説明

呈味増強剤、該呈味増強剤を含有する飲食品、及び呈味増強方法

一般式1:


(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)で表されるワニリルアルコール誘導体及び/又は該ワニリルアルコール誘導体の形態加工体を含有する呈味増強剤、該呈味増強剤を用いる飲食品の呈味増強方法並びに該呈味増強剤を含有する飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品にこく味を付与、増強する呈味増強剤、及び該呈味増強剤を含有する飲食品、並びに該呈味増強剤を使用し、飲食品の呈味を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の味覚は、甘味、酸味、塩味、苦味及び旨味を5基本味とし、それに辛味、渋味、金属味、こく味、広がり、厚みなどが複雑にからみあって感じられるものである。前記5基本味のそれぞれには、その味覚をもたらすための物質がある。例えば、甘味は、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖などの単糖類や二糖類、カップリングシュガーなどの蔗糖誘導体、還元糖麦芽糖などの糖アルコール、ステビオサイドなどの配糖体、アスパルテームなどのアミノ酸系甘味料、サッカリンなどの化学合成品などに由来し、また酸味は、酢酸、クエン酸などの有機酸などに由来し、塩味は、塩化ナトリウムなどの塩類などに由来し、苦味は、カフェインなどのアルカロイド、リモノイドなどのテルペノイド、ナリンギンなどの配糖体、硫酸マグネシウムなどの無機塩などに由来し、旨味はグルタミン酸やイノシン酸など、アミノ酸系あるいは核酸系の旨味物質に由来していることは広く知られている。飲食品等において、味のバランスは良くほとんど問題は無いものの、何か物足りなさを感じるとき、5基本味のいずれかによりその改善を行おうとすると、かえって1つの味覚だけが強くなったり、また、全体に味覚が強くなりすぎるなどの問題が生じる。このような問題を解決するため、従来、各種飲食品や調味料の呈味を増強する、呈味増強剤あるいは呈味の改善方法が開発されている。
【0003】
例えば、飲食品にこく味などを付与・増強させる方法として、動植物性非コラーゲン系蛋白材料の酵素加水分解物(下記特許文献1参照)など動植物蛋白質加水分解物を添加する方法や、酵母懸濁液、酵母エキス、畜肉エキス、魚介エキスなどを添加する方法が既に知られている。「こく(味)」とは、例えば、その飲食品を口に含んだ時に、味、風味の良い印象が急速に口中いっぱいに広がる感じである。「こく(味)」(英語では、amplitude若しくはmouthfulnessとよぶ)は、飲食品の味の総合評価において、優れたものの共通点として挙げられるものであり、飲食品の味覚の評価としては、重要なファクターである。飲食品にこく味などを付与・増強させる方法としては、前記の方法の他、トリメチルアミン、1−メトキシ−2−プロパノール、n−ブチルアルコール、1−エトキシ−2−プロパノールなどから選択される香味成分を含む風味改良剤を用いる方法(下記特許文献2参照)や、(a)ソトロン及び/又は5−エチル−3−ヒドロキシ−4−メチル−2(5H)−フラノン、並びに(b)ジメチルスルフィド、メタンチオール、硫化水素、二硫化ジメチル、三硫化ジメチルからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する風味原料素材を用いる方法(下記特許文献3参照)なども知られている。しかし、これら従来公知の呈味増強物質は、それ自体が特徴的な呈味、風味、香味を有しており、添加する飲食品によっては呈味、風味、香味のバランスが崩れるなどの問題が起こり、それら製品が有する呈味、風味、香味のバランスを崩すことなく、幅広い飲食品に対し相手を選ぶことなく配合することができるというものではなかった。
【0004】
一方、ワニリルアルコール誘導体は、極めて強い辛味を有し、皮膚に塗布すると温感を与えることが知られている(下記特許文献4参照)。また、ワニリルアルコール誘導体を歯磨組成物に配合することにより、メントールの清涼感効果が増強されること(下記特許文献5参照)、さらに、上記ワニリルアルコール誘導体をサイクロデキストリンや分岐サイクロデキストリンで包接することにより、ワニリルアルコール誘導体自身の苦味やエグミのような雑味を改善すること、及び清涼剤あるいは冷感剤と併用したときの冷感あるいは清涼感の増強効果の強度及び持続性を向上させることができることも知られている(下記特許文献6参照)。このように、従来ワニリルアルコール誘導体或いはその包接化合物により、飲食品などに辛みを付与したり、種々の製品に配合することにより、温感効果や冷感効果を付与することは知られているが、ワニリルアルコール誘導体やその包接化合物が飲食品にこく味を付与することができることについては知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−154944号公報
【特許文献2】特開2000−139397号公報
【特許文献3】特開2003−79336号公報
【特許文献4】特公昭61−9293号公報
【特許文献5】特公昭61−55889号公報
【特許文献6】特開2002−3430号公報
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みなされたもので、飲食品が本来有する味覚バランスや呈味、風味、香味を損なうことなく、こく味を付与・増強できる呈味増強剤及び呈味増強方法を提供することを目的とする。なお、本発明では、「まろやかさ」、「広がり」、「重厚感・厚み・濃厚感」などを調和させ、かつ同時に満足させる感覚も、「こく(味)」に含まれる。また、本発明は、該呈味増強剤を配合した飲食品を提供することをも目的とする。
【発明の開示】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ワニリルアルコール誘導体やワニリルアルコール誘導体の形態加工体を飲食品に配合すると、飲食品が本来有する味覚バランスや、呈味、風味、香味のバランスを損なうことなく、こく味、広がり、まろやかさ、厚み、濃厚感などを付与、増強できることを見出すとともに、この知見を基にさらに研究を重ねた結果本発明を成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、一般式1:

