説明

吹出口装置

【課題】 室内空間に面する部分の美観を損うことなく、調和空気の吹出や吹出停止に起因する温度変化に伴って装置各部に熱膨張や熱収縮の変形が生じても、これらに係る異音の発生を抑制できる吹出口装置を提供する。
【解決手段】 吹出口本体10における額縁部11の外縁部11aに、弾性材製のシール体12を係合させ、額縁部外縁部と天井50又は壁との間にシール体12を介在させ、額縁部11の温度変化に伴う熱膨張、熱収縮の各変形に対応してシール体12が弾性変形しつつ、額縁部11各部の天井50又は壁に対する変位を許容して、額縁部11を天井50又は壁からの拘束を受けない状態とすることから、調和空気の吹出や吹出停止に伴って額縁部11で熱膨張や熱収縮の変形が生じる際に、額縁部11が天井50又は壁に対し問題なく各部を変位させられ、額縁部11に拘束による歪みが生じず、歪みに起因する異音を抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和対象の室内空間に調和空気を吹出して空気調和を行う吹出口装置に関し、特に調和空気の吹出で生じた温度変化に伴う変形の影響を緩和する吹出口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和設備において、ダクトを通じて送られる調和空気を空気調和対象の室内空間に吹出す吹出口装置は、一般にその装置開口部を、室内空間に面する天井又は壁に穿設された開口孔の範囲にちょうど位置させて、この開口部から調和空気を室内空間に吹出すものとなっている。
【0003】
こうした吹出口装置の場合、室内側の開口部周縁に枠状の額縁部を設け、この額縁部を天井又は壁の開口孔周囲に密着させることで、天井又は壁の開口孔を直接室内からは見えないようにし、美観を維持している。このような従来の吹出口装置の一例として、特開平9−60958号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−60958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の吹出口装置は前記特許文献に示される構成となっているが、こうした吹出口装置で空気調和を行う場合、吹出す調和空気との接触に伴い、時間経過と共に装置各部が調和空気の温度に近付いていく。一般に吹出口装置は、天井材や壁材より伝熱性の優れた金属等で形成されているため、天井や壁より早く調和空気の温度に達する。
【0006】
一方、吹出口装置は常時調和空気を吹出しているわけではなく、省エネルギー目的や室温調整のために、一定時間おきに調和空気を吹出すなど間欠的に空気調和を実行することがあり、また、室内空間に人が入らない場合に休止状態とされることもある。吹出口装置が調和空気の吹出を停止し、空気調和を行わない間は、吹出口装置は室内空間の空気と接して、時間経過と共にその温度に近付くこととなる。そして、調和空気の吹出を停止した期間が長くなると、吹出口装置は室内空気とほぼ同じ温度に達する。
【0007】
ここで、調和空気と室内空間の既存空気との温度の差が大きく、且つ吹出口装置の調和空気吹出を停止していた期間が長く、吹出口装置各部の温度が室内空気に近いものとなっている場合を考えると、吹出口装置が調和空気の吹出を開始すると、温度差のある調和空気の接触に伴って吹出口装置各部が急激に温度を変化させることで、温度変化に伴う装置各部の膨張又は収縮の変形量も大きなものとなる。特にライン型吹出口の場合、吹出口額縁部の長辺寸法が大きくなることに伴って、額縁部の長辺における温度変化による変形量は大きくなる。
【0008】
これに対し、吹出口装置が設置される天井又は壁は、空気調和前の室内空気とほぼ同じ温度であり、調和空気が吹出されても、その温度は室内温度の緩やかな変化と共にゆっくりと変化し、温度変化に伴う変形量は極めて小さい。このため、吹出口装置の設置位置で額縁部と天井又は壁とが接触している中、吹出口装置で調和空気の吹出停止状態から新たに吹出を開始すると、額縁部は急激な温度変化に伴う変形で、ほとんど変形のない天井又
は壁に対して各部で変位しようとする。
【0009】
また、逆に、吹出口装置が吹出を継続して調和空気とほぼ同じ温度に達している一方で、天井又は壁空気調和前の室内空気温度とほとんど変らない温度を維持している状況で、調和空気の吹出を停止すると、吹出口装置の額縁部は調和空気に近い温度から室内温度まで温度変化する過程で変形して、前記同様ほとんど変形のない天井又は壁に対して各部で変位しようとする。
【0010】
こうして吹出口装置の額縁部が温度変化に伴う変形で変位しようとする際、接触する天井又は壁との摩擦が大きい場合や、額縁部端部が塗装された天井又は壁の塗膜に食込んでいる場合など、額縁部各部が天井又は壁に対し変位しにくい状態にあると、接触する天井又は壁により額縁部各部の変位が制限され、額縁部をはじめとする吹出口装置各部に歪みが生じていく。この歪みがある程度蓄積されて大きくなり、限界に達すると、額縁部が天井又は壁に対し歪みを解消するように動き、天井又は壁に接する額縁部が急激に動くことで、擦れ音やきしみ音、打音等の異音を発生させ、室内空間の静穏性に悪影響を及してしまうという課題を有していた。
【0011】
特に、夜間等に室内空間を快適な状態に維持するために、自動的に調和空気の吹出と停止が所定時間ごとに交互に繰返されるような状況では、室内空間内の人に騒音として認識される程度に、異音発生が顕著になるという課題を有していた。
【0012】
