説明

吸音パネル

【課題】吸音パネルの設置を容易にする。
【解決手段】本体部と、本体部の内部に収納された吸音材20と、本体部の長手方向の側面10bに設けられた深さが異なる凹部が階段状に形成された切欠部30とを備え、切欠部30は、本体部の内側に向けて第一深さを有し、支持部材5のフランジ部6に係合され、本体部を支持する第一凹部31と、第一凹部31に連続し第一凹部31よりも深い第二深さを有し、支持部材5のフランジ部6が挿入可能な第二凹部32とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架道路、高架鉄道等の桁下裏面の小梁等の支持部材間に取り付けられる吸音パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高架道路や高架鉄道等(以下、単に、高架道路等ともいう。)の桁下裏面に設けられた小梁間には、交通騒音レベルの低減のため、地上の一般道路等の交通騒音等を吸音する吸音パネルが設置されている。この吸音パネルは、内部に騒音等を吸音する吸音材が収納されており、交通騒音等を吸音する。更に、吸音パネルは、高架道路等の裏面部となるとともに、高架道路等の施工、点検及び補修等の作業時に作業用の足場となる。
【0003】
このような吸音パネルは、従来下記に示すように小梁間に取り付けられている。具体的に、特許文献1の吸音パネルは、上面を小梁の下側フランジ部の底面に当接させて、この下側フランジ部にボルトで締結されることで、小梁間に取り付けられている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の吸音パネルでは、小梁に仮置きすることが出来ず、作業性が悪い。更に、特許文献1の吸音パネルでは、作業者が上面に乗った場合に、この歩廊荷重をボルトだけで支持することとなり、支持力が弱い。更に、特許文献1の吸音パネルでは、ボルトが切断されると脱落してしまうので、別途、脱落防止部材等を用意する必要があり、作業性が悪い。
【0005】
また、特許文献2の吸音パネルでは、側面に断面略コ字状の切欠部が設けられており、この切欠部内に小梁の下側フランジ部が挿入されて、切欠部の上部壁である吸音パネルの平坦な背面が下側フランジ部の上面に係合されて、小梁に取り付けられている。このような特許文献2の吸音パネルは、切欠部によって下側フランジ部に係合されているので、小梁に仮置きすることが出来、特許文献1の吸音パネルよりも大きな歩廊荷重を支持することが出来、脱落を防止することが出来る。
【0006】
しかしながら、特許文献2の吸音パネルでは、切欠部内に小梁の下側フランジ部を挿入するために、小梁の長手方向の端部から順送りして取り付ける必要がある。よって、特許文献2の吸音パネルでは、例えば小梁の長手方向の中央部等の中途部に、小梁の下側フランジ部の下方から取り付けることが出来ず、作業性が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4518705号公報
【特許文献2】特開2009−068325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、施工作業性が良好で容易に取り付け設置することが出来る吸音パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吸音パネルは、橋梁の桁下裏面側に設けられた支持部材間に取り付けられる本体部と、上記本体部の内部に収納された吸音材と、上記本体部の長手方向の両側面に設けられた深さが異なる凹部が階段状に形成された切欠部とを備える。そして、上記切欠部は、上記本体部の内側に向けて第一深さを有し、上記支持部材のフランジ部に係合され、上記本体部を支持する第一凹部と、上記第一凹部と連続し該第一凹部よりも深い第二深さを有し、上記支持部材のフランジ部が挿入可能な第二凹部とを有している。
【0010】
更に、上記第二凹部は、支持部材のフランジ部を挿入出来るように、上記第一凹部が上記支持部材のフランジ部に係合された際に、最奥部と該支持部材のフランジ部の先端部との間の懐長が、上記本体部の側面と該支持部材のフランジ部の先端部との間の係り長よりも長くなるように形成されているようにしてもよい。
【0011】
更に、上記第二凹部は、支持部材のフランジ部を挿入出来るように、上記支持部材のフランジ部の厚さよりも大きな幅を有しているように構成してもよい。
【0012】
