液を反応ベッセルに液滴形態で添加するように、例えば、スプレーヘッドを該溶液用の導入口として使用することにより、より効率的な反応がもたらされ得る。さらに、反応物を反応ベッセルに添加するよう、かつ反応が進行するように、反応ベッセルに反応物を撹拌するに足るものを備え付けることにより、より効率的な混合をもたらし、また、反応ベッセルの種々のセクションにおける、異なる濃度の反応物によって生じる粒径の差異をなくすことができる。例えば、反応ベッセルは、反応ベッセル内の反応物をあらゆるレベルで十分に混合するように、例えば、2セット以上のブレードが種々のレベルでシャフトに取り付けられている撹拌機のような撹拌機を備え得る。特定の例として、各セットが種々のレベルでシャフトに取り付けられている3セットのブレードを有する撹拌機等のマルチインペラ式(multi-impeller)撹拌機を使用してもよい。凝集を制御又は低減するような撹拌機の使用は任意である。撹拌機を使用する場合、マルチインペラ式撹拌機を含む市販の撹拌機を使用してもよい。マルチインペラ式撹拌機では、例えば20rpm〜40rpm等の低撹拌速度が、ゲル粒子の分解を起こすことなく凝集を避けるのに好ましい。シングルインペラ式撹拌機では、例えば約60rpm〜70rpmの速度を使用することができる。任意の特定の撹拌機では、最適速度が、タンクサイズ、形状、バッフル、インペラサイズ等の変動要素に応じて変わる。撹拌又は混合する他の方法を使用してもよい。
【0065】
沈殿プロセスのための反応物の好適な濃度範囲及び流量を確実なものとするような、適切なプロセス制御方法を使用することができ、この結果、所望の粒径範囲又は分布を得ることができる。一例として、吸着剤透析カートリッジにおいて使用されるリン酸ジルコニウム粒子についての所望の粒径範囲は、約20ミクロン〜80ミクロン、又は約35ミクロン〜65ミクロンであり得る。他の粒径範囲を使用してもよい。この粒度分布を達成するために、一例として、イソプロパノールを含有するオキシ塩化ジルコニウム溶液、及びリン酸溶液を以下のように形成してもよい。オキシ塩化ジルコニウム溶液は、濃度が増大するにつれて重合体単位のサイズが増大するため、飽和点(例えば、水375mL中ZOC結晶500g)で又はその近傍でオキシ塩化ジルコニウムを含有し得る。イソプロパノールの量は、ジルコニウムイオン錯体における配位水の量を最大限低減させかつゲル化度を抑制する最大の量(例えば、本明細書中に記載のZOC溶液中約300g)であり得る。過剰量のイソプロパノールは、過剰な乳化によって粒径を低減させ過ぎるため、多くの微粒子を生成するおそれがある。不十分な量のイソプロパノールは、高度の凝集及びより大きいサイズ範囲(例えば80ミクロン〜120ミクロン)の粒子のより高いパーセンテージをもたらすおそれがある。リン酸の典型的な溶液は、516.5gの76%HPOと2.1Lの水とを含有し得る。リン酸塩又はHPOに対するZOCのモル比は約1:3±0.2であり得る。
【0066】
ZOC溶液組成の非限定的な具体例は、500gのZOC、375gの水、300gのイソプロパノール、及び70gの濃HClである。ZOCと水と低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤とのモル比は約1:0.75:0.6であり得る。ZOC溶液組成の別の非限定的な具体例は、500gのZOC、375gの水、260gの氷酢酸、及び94gの濃HClである。ZOCと水と低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤とのモル比は約1:0.75:0.52であり得る。典型的な溶液について挙げられる量は当然ながら、同じ割合の反応物を維持することによって増やしたり減らしたりすることができる。吸着剤透析カートリッジにおいて使用される粒径制御も、必要に応じてさらなる磨砕により達成することができ、その結果、カートリッジ性能要件を満たすものとなる。
【0067】
リン酸溶液に関する流量は、25分〜30分の添加時間の間80ml/分〜100ml/分であってもよく、添加剤を含有する、オキシ塩化ジルコニウムの溶液の流量は、15分〜30分の添加時間の間25ml/分〜50ml/分であり得る。流量は上記の溶液について規定され、異なる量の反応物を使用すれば、増やしたり減らしたりすることができる。リン酸の流量が多いほど、反応浴内のその定常状態濃度を増大し、かつ/又はより硬質な安定な結晶性ZrP粒子を生成することができる。逆に、流量が少ないほど、より脆弱な生成物を生成するおそれがある。具体例として、反応物の添加時間は30分であり得る。他の流量及び時間を使用してもよい。
【0068】
本発明による方法により形成されるスラリー中のゾルゲルリン酸ジルコニウム粒子は、速やかな滴定により安定化され、スラリーのpHを上げ得る。例えば、スラリーを50%NaOH等の塩基で滴定して、pHを約1〜2の範囲に上げることができる(典型的に、形成されたときのスラリーのpHは0.1付近である)。その後、リン酸ジルコニウム粒子をさらに沈降及び硬化させた後、pH5.5又はpH6等のより高いpHまでゆっくりとスラリーを滴定して、最終生成物を得ることができる。部分滴定は、材料の酸性度の速やかな低減をもたらし、そうでなければ、(H格子がHOと結び付いてヒドロニウムイオンを形成し得るため)水和水の吸着及びゲルの軟化を誘導し得る。段階的にゆっくりと滴定を実施する利点は、アルカリの急速な添加が、ゲル粒子中における水の急速な形成を引き起こし、これにより粒子が破裂し、過剰な数の微粉が生成するおそれがあるからである。吸着剤透析カートリッジにおけるリン酸ジルコニウム粒子の特定の使用では、スラリー中に既存のNaイオン及びPOイオンの存在に起因する生成物中の最適なNa含有率を得るためにpH5.5への第2の滴定が好ましい。
【0069】
本発明で使用されるリン酸塩濃度範囲のゾルゲル沈殿が、高速反応である傾向にあるため、さらなる加熱なしに上記の技法を実行することができる。しかしながら、水を伴って実行される熱処理は、結晶化度を高めることによって、リン酸ジルコニウム粒子の分子構造を改善するのに役立ち得る。熱処理は、オキソ反応(oxolation reaction)を以下のように:
【0070】
【化3】

