説明

呼吸用のフィルター媒体の汚染除去

【課題】呼吸用のフィルター媒体の消毒状態が達成されたことを明確に表示する方法を提供する。
【解決手段】マイクロ波エネルギーは、使用されたフェイスマスク、レスピレーター、及び呼吸用のフィルター媒体を備える他の物品を消毒するのに使用することができる。また、消毒が行われたときに、そのことを可視的に示すインジケータを有するフィルター媒体と、その消毒方法が提供される。前記インジケータは、マイクロ波照射中の温度及び蒸気発生に基づいて機能する。適切な温度に達したことを示すのに、サーモクロミック材料が使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸用のフィルター媒体の汚染除去に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸用のフィルター媒体を備えている物品(例えば、フェイスマスクやレスピレーター)は一般的に、使用は制限されており、1回使用した後は廃棄される。例えばSARSや鳥インフルエンザなどの深刻な集団発生が生じた場合は、需要が急速に高まるため、フェイスマスクやレスピレーターの供給が急速に尽きる可能性がある。米国政府は米国保健福祉省を通じてこの公衆衛生に対する脅威を認識しており、インフルエンザの拡散を抑制するために、レスピレーター(主としてN95型)の再使用を可能にする方法と、医療従事者用及び一般人用の再使用可能なフェイスマスクの開発とを産業界に求めている。N95型レスピレーターはそのため、医療現場における危険性の高い活動中の使用に推奨されるマスクとして、米国国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health:NIOSH)により指定されている。「レスピレーター」という用語は、N95型又はより優れたフィルターを有する、NIOSHにより認定されたあらゆるレスピレーターを指し、「マスク」は、任意の手技用又は他の顔用マスクを指す。
【0003】
レスピレーターの欠乏を克服する1つの可能性がある方法は、そのような物品を再使用することであろう。しかし、そのためには、マスクを消毒するための信頼できる簡単な方法が手軽に得られることが条件となる。そのような好適で簡単な方法は、家庭や医療施設で見られる一般的な物品を使用して行えることが必要であろう。また、そのような方法は、消毒が終了したことを表示できることが必要であろう。
【0004】
そのため、呼吸用のフィルター媒体の消毒状態が達成されたことを明確に表示する方法が求められていることは明らかである。また、一般的な手段により消毒可能であり、かつ、消毒状態が達成されたことを表示することができるフェイスマスク又はレスピレーターが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,077,139号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
当業者が直面してきた前述の問題点を踏まえて、呼吸用のフィルター媒体にマイクロ波エネルギーを、好適な消毒状態を作り出すのに十分な時間照射することにより、呼吸用のフィルター媒体を消毒することに成功した。また、消毒が行われたことを可視的に表示するインジケータを備えたフェイスマスク又はレスピレーターを提供する。前記インジケータは、フィルター媒体の表面上に設置することにより、或いは前記媒体を作成する材料に含めることにより、前記フィルター媒体内に組み込まれ得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、使用済みのマスク、レスピレーター、呼吸用フィルター媒体を含むマイクロ波照射可能な任意の他の物品を消毒するためのマイクロ波エネルギーの使用、並びに、消毒状態の検出方法を包含する。本明細書で用いられる「フェイスマスク」及び「マスク」という用語は、レスピレーター、及び、空調設備・暖房装置・自動車キャビン用のエアフィルタのような呼吸用フィルター媒体を備える他の物品を含む。
【0008】
フェイスマスクを消毒する1つの方法は、一般的な病原性細菌である黄色ブドウ球菌の現実の感染レベルで汚染されたフェイスマスクを消毒する効果及び効率を実証するのに、一般に入手可能な電子レンジ、水、及び容器(例えば、プラスチック袋)を使用した。前記プラスチック袋容器は電子レンジのチャンバよりも小さい容積を有し、前記容器内には前記フェイスマスク及び水が入れられる。電子レンジのチャンバよりも小さい容積を有する容器の使用は、消毒状態を達成するために必須ではないが、そのような容器は、フェイスマスク自体による電子レンジの内部の汚染を防止し、前記フェイスマスクのすぐ周りを取り巻く周囲の消毒状態を達成するのに要する時間を短縮することができる。
【0009】
