呼気中アルコール測定装置
【課題】 呼気の圧力が適正である状態を被測定者に従来より容易に維持させることができる呼気中アルコール測定装置を提供する。
【解決手段】 アルコールインターロックシステムは、運転者の呼気中のアルコール濃度を測定するアルコール燃料電池センサと、呼気の圧力を測定する呼気圧センサと、呼気圧センサによって測定された呼気の圧力を7セグメント表示によって通知する表示部と、呼気の圧力が適正呼気圧範囲内である場合にアルコール燃料電池センサにアルコール濃度を測定させるCPUとを備えていて、CPUは、適正呼気圧範囲を複数の区分に分割して表示部に呼気の圧力を区分によって通知させる(ステップS266、S270、S274、S278)ことを特徴とする。
【解決手段】 アルコールインターロックシステムは、運転者の呼気中のアルコール濃度を測定するアルコール燃料電池センサと、呼気の圧力を測定する呼気圧センサと、呼気圧センサによって測定された呼気の圧力を7セグメント表示によって通知する表示部と、呼気の圧力が適正呼気圧範囲内である場合にアルコール燃料電池センサにアルコール濃度を測定させるCPUとを備えていて、CPUは、適正呼気圧範囲を複数の区分に分割して表示部に呼気の圧力を区分によって通知させる(ステップS266、S270、S274、S278)ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者の呼気中のアルコール濃度を測定する呼気中アルコール測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、呼気中アルコール測定装置として、被測定者の呼気の圧力が適正であるときに呼気中のアルコール濃度を測定するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような呼気中アルコール測定装置としては、正確なアルコール濃度を測定するために、被測定者の呼気の圧力が適正である場合にのみ、呼気中のアルコール濃度を測定するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−212217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
呼気の圧力を一定に維持することは人間にとって容易ではない。そのため、人間の呼気の圧力は、不安定である。したがって、上記従来の呼気中アルコール測定装置においては、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に維持させることが容易でないため、呼気中のアルコール濃度の測定を完了することができない場合があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に従来より容易に維持させることができる呼気中アルコール測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の呼気中アルコール測定装置は、被測定者の呼気中のアルコール濃度を測定するアルコール測定部と、前記呼気の圧力を測定する呼気圧測定部と、前記呼気圧測定部によって測定された前記圧力を音および表示の少なくとも一方によって通知する呼気圧通知部と、前記圧力が所定の範囲内である場合に前記アルコール測定部に前記アルコール濃度を測定させる測定制御部と、前記範囲を複数の区分に分割して前記呼気圧通知部に前記圧力を前記区分によって通知させる通知制御部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力が所定の範囲内である場合に呼気の圧力を区分によって段階的に通知することができるので、呼気の圧力を維持している被測定者に現在の呼気の圧力がどの区分であるかを認識させることができる。そのため、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力を維持している被測定者に現在の呼気の圧力が所定の範囲を外れそうか否かを認識させることができる。したがって、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に従来より容易に維持させることができる。
【0008】
本発明の呼気中アルコール測定装置は、前記被測定者の呼気が注入されるための呼気注入部を備えており、前記呼気圧通知部は、前記圧力を少なくとも表示によって通知し、前記呼気注入部に前記呼気を注入している最中の前記被測定者によって前記圧力の表示が視認可能な位置に配置されていることが好ましい。
【0009】
この構成により、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力を維持している被測定者に現在の呼気の圧力が所定の範囲を外れそうか否かを視認させることができる。
【0010】
本発明の呼気中アルコール測定装置の前記呼気圧通知部は、前記区分を少なくとも7セグメント表示によって通知するとともに、前記アルコール測定部によって測定された前記アルコール濃度を前記7セグメント表示によって表示することが好ましい。
【0011】
この構成により、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力の区分と、測定されたアルコール濃度とを同一の7セグメント表示によって表示することができるので、装置全体の構成を簡略化することができる。
【0012】
本発明の呼気中アルコール測定装置の前記呼気圧通知部は、前記区分を少なくとも前記7セグメント表示の桁数によって通知することが好ましい。