【0071】
進行させることによって、またゾルゲル沈殿において形成されるリン酸ジルコニウム格子からイオン性不純物を放出させることによって、ZrPの結晶構造を改善し得る。熱処理をどのように実行し得るかという一例として、リン酸ジルコニウムをゾルゲル沈殿により形成した後、反応スラリーを濾過及び洗浄して、塩化物、過剰なリン酸、硫酸塩及び添加剤化学物質を除去することができる。濾過により得られる濾過ケークをその後、1バッチ分脱イオン水(又はRO水)浴に入れ、スラリーを短時間撹拌してもよい(第1の洗浄)。例えば、スラリー中の総溶解固体レベル(TDSレベル)が1200ppm未満となるまで、濾過及び洗浄を繰り返してもよい。濾過ケークを、撹拌機を備える加熱ベッセル内の脱イオン水(又はRO水)浴に入れてもよく、穏やかな撹拌速度を伴って、約180F°〜185°F(約82℃〜85℃)にスラリーを適度な速度で加熱し、温度をこの範囲で1時間以上維持してもよい。次に、加熱したスラリーを室温まで冷却し、体積を水で調節することができる。その後、スラリーを、pH約1.8から開始して、pH5.75、pH6又はpH6.25(又はそれらの間の範囲)等の所望のpHまで、50%NaOH等の塩基で滴定して、異なるNa含有率及び酸性度のZrP生成物を得ることができる。滴定したZrPをその後、スラリー中のTDSレベルが500ppm未満になるまで、繰返し脱イオン水(又はRO水)で洗浄及び濾過し得る。最終洗浄後の濾過ケークを次に、箱型乾燥器に入れることができ、滴定した生成物を、約160°F〜180°F(71℃〜81℃)の温度におけるモイスチャーバランス(LOD)に基づき14%〜18%乾燥減量まで乾燥させ得る。最終生成物は、例えば30μm〜60μmの目的粒径範囲の易流動性の粉末形態であってもよく、凝集を伴わないもの(又は1重量%未満の凝集を伴うもの)であってもよい。
【0072】
本発明の性質を例示するような以下の実施例を示す。しかしながら、本発明は、これらの実施例に記載の特定の条件又は詳細に限定されないことを理解されたい。
【実施例】
【0073】
実施例1:ゾルゲル沈殿によるZrP粒子の調製
溶液Aは以下のように調製した。20gのZOC結晶を15mlの脱イオン水中に溶解し、15mlのイソプロパノールを溶液に添加した。その後、マグネチックスターラ又はプラスチックインペラにより撹拌しながら、全沈殿物が再溶解して透明な溶液となるまで撹拌を続けながら、約100滴の濃HClを溶液に添加した。
【0074】
溶液Bは以下のように調製した。30gの工業グレードのリン酸(76%)を、500ml容ビーカー内で60mlの水に希釈した。マグネチックスターラを用いて、希釈した酸を沸点まで加熱した。
【0075】
反応プロセス工程:
工程1:溶液Aを、沸点において、マグネチックスターラ又はプラスチックインペラを用いて適度な撹拌速度を伴い約10ml/分の流量で、溶液Bにポンプ注入した。
工程2:添加が完了して沈殿物のスラリーが生成した後、スラリーを1時間加熱して、アルコールを完全に揮散させ、AZP沈殿物の結晶構造を改善させた。
工程3:1時間加熱した後、スラリーを冷却させた。その後、沈殿物を脱イオン水で濾過及び洗浄し、過剰な未反応のリン酸を除去した。
工程4:水分レベルが5重量%LOD〜20重量%LODとなり易流動性の粉末が形成するまで、洗浄した生成物を180°Fの炉内で乾燥させた。粒径は25ミクロン〜45ミクロンの範囲内であった。
【0076】
実施例2
酸性リン酸ジルコニウム(AZP)生成物を、約200ml脱イオン水中の50%NaOHでpH6.0に滴定した後、濾過及び濾過した生成物の乾燥前に洗浄した以外は、実施例1を繰り返した。
【0077】
実施例3
実施例1における、ZOC/イソプロパノールとリン酸との混合プロセスを、酸の周囲温度で再度実施した。生成物を乾燥させると幾分凝集するものの、最終生成物のNH−N吸着容量は、高温混合により得られる生成物とおよそ同じであった。
【0078】
実施例4
2ミクロン〜10ミクロンの範囲の粒径を有するZrPは、実施例1の乾燥させた最終生成物を粉砕することにより、又は加熱したリン酸への添加及び強力撹拌による混合の前に、ZOC溶液の組成を以下のように変更することにより得られた。
ZOC溶液組成(溶液A):
ZOC固体 20gm
脱イオン水 15ml
イソプロパノール 30ml
濃HCl 0滴
微細粒径の生成物のNH−N吸着容量は、通常の粒径範囲(25ミクロン〜65ミクロン)のものよりも約10%〜20%増大することが見出された。
【0079】
実施例5
実施例1に関するスケールアップバッチは、溶液組成(溶液A及び溶液B)を調節することによって作製し、プロセスパラメータは下記の通りとした。
溶液A ZOC固体 500gm
脱イオン水 375ml
イソプロパノール 375ml又は300gm
濃HCl 70gm
溶液B 76%HPO 550gm
脱イオン水 2.2L
(注記:ZOC:HPOのモル混合比=約1:2.92)
