説明

周囲温度の知覚に影響を与える色の照明システム

本発明の基本的考え方は色主要波長に基づいて光の色を分けることである。前記色を異なる群に分けた後、色の特定の群は既定の基準に基づいて選択され得る。1つの基準は、個人が周囲温度を実際の温度よりもより高いと知覚することであり、他の基準は、個人が周囲温度を実際の温度よりも低いと知覚することであり得る。その後、制御シグナルが、前記選択された色の群により少なくとも1つの光源から発光された光の主要波長を制御するための制御シグナルが生成される。最後に、前記生成された制御シグナルは前記光源に伝達され、それにより前記既定の基準に基づいて前記光源の暴露された個人の前記体温調節への影響を制御する。本発明は、色照明が個人の周囲温度の知覚を変化させるために適用され、暖房及び空調システムのエネルギーが節約できるという点で、有利である。光の色を変化させる照明制御装置を用いることは柔軟な解決を与える結果となる。というのは前記装置は、実際の室温よりもより温かい又はより寒いと知覚する環境へ容易に変更することができるからである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎動物の体温調節に影響を及ぼす方法及びそのための照明制御装置に関する。本発明はさらに、気候制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
照明は室内環境を制御する1つの重要なファクタであることは知られている。光は知覚を促進し、心地よい雰囲気を作り出し、かつ我々の生物時計に強力な刺激を与えて健全な活動−睡眠サイクルを支持するものである。
【0003】
人の概日(24時間)リズムは、24時間のほぼ正弦曲線状の身体の深部体温(CBT)の変動を伴うものである。前記CBT変動のピークからピークの変動は通常は0.7℃程度である。前記CBTは通常夜、自発的に目覚める約1〜2時間前に最小となる。夜の闇はホルモンメラトニンの分泌のピークを伴う。メラトニンは、人では睡眠を意味する暗さに関連する挙動を助長する。睡眠は低体温に関連付けられ、一方活動はより高い体温に関連付けられる。遠位の皮膚(手足など)及び近位の皮膚(太もも、胃など)間の体温差は、睡眠の開始を促進させる。迅速な睡眠促進のために、身体が熱を身体深部から周囲へ遠位皮膚領域を用いて放出して深部体温を低下させることが必要である。このことは、体温調節が個人の睡眠を制御する手段として使用され得ることを意味する。暗闇で光に暴露させると夜のメラトニン分泌が抑制され、従ってメラトニンピークとしての体温調節への影響は通常、CBTで最小を伴う。前記メラトニンレベルに影響を与えかつバイオリズムの相を変化させることで、光は体温調節に間接的に影響を持つ。
【0004】
光はまた、人の体温調節に直接に影響を与えることはあまり知られていない。明るい光に暴露すると深部体温が低下するが、これは運動中であってもそうである。光源の色温度が高くなるとこの効果はより強くなる。しかしこの効果は高いレベルで飽和し得るものである。明るい光によるCBT低下効果は暴露が終了した後数時間持続され得る。日中に数時間明るい光に暴露することで、皮膚血管拡張及び前腕発汗が生じる前記CBTの閾値を下げるように見える。
【0005】
日中の明るい光の暴露の後で、対象体は、寒い午後又は夕方にそれほど寒くは感じない。これらの知見は、日中に明るい光に暴露することで生じる低減された深部体温のセットポイントを意味する。低減された深部体温のセットポイントはまた、皮膚血液流へも効果を及ぼす。寒い環境では、皮膚血液流は前記CBTが低レベルを維持するために熱損失を助長するように増加されなければならない。
【0006】
光強度が体温調節することが知られているだけでなく、光の色温度もまた体温調節に使用され得る。3000、5000及び7000K光を比較すると、熱い入浴(40℃)直後の直腸体温の増加は、3000Kの浴室照明下でより大きく、より高い値が入浴後も維持された。このことは、より高い色温度の光はCBTのセットポイントを低減する、ということと一致する。個人が入浴する際に、皮膚血液流は低下されなければならない。それにより入浴からの熱吸収によるCBT増加が最小化されるからである。CBTセットポイントが低減すると、皮膚血液流はさらに深部の熱を最小化するように減少する。しかし熱い湯から出ると、個人の皮膚血液流は急激に増加する。これにより個人は過剰の熱を逃し、CBTがその設定ポイントへ減少することが可能となる。より低いCBTセットポイントは、入浴後皮膚血液流を増加させ、かつ湯から出た後の皮膚温度の個人の低下を低減させようとする。
【0007】