マイクロ波エネルギーは、比較的短時間で、比較的大量のエネルギーを物体に伝達することができるので好適である。このことにより、フェイスマスクへのダメージを、従来の輻射式又は対流式オーブンでの加熱と比べると減少させることができる。実際、本発明者は、マイクロ波を30秒を超えて照射することにより好適な消毒状態を作り出すことができることを発見した。より詳しくは、前記フェイスマスクにマイクロ波を45秒から2分間又はそれ以上、さらに詳しくは1〜2分間、さらに詳しくは1.5〜2分間、照射すべきである。本明細書で教示されるインジケータは、マイクロ波照射を2分を超えて行った場合(事実上、上限は無い)に機能することになるが、フェイスマスクへのダメージは通常はそのような照射により生じることが分かっていることに留意されたい。また、電子レンジは、とても一般的であるので好ましい。従来の電子レンジは、一般に、600〜1000ワットで作動する。
【0010】
電子レンジは、そのチャンバ内に置かれた物質に、通常は2450MHzの周波数(12.24cmの波長)のマイクロ波エネルギーを通過させる。前記物質内の水、脂肪、及び/又は糖分子は、誘電加熱と呼ばれるプロセスでマイクロ波からエネルギーを吸収する。多くの分子(例えば、水分子などは)は電気双極子であり、その一端に正電荷を有し、他端に負電荷を有し、それ故に、それらをマイクロ波により生じた交流電磁場に従って整列しようとして回転する。この分子運動は、回転した分子が他の分子と衝突したときに、両者間で摩擦が生じることにより熱を生成する。マイクロ波加熱は、水(液体)に対して最も効率が良いが、分子双極子モーメントが小さい脂肪や糖に対しては効率が悪く、分子が自由に回転できない氷(凍結水)の場合は効率がかなり悪い。
【0011】
多層フェイスマスクの様々な種類や構造が当業者に公知であり、本発明は、そのような多層フェイスマスクの特定の種類や構造には限定されない。しかしながら、フェイスマスクの構成要素は、マイクロ波への暴露に耐える材料から作成すべきである。本発明の実施に適したフェイスマスクとしては、米国特許第7,077,139号、米国特許第7,044,131号、米国特許第6,427,693号、米国特許第5,883,026号、米国特許第4,920,960号、及び米国特許第4,635,628号の各明細書に開示されているものがある(これらは、引用を以って本明細書の一部となす)。
【0012】
フェイスマスク及びフィルターを作成するための一般的な材料としては、スパンボンド繊維(織布)や、メルトブローン繊維(織布)がある。「スパンボンド繊維」という用語は、溶融した熱可塑性材料をスピナレットの複数の微細な通常は円形の断面形状を有する孔からフィラメントとして押し出すことにより形成される小径の繊維を意味し、押し出された繊維の直径はその後、例えば、米国特許第4,340,563号(Appel et al.)、米国特許第3,692,618号(Dorschner et al.)、米国特許第3,802,817号(Matsuki et al.)、米国特許第3,338,992号及び米国特許第3,341,394号(Kinney)、米国特許第3,502,763号(Hartman)或いは米国特許第3,542,615号(Dobo et al.)の各明細書に開示されているようにして急激に縮径される。スパンボンド繊維は一般に、捕集面上に堆積したときに粘着性を有しない。スパンボンド繊維は一般に連続的であって、7μmより大きい、特に約10〜20μmの(少なくとも10のサンプルに基づく)平均直径を有する。「メルトブローン繊維」という用語は、溶融した熱可塑性材料を複数の微細な通常は円形の断面形状を有するダイ孔から、溶融した糸或いはフィラメントとして、収束する高速の通常は高温のガス(例えば空気)流れの中に押し出し、その流れにより溶融した熱可塑性材料のフィラメントの直径を超極細繊維の直径の程度にまで減少させることにより形成される繊維を意味する。前記メルトブローン繊維は、その後、前記高速ガス流により搬送され、捕集面上に堆積され、ランダムに分散させたメルトブローン繊維のウエブを形成する。このような工程は、例えば米国特許第3,849,241号明細書(Butin et al.)に開示されている。メルトブローン繊維は、連続的或いは非連続的な超極細繊維であって、一般に10μm未満の平均直径を有し、一般に捕集面に堆積したときに粘着性を示す。スパンボンド繊維とメルトブローン繊維との積層材は、例えば、動いている成形ベルト上に、先ずスパンボンド繊維層、次にメルトブローン繊維層、最後に別のスパンボンド層をその順番に堆積させ、その後、これらの層を後述する方法で接合することにより形成される。或いは、前記繊維層を個々に形成してローラーに巻き取っておき、それらの繊維層を別々の接合工程で組み合わせることもできる。このような繊維は、通常は、約0.1〜12osy(6〜400gsm)、特に、約0.75〜3osyの秤量(basis weight)を有する。多層積層材は、様々な数のメルトブローン層(M)やスパンボンド層(S)を様々な構成で備えることができ、膜(F)や複合(coform)材料(米国特許第4,100,324号明細書に例示的な複合材料が示されている)等の別の材料も備えることもでき、例えば、SMMS、SM、SFS等がある。