このような額縁部の温度変化に伴う変形が原因の異音発生を防止するために、天井又は壁に接する額縁部の端面に、吸音性のあるフェルトや植毛シートを貼付け、額縁部と天井又は壁との間にこうしたフェルト等を介在させる対策も従来から行われていたが、額縁部の細い端面にフェルトや植毛シートを貼り付けるのは困難で作業性に劣り、コスト高となる上、額縁部と天井又は壁との間にフェルト等を完全に収めるのは難しく、フェルト等が外側にはみ出した状態となって室内空間における美観を損ねてしまうという課題を有していた。
【0013】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、室内空間に面する部分の美観を損うことなく、調和空気の吹出や吹出停止に起因する温度変化に伴って装置各部に熱膨張や熱収縮の変形が生じても、これらに係る異音の発生を抑制できる吹出口装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る吹出口装置は、天井又は壁に配設され、空気調和対象の室内空間に上流側から供給された調和空気を吹出す吹出口装置において、調和空気を通過させる開口部を取囲んだ枠状体として形成され、室内空間側の周縁部に額縁部を有してなり、天井又は壁に配設される吹出口本体と、弾性材からなる細長い略線状体で形成され、長手方向に連続する溝部を設けられ、当該溝部に前記吹出口本体の額縁部の外縁部を挿入した状態として額縁部全周に係合させて配設され、額縁部外縁部と天井又は壁間に介在し、前記溝部を挟む二部分のうち一方を額縁部の外側に露出させるシール体とを備え、当該シール体における、前記溝部を挟む二部分のうち額縁部の外側に露出する前記一方の部分が、額縁部の外縁部に沿うと共に、天井又は壁から遠い側の端部位置を前記外縁部の端部と一致させる大きさとされてなるものである。
【0015】
このように本発明によれば、吹出口本体における額縁部の外縁部に、弾性材製のシール体を係合させ、額縁部外縁部と天井又は壁との間にシール体を介在させて、額縁部を天井又は壁に対しシール体を介して間接的に接触させ、額縁部の温度変化に伴う熱膨張、熱収縮の各変形に対応してシール体が弾性変形しつつ、額縁部各部の天井又は壁に対する変位
を許容して、額縁部を天井又は壁からの拘束を受けない状態とすることにより、調和空気の吹出や吹出停止に伴って吹出口本体各部が温度を変化させ、この温度変化により室内空間側の額縁部で熱膨張や熱収縮の変形が生じる際に、額縁部が係合するシール体を弾性変形させながら天井又は壁に対し問題なく各部を変位させられることとなり、変形に伴って変位しようとする額縁部が天井又は壁の拘束を受けて歪みを生じることもなく、歪みの蓄積とその解放による額縁部と天井又は壁との位置関係の急激な変化に伴う異音の発生を抑えられる。また、シール体の額縁部外側に露出する部分を額縁部外縁部に沿わせると共に、その端部位置を額縁部外縁部の端部位置と一致させることで、シール体の額縁部外側に露出する部分と額縁部との間に段差は生じず、またシール体の介在で額縁部と天井又は壁との間にも隙間は生じないこととなり、室内空間側から見た額縁部の美観をシール体で損うことがない上、額縁部の変形前後で美観を損ねないシール体装着状態をそのまま維持できる。
【0016】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記シール体が、天井又は壁との接触部位で天井又は壁との接触関係をそのまま維持しつつ、前記接触部位より額縁部寄りの部分で、額縁部の温度変化に伴う変形に応じて弾性変形可能な弾性変形能を有するものである。
【0017】
このように本発明によれば、シール体を十分な弾性変形能を有するものとし、調和空気の吹出や吹出停止に伴って吹出口本体各部が温度を変化させ、この温度変化に伴う変形が額縁部に生じた場合に、シール体が天井又は壁との接触部位における天井又は壁に対する接触関係をほとんど変えずに、シール体は額縁部各部の変形に応じて弾性変形し、額縁部各部の天井又は壁に対する相対移動を許容することにより、天井又は壁に接する部位が変位しないシール体と天井又は壁との間では摩擦が生じず、額縁部の温度変化に伴う変形の際に、弾性変形するシール体各部が天井又は壁に対し変位して擦れることで生じるおそれのある異音についても抑止でき、確実に額縁部付近からの異音発生を防げる。
【0018】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記シール体が、少なくとも前記天井又は壁との接触面を、天井又は壁に対して滑りを生じさせる低摩擦係数の表面状態とされてなるものである。
【0019】
このように本発明によれば、シール体の天井又は壁との接触面が低摩擦係数の表面として形成され、調和空気の吹出や吹出停止に伴って吹出口本体各部が温度を変化させ、この温度変化に伴う変形が額縁部に生じた場合に、シール体が額縁部の変形に応じて必要最小限弾性変形すると共に、弾性変形するシール体が天井又は壁に対し滑って、シール体各部の弾性変形に付随する天井又は壁に対する変位を許容することにより、額縁部の変形に対応してシール体が弾性変形し、天井又は壁に対しシール体が変位する状況でも、シール体と天井又は壁との間では摩擦が生じず、額縁部の温度変化に伴う変形の際に、弾性変形するシール体が天井又は壁に対し変位して擦れることで生じるおそれのある異音についても抑止でき、確実に額縁部付近からの異音発生を防げる。