結論すると、照明の強度及び色温度は、照明に晒される脊椎動物の体温調節に直接影響することが言える。科学的知見は、深部体温のセットポイントは強度及び色温度の増加に伴い減少することを示す。
【0008】
国際特許出願番号WO2008/120127には、一般的に、自然昼光を真似し制御するためのインタラクティブシステム及びユーザインタフェースが開示されている。これは例えば、ノブ、スライダ、ポインタ及び/又はインジケータを持つ選択可能なダイアルなどの入力装置の操作に応じて日中又は他の時間を通じて人工光の寄与を変化させることにより行われるものである。より詳細には、WO2008/120127(現譲受人に譲渡)は、インタラクティブな照明制御システムが開示されており、これはプロセッサと操作的に接続されるユーザインタフェースを含むものである。前記プロセッサはまたメモリと接続され、ユーザインタフェースからユーザ入力を受け取り、前記ユーザ入力(ユーザインタフェースから受け取られる)に基づく少なくとも1つの光源を制御し、及び/又は前記メモリに記憶された既定のプログラム又はメモリに記憶された簡易スクリプトを実行するように構成される。前記簡易スクリプトとは、例えば一日の時間、年の日、季節、気候などの1つの又は種々のファクタとして既定の静的な及び/又は動的に変化する照明を与えるように前記光源を制御する命令を含む。前記変化する照明は、強度(即ち減光機能)、色、色調、飽和度、方向などの種々の光源からの寄与を変更することによる。従って、WO2008/120127は、自然光を擬似的に与えるものであり、上記議論された体温に関する問題に対処するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、脊椎動物の体温調節に影響を与えるための方法及びそのための照明制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、独立請求項に記載される本発明により達成される。好ましい実施態様は従属請求項に記載される。
【0011】
本発明の第1の側面によれば、脊椎動物の体温調節に影響を与える方法が提供され、前記方法は、既定の基準に基づいて、複数の光の色の群から特定の群を選択するステップを含む。前記光の色は、特定の色の主要波長に基づいて群に分けられており、それぞれの色の群は脊椎動物の体温へ特定の方法で影響をあたえるように設けられている。さらに、本方法は、前記選択された色の群により少なくとも1つの光源からの発光の前記主要波長を制御するための制御シグナルを生成するステップ、及び前記生成された制御シグナルを前記光源に伝達するステップを含み、前記光源が前記選択された色の群の光を発光し、それにより既定の基準に基づいて前記光源により発光される光の色の選択された群の前記光に暴露される脊椎動物の体温調節に影響を与える、方法である。
【0012】
本発明の第2の側面によれば、脊椎動物の体温調節に影響を与えるための照明制御装置が提供され、前記装置はプログラム及びトランスミッターを含む。前記プロセッサは、既定の基準に基づいて、光の複数の色の群から特定の群を選択するように構成されている。前記光の色は、前記それぞれの色の主要波長に基づいて群に分けられており、それぞれの群の色は、脊椎動物の体温調節に特定の方法で影響を与えるように構成されている。前記プロセッサはさらに、前記選択された色の群により少なくとも1つの光源から発光される光の前記主要波長を制御するための制御シグナルを生成するように構成される。前記トランスミッターは、前記生成された制御シグナルを前記光源に伝達し、前記光源が前記選択された色の群の光を発光し、それにより、既定の基準に基づき前記光源により発光された前記選択された色の群の光に暴露された脊椎動物の体温調節に影響を与える。
【0013】
本発明の第3の側面によれば、本発明の照明制御装置に接続可能に構成される気候制御システムを提供するものである。本発明システムは、気候制御装置を含み、これは前記照明制御装置の前記プロセッサにより生成された制御シグナルに応じるように構成され、前記気候制御装置により放出される投光特性が前記既定の基準により適合する。
【0014】
本発明の基本的考え方は色主要波長に基づいて光の色を分けることである。周囲温度が高いと感じる色は、所謂色相環上にある赤色及び黄色の間であり(即ち、赤、オレンジ、黄色−オレンジ、純黄色)である。即ち主要波長λでいえば、576nm<λ<700nmの色である。周囲温度が低いと感じる色は、所謂色相環上にある緑及び青の間であり(これは例えば、既定の緑色、シアン、青色)、即ち主要波長λでいえば、460nm<λ<520nmの色である。従って色のそれぞれの群は、特定の方法で周囲温度の個人の知覚に影響を与えるか、又は個人の生理学的体温に実際に影響を与えるように構成される。即ち、周囲温度の知覚に影響を与え得るのみならず、個人の内部生理学的プロセスにも影響を与える可能性がある。というのは個人の深部体温が影響を受けるからである。色の色相は知覚的寄与として考えられ得る一方で、前記主要波長はその物理的類似物である。