【0013】
この構成により、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力の区分を被測定者に直感的に認識させることができるので、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に容易に維持させることができる。
【0014】
本発明の呼気中アルコール測定装置の前記複数の区分は、前記範囲の限界値を含まない区分を含んでいることが好ましい。
【0015】
この構成により、本発明の呼気中アルコール測定装置は、所定の範囲の限界値を含まない区分を被測定者に呼気の圧力の目標とさせることができるので、被測定者の呼気の圧力がその区分を外れたとしても直ちに所定の範囲を外れるということを防止することができる。したがって、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に容易に維持させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に従来より容易に維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るアルコールインターロックシステムの斜視図である。
【図2】図1に示すアルコールインターロックシステムの構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示すハンディーユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す表示部によって表示される呼気圧レベルを示すグラフである。
【図5】図1に示す表示部の表示例を示す図である。
【図6】図1に示す表示ユニットの構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示すカメラユニットの構成を示すブロック図である。
【図8】図1に示すコントロールユニットの構成を示すブロック図である。
【図9】図1に示すアルコールインターロックシステムの動作のフローチャートである。
【図10】図9に示す呼気圧レベル通知処理のフローチャートである。
【図11】図1に示すハンディーユニットのマウスピースに吹込まれた空気の圧力、炭酸ガス濃度、温度および体積の時間経過の例を示すグラフである。
【図12】図1に示すアルコールインターロックシステムの動作のうち図9に示す動作の続きのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
まず、本実施の形態に係る呼気中アルコール測定装置としてのアルコールインターロックシステムの構成について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るアルコールインターロックシステム10の斜視図である。図2は、アルコールインターロックシステム10の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1および図2に示すように、アルコールインターロックシステム10は、車両100のダッシュボード101の正面のうちハンドル102の左側の部分に着脱可能に取り付けられたハンディーユニット20と、ダッシュボード101の上面のうちハンドル102の近傍の部分に設置されて各種の表示を行う表示ユニット40と、車両100のバックミラー103の上部に設置されて運転者を撮影するためのカメラユニット60と、ダッシュボード101の内部に設置されてハンディーユニット20、表示ユニット40およびカメラユニット60の制御を行うコントロールユニット80と、ハンディーユニット20およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル11と、表示ユニット40およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル12と、カメラユニット60およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル13とを備えている。アルコールインターロックシステム10は、運転者が飲酒状態であるときに運転者による車両100の運転を許可しないシステムである。
【0022】
図2に示すように、コントロールユニット80は、スイッチ81aと、スイッチ81aの接続状態を切り替えるための電磁石81bとを備えたインターロック用リレー81を備えている。スイッチ81aは、端子81cおよび端子81dを備えている。
【0023】
車両100は、バッテリ111と、バッテリ111によって駆動されてエンジンを始動させるためのセルモータ112と、バッテリ111およびセルモータ112の電気的な接続状態を切り替えるスタータリレー113と、キーが回されることによってバッテリ111およびスタータリレー113の電気的な接続状態を切り替えるスタータキースイッチ114と、車両100の速度を表す車速パルス信号を発生させる車速パルス発生器115とを備えている。バッテリ111は、アースに電気的に接続されたマイナス端子111aと、プラス端子111bとを備えている。セルモータ112は、アースおよびバッテリ111のマイナス端子111aに電気的に接続された端子112aと、端子112bとを備えている。スタータリレー113は、スイッチ113aと、スイッチ113aの接続状態を切り替えるための電磁石113bとを備えている。