更に、上記第一凹部は、上記支持部材のフランジ部に係合された際に、該支持部材のウェブと上記本体部の側面との間のクリアランスよりも、該本体部の側面と該支持部材のフランジ部の先端部との間の係り長が大きくなるように形成されているようにしてもよい。これにより、吸音パネルは、取り付け時に、支持部材のウェブに接触したり、引っ掛かったりすることを防止することが出来る。
【0013】
更に、上記本体部の側面には、上記第二凹部の下方に、該本体部の側面よりも該本体部の長手方向に突出した突出部が形成されており、上記突出部は、上記第一凹部が上記支持部材のフランジ部に係合された際に、隣り合う当該吸音パネルの突出部と先端部同士が当接されるように設けられているようにしてもよい。これにより、吸音パネルは、支持部材のフランジ部を覆うことが出来、より一層高い吸音率で吸音することが出来る。
【0014】
更に、上記本体部の背面は、波板状に形成されているようにしてもよい。これにより、吸音パネルは、より一層大きな歩廊荷重を支持することが出来る。
【0015】
更に、上記本体部は、矩形状の背面と該背面の長手方向に位置する側面とが一体成形された第一本体部材と、矩形状の表面と該表面の長手方向と略直交する幅方向に位置する端面とが一体成形された第二本体部材とを有し、該第一本体部材と該第二本体部材とが組み合わされることで設けられているようにしてもよい。これにより、吸音パネルは、本体部の加工工数が少なくてすみ、安価に製造することが出来る。
【0016】
更に、上記支持部材のウェブを挟んで相対する互いに隣り合う当該吸音パネルは、それぞれ、上記支持部材のウェブにL字金具によって固定され、上記一片が上記本体部の背面に固定された一対のL字金具は、他片を該支持部材のウェブを挟んで対向させ、該支持部材のウェブの一つの取付孔に、固定部材によって固定されているようにしてもよい。これにより、支持部材のウェブに形成する取付孔の数を減らすことが出来、支持部材のウェブの強度を維持することが出来る。
【0017】
更に、上記吸音材は、スペーサを介して、上記本体部の表面上に、該本体部の表面との間に空間部を有するように配設されているようにしてもよい。これにより、吸音パネルは、より一層高い吸音率で吸音することが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明の吸音パネルによれば、切欠部の第一凹部が、支持部材のフランジ部に係合されることで、取付作業の際に仮置きすることが出来、従来よりも大きな歩廊荷重を支持することが出来、脱落を防止することが出来る。
【0019】
更に、本発明の吸音パネルによれば、切欠部の第二凹部が、第一凹部と連続し第一凹部よりも深さを有し、支持部材のフランジ部が挿入可能に設けられているので、取付作業の際に、本体部の一端側の第二凹部内に一方の支持部材のフランジ部を挿入することによって、本体部の他端側と他方の支持部材のフランジ部との間に間隙を形成することが出来、本体部の他端側を、他方の支持部材のフランジ部の下方から上方へ設けることで、支持部材間に容易に取り付けることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した吸音パネルが高架道路等の桁下裏面側の横梁間に取り付けられた様子を示した縦断面図である。
【図2】本発明を適用した吸音パネルが高架道路等の桁下裏面側の横梁間に取り付けられた様子を示した側面図である。
【図3】本発明を適用した吸音パネルを示した斜視図である。
【図4】本発明を適用した吸音パネルを示した幅方向の縦断面図である。
【図5】本発明を適用した吸音パネルを示した長手方向の縦断面図である。
【図6】L字金具を示した縦断面図である。
【図7】本発明を適用した吸音パネルを横梁に取り付ける様子を示した概略図である。
【図8】本発明を適用した吸音パネルを横梁に取り付ける様子を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用した吸音パネルについて、図面を参照して説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.概説
2.吸音パネル
2−1 本体部
2−2 吸音材
2−3 切欠部
2−4 L字金具
3.取付方法
4.効果
5.変形例
【0022】
<1.概説>
図1に示すように、例えば高架道路や高架鉄道等2(以下、単に、高架道路等ともいう。)の桁下裏面には、交通騒音レベルの低減のため、地上の一般道路3等の交通騒音等を吸音する吸音パネル1が設置されている。具体的に、吸音パネル1は、高架道路等2の桁下裏面側に吊り材4によって吊り下げられた支持部材となる横梁5,5間に、水平方向に取り付けられている。
【0023】