【0015】
前記色を異なる群に分けた後、色の特定の群は既定の基準に基づいて選択され得る。1つの基準は、個人が周囲温度を実際の温度よりもより高いと知覚することであり、他の基準は、個人が周囲温度を実際の温度よりも低いと知覚することであり得る。
【0016】
その後、制御シグナルが、前記選択された色の群により少なくとも1つの光源から発光された光の主要波長を制御するための制御シグナルが生成される。最後に、前記生成された制御シグナルは前記光源に伝達され、それにより前記既定の基準に基づいて前記光源の暴露された個人の前記体温調節への影響を制御する。
【0017】
本発明は、色照明が個人の周囲温度の知覚を変化させるために適用され、暖房及び空調システムのエネルギーが節約できるという点で、有利である。光の色を変化させる照明制御装置を用いることは柔軟な解決を与える結果となる。というのは前記装置は、実際の室温よりもより温かい又はより寒いと知覚する環境へ容易に変更することができるからである。明らかに、これは、従来の壁をペイントするなどの従来の解決方法では容易に達成できるものではない。本発明は、壁及び/又は天井、柱などを照明するために使用され得る。又は照明壁、天井、床などを制作するために使用され得る。前記光の強度及び/又は色は、例えば日中の時間又は例えば個人の暑いとか寒いとかの主観的経験に依存して、調節可能である。
【0018】
さらに本発明の実施態様によると、知覚される周囲温度の上昇又は低下をより達成するためには前記色の十分な飽和レベルを持つことが必要である。これらのレベルは通常CIE1931色図で定義され、当業者に知られている。さらに、ある色相の飽和レベルはまた参照白色点の選択により決定される。6500K(昼光)での前記色システムでの白色点を選択することが一般的であり、暖色及び寒色の両方に適している。これはまた、室内に存在する周囲白色照明にも使用され得る。従って、光の色を分ける場合には色飽和もまた考慮されることが有利であり、CIE1931色図で定義される性質は前記光の色を分けるための基礎を形成し得る。しかし「暖かい」又は「寒い」色相の経験はまた前記周囲白色光の色温度を調節することでも強化され得る。
【0019】
他の実施態様では、知覚される色又は色相の「暖かさ」は、前記参照白色点の前記色温度を調節することで強化され得る。3000K未満の白色点を用いることで、「暖かい」白色点が暖かい色相と組み合わされて暖かさは強化される。
【0020】
本発明の他の実施態様では、前記照明装置は、前記周囲温度の測定と共に前記照明制御装置を提供する温度計と接続可能であり、従って周囲温度は制御光のための既定の基準を形成する。一例では、夏の日に、室温が25℃と測定され、前記装置にフィードバックされる。前記温度を下げる代わりに(又は捕捉して)、「寒」色の光、例えば青色光が選択され得る。前記光源に暴露された個人はそれにより前記周囲温度がより低いものと知覚する。
【0021】
さらに、本発明の大きな効果は、空調装置などの気候(climate)及び/又は暖房制御システムのエネルギー消費を低減できることである。というのは、人はある色の光に暴露されると周囲温度をより低い又は高いものと知覚するからである。従って個人に「暖」色例えば赤又は黄色に暴露させることで、前記周囲温度を下げてもなお、以前の温度と同じ周囲温度であると知覚するということがあり得る。個人に「寒」色の光に暴露することで、前記個人は周囲温度をより寒いと知覚し、それにより空調装置の必要を低減させることができ得る。
【0022】
さらに、上記の本発明の照明制御装置に接続可能な気候制御システムが提供され、さらにインテリジェント気候制御のための気候制御装置を含む。従って、本発明の照明制御装置はHIVAC装置(暖房、換気及び空調)と組み合わされ、これはまた気候制御装置と参照される。本発明の気候制御装置において、前記HVAC装置の出力は前記光源を制御するための前記既定の基準に応じるものである。例えば、前記照明システムの前記光源の色が、前記色スケールでの赤−黄色領域に調節されるとすると、前記気候制御システムの前記出力温度は低下され得る。というのは光の「より暖かい」色が前記個人により周囲温度をより高く知覚させることとなるからである。温度の他に前記気候制御システムのパラメータ、例えば湿度、空気流、純度などがまた前記光の制御された特性に応じて代わりに調節され得る。従って、前記気候制御装置は、前記照明制御装置の前記プロセッサにより生成される前記制御シグナルに応じるように構成され、前記気候制御装置により放出される投光特性が光を制御するための既定の基準により適合される。