【0009】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表されるワニリルアルコール誘導体及び/又は該ワニリルアルコール誘導体の形態加工体を含有する呈味増強剤に関する。
【0010】
また、本発明は、上記呈味増強剤において、一般式1のRがn−ブチル基であることを特徴とする呈味増強剤に関する。
【0011】
さらに、本発明は、(A)一般式1:

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表されるワニリルアルコール誘導体及び/又は該ワニリルアルコール誘導体の形態加工体、
(B)甘味料、塩味料、うま味料から選ばれる少なくとも1種以上、及び
(C)香料及び/又は香辛料
を含有する呈味増強剤に関する。
【0012】
また、本発明は、上記呈味増強剤において、(A)成分の一般式1のRがn−ブチル基であることを特徴とする呈味増強剤に関する。
【0013】
また、本発明は、上記呈味増強剤において、(C)成分が、ジンジャーオレオレジン、トウガラシオレオレジン、ペッパーオレオレジン、ジャンブーオレオレジン、サンショウオレオレジン、ジンゲロン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ピペリン、ピペリジン、シャビシン、スピラントール、α−サンショオール、β−サンショオール、サンショアミド、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’−エトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、アルカン酸バニリルアミド(アルカン酸の炭素数が7〜12)、バニリンアルキレングリコールアセタール(アルキレンの炭素数が3〜6)及びエチルバニリンアルキレングリコールアセタール(アルキレンの炭素数が3〜6)から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする呈味増強剤に関する。
【0014】
また、本発明は、上記いずれかの呈味増強剤を含有することを特徴とする飲食品に関する。
【0015】
また、本発明は、上記いずれかの呈味増強剤を飲食品に配合し、飲食品の呈味を増強する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例6で得られたドリンク剤〔ワニリル−n−ブチルエーテル(VBE)添加〕と、比較例4で得られたドリンク剤(VBE無添加)の官能評価のグラフである。
【図2】実施例7で得られたポテトチップス(VBE添加)と、比較例5で得られたポテトチップス(VBE無添加)の官能評価のグラフである。
【図3】実施例8で得られたカレー(VBE添加)と、比較例6で得られたカレー(VBE無添加)の官能評価のグラフである。
【0017】
[発明の実施の態様]
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の呈味増強剤は、上記一般式1で表されるワニリルアルコール誘導体及び/又は該ワニリルアルコール誘導体の形態加工体を含有する。上記一般式1中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表すが、アルキル基は、直鎖アルキル基でも分岐アルキル基でもよく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
【0018】
上記一般式1で表されるワニリルアルコール誘導体の中では、下記式2で表されるワニリル−n−ブチルエーテル及び下記式3で表されるワニリルエチルエーテルが好ましい。
【0019】