【0080】
反応プロセス工程:
工程1:溶液Aを、沸点において、プラスチックインペラを用いて適度な撹拌速度(約80RPM)を伴って約25ml/分〜30ml/分の流量で、溶液Bに25分〜30分の添加時間でポンプ注入した。
工程2:添加が完了して沈殿物のスラリーが生成した後、スラリーを30分間加熱して、アルコールを完全に蒸発させ、AZP沈殿物の結晶構造を改善させた。
工程3:30分間加熱した後、スラリーを冷却させた。その後、沈殿物を濾過し、脱イオン水で洗浄して、過剰な未反応のリン酸を除去した。
工程4:濾過ケークを約3Lの脱イオン水に入れ、緩やかな速度で撹拌してスラリーを形成し、その後、50%NaOHによりpH6.0に滴定した。滴定したZrPをその後、濾液中のTDSが約500ppmとなるまで濾過及び再洗浄した。
工程5:水分レベルが約5重量%LOD〜20重量%LODとなり易流動性の粉末が形成するまで、洗浄した生成物を180°Fの炉内で乾燥させた。粒径は35ミクロン〜65ミクロンの範囲内であった。
生成物のNH−N吸着容量は、実施例1における少量サンプル試験と同じであった。
【0081】
実施例6
以下のようなZOC溶液組成(溶液A)と併せて、イソプロパノールの代わりに有機添加剤として酢酸を用い、実施例1を繰り返した。
ZOC固体 20gm
脱イオン水 15ml
氷酢酸 15ml
濃HCl 200滴
【0082】
実施例1と同じ、沸点におけるリン酸の量及び濃度を用いた。生成物は、脱イオン水で過度に洗浄して、残留酢酸を除去し、その後pH6.0に滴定した。NH−N吸着容量はイソプロパノールを用いて生成されたものよりもわずかに低いものの、乾燥の際に凝集を伴わず同一粒径のZrP生成物(35ミクロン〜65ミクロン)が得られた。
【0083】
実施例7
ZOC/酢酸溶液(溶液A)を周囲温度のリン酸に添加した以外は、実施例6を繰り返した。生成物を脱イオン水で過度に洗浄して、残留酢酸を除去した。生成物の半分をpH6.0に滴定する一方、残りの半分は滴定しないままにした。周囲温度の混合で(atambient temperature of mixing)得られる生成物は乾燥させると幾分凝集を有するものの、ZrP生成物は全て、生成物の混合温度及びpH滴定にかかわらず、実施例6と同じNH−N吸着容量を有していたことが示された。
【0084】
実施例8
周囲温度の混合における実施例7に関するスケールアップバッチは、溶液組成(溶液A及び溶液B)を以下のように調節することによって作製した。
溶液A ZOC固体 500gm
脱イオン水 375ml
氷酢酸 250ml又は260gm
濃HCl 94gm
溶液B 76%HPO 550gm
脱イオン水 2.2L
(注記:ZOC:HPOのモル混合比=約1:2.92)
【0085】
過剰量の水を使用して生成物を洗浄し、残留酢酸を除去した。周囲温度の混合で得られる生成物は乾燥させると幾分凝集を有するものの、滴定した生成物のNH−N吸着容量は、実施例7における少量サンプル試験とほぼ同じであった。
【0086】
実施例9
2ミクロン〜10ミクロンの範囲の粒径を有する微粒子ZrPは、実施例6の乾燥させた最終生成物を粉砕することにより、又は加熱したリン酸への添加及び強力撹拌による混合の前に、ZOC溶液の組成を以下のように変更することにより得られた。
ZOC溶液組成(溶液A):
ZOC固体 20gm
脱イオン水 15ml
氷酢酸 30ml
濃HCl 0滴
【0087】
微細粒径の生成物のNH−N吸着容量は、通常の粒径範囲(25ミクロン〜65ミクロン)のものよりも約10%〜20%増大することが見出された。
【0088】
実施例10:アンモニウム吸着容量が向上したZrP粒子
ZrP粒子を本発明によるゾルゲル法により、特許文献1によるゾルゲル法(添加剤としてグリセロール及び硫酸ナトリウムを用いた実施例2)により調製し、また塩基性硫酸ジルコニウム(BZS)から、或る(非ゾルゲル)方法により以下のように調製した。1kgのBZSを反応器内の脱イオン水に、適度な撹拌速度で添加しスラリーを形成した。その後、等量の水で希釈した約770mlの工業グレードのリン酸(76%)をスラリーにポンプ注入した。低速撹拌しながら、スラリーを適度な速度又は最大速度で180°F〜185°Fに加熱し、その後、該温度に達した後1時間温度を維持するように加熱した。次に、スラリーを室温まで冷却させた。生成物を、Buchnell漏斗において濾過し脱イオン水で洗浄した。その後、水分レベルが12重量%LOD〜18重量%LODとなるまで、濾過ケークを180°Fの箱型乾燥器内で乾燥させた。粒径は25ミクロン〜60ミクロンの範囲内であった。
【0089】
NH−N吸着容量を3つのNH−N曝露濃度で測定し、結果を比較した。表1に示される結果は、本発明に従って調製されるZrP粒子が、従前の方法により調製される粒子に比べて高いNH−N吸着を示すことを立証するものである。
【0090】
【表1】

