説明

周波数変換回路、位相比較回路、およびこれらを備えた遅延検波復調装置

【目的】 ディジタル回路化集積回路化による回路の無調整化や小形化、また消費電力の低減が容易な周波数変換回路、位相比較回路、およびこれらを備えた遅延検波復調装置を得る。
【構成】 受信信号はリミタ増幅器100によって2値化された後、移動平均生成手段502を通して周波数変換回路500に入力され、そこで周波数変換される。周波数変換された受信信号は位相比較回路600で位相基準信号に対する位相差を示す相対位相信号を出力する。更に、相対位相信号は遅延素子400によって出力を遅延された後に減算器401によって遅延素子400の出力を減算する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、無線通信方式の分野における遅延検波復調装置、特に、位相比較回路を用いた遅延検波復調装置、並びにこれに用いる位相比較回路および周波数変換回路の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の位相比較回路を用いた遅延検波復調装置は例えば特開昭64−12646号公報「DPSK復調方式」に記載されている。以下、図を用いて従来技術の説明を行う。
【0003】図8は従来の周波数変換回路および位相比較回路を備えた遅延検波復調装置の構成を示す構成図であり、図において、200は周波数変換回路、この周波数変換回路200の構成として201は乗算器、202は乗算器201の出力より高周波成分を除去するローパスフィルタ、300は位相比較回路、この位相比較回路の構成として301は局部搬送波の位相をπ/2ラジアン移相する移相器、302はローパスフィルタ202の出力と局部搬送波を乗算する乗算器、303は移相器301の出力とローパスフィルタ202の出力を乗算する乗算器、304は乗算器302の出力より高周波成分を除去するローパスフィルタ、305は乗算器303の出力より高周波成分を除去するローパスフィルタ、306はローパスフィルタ304の出力を標本化する標本化器、307はローパスフィルタ305の出力を標本化する標本化器、308は各標本化器306,307より絶対位相信号を生成し出力する座標変換器、400は座標変換器308より出力された絶対位相信号を遅延時間が受信信号の1シンボル周期に等しい遅延時間で遅延する遅延素子、401は絶対位相信号2πを法として減算する減算器、402は減算器401より出力された位相差信号に復調データを出力する判定器である。
【0004】次に動作について説明する。通常、復調装置においては、周波数変換器回路を用いて受信信号の周波数を信号処理が容易な低い周波数に変換することが行われる。図8において、差動位相シフトキーイング(以下、DPSKと略称する)変調信号である受信信号は周波数変換回路200に入力される。周波数変換回路200内において、受信信号は乗算器201により周波数変換用信号と乗算される。ここで受信信号の周波数をf1(Hz)、周波数変換用信号の周波数をf2(Hz)とすると、乗算器201から出力される乗算信号はf1+f2(Hz)と│f1 −f2 │(Hz )の周波数成分を含んでいる。この乗算信号はローパスフィルタ202に入力され、低い周波数成分である│f1 −f2 │(Hz )の成分のみが通過し、周波数変換された受信信号となる。
【0005】周波数変換回路200の出力である周波数変換された受信信号は位相比較回路300に入力される。位相比較回路300において、移相器301は位相基準信号である局部搬送波の位相をπ/2ラジアン移相する。周波数変換された受信信号は乗算器302により局部搬送波と乗算され、次いでローパスフィルタ304により高周波成分が除去され、局部搬送波と同位相の成分のベースバンド信号(以下、同相ベースバンド信号と称する)に変換される。同時に、周波数変換された受信信号は乗算器303により移相器301から出力されるπ/2ラジアン移相された局部搬送波とも乗算され、次いでローパスフィルタ305により高周波成分が除去され、局部搬送波と直交した成分のベースバンド信号(以下、直交ベースバンド信号と称する)に変換される。
【0006】ローパスフィルタ304から出力される同相ベースバンド信号は標本化器306により標本化される。同様に、ローパスフィルタ305から出力される直交ベースバンド信号は標本化器307により標本化される。標本化された同相ベースバンド信号と標本化された直交ベースバンド信号は座標変換器308に入力される。座標変換器308からは周波数変換された受信信号と局部搬送波の位相差を表す相対位相信号が出力される。ここで、標本化された同相ベースバンド信号、標本化された直交ベースバンド信号、および相対位相信号の値をそれぞれx,yおよびθとすると、この三者の関係は次式で表される。
【0007】θ = tan-1(x/y)
【0008】位相比較回路300の出力である相対位相信号は遅延時間が受信信号の1シンボル周期に等しい遅延素子400により遅延される。同時に、相対移相信号は2πを法とする減算器401にも入力される。2πを法とする減算器401には遅延素子400から出力される1シンボル周期遅延された相対位相信号も入力され、相対位相信号から1シンボル周期遅延された相対位相信号を2πを法として減算した値である位相差信号が出力される。
【0009】この位相差信号は受信信号の1シンボル周期の間の位相遷移を表している。2πを法とする減算器401から出力される位相差信号は判定器402に入力される。判定器402は、あらかじめ定められた位相差信号と復調データの対応規則により、位相差信号の値に応じた復調データを出力する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の周波数変換回路および位相比較回路はアナログ素子により構成されるため集積回路化が容易ではなく、したがって、回路の無調整化や小形化、また消費電力の低減が困難であるという課題があった。
【0011】この発明は上記のような課題を解消するためになされたもので、ディジタル回路により構成され、このため集積回路化による回路の無調整化や小形化、また消費電力の低減が容易な周波数変換回路、位相比較回路、およびこれらを備えた遅延検波復調装置を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1による周波数変換回路は、2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前期排他的論理和信号の移動平均値をk(kは正の整数)倍した信号を生成する移動平均生成手段と、前記移動平均生成手段の出力値の論理“0”および論理“1”の2値に変換する硬判定手段とを設けたものである。