【0020】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記シール体が、前記溝部を挟む二部分のうち額縁部の外側に露出しない他方の部分における天井又は壁から遠い側の端部より、額縁部の外縁部から離れる向きへ突出させて形成される補助当接片を有し、当該補助当接片がシール体長手方向に連続する形状とされてなり、前記補助当接片の先端部分を、少なくとも補助当接片自体の弾性力で天井又は壁に押付けて当接させるものである。
【0021】
このように本発明によれば、シール体のうち額縁部の外縁部の内周側に位置する部分に補助当接片を形成し、シール体が額縁部の外縁部と係合する部位で天井又は壁に接すると共に、さらに外縁部より内周側で補助当接片の先端部分を天井又は壁と当接させることに
より、吹出口本体外周と天井又は壁の開口孔の周縁との間の隙間を通った空気が、額縁部に係合したシール体と天井又は壁との間を抜けようとするのを、シール体が天井又は壁と二重に接して抑制することができ、額縁部と天井又は壁との間からの空気の漏れをより確実に抑えられ、空気の漏れが原因の天井又は壁の汚損や結露を防止できる。
【0022】
また、本発明に係る吹出口装置は必要に応じて、前記シール体が、前記溝部を挟む二部分のうち額縁部の外側に露出しない他方の部分における天井又は壁から遠い側の端部より、額縁部の外縁部から離れる向きへ突出させて形成される補助当接部を有し、当該補助当接部がシール体長手方向に連続する形状とされてなり、前記補助当接部の先端部分を、額縁部における前記吹出口本体の開口部寄りの端部に当接させると共に、補助当接部の中間部分を、少なくとも補助当接部自体の弾性力で天井又は壁に押付けて当接させるものである。
【0023】
このように本発明によれば、シール体のうち額縁部の外縁部の内周側に位置する部分に補助当接部を形成し、シール体が額縁部の外縁部と係合する部位で天井又は壁に接すると共に、さらに外縁部より内周側で補助当接部の中間部分をを天井又は壁と当接させることにより、吹出口本体外周と天井又は壁の開口孔の周縁との間の隙間を通った空気が、額縁部に係合したシール体と天井又は壁との間を抜けようとするのを、シール体が天井又は壁と二重に接して抑制することができ、額縁部と天井又は壁との間からの空気の漏れをより確実に抑えられ、空気の漏れが原因の天井又は壁の汚損や結露を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置の底面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置の縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置に用いるシール体の概略斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置における額縁部の拡大縦断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置の長手方向における熱収縮状態説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置の長手方向における熱膨張状態説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置における他のカバー部配設状態説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る吹出口装置における額縁部の拡大縦断面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る吹出口装置における額縁部の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る吹出口装置を前記図1ないし図6に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係る吹出口装置1は、矩形状の開口部10aを取囲む矩形の枠状体で形成され、室内空間側の周縁部に額縁部11を有してなり、天井50に配設
される吹出口本体10と、この吹出口本体10における額縁部11の全周に係合させて配設される弾性材製のシール体12とを備える構成である。
【0026】
前記吹出口本体10は、ライン型吹出口として、中心の矩形状の開口部10aを取囲む略枠状体で形成され、天井50の開口孔位置に天井裏空間と空気調和対象の室内空間のそれぞれに面する状態で支持される構成である。この吹出口本体10は、開口部10aのうち、天井裏空間に向けられた側の端部でダクト51から調和空気を導入し、開口部10aを通過した調和空気を室内空間に面する側の端部から室内空間に吹出せる仕組みである。
【0027】
吹出口本体10の室内空間側の端部には、外周側に所定幅突出拡張した額縁部11が形成される。額縁部11は、吹出口本体10の室内空間側の端部から開口部10aとは反対の外周側に突出した凸部分を周方向へ連続させ、さらに最外周部分を室内空間から天井50側へ向う方向に起立状態とした形状とされ、天井50の室内空間に面する下面に沿わせた状態で固定される。
【0028】
前記額縁部11の天井50に面する部分は、天井50側へ向って起立する最外周の外縁部11aと吹出口本体11の開口部10aに面する部分とに挟まれて、周方向に連続する略溝状の凹部11bとなっており、天井50への取付状態で額縁部11と天井50とに囲まれた空間を生じることとなる。
【0029】