【0091】
実施例11
乾燥後にZrP生成物(例えば実施例1のZrP)を微細粒径に粉砕することによって、20mg/dLの水中NH−N濃度(約28%)で28mg NH−N/gmから36mg NH−N/gmにNH吸着容量を増大させることができる。BZSから生成されるZrPと比較した粉砕後の吸着等温線は以下の表により示され得る。
【0092】
【表2】

【0093】
有機添加剤(イソプロパノール、酢酸、酒石酸、グリセロール、ポリビニルアルコール)、混合温度(周囲温度に対して沸点)、ZrPのpH(ZrPのpH6.0に対して未滴定のZrP)、及び粒径(35ミクロン〜65ミクロンに対して粉砕されたZrP微粉末(2ミクロン〜10ミクロン))を変えて、水中における他の典型的なNH−N吸着容量データを以下に示される表にまとめる(注記:NH−N吸着容量に影響を及ぼすことなく、ゾルゲルZrPを極めて小さい水分レベルまで乾燥させることができることが見出されるため、水分レベルデータはとらなかった)。














【0094】
【表3】

【0095】
実施例12
ZrP粒子の調製のためのゾルゲルプロセスの実験室規模のパラメータ研究を、例えば、ZOC溶液に対する添加剤の種類及び量、反応物混合方法、リン酸の量、粗製ゾルゲル(crude sol gel)の熱水処理、HClの量及び粒径を含む様々なパラメータについて実施した。本研究には、無機酸素添加剤(NaCO(ソーダ灰))を用いて調製されるZrP及びBZSから生成されるZrPを含む比較用ゲルが含まれる。生成物の粒子によっては、吸着容量、BET表面積、細孔容積、孔径分布及び/又はゲル膨潤特性の1つ又は複数について分析した。本実施例の目的では、上述した脱イオン(DI)水の代わりに逆浸透(RO)水を使用することができる。
【0096】
方法工程:
工程1:添加剤によるZOC溶液の調製(溶液A)
アルコール(イソプロパノール又は95%メタノール)、酢酸又はソーダ灰から選択される添加剤を用いて溶液Aを調製した。これらの種類の溶液を、溶液A1、溶液A2及び溶液A3と指定する。
【0097】
溶液A1は以下のように調製した。500gのZOC結晶を撹拌しながら375mlの脱イオン(DI)水中に溶解し、200mlの氷酢酸をZOC溶液に入れ、溶液混合物が完全に透明になるまで撹拌する(注記:より大きな粒径が所望であれば、酢酸との混合前に初めに、約50gmの濃HClを任意でZOC溶液に添加してもよい。溶液が透明になるまで、このようにして形成されるあらゆる沈殿物を再溶解させるように撹拌する)。
【0098】
溶液A2は以下のように調製した。500gのZOC結晶を撹拌しながら375mlの脱イオン水中に溶解し、300ml(イソプロパノール又は95%メタノール)をZOC溶液に入れ、溶液混合物が完全に透明になるまで撹拌する(注記:粒径を改善するための濃HClの添加は、溶液A1と同様に任意のものである)。
【0099】
溶液A3は以下のように調製した。500gのZOC結晶を撹拌しながら250mlの脱イオン水中に(完全に又は部分的に)溶解し、40gのソーダ灰を別のベッセル内で撹拌しながら125mLの脱イオン水中に(完全に又は部分的に)溶解した。ソーダ灰溶液(完全に又は部分的に溶解された)をZOC溶液に入れ、溶液混合物が完全に透明になるまで撹拌した(注記:濃HClの添加も、溶液A1及び溶液A2と同様に任意のものである)。得られる溶液を直ちに又は短時間のうちにゾルゲルZP合成に使用した。
【0100】
工程2:反応に使用されるリン酸の調製(溶液B)
溶液Bは以下のように調製した。600gの工業グレードのリン酸(76%)を500mLの脱イオン水中に溶解し、撹拌しながら混合させた。
【0101】
工程3:ZOC及びHPOの同時添加によるゾルゲルZPの沈殿反応
a)工程2で調製したおよそ280mlの希リン酸を4L容の反応器ベッセルに入れ、撹拌を240RPMで開始した。
b)溶液A及び溶液Bの添加が約30分後に同時に完了するように、2つの流体を同時に、周囲温度において両流体について約20mL/分の流量で反応器ベッセルにポンプ注入した。
c)スラリーを希釈するために、500mLの脱イオン水を添加し、ゾルゲルZP粒子が硬化するまで撹拌を続けた。
【0102】
工程4:粗製ゾルゲルZPの洗浄
工程3からの生成物のスラリーを真空バッチフィルタ(vacuum batch filter)内にポンプ注入し、濾過ケークを6Lの脱イオン水で簡単に洗浄し、塩化物を除去した(注記:熱水処理を以下の工程5で使用しない場合には、濾液のTDSが1200ppm未満となるまで濾過ケークを洗浄し続けることにより工程4から工程6における滴定前の(forpre-titration)過剰なPOの除去に直接移る)。
【0103】
工程5:熱水処理