ここで、高架道路等2の裏面側に主桁から吊り材4で吊り下げられた横梁5は、図2に示すように、例えばH形鋼であって、図示例では高架道路等2の長手方向に間隔をあけて、道路幅方向に略水平に設置されている。このとき、横梁5は、ウェブ8を挟んで一対のフランジ部6,7が高さ方向に並ぶように設けられている。
【0024】
このような横梁5,5間に取り付けられる吸音パネル1は、高架道路等2の長手方向に隣り合う横梁5,5間にそれぞれ設けられ、地上の一般道路3等を走行する車両の騒音等を吸音する。更に、吸音パネル1は、高架道路等2の裏面部となるとともに、高架道路等2の施工、点検及び補修等の作業時に作業用の足場ともなる。
【0025】
<2.吸音パネル>
具体的に、図3に示すように、吸音パネル1は、本体部10と、この本体部10の内部に収納された吸音材20と、本体部10の長手方向の両側面10b,10cに設けられた深さが異なる階段状の切欠部30とを備えている。
【0026】
<2−1 本体部>
本体部10は、図3及び図4に示すように、例えば、一枚のアルミ材から、矩形状の背面10aとこの背面10aの長手方向に位置する側面10b,10cとが一体成形された第一本体部材11aと、矩形状の表面10dとこの表面10dの長手方向と略直交する幅方向に位置する端面10e,10fとが一体成形された第二本体部材11bとを有している。即ち、本体部10は、断面略コ字状に形成された二つの部材から成る。このような本体部10は、第一本体部材11aと第二本体部材11bとが組み合わされることで、内部に、吸音材20が収納される空間部が形成された直方体状に設けられている。本体部10は、二つの部材から成ることで、加工工数が少なくてすみ、安価に製造することが出来る。
【0027】
なお、本体部10は、二つの部材から成るように形成されていれば良く、例えば、第一本体部材11aが、背面10aと端面10e,10fとから成るようにしても良く、背面10aと側面10b,10cと端面10e,10fとから成るようにしても良い。
【0028】
更に、本体部10の背面10aは、折り曲げ成形されており、幅方向に、山部12と谷部13とが順次連続した波形状の断面を有する波板のように設けられている。従って、背面10aは、平坦な場合よりも大きな剛性を有し、より一層大きな歩廊荷重を支持することが出来る。
【0029】
更に、この背面10aの長手方向の端部10g,10gの近傍の山部12上には、後述するL字金具40によって横梁5に固定される際に、締結部材41が挿通される挿通部14が形成されている。挿通部14は、例えば、背面10aを貫通する円形状の貫通孔であり、ここでは、背面10aの長手方向の一端部10gの近傍に二個、他端部10gの近傍に二個、合計四個形成されている。なお、挿通部14は、長孔や切欠きであっても良く、形状及び個数は適宜変更可能である。
【0030】
更に、本体部10の表面10dは、表裏に貫通した貫通孔が所定のピッチで複数個形成されたパンチング加工が施されており、所謂パンチングメタル状に設けられている。更に、表面10d上には、図4に示すように、スペーサ21を介して、吸音材20が配設されている。
【0031】
<2−2 吸音材>
本体部10の内部に収納され、表面10d上に配設される吸音材20は、所謂グラスウールに代表されるようなガラス繊維集合体や、綿やポリエステル等の合成樹脂製の不織布等で構成されており、図3に示すように、表面10dの略全域を覆うように設けられている。このような吸音材20は、図4に示すように、スペーサ21を介して、表面10dとの間に空間部22を有するように、表面10d上に配設されている。
【0032】
そして、吸音材20を支持するスペーサ21は、吸音材20と同じ又は異なる吸音機能を有する材質で長尺状に形成されており、吸音材20と同様に吸音機能を有している。このようなスペーサ21は、長手方向を表面10dの長手方向に向けて、幅方向に所定の間隔をあけて複数個設けられている。なお、スペーサ21は、長手方向を表面10dの幅方向に向けて、長手方向に所定の間隔をあけて複数個設けるようにしてもよい。
【0033】
このような吸音材20は、騒音源から発せられて表面10dの貫通孔を通過して空間部22に入射された音を吸音する。このとき、吸音材20は、スペーサ21によって空間部22を有するように設けられているので、表面10dに直接配設される場合よりも、地上側への漏れが低減されて、高い吸音率で吸音することが出来る。更に、吸音パネル1は、吸音材20の地上への露出が低減されることで、景観性の向上を図ることが出来る。更に、吸音パネル1は、吸音材20を支持するスペーサ21も吸音機能を有することにより、より一層高い吸音率で吸音することが出来る。なお、スペーサ21は、吸音機能を有していなくてもよい。