この額縁枠11の凹部11bには、額縁枠11と天井50にそれぞれ当接して、天井裏から開口孔を通った空気が額縁部11と天井50との隙間から抜けるのを防止する弾性材製の封止体13が配設される。
【0030】
前記シール体12は、弾性材、例えば、塩化ビニル樹脂材、からなる可撓性を有する細長い略線状体で形成され、長手方向に連続する溝部12aを設けられて、略U字状の断面形状を有し、前記溝部12aに、吹出口本体10の額縁部11における天井50側へ向って起立する最外周の外縁部11aを挿入した状態として、額縁部11全周に係合させて配設される構成である。シール体12はこの額縁部11の外縁部11aへの係合状態で、溝部12aを挟む二部分のうち一方を額縁部11外側に露出させた状態で、額縁部11と天井50間に介在し、弾性変形しつつ天井50に当接することとなる。
【0031】
額縁部11より伝熱性に劣るシール体12が、額縁部11と天井50間に介在することで、額縁部11側から天井50への伝熱を抑えることができ、特に空気調和が冷房として行われる場合、天井材の温度低下を防止し、天井50が温かい室内空気と接触した際の結露を防げる。
【0032】
このシール体12における、溝部12aを挟む二部分のうち、額縁部11の外側に露出する前記一方の部分、すなわち、額縁部11の外縁部11aより外周側に位置する部分は、外縁部11aに沿うと共に、その天井50から遠い側の端部位置を外縁部11aの室内空間寄り端部と一致させる大きさとされる構成である。
【0033】
こうして、シール体12の額縁部11の外側に露出する部分の端部位置を外縁部11aと一致させることで、シール体12と額縁部11との間に段差が生じず、額縁部11とシール体12に一体感を与えることができ、室内空間側から見た額縁部11の美観をシール体12の配設で損うようなことはない。なお、シール体12の額縁部11への配設においては、シール体12同士の継目が必要最小限となるよう、シール体12を一本のみ用いて、額縁部11各辺の外縁部11aに連続させてシール体12を係合させるのが好ましい。
【0034】
次に、前記構成に基づく吹出口装置における吹出状態に伴う額縁部とシール体の変化に
ついて説明する。吹出口装置1が調和空気の吹出をしばらく停止し、額縁部11をはじめとする吹出口本体10が室内空気とほぼ同じ温度に達している状態で、吹出口装置1による調和空気の吹出が新たに開始されると、天井裏空間のダクト51から送られた調和空気は、吹出口本体10の開口部10aに進入し、室内空間に吹出される。そして、吹出口本体10各部は、吹出す調和空気との接触に伴い、時間経過と共に調和空気の温度に近付いていく。
【0035】
吹出口本体10各部が、室内空気とほぼ同じ温度から、調和空気の温度へ急激に変化していくことで、温度変化に伴う各部の膨張又は収縮の変形量も大きなものとなる。特に額縁部11における長辺部分の温度変化による変形量が大きくなる。
【0036】
これに対し、天井50は、調和空気の吹出に伴い、空気調和前の室内空気とほぼ同じ温度から、その温度を室内温度の緩やかな変化と共にゆっくりと変化させていき、額縁部11に比べて、温度変化に伴う変形量は極めて小さい。こうして、調和空気吹出後の急激な温度変化に伴う変形で、額縁部11各部はほとんど変形のない天井50に対してそれぞれ変位しようとする。
【0037】
冷房の場合、吹出口本体10各部が、冷たい調和空気との接触で、室内空気とほぼ同じ温度から急激に温度を低下させていき、各部に熱収縮の変形が生じ、熱収縮の変形量が極めて小さい天井50に対し、額縁部11各部がその端部側から中心側に向って進むように変位しようとする(図5参照)。
【0038】
また暖房の場合には、吹出口本体10各部が、暖かい調和空気との接触で、室内空気とほぼ同じ温度から急激に温度を上昇させていき、各部に熱膨張の変形が生じ、熱膨張の変形量が極めて小さい天井50に対し、額縁部11各部がその中心側から端部側に向って進むように変位しようとする(図6参照)。
【0039】
こうして天井50に対し変位しようとする額縁部11に対し、シール体12が係合し、額縁部11と天井50との間に介在していることで、額縁部11は、シール体12の一部変形を伴いながら、天井50に対し接触による摩擦抵抗を受けることなく相対移動できる。額縁部11が天井50の拘束を受けず、温度変化に伴ってスムーズに熱膨張や熱収縮の変形が進行していくことで、歪みが蓄積されて額縁部11と天井50との位置関係に急激な変化が生じるような事態を防止し、異音を発生させない。
【0040】
額縁部11の変形に合わせて、シール体12は主に長手方向に弾性変形しながら、天井50と接触する部分では擦れ、すなわち摩擦を生じるが、このシール体12は、弾性変形するために歪みが蓄積されることはなく、またシール体12表面は天井50に対し、額縁部11が天井50に直接当接する場合より摩擦抵抗の小さい性質を有することで、シール体12と天井50との関係で異音を生じることはない。
【0041】
続いて、上記とは逆に、吹出口装置1が調和空気の吹出をしばらく継続して、額縁部11をはじめとする吹出口本体10が調和空気とほぼ同じ温度に達している状態から、吹出口装置1による調和空気の吹出を停止し、この吹出停止状態が続く状況では、吹出口本体10各部は、調和空気に代って室内空気との接触に伴い、時間経過と共に室内の温度に近付いていく。
【0042】