工程4から得られる洗浄した濾過ケークを、4L容の反応器ベッセル内の3Lの脱イオン水中に入れ、低速で撹拌してスラリーを形成した。150gの76%HPOをスラリーに添加し、得られるスラリーを約90℃の温度に加熱して、該温度又は該温度をほんの少し下回る温度で1時間維持した後、加熱を止めスラリーを冷却させた。
【0104】
工程6:滴定前に過剰なPOを除去するための濾過/洗浄
工程5の冷却したスラリーを、熱水処理後に真空バッチフィルタにポンプ注入した。濾液のTDSが1200ppm未満となるまで、濾過ケークを脱イオン水で洗浄した。
【0105】
工程7:酸性ゾルゲルZPの濾過
酸性ゾルゲルZPの濾過ケークを、洗浄後に6L容の脱イオン水浴に入れ、穏やかに撹拌してスラリーを形成した。50%NaOHを添加することによってスラリーをpH6に滴定した。
【0106】
工程8:最終的な洗浄及び乾燥
工程7のスラリーを、滴定後に真空バッチフィルタにポンプ注入した。濾液のTDSが500ppm未満になるまで濾過ケークの洗浄を続けた。濾過ケークを箱型乾燥器に入れ、材料を100°F〜120°Fの温度で18%LOD〜22%LODの水分レベルまで乾燥させた。乾燥中の材料の連続撹拌を使用して、均質な乾燥を確実なものとした。
【0107】
工程9:粒径制御
乾燥生成物を易流動性の粉末に丁寧に粉砕し、軟質の凝集体を分解した。粉末生成物を篩分けし、試験のために或る(45〜90)ミクロン範囲又は別の(45〜180)ミクロン範囲の粒径を有する部分を確保した。
【0108】
製品品質の材料試験:NH−N吸着性
ゾルゲルZPサンプルのNH−N吸着性を以下の手順に従って試験した。
【0109】
1gmのサンプルを、(a)20mg/dLのNH−N、(b)30mg/dLのNH−Nの濃度の、脱イオン水中に溶解させた300mlの(NHCO溶液中で、5分間振とうした(注記:サンプル試験によっては、透析液(105mEq/LのNaCl、35mEq/LのNaHCO)中に溶解させた(NHCO溶液を用いることにより繰り返した)。Whatman #42による濾過をその後行い、残留NH−N濃度を、Indophenate Testにより分析し、サンプルの吸着容量を算出した。
【0110】
本発明の実施形態を表す様々なゾルゲルZPサンプル及び比較用又は対照用ゾルゲルZPサンプルについてのNH−N吸着性測定に関する結果を表4に示す。表4は指示要素4A〜4Jを含む。「Mic」はミクロンである。
【0111】
























【表4A】














【0112】
【表4B】





























【0113】
【表4C】



















【0114】
【表4D】

【0115】
【表4E】

















【0116】
【表4F】



















【0117】
【表4G】

【0118】
【表4H】


















【0119】
【表4I】













【0120】
【表4J】

【0121】
製品の品質−カートリッジ性能の試験
幾つかのゾルゲルサンプルの粒子を、カートリッジのNH−N吸着容量及び流動抵抗圧力並びにその漏出挙動に基づき吸着剤カートリッジ用途について、以下の通りの手順に従って評価した。
【0122】
REDYカートリッジキャニスタ内に800gmのゾルゲルZPを用いた以下の構成により、カートリッジを図1に示すように組み立てた。カートリッジのNH−N容量を試験する際、初めに、カートリッジに12Lの透析液(105mEq/LのNaCl、35mEq/LのNaHCO)を詰めた。その後、尿素の加水分解後の組成物を擬似するような(NHCO形態の50mg/dLのNH−Nを含有する54Lの透析液を、カートリッジに1回通過させた。NH−Nが2mg/dLを超えるレベルで破過するまで、溶液の1回の通過流量は250ml/分で維持した。未使用の(NHCO溶液の残留体積を記録し、カートリッジのNH−N吸着容量を以下の計算に基づき算出した。
(i)カートリッジのNH−N吸着容量=0.5gm NH−N/L×0.25L/分×破過時間(分)
(ii)0.5gm NH−N/L×(54L−残留体積(L))
【0123】
NH−N吸着に使用される未使用のZPを明らかにするようにZP層の横断面にNH指示溶液を噴霧することによって、カートリッジの流動力学を検査した。未使用部分を考慮することにより、800gmのZPカートリッジに対するNH−N容量を再度算出した。
【0124】
本発明の実施形態を表す様々なゾルゲルZPサンプル及び対照としてのBZS ZPゾルゲルによる比較についてのカートリッジ試験に関する結果を表5に示す。