スタータリレー113のスイッチ113aは、セルモータ112の端子112bに電気的に接続された端子113cと、バッテリ111のプラス端子111bに電気的に接続された端子113dとを備えている。スタータリレー113の電磁石113bは、アース、バッテリ111のマイナス端子111aおよびセルモータ112の端子112aに電気的に接続された端子113eと、インターロック用リレー81のスイッチ81aの端子81cに電気的に接続された端子113fとを備えている。スタータキースイッチ114は、バッテリ111のプラス端子111bおよびスタータリレー113の端子113dに電気的に接続された端子114aと、車両100のエンジンを切るためのOFF端子114bと、車両100のアクセサリ電源をオン状態とするためのACC端子114cと、イグニッション電源をオン状態とするためのON端子114dと、セルモータ112を始動させるためのSTART端子114eとを備えている。START端子114eは、コントロールユニット80のインターロック用リレー81の端子81dに電気的に接続されている。
【0024】
なお、バッテリ111の電力は、コントロールユニット80に供給され、コントロールユニット80からケーブル11、12、13を介してハンディーユニット20、表示ユニット40、カメラユニット60にも供給されている。以下の説明においては、電力の供給についての説明を省略する。
【0025】
図1に示すハンディーユニット20は、運転者が運転前に呼気中のアルコール濃度を測るための装置である。図1に示すように、ハンディーユニット20は、ケース21と、ケース21の上部に設けられた交換可能なマウスピース23と、ケース21の正面に設けられて運転者に押されるスイッチ25とを備えており、ケース21の下部にケーブル11が接続されている。マウスピース23は、運転者の呼気が注入されるためのものであり、呼気注入部を構成している。
【0026】
図3は、ハンディーユニット20の構成を示すブロック図である。
【0027】
図3に示すように、ハンディーユニット20は、ケーブル11(図1参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース29と、被測定者である運転者の呼気の温度を測定するための呼気温度センサ31と、呼気の圧力を測定するための呼気圧測定部としての呼気圧センサ32と、呼気中の炭酸ガスの濃度を測定するための呼気CO2センサ33と、呼気中のアルコール濃度を測定するためのアルコール測定部としてのアルコール燃料電池センサ34と、アルコール燃料電池センサ34から出力された信号を増幅するアンプ35と、アルコール燃料電池センサ34の内部に呼気を取り込むための吸引ポンプ36と、ハンディーユニット20の各構成を制御するCPU(Central Processing Unit)38とをケース21(図1参照。)の内部に備えている。
【0028】
図1に示す表示ユニット40は、運転者の呼気中のアルコール濃度を表示したり、操作手順を音声および表示によって示したりする装置である。図1に示すように、表示ユニット40は、ケース41と、ケース41の正面の左端に設けられてハンディーユニット20のアルコール燃料電池センサ34(図3参照。)がウォームアップ中であることを表示するためのWarmUPランプ43と、ケース41の正面のWarmUPランプ43の右隣に設けられて運転者に呼気の吹込みを促すためのBlowランプ44と、ケース41の正面のBlowランプ44の右隣に設けられてアルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定中であることを表示するためのWaitランプ45と、ケース41の正面のWaitランプ45の右隣に設けられて運転者が飲酒状態であると判定されなかったことを表示するOKランプ46と、ケース41の正面のOKランプ46の右隣に設けられて運転者が飲酒状態であると判定されたことを表示するNGランプ47と、ケース41の正面のNGランプ47の右隣に設けられてアルコール濃度を表示する7セグメント表示の表示部48と、ケース41の上面に設けられて運転者の右手の指の指紋を読み取る指紋読取部50と、ケース41の上面の指紋読取部50の右隣に設けられたスピーカ52とを備えており、ケース41の背面にケーブル12が接続されている。また、表示部48は、運転者の呼気の圧力のレベル(以下「呼気圧レベル」という。)を表示によって通知するようにもなっており、呼気圧通知部を構成している。
【0029】
図4は、表示部48によって表示される呼気圧レベルを示すグラフである。図4において、横軸は、ハンディーユニット20(図3参照。)の呼気圧センサ32(図3参照。)の出力電圧の大きさ、すなわち運転者の呼気の圧力の大きさを示している。また、黒丸は、その箇所の値を含むことを意味しており、白丸は、その箇所の値を含まないことを意味している。
【0030】
図4に示すように、呼気圧レベルは、アルコール燃料電池センサ34によって正確なアルコール濃度を測定するための適正な呼気の圧力の範囲(以下「適正呼気圧範囲」という。)350より下の範囲361の呼気圧レベル(以下「下側不適正呼気圧レベル」という。)と、適正呼気圧範囲350より上の範囲362の呼気圧レベル(以下「上側不適正呼気圧レベル」という。)と、適正呼気圧範囲350を4分割した最も下の区分371の呼気圧レベル(以下「第1適正呼気圧レベル」という。)と、適正呼気圧範囲350を4分割した下から2番目の区分372の呼気圧レベル(以下「第2適正呼気圧レベル」という。)と、適正呼気圧範囲350を4分割した下から3番目の区分373の呼気圧レベル(以下「第3適正呼気圧レベル」という。)と、適正呼気圧範囲350を4分割した最も上の区分374の呼気圧レベル(以下「第4適正呼気圧レベル」という。)という6段階で構成されている。ここで、区分371は、適正呼気圧範囲350の限界値のうち下限値350aを含んでおり、区分374は、適正呼気圧範囲350の限界値のうち上限値350bを含んでおり、区分372および区分373は、適正呼気圧範囲350の限界値である下限値350aおよび上限値350bの何れをも含んでいない。