【0020】

【0021】
本発明において、ワニリルアルコール誘導体の形態加工体とは、ワニリルアルコール誘導体を粉末化、顆粒化、乳化などの加工を行い、様々な形態とさせたものをいう。形態加工体の形態は、通常知られている形態であればどのような形態でもよい。形態加工方法としては、通常行なわれている粉末化、顆粒化、乳化などの加工方法を適宜採用することができる。
【0022】
例えば、前記ワニリルアルコール誘導体の粉末化の例としては、サイクロデキストリン(以下、CDと略す)を用いてワニリルアルコール誘導体を包接化する方法が挙げられる。ワニリルアルコール誘導体の包接化については、前記特許文献6に詳細に記載されており、本発明においても、前記特許文献6に記載された方法により、上記一般式1で表されるワニリルアルコール誘導体の包接化を行うことができる。包接化の際使用できるCDとしては、前記特許文献6に記載のもののいずれでも良く、例えばα−CD、β−CD、γ−CDなどの非分岐サイクロデキストリン;これらCDにグルコース、マルトース、マルトトリオースなどの小糖類が、1分子又は2分子、α−1,6結合したもの、或いは酸化プロピレンの付加によりヒドロキシプロピル基が3〜8分子結合した分岐サイクロデキストリンなどが挙げられる。CDは、単独もしくは、2種以上を組み合わせて使用することができる。CDの中では、とくにβ−CDを使用することが好ましい。
【0023】
ワニリルアルコール誘導体の上記CDによる包接化合物の粉末を得るには、例えばワニリルアルコール誘導体とCDとを水の存在下に接触させて、ワニリルアルコール誘導体とCDとの包接化合物を生成せしめ、析出する包接化合物をろ過、乾燥する方法が代表的な方法として挙げられる。ワニリルアルコール誘導体とCDとの接触方法は、通常、CDを水に溶解し、これにワニリルアルコール誘導体を添加し、攪拌機、ホモジナイザーなどで数秒乃至数時間激しく攪拌、又は振とうする方法や、超音波処理による。ワニリルアルコール誘導体は、そのまま、或いはエタノールなど適当な有機溶媒に溶解して添加することができる。ワニリルアルコール誘導体の使用量は、通常CDに対して0.1〜1倍モルであり、接触反応温度は、通常0〜70℃である。
【0024】
その他の粉末化法としては、ワニリルアルコール誘導体をオリゴ糖、デキストリン、澱粉等の糖質類を賦形剤(キャリアー)として吸着させる吸着粉末化法、また上記賦形剤を用い、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、キラヤサポニンなどの乳化剤と共に噴霧乾燥を行なう方法も挙げられる。また、アラビアガム等天然ガム質若しくは加工澱粉などを用い、噴霧乾燥する方法も挙げられる。さらに、ワニリルアルコール誘導体を、ショ糖、マルトースなどの糖質、パラチニット、マルチトール等の糖アルコールの2種以上と配合し、水などと共に加熱溶解した後、押出し、乾燥して粉末化する押出し形成法、ゼラチン、寒天などによる相分離を利用したコアセルベーション法など、用途に応じた粉末化法を採用し、粉末形態の形態加工体とすることもできる。
【0025】
その他、前述の方法で得られた粉体を、更にゼラチン、プルラン、乳糖などを結着剤として用い、流動層造粒法によって、顆粒状に造粒化した形態加工体とすることもできる。また、前述の方法により得られた粉末若しくは顆粒に対し、コーティングを施すことも可能である。コーティングの方法としては、それ自体は既知の方法でよく、噴霧コーティング、流動層コーティング、遠心力コーティング、接触コーティング法などがある。コーティング剤もその用途に応じ、糖類、ペクチン、寒天、メチルセルロース、プルラン、ゼラチンなどの水溶性コーティング剤;米ヌカワックス、パーム油など常温固体の硬化油脂などの油溶性コーティング剤を適宜選択すればよい。また、水溶性コーティング剤と油溶性コーティング剤を併用することも可能である。
【0026】
乳化による形態加工体も既知の方法で作成されたものでよく、例えば、ワニリルアルコール誘導体をショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、キラヤサポニン、レシチン等の乳化剤やアラビアガム等天然ガム質と共に溶解液とし、これをTKミキサー等により攪拌混合する、若しくは高圧ホモジナイザーにより乳化液とされたものが挙げられる。
【0027】
本発明の形態加工体は、上記各種添加剤のほかにも、必要に応じ、ワニリルアルコール誘導体と共に、香料、色素、酸味料、ビタミン類、甘味料、調味料、香辛料、食品素材、機能性物質などから選ばれる1種、若しくは2種以上を配合し、前述の各種形態加工を施すことができる。
【0028】
本発明の呈味増強剤は、上記一般式1で表されるワニリルアルコール誘導体そのもの及び/又は該ワニリルアルコール誘導体の形態加工体からなっていてもよいが、これに、さらに(B)甘味料、塩味料、うま味料から選ばれる1種以上、及び(C)香料及び/又は香辛料を配合することにより呈味増強剤とされてもよい。
【0029】