【0125】
【表5−1】























【表5−2】

【0126】
6つのゾルゲルZPサンプルのBET表面積、細孔容積、単層容積及び孔径分布を、種々の添加剤及び処理条件を用いることにより、対照としてのBZS ZP生成物と比較して分析した。BET表面積は、ASTM D 6556等の既知の規格により測定することができる。窒素は、表面積測定に典型的に使用される被吸着剤である。本明細書に示されるBET値は全て少なくともBET窒素表面積を含む。クリプトン又はアルゴン等の他の気体を使用してもよい。細孔容積、(ラングミュア)単層容積及び孔径分布は、吸着法又は水銀多孔度測定により求めることができる。本明細書に示される細孔容積、単層容積及び孔径分布値は全て、水銀ポロシメトリ法を用いて求められる値を含む。上述のように、細孔容積及び孔径も、産業界において既知の吸着法により求めることができる。BET表面積、細孔容積、単層容積及び孔径分布は、例えば、これらの様々な分析を行うように設計された、Micromeritics Autoporeシリーズのポロシメータ等の商業用多孔度測定を用いて、又は他の多孔度測定機及び/又はZrPに利用可能な技法により測定することができる。
【0127】
本発明の実施形態を表す様々なゾルゲルZPサンプル並びに比較用及び対照用ゾルゲルについてのBET表面積、細孔容積、単層容積及び孔径の測定結果を表6に示す。





【0128】
【表6】

【0129】
カートリッジ設計に対するゾルゲルZPの膨潤の影響は、本発明の実施形態を表す様々なゾルゲルZPサンプル及び比較用又は対照用ゾルゲルZPサンプルについて、透析液中の材料とシクロヘキサンとの粒子密度の差異を測定することによって調査した。
【0130】
膨潤試験に関する結果を表7及び図2に示す。
【0131】
【表7】

【0132】
結果及び考察:
生成物のNH−N吸着性に関する結果について、ゾルゲルZPは、BZS ZP生成物よりも約100%の改善を有し、約20mg/g ZPのNH−N吸着容量を有する。表4に示されるように、ゾルゲルZPのNH−N吸着容量はプロセス条件に伴って変化し得る。例えば、生成物のNH−N吸着性の極大化を導くため、乾燥の際の過剰な凝集、及び微粒子の形成を防止するために、これらの条件を以下でさらに述べる。
【0133】
ZOCとHPOとの混合重量比について、結果は、500g:600gから500g:800gへの、ZOCと76%HPOとの混合重量比の増大によって、NH−N吸着容量を約45mg/gm ZPから49mg/gm ZPに増大させることができることを示す。しかしながら、HPOの量及び濃度が増大する場合、生成物はより結晶性となるものの、76%HPOの量が500g:1400gまでさらに増大するとしても、改善はそれ以上実現可能でないように思える。さらに、カートリッジの性能試験結果は、明らかに、材料の床多孔度及び粒径に起因する流動力学によるより大きな影響を受けるため、材料のこのような改善によってもたらされるような、カートリッジによるNH−N吸着容量の差異を示さない。このため、500g:600gの、ZOCと76%HPOとの重量混合比が、実験のこの段階で見ればゾルゲルプロセスに最適であると考えられ得る。
【0134】
ZOC及びHPOの同時添加について、ZOC及びHPOの同時添加は、沈殿反応中のより均質な組成及び粒径を有するゾルゲルZP粒子を生成することを助けるため、乾燥の際の生成物の凝集及び微粒子の形成を低減する。同時に、生成物のNH−N吸着容量は、熱水処理するまでもなく、一貫して40mg/g ZP〜45mg/g ZPの範囲に改善され得る。
【0135】
熱水処理について、希HPOの存在下における粗製ゾルゲルZPの熱水処理は、生成物のNH−N容量を一貫して40mg/g ZP〜45mg/g ZPの範囲に改善することが見出される。熱水処理は、結晶構造及び不適切な沈殿プロセス(例えば、ZOC及びHPOの同時添加代わりに順次添加)によりもたらされる生成物の低吸着性を改善するという利点を有する。方法は、濃度を2L当たり約500gmとし、かつ150gmの76%HPOを加熱前にスラリーに添加して、DI水又はRO水中で粗製ゾルゲルZPスラリーを約90℃にただ単に加熱すること、及び該温度を約1時間維持することである。
【0136】
ZOCに対する添加剤の種類及びその量について、以下の表に示される、ZOC溶液に対する添加剤の以下の種類及び量が、沈殿プロセス中の生成物のゲル化を防止すること、及びその多孔度を高めることによりそのNH−N吸着を改善することが見出される。
【0137】
【表8】