【0023】
ほとんどの市販HVACシステムはエネルギー節約において最適化され非常に良好に機能するものである。しかしこれらの大きな欠点は、温度及び/又は湿度などの純粋に物理的パラメータに応じて操作されるように設計されているということである。これらの弱点は、エネルギー節約という点でより効率的にするために、人の光に対する知覚を取り入れていないということである。この特定の気候制御システムを用いることで、光に対する人の知覚が、HVAC装置出力を制御するために考慮され、これにより、より大きなエネルギー節約効果が可能となる。
【0024】
使用される光源は、LED、白熱灯、ハロゲン、蛍光又は金属ハロゲン化物などの1つであってよい。体温調節が影響を受ける個人は1つ以上の光源に暴露され得る。
【0025】
本発明の応用分野は数多い。
例えば:オフィス又は会議室において、空調又は暖房のエネルギーコストを節約するために、壁又は天井、又は自由スタンド又はつり下げ装飾照明において、寒及び暖色をそれぞれ使用する;新鮮な又は冷蔵製品が存在するスーパーマーケットにおいて冬季間、顧客を快適に維持するために暖色を用いる一方で、より低温周囲温度を用いる。これは、製品、特に果実、野菜など冷却されない製品がより長く新鮮に維持できるという点で利点となる。さらに、これによりスーパーマーケットを暖房するために意図されるエネルギー消費の低減が見込まれる。さらに、冷蔵庫又は冷凍庫での冷却に関するエネルギー消費も、周囲温度が下げられることから低減され得る;他の製品が存在するスパーマーケットにおいて、夏期間、顧客を快適に維持するために寒色を用いる一方でより高い周囲温度が使用され得る。これは、ホテル室内、住宅、高齢者用住宅、病院室内、学校内などに求められるエネルギー節約の考え方に基づいて冷房のための空調の使用に関するエネルギー消費の低減において有利となる。
【0026】
留意すべきは、本発明は特許請求の範囲に記載される全ての可能な組み合わせに関する、ということである。さらに本発明の構成及び利点は、添付の特許請求の範囲及び明細書を参照することで明確となる。当業者は、本発明の異なる構成が組み合わされて以下に記載される実施態様とは異なる他の実施態様をも創作し得ることが理解できる。
【0027】
本発明は以下、本発明の1以上の実施態様を示す添付図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、既知のCIE1931色度図を示す。
【図2】図2は、本発明の1つの実施態様による照明制御装置を示す。
【図3】図3は、本発明のさらなる実施態様による照明制御装置を示す。
【図4】図4は、本発明による気候制御システムであり、図2及び3に示される照明制御装置を用いるシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1はよく知られているCEI1931色度図を示す。この図は個人に見える色度の全てを表す。色度は舌形状領域1内に示されるマークされた領域によりほぼ示される。前記舌形状領域1の曲がった端2はナノメータで表される波長を持つ単色光に対応する。舌形状領域1の下部の直線端3は単色光の対応する色を持たない。図1の内部領域ではより飽和されていない色が現れており、領域10はその中心が白色を表す。図1の他の領域は領域12がピンク色、領域14が緑色、領域18が青色、領域25が赤色及び領域29が黄色を含み、同様にそれらの間の色についての数多くの領域を含む。本発明の1つの実施態様では、光の色は前記CIE1931色度図の性質を用いて群に分けられる。周囲温度上昇を感じさせる色は、所謂色相サークル上の赤即ち領域25及び黄色即ち領域29の間である(例えば赤、オレンジ、黄色−オレンジ、純黄色)であり、主要な波長λでいえば576nm<λ<700nmの範囲である。周囲温度低下を感じさせる色は、所謂色相サークル上の緑即ち領域14及び青色即ち領域18の間である(例えば緑、シアン、青色)であり、主要な波長λでいえば460nm<λ<520nmの範囲である。
【0030】