【0013】
本発明のフェイスマスクは、温度変化を検出するための可視的に変色するインジケータ、及び、水から水蒸気への相変化を検出するためのインジケータを有する。これらのインジケータは、好適な消毒状態が達成されたことを表示する。本発明は、消毒状態を達成すると共に、そのことを様々な方法で表示することができる。ある実施形態では、前記インジケータは可逆的であり得、それ故に、フェイスマスクのマイクロ波エネルギーへの暴露を複数回行うことができ、各回の暴露時に消毒状態の達成を表示することができる。他の実施形態では、前記インジケータは、不可逆的であり、前記インジケータが消毒状態を検出した場合に、一度しか表示できない。
【0014】
サーモクロミズムは、温度の変化に起因して物質が変色する現象である。温度を検出するための目に見える変色は、本発明を実施するために不可欠である。温度により変色する材料、すなわちサーモクロマティック或いはサーモクロミック材料としては、顔料、染料、及びマイクロカプセル(分離された状態にある複数の特定の化学物質の組み合わせが、特定の温度になると混合される)が挙げられる。これらの全ては、前記温度検出を達成するための方法の例である。
【0015】
サーモクロミック材料としては、ロイコ染料、液晶、及び様々な重合体(例えば、ポリチオフェン)が挙げられる。ロイコ染料は、液晶よりも応答温度範囲に関しては不正確であるが、より広範囲の色を使用することができる。
【0016】
サーモクロミズムは、可逆性又は不可逆性であり得る。可逆性の可視的温度インジケータは、サーモクロマティック染料であり得る。不可逆性の可視的温度インジケータは、例えば、米国特許第3,828,612号明細書に教示されているような、厚化させた外側相内にカプセル化され、前記外側相が特定の温度で溶融した際に混合し、それにより色の変化をもたらす、パラフィン油の擬安定乳剤の組み合わせであり得る。前記米国特許第3,828,612号明細書は、食料品等が、商品の品質が著しく劣化する又は少なくとも不良となる状態に曝されているかどうかを検出するためのインジケータを教示している。前記米国特許第3,828,612号明細書の系は、所定の貯蔵温度では固形である少なくとも1つの固形成分と、溶媒とを含んでいる。この系が高温(例えば、約30℃を超える温度)に曝されると、前記固形成分が部分的に又は完全に溶解し、そのことにより、或る温度を超えたことを示す不可逆的な可視的な表示をもたらす。要するに、互いに分離された複数の成分は、温度が30℃を超えると、互いに分離した状態を失う。
【0017】
他の不可逆性インジケータは、例えばポリオレフィン、ポリスチレン及び他のマトリックス内に、ポリチオフェンを含めることにより作成することができる。これらのポリマー、特に、ポリエチレン及びポリプロピレン内にポリ(3−アルキルチオフェン)を含めたときのサーモクロマティック性質が、Lucht, Euler and Gregoryにより、「Polymer Preprints(2002, 43(1), 59)」に報告されている。Luchtらは、温度が上昇すると、まず、主鎖ユニットのねじれが発生して側鎖格子を溶融し、その後、前記ねじれの結果としてバンドギャップが増加し、その結果、光吸収におけるブルーシフトが作り出される二層モデルを報告している。ポリチオフェンは、Plextronics Inc.社(Pittsburgh, PA)から市販されている。多数のフェイスマスクはポリオレフィン(特に、ポリエチレン、ポリプロピレン)から作られているため、前記フェイスマスクを作成する前記繊維を押し出し成形する前に、ポリチオフェンにポリオレフィンを含めることが可能であり得る。このようにして、事実上、フェイスマスク全体を可視的インジケータとすることができる。
【0018】
水から水蒸気への相変化を表示するインジケータもまた、使用する場合は、前記マスクへのマイクロ波の照射時に目に見える場所に位置するべきである。周囲環境の空気中の水分、又は呼気に含まれていたマスクに残留した水分に起因して、使用後のフェイスマスクには一般的に十分な量の水が存在するので、水の追加は必ずしも必要ではない。また、水の貯留部としての役割を果す、水から水蒸気への相変化を表示するインジケータの使用は、適切な量の水が存在することを保証する。
【0019】
前記水は、消毒に有用であることが知られている水蒸気となるので、有用である。前記マスク上の細菌の殺菌及び滅菌が、前記水蒸気によりなされるのか、前記水蒸気により生じた温度によりなされるのか、前記マイクロ波エネルギーにより直接的になされるのか、或いは、前記水蒸気からのエネルギー、温度及びマイクロ波の組み合わせによってなされるのかは不明である。理論に拘束されることは望まないが、本発明者は、電子レンジのマイクロ波が水分子により吸収され、水分子の分子運動を介して熱へ直接的に変換されることによって消毒状態が生じると考えている。十分な熱が生成されると、水は水蒸気に変化する。前記水蒸気は、マイクロ波を吸収し、それらを熱に変換しながら、フェイスマスクの周囲に浸透する。最終的には、前記熱は、前記マスクの温度を、消毒を行うのに十分なレベルまで上昇させる。そのため、本発明では、水の使用は随意的なものである。使用する場合は、水は、フェイスマスク1枚あたり0.1〜1gmの量で存在するべきである。しかし、水の量をより多くすると前記インジケータの機能が損なわれるというわけではなく、単に、反応時間が長くなるだけである。