以下、上記(B)成分及び(C)成分について更に詳細に説明する。(B)成分は、甘味料、塩味料、うま味料から選ばれる1種、若しくは2種以上からなる。まず、甘味料としては、従来飲食品などの甘味料として用いられているものであれば、いずれのものでも用いることができる。本発明において用いられる甘味料を具体的に例示すれば、例えば、蜂蜜、メープルシュガー、グラニュ糖、上白糖、黒糖、和三盆糖、三温糖、粉糖、ショ糖、ラフィノース、トレハロース、パラチノース、パラチノースオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ブドウ糖、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、マルトース、果糖、乳糖、ラクツロース、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロースなどの糖質系甘味料;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース、還元デンプン糖化物、還元イソマルトオリゴ糖、還元マルトオリゴ糖などの糖アルコール;ステビア、ステビオサイド、グリチルリチンなどの非糖質天然甘味料;サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムKなどの合成甘味料などが挙げられる。
【0030】
一方、(B)成分の塩味料としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどが挙げられる。飲食品においては、一般に塩化ナトリウムが塩味料として用いられ、通常食塩として供給されている。食塩の製法は各種あり、その製法の違いにより、食塩、塩化ナトリウムが99.5%以上の精製塩、炭酸マグネシウムでコーティングされた食卓塩、その他自然塩、天然塩、岩塩などもある。これらはいずれも本発明の塩味料として好ましく使用することができるものである。
【0031】
また、(B)成分のうま味料としては、従来、飲食品を製造する際に、うま味料として用いられているもののいずれをも使用することができる。うま味料の代表的なものとしては、例えば、L−グルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸系うま味料;5’−イノシン酸ナトリウム、5’−グアニル酸ナトリウムなどの核酸系うま味料があげられる。その他のうま味料としては、HVP(Hydrolyzed vegetable protein)、HAP(Hydrolyzed animal protein)、酵母エキス、醤油、味噌、魚介系・畜肉系エキス、野菜エキスなどが挙げられ、また、これらの粉末物や顆粒化物も使用することができる。また、上記のアミノ酸系うま味料と核酸系うま味料を主成分とした複合調味料などもうま味料として用いることができる。
【0032】
次に、上記(C)成分について説明する。(C)成分は、香料及び/又は香辛料からなる。まず、(C)成分の香辛料としては、芳香性植物の一部で、香り、辛味、色素を持っているものが挙げられる。このような香辛料は、その性質により、カルダモン、ナツメグ、フェニグリーク、クミン、タイム、ロリエ、クローブ、フェンネル、コリアンダー、サフラン、キャラウェイ、ジュニパーベリー、アニス、セージ、メース、ワニラ、パセリ、セロリー、紫蘇などの芳香性香辛料と、ブラックペッパー、ホワイトペッパー、チリ(トウガラシ)、山椒、マスタード、玉葱、葱、ワサビ、大根、韮、蓼、ガーリック、ジンジャー、ターメリック、シンナモン、オールスパイス、ジャンブーなどの辛辣性香辛料に大別することができる。本発明における(C)成分の香辛料としては、辛辣性香辛料が特に好ましいものである。
【0033】
また、本発明においては、利用できる香辛料の形態は特に限定されるものではなく、原料植物の果実、樹皮、茎、葉、種実、根等の原体を乾燥したもの、その乾燥品を粉末にしたものでもよい。これら香辛料は、2種以上を適宜混合して用いることが好ましい。また、本発明の香辛料は、上記植物の各原体を、既知の方法により処理したものを用いることができる。
処理方法には、例えば、上記植物の各原体を含水アルコールで抽出する方法がある。この方法により得られるものは、チンキ、エキストラクト、エキス、インフージョンと呼ばれ、水溶性の形態である。
他の方法として、上記植物の各原体を水蒸気蒸留する方法がある。この方法により得られるエッセンシャルオイル(精油)は、油溶性の形態である。また、エッセンシャルオイル(精油)は、亜臨界・超臨界抽出方法によっても得ることができる。さらに、エッセンシャルオイルを、含水アルコールで処理して、エッセンスとし、使用することもできる。
さらに他に、上記植物の各原体を、通常、アセトン、アルコール、エーテル、プロピルアルコールなどの揮発性溶媒を用いて抽出し、溶媒を常圧もしくは減圧下で留去する方法がある。この方法で得られるものは、オレオレジンである。本発明では、オレオレジンを用いることが好ましい。
上記のエッセンシャルオイルやオレオレジンは、更に、製剤化して用いることができる。例えば、エッセンシャルオイルやオレオレジンを、アラビアガム、または乳化剤を用いて乳化した乳化液状物;更に、この乳化液状物に、必要に応じてデキストリン等の賦形剤をさらに加え、噴霧乾燥等を行った粉末;また、乳化を行なわず、単にエッセンシャルオイルや油脂等で溶解したオレオレジンを賦形剤に吹き付けた吸着粉末も用いることができる。
さらに、本発明の香辛料には、上記芳香性植物に含有される香辛性物質やその類縁体も含まれる。
【0034】
上記香辛性物質やその類縁体としては、例えば、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、バニリルペラルゴアミドなどのカプサイシン類;ピペリン、イソピペリン、イソシャビシン、シャビシン、ピペラニン、ピペリジンなどのピペリン類;スピラントール、α−サンショオール、β−サンショオール、サンショアミドなどのアミド系辛味物質;ジンゲロン、ショーガオール、ジンゲロールなどのジンゲロール類;アリルイソチオシアネート、β−フェネチルイソチオシアネート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート、ω−ペンテニルイソチオシアネート、p−ヒドロキシベンジルイソチオシアネート、4−メチルチオブテニルイソチオシアネート、ブチルイソチオシアネートなどのイソチオシアネート類;(−)−ポリゴジアールなどのポリゴジアール類;があげられる。さらに、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’−エトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、アルカン酸バニリルアミド(アルカン酸の炭素数が7〜12)、バニリンアルキレングリコールアセタール(アルキレンの炭素数が3〜6)、エチルバニリンアルキレングリコールアセタール(アルキレンの炭素数が3〜6)なども香辛性物質やその類縁体としてあげられる。