【0013】請求項2による周波数変換回路は、2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記排他的論理和素子から出力される信号を入力とする段数2n+1(nは正の整数)のシフトレジスタ、および前記シフトレジスタの各段の出力を加算する加算器を有する移動平均生成手段と、前記移動平均生成手段の出力値を論理“0”および論理“1”の2値に変換する硬判定手段とを設けたものである。
【0014】請求項3による周波数変換回路は、2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記排他的論理和素子から出力される信号を入力とする段数2n+2(nは正の整数)のシフトレジスタ、前記シフトレジスタの第2n+2段の出力の符号を反転する符号反転手段、遅延素子、および前記シフトレジスタの段1段の出力と前記符号反転手段の出力と前記遅延素子の出力とを加算する加算器を有し、前記遅延素子が前記加算器から出力される加算結果を記憶する移動平均生成手段と、前記移動平均生成手段の出力値を論理“0”および論理“1”の2値に変換する硬判定手段とを設けたものである。
【0015】請求項4による周波数変換回路は、2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記排他的論理和素子信号の移動平均値をk(kは正の整数)倍した信号を生成する移動平均生成手段と、前記移動平均生成手段の出力値と任意の定数であるしきい値とを比較する比較器を有する硬判定手段とを設けたものである。
【0016】請求項5による位相比較回路は入力信号とこれと概略等しい一定周波数の位相基準信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記位相基準信号の1/2周期中で前記排他的論理和信号が論理“1”となる時間を測定する位相差絶対値測定手段と、前記位相基準信号の1/2周期ごとの前記排他的論理和信号の値により前記位相基準信号に対する前記入力信号の位相の遅れ進みを判定する位相差正負判定手段とを設けたものである。
【0017】請求項6による位相比較回路は、入力信号とこれと概略等しい一定周波数の位相基準信号と排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、加算器および遅延素子を有し、前記加算器が前記排他的論理和信号と前記遅延素子の出力を加算し、前記遅延素子が前記加算器から出力される加算結果を記憶する位相差絶対値測定手段と、前記位相基準信号の1/2周期ごとの前記排他的論理和信号の値により前記位相基準信号に対する前記入力信号の位相の遅れ進みを判定する位相差正負判定手段とを設けたものである。
【0018】請求項7による遅延検波復調装置は、入力信号とこれと概略等しい一定周波数の位相基準信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子、前記位相基準信号の1/2周期中で前記排他的論理和信号が論理“1”となる時間を測定する位相差絶対値測定手段、および前記位相基準信号の1/2周期ごとの前記排他的論理和信号の値により前記位相基準信号に対する前記入力信号の位相の遅れ進みを判定する位相差正負判定手段を有する位相比較回路と、前記位相比較回路から出力される位相差信号を受信信号の1シンボル周期遅延させる遅延素子と、前記位相差信号から前記遅延素子の出力信号を減算する減算器とを設けたものである。
【0019】請求項8による遅延検波復調装置は、2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子、前記排他的論理和信号の移動平均値をk(kは正の整数)倍した信号を生成する移動平均生成手段、および前記移動平均生成手段の出力値を論理“0”および論理“1”の2値に変換する硬判定手段を有する周波数変換回路と、前記周波数変換器回路の出力信号とこれと概略等しい一定周波数の位相基準信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子、前記位相基準信号の1/2周期中で前記排他的論理和信号が論理“1”となる時間を測定する位相差絶対値測定手段、および前記位相基準信号の1/2周期ごとの前記排他的論理和信号の値により前記位相基準信号に対する前記出力信号の位相の遅れ進みを判定する位相差正負判定手段を有する位相比較回路と、前記位相比較回路から出力される位相差信号を受信信号の1シンボル周期遅延させる遅延素子と、前記位相差信号から前記遅延素子の出力信号を減算する減算器とを設けたものである。
【0020】
【作用】請求項1の発明に係る周波数変換回路においては、排他的論理和素子は第1の入力信号と第2の入力信号との乗算を行う乗算器として作用し、移動平均生成手段と硬判定手段は排他的論理和素子の出力から高周波変動成分を除去するローパスフィルタとして作用することで乗算器より出力される周波数変換器の第1の入力信号より高周波変動成分を除去する。
【0021】請求項2の発明に係る周波数変換回路においては、移動平均成分手段の一部を構成する段数2n+1のシフトレジスタは駆動クロックに同期して各段より出力される合計2n+1個の信号をそれぞれ加算器に出力し、この加算器は出力信号として排他的論理的素子の出力値の2n+1回移動平均値を2n+1倍した信号を出力し、この出力信号が周波数変換後の第1の入力信号の2値量子化信号となる。
【0022】請求項3の発明に係る周波数変換回路においては、移動平均生成手段の一部を構成する段数2n+2のシフトレジスタに入力された排他的論理和信号の第1段目の出力は加算器に入力され、また第2n+2段目の出力は符号反転器によって符号反転された後に加算器に入力され、この加算出力をフリップフロップに入力して記憶する。
【0023】請求項4の発明に係る周波数回路において、硬判定手段は移動平均生成手段の出力値と定数とを比較器にて比較し、各比較値との大小関係に応じて論理“0”及び論理“1”の信号を出力することで数値化された移動平均生成手段の出力、すなわち周波数変換後の第1の入力信号を2値量子化する。
【0024】請求項5に係る位相比較回路においては、排他的論理和素子にて周波数変換後の第1の入力信号と位相基準信号との排他的論理和をとり、この排他的和信号が位相基準信号の1/2周期中で連続して1となる時間を位相差絶対値測定手段にて測定し、前記各信号間の位相差の絶対値を測定する一方、位相差正負判定手段において、位相基準信号の1/2周期毎の排他的論理和素子の出力値をもとに前記位相基準信号に対する受信信号の位相の遅れ進みを判定する。