【0020】
容器(例えば、プラスチック袋)は、前記フェイスマスクを取り巻く局所的な周囲環境空間を減少させるのに有用である。一般的に知られているように、電子レンジのチャンバよりも小さい前記容器の内部に若干量の水を入れると、部分的にしか閉じられていない場合でさえも、電子レンジで生成されたマイクロ波に暴露された際に前記容器内の温度を上昇させるのに要する時間が短縮される。電子レンジのチャンバが前記マスクの周囲の局所的な環境/空間を形成する機能を果すので、消毒状態は、前記マスクを包囲するこのような容器を使用しなくても達成することができる。前記マスクを保持するのに容器を使用する場合に必要とされる唯一の条件は、前記容器がマイクロ波への暴露及び消毒状態に耐えられることである。
【0021】
可視的な温度インジケータを作成する例示的な方法は、ロイコ染料の使用である。ロイコ染料は、前記染料の変色を生じさせるプロトン供与体受容体反応において、有機弱酸と反応可能な有機弱塩基又は顕色剤ある。ロイコ染料/顕色剤系は温度変化に応答して変色するので、ロイコ染料を顕色剤及び極性溶媒と共に粒子内にカプセル化することで、それらの成分を周囲環境から隔離することができ、可逆性のサーモクロマティック系を作り出すことができる。これらのカプセル化された系は、一般的に、使用が容易であり、フリーな成分と比べると可逆的であるという利点を有する。
【0022】
ロイコ染料は、前記溶媒の遷移温度よりも低い温度の場合は有色となり、前記溶媒の遷移温度よりも高い温度の場合は透明又は無色となるように、温度変化に応じて可視的に変色する。有機弱塩基である前記ロイコ染料は、加熱された際に有色から無色(透明)へ変化し、5〜15℃の範囲の温度で正常に機能する。温度変化によって、前記染料の有色又はプロトン化形態と(一般に、プロトンは顕色剤(例えば、弱酸)から提供される)、無色又は非プロトン化形態との間の平衡がシフトされる。ロイコ染料の例としては、フルオラン(fluoran)又はクリスタル・バイオレット・ラクトン(crystal violet lactone)などのスピロノラクトン(spirolactone)、スピロピラン(spiropyran)、フルギド(fulgide)などがある。
【0023】
ロイコ染料は、一般に、3〜4℃の温度範囲内で、色変化を完了する。例えばロイコ染料の遷移温度が30℃と報告されている場合は、色変化は約28〜32℃で生じる。ロイコ染料は、赤色、青色、緑色、黄色及び黒色などの様々な色のものを利用可能であり、ポリマー前駆体の化学的性質及びエマルション重合条件を慎重に選択して調整することにより、所望の色変化を作り出すことができる。さらに、遷移温度は、所望の温度変化に対応するように前記極性溶媒を選択するより調節することができる。一例としては、比較的高い温度の黒い染料は、Change Corporation社(Streamwood, Illinois, US)から製品型LD−5粉末として入手することができる。
【0024】
複数の色変化は、それぞれ異なる遷移温度を有する2つ以上のサーモクロミック材料を組み合わせることにより、又は、前記混合物内に非変色性の顔料を含めることにより得ることができる。例えば、一方が23〜26℃の範囲の温度を超えると青色から無色に変色し、他方が29〜31℃の範囲の温度を超えると赤色から無色に変色する2つのサーモクロマティック成分を組み合わせることにより、最初は紫色であり、紫色から赤色への変色し、その後さらに、赤色から無色への変色するようにすることができる。もう1つの方法は、非変色性の赤色の顔料に、青色のサーモクロマティック成分を組み合わせることにより、最初は紫色であり、前記サーモクロマティック成分が青色から無色へ変化した後は、最終的に赤になるようにすることもできる。
【0025】
