説明

吸込ヘッド及び電気掃除機

【課題】 優れた吸込力を有する電気掃除機の吸込ヘッド及び電気掃除機を提供する。
【解決手段】
本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッド1は、第1の吸込口30から継手部4へ連通する吸込流路22と、回転運動により塵埃を捕集するローター10を収容する収納室16と、収納室16と吸込流路22とを連通させる第2の吸込口36と、を含む。吸込流路22は、上方に凸となるように湾曲する湾曲流路24を含み、第2の吸込口36は、湾曲流路24の内周面26に開口する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機の吸込ヘッド及び電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機の床ノズル本体の底部に設けられた吸込口と、吸込口から継手の間を連通する通気路と、吸込口に隔設された塵埃捕集部とを設け、塵埃捕集部は遮蔽板によって通気路と連通・遮蔽され、通気路もその遮蔽板によって遮蔽可能な電気掃除機の床ノズルが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、このような電気掃除機の床ノズル本体においては、特に、細長い繊維物質、例えば、ペットの毛などが狭い塵埃捕集部や遮蔽板に絡みつき、吸込力が低下しやすかった。また、このような床ノズル本体においては、塵埃捕集部と通気路とを連通させるために遮蔽板を開閉することによって、通気路が遮蔽板によって遮蔽もしくは狭くなるため、底部に設けられた吸込口からの吸込気流を制限することになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−113013号公報
【特許文献2】特開昭64−27523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた吸込力を有する電気掃除機の吸込ヘッド及び電気掃除機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドは、
第1の吸込口から継手部へ連通する吸込流路と、
回転運動により塵埃を捕集するローターを収容する収納室と、
前記収納室と前記吸込流路とを連通させる第2の吸込口と、
を含み、
前記吸込流路は、上方に凸となるように湾曲する湾曲流路を含み、
前記第2の吸込口は、前記湾曲流路の内周面に開口することを特徴とする。
【0007】
本発明の電気掃除機の吸込ヘッドによれば、第2の吸込口が湾曲流路の内周面に開口しているので、吸込流路における吸込気流に乱流を生じにくく、吸込流路を遮蔽もしくは狭めることなく優れた吸込力を有することができる。
【0008】
本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドにおいて、
前記収納室を構成する収納部は、上方に凸となるように湾曲する外壁を有し、
前記外壁は、前記湾曲流路の前記内周面を形成することができる。
【0009】
このようにすることで、本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドは、収納室内を高くすることができ、ローターと外壁との間隔を大きく取ることができ、塵埃を円滑にローターから第2の吸込口を通って吸込流路へ吸込むことができる。また、ローターと外壁との間隔を大きく取ることによって、特に、細長い繊維物質、例えば、ペットの毛などを含む塵埃であっても、吸込ヘッド内部の部材と絡まりにくく、吸込力の低下を招きにくい。
【0010】
本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドにおいて、
前記ローターは、前記吸込ヘッドの幅方向に延びる回転軸と、円弧状の表面に起毛した捕集部と、を有し、
前記収納室は、前記捕集部と摺接する起毛した除去部を有し、
前記第2の吸込口は、前記回転軸の上方であって、かつ、前記収納部の前記外壁の頂部に形成されることができる。
【0011】
このようにすることで、本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドは、起毛した捕集部と除去部とにより効率的に塵埃を捕らえることができ、しかも、第2の吸込口とローターとの間隔を大きく取ることができるので塵埃を円滑に吸込流路へ吸込むことができる。特に、細長い繊維物質、例えば、ペットの毛などを含む塵埃であっても、第2の吸込口とローターとの間隔が大きいので、吸込ヘッド内部の部材と絡まりにくく、吸込力の低下を招きにくい。