【0034】
<2−3 切欠部>
更に、本体部10の長手方向の側面10b,10cには、図3に示すように、深さが異なる凹部が階段状に形成された切欠部30が設けられている。なお、切欠部30は、本体部10の一側面10bと他側面10cとで同じ構成を有しているので、ここでは、一側面10bの切欠部30について説明し、他側面10cの切欠部30については同じ符号を付して説明を省略する。
【0035】
具体的に、図5に示すように、切欠部30は、本体部10の内側に向けて第一深さを有する第一凹部31と、この第一凹部31と連続し、第一凹部31よりも深い第二深さを有する第二凹部32とを有している。これら第一凹部31及び第二凹部32は、本体部10の一端面10eから他端面10fに亘って形成されている。
【0036】
第一凹部31は、図4に示すように、例えば、上部の高さが背面10aの谷部13の高さと一致するように設けられており、横梁5の下側フランジ部6が切欠部30内に挿入された際に、天面部31a(谷部13)が下側フランジ部6の上面6aと係合される。従って、吸音パネル1は、取付作業の際に、下側フランジ部6に仮置きすることが出来る。更に、吸音パネル1は、脱落を防止することが出来、従来よりも大きな歩廊荷重を支持することが出来る。更に、吸音パネル1は、背面10aが波板状に設けられているので、背面10aが平坦なものよりも大きな歩廊荷重を支持することが出来る。
【0037】
更に、第一凹部31は、図5に示すように、天面部31a(谷部13)が下側フランジ部6と係合された際に、横梁5のウェブ8と背面10aの長手方向の一端部10gとの間のクリアランスAが、背面10aの長手方向の一端部10gと下側フランジ部6の先端部6bとの間の係り長Bよりも大きくなるように形成されている。
【0038】
更に、第二凹部32は、第一凹部31よりもさらに深く形成されており、第一凹部31の天面部31a(谷部13)が下側フランジ部6と係合された際に、下側フランジ部6の先端部6bと第二凹部32の最深部32aとの間の懐長Cが、係り長Bよりも長くなるように形成されている。更に、第二凹部32は、高さ方向において、下側フランジ部6の厚さDよりも大きな縦幅Eを有するように形成されている。
【0039】
従って、吸音パネル1は、一側面10b側の第二凹部32内に下側フランジ部6の先端部6bを挿入させることで、一端側に係り長Bの長さ以上移動させることが出来る。このとき、下側フランジ部6の奥行き、即ちクリアランスA+係り長Bは、一端部10gから第二凹部32の最深部32aまでの距離、即ち係り長B+懐長Cよりも大きく、クリアランスA>懐長Cを満たすように設定されている。従って、吸音パネル1がウェブ8に接触したり、引っ掛かったりすることを防止することが出来る。
【0040】
更に、本体部10の一側面10bには、第二凹部32の下部に、背面10aの長手方向の一端部10gよりも一端側に突出した突出部33が形成されている。突出部33は、第一凹部31の天面部31a(谷部13)が下側フランジ部6と係合された際に、高架道路等2の長手方向に隣り合う他の吸音パネル1の他側面10cの突出部33と、先端部33a,33a同士が当接されるように設けられている。
【0041】
これにより、突出部33は、隣り合う他の吸音パネル1の突出部33とともに、横梁5の下側フランジ部6を覆うことが出来る。従って、突出部33は、下側フランジ部6が吸音パネル1,1間から地上に露出されている場合よりも、下側フランジ部6を覆った分、高い吸音率で吸音することが出来る。
【0042】
このような切欠部30は、図8に示すように、吸音パネル1の長手方向における一端側の第二凹部32の最深部32aに対して下側フランジ6の先端部6bを奥まで挿入した状態で、他端側の切欠部30では下側フランジ6から完全に天面部31aが外れた状態となり、且つ、この天面部31aが外れた他端側の上端部位を下側フランジ6の下面よりも低位置となるように、吸音パネル1を回転させることが出来るように構成されている。
【0043】
<2−4 L字金具>
このような吸音パネル1は、図6に示すように、第一凹部31の天面部31a(谷部13)が下側フランジ部6に係合されて、下側フランジ部6に仮置きされた後に、L字金具40によって、横梁5のウェブ8に固定される。
【0044】