マイクロカプセル化はロイコ染料の成分をロイコ染料の周囲から保護する役割を果し、ロイコ染料の正常な機能を確保すると共に、前記相変化溶媒が液体で存在する場合に前記溶媒が拡散するのを防止する。マイクロカプセル化されたロイコ染料は、Color Change Corp.社、Chromatic Technologies, Inc.社(Colorado Springs, Colorado, US)(Dynacolor(登録商標))、Matsui International Company Inc.社(Gardena, CA, US)(Chromicolor(登録商標) AQ-lnk, Fast Blue Type 25)、及びThermographic Measurement Co.社(United Kingdom)から入手可能である。マイクロカプセルのシェル材料の厚さと熱伝導率を調節することにより、ロイコ染料の温度変化に対する応答性を変更することができる。マイクロカプセルの直径は、一般的には3〜5ミクロンであるが、1ミクロンより小さく作成することもできる。マイクロカプセル化されたロイコ染料を、ポリマー残基マスターバッチ(例えば、Matsui International Company Inc.社からChromicolor(登録商標)PP濃縮物として入手可能)内に組み込むことにより、フェイスマスクの作成に用いられる基材内にこれらの染料を直接加えることができ、それにより、フェイスマスク全体内に変色インジケータを含めることができる。
【0026】
実験の詳細及び結果
【0027】
材料及び初期準備
【0028】
マイクロ波エネルギー源:8立方フィート(226.5リットル)、800ワットマイクロ波である、シャープ(Sharp)製の電子レンジR−209KK型(Sharp Industries社(Mahwah, NJ)から入手可能)が使用された。
【0029】
実験に使用されるマスク:金属製のノーズストリップ形成要素が取り除かれたフルイドシールド(FLUID-SHIELD)(登録商標)フェイスマスク(製品コード47107)(Kimberly-Clark社(Dallas, TX)から入手可能)が使用された。
【0030】
温度表示:温度が33℃よりも高くなったときにそのことを可視的に表示するために、前記マスクの各端部に、33℃で可視的に変色するChromicolor AQ-lnk、Fast BlueType 25サーモクロミックなインク(Matsui International Corporation社(Gardena, CA)から入手可能)を2適(2スポット)垂らした。
【0031】
細菌懸濁液を迅速に吸収するために、綿織物の布切れ(3cm×8cm、3つの布切れ(1.528gm)の平均は0.5gm)が、各マスクに組み込まれた。
【0032】
水から水蒸気への変化の表示:水の存在と、その後の水蒸気への変化が、青色の粘着ノート(セルロース:1.5インチ×2インチ、〜0.14gm、トルコ石色、Corporate Express(登録商標)、Buhrmann Company社(Amsterdam, Netherlands)から入手可能)を使用して視覚的に検出された。湿潤された場合、各ノートは乾燥時よりも目に見えて色合いが黒っぽくなった。その後の水蒸気生成のための水分の存在を確実にすべく、水の貯留部を創設するために、前記マスクには青色の粘着ノート1つあたり0.1gmの水が加えられた。セルロースノート(すなわち、レーヨン、ナイロン)の代わりに、湿潤されたときに認識可能な変色を示す任意の適切な材料を使用することができる。0.1gmと0.2gmの2つの量の水が、次のようにして意図的に加えられた。
【0033】
1gmの水の実験では、各マスクに1つの青色の粘着ノートが使用された(サンプル1)。
【0034】
2gmの水の実験では、各マスクに2つの青色の粘着ノートが0.1gmの水と共に使用された(サンプル2)。
【0035】
サンプル3及び4には、水は加えなかった。
【0036】
細菌による汚染:サンプル1、2、3のフェイスマスクの追加された綿の布切れ上に、黄色ブドウ球菌(QCグレード)を100,000コロニー形成単位(cfu)を含んでいる0.1mlの水が加えられた。サンプル4には、細菌は加えなかった。
【0037】
マスクをマイクロ波に暴露する手順
【0038】
水蒸気を生成する量の制御を確実にしつつ、前記マスクをマイクロ波に暴露するために、各マスクは別々の1クオート(0.95リットル)のプラスチック袋に、前記マスクがその中で平らに広げられるように入れられた。前記袋の開口部は、該開口部の縁部が前記バック自体とその中のマスクにより塞がれるように折り曲げられた。前記折り曲げられたバッグ内の前記マスクは、支持用の白い紙皿上に置かれ、電子レンジ内に挿入され、マイクロ波が照射された。前記マスクは、可視的温度インジケータと、水から水蒸気の変化を示すインジケータとを、各バック及び電子レンジのガラス製ドアを通じて目で見ることができるように配置された。新しいバック及び紙皿が、各マスクに使用され、その上に紙皿を載置するための基板としてのガラス製の大皿は使用されない。前記大皿は、一連のマイクロ波への繰り返しての暴露により生じた熱が残留する可能性を排除するために取り外された。
【0039】
前記マスクのマイクロ波処理は次の通りである。
青色の粘着ノートを介した水 時間(マイクロ波照射)
0.1gm 30秒
0.1gm 2分
0.2gm 30秒
0.2gm 2分
対照
無し 30秒
無し 2分
無し マイクロ波処理は行わなかった
【0040】
実験は、2回実施された。前記マスクはその後取り出され、細菌数を次のようにしてカウントした。
【0041】
細菌植菌準備
【0042】