【0012】
本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドにおいて、前記第2の吸込口は、前記内周面の頂部に形成されることができる。このようにすることで、本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドは、吸込流路における吸込気流に乱流を生じにくく、優れた吸込力を有することができる。
【0013】
本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドにおいて、前記第2の吸込口は、前記第1の吸込口より小さな開口面積を有することができる。このようにすることで、本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドは、吸込流路における吸込気流に乱流を生じにくく、優れた吸込力を有することができる。
【0014】
本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドにおいて、前記第1の吸込口は、前記吸込ヘッドの前方に下方に開口して配置され、前記第1の吸込口の両端から前記吸込ヘッドの幅方向に延びかつ下方に開口する吸込溝に連結することができる。このようにすることで、本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドは、吸込ヘッドの幅方向に延びる吸込溝から第1の吸込口へ効率よく床面の塵埃を吸引することができる。
【0015】
本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドにおいて、前記吸込ヘッドの底面から下方へ突出して配置され、床面上を転がるキャスターと、前記キャスターの前記底面からの突出高さを変更するキャスター昇降機構と、をさらに有することができる。このようにすることで、本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドは、キャスターを昇降させることで吸込ヘッドと床面との距離を調節し、効率よく床面の塵埃を吸引することができる。
【0016】
本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドにおいて、前記キャスター昇降機構は、前記キャスターを保持する保持部と、前記吸込ヘッドの上方に突出するレバーと、該レバーと該保持部とを連結する連結部と、を含み、前記レバーは、前記吸込ヘッドの前後方向へ回動操作することによって前記保持部に保持された前記キャスターを昇降することができる。このようにすることで、本発明にかかる電気掃除機の吸込ヘッドは、上方に突出したレバーを前後に回動操作することができるので、キャスターの昇降動作を容易に操作することができる。
【0017】
本発明にかかる電気掃除機は、前記吸込ヘッドを具備したことを特徴とする。
【0018】
本発明の電気掃除機によれば、優れた吸込力を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態にかかる吸込ヘッドの全体を示す斜視図である。
【図2】同吸込ヘッドの上ケースを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】同吸込ヘッドの底面図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】図3におけるV−V断面図である。
【図6】キャスターの昇降動作を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる電気掃除機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
本発明の一実施の形態にかかる電気掃除機の吸込ヘッドは、第1の吸込口から継手部へ連通する吸込流路と、回転運動により塵埃を捕集するローターを収容する収納室と、前記収納室と前記吸込流路とを連通させる第2の吸込口と、を含み、前記吸込流路は、上方に凸となるように湾曲する湾曲流路を含み、前記第2の吸込口は、前記湾曲流路の内周面に開口することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の一実施の形態にかかる電気掃除機は、前記吸込ヘッドを具備したことを特徴とする。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態にかかる吸込ヘッド1の全体を示す斜視図であり、図2は、同吸込ヘッド1の上ケース2を取り外した状態を示す斜視図であり、図3は、同吸込ヘッド1の底面図であり、図4は、図3におけるIV−IV断面図であり、図5は、図3におけるV−V断面図であり、図6は、キャスター6の昇降動作を説明するための図である。また、図7は、本発明の一実施形態にかかる電気掃除機70の斜視図である。