【0035】
これら香辛料の中では、ジンジャーオレオレジン、トウガラシオレオレジン、ペッパーオレオレジン、ジャンブーオレオレジン、サンショウオレオレジン、ジンゲロン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ピペリン、ピペリジン、シャビシン、スピラントール、α−サンショオール、β−サンショオール、サンショアミド、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’−メトキシー4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’−エトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、アルカン酸バニリルアミド(アルカン酸の炭素数が7〜12)、バニリンアルキレングリコールアセタール(アルキレンの炭素数が3〜6)及びエチルバニリンアルキレングリコールアセタール(アルキレンの炭素数が3〜6)が好ましいものとして挙げられる。
【0036】
また、(C)成分の香料としては、従来飲食品において使用されている香料のいずれをも使用することができる。香料については、本発明においては、フレーバーと呼ぶこともある。本発明において用いることのできる香料を具体的に例示すると、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ライム、タンジェリン、マンダリン、ユズ、スダチ、カボス、スウィーティなどのシトラス系香料、アップル、バナナ、グレープ、ピーチ、ストロベリー、パイナップル、メロン、アプリコット、プラム、和なし、洋ナシ、ラズベリー、マンゴーなどのフルーツ系香料、ペパーミント、スペアミントなどのミント系香料、トマト、ニンジン、ピーマン、セロリ、シイタケ、マッシュルームなどの野菜系香料、ペパー、シンナモン、ナツメグ、クローブなどのスパイス系香料、バニラ、コーヒー、ココア、ハーゼルナッツ、アーモンド、クルミ、ペカン、マカデミアナッツなどのナッツ系香料、紅茶、緑茶、烏龍茶などの茶系香料、ビーフ、チキン、サーモン、クラブなどの畜肉・水産系香料、ミルク、チーズ、生クリーム、バターなどのデイリー系香料が挙げられる。これら香料は調合香料のみならず、香料の種類によっては、精油、オレオレジンなども使用できる。更に、本発明の香料として、シトラール、リナロール、シトロネロール、リモネン、α−ピネン、β−ヨノン、ジャスモン酸メチル、ジャスミンラクトン、cis−ジャスモン、ゲラニオール、l−メントール、バニリン、オイゲノール、ボルネオール、シネオール、α−ターピネオール、チモール、カリオフィレン、シンナミックアルデヒド、アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、メントン、カンファー、カルボン、アネトール、γ−デカラクトン、3−シクロペンタノン、2−シクロペンタノン、2−アセチルピロール、ヒリジン、ピラジン、チアゾール、ジメチルスルフィド、チオフェン、3−メチルチオプロピオン酸メチル、イソアミルアルコール、ヘキサナール、ジアセチル、2−メチルプロピオン酸、トリメチルアミン、1,8−シネオール、アセトニトリル、2−エチルフェノール、2−メチルフランなどの単品香料も挙げられる。また、例えば、Arctander Perfume and Flavor Chemicals(Aroma chemicals)に記載される、飲食品に使用可能である香料を使用することもできる。これらの単品香料を任意の割合で混合した香料も、本発明においては使用することができる。これらの単品香料は、天然物の植物体から抽出・分離して得ることができ、また合成することによって得ることもできる。また、超臨界流体抽出により得られたコーヒー、紅茶、鰹節等のエキスや天然の果汁そのもの、またはこれらを粉末化した製品も香料として使用できる。しかし、本発明において用いられる香料が、これら具体的に例示されたものに限定されるものではない。
【0037】
本発明では、香料として、特にセイボリー系香料を用いることが好ましい。セイボリー系香料とは、セイボリー(Savory)という単語の意味(塩味のきいた、ピリッとした料理という意味)を由来とし、塩味系の呈味を主体とした飲食品へ配合するための香料のことである。セイボリー系香料の例としては、具体的には、例えば、上記香料のうち、野菜系香料、スパイス系香料、ナッツ系香料、畜肉・水産系香料、デイリー系香料などが挙げられる。また、上記の単品香料や天然物から得られる香料も用いることができる。しかし、ここに具体的に例示されたものに限定されるものではない。
【0038】