フェイスマスクの試験を開始する前に、消毒した5mlのトリプチケースソイブロス(Trypticase Soy Broth:TSB)のチューブを使用して、細菌培地を準備した。黄色ブドウ球菌(ATCC#6538)の凍結乾燥された培地を、35℃で24時間培養した。前記培地は、試験開始前に、100μlのアリコートを使用して、各移送について5mlのTSBに、2回以上移送(希釈)された。黄色ブドウ球菌(ATCC#6538)は、米国薬局方(US Pharmocopeia)XXIV巻に、日和見病原体として掲載されており、一般的に、化粧品業界において防腐効果試験に使用されている。
【0043】
前記保存培地における黄色ブドウ球菌の数は、1.3×10CFU(コロニー形成単位)/mlとなるように決定された。また、殺菌されたリン酸緩衝生理食塩水内で前記保存培地の3つの1:10連続希釈が行われ、試験開始まで希釈物を保持した。前記試験における目的細菌濃度は、約1〜3×10CFU/mlであった。
【0044】
フェイスマスクの植菌及び細菌抽出
【0045】
マイクロ波照射する前に、各フェイスマスク上の綿繊維の各片は、上述した第3の1:10希釈物の保存培地から100μl植菌された。この細菌濃度は、1.8×10CFU/mlとなるように決定された。
【0046】
マイクロ波を照射後、各フェイスマスクにおける黄色ブドウ球菌が植菌された部分は、
無菌で切断され、25mlの殺菌されたレセーンブロス(Letheen broth)を含む消毒された250mlのフラスコに移された。フラスコは、往復式攪拌器に配置され、内容物は192サイクル/分で2分間攪拌された。
【0047】
ブドウ球菌の生菌数を測定するために、各フラスコで連続希釈(10〜10)が実施された。5重量パーセントの羊血液を有するトリプチケースソイ寒天培地は、100μlの溶液を使用して各希釈物をプレートするのに用いられた。プレートは、反転され、カウントする前に35℃で24時間培養された。
【0048】
細菌コロニー形成単位(CFU)の生存数の計測:35℃で24時間培養した後、各連続希釈プレート(10、10、10)上の細菌コロニー形成単位が、手持ちのカウンタの助けを借りて目視観測により計測された。ブドウ球菌CFUの生存数/ミリリットルを決定するために、各プレートから計測された前記ブドウ球菌CFUの生存数は、その個々の希釈率(10、100、又は1000)が乗じられた。
【0049】
実験結果
【0050】
【表1】

【0051】
実験中の観察詳細
【0052】
30秒間マイクロ波照射されたサンプル1a、b:各マスク試料は、0.1gmの水、部分的に湿潤した青色の粘着ノート(乾燥率は50%)を有する。マイクロ波照射後、サーモクロマティック・スポットは、濃い青色から淡い青色に変化した。前記試料の1つでは、青色の粘着ノートの重量は0.235gm(湿潤)であり、0.007gm(残留した水)を引いた合計は0.228gmであり、マイクロ波照射後は、0.144gmであった。したがって、0.084gmの水が水蒸気に変化した。
【0053】
2分間マイクロ波照射されたサンプル1a、b:各マスク試料は、0.1gmの水、青色の粘着ノート(乾燥率は75%を超える)を有する。マイクロ波照射後、サーモクロマティック・スポットは、白色に変化した。明らかに、2分間のマイクロ波照射は、細菌除去の点で、30秒のマイクロ波照射よりも効果的であった。
【0054】
30秒間マイクロ波照射されたサンプル2a、b:各マスク試料は2つの青色の粘着ノート(乾燥率は50%未満)を有し、各青色粘着ノートあたり0.1gmの水を有し、合計で2gmの水を有している。マイクロ波照射後、サーモクロマティック・スポットは、白色に変化した。試料の1つでは、2つの青色の粘着ノートの重量は、0.281gm(乾燥)、0.459gm(湿潤)であり、0.019gm(残留した水)を引いた合計は0.440gmであり、マイクロ波照射後は0.342gmであった。したがって、0.099gmの水が水蒸気に変化した。前記2つの粘着ノートは、室内乾燥させた後は0.281gmであった(元の乾燥重量に戻った)ことに留意されたい。
【0055】
マイクロ波を2分間照射したサンプル2a、b:各マスク試料は2つの青色粘着ノートを有し、各青色粘着ノートあたり0.1gmの水を有し、合計で2gmの水を有している。2つの青色のサーモクロマティック・スポットは、両方とも白に変化した。2つの青色粘着ノートは、マイクロ波照射後に乾燥させられた。
【0056】
この場合もやはり、2分間のマイクロ波照射は、細菌除去の点で、30秒のマイクロ波照射よりも効果的であった。
【0057】
30秒間マイクロ波照射されたサンプル3a、b:各マスク試料は陽性対照であり、水を有していない。マイクロ波照射後、青色のサーモクロマティック・ドットは淡い青色に変化した(2回の実験の両方で観察された)。
【0058】
2分間マイクロ波照射されたサンプル3a、b:各マスク試料は陽性対照であり、水を有していない。マイクロ波照射後、青色のサーモクロマティック・ドットは白色に変化した。2分間のマイクロ波照射は、細菌除去の点で、30秒のマイクロ波照射よりも効果的であった。