さらに本発明の1つの実施態様において、周囲温度が高く又は低いとよりよく知覚するために、色が十分な飽和レベルを持つことが必要である。これらのレベルは通常図1で示されるCIE1931色度図により定義される。さらに、ある色相のための飽和レベルはまた、参照白色点の選択により定義される。6500K(昼光)で前記色システムでの白色点を選択することは普通の選択であり、暖色及び寒色のいずれにとっても適するものである。これはまた、室内空間に存在する周囲白色照明のために使用されてもよい。従って、光の色を分ける際には色飽和もまた考慮することが有利となる。しかし「暖かい」又は「寒い」色相の経験はまた、前記周囲白色光の色温度を調節することでも強調され得る。従って、図1の色度図は、色領域毎の飽和レベルの範囲を決めるために使用され、前記色が、「赤」、「オレンジ」、「青」などに分けられる。さらに留意すべきは、ある色相の飽和レベルがさらに前記参照白色点の選択により決定される、ということであり、これは「暖」色が、前記CIE1931色度図空間の境界上でこの白色点と前記飽和色素を通る線に沿っていること、前記参照白色点の前記色温度が好ましくは6500K(昼光)以下であることを保証し、及び「寒」色が、前記CIE1931色度図空間の境界上でこの白色点と前記飽和色素を通る線に沿っていること、前記参照白色点の前記色温度が好ましくは6500K(昼光)以上であることを保証するためである。
【0031】
6500K(昼光)で前記色度図での白色点を選択することは汎用の選択であり、暖色及び寒色のいずれにも適するものである。この白色点はまた、本発明の照明制御装置が適用される室内空間に存在する前記周囲白色光のために使用され得る。
【0032】
図2は、本発明の照明制御装置100の1つの実施態様である。個人102はある特性をもつ光を発光するいくつかの光源101からの光に暴露されている。効果が達成され得る条件、特に光の複数の色の群が選択されている。分けられた群は前記制御装置100に組み込まれるメモリ103に記憶され得る。又は前記群は離れた場所に記憶されており、前記装置がインターネット又は無線接続により、選択される群を要求する。既定の基準が、個人が周囲温度を寒と知覚することとする場合、群は、青系色で波長が約470nmのものが選択され得る。その後プロセッサ104により生成される制御シグナルが、前記選択された青色系群による前記光源101からの発光波長を制御する。前記制御シグナルは前記照明制御装置に組み込まれたトランスミッター105によりリード106を介して伝達され、前記光源から前記選択された波長に一致する色の光を発光させ、従って暴露された個人102の体温調節に望ましい方向へ影響を与えることとなる。
【0033】
1つの具体的な実施態様では、前記個人は自分で、前記照明制御装置100に主観的な基準を与えることができ、例えば「私は寒い」などの感覚を反映するものであり、例えば前記装置に接続されたキーパッド(図示されていない)などから与えることができる。
【0034】
図3は本発明の1つの実施態様による照明制御装置200を示す。温度計206が前記照明制御装置200と交信状態にあり、前記装置に周囲温度の測定値を与えるものである。前記温度計は、前記光源201に暴露される部屋の壁に設けられ得る従来の温度計か、又は個人202に付されたセンサの形で埋め込まれ得るものであり、周囲温度を測定し、前記測定値を前記照明制御装置へ伝達するためのものである。さらに、既定の基準により色の群が複数の群から選択される。例えば、17〜19℃の周囲温度である場合、前記基準が、個人は前記温度を実質的に暖かいと知覚するべきである、というものであるとすると、主要波長が例えば670nmを持つ色を選択することを要求し、一方19〜21℃の周囲温度である場合、前記基準が、個人は前記温度をやや寒いと知覚するべきである、というものであるとすると、主要波長が例えば590nmを持つ色を選択することを要求する。21〜23℃の周囲温度である場合、前記基準が、個人は前記温度は中程度あると知覚するべきである、というものであるとすると、主要波長が例えば550nmを持つ色を選択することを要求する(又は光を消すこともあり得る)。一方23〜25℃の周囲温度である場合、前記基準が、個人は前記温度はやや寒いと知覚するべきである、というものであるとすると、主要波長が例えば510nmを持つ色を選択することを要求し、25〜27℃の周囲温度である場合、前記基準が、個人は前記温度は実質的に寒いと知覚するべきである、というものであるとすると、主要波長が例えば460nmを持つ色を選択することを要求する。
【0035】
従って、前記プロセッサ204は達成されるべき前記基準により前記色の群を選択し、前記選択された色の群による光源201から発光される光の波長を制御するための制御シグナルを生成する。前記制御シグナルは前記照明制御装置に組み込まれたトランスミッター205により無線で伝達され、前記光源に前記選択された波長を持つ色の光を発光させ、それにより暴露される個人202の体温調節に適切に影響を与える。図3のセンサ206は、例えば腕輪として、可能ならば心拍計などのエクササイズ装置と組合わせて実施され得る。トランスミッターを用いる代わりに、前記照明制御装置200はトランシーバーを含み、前記温度センサ206からの適切なシグナルを受け取ることができ、また同様に制御シグナルを前記光源に伝達するものであり得る。