【0031】
図5は、表示部48の表示例を示す図である。
【0032】
表示部48は、例えば“0.050”(図5(a)参照。)mg/Lから“2.000”(図5(b)参照。)mg/Lまでの4桁の数値でアルコール濃度を表示することができる。また、表示部48は、下側不適正呼気圧レベルを“L”(図5(c)参照。)で表示し、第1適正呼気圧レベルを横線1本である“−”(図5(d)参照。)で表示し、第2適正呼気圧レベルを横線2本である“−−”(図5(e)参照。)で表示し、第3適正呼気圧レベルを横線3本である“−−−”(図5(f)参照。)で表示し、第4適正呼気圧レベルを横線4本である“−−−−”(図5(g)参照。)で表示し、上側不適正呼気圧レベルを“H”(図5(h)参照。)で表示するようになっている。
【0033】
図6は、図1に示す表示ユニット40の構成を示すブロック図である。
【0034】
図6に示すように、表示ユニット40は、ケーブル12(図1参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース54と、数千人の指紋の画像をID(以下「登録者ID」という。)とともに登録可能であって登録された指紋の画像に基づいて指紋読取部50によって読み取られた指紋の認証を行う指紋認証モジュール55と、スピーカ52によって出力される音声を生成する音声LSI(Large Scale Integration)57と、表示ユニット40の各構成を制御するCPU58とをケース41(図1参照。)の内部に備えている。
【0035】
図1に示すように、カメラユニット60は、ケース61と、ケース61の正面の中央に設けられたレンズ63とを備えており、ケース61にケーブル13が接続されている。
【0036】
図7は、カメラユニット60の構成を示すブロック図である。
【0037】
図7に示すように、カメラユニット60は、ケーブル13(図1参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース66と、レンズ63(図1参照。)を介して運転者を撮影するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ67と、場所を特定するためのGPS(Global Positioning System)電波を受信する内蔵アンテナ68と、内蔵アンテナ68によって受信したGPS電波を復号するためのGPS受信モジュール69と、CCDイメージセンサ67によって撮影された画像データがコントロールユニット80に転送されるまで画像データを一時的に記録するメモリ70と、カメラユニット60の各構成を制御するCPU71とをケース61(図1参照。)の内部に備えている。
【0038】
図1に示すように、コントロールユニット80は、ケース82と、ケース82の上面に立てられたアンテナ83とを備えており、ケース82の背面にケーブル11〜13が接続されている。
【0039】
図8は、コントロールユニット80の構成を示すブロック図である。
【0040】
図8に示すように、コントロールユニット80は、上述したインターロック用リレー81と、外部インターフェース85と、インターロック用リレー81の電磁石81bに電気的に接続されたアンプ86と、アンテナ83を介して外部と無線通信を行うための通信モジュール87と、時間を計測するための時計LSI88と、時計LSI88の電力源であるリチウム電池89と、車両100(図1参照。)の加速度を測定するための加速度センサ90と、飲酒状態の判定結果の履歴情報などの各種のデータを記録するLOGメモリ94と、コントロールユニット80の各構成を制御するCPU95とをケース82(図1参照。)の内部に備えている。インターロック用リレー81の端子81cは、図1に示していないケーブルを介してスタータリレー113(図2参照。)の端子113fに電気的に接続されている。インターロック用リレー81の端子81dは、図1に示していないケーブルを介してスタータキースイッチ114(図2参照。)のSTART端子114eに電気的に接続されている。外部インターフェース85は、それぞれケーブル11、12、13(図1参照。)を介してハンディーユニット20、表示ユニット40、カメラユニット60に電気的に接続されているとともに、図1に示していないケーブルを介してバッテリ111(図2参照。)のマイナス端子111aおよびプラス端子111bと、スタータキースイッチ114のACC端子114cと、車速パルス発生器115とに電気的に接続されている。
【0041】
次に、アルコールインターロックシステム10の動作について説明する。
【0042】
図9は、アルコールインターロックシステム10の動作のフローチャートである。
【0043】
運転者が車両100の運転席に座ってハンディーユニット20のスイッチ25を押すと、コントロールユニット80のCPU95は、スイッチ25が押されたことを検知して、図9に示す動作を開始する。
【0044】