【0059】
30秒間マイクロ波照射されたサンプル4a、b:各マスク試料は陰性対照(材料の改変が生じるかどうかを決定するための)であり、水も細菌も有していない。マイクロ波照射後、サーモクロマティック・ドットは淡い青色に変化した。
【0060】
2分間マイクロ波照射されたサンプル4a、b:各マスク試料は陰性対照(材料の改変が生じるかどうかを決定するための)であり、水も細菌も有していない。マイクロ波照射後、サーモクロマティック・ドットは白色に変化した。
【0061】
マイクロ波照射処理に起因する空気流の変化の測定
【0062】
前記マスクをマイクロ波処理したときの有害な影響の有無を調べるために、空気流通過の試験が前記フェイスマスク上で実施された。
【0063】
前記試験は、TSI Incorporated社(500 Cardigan Road, Shoreview, MN 55126-3996)から入手可能な自動化されたフィルターテスターモデル8130を使用して行われた。TSI社製の自動化されたフィルターテスターは、多くのフィルター業界が培地及びフィルター・アッセンブリの効果を測定するのに頼っている装置である。実際、米国国立労働安全衛生研究所(United States National Institute for Occupational Safety and Health:NIOSH)は、レスピレーターのNIOSH規定(42 CFR, part 84)によって認証試験にモデル8130を使用している。TSI社製の自動化されたフィルターテスターは、結果がすぐ得られ、かつ使いやすい。使用時は、操作者は、試験されるべき材料をフィルターホルダー内に入れて、2つの制御ボタンを押して、フィルターホルダーを閉じる。試験全体は自動的に行われる。浸透率、流速、及び圧力降下が測定され、表示され、試験の終わりに印刷される。試験時間は10秒よりも短くできる。
【0064】
下記の表は、2つの異なる種類のマスクに対してマイクロ波エネルギーを照射して及び商社しないで実施された、TSI8130の試験結果である。前記マスクは、CLASSIC(登録商標)フェイスマスク(製造コード48201、Kimberly-Clark社(Dallas, TX))から得られる)と、金属性のノーズストリップ形成要素を取り除いたフルイドシールド(製造コード47107、Kimberly-Clark社(Dallas, TX))から得られる)である。前記マスクは、ひだがなく、前記マスクの本体のエアロゾル接種(aerosol challenge)に面した外面を試験される。
【0065】
【表2】

【0066】
結果は、マイクロ波照射されたマスクと対照マスクとの間で、フィルター効果の変化は測定されなかったことを示す。
【0067】
呼吸によりフェイスマスクに加えられた水分の測定
【0068】
装着者の呼吸により提供される以上の水を加えることなく、マスクの正常な着用過程を通じてフェイスマスクに加えられた水分の量を測定するために、実験が行われた。
【0069】
フルイドシールド(登録商標)フェイスマスク(製品コード47107、Kimberly-Clark社(Dallas, TX))から入手可能)の重量が計測され、20分間着用した後に、再度重量が計測された。最初の重量は2.5411gmであり、喋ることなく20分間着用した後の重量は2.5418gmであった。したがって、0.007gmの水分が加えられたことが分かった。
【0070】
この実験は、マスク使用後すぐにマイクロ波照射するときは、フェイスマスク内に十分な水分が存在することを示す。
【0071】
この結果は、従来型の電子レンジを30秒を超えて使用して、植菌されたフェイスマスクを、マスクの材料に損傷を与えることなく消毒できることを実証する。このことは、特に、800ワットの新型の電子レンジについて実験的に示された。可視的な水分及び水から水蒸気への変化インジケータと、可視的な温度インジケータは、ユーザに対して、消毒のための適切な状態(例えば、温度、水蒸気レベル)に達したという有益なフィードバックを提供する。これは、様々なマスク及びマイクロ波の種類を考えれば、また、電子レンジのマイクロ波が低い場合若しくは電子レンジが旧型であり電源が消耗している場合は、特に重要である。
【0072】
以上、本発明の様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものではない。本発明の細部の実施にあたっては、当業者は、開示された実施例に様々な改良を加えることが可能である。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸用のフィルター媒体であって、
十分な量のマイクロ波エネルギーに30秒を超えて暴露されると変色する可視的インジケータを含むことを特徴とするフィルター媒体。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルター媒体であって、