具体的に、L字金具40は、仮置きされた各吸音パネル1において、一方の片40aが背面10aの山部12上に配設され、ボルト41aが、背面10aの裏面側から山部12の挿通部14、一方の片40aの挿通孔42aの順に挿通された後に、一方の片40aの上面側でナット41bが締め付けられることで、一方の片40aが背面10aに固定される。更に、L字金具40は、横梁5に相対する一対の吸音パネル1,1の他方の片40b,40bをこの横梁5のウェブ8を挟み込むように設けた後に、ボルト43aが、一方の吸音パネル1の他方の片40bの挿通孔42b、ウェブ8の取付孔8a、他方の吸音パネル1の他方の片40bの挿通孔42bの順に挿通され、ナット43bが締め付けられることで、一対の吸音パネル1,1の他方の片40b,40bがウェブ8に固定される。以上のようにして、L字金具40は、仮置きされた各吸音パネル1を横梁5のウェブ8に固定する。
【0045】
このように一対の吸音パネル1,1を一つの取付孔8aに固定する場合には、一対の吸音パネル1,1を異なる取付孔8a,8aに固定する場合よりも、ウェブ8に形成する取付孔8aの数を減らすことが出来る。よって、加工工数を減らすことが出来るとともに、ウェブ8の強度を維持することが出来る。更に、一対の吸音パネル1,1を異なる取付孔8aに固定する場合には、背面10aの山部12の挿通部14を、幅方向で異ならせるように形成する必要があるが、一対の吸音パネル1,1を一つの取付孔8aに固定する場合には、背面10aの山部12の挿通部14を、幅方向に一致するように形成することが出来、加工工数を減らすことが出来る。
【0046】
なお、吸音パネル1は、ボルト41a,43a及びナット41b,43bのような締結部材41,43で締結されることに限定されるものではなく、リベット等の締結部材で締結してもよい。更に、一対の吸音パネル1,1を異なる取付孔8a,8aに固定するようにしてもよい。この場合には、他の吸音パネル1が取り付けられるのを待たずに、単独で横梁5のウェブ8に固定することが出来、作業性が良い。
【0047】
<3.取付方法>
次いで、吸音パネル1を、横梁5,5間に取り付ける取付方法について説明する。
【0048】
先ず、図7に示すように、吸音パネル1の長手方向の一端側を一方の横梁5の下側フランジ部6に向けて、図7中の矢印A1に示すように、一方の横梁5の下方から斜め上方に移動させて、吸音パネル1の一側面10bの切欠部30内に、下側フランジ部6の他方の先端部6bを挿入させる。
【0049】
次いで、図8に示すように、吸音パネル1の一側面10bの切欠部30内に下側フランジ部6の他方の先端部6bが挿入された状態で、図8中の矢印B1に示すように、吸音パネル1の他端側を回動させて持ち上げつつ、一側面10bの第二凹部32内に下側フランジ部6の他方の先端部6bを挿入させて、吸音パネル1を略水平(横梁5と略平行方向)に姿勢させる。
【0050】
このとき、吸音パネル1の第二凹部32は、懐長Cが係り長Bよりも長く、更に、高さ方向において、下側フランジ部6の厚さDよりも大きな縦幅Eを有するように形成されているので、吸音パネル1を一方の横梁5側に係り長Bの長さと略同じ又はやや大きく移動させて、本体部10の他端側と他方の横梁5の下側フランジ部6との間に間隙を形成することが出来、本体部10の他端側を、他方の横梁5の下側フランジ部6の下方から上方へ配置することが出来る。
【0051】
次いで、図8中の矢印C1に示すように、吸音パネル1の水平状態を維持したまま、他端側に移動させる。次いで、吸音パネル1の他側面10cの切欠部30の第二凹部32内に、他方の横梁5の下側フランジ部6の一方の先端部6bを挿入させる。次いで、吸音パネル1の両側面10b,10bの第一凹部31の天面部31a(谷部13)を、下側フランジ部6に係合させる。これにより、吸音パネル1は、横梁5,5間に仮置きされる。ここで、図5に示すように、下側フランジ部6の先端部6bと第一凹部31の最深部31bとの間隔bと、係り長Bとの大小関係は、吸音パネル1の長手方向の両端側においてそれぞれ間隔b<係り長Bを満たすように設定されている。これによって、吸音パネル1の長手方向の両端のうち、何れか一方の間隔b相当量だけ、この間隔を詰めるように吸音パネル1が水平移動して、詰められた側の間隔と反対側の係り長Bが狭まっても、この横ズレによって吸音パネル1がズレ落ちることを防止することが出来る。
【0052】
次いで、同様にして、吸音パネル1を、横梁5の長手方向に複数個仮置きするとともに、横梁5とこの横梁5の高架道路等2の長手方向の前方に位置する横梁5との間に、横梁5の長手方向に複数個仮置きする。以上のような作業を繰り返して、吸音パネル1を横梁5,5間に仮置きして行く。
【0053】