本発明においては、(A)成分である上記一般式1で表されるワニリルアルコール誘導体そのもの及び/又は該ワニリルアルコール誘導体の形態加工体に、(B)成分の甘味料、塩味料、うま味料から選ばれる1種、若しくは2種以上、及び(C)成分の香料及び/又は香辛料とを併用し、これを呈味増強剤として用い、飲食品に添加した場合、(B)成分の甘味料、塩味料及びうま味料を過剰に添加することなく、また、(C)成分の香辛料や香料の配合バランスを変えることなく、配合された飲食品の呈味を増強することができる。特に、本発明の呈味増強剤は、飲食品に配合されることにより、飲食品のこく味を増強させることができる。
【0039】
本発明では、(B)成分の甘味料、塩味料及びうま味料から選ばれる1種、若しくは2種以上、及び(C)成分の香料及び/又は香辛料とを、上記一般式1で表されるワニリルアルコール誘導体に添加して、上記説明したような粉末化、顆粒化、乳化などの加工を行うことによって、ワニリルアルコール誘導体とともに形態加工体とし、呈味増強剤とすることもできる。
【0040】
本発明の呈味増強剤には、さらに、色素、酸味料、ビタミン類、調味料、食品素材、機能性物質などから選ばれる1種、若しくは2種以上が配合されてもよい。
【0041】
前記酸味料としては、飲食品に一般的に用いられるものであれば何でも良い。本発明において用いることができる酸味料を例示すると、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸などが代表的なものとして挙げられる。また、前記ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEなどの油溶性ビタミン、ビタミンB群、ビタミンCなどの水溶性ビタミンが挙げられる。さらに、機能性素材としては、シソエキス、ソバ等のポリフェノール、プロポリス、ロイヤルゼリーなどが挙げられる。色素、調味料などは、従来飲食品に用いられているものを任意に用いることができる。
【0042】
本発明の呈味増強剤は、各種飲食品に配合することができる。飲食品としては、例えば、果汁入り飲料、スポーツ飲料、野菜ジュース、乳酸菌飲料、炭酸飲料、コーヒー、ココア、紅茶、烏龍茶、緑茶、酒、アルコール、粉末飲料などの飲料、キャンディー、チューインガム、錠菓、グミ、ラムネ菓子、チョコレート等の製菓製品、クッキー、ビスケット、パン等のベーカリー製品、ヨーグルト、アイスクリーム等のデザート類、ポテトチップス、クラッカー等のスナック製品、シチュー、カレー、スープ、ドレッシング、たれ、めんつゆ、だしつゆ、味噌、だしの素、ソース、ブイヨン、ジャム、ふりかけ、お好み焼き、味噌汁、漬物、おむすびの素、お茶漬けの素、うどん・そば・ラーメンなどの麺類等の半調理済み及び調理済み食品、またそれらのチルド及び冷凍食品、カップラーメンなどのインスタント食品、粉末混合調味料、マヨネーズなどの調味料など、幅広い飲食品を例示することができる。
【0043】
呈味増強剤が配合される飲食品のうち、特にこく味の改善が顕著で好ましいものとしては、栄養・滋養飲料、いわゆるドリンク剤などの機能性飲料、ポテトチップス、味付きクラッカー等のスナック製品、カレー、シチュー、スープなど塩味を呈味の特徴とするセイボリー(Savory)系調理食品などが挙げられる。セイボリー系調理食品の形態は、調理済み及び半調理済み、またそれらのレトルトパウチ食品、チルド若しくは冷凍食品であってもよい。
【0044】
本発明の呈味増強剤の配合量は、呈味増強剤の形態化状態や配合する飲食品により異なるものの、ワニリルアルコール誘導体として、飲食品に対し、0.000001〜1.0質量%、好ましくは0.00001〜0.1質量%、更に好ましくは0.00001〜0.01質量%の範囲内にすることが好ましい。本発明の呈味増強剤の配合の方法は、それぞれ公知の方法で行うことができる。
[発明の効果]
【0045】
本発明の上記一般式1で表されるワニリルアルコール誘導体及び/又は該ワニリルアルコール誘導体の形態加工体を含有する呈味増強剤は、本来の飲食品が有する味覚バランスを崩さずに、さらに風味、呈味、香味を損なうことがなく、こく味、厚み、濃厚感、広がり、まろやかさなどを付与・増強することができる。さらには、本発明の呈味増強剤においては、上記一般式1で表されるワニリルアルコール誘導体そのもの及び/又は該ワニリルアルコール誘導体の形態加工体に、(B)成分である甘味料、塩味料、うま味料から選ばれる1種、若しくは2種以上、及び(C)成分である香料及び/又は香辛料を併用し、これを呈味増強剤として飲食品に添加した場合に、(B)成分の甘味料、塩味料、うま味料を過剰に添加することなく、また、(C)成分である、香辛料や香料の配合バランスを変えることなく、配合された飲食品の呈味を増強することができる。本発明の呈味増強剤による呈味の増強は、特に、飲食品のこく味の増強において顕著な効果が奏される。
【0046】
また、本発明の呈味増強剤は、幅広い飲食品に使用でき、様々な風味を有する飲食品に配合でき、嗜好性の良い飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されない。
【0048】
実施例1 ワニリル−n−ブチルエーテル(VBE)のβ−サイクロデキストリン(β−CD)包接化合物の調製
β−CD(日本食品加工社製)22.7g(0.02mol)を水300mlに60℃で攪拌下溶解し、ここへワニリル−n−ブチルエーテル(高砂香料工業株式会社製)4.2g(0.02mol)を添加した。溶液を同温で約1時間攪拌した後冷却し、析出した結晶を5℃で濾取、水洗後凍結乾燥を行い、目的とするワニリル−n−ブチルエーテルのβ−CD包接化合物22.0gを白色の粉末として得た。このものは、β−CD:ワニリル−n−ブチルエーテルのモル比が約1:0.79(1000mg中にワニリル−n−ブチルエーテル128mg含有)であった。
【0049】
実施例2 液体飲料用呈味増強剤の調製
以下の表1の処方により液体飲料用呈味増強剤を調製した。
【0050】