【0025】請求項6に係る位相比較回路において、位相差絶対測定手段の一部を、構成する加算器に排他的論理和素子の出力と遅延素子を構成するDフリップクロップの出力が加算され、且つ加算出力が前記Dフリップクロップに入力されることで、加算器の出力値は、排他的論理和素子の出力が論理“1”である期間は、Dフリップクロップの駆動クロックの1周期毎に1づつ増加し、また排他的論理和素子の出力が論理“0”である間は加算器の出力値は不要となり、したがって排他的論理和素子の出力が連続して論理“1”となる時間を測定することで、周波数変換後の第一の入力信号と位相基準信号との位相差の絶対値を知ることができる。
【0026】請求項7の発明に係る遅延検波復調装置によれば、位相比較回路の出力である相対位相信号は遅延時間が受信信号の1シンボル周期に等しい遅延素子により遅延されると同時に2πを法とする減算器にも入力される。前記減算器には前記遅延素子から出力された相対位相信号も入力され、相対位相信号から1シンボル周期遅延された相対位相信号を2πを法として減算した値である位相差信号が出力される。
【0027】請求項8の発明に係る遅延検波復調装置によれば、周波数変換回路において排他的論理和素子は2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との乗算を行い、第1の入力信号を周波数変換した際、この周波数変換された第1の入力信号をローパスフィルタとして作用する移動平均生成手段を硬判定手段に通して高周波変動成分を除去する。
【0028】前期周波数変換後の第1の入力信号は、その後位相比較回路で位相基準信号との位相差の絶対値と位相の遅れ進みを判定された後、遅延時間が受信信号の1シンボル周期に等しい遅延素子により遅延されると同時に2πを法とする減算器にも入力される。前記減算器には前記遅延素子から出力された相対位相信号も入力され、相対位相信号から1シンボル周期遅延された相対位相信号を2πを法として減算した値である位相差信号が出力される。
【0029】
【実施例】実施例1.以下、図を用いて実施例1について説明する。図1は、実施例1による周波数変換回路および位相比較回路を備えた遅延検波復調装置の構成を示す構成図であり、図において、100は受信信号を2値量子化するリミタ増幅器、500はリミッタ増幅器100によって2値量子化された受信信号を周波数変換する周波数変換回路、この周波数変換回路500の構成として501はリミッタ増幅器100によって2値量子化された受信信号と周波数変換用信号との排他的論理和を取り周波数変換する排他的論理和素子、502は排他的論理和素子501によって周波数変換された受信号周波数より高調波成分を除去する移動平均生成手段、この移動平均生成手段502の構成として、503は排他的論理和素子501から出力される信号を入力するシフトレジスタ、504はシフトレジスタ503の各段の出力を加算する加算器、505は加算器504の出力を任意定数である閾値と比較する硬判定手段としての比較器、600は周波数変換後の受信信号と位相基準信号との位相を比較する位相比較回路、この位相比較回路600の構成として601は比較器505の出力である周波数変換後の受信信号と位相基準信号との排他的論理和をとる排他的論理和素子、602は排他的論理和素子601より出力される位相差信号の位相差絶対値を測定する位相差絶対値測定手段、この位相差絶対値測定手段602の構成として603は排他的論理和素子601より出力される位相差信号とこの位相差信号を遅延した位相差信号を加算する加算器、604は加算器603の出力を遅延する遅延素子としてのDフリップフロップ、605は加算器603の出力を記憶するDフリップフロップ、606は排他的論理和素子601より出力される位相差信号の正負を判定する位相差正負判定手段としてのDフリップフロップである。また、図8と同一または相当部分は同一符号を付してその説明は省略する。
【0030】次の動作について説明する。受信信号はリミタ増幅器100により一定振幅の矩形波形の信号となる。すなわち、リミタ増幅器100は受信信号を2値量子化する量子化器として作用する。以下、受信信号はリミタ増幅器100により論理“0”および論理“1”の2値に量子化されるものとする。
【0031】リミタ増幅器100から出力される2値量子化された受信信号は周波数変換回路500に入力される。周波数変換回路500において、排他的論理和素子501は2値量子化された受信信号と、同様に論理“0”および論理“1”の2値のみをとる周波数変換用信号との排他的論理和演算を行う。ここで、論理“0”を数値“+1”に、論理“1”を数値“−1”に変換することを考えると、排他的論理和演算は乗算に変換される。すなわち、排他的論理和素子501は2値量子化された受信信号と周波数変換用信号との乗算を行う乗算器として作用する。
【0032】排他的論理和素子501の出力である排他的論理和信号は、移動平均生成手段502の構成要素である段数2n+1(nは正の整数)のシフトレジスタ503に入力される。ここで、シフトレジスタ503を駆動するクロック信号(以下、“駆動クロック”と略称する)の周波数は、2値量子化された受信信号と周波数変換用信号のどちらの周波数よりも高いものとする。シフトレジスタ503の各段から出力される合計2n+1個の信号はそれぞれ加算器504に入力される。
【0033】ここで、シフトレジスタ503の駆動クロックの周期をTc とし、時刻t=iTc (iは整数)において排他的論理和素子501から出力される排他的論理和信号の値をa0i∈{0,1}、同じく時刻t=iTc におけるシフトレジスタ503の第m段目(m=1,・・・,2n+1)から出力される信号の値をami∈{0,1}とすると、次式で与えられる関係が成立する。
【0034】ami = a0(i-m)
【0035】したがって、時刻t=iTc に加算器504から出力される信号の値をbi とすると、次式で与えられる関係が成立する。
【0036】
【数1】


【0037】すなわち、移動平均生成手段502の出力となる加算器504の出力は、排他的論理和素子501の出力の値a0iの2n+1回移動平均値を2n+1倍した値をとる。
【0038】移動平均生成手段502の出力は比較器505に入力される。比較器505は入力された信号の値と定数nを比較する。比較器505から出力される信号の値をdi とすると、移動平均生成手段502の出力信号の値bi と定数nの大小関係に応じて次式で与えられる関係が成立するものとする。
【0039】
【数2】


【0040】すなわち、比較器505は移動平均生成手段502の出力di を論理“0”および論理“1”の2値に変換する硬判定手段として作用する。
【0041】以上のような周波数変換回路500内における信号処理により、リミタ増幅器100から出力される2値量子化された受信信号の周波数は変換される。すなわち、2値量子化された受信信号の周波数f1(Hz)、周波数変換用信号の周波数をf2(Hz)とすると、比較器505から出力される周波数変換後の受信信号の周波数は│f1 −f2 │(Hz )となる。