【0024】
図1〜図3に示すように、電気掃除機の吸込ヘッド1は、吸込ヘッド1の幅方向Wに延びる上ケース2及び下ケース3と、図7に示す掃除機本体70の延長管73と連結される継手部4と、を有している。上ケース2は、上方に湾曲した略半円筒状の外形を有し、下ケース3の上に載置して固定されている。上ケース2の中央部には、吸込ヘッド1の前部Fから後方の継手部4側に延びる上方に突出した流路形成部20が形成されている。上ケース2の前部F側から見て右側には、レバー50が上ケース2を貫通して上方に突出している。なお、本明細書において、上下方向は吸込ヘッド1で床面を掃除する状態における床面側を下として説明し、前後方向は電気掃除機側に連通する継手部4のある側が後方として説明する。
【0025】
上ケース2を外した図2では、上ケース2と下ケース3との間に収納された各部の構成がわかる。下ケース3上には、前部F側であって上下に貫通する第1の吸込口30と、半円筒状の収納部40と、収納部40の外壁47に第1の吸込口30から継手部4へ溝状に形成された流路形成溝34と、流路形成溝34に開口した第2の吸込口36と、キャスター昇降機構8と、幅方向Wの両端にキャスター収納部42,42と、が設けられている。流路形成用溝34は、収納部40の外壁47と、その外壁47の上部外側に嵌め込まれたカバー46の上面とによって形成される。第2の吸込口36は、流路形成溝34の幅よりも狭く、第1の吸込口30より小さな開口面積を有する。
【0026】
図3に示すように、吸込ヘッド1の底面7には、前部F側に下方に開口する第1吸込口30及び吸込溝33,33が設けられ、後部R側にキャスター6,6及びローター10が設けられている。第1吸込口30は、その幅方向Wの両端で吸込溝33,33に連結している。吸込溝33,33は、吸込ヘッド1の幅方向Wに延びて、第1の吸込口30と合わせると吸込ヘッド1の幅とほぼ同じ長さに渡って形成されている。図2に示すように、吸込溝33,33を形成する吸込溝形成部32,32は、幅方向Wの両端から第1の吸込口30へ向かって緩やかに上方へ傾斜しており、吸込ヘッド1の幅を利用して効率よく床面の塵埃を吸引することができる。キャスター6,6は、ローター10を挟んで吸込ヘッド1の幅方向Wの両側に設けられている。ローター10の前後には、除去部14F,14Rが設けられている。
【0027】
図4に示すように、収納部40は、内部にローター10を収納する収納室16を有し、吸込流路22は、上ケース2の流路形成部20と収納部40の外壁47に形成された流路形成溝34との間に形成される。吸込流路22は、流路形成溝34の底面を内周面26とし、流路形成部20の上面を外周面27とし、流路形成溝34(すなわち流路形成部20)の幅で形成されている。また、吸込流路22は、第1の吸込口30から継手部40まで連通して形成され、第1の吸込口30側に第1の連結流路23と、継手部4側に第2の連結流路25と、第1の連結流路23と第2の連結流路25との間に湾曲流路24と、を含む。湾曲流路24は、上方に凸となるように湾曲して形成される。
【0028】
第2の吸込口36は、収納室16と吸込流路22とを連通させ、湾曲流路24の内周面26に開口している。第2の吸込口36は、内周面26の頂部に形成することができる。ここで、内周面26の頂部とは、頂部付近を含むものであることができる。第2の吸込口36は、流路形成溝34の底面の一部を構成するカバー46に形成されており、カバー46の下方にある収納部40の外壁47の頂部に開口する開口部38と連通し、収納室16と吸込流路22とを連通する。
【0029】
収納部40内には、回転運動により塵埃を捕集するローター10を収容する収納室16が形成されている。収納部40の外壁47は、上方に凸となるように湾曲し、その幅方向Wの中心付近を吸込流路22の内周面26として形成されている。ローター10は、縦断面が下方に凸の半円形で図3に示すように吸込ヘッド1の幅方向Wに沿って延びて配置される。ローター10の幅方向Wの両端には図示しない回転支持軸があり、収納室16の側壁に回転可能に支持され、回転軸Oを中心に前後に回転することができる。回転軸Oは、吸込ヘッド1の幅方向Wに延びる。ローター10は、その円弧状の表面の前後2箇所に起毛した捕集部12F,12Rを有する。収納部40は、捕集部12F,12Rと摺接する前後2箇所に起毛した除去部14F,14Rを有する。