【0051】
比較例1 液体飲料用呈味改善剤の調製
ワニリル−n−ブチルエーテルの包接化合物を配合しないことを除き、実施例2と同様にして、液体飲料用呈味改善剤を調製した。
【0052】
実施例3 スナックシーズニング用呈味増強剤の調製(ペッパータイプ)
以下の表2の処方によりスナックシーズニング用呈味増強剤を調製した。
【0053】

【0054】
比較例2 スナックシーズニング用呈味改善剤の調製(ペッパータイプ)
ワニリル−n−ブチルエーテルを配合しないことを除き、実施例3と同様にして、スナックシーズニング用呈味改善剤を調製した。
【0055】
実施例4 スナックシーズニング用呈味増強剤の調製(わさび醤油タイプ)
以下の表3の処方によりスナックシーズニング用呈味増強剤を調製した。
【0056】

【0057】
実施例5 カレー用呈味増強剤の調製
以下の表4の処方により、カレー用呈味増強剤を調製した。
【0058】

【0059】
比較例3 カレー用呈味改善剤の調製
ワニリル−n−ブチルエーテルを配合しないことを除き、実施例5と同様にして、カレー用呈味改善剤を調製した。
【0060】
実施例6 ドリンク剤の製造(ワニリル−n−ブチルエーテル包接化合物添加)
実施例2にて調製したワニリル−n−ブチルエーテル包接化合物を配合した液体飲料用呈味増強剤を使用して、表5の処方により、常法に従って混合し、ドリンク剤を製造した。
【0061】

【0062】
比較例4 ドリンク剤の製造(ワニリル−n−ブチルエーテル包接化合物無添加)
液体飲料用呈味増強剤に変えて、比較例1で調製した液体飲料用呈味改善剤(ワニリル−n−ブチルエーテル包接化合物無添加)を用いることを除き、実施例6と同様な方法でドリンク剤を製造した。
【0063】
実施例7 ポテトチップスの製造(ワニリル−n−ブチルエーテル添加)
味付け前のポテトチップス95gに、実施例3にて調製したワニリル−n−ブチルエーテルを配合したスナックシーズニング用呈味増強剤5gを常法に従って混合し、味付きポテトチップスを製造した。
【0064】
比較例5 ポテトチップスの製造(ワニリル−n−ブチルエーテル無添加)
スナックシーズニング用呈味増強剤に変えて、比較例2で調製したスナックシーズニング用呈味改善剤(ワニリル−n−ブチルエーテル無添加)を用いることを除き、実施例7と同様な方法で味付きポテトチップスを製造した。
【0065】
実施例8 カレーの製造(ワニリル−n−ブチルエーテル添加)
実施例5にて調製したワニリル−n−ブチルエーテル配合のカレー用呈味増強剤を用いて、表6の処方で常法に従って混合し、カレーを製造した。
【0066】