【0042】このことを図を用いて説明する。図2はn=2、すなわち、シフトレジスタ503の段数が5段である場合の周波数変換回路500の動作の一例を示すタイミングチャートである。ただし、図2では、時刻“1”においてシフトレジスタ503の各段の内容はすべて論理“0”であるものとしている。
【0043】図2において、シフトレジスタ503の駆動クロック周波数をf0(Hz)であるものとすると、周波数変換回路500に入力される2値量子化された受信信号の周波数f1 および周波数変換用信号の周波数f2 はそれぞれ以下の式で与えられる。
【0044】
1 = f0 / 4f2 = f0 / 6
【0045】このとき、図2に示された周波数変換回路500の出力である比較器505の出力の周波数をf3(Hz)とすると、f3 とf0 の関係は次式で与えられる。
【0046】f3 = f0 / 12
【0047】以上の3式より、周波数変換後の受信信号の周波数f3 と2値量子化された受信信号の周波数f1 および周波数変換用信号の周波数f2 の関係は次式で与えられる。
【0048】
3 = f0 /12=f0 /4−f0 /6=f1 −f2
【0049】また、排他的論理和演算には交換法則が成立するので、図2において、2値量子化された受信信号と周波数変換用信号を入れ替えても排他的論理和素子501の出力から比較器505の出力までの信号はまったく同一となる。この場合、シフトレジスタ503の駆動クロックの周波数f0 と、2値量子化された受信信号の周波数f1 および周波数変換用信号の周波数f2 の関係はそれぞれ以下の式で与えられる。
【0050】
1 = f0 / 6f2 = f0 / 4
【0051】したがって、この場合には、周波数変換後の受信信号の周波数f3 とf1 およびf2 の関係は次式で与えられる。
【0052】
3 = f0 /12=f0 /4−f0 /6=f2 −f1
【0053】以上の関係をまとめれば、比較器505の出力である周波数変換後の受信信号の周波数f3 と2値量子化された受信信号の周波数f1 および周波数変換用信号の周波数f2 の関係は次式で与えられることが判る。
【0054】f3 = │f1 −f2
【0055】図2において、排他的論理和素子501の出力には、周波数f0 /2(Hz )の変動成分が含まれているが、比較器505の出力にはこのような高い周波数の変動成分は含まれていない。すなわち、シフトレジスタ503と加算器504で構成される移動平均生成手段502と、硬判定手段としての比較器505は、排他的論理和素子501の出力から高周波変動成分を除去するローパスフィルタとして作用することが判る。
【0056】周波数変換回路500から出力される周波数変換後の受信信号は位相比較回路600に入力される。位相比較回路600において、排他的論理和素子601は周波数変換後の受信信号と、論理“0”および論理“1”の2値のみをとる位相基準信号との排他的論理和演算を行う。周波数変換回路500内の排他的論理和素子501と同様に排他的論理和素子601は周波数変換後の受信信号と位相基準信号との乗算を行う乗算器として作用する。
【0057】排他的論理和素子601の出力である周波数変換後の受信信号と位相基準信号との排他的論理和信号が連続した論理“1”となる時間は、周波数変換後の受信信号と位相基準信号との位相差の絶対値に比例する。
【0058】このことを図を用いて説明する。図3は、位相基準信号、周波数変換後の受信信号および排他的論理和素子601の出力である周波数変換後の受信出力と位相基準周波数との排他的論理和信号の関係を、位相基準信号より周波数変換後の受信信号の位相が進んでいる場合と遅れている場合のそれぞれについて示したタイミングチャートである。
【0059】図3において、位相基準信号と周波数変換用後の受信信号との位相差ψの絶対値、位相基準信号と周波数変換後の受信信号との立上がりまたは立盛下がりの時間差をτ、位相基準信号の周期をTとすると、次式で与えられ。
【0060】│ ψ │ = 2πτ / T
【0061】とこが、図3に示すように、位相基準信号と周波数変換後の受信信号の立上がりおよび立下がりの時間差τは、排他的論理和素子601の出力である周波数変換後の受信信号と位相基準信号との排他的論理和信号が連続して論理“1”となる時間に等しい。すなわち、排他的論理和素子601の出力が連続して論理“1”となる時間は、周波数変換後の受信信号と位相基準信号との位相差の絶対値に比例することは明らかである。
【0062】したがって、排他的論理和素子601の出力が連続して論理“1”となる時間を測定することにより、周波数変換後の受信信号と位相基準信号との位相差の絶対値を知ることができる。
【0063】排他的論理和素子601の出力は位相差絶対値測定手段602に入力される。位相差絶対値測定手段602においては、加算器603により、排他的論理和素子601の出力にDフリップフロップ604の出力が加算されて出力される。加算器603の出力はDフリップフロップ604に入力される。
【0064】ここで、Dフリップフロップ604の駆動クロックの周波数は位相基準信号の周波数のM倍(Mは4以上の偶数)であるものとする。Dフリップフロップ604は加算器603の出力を記憶する遅延素子として作用し、排他的論理和素子601の出力が論理“1”である間はDフリップフロップ604の駆動クロックの1周期ごとに加算器603の出力の値は1づつ増加する。また、排他的論理和素子601の出力が論理“0”である間は加算器603の出力の値は不変である。
【0065】一方、加算器603の出力はDフリップフロップ605にも入力される。ここで、Dフリップフロップ605の駆動クロックの周波数は位相基準信号の周波数の2倍であり、その立上がりは位相基準信号の立上がりおよび立下がりに一致するものとする。さらに、Dフリップフロップ604はDフリップフロップ605の駆動クロックが立上がる瞬間にリセットされるものとする。すなわち、Dフリップフロップ604は位相基準信号の1/2周期ごとにリセットされるものとする。
【0066】このような構成とすることにより、位相差絶対値測定手段602の出力であるDフリップフロップ605の出力は、位相基準信号の1/2周期中で排他的論理和素子601の出力が論理“1”となる時間をDフリップフロップ604の駆動クロック周期で正規化した値の小数点以下を切り捨てた整数値となる。
【0067】このことを図を用いて説明する。図4および5は、Dフリップフロップ604の駆動クロックの周波数が位相基準信号の周波数の16倍(すなわち、M=16)である場合の、位相差絶対値測定手段602の動作の一例を示すタイミングチャートであり、図4は周波数変換された受信信号の位相が位相基準信号より進んでいる場合を、図5は遅れている場合をそれぞれ示している。