吹出口本体10各部が、調和空気とほぼ同じ温度から、これと温度差のある室内の温度へ変化していくことで、温度変化に伴う各部の膨張又は収縮の変形量も大きなものとなる。これに対し、天井50は、空気調和中の室内空気とほぼ同じ温度から、その温度を室内温度の緩やかな変化と共にゆっくりと変化させていき、額縁部11に比べて、温度変化に
伴う変形量は極めて小さい。こうして、調和空気吹出停止後の急激な温度変化に伴う変形で、額縁部11各部はほとんど変形のない天井50に対してそれぞれ変位しようとする。
【0043】
冷房後の場合、吹出口本体10各部が、冷たい調和空気に代る室内空気との接触で、調和空気とほぼ同じ温度から急激に温度を上昇させていき、各部に熱膨張の変形が生じ、熱膨張の変形量が極めて小さい天井50に対し、額縁部11各部がその中心側から端部側に向って進むように変位しようとする。
【0044】
また暖房後の場合には、吹出口本体10各部が、暖かい調和空気に代る室内空気との接触で、調和空気とほぼ同じ温度から急激に温度を低下させていき、各部に熱収縮の変形が生じ、熱収縮の変形量が極めて小さい天井50に対し、額縁部11各部がその端部側から中心側に向って進むように変位しようとする。
【0045】
前記同様、天井50に対し変位しようとする額縁部11に対し、シール体12が係合し、額縁部11と天井50との間に介在していることで、額縁部11は、シール体12の一部変形を伴いながら、天井50に対し接触による摩擦抵抗を受けることなく移動できる。額縁部11が天井50の拘束を受けず、温度変化に伴ってスムーズに熱膨張や熱収縮の変形が進行していくことで、前記同様に異音の発生はない。
【0046】
額縁部11の温度変化に伴う変形に際し、シール体12は額縁部11に対応してその長手方向に変形するものの、シール体12の上下方向の変形は長手方向の変形量に対し極めて小さくなっており、シール体12における額縁部11の外側に露出する部分の端部位置が、外縁部11aと一致する状態はほとんど変化せず、シール体12と額縁部11との間に段差が生じるようなことはない。また、シール体12と天井50との間に隙間も生じず、シール体12全体として美観を損ねない装着状態を維持できる。
【0047】
このように、本実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口本体10における額縁部11の外縁部11aに、弾性体のシール体12を係合させ、外縁部11aと天井50との間にシール体12を介在させて、額縁部11を天井50に対しシール体12を介して間接的に接触させ、額縁部11の温度変化に伴う熱膨張、熱収縮の各変形に対応してシール体12が弾性変形しつつ、額縁部11各部の天井50に対する変位を許容して、額縁部11を天井50からの拘束を受けない状態とすることから、調和空気の吹出や吹出停止に伴って吹出口本体10各部が温度を変化させ、この温度変化により額縁部11で熱膨張や熱収縮の変形が生じる際に、額縁部11が係合するシール体を弾性変形させながら天井50に対し問題なく各部を変位させられることとなり、変形に伴って変位しようとする額縁部11各部が天井50の拘束を受けて歪みを生じることもなく、歪みの蓄積とその解放による額縁部11と天井50との位置関係の急激な変化に伴う異音の発生を抑えられる。
【0048】
なお、前記実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口をライン型として形成する構成としているが、これに限らず、額縁部のある他の吹出口形状、例えば丸型、あるいは角型の、多層コーン型やパン型の吹出口に適用する構成とすることができる。
【0049】
また、前記実施形態に係る吹出口装置においては、シール体12として、弾性体で且つその表面が額縁部11よりも天井50に対する摩擦抵抗の小さい性質を有するもの、例えば塩化ビニル樹脂等を用いる構成としているが、これに限らず、吹出口装置を設ける天井又は壁が摩擦抵抗の大きい材質とされ、シール体と天井又は壁との摩擦でも異音が発生するおそれのある場合には、シール体をフッ素樹脂等の摩擦係数の低い弾性体としたり、シール体の天井又は壁に接する表面を低摩擦係数の滑りやすい面となるように表面処理等加工する構成とすることもでき、シール体と天井又は壁とを滑らかに摺動させて異音発生等の異常を避けられる。この他、シール体の弾性変形能をさらに大きくして、シール体の天
井又は壁に接する部位が動かない状態を維持しても、シール体の他部分の弾性変形で額縁部の温度変化による変形に十分対応できる構成とすることもでき、シール体と天井又は壁との間で摩擦が生じることがなく、シール体と天井又は壁との間で異音が発生する余地をなくして、額縁部の温度変化に伴う変形に起因する異音発生を確実に防止できる。
【0050】
また、前記実施形態に係る吹出口装置において、シール体12は、このシール体12における溝部12aを挟んで額縁部11の外縁部11a外周側に位置する部分と内周側に位置する部分との大きさをほぼ一致させた略U字状の断面形状を有する構成としているが、これに限らず、図7に示すように、シール体14を、額縁部11の外縁部11a外周側に位置する部分に対し、内周側に位置する部分の大きさを小さくした、略J字状断面形状を有する構成としてもかまわない。
【0051】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る吹出口装置を図8に基づいて説明する。