【0030】
第2の吸込口36は、ローター10の回転軸Oの例えば鉛直方向の上方であって、かつ、収納部40の外壁47の頂部に形成される。なお、外壁47の頂部とは、頂部付近を含むものであることができる。外壁47は上方に凸となるように湾曲しているので、第2の吸込口36がその頂部に形成されることで、ローター10と第2の吸込口36との間隔を比較的大きくとることができる。このように、ローター10と第2の吸込口36との間隔が大きいことによって、ローター10によって収納室16内に捕りこまれた塵埃、特に、繊維物資、例えば、ペットの毛が収納室16内及び第2の吸込口付近に絡みつきにくく、円滑に吸込流路22へ吸引される。
【0031】
捕集部12F,12R及び除去部14F,14Rは、起毛した例えばパイルであり、捕集部12F,12Rのパイルとは逆目のパイルが除去部14F,14Rに配置される。捕集部12Fと捕集部12Rとの間には、ピン18が突出し、ピン18の先端に固定されたゴム弾性体が床面と接触することによりローター10が前後に回転運動をすることができる。また、ピン18は、除去部14F,14Rに当接することでローター10の回転を制限することができ、断面半円形状のローター10の外表面の中間位置に突出しているので前後の除去部14F,14Rの間でローター10を回転運動させることができる。
【0032】
ローター10の下方の床面から捕集部12F,12Rに捕捉された塵埃、例えば糸屑などはローター10が回転すると捕集部12F,12Rから除去部14F,14Rへ掻き取られ、さらに除去部14F,14Rから第2の吸込口36を通って吸込流路22へ吸引される。除去部14F,14Rは、ローター10の前後2箇所に配置されているため、吸込ヘッド1を前進させた時も後退させた時も効率よく床面から塵埃を除去することができる。また、除去部14F,14Rを2箇所に設けることで、ローラー10の回転方向における各除去部14F,14Rの長さを短くすることができ、除去部14F,14Rと第2の吸込口36との間隔を大きく取ることができる。また、このような除去部14F,14Rの長さに比べて捕集部12F,12Rの方が例えば2倍以上長くすることができる。このようにすることで、除去部14F,14Rに捉えられたペットの毛のような繊維物質であっても長い捕集部12F,12Rによって除去部14F,14Rから十分に長い距離を押し出すことができ、確実に第2の吸込口36へと吸い込ませることができる。
【0033】
捕集部12R及び除去部14Rの動作について説明すると、吸込ヘッド1を前進させると、ローター10の後側にある捕集部12Rによって床面の塵埃を捕捉しながら、ローター10が後側へ回転することで捕集部12Rは除去部14Rに摺接する。次に、吸込ヘッド1を後退させると、捕集部12Rの塵埃は除去部14Rに掻き取られる。さらに、吸込ヘッド1を前進させると、ローター10が後側へ回転することで捕集部12Rは除去部14Rに摺接し、除去部14Rに残っていた塵埃を捕集部12Rが収納室16内へ押出し、負圧になった収納室16から第2の吸込口36を通って吸込流路22へ円滑に吸引される。ローター10の前方では、捕集部12F及び除去部14Fは捕集部12R及び除去部14Rとは逆の回転によって同様の作業を行うことができる。このようなローター10の前後に設けられた捕集部12F,12R及び除去部14F,14Rは、特に、繊維物質、例えば、絨毯などに入り込んだペットの毛などであっても吸込ヘッド1を前後に動かすことで確実に取り除くことができる。
【0034】
図5及び図6に示すように、キャスター昇降機構8は、床面S上を転がるキャスター6と、レバー50を含む操作部5と、キャスター6を回転自在に保持する保持部60と、操作部5と保持部60とを連結する連結部52とを有する。レバー50を吸込ヘッド1の前後方向へ回動操作することによって保持部60に保持されたキャスター6を昇降することができる。
【0035】
連結部52は、収納部40の外壁47の上部の一部を覆うように幅方向Wに沿って延びる2つの第1の連結部54,54(図2参照)と、2つの第1の連結部54,54の間に形成された第3の連結部57(図4参照)と、第1の連結部54,54の外側両端部から下方へ延びる板状の第2の連結部56,56と、を含む。
【0036】