【0067】
比較例6 カレーの製造(ワニリル−n−ブチルエーテル無添加)
カレー用呈味増強剤に変えて、比較例3で調製したカレー用呈味改善剤(ワニリル−n−ブチルエーテル無添加)を用いることを除き、実施例8と同様な方法でカレーを製造した。
【0068】
実施例9 ドリンク剤の官能評価
官能評価は、こく味、甘味、酸味、苦味、香り立ちの5項目について、専門パネル8名により評価を行った。実施例6で製造したドリンク剤について、比較例4で製造したドリンク剤を対照にして、上記5項目の感覚強度の官能評価を行った。なお、対照の強度を0として、比較を行った。評価結果は、8名の専門パネルの平均値であり、その結果を図1に示す。図中のVBEは、ワニリル−n−ブチルエーテルを示す(以下同様とする)。
図1の結果より、ワニリル−n−ブチルエーテル包接化合物を含有するドリンク剤は、風味のバランスを崩さずに、こく味が増強されており、おいしさが増していた。
【0069】
実施例10 ポテトチップスの官能評価
官能評価は、こく味、甘味、塩味、酸味、苦味の5項目について、専門パネル6名により評価を行った。実施例7で製造したポテトチップスについて、比較例5で製造したポテトチップスを対照にして、上記5項目の感覚強度の官能評価を行った。なお、対照の強度を0として、比較を行った。評価結果は、6名の専門パネルの平均値であり、その結果を図2に示す。
図2の結果より、ワニリル−n−ブチルエーテルを含有するポテトチップスは、こく味、甘味、塩味が増強され、嗜好性が高くなっていた。
【0070】
実施例11 カレーの官能評価
官能評価は、こく味、甘味、塩味、酸味、苦味の5項目について、専門パネル6名により評価を行った。実施例8で製造したカレーについて、比較例6で製造したカレーを対照にして、上記5項目の感覚強度の官能評価を行った。なお、対照の強度を0として、比較を行った。評価結果は、6名の専門パネルの平均値であり、その結果を図3に示す。
図3の結果より、ワニリル−n−ブチルエーテルを含有するカレーは、風味のバランスを崩さず、こく味が増強されており、おいしさが増していた。
【0071】
実施例12 液体飲料用呈味増強剤(乳化タイプ)の調整
ワニリルブチルエーテル(VBE)0.2g、スパイスフレーバー(高砂香料工業株式会社製)15g、ミックスフルーツフレーバー(高砂香料工業株式会社製)5g、アラビアガム100g(固形分)、ソルビトール100g、水779.8gを容器に加え、80℃にて加温溶解し殺菌した。このアラビアガム水溶液を5000〜12000rpmで30分間攪拌した。さらに、高圧ホモジナイザーを用いて100〜300kg/cmの条件で処理し、乳化タイプの液体飲料用呈味増強剤を得た。
【0072】
実施例13 スープ用呈味増強剤の調製
以下の表7の処方により、スープ用呈味増強剤を調製した。
【0073】

【0074】
比較例7 スープ用呈味改善剤の調製
ワニリル−n−ブチルエーテルを配合しないことを除き、実施例13と同様にして、スープ用呈味改善剤を調製した。
【0075】
実施例14 チキンスープの製造(ワニリル−n−ブチルエーテル添加)
市販品のチキンエキスパウダー3gをお湯に溶解し、チキンスープを100g調整した。これに、実施例13にて調製したワニリル−n−ブチルエーテル配合のスープ用呈味増強剤0.1gを添加し、チキンスープを製造した。
【0076】
比較例8 チキンスープの製造(ワニリル−n−ブチルエーテル無添加)
スープ用呈味増強剤に変えて、比較例7で調製したスープ用呈味改善剤(ワニリル−n−ブチルエーテル無添加)を用いたことを除き、実施例14と同様な方法で、チキンスープを製造した。
【0077】
実施例15 チキンスープの官能評価
官能評価は、専門パネル11名により評価を行った。実施例14で製造したチキンスープについて、比較例8で製造したチキンスープを対照にして、こく味の強さ、旨味の強さ、嗜好性の高さについての官能評価を行った。
結果は、ワニリル−n−ブチルエーテルを含有するチキンスープは、こく味、うま味が、比較例より高いとしたパネルが6名で、塩味がすっきりしとし、嗜好性が高まったとした人数も6名いた。よって、本発明の呈味増強剤により、呈味が増強され、嗜好性が高くなっていた。特定の呈味だけが突出しない、バランスのとれた呈味に改善され、おいしさが増していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1:

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表されるワニリルアルコール誘導体及び/又は該ワニリルアルコール誘導体の形態加工体を含有する呈味増強剤。
【請求項2】
請求の範囲第1項記載の呈味増強剤において、一般式1のRがn−ブチル基であることを特徴とする呈味増強剤。
【請求項3】
(A)一般式1:

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表されるワニリルアルコール誘導体及び/又は該ワニリルアルコール誘導体の形態加工体、
(B)甘味料、塩味料及びうま味料から選ばれる少なくとも1種以上、及び
(C)香料及び/又は香辛料
を含有する呈味増強剤。
【請求項4】
請求の範囲第3項記載の呈味増強剤において、一般式1のRがn−ブチル基であることを特徴とする呈味増強剤。
【請求項5】
請求の範囲第3項または第4項記載の呈味増強剤において、(C)成分が、ジンジャーオレオレジン、トウガラシオレオレジン、ペッパーオレオレジン、ジャンブーオレオレジン、サンショウオレオレジン、ジンゲロン、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ピペリン、ピペリジン、シャビシン、スピラントール、α−サンショオール、β−サンショオール、サンショアミド、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)1,3−ジオキソラン、4−(L−メントキシメチル)−2−(3’−エトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン、アルカン酸バニリルアミド(アルカン酸の炭素数が7〜12)、バニリンアルキレングリコールアセタール(アルキレンの炭素数が3〜6)及びエチルバニリンアルキレングリコールアセタール(アルキレンの炭素数が3〜6)から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする呈味増強剤。
【請求項6】
請求の範囲第1〜5項のいずれかに記載の呈味増強剤を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項7】
請求の範囲第1〜5項のいずれかに記載の呈味増強剤を飲食品に配合し、飲食品の呈味を増強する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/004635
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511539(P2005−511539)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009823
【国際出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】