【0036】
図4は本発明の1つの実施態様による気候制御システムを示し、気候制御システムは、図2及び3に示される前記照明制御装置に接続される。図4に示される気候制御システムにおいて、図2及び3に示される照明制御装置が気候制御装置と組み合わされる。前記照明制御装置300は、暴露される個人に対してある特性を持つ光を発光するいくつかの光源301と交信する。達成される効果により特定の前記複数の光の群がメモリ303から選択される。既定の基準が、個人が周囲温度を暖かいと知覚すべきというものである場合、波長が約575nmを持つ黄色を含む群が選択され得る。その後、制御シグナルがプロセッサ304により生成され、前記選択された(黄色)群による光源301から発光される光の波長を制御する。制御シグナルは無線でトランスミッター305により伝達され、前記光源が、前記選択された波長を持つ色の光を発光するようにし、それにより暴露される個人302の体温制御に望ましい方向の影響を与える。この具体的な例では、光源301は黄色を発光し、それにより個人302は周囲温度をより暖かいと知覚することとなる。
【0037】
これに関連して、トランスミッター305は無線で前記制御シグナルを前記気候制御装置307に放出空気の熱を下げるように交信する。気候制御装置307は前記照明制御装置300に含まれる場合には、前記制御シグナルは一般的に無線インタフェースでは交信されない。というのはかかる場合には通常前記気候制御装置307は前記照明制御装置300と同じハウジング内に含まれるからである。従って、個人に暴露する「暖」色が選択されると、前記気候制御装置により熱の温度が低減されても、個人は周囲温度を変わらないものと知覚する。従ってエネルギー節約がなされることとなる。
【0038】
前記気候制御装置は、ユーザインタフェースを含み、これによりユーザが望ましい気候パラメータ、例えば望ましい設定温度20℃など、をプログラムすることができる。さらに、前記気候制御装置は、制御アルゴリズムを含み、これにより、前記ユーザにより設定された温度からのずれを、暖かくなってくる場合には放出空気の設定温度を下げ、又は空調で冷房する際には放出空気の温度を上げることで制御し、一方で前記制御装置により前記光源により発光される色を調節することで前記ずれを相殺する。
【0039】
説明された照明制御装置及び気候制御システムは通常、計算可能な1以上のマイクロプロセッサ又は他の装置、例えばアプリケーション特定集積回路(ASIC)、現場プログラム可能ゲートアレイ(FPGA)、コンプレックスプログラム可能論理装置(CPLD)などを含む。これらは光源特性及び気候制御出力を制御し、さらに適切な記憶領域に記憶されたダウンロード可能なソフトウェアを実行する。前記記憶領域にはRAM、フラッシュメモリ又はハードディスクが含まれる。交信を可能にするために、無線交信インタフェースが提供される。
【0040】
当業者は、本発明が上記説明した実施態様に限定されるものではないことを認識する。本発明には、添付の特許請求の範囲の範囲内で多くの変法・改良などが含まれる。例えば、前記照明制御装置は多くの他の方法で実行され得る。例えば独立した照明装置として、パーソナルキャップ、カーバイザ、一組のメガネ、PCモニタのフレーム、又は一般照明システムなどで実施され得る。他の実施は、前記照明制御装置と液晶表示の部分であるバックライトとの組み合わせである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊椎動物の体温調節の影響を与える方法であり、前記方法は:
既定の基準に基づいて、光の色の複数の群から特定の群を選択するステップであって、前記光の色は主要波長に基づいて群に分けられており、それぞれの色の群が、脊椎動物の前記体温調節に特定の方法で影響を与えるように構成される、ステップ;
前記選択された色の群による少なくとも1つの光源から発光される光の前記主要波長を制御するための制御シグナルを生成する、ステップ;及び