前記インジケータは、約30℃よりも高い温度で変色することを特徴とするフィルター媒体。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルター媒体であって、
前記インジケータが、サーモクロミック材料であることを特徴とするフィルター媒体。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルター媒体であって、
水から水蒸気への相変化を表示するインジケータをさらに含むことを特徴とするフィルター媒体。
【請求項5】
請求項4に記載のフィルター媒体であって、
0.1〜1gmの量の水を含むことを特徴とするフィルター媒体。
【請求項6】
請求項2に記載のフィルター媒体であって、
約30℃よりも高い温度で互い分離された状態が失われる互いに分離された成分を含むことを特徴とするフィルター媒体。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルター媒体であって、
前記互いに分離された成分が、ポリチオフェンとポリオレフィンとであることを特徴とするフィルター媒体。
【請求項8】
請求項7に記載のフィルター媒体であって、
互いに分離された成分が、ポリ(3−アルキルチオフェン)と、ポリエチレン若しくはポリプロピレンとであることを特徴とするフィルター媒体。
【請求項9】
請求項1に記載のフィルター媒体であって、
互いに異なる遷移温度を有する2つ以上のサーモクロミック材料を含むことを特徴とするフィルター媒体。
【請求項10】
呼吸用のフィルター媒体を消毒する方法であって、
前記媒体に少なくとも1つのサーモクロミック材料を組み入れるステップと、
前記媒体にマイクロ波を、30秒を超えてかつ前記材料が変色するまで照射するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記媒体上に、水から水蒸気への相変化を表示するインジケータを設置するステップと、
前記媒体にマイクロ波を照射する前に、前記相変異インジケータが変色するまで前記媒体に水を提供するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
マイクロ波を照射する前に、前記フィルター媒体及び水を容器内に配置するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記容器は、約0.95リットルの容量を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
フェイスマスクの消毒を助長する因子を提供するシステムであって、
フェイスマスク内に少なくとも1つのサーモクロミック材料を組み込み、
使用された前記フェイスマスクに30秒を超えてマイクロ波を照射するためのマイクロ波源を用意したことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、
前記使用されたフェイスマスクに前記マイクロ波を照射する前に、前記フェイスマスクの少なくとも一方の面に、水と、水から水蒸気への相変化を表示するインジケータとを設けたことを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記使用されたフェイスマスクに前記マイクロ波を照射する前に、前記マスク及び水を収容するための容器を用意したことを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムであって、
前記容器は、約0.95リットルの容量を有することを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項14に記載のシステムであって、
前記サーモクロミック材料は、30秒を超える温度で変色するロイコ染料であることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項14に記載のシステムであって、
前記サーモクロミック材料が、ポリチオフェンとポリオレフィンとを含むことを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、
ポリ(3−アルキルチオフェン)と、ポリエチレン若しくはポリプロピレンとを含むことを特徴とするシステム。

【公表番号】特表2010−505490(P2010−505490A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530975(P2009−530975)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053487
【国際公開番号】WO2008/041146
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】