次いで、図6に示すように、仮置きされた各吸音パネル1の背面10aの山部12上に、L字金具40を配設する。次いで、ボルト41aを、山部12の挿通部14、一方の片40aの挿通孔42aの順に挿通させた後に、一方の片40aの上面側でナット41bを締め付けて、一方の片40aを各吸音パネル1の背面10aの山部12上に固定する。
【0054】
次いで、一方の横梁5を挟んで相対する一対の吸音パネル1,1の他方の片40b,40bをこの一方の横梁5のウェブ8に当接させる。次いで、ボルト43aを、一方の吸音パネル1の他方の片40bの挿通孔42b、ウェブ8の取付孔8a、他方の吸音パネル1の他方の片40bの挿通孔42bの順に挿通させた後に、ナット43bを締め付けて、一対の吸音パネル1,1の他方の片40b,40bをウェブ8に固定する。以上のようにして、各吸音パネル1を、横梁5,5間に取り付ける。
【0055】
なお、次いで、上述したような取付方法によって、横梁5,5間に取り付けられた吸音パネル1を取り外す取外方法について説明する。
【0056】
先ず、吸音パネル1を、横梁5のウェブ8に固定しているL字金具40のボルト41a,43a及びナット41b,43bを取り外す。
【0057】
次いで、吸音パネル1の水平状態を維持したまま、吸音パネル1を上方に持ち上げ、両側面10b,10cの第一凹部31の天面部31a(谷部13)を、下側フランジ部6の上面6aから離間させる。次いで、吸音パネル1の水平状態を維持したまま、図8中の矢印C2に示すように、吸音パネル1を、係り長Bの長さ分、一方の横梁5側に移動させて、吸音パネル1の一側面10bの切欠部30の第二凹部32内に、一方の横梁5の下側フランジ部6の他方の先端部6bを挿入させる。このとき、吸音パネル1は、係り長Bの長さ分一端側に移動されているので、他端側において、他方の横梁5との間に間隙が形成される。更に、クリアランスAが、係り長Bよりも長く設けられているので、吸音パネル1の一側面10bがウェブ8に接触することを防止することが出来る。
【0058】
次いで、吸音パネル1の一側面10bの第二凹部32内に下側フランジ部6の他方の先端部6bが挿入された状態で、図8中の矢印B2に示すように、吸音パネル1の一端側を中心に吸音パネル1の他端側を回動させて降下させ、吸音パネル1の他端側を、他方の横梁5の下側フランジ部6の下方の位置に設ける。
【0059】
次いで、吸音パネル1を、図7中の矢印A2に示すように、斜め下方に移動させて、一側面10bを下側フランジ部6の他方の先端部6bから取り出す。以上のようにして、横梁5,5間に取り付けられていた吸音パネル1を取り外すことが出来る。
【0060】
<4.効果>
本発明の吸音パネル1によれば、本体部の側面10b,10cに形成された切欠部30の第一凹部31が、横梁5の下側フランジ部6の上面6aに係合されることで、取付作業の際に仮置きすることが出来、従来よりも大きな歩廊荷重を支持することが出来、脱落を防止することが出来る。また、吸音パネル1の仮置き時における意図しない横ズレによっても吸音パネル1が下側フランジ部6からズレ落ちることを防止することが出来る。
【0061】
更に、本発明の吸音パネル1によれば、本体部の側面10b,10cに形成された切欠部30の第二凹部32が、第一凹部31と連続し第一凹部31よりも深さを有し、横梁5の下側フランジ部6が挿入可能に設けられているので、取付作業の際に、本体部10の一端側の第二凹部32内に一方の横梁5の下側フランジ部6を挿入することによって、本体部10の他端側と他方の横梁5の下側フランジ部6との間に間隙を形成することが出来、本体部の他端側を、他方の横梁5の下側フランジ部6の下方から上方へ設けることで、横梁5,5間に容易に取り付けることが出来る。
【0062】
よって、本発明の吸音パネル1によれば、横梁5の下側フランジ部6の下方から容易に取り付けることが出来る。更に、本発明の吸音パネル1によれば、例えば横梁5の長手方向の中央部等の中途部においても、容易に取り付けることが出来る。
【0063】
<5.変形例>
なお、本体部10の背面10aは、波板のように設けることに限定されるものではなく、平坦な面であってもよい。
【0064】
更に、吸音パネル1は、横梁5,5間に取り付けられるものに限定されるものではなく、高架道路等2の裏面側に、高架道路等2の道路幅方向に間隔をあけて、長手方向に略水平に設置された縦梁間に取り付けられるようなものでもよい。このとき、吸音パネル1は、長手方向を高架道路等2の道路幅方向に向けて、高架道路等2の長手方向に複数個取り付ける。
【符号の説明】
【0065】