前記図8において本実施形態に係る吹出口装置は、前記第1の実施形態同様、吹出口本体20と、額縁部21と、シール体22とを備える一方、異なる点として、シール体22が、溝部22aを挟む二部分のうち額縁部21の外側に露出しない他方の部分における天井50から遠い側の端部より、額縁部21の外縁部21aから離れる向きへ突出させて形成される補助当接片22bを有し、シール体22全体としては略N字状の断面形状として形成される構成を有するものである。なお、額縁部21を含む吹出口本体20は前記第1の実施形態同様の構成であり、説明を省略する。
【0052】
前記シール体22は、溝部22aを挟む二部分のうち額縁部21の外側に露出しない他方の部分、すなわち、額縁部21の外縁部21aより内周側に位置する部分と、この部分の天井50から遠い側の端部より、外縁部21aから離れる向きへ突出させて形成される補助当接片22bとを有する構成である。
【0053】
補助当接片22bは、シール体長手方向に連続する形状とされてなり、額縁部21の凹部21bに収った状態で、その先端部分、すなわち額縁部21の外縁部21aから離れた端部を、補助当接片22b自体の弾性力で天井50に押付けて当接させる。
【0054】
この補助当接片22bの先端部分は、先端に向うほど薄くなる舌片状とされると共に、先端を吹出口本体20の開口部20a側に向けた形状として形成されており、吹出口本体20外周と天井50の開口孔の周縁との間の隙間を通った空気の圧力が、凹部21bのある額縁部21と天井50との間の空間に加わった場合でも、補助当接片22bの先端部分が天井50に押付けられる方向に力を受けることとなり、補助当接片22bの先端部分は天井50との密着状態を維持できる。
【0055】
次に、前記構成に基づく吹出口装置における吹出状態に伴う額縁部とシール体の変化について説明する。吹出口装置が調和空気の吹出をしばらく停止し、吹出口本体20が室内空気とほぼ同じ温度に達している状態で、吹出口装置による調和空気の吹出が新たに開始されると、前記第1の実施形態同様、吹出口本体20各部は、室内空間へ吹出す調和空気との接触に伴い、時間経過と共に調和空気の温度に近付いていく。
【0056】
冷房の場合、吹出口本体20各部が、冷たい調和空気との接触で、室内空気とほぼ同じ温度から急激に温度を低下させていき、各部に熱収縮の変形が生じ、熱収縮の変形量が極めて小さい天井50に対し、額縁部21各部がその端部側から中心側に向って進むように変位しようとする。
【0057】
また暖房の場合には、吹出口本体20各部が、暖かい調和空気との接触で、室内空気と
ほぼ同じ温度から急激に温度を上昇させていき、各部に熱膨張の変形が生じ、熱膨張の変形量が極めて小さい天井50に対し、額縁部21各部がその中心側から端部側に向って進むように変位しようとする。
【0058】
こうして天井50に対し変位しようとする額縁部21に対し、シール体22が係合し、額縁部21と天井50との間に介在していることで、額縁部21は天井50の拘束を受けず、額縁部21では温度変化に伴ってスムーズに熱膨張や熱収縮の変形が進行していくことで、歪みが蓄積されて額縁部21と天井50との位置関係に急激な変化が生じるような事態を防止でき、異音の発生はない。
【0059】
また、額縁部21の変形に合わせて、シール体22は弾性変形しながら、天井50と接触する部分では擦れ、すなわち摩擦を生じるが、弾性変形するシール体22に歪みが蓄積されることはなく、且つシール体22表面は額縁部21の場合より天井50に対し摩擦抵抗の小さい性質を有することで、シール体22と天井50との関係で異音を生じることはない。
【0060】
この時、額縁部21と天井50の間では、調和空気の一部がダクト51から開口部20aに進む代りに、吹出口本体20外周と天井50の開口孔の周縁との間の隙間に進入し、この隙間を抜けた調和空気の圧力がシール体22に加わることとなるが、舌片状となっている補助当接片22bの先端部分が、天井50に押付けられる方向に力を受けることで、補助当接片22bの先端部分と天井50との密着状態が維持されることとなる(図8参照)。こうして、空気が補助当接片22bと天井50との間を抜けて額縁部21の外側へ向けて進もうとするのを抑制でき、シール体22における額縁部21の外縁部21aと天井50との間に介在する部位で空気の漏れを防げるのと合わせて、額縁部21と天井50との間を空気が抜けようとするのを、シール体22で二重に阻止することができ、額縁部21と天井50との間からの空気の漏れを確実に抑えられ、この空気の漏れが原因で生じる天井50の汚損や結露を防止できる。
【0061】
続いて、上記とは逆に、吹出口装置2が調和空気の吹出をしばらく継続して、吹出口本体20が調和空気とほぼ同じ温度に達している状態から、吹出口装置2による調和空気の吹出を停止し、この吹出停止状態が続く状況では、前記第1の実施形態同様、吹出口本体20各部は、調和空気に代る室内空気との接触に伴い、時間経過と共に室内の温度に近付いていく。
【0062】
冷房後の場合、吹出口本体20各部が、冷たい調和空気に代る室内空気との接触で、調和空気とほぼ同じ温度から急激に温度を上昇させていき、各部に熱膨張の変形が生じ、熱膨張の変形量が極めて小さい天井50に対し、額縁部21各部がその中心側から端部側に向って進むように変位しようとする。
【0063】
また暖房後の場合には、吹出口本体20各部が、暖かい調和空気に代る室内空気との接触で、調和空気とほぼ同じ温度から急激に温度を低下させていき、各部に熱収縮の変形が生じ、熱収縮の変形量が極めて小さい天井50に対し、額縁部21各部がその端部側から中心側に向って進むように変位しようとする。
【0064】