図9に示すように、まず、CPU95は、車両100の車速パルス発生器115からの出力に基づいて車両100の速度が0より大きいか否かを判断する(ステップS202)。CPU95は、ステップS202において車両100の速度が0より大きいと判断すると、車両100を止めてから操作をやり直すように表示ユニット40のスピーカ52から音声で出力して(ステップS204)、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、車両100の速度が0より大きかったこととをLOGメモリ94に記録した後、一連の処理を終了する。
【0045】
CPU95は、ステップS202において車両100の速度が0であると判断すると、加速度センサ90からの出力に基づいて車両100の加速度が0より大きいか否かを判断する(ステップS206)。CPU95は、ステップS206において車両100の加速度が0より大きいと判断すると、車両100を止めてから操作をやり直すように表示ユニット40のスピーカ52から音声で出力して(ステップS204)、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、車両100の加速度が0より大きかったこととをLOGメモリ94に記録した後、一連の処理を終了する。
【0046】
なお、車両100が動いているか否かは、車両100の速度や加速度以外の情報に基づいても判断することができる。例えば、車両100が動いているときにはバッテリ111が発電および充電されて電圧が高くなることを利用して、バッテリ111の電圧が所定の電圧以上であるときに車両100が動いていると判断することもできる。また、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置の変化によっても、車両100が動いているか否かを判断することもできる。
【0047】
CPU95は、ステップS206において車両100の加速度が0であると判断すると、表示ユニット40の指紋認証モジュール55に指紋認証を行わせる。指紋認証モジュール55は、自身に事前に登録されている指紋の画像と、表示ユニット40の指紋読取部50から読み取った運転者の指紋の画像とに基づいて認証を行って、認証が成功した場合には、指紋読取部50から読み取った運転者の指紋の画像に対応する登録者IDをCPU95に送信し、認証が失敗した場合には、認証の失敗を示す登録者ID、例えばNo.9999をCPU95に送信する。CPU95は、指紋認証モジュール55から登録者IDが送信されると、指紋認証モジュール55から送信された登録者IDに基づいて、認証が成功したか否かを判断する(ステップS208)。なお、CPU95は、指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置とをLOGメモリ94に記録する。
【0048】
CPU95は、ステップS208において認証が失敗したと判断すると、認証が失敗したことをスピーカ52から音声で出力して(ステップS210)、一連の処理を終了する。
【0049】
CPU95は、ステップS208において認証が成功したと判断すると、ハンディーユニット20のアルコール燃料電池センサ34のウォームアップを開始して、表示ユニット40のWarmUPランプ43の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、アルコール燃料電池センサ34をウォームアップ中であることを通知する(ステップS212)。ここで、アルコール燃料電池センサ34のウォームアップとは、周囲の気温が例えば−45℃のように低温であってもアルコール燃料電池センサ34の内部のヒータ回路によってアルコール燃料電池センサ34を加熱して、アルコール燃料電池センサ34の内部の温度を一定の33℃まで引き上げることにより均一な測定性能を維持する動作である。そして、CPU95は、ウォームアップが完了するまで待機する(ステップS214)。
【0050】
CPU95は、ステップS214においてウォームアップが完了したと判断すると、時計LSI88の出力値に基づいて時間の計測を開始して、表示ユニット40のBlowランプ44の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、運転者による呼気の吹き込みを促す(ステップS216)。
【0051】
次いで、CPU95は、計測中の時間が所定の時間を経過したか否かを判断する(ステップS218)。CPU95は、ステップS218において計測中の時間が所定の時間を経過したと判断すると、計測中の時間が所定の時間を経過したことをスピーカ52から音声で出力し(ステップS220)、ステップS208において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、計測中の時間が所定の時間を経過したこととをLOGメモリ94に記録して、一連の処理を終了する。
【0052】
CPU95は、ステップS218において計測中の時間が所定の時間を経過していないと判断すると、運転者によってハンディーユニット20のマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力のレベルを表示ユニット40の表示部48の表示によって通知し(ステップS221)、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350(図4参照。)内であるか否かを呼気圧センサ32の測定値に基づいて判断する(ステップS222)。呼気の圧力が判断対象となる理由は、ある程度の適正な圧力の呼気でなければアルコール濃度の正確な測定ができないからである。CPU95は、ステップS222において呼気の圧力が適正呼気圧範囲350内ではないと判断すると、ステップS218に戻る。