【0068】図4および図5においては、前述したように、Dフリップフロップ605の駆動クロックの周波数は位相基準信号の周波数の2倍であり、その立上がりは位相基準信号の立上がりおよび立下がりに一致している。また、Dフリップフロップ604はDフリップフロップ605の駆動クロックが立上がる瞬間にリセットされる。
【0069】図4および図5より、前述したように、Dフリップフロップ605の出力は、位相基準信号の1/2周期中で排他的論理和素子601の出力が論理“1”となる時間をDフリップフロップ604の駆動クロック周期で正規化した値の小数点以下を切り捨てた整数値となることが判る。
【0070】ここで、Dフリップフロップ605の出力の値をμ(μ∈{0,1,・・・,M/2})とすると、μとDフリップフロップ604の駆動クロックと位相基準信号の周波数の比M、および位相基準信号と周波数変換後の受信信号との位相差ψの絶対値との間には次式で示す関係が成立する。
【0071】2πμ/M≦│ψ│<2π(μ+1)/M
【0072】すなわち、位相差絶対値測定手段602の出力の値μは、周波数変換後の受信信号と位相基準信号との位相差の絶対値として扱うことができ、その誤差は±π/M以内であることが判る。したがって、Dフリップフロップ604の駆動クロックと位相基準信号の周波数の比Mを大きくすることにより位相差の絶対値の測定誤差を小さくできることも明らかである。
【0073】以上のように、位相差絶対値測定手段602により周波数変換後の受信信号と位相基準信号との位相差の絶対値μが測定されるので、この測定値μに周波数変換後の受信信号の位相基準信号に対する位相の遅れ進みに応じて正または負の符号を付加することにより、周波数変換後の受信信号と位相基準信号との位相差を表現することができる。
【0074】ここで図4および図5を再び参照すると、Dフリップフロップ605の駆動クロックの立上がりの瞬間における排他的論理和素子601の出力の値が、周波数変換後の受信信号の位相基準信号に対する位相の遅れ進みに対応していることが判る。
【0075】すなわち、位相基準信号に対して受信信号の位相が進んでいる図4の場合は、Dフリップフロップ605の駆動クロックの立上がりの瞬間における排他的論理和素子601の出力の値は常に論理“1”である。また、位相基準信号に対して受信信号の位相が遅れている図5の場合は、Dフリップフロップ605の駆動クロックの立上がりの瞬間における排他的論理和素子601の出力の値は常に論理“0”である。
【0076】したがって、排他的論理和素子601の出力をDフリップフロップ606に入力し、Dフリップフロップ606をDフリップフロップ605の駆動クロックと同一のクロック信号で駆動することにより、Dフリップフロップ606の出力は位相基準信号に対する受信信号の位相の遅れ進みを示す信号となる。
【0077】このことを図を用いて説明する。図6は、Dフリップフロップ606の動作を示すタイミンチャートである。図6においては、前述したように、Dフリップフロップ606の駆動クロックはDフリップフロップ605の駆動クロックと同一である。すなわち、Dフリップフロップ606の駆動クロックの周波数は位相基準信号の周波数の2倍であり、その立上がりは位相基準信号の立上がりおよび立下がりに一致している。
【0078】図6より、位相基準信号に対して受信信号の位相が遅れている場合、すなわち、受信信号の立上がりまたは立下がりの位置が位相基準信号の立上がりまたは立下がりの位置より遅れている場合は、Dフリップフロップ606からは位相基準信号の1/2周期ごとに論理“0”が出力されることが判る。また、位相基準信号に対して受信信号の位相が進んでいる場合、すなわち、受信信号の立上がりまたは立下がりの位置が位相基準信号の立上がりまたは立下がりの位置より進んでいる場合は、Dフリップフロップ606からは位相基準信号の1/2周期ごとに論理“1”が出力されることが判る。
【0079】すなわち、Dフリップフロップ606は、位相基準信号の1/2周期ごとに排他的論理和素子601の出力の値により、位相基準信号に対する受信信号の位相の遅れ進みを判定する位相差正負判定手段として作用する。
【0080】Dフリップフロップ606の出力は、周波数変換後の受信信号の位相基準信号に対する位相差の正負を示す符号ビットとして、位相差絶対値測定手段602の出力に付加され、位相比較回路600の出力となる。
【0081】このように、位相比較回路600の出力は、受信信号と位相基準信号との位相差の絶対値を示す位相差絶対値測定手段602の出力に、受信信号の位相基準信号に対する位相差の正負を示すDフリップフロップ606の出力を付加したものとなるので、周波数変換後の受信信号と位相基準信号との位相差を表す信号になる。すなわち、位相比較回路600からは、周波数変換後の受信信号の位相基準信号に対する位相差である相対位相信号が出力される。
【0082】位相比較回路600の出力である相対位相信号は遅延時間が受信信号の1シンボル周期に等しい遅延素子400により遅延される。同時に、相対位相信号は2πを法とする減算器401にも入力される。2πを法とする減算器401には遅延素子400から出力される1シンボル周期遅延された相対位相信号も入力され、相対位相信号から1シンボル周期遅延された相対位相信号を2πを法として減算した値である位相差信号が出力される。この位相差信号は受信信号の1シンボル周期の間の位相遷移を表している。2πを法とする減算器401から出力される位相差信号は判定器402に入力される。判定器402は、あらかじめ定められた位相差信号と復調データの対応規則により、位相差信号の値に応じた復調データを出力する。
【0083】なお、上記実施例では受信信号の変調方式がDPSK変調方式である場合について説明したが、他の変調方式、例えばMSK変調方式やGMSK変調方式などであってもよい。また、上記実施例では、周波数変換回路500のパラメータである定数nが、n=2(すなわち、シフトレジスタ503の段数が5段)である場合について説明したが、定数nは正の整数であればよく、例えば、n=6(すなわち、シフトレジスタ503の段数が13段)や、n=7(すなわち、シフトレジスタ503の段数が15段)であってもよい。さらに、上記実施例では、位相比較回路600内の位相差絶対値測定手段602の構成要素であるDフリップフロップ604の駆動クロックと位相基準信号の周波数の比Mが、M=16である場合について説明したが、定数Mは正の偶数であればよく、例えば、M=32やM=64であってもよい。