天井50に対し変位しようとする額縁部21に対し、シール体22が額縁部21と天井50との間に介在していることで、前記同様に額縁部21は天井50の拘束を受けず、温度変化に伴ってスムーズに熱膨張や熱収縮の変形が進行していくこととなり、異音の発生はない。
【0065】
このように、本実施形態に係る吹出口装置においては、シール体22のうち額縁部21
の外縁部21aの内周側に位置する部分に補助当接片22bを形成し、シール体22が外縁部21aと係合する部位で天井50に接すると共に、さらに外縁部21aより内周側で補助当接片22bの先端部分を天井50と当接させることから、吹出口本体20外周と天井50の開口孔の周縁との間の隙間を通った空気が、額縁部21に係合したシール体22と天井50との間を抜けようとするのを、シール体22が天井50と二重に接して抑制することができ、額縁部21と天井50との間からの空気の漏れをより確実に抑えられ、空気の漏れが原因の天井50の汚損や結露を防止できる。
【0066】
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る吹出口装置を図9に基づいて説明する。
前記図9において本実施形態に係る吹出口装置は、前記第1の実施形態同様、吹出口本体30と、額縁部31と、シール体32とを備える一方、異なる点として、シール体32が、溝部32aを挟む二部分のうち額縁部31の外側に露出しない他方の部分における天井50から遠い側の端部より、額縁部31の外縁部31aから離れる向きへ突出させて形成される補助当接部32bを有し、シール体32全体としては略M字状の断面形状として形成される構成を有するものである。なお、額縁部31を含む吹出口本体30は前記第1の実施形態同様の構成であり、説明を省略する。
【0067】
前記シール体32は、溝部32aを挟む二部分のうち額縁部31の外側に露出しない他方の部分、すなわち、額縁部31の外縁部31aより内周側に位置する部分と、この部分の天井50から遠い側の端部より、外縁部31aから離れる向きへ突出させて形成される補助当接部32bとを有する構成である。
【0068】
補助当接部32bは、シール体長手方向に連続する形状とされてなり、額縁部31の凹部31bに収った状態で、その先端部分、すなわち額縁部31の外縁部31aから離れた端部を、額縁部31における吹出口本体30の開口部30a寄りの端部に当接させると共に、この補助当接部32bにおける中間部分を、補助当接部32b自体の弾性力で天井50に押付けて当接させている。
【0069】
この補助当接部32bは、その中間部分で曲げた状態で額縁部31の凹部31bに収められ、その先端部分が額縁部31の端部に当接していることで、中間部分が最も高く盛上がって、且つ天井50に当接して押し縮められる状態となっており、この押し縮められた分、補助当接部32b自体の元に戻ろうとする弾性力により、補助当接部32bの中間部分は逆に天井50に押付けられる形となり、こうして補助当接部32bは天井50との密着状態を維持できる。
【0070】
次に、前記構成に基づく吹出口装置における吹出状態に伴う額縁部とシール体の変化について説明する。吹出口装置3が調和空気の吹出をしばらく停止し、吹出口本体30が室内空気とほぼ同じ温度に達している状態で、吹出口装置3による調和空気の吹出が新たに開始されると、前記第1の実施形態同様、吹出口本体30各部は、室内空間へ吹出す調和空気との接触に伴い、時間経過と共に調和空気の温度に近付いていく。
【0071】
冷房の場合、吹出口本体30各部が、冷たい調和空気との接触で、室内空気とほぼ同じ温度から急激に温度を低下させていき、各部に熱収縮の変形が生じ、熱収縮の変形量が極めて小さい天井50に対し、額縁部31各部がその端部側から中心側に向って進むように変位しようとする。
【0072】
また暖房の場合には、吹出口本体30各部が、暖かい調和空気との接触で、室内空気とほぼ同じ温度から急激に温度を上昇させていき、各部に熱膨張の変形が生じ、熱膨張の変形量が極めて小さい天井50に対し、額縁部31各部がその中心側から端部側に向って進
むように変位しようとする。
【0073】
こうして天井50に対し変位しようとする額縁部31に対し、シール体32が係合し、額縁部31と天井50との間に介在していることで、額縁部31は天井50の拘束を受けず、額縁部31では温度変化に伴ってスムーズに熱膨張や熱収縮の変形が進行していくことで、額縁部31には異音発生につながるような歪みは生じず、異音を防止できる。
【0074】
この時、額縁部31と天井50の間では、調和空気の一部がダクト51から開口部30aに進む代りに、吹出口本体30外周と天井50の開口孔の周縁との間の隙間に進入し、この隙間を抜けた調和空気の圧力がシール体32に加わることとなるが、補助当接部32bの中間部分が、弾性力で天井50に押付けられることで、補助当接部32bの中間部分と天井50との密着状態が維持される(図9参照)。こうして、空気が補助当接部32bと天井50との間を抜けて額縁部31の外側へ向けて進もうとするのを抑制でき、シール体32における額縁部31の外縁部31aと天井50との間に介在する部位で空気の漏れを防げるのと合わせて、額縁部31と天井50との間を空気が抜けようとするのを、シール体32で二重に阻止することができ、額縁部31と天井50との間からの空気の漏れを確実に抑えられ、この空気の漏れが原因で生じる天井50の汚損や結露を防止できる。
【0075】