【0053】
図10は、図9に示す呼気圧レベル通知処理(ステップS221)のフローチャートである。
【0054】
図10に示すように、コントロールユニット80のCPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350(図4参照。)の下限値350a(図4参照。)より小さいか否かを判断する(ステップS260)。CPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の下限値350aより小さいとS260において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“L”(図5(c)参照。)を表示して(ステップS262)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0055】
CPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の下限値350a以上であるとS260において判断すると、呼気の圧力が第1適正呼気圧レベルの上限値371a(図4参照。)以下であるか否かを判断する(ステップS264)。CPU95は、呼気の圧力が第1適正呼気圧レベルの上限値371a以下であるとS264において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“−”(図5(d)参照。)を表示して(ステップS266)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0056】
CPU95は、呼気の圧力が第1適正呼気圧レベルの上限値371aより大きいとS264において判断すると、呼気の圧力が第2適正呼気圧レベルの上限値372a(図4参照。)以下であるか否かを判断する(ステップS268)。CPU95は、呼気の圧力が第2適正呼気圧レベルの上限値372a以下であるとS268において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“−−”(図5(e)参照。)を表示して(ステップS270)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0057】
CPU95は、呼気の圧力が第2適正呼気圧レベルの上限値372aより大きいとS268において判断すると、呼気の圧力が第3適正呼気圧レベルの上限値373a(図4参照。)以下であるか否かを判断する(ステップS272)。CPU95は、呼気の圧力が第3適正呼気圧レベルの上限値373a以下であるとS272において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“−−−”(図5(f)参照。)を表示して(ステップS274)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0058】
CPU95は、呼気の圧力が第3適正呼気圧レベルの上限値373aより大きいとS272において判断すると、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の上限値350b(図4参照。)以下であるか否かを判断する(ステップS276)。CPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の上限値350b以下であるとS276において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“−−−−”(図5(g)参照。)を表示して(ステップS278)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0059】
CPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の上限値350bより大きいとS276において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“H”(図5(h)参照。)を表示して(ステップS280)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0060】
すなわち、CPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の下限値350aより小さい呼気圧レベルであるときに表示部48に“L”を表示し、呼気の圧力が第1適正呼気圧レベルであるときに表示部48に“−”を表示し、呼気の圧力が第2適正呼気圧レベルであるときに表示部48に“−−”を表示し、呼気の圧力が第3適正呼気圧レベルであるときに表示部48に“−−−”を表示し、呼気の圧力が第4適正呼気圧レベルであるときに表示部48に“−−−−”を表示し、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の上限値350bより大きい呼気圧レベルであるときに表示部48に“H”を表示する。このように、CPU95は、適正呼気圧範囲350を区分371〜374(図4参照。)に分割して、適正呼気圧範囲350内の呼気の圧力を区分371〜374によって表示部48に通知させるようになっており、通知制御部を構成している。
【0061】