1 吸音パネル、2 高架道路等、3 一般道路、4 吊り材、5 横梁、6 下側フランジ部、6a 上面、6b 先端部、7 上側フランジ部、8 ウェブ、8a 取付孔、10 本体部、10a 背面、10b 一側面、10c 他側面、10d 表面、10e 一端面、10f 他端面、10g 端部、11a 第一本体部材、11b 第二本体部材、12 山部、13 谷部、14 挿通部、20 吸音材、21 スペーサ、22 空間部、30 切欠部、31 第一凹部、31a 天面部、31b 最深部、32 第二凹部、32a 最深部、33 突出部、33a 先端部、40 L字金具、40a 一方の片、40b 他方の片、41a ボルト、41b ナット、42a 挿通孔、42b 挿通孔、43a ボルト、43b ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の桁下裏面側に設けられた支持部材間に取り付けられる本体部と、
上記本体部の内部に収納された吸音材と、
上記本体部の長手方向の両側面に設けられた深さが異なる凹部が階段状に形成された切欠部とを備え、
上記切欠部は、
上記本体部の内側に向けて第一深さを有し、上記支持部材のフランジ部に係合され、上記本体部を支持する第一凹部と、
上記第一凹部と連続し該第一凹部よりも深い第二深さを有し、上記支持部材のフランジ部が挿入可能な第二凹部とを有していることを特徴とする吸音パネル。
【請求項2】
上記第二凹部は、上記第一凹部が上記支持部材のフランジ部に係合された際に、最奥部と該支持部材のフランジ部の先端部との間の懐長が、上記本体部の側面と該支持部材のフランジ部の先端部との間の係り長よりも長くなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の吸音パネル。
【請求項3】
上記第二凹部は、上記支持部材のフランジ部の厚さよりも大きな幅を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の吸音パネル。
【請求項4】
上記第一凹部は、上記支持部材のフランジ部に係合された際に、該支持部材のウェブと上記本体部の側面との間のクリアランスよりも、該本体部の側面と該支持部材のフランジ部の先端部との間の係り長が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか1項記載の吸音パネル。
【請求項5】
上記本体部の側面には、上記第二凹部の下部に、該本体部の側面よりも該本体部の長手方向に突出した突出部が形成されており、
上記突出部は、上記第一凹部が上記支持部材のフランジ部に係合された際に、隣り合う当該吸音パネルの突出部と先端部同士が当接されるように設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか1項記載の吸音パネル。
【請求項6】
上記本体部の背面は、波板状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のうちの何れか1項記載の吸音パネル。
【請求項7】
上記本体部は、矩形状の背面と該背面の長手方向に位置する側面とが一体成形された第一本体部材と、矩形状の表面と該表面の長手方向と略直交する幅方向に位置する端面とが一体成形された第二本体部材とを有し、該第一本体部材と該第二本体部材とが組み合わされることで設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のうちの何れか1項記載の吸音パネル。
【請求項8】
上記支持部材のウェブを挟んで相対する互いに隣り合う当該吸音パネルは、それぞれ、該支持部材のウェブにL字金具によって固定され、
上記一片が上記本体部の背面に固定された一対のL字金具は、他片を該支持部材のウェブを挟んで対向させ、該支持具材のウェブの一つの取付孔に、固定部材によって固定されていることを特徴とする請求項1乃至7のうちの何れか1項記載の吸音パネル。
【請求項9】
上記吸音材は、スペーサを介して、上記本体部の表面上に、該本体部の表面との間に空間部を有するように配設されていることを特徴とする請求項1乃至8のうちの何れか1項記載の吸音パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−23967(P2013−23967A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161622(P2011−161622)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(510202167)Next Innovation合同会社 (30)
【Fターム(参考)】