【0138】
上述のように、6つのゾルゲルZPサンプルのBET表面積、細孔容積、単層容積及び孔径分布を、種々の添加剤及び処理条件を用いることにより、表6に示される対照としてのBZS ZP生成物と比較して分析した。NH−Nにかかる気体吸着とイオン交換反応との間に直接的な関係は存在しないが、データは概して、ゾルゲルZPがBZS ZPよりも多孔性であることを示す。
【0139】
ZOCに添加する濃HClの量について、ゾルゲルZPの粒径は、ZOC溶液に少量の濃HCl(ZOC溶液650ml当たり約40ml)添加することによって任意に改善することができる。よって、撹拌速度及びHPOの任意の濃度と組み合わせて沈殿物の粒径を所望の範囲に制御することができる。
【0140】
表5に示される予備のカートリッジ性能について、様々な条件によって調製されるゾルゲルZPを使用する予備のカートリッジ性能を以下にまとめ得る。カートリッジ設計に対するゾルゲルZPの膨潤の影響について、高多孔度のゾルゲルZPは、COガスで飽和された透析液の吸収により、カートリッジ内のZP床の初期膨潤をもたらした後、透析液中のCOガスレベルが減少するにつれて床の収縮を起こし得る。BZS ZPのものと比較した、種々の添加剤及び処理条件により調製される幾つかの典型的なゾルゲルZPサンプルの膨潤データを表7及び図2に示す。上述のように、データは、透析液中の材料とシクロヘキサンとの粒子密度の差異を測定することによってとっている。ゾルゲルZPが概してBZS ZPよりも膨潤することが見てとれる。
【0141】
NH−N漏出及び流動抵抗圧力に対する粒径の影響について、粒径が45ミクロン〜90ミクロンに篩分けされたゾルゲルZPは、スポンジをZP層の上方に置く場合、(12psi未満の背圧では)如何なる流動抵抗ももたらさない。さらに、180ミクロン未満に篩分けされたゾルゲルZPは、床が粗く充填されていたとしてもNH−N漏出を有しない。これは、材料の高多孔度又はスポンジの性質に起因して、ゾルゲルZPがNH−Nを急速に吸着し得ることを示す。
【0142】
材料のNH−N容量データに対するカートリッジ尿素−N容量の相関関係について、800gmのゾルゲルZPをREDYカートリッジに使用する場合、最適な流動とは言えずNH−N吸着について約30%の未使用のZPをもたらすにもかかわらず、NH−N漏出を伴うことなく、一貫した17gm〜20gmのUNCが取得可能である。UNCは、より遅い流速、それゆえより均質な流動をもたらすより大きなキャニスタ内で材料を使用する場合に増大すると予想される。
【0143】
プロセス性能について、十分量のアルコール、酢酸又はソーダ灰をZOC溶液に添加する場合、ゾルゲルZP沈殿プロセスにおけるゲル化問題は存在しない。洗浄プロセス中に生成材料を容易に濾過することができ、乾燥の際に凝集は生じない。
【0144】
プロセス効率について、周囲温度におけるゾルゲルZP沈殿プロセスを容易に実施することができ、とりわけ熱水処理を伴わない場合にZPを生成する効率を大きく増大させることができる。ZOC及びHPOの同時添加は、熱水処理を省くことができる程に生成物の吸着性を改善し得る。
【0145】
粒径制御及び微粒子の量について、ゾルゲルZP粒径を沈殿プロセス中に(90〜180)ミクロン単位でわずかに大きくした後、粒径制御粉砕機により乾燥生成物粉末を所望の範囲に粉砕することによって、生成物の粒径制御は促され得る。実験室規模バッチ中の微粒子(45ミクロン未満)の量は5%未満であり得る。
【0146】
本発明によるZOC溶液に添加剤を使用することによりゲル化問題が解決された場合、本発明のゾルゲルプロセスはZPを製造するための極めて効率的かつ経済的な方法である。これらの結果は、ゾルゲルプロセスの改良設計から、現行の生成物よりも約80%高い(40〜45)mg/g単位のNH−N吸着容量を有するZP生成物を生成することが予想されることを示す。
【0147】
これらの研究において、800gmのゾルゲルZPを使用するカートリッジは、約30%〜35%の未使用のZPにより透析液から17gm〜20gmのNH−Nのみを除去し、これにより、材料をNH−N吸着において完全に利用する場合、吸着剤透析等について30gmの尿素−N容量が実現可能であり得ることが予測されると考えられる。
【0148】
本出願人は具体的に引用文献の内容全てを本開示において援用している。さらに、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲又は上の好ましい値及び下の好ましい値のリストのいずれかで挙げられる場合、これは、範囲が別々に開示されているかに関係なく、任意の上の範囲限定又は好ましい値と、任意の下の範囲限定又は好ましい値との任意の対からなる全ての範囲を具体的に開示していることを理解されたい。数値の範囲が本明細書中に列挙される場合、特に指定のない限り、その範囲は、端点、並びに範囲内の全ての整数及び小数値を含むように意図される。範囲を規定する場合、本発明の範囲が記載の具体的な値に限定されることを意図するものではない。
【0149】
本発明の他の実施形態は、本明細書及び本明細書中に開示される本発明の実施を考慮することにより、当業者に明らかとなるであろう。本明細書及び実施例は、例示的なものと見なされるに過ぎず、本発明の真の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲及びその均等物によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸ジルコニウム粒子を製造する方法であって、
(a)水性溶媒中でオキシ塩化ジルコニウムを少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤と組み合わせることであって、溶液を形成する、組み合わせること、及び
(b)(a)で得られる該溶液をリン酸と組み合わせると共に、該少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を除去することであって、ゾルゲル沈殿によりリン酸ジルコニウム粒子を得る、組み合わせると共に除去すること、
を含む、リン酸ジルコニウム粒子を製造する方法。
【請求項2】
工程(b)における該リン酸が、約90℃〜約100℃の温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤が、該溶液中でジルコニウムイオンと錯体を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
オキシ塩化ジルコニウムを該水性溶媒中に溶解し、その後、該低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤を添加して、工程(a)の該溶液を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
オキシ塩化ジルコニウムが、約1.1g/ml〜約1.5g/mlの濃度で該水性溶媒中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
オキシ塩化ジルコニウムが、該水性溶媒中に飽和濃度まで存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤が該水性溶媒中に存在し、その後、該オキシ塩化ジルコニウムを添加して、工程(a)の該溶液を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤が、該溶液中の該ジルコニウムイオンを実質的に全て該錯体に変換するのに十分なモル量で、工程(a)の該溶液中に存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤が、ジルコニウムイオンと可溶性重合錯体を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤が、アルコール、カルボン酸塩又はそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酢酸、プロピオン酸又はそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