図9に示すように、コントロールユニット80のCPU95は、ステップS222において呼気の圧力が適正呼気圧範囲350内であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上であるか否かを呼気CO2センサ33の測定値に基づいて判断する(ステップS224)。呼気中の炭酸ガスの濃度が判断対象となる理由は、アルコールを含んでいない空気をマウスピース23に空気入れなどで吹込むことによって飲酒状態と判定されないようにする不正を防止するためである。人間の呼気には、空気と比較して、炭酸ガスが多く含まれている。CPU95は、ステップS224において呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上ではないと判断すると、ステップS208において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上ではないこととをLOGメモリ94に記録した後、ステップS218に戻る。
【0062】
CPU95は、ステップS224において呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内であるか否かを呼気温度センサ31の測定値に基づいて判断する(ステップS226)。呼気の温度が判断対象となる理由は、アルコールを含んでいない空気をマウスピース23に空気入れなどで吹込むことによって飲酒状態と判定されないようにする不正を防止するためである。空気入れによって吹込まれた空気は、ハンディーユニット20の周囲の空気の温度に収束するのに対して、人間の呼気は、人間の体温に依存して安定しているためハンディーユニット20の周囲の空気の温度によらず常に34℃付近に収束する。CPU95は、ステップS226において呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内ではないと判断すると、ステップS208において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内ではないこととをLOGメモリ94に記録した後、ステップS218に戻る。
【0063】
CPU95は、ステップS226において呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれた空気の体積が所定の体積、例えば1.0L以上であるか否かを時計LSI88によって計測した時間と、呼気圧センサ32の測定値とに基づいて判断する(ステップS228)。吹込まれた空気の体積が判断対象となる理由は、吹込まれた空気の体積が少ないときにアルコール濃度を測定してしまうと口に入ったばかりの新鮮な空気のアルコール濃度を測定してしまうおそれがあり、呼気、すなわち肺に入っていた空気のアルコール濃度を測定するためにある程度の体積の空気が吹込まれる必要があるからである。CPU95は、吹込まれた空気の体積が所定の体積以上ではないとステップS228において判断すると、ステップS218に戻る。
【0064】
図11は、図1に示すハンディーユニット20のマウスピース23に吹込まれた空気の圧力、炭酸ガス濃度、温度および体積の時間経過の例を示すグラフである。図11において、縦軸は、ハンディーユニット20の呼気温度センサ31(図3参照。)、呼気圧センサ32(図3参照。)および呼気CO2センサ33(図3参照。)の出力電圧の大きさ、すなわち運転者の呼気の温度、呼気の圧力および呼気中の炭酸ガスの濃度の大きさを示している。また、横軸は、経過時間を示している。上述したステップS218からステップS228までの処理について、図11の例を使用して具体的に説明する。
【0065】
図11において、コントロールユニット80のCPU95は、計測中の時間txが時間311より前であるとき、計測中の時間txが所定の時間300aを経過しておらず(ステップS218)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が適正呼気圧範囲350外であるので(ステップS222)、ステップS218からステップS221を介してステップS222に進んだ後、再びステップS218に戻るという処理を繰り返す。
【0066】
次いで、CPU95は、計測中の時間txが時間311以降であって時間312より前になっているとき、計測中の時間txが所定の時間300aを経過しておらず(ステップS218)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が適正呼気圧範囲350内であり(ステップS222)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度302が所定の濃度302a未満であるので(ステップS224)、ステップS218からステップS221およびステップS222を介してステップS224に進んだ後、再びステップS218に戻るという処理を繰り返す。
【0067】
次いで、CPU95は、計測中の時間txが時間312以降であって時間313より前になっているとき、計測中の時間txが所定の時間300aを経過しておらず(ステップS218)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が適正呼気圧範囲350内であり(ステップS222)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度302が所定の濃度302a以上であり(ステップS224)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度303が34℃を中心とした所定の温度の範囲303a外であるので(ステップS226)、ステップS218からステップS221、ステップS222およびステップS224を介してステップS226に進んだ後、再びステップS218に戻るという処理を繰り返す。