【0084】実施例2.次に、図を用いて実施例2について説明する。図7は、実施例2による周波数変換回路および位相比較回路を備えた遅延検波復調装置の構成を示す構成図であり、図において、500aは周波数変換回路、502aは周波数変換後の受信信号より高調波成分を除去する移動平均生成手段、この移動平均生成手段502aの構成として503aは周波数変換後の受信信号をシフト出力するシフトレジスタ、504aはシフトレジスタ503aの1段目出力と符号反転された第2n+2段目の出力を加算する加算器、506は前記シフトレジスタ503aの第2n+2段目の出力の符号反転器、507は符号を反転する前記加算器504aの出力を記憶する遅延素子としてDフリップフロップである。また、図8および図1と同一または相当部分は同一符号を付してその説明は省略する。
【0085】次に動作について説明する。実施例1と同様に、受信信号はリミタ増幅器100により論理“0”および論理“1”の2値に量子化される。リミタ増幅器100から出力される2値量子化された受信信号は周波数変換回路500aに入力される。周波数変換回路500aにおいて、排他的論理和素子501は2値量子化された受信信号と、同様に論理“0”および論理“1”の2値のみをとる周波数変換用信号との排他的論理和演算を行う。排他的論理和素子501は2値量子化された受信信号と周波数変換用信号との乗算を行う乗算器として作用することも実施例1と同様である。
【0086】排他的論理和素子501の出力である排他的論理和信号は、移動平均生成手段502aの構成要素である段数2n+2(nは正の整数)のシフトレジスタ503aに入力される。ここで、シフトレジスタ503aの駆動クロックの周波数は、2値量子化された受信信号と周波数変換用信号のどちらの周波数よりも高いものとする。
【0087】シフトレジスタ503aの第1段目の出力は加算器504aに入力される。また、シフトレジスタ503aの第2n+2段目の出力は符号反転器506に入力されて符号反転が行われ、加算器504aに入力される。また、加算器504aにはDフリップフロップ507の出力も入力される。
【0088】すなわち、加算器504aにおいては、シフトレジスタ503aの第1段目の出力と、シフトレジスタ503aの第2n+2段目の出力符号を反転した値である符号反転器506の出力と、Dフリップフロップ507の出力とが加算される。加算器504aの出力はDフリップフロップ507に入力される。すなわち、Dフリップフロップ507は加算器504aの出力を記憶する遅延素子として作用する。
【0089】ここで、Dフリップフロップ507の駆動クロックをシフトレジスタ503aの駆動クロックと同一とし、初期状態におけるDフリップフロップ507とシフトレジスタ503aの各段の内容をすべて論理“0”とする。
【0090】このとき、シフトレジスタ503aおよびDフリップフロップ507の駆動クロックの周期Tc とし、時刻t=iTc (iは整数)において排他的論理和素子501の出力の値をa0i∈{0,1}、同じく時刻t=iTc におけるシフトレジスタ503aの第1段目および第2n+2段目の出力の値をそれぞれpi ∈{0,1}およびqi∈{0,1}とする。初期状態、すなわち時刻t=0においてシフトレジスタ503aの各段の内容がすべて論理“0”であることを考慮すると、次式で与えられる関係が成立する。
【0091】
【数3】


【0092】前述のように、符号反転器506の出力はシフトレジスタ503aの第2n+2段目の出力の符号を反転した値をとる。したがって、時刻t=iTc における符号反転器506の出力の値をri∈{−1,0} とすると、次式で与えられる関係が成立する。
【0093】
【数4】


【0094】また、同じく時刻t=iTc (iは整数)におけるDフリップフロップ507の出力の値をsi とすると、次式で与えられる関係が成立する。
【0095】si =pi+ri+si-1
【0096】ここで、初期状態、すなわち時刻t=0におけるDフリップフロップ507の出力の値s0 =0であること、および時刻t≦(2n+1)tc の範囲において符号反転器506の出力の値ri =0であることを考慮すると次式で与えられる関係が成立する。
【0097】
【数5】


【0098】以下、数学的帰納法により証明を行う。
【0099】まず、i=1の場合はs1 =p1+r1+s0= p1= a00
【0100】となり、成立する。次に、i=jのときに成立したものとすると、i=j+1のとき、
【0101】
【数6】


【0102】となり、成立する。したがって、1≦i≦2n+1なる範囲のすべての整数iに対して成立する。(証明終わり)
【0103】したがって、時刻t=(2n+1)Tc におけるDフリップフロップ507の出力の値s2n+1は次式で与えられる。
【0104】
【数7】


【0105】すなわち、s2n+1は排他的論理和素子501の出力の値a0iの2n+1回平均値を2n+1倍した値をとる。これより、t≧(2n+1)Tc の範囲においては次式で与えられる関係が成立する。
【0106】
【数8】


【0107】以下、数学的帰納法により証明を行う。
【0108】まず、i=2n+1の場合は
【0109】
【数9】


【0110】であるから、成立している。次に、i=jのときに成立したものとすると、i=j+1のとき、
【0111】
【数10】


【0112】となり、成立する。したがって、i≧2n+1なる範囲のすべての整数iに対して成立する。(証明終わり)
【0113】このことにより、移動平均生成手段502aの出力となるDフリップフロップ507の出力は、t≧(2n+1)Tc の範囲においては、排他的論理和素子501の出力の値a0iの2n+1回移動平均値を2n+1倍した値をとることが判る。すなわち、移動平均生成手段502aは、t=(2n+1)Tc 以降において、実施例1における移動平均生成手段502と同様に作用する。
【0114】ところで、移動平均生成手段502a内の加算器504aに入力される信号数はシフトレジスタ503aの段数によらず3である。しかるに、実施例1における移動平均生成手段502内の加算器504に入力される信号数はシフトレジスタ503の段数2n+1に等しい。
【0115】したがって、n≧1であることを考慮すれば、移動平均生成手段502a内の加算器504aに入力される信号数は、実施例1における移動平均生成手段502内の加算器504に入力される信号数より多くはならないことは明らかである。すなわち、実施例2は実施例1に比較して、移動平均生成手段内の加算器の構成が簡単になるという利点がある。
【0116】移動平均生成手段502aの出力は比較器505に入力される。比較器505は入力された信号の値と定数nを比較する。比較器505から出力される信号の値をdi とすると、移動平均生成手段502aの出力信号の値si と定数nの大小関係に応じて次式で与えられる関係が成立するものとする。
【0117】
i = 0(si ≦n)
1(si >n)
【0118】すなわち、比較器505は移動平均生成手段502aの出力si を論理“0”および論理“1”の2値に変換する硬判定手段として作用する。