リン酸がオルトリン酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(c)工程(b)から得られるリン酸ジルコニウム粒子を含有する水性スラリーを、約90℃〜約100℃の温度で実行される熱処理にかけること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(c)の該熱処理を少なくとも1時間実行する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(c)の該水性スラリーを該熱処理中撹拌する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
工程(b)中、ジルコニウムイオン及びホスフェート基が、約1〜約3のホスフェートに対するジルコニウムのモル比で存在するように、工程(a)で得られる該溶液と、リン酸の溶液とを組み合わせる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
リン酸が、約1.5モル/L〜約3モル/Lのモル濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程(b)の前に、(a)で得られる該溶液をHClと組み合わせることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
工程(b)で得られる該リン酸ジルコニウム粒子を単離すると共に乾燥させることであって、易流動性の粉末を得る、単離すると共に乾燥させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
制御された粒径を有するリン酸ジルコニウム粒子を製造する方法であって、
請求項1に記載の方法によるゾルゲル沈殿によりリン酸ジルコニウム粒子を形成することであって、該リン酸ジルコニウム粒子が、下記パラメータ:(a)オキシ塩化ジルコニウムと低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤との該溶液を該反応ベッセルに添加する速度、(b)リン酸の該溶液を該反応ベッセルに添加する速度、(c)リン酸の該溶液のpH、(d)該反応ベッセル内のオキシ塩化ジルコニウム、低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤又はリン酸の濃度、(e)該反応ベッセル内のHClの存在、(f)該撹拌機の速度、又は(g)それらの任意の組合せの1つ又は複数を制御することにより得られる粒径及び粒度分布を有する、リン酸ジルコニウム粒子を形成すること
を含む、制御された粒径を有するリン酸ジルコニウム粒子を製造する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法により形成されるリン酸ジルコニウム粒子を含む、組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤が、ジルコニウムイオンと錯体を形成することができる、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤が、アルコール、カルボン酸塩又はそれらの組合せである、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
低分子量の酸素含有単官能性有機添加剤が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酢酸、プロピオン酸又はそれらの組合せである、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子であって、以下の特徴:
約5ミクロン未満の平均粒径、
少なくとも10m/g ZrPのBET表面積、及び
10mg/dLのNH−Nにおける、約7mg〜9mg NH−N/g ZrPの、透析液中のアンモニア容量、
を有する、リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子。
【請求項26】
請求項25に記載のリン酸ジルコニウム粒子を含有する容器を備える、携帯用透析システム。
【請求項27】
リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子であって、以下の特徴:
約25ミクロン〜65ミクロンの平均粒径、
少なくとも10m/g ZrPのBET表面積、及び
10mg/dLのNH−Nにおける、約6mg〜8mg NH−N/g ZrPの、透析液中のアンモニア容量、
を有する、リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子。
【請求項28】
請求項27に記載のリン酸ジルコニウム粒子を含有するカートリッジを含む、透析カートリッジ。
【請求項29】
リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子であって、以下の特徴:
約45ミクロン〜90ミクロン未満の平均粒径、
少なくとも2m/g ZrPのBET表面積、及び
20mg/dLのNH−Nにおける、少なくとも約15mg NH−N/g ZrPの、透析液中のアンモニア容量、
を有する、リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子。
【請求項30】
少なくとも10m/g ZrPのBET表面積を有する、請求項29に記載の粒子。
【請求項31】
少なくとも0.0071mL/gの細孔容積、少なくとも0.5mL/g(STP)の単層容積、及び少なくとも30%の20nm〜80nmの孔径含有率をさらに有する、請求項29に記載の粒子。
【請求項32】
請求項29に記載のリン酸ジルコニウム粒子を含有するカートリッジを含む、透析カートリッジ。
【請求項33】
リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子であって、以下の特徴:
少なくとも0.0071mL/gの細孔容積、
少なくとも0.5mL/g(STP)の単層容積、及び
少なくとも30%の20nm〜80nmの孔径含有率、
を有する、リン酸ジルコニウム(ZrP)粒子。
【請求項34】
請求項33に記載のリン酸ジルコニウム粒子を含有するカートリッジを含む、透析カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−504546(P2012−504546A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530140(P2011−530140)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/058808
【国際公開番号】WO2010/039721
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(505324858)フレゼニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレーテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Holdings,Inc.
【Fターム(参考)】