【0068】
次いで、CPU95は、計測中の時間txが時間313以降であって時間314より前になっているとき、計測中の時間txが所定の時間300aを経過しておらず(ステップS218)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が適正呼気圧範囲350内であり(ステップS222)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度302が所定の濃度302a以上であり(ステップS224)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度303が34℃を中心とした所定の温度の範囲303a内であり(ステップS226)、運転者によってマウスピース23から吹込まれた空気の体積304(図11においてハッチングで示した面積)が所定の体積未満であるので(ステップS228)、ステップS218からステップS221、ステップS222、ステップS224およびステップS226を介してステップS228に進んだ後、再びステップS218に戻るという処理を繰り返す。
【0069】
次いで、CPU95は、計測中の時間txが時間314になったとき、計測中の時間txが所定の時間300aを経過しておらず(ステップS218)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が適正呼気圧範囲350内であり(ステップS222)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度302が所定の濃度302a以上であり(ステップS224)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度303が34℃を中心とした所定の温度の範囲303a内であり(ステップS226)、運転者によってマウスピース23から吹込まれた空気の体積304が所定の体積以上であるので(ステップS228)、ステップS218からステップS221、ステップS222、ステップS224およびステップS226を介してステップS228に進んだ後、ステップS228から次のステップに進む。
【0070】
図12は、アルコールインターロックシステム10の動作のうち図9に示す動作の続きのフローチャートである。
【0071】
図12に示すように、コントロールユニット80のCPU95は、吹込まれた空気の体積が所定の体積以上であるとステップS228(図9参照。)において判断すると、カメラユニット60にシャッタコマンドを転送することによってCCDイメージセンサ67に運転者を撮影させる(ステップS230)。したがって、ハンディーユニット20のマウスピース23から呼気を吹込んでいる最中の運転者の画像がカメラユニット60のメモリ70に記録される。
【0072】
次いで、CPU95は、ハンディーユニット20の吸引ポンプ36を駆動させてアルコール燃料電池センサ34の内部に呼気を導入することによって、アルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定を開始し(ステップS232)、表示ユニット40のWaitランプ45の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、アルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定中であることを通知する(ステップS234)。このように、CPU95は、呼気の圧力が所定の範囲、すなわち適正呼気圧範囲350(図4参照。)内である場合(ステップS222)にアルコール燃料電池センサ34にアルコール濃度を測定させるようになっており、測定制御部を構成している。
【0073】
そして、CPU95は、ステップS232において開始した測定が終了すると、ステップS208において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、測定されたアルコール濃度と、ステップS230において撮影されてカメラユニット60のメモリ70に記録されている画像とをLOGメモリ94に記録し(ステップS236)、測定されたアルコール濃度を表示ユニット40の表示部48の表示によって通知する(ステップS238)。次いで、CPU95は、測定されたアルコール濃度が所定の基準値以下であるか否かを判断する(ステップS240)。
【0074】
CPU95は、ステップS240においてアルコール濃度が所定の基準値を超えていると判断すると、飲酒状態であると判定したためにエンジンを始動できないことを、表示ユニット40のNGランプ47の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって通知して(ステップS242)、一連の処理を終了する。
【0075】
CPU95は、ステップS240においてアルコール濃度が所定の基準値以下であると判断すると、アンプ86を介してインターロック用リレー81の電磁石81bに電力を供給してスイッチ81aを閉じ(ステップS244)、飲酒状態であると判定なかったためにエンジンを始動できることを、