【0119】このように、周波数変換回路500a内における移動平均生成手段502a以降の信号処理は、実施例1の周波数変換回路500内における移動平均生成手段502以降の信号処理と同一である。また、前述のように、移動平均生成手段502aは、実施例1における移動平均生成手段502と同様に作用する。
【0120】このため、シフトレジスタ503a、加算器504a、符号反転器506、およびDフリップフロップ507で構成される移動平均生成手段502aと、硬判定手段として比較器505は、排他的論理和素子501の出力から高周波変動成分を除去するローパスフィルタとして作用することも実施例1と同様である。
【0121】したがって、上述の周波数変換回路500a内における信号処理により、リミタ増幅器100から出力される2値量子化された受信信号に対して、実施例1と同様の周波数変換が行われる。すなわち、2値量子化された受信信号の周波数をf1(Hz)、周波数変換用信号の周波数をf2(Hz)とすると、比較器505から出力される周波数変換後の受信信号の周波数は│f1 −f2 │(Hz )となる。
【0122】周波数変換回路500aから出力される周波数変換後の受信信号は実施例1と同一の位相比較回路600に入力される。したがって、位相比較回路600からは、実施例1と同様に、周波数変換後の受信信号の位相基準信号に対する位相差である相対位相信号が出力される。
【0123】位相比較回路600の出力である相対位相信号は遅延時間ず受信信号の1シンボル周期に等しい遅延素子400により遅延される。同時に、相対位相信号は2πを法とする減算器401にも入力される。2πを法とする減算器401には遅延素子400から出力される1シンボル周期遅延された相対位相信号も入力され、相対位相信号から1シンボル周期遅延された相対位相信号を2πを法として減算した値である位相差信号が出力される。この位相差信号は受信信号の1シンボル周期の間の位相遷移を表している。2πを法とする減算器401から出力される位相差信号は判定器402に入力される。判定器402は、あらかじめ定められた位相差信号と復調データの対応規則により、位相差信号の値に応じた復調データを出力する。
【0124】なお、上記実施例では受信信号の変調方式がDPSK変調方式である場合について説明したが、他の変調方式、例えばMSK変調方式やGMSK変調方式などであってもよい。また、上記実施例では周波数変換回路500aのパラメータである定数nが、n=2(すなわち、シフトレジスタ503aの段数が6段)である場合について説明したが、定数nは正の整数であればよく、例えば、n=6(すなわち、シフトレジスタ503aの段数が14段)や、n=7(すなわち、シフトレジスタ503aの段数が16段)であってもよい。
【0125】
【発明の効果】以上のように、請求項1ないし請求項4に係る発明は、2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記排他的論理和信号の移動平均値をk(kは正の整数)倍した信号を生成する移動平均生成手段と、前記移動平均生成手段の出力を論理“0”及び論理“1”の2値に変換する硬判定手段とを備えたことにより、ディジタル回路により構成され、このため集積回路化による回路の無調整化や小形化、また消費電力の低減が容易な周波数変換回路を得ることができるという効果を奏する。
【0126】また、請求項5及び請求項6に係る発明は、入力信号とこれと概略等しい一定周波数の位相基準信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記位相基準信号の1/2周期中で前記排他的論理和信号が論理“1”となる時間の比を測定する位相差絶対値測定手段と、前記位相基準信号の1/2周期ごとの前記排他的論理和信号の値により前記位相基準信号に対する前記入力信号の位相の遅れ進みを判定する位相差正負判定手段とを備えることにより、ディジタル回路により構成され、このため集積回路化による回路の無調整化や小形化、また消費電力の低減が容易な位相比較回路を得ることができるという効果を奏する。
【0127】また、請求項7および請求項8に係る発明は、受信信号を入力信号とし、入力信号とこれと概略等しい一定周波数の位相基準信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記位相基準信号の1/2周期中で前記排他的論理和信号が論理“1”となる時間を測定する位相差絶対値測定手段と、前記位相基準信号の1/2周期ごとの前記排他的論理和信号の値により前記位相基準信号に対する前記入力信号の位相の遅れ進みを判定する位相差政府判定手段とを有する位相比較回路と、前記位相比較回路から出力される位相差信号を受信信号の1シンボル周期遅延させる遅延素子と、前記位相差信号から前記遅延素子の出力信号を減算する減算器とを備えることにより、ディジタル回路により構成され、このため集積回路化による回路の無調整化や小形化、また消費電力の低減が容易な遅延検波復調装置を得ることができるという効果を奏する。
【0128】また、請求項8に係る発明は、受信信号を第1の入力信号とし、この2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記排他的論理和信号の移動平均値をk(kは正の整数)倍した信号を生成する移動平均生成手段と、前記移動平均生成手段の出力値を論理“0”及び論理“1”の2値に変換する硬判定手段とを周波数変換回路と、前記周波数変換回路の出力を入力信号とし、この入力信号とこれと概略等しい一定周波数の位相基準信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、加算器および遅延素子を有し、前記加算器が前記排他的論理和信号と前記遅延素子の出力を加算し前記遅延素子が前記加算器から出力される加算結果を記憶する位相差絶対値測定手段と、前記位相基準信号の1/2同期ごとの前記排他的論理和信号の値により前記位相基準信号に対する前記入力信号の位相の遅れ進みを判定する位相差正負判定手段とを位相比較回路と、該位相比較回路から出力される位相差信号を受信信号の1シンボル周期遅延させる遅延素子と、前記位相差信号から前記遅延素子の出力信号を減算する減算器を備えたことにより、ディジタル回路により構成され、このため集積回路化による回路の無調整化や小形化、また消費電力の低減が容易な遅延検波復調装置を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例1による周波数変換回路および位相比較回路を備えた遅延検波復調装置の構成を示す構成図である。