調和空気の吹出継続により、吹出口本体30が調和空気とほぼ同じ温度に達した後、吹出口装置3による調和空気の吹出が停止され、これが続いている状況における、額縁部31と天井50との間に介在するシール体32により、額縁部31が天井50の拘束を受けることなく温度変化に伴って変形し、異音を発生させずに額縁部31各部を天井50に対し変位させる状態については、前記第1及び第2の実施形態と同様のものであり、説明を省略する。
【0076】
このように、本実施形態に係る吹出口装置においては、シール体32のうち額縁部31の外縁部31aの内周側に位置する部分に補助当接部32bを形成し、シール体32が外縁部31aと係合する部位で天井50に接すると共に、さらに外縁部31aより内周側で補助当接部32bの中間部分を天井50と当接させることから、吹出口本体30外周と天井50の開口孔の周縁との間の隙間を通った空気が、額縁部31に係合したシール体32と天井50との間を抜けようとするのを、シール体32が天井50と二重に接して抑制することができ、額縁部31と天井50との間からの空気の漏れをより確実に抑えられ、空気の漏れが原因の天井50の汚損や結露を防止できる。
【0077】
なお、前記第1ないし第3の各実施形態に係る吹出口装置においては、吹出口装置を天井50に配設する構成としているが、これに限らず、吹出口装置を壁に配設する構成とすることもでき、調和空気の吹出や吹出停止に伴って壁の吹出口本体各部が温度を変化させ、この温度変化により室内空間側の額縁部で熱膨張や熱収縮の変形が生じる際に、額縁部がこれと係合するシール体を弾性変形させながら壁に対し問題なく各部を変位させられ、変形に伴って変位しようとする額縁部が壁の拘束を受けて歪みを生じることもなく、歪みの蓄積とその解放による額縁部と壁との位置関係の急激な変化に伴う異音の発生を前記同様に抑えられる。
【符号の説明】
【0078】
1 吹出口装置
10、20、30 吹出口本体
10a、20a、30a 開口部
11、21、31 額縁部
11a、21a、31a 外縁部
11b、21b、31b 凹部
12、14、22、32 シール体
12a、22a、32a 溝部
13 封止体
22b 補助当接片
32b 補助当接部
50 天井
51 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井又は壁に配設され、空気調和対象の室内空間に上流側から供給された調和空気を吹出す吹出口装置において、
調和空気を通過させる開口部を取囲んだ枠状体として形成され、室内空間側の周縁部に額縁部を有してなり、天井又は壁に配設される吹出口本体と、
弾性材からなる細長い略線状体で形成され、長手方向に連続する溝部を設けられ、当該溝部に前記吹出口本体の額縁部の外縁部を挿入した状態として額縁部全周に係合させて配設され、額縁部外縁部と天井又は壁間に介在し、前記溝部を挟む二部分のうち一方を額縁部の外側に露出させるシール体とを備え、
当該シール体における、前記溝部を挟む二部分のうち額縁部の外側に露出する前記一方の部分が、額縁部の外縁部に沿うと共に、天井又は壁から遠い側の端部位置を前記外縁部の端部と一致させる大きさとされてなることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の吹出口装置において、
前記シール体が、天井又は壁との接触部位で天井又は壁との接触関係をそのまま維持しつつ、前記接触部位より額縁部寄りの部分で、額縁部の温度変化に伴う変形に応じて弾性変形可能な弾性変形能を有することを
特徴とする吹出口装置。
【請求項3】
前記請求項1に記載の吹出口装置において、
前記シール体が、少なくとも前記天井又は壁との接触面を、天井又は壁に対して滑りを生じさせる低摩擦係数の表面状態とされてなることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の吹出口装置において、
前記シール体が、前記溝部を挟む二部分のうち額縁部の外側に露出しない他方の部分における天井又は壁から遠い側の端部より、額縁部の外縁部から離れる向きへ突出させて形成される補助当接片を有し、当該補助当接片がシール体長手方向に連続する形状とされてなり、
前記補助当接片の先端部分を、少なくとも補助当接片自体の弾性力で天井又は壁に押付けて当接させることを
特徴とする吹出口装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の吹出口装置において、
前記シール体が、前記溝部を挟む二部分のうち額縁部の外側に露出しない他方の部分における天井又は壁から遠い側の端部より、額縁部の外縁部から離れる向きへ突出させて形成される補助当接部を有し、当該補助当接部がシール体長手方向に連続する形状とされてなり、
前記補助当接部の先端部分を、額縁部における前記吹出口本体の開口部寄りの端部に当接させると共に、補助当接部の中間部分を、少なくとも補助当接部自体の弾性力で天井又は壁に押付けて当接させることを
特徴とする吹出口装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−257109(P2011−257109A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133969(P2010−133969)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000164553)空研工業株式会社 (28)
【出願人】(591219429)空調技研工業株式会社 (22)
【Fターム(参考)】