前記生成された制御シグナルを前記少なくとも1つの光源に伝達するステップであって、前記選択された色の群の光を発光させ、それにより、前記既定の基準に基づき前記少なくとも1つの光源により発光される前記選択された色の群の光に暴露される脊椎動物の前記体温調節に影響を与える、ステップを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、前記既定の基準が、前記脊椎動物が前記周囲温度がより高いと知覚するべきである、というものであり、このために、約576〜700nmの範囲の前記主要波長を持つ色の群が選択される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であり、前記既定の基準が、前記脊椎動物が前記周囲温度がより低いと知覚するべきである、というものであり、このために、約460〜520nmの範囲の前記主要波長を持つ色の群が選択される、方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法であり、さらに:前記色を分ける際に色飽和を考慮するステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法であり、さらに:前記色を分ける際に色温度を考慮するステップを含む、方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法であり、前記CIE1931色度図により定義される性質が、前記色を分けるための基礎を形成する、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であり、前記CIE1931色度図の参照白色点が、約6500Kの色温度を持つように構成される、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であり、前記CIE1931色度図の参照白色点が、約3000Kの色温度を持つように構成される、方法。
【請求項9】
脊椎動物の体温調節に影響を与える照明制御装置であり、前記装置が:
プロセッサ;及び
トランスミッターを含み;
前記プロセッサが、既定の基準に基づいて、光の色の複数の群から特定の群を選択し、前記光の色が主要な波長に基づいて群に分けられており、それぞれの色の群が、脊椎動物の体温調節に特定の方法で影響を与え;及び
前記プロセッサがさらに前記選択された色の群により少なくとも1つの光源から発光される光の前記主要な波長を制御するための制御シグナルを生成し;
前記トランスミッターが、前記生成された制御シグナルを前記少なくとも1つの光源に伝達して前記選択された色の群の光を発光させ、それにより、前記既定の基準に基づき前記少なくとも1つの光源により発光された前記選択された色の群の光に暴露された脊椎動物の前記体温調節に影響を与える、照明制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の照明制御装置であり、さらに:前記複数の光の色の群を記憶するためのメモリを含む、照明制御装置。
【請求項11】
請求項9又は10のいずれか1項に記載の照明制御装置であり、さらに:前記既定基準を入力し得るユーザインタフェースを含む、照明制御装置。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載の照明制御装置であり、さらに:制御される前記少なくとも1つの光源を含む、照明制御装置。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか1項に記載の照明制御装置であり、さらに、周囲温度の測定を前記照明制御装置に与えるように構成される温度計と接続可能に構成され、前記測定された周囲温度が使用されるべき前記既定の基準を決定する、照明制御装置。
【請求項14】
請求項9に記載の照明制御装置を接続可能に構成される気候制御システムであり、前記システムがさらに:気候制御装置を含み、前記装置が前記照明制御装置の前記プロセッサにより生成される前記制御シグナルに応じるように構成され、前記気候制御装置により放出される投光特性が前記既定の基準により適合される、気候制御システム。
【請求項15】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のステップを装置に実行させるためのコンピュータ実行可能なコンポーネントを含むコンピュータプログラム製品であり、前記コンピュータ実行可能なコンポーネントが前記装置に含まれるプロセスユニット上で実行される、コンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−531235(P2012−531235A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516904(P2012−516904)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052674
【国際公開番号】WO2010/150138
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】