【図2】この発明の実施例1による周波数変換回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図3】この発明の実施例1による位相比較回路内の位相基準信号、周波数変換後の受信信号および排他的論理和素子の出力の関係を示したタイミングチャートである。
【図4】この発明の実施例1による位相比較回路内の位相差絶対値測定手段の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】この発明の実施例1による位相比較回路内の位相差絶対値測定手段の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図6】この発明の実施例1による位相比較回路内の位相差正負判定手段としてのDフリップフロップの動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図7】この発明の実施例2による周波数変換回路および位相比較回路を備えた遅延検波復調装置の構成を示す構成図である。
【図8】従来の周波数変換回路および位相比較回路を備えた遅延検波復調装置の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
100 リミタ増幅器
400 遅延素子
401 減算器
402 判定器
500,500a 周波数変換回路
501 排他的論理和素子
502,502a 移動平均生成手段
503,503a シフトレジスタ
504,504a 加算器
505 比較器
506 符合反転器
507 Dフリップフロップ
600 位相比較回路
601 排他的論理和素子
602 位相差絶対値測定手段
603 加算器
604,605,606 Dフリップフロップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前期排他的論理和信号の移動平均値をk(kは正の整数)倍した信号を生成する移動平均生成手段と、前記移動平“1”の2値に変換する硬判定手段とを備えたことを特徴とする周波数変換回路。
【請求項2】 2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記排他的論理和素子から出力される信号を入力とする段数2n+1(nは正の整数)のシフトレジスタ、および前記シフトレジスタの各段の出力を加算する加算器を有する移動平均生成手段と、前記移動平均生成手段の出力値を論理“0”および論理“1”の2値に変換する硬判定手段とを備えたことを特徴とする周波数変換回路。
【請求項3】 2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記排他的論理和素子から出力される信号を入力とする段数2n+2(nは正の整数)のシフトレジスタ、前記シフトレジスタの第2n+2段の出力の符号を反転する符号反転手段、遅延素子、および前記シフトレジスタの段1段の出力と前記符号反転手段の出力と前記遅延素子の出力とを加算する加算器を有し、前記遅延素子が前記加算器から出力される加算結果を記憶する移動平均生成手段と、前記移動平均生成手段の出力値を論理“0”および論理“1”の2値に変換する硬判定手段とを備えたことを特徴とする周波数変換回路。
【請求項4】 2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記排他的論理和素子信号の移動平均値をk(kは正の整数)倍した信号を生成する移動平均生成手段と、前記移動平均生成手段の出力値と任意の定数であるしきい値とを比較する比較器を有する硬判定手段とを備えたことを特徴とする周波数変換回路。
【請求項5】 入力信号とこれと概略等しい一定周波数の位相基準信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、前記位相基準信号の1/2周期中で前記排他的論理和信号が論理“1”となる時間を測定する位相差絶対値測定手段と、前記位相基準信号の1/2周期ごとの前記排他的論理和信号の値により前記位相基準信号に対する前記入力信号の位相の遅れ進みを判定する位相差正負判定手段とを備えたことを特徴とする位相比較回路。
【請求項6】 入力信号とこれと概略等しい一定周波数の位相基準信号と排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子と、加算器および遅延素子を有し、前記加算器が前記排他的論理和信号と前記遅延素子の出力を加算し、前記遅延素子が前記加算器から出力される加算結果を記憶する位相差絶対値測定手段と、前記位相基準信号の1/2周期ごとの前記排他的論理和信号の値により前記位相基準信号に対する前記入力信号の位相の遅れ進みを決定する位相差正負判定手段とを備えたことを特徴とする位相比較回路。
【請求項7】 入力信号とこれと概略等しい一定周波数の位相基準信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子、前記位相基準信号の1/2周期中で前記排他的論理和信号が論理“1”となる時間を測定する位相差絶対値測定手段、および前記位相基準信号の1/2周期ごとの前記排他的論理和信号の値により前記位相基準信号に対する前記入力信号の位相の遅れ進みを判定する位相差正負判定手段を有する位相比較回路と、前記位相比較回路から出力される位相差信号を受信信号の1シンボル周期遅延させる遅延素子と、前記位相差信号から前記遅延素子の出力信号を減算する減算器とを備えたことを特徴とする遅延検波復調装置。
【請求項8】 2値量子化された第1の入力信号と第2の入力信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子、前記排他的論理和信号の移動平均値をk(kは正の整数)倍した信号を生成する移動平均生成手段、および前記移動平均生成手段の出力値を論理“0”および論理“1”の2値に変換する硬判定手段を有する周波数変換回路と、前記周波数変換器回路の出力信号とこれと概略等しい一定周波数の位相基準信号との排他的論理和信号を生成する排他的論理和素子、前記位相基準信号の1/2周期中で前記排他的論理和信号が論理“1”となる時間を測定する位相差絶対値測定手段、および前記位相基準信号の1/2周期ごとの前記排他的論理和信号の値により前記位相基準信号に対する前記出力信号の位相の遅れ進みを判定する位相差正負判定手段を有する位相比較回路と、前記位相比較回路から出力される位相差信号を受信信号の1シンボル周期遅延させる遅延素子と、前記位相差信号から前記遅延素子の出力信号を減算する減算器とを備えたことを特徴とする遅延検波復調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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