第1の連結部54は、収納部40の半円筒状の外壁47に沿って形成され、収納部40と上カバー2との間を前後方向に移動することができる。一方の第1の連結部54の上部からはレバー50が突出して形成され、操作者がレバー50を前後に操作することによって連結部52全体を移動することができる。
【0037】
第2の連結部56は、上端が第1の連結部54に接続し、下端において保持部60に接続している。第2の連結部56の下端には、キャスター6の軸部66を保持する保持部60,60と、保持部60,60の間に設けられた被支持部58と、を有する。
【0038】
第3の連結部57は、2つの第1の連結部54,54の間にあって、これらを連結し、流路形成溝34のカバー46の下方に前後方向に移動可能に配置されている。より詳細には、図4に示すように、第3の連結部57は、カバー46の第2の吸込口36を避けて前後方向に移動可能な開口が形成され、第2の吸込口36の前方に延びる第3の連結部57の一部はスリット41から収納室16内へ進入することができ、第2の吸込口36の後方に延びる第3の連結部57の一部は収納部40とカバー46との間で前後に移動可能である。なお、スリット41は、収納部40の上部に形成された隙間であり、上下方向に間隔を隔てた収納部40の外壁47の第1の端部41Aと第2の端部41Bとの間に形成される。スリット41は、第3の連結部57とともにカバー46によって覆われている。
【0039】
2つのキャスター6,6は、下ケース3のキャスター収納部42,42内に保持され、幅方向Wの両端付近(図3参照)に底面7から下方へ突出して配置されている。キャスター6は、軸部66を中心に回転自在である。軸部66は、その両端を保持部60の切欠部62に挟み込まれるとともに、切欠部62の下端から軸部66側に突出して形成された突起部64,64によって保持されている。軸部66は、キャスター収納部42の側壁下端面に形成されたガイド部43に当接して案内される。図6に点線で示すように、ガイド部43は、後方から前方へ上方に向かって傾斜し、その後端と前端とが平坦に形成される。軸部66が図5のように前端の平坦な部分に位置するときはキャスター6が上昇した位置にあり、軸部66が図6のように後端の平坦な部分に位置するときはキャスター6が下降した位置にある。キャスター6が上昇した位置にあると、床面Sから底面7までの高さHが最も低くなり、第1の吸込口30の吸込力が大きくなる。キャスター6が下降した位置にあると、床面Sから底面7までの高さHが最も高くなり、第1の吸込口30の吸込力が小さくなる。また、床面Sが絨毯などである場合には、その毛足の長さに応じて、ローター10の捕集部12F,12Rと絨毯の接触状態をキャスター6の昇降によって調整することができる。
【0040】
図6は、図5と同様にV−V断面図であるが、支持部44と被支持部58とを説明するために、図の手前側の保持部60の一部を切り欠いて示した部分縦断面図である。被支持部58は、第1の連結部54とキャスター6とのほぼ中間位置にあり、下方に凸の円弧状の湾曲凸面58Sと、湾曲凸面58Sの前後に突出した前当接部58Fと後当接部58Rとを有する。支持部44は、下ケース3から上方に突出し、先端に下方に凹の円弧状の湾曲凹面45Sと、湾曲凹面45Sの前後に上方に突出した前停止部45Fと後停止部45Rとが形成されている。図6においては、前当接部58Fと前停止部45Fとが当接してキャスター昇降機構8の前方への回転移動を制限している。図5においては、支持部44と被支持部58の状態はほとんど見えないが、後当接部58Rと後停止部45Rとが当接してキャスター昇降機構8の後方への回転移動を制限している。また、図6においては、湾曲凹面45Sから上方に突出した係合突起59が被支持部58と係合してキャスター昇降機構8が後方へ移動することを制限している。係合突起59は、弾性材、例えば合成樹脂製の柔軟性を有する材料を採用することができ、操作者が操作部5によって前後に移動させる動作を邪魔しない程度の移動制限力を与えることができればよい。
【0041】
図7に示すように、本発明の一実施の形態にかかる電気掃除機70は、吸込ヘッド1を具備したことを特徴とする。吸込ヘッド1は電気掃除機70に、蛇腹状のホース72、剛性のある合成樹脂製の延長管73を介して接続される。ホース72および延長管73は内部が中空になっており、電気掃除機70の内部に配置されている図示しない電動送風機によって内部の空気が吸気、排出されることにより負圧がかかることで吸込気流を発生させることができる。
【0042】
次に動作について説明する。ハンドル部74に設けられた図示しない操作スイッチによって電気掃除機70を運転することにより電動送風機が動き、電動送風機の前方の空気を吸気し、後方に排出されることにより真空状態になり負圧がかかることで吸込気流を発生させる。この負圧はホース72、延長管73を通じて吸込ヘッド1に伝えられる。このようにして発生した負圧は、吸込ヘッド1では吸込気流となり床面S上の塵埃を吸引することができる。
【0043】
吸込ヘッド1における負圧は、先ず継手部4を通じて、吸込流路22、第1の吸込口30及び第2の吸込口36に伝達される。そして、第1の吸込口30においては、負圧はさらに吸込溝33に伝達され、床面S上にある塵埃を吸込ヘッド1の幅方向Wのほぼ全体を有効に利用して集塵される。また、第2の吸込口36においては、負圧は収納室16に伝達され、収納室16に集塵された塵埃を吸込流路22へ吸引する。このとき、吸込流路22は上方に凸となるように湾曲して形成されているので、湾曲した流路の内周面に開口した第2の吸込口36は吸込流路22における吸込気流に乱流を生じにくい。しかも、第2の吸込口36は常時開口しているので、吸込流路22を遮蔽もしくは狭めることがなく、第1の吸込口30は優れた吸込力を有することができる。
【0044】
また、第2の吸込口36が内周面26の頂部に形成されることによって、さらに吸込流路22における吸込気流に乱流を生じにくく、第1の吸込口30における優れた吸込力を維持することができる。例えば、第2の吸込口36が頂部よりも前部F寄りに形成されていると、第2の吸込口36に吸込力が発生しにくくなる傾向があり、また、第2の吸込口36の付近における乱流の発生も危惧される。逆に、例えば、第2の吸込口36が頂部よりも後部R寄りに形成されていると、第2の吸込口36に吸込力が発生しやすくなる傾向があり、第1の吸込口30の吸込力を減少させる可能性がある。また、ローター10と第2の吸込口36との間隔が大きいことによって、ローター10によって収納室16内に捕りこまれた塵埃、特に、繊維物資、例えば、ペットの毛が収納室16内及び第2の吸込口付近に絡みつきにくく、円滑に吸込流路22へ吸引される。第2の吸込口36は、第1の吸込口30より小さな開口面積を有するので、吸込流路22における吸込気流に乱流を生じさせにくく、優れた吸込力を得ることができる。
【0045】
吸込ヘッド1を前後に移動させることによってピン18の先端が床面Sと接触し、ローター10を前後に回転移動させることができる。このようにローター10が前後に回転移動することにより、床面S上の塵埃、特にじゅうたんのようなパイルに絡みついた塵埃の場合、吸込溝33における吸込力だけでは捕集しにくい塵埃を捕集部12F,12Rのパイルで掻き取ることができる。捕集部12F,12Rに捕集された塵埃は、次の逆方向の回転移動の際に、除去部14F,14Rに設けられたパイルによって捕集部12F,12Rから除去部14F,14Rへ掻き取られ、さらに除去部14F,14Rから第2の吸込口36を通って吸込流路22へ吸引される。また、ローター10の前後に設けられた捕集部12F,12R及び除去部14F,14Rは、特に、繊維物質、例えば、絨毯などに入り込んだペットの毛などであっても吸込ヘッド1を前後に動かすことで確実に取り除くことができる。
【0046】
吸込ヘッド1は、キャスター6をキャスター昇降機構8によって昇降させることで吸込ヘッド1の底面7と床面Sとの距離H〜Hを調節し、効率よく床面の塵埃を吸引することができる。具体的には、図6に示す状態では吸込ヘッド1の底面7と床面Sとの距離Hは比較的高く、吸込ヘッド1の底面7と床面Sとの間に発生する吸込力は大きくないが、例えばじゅうたんのような床面Sに対しては、図5に示す状態とすることで、吸込ヘッド1の底面7と床面Sとの距離Hを比較的低くすることができ、吸込ヘッド1の底面7と床面Sとの間に発生する吸込力は大きくなる。キャスター昇降機構8は、レバー50を図6の状態から後当接部58Rが後停止部45Rに当接するまで後方へ押すと、支持部44の湾曲凹面45S上を被支持部58の湾曲凸面58Sが摺動しながら被支持部58を中心に保持部60を前方へ回動させる。保持部60に保持されたキャスター6は、軸部66がガイド43に案内されて前方かつ上方へ移動して、図5に示す状態になる。このように、上方に突出したレバー50を前後に回動操作することで、キャスター6を容易に昇降動作することができる。
【0047】
このように、吸込ヘッド1を装着した電気掃除機70は、優れた吸込力を有することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 吸込ヘッド、2 上ケース、3 下ケース、4 継手部、5 操作部、6 キャスター、7 底面、8 キャスター昇降機構、10 ローター、12F 捕集部、12R 捕集部、14F 除去部、14R 除去部、16 収納室、18 ピン、20 流路形成部、22 吸込流路、23 第1の連結流路、24 湾曲流路、25 第2の連結流路、26 内周面、27 外周面、30 第1の吸込口、32 吸込溝形成部、33 吸込溝、34 流路形成溝、36 第2の吸込口、37 開口部、40 収納部、41 スリット、41A 第1の端部、41B 第2の端部、42 キャスター収納部、43 ガイド部、44 支持部、45F 前停止部、45R 後停止部、45S 湾曲凹面、46 カバー、47 外壁、50 レバー、52 連結部、54 第1の連結部、56 第2の連結部、57 第3の連結部、58 被支持部、58F 前当接部、58R 後当接部、58S 湾曲凸面、59 係合突起、60 保持部、62 切欠部、64 突起部、66 軸部、70 電気掃除機、71 電気掃除機本体、72 ホース、73 延長管、74 ハンドル、F 前部、R 後部、S 床面、W 幅方向、O 回転軸、H 高さ、H 高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の吸込口から継手部へ連通する吸込流路と、
回転運動により塵埃を捕集するローターを収容する収納室と、
前記収納室と前記吸込流路とを連通させる第2の吸込口と、
を含み、
前記吸込流路は、上方に凸となるように湾曲する湾曲流路を含み、
前記第2の吸込口は、前記湾曲流路の内周面に開口することを特徴とする電気掃除機の吸込ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、
前記収納室を構成する収納部は、上方に凸となるように湾曲する外壁を有し、
前記外壁は、前記湾曲流路の前記内周面を形成することを特徴とする電気掃除機の吸込ヘッド。
【請求項3】
請求項2において、
前記ローターは、前記吸込ヘッドの幅方向に延びる回転軸と、円弧状の表面に起毛した捕集部と、を有し、
前記収納室は、前記捕集部と摺接する起毛した除去部を有し、
前記第2の吸込口は、前記回転軸の上方であって、かつ、前記収納部の前記外壁の頂部に形成されることを特徴とする電気掃除機の吸込ヘッド。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記第2の吸込口は、前記内周面の頂部に形成されることを特徴とする電気掃除機の吸込ヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記第2の吸込口は、前記第1の吸込口より小さな開口面積を有することを特徴とする電気掃除機の吸込ヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、
前記第1の吸込口は、前記吸込ヘッドの前方に下方に開口して配置され、前記第1の吸込口の両端から前記吸込ヘッドの幅方向に延びかつ下方に開口する吸込溝に連結していることを特徴とする電気掃除機の吸込ヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、
前記吸込ヘッドの底面から下方へ突出して配置され、床面上を転がるキャスターと、
前記キャスターの前記底面からの突出高さを変更するキャスター昇降機構と、をさらに有することを特徴とする電気掃除機の吸込ヘッド。
【請求項8】
請求項7において、
前記キャスター昇降機構は、前記キャスターを保持する保持部と、前記吸込ヘッドの上方に突出するレバーと、該レバーと該保持部とを連結する連結部と、を含み、
前記レバーは、前記吸込ヘッドを前後方向へ回動操作することによって前記保持部に保持された前記キャスターを昇降することを特徴とする電気掃除機の吸込ヘッド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸込ヘッドを具備したことを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−56089(P2013−56089A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196953(P2011−196953)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(391001457)アイリスオーヤマ株式会社 (146)
【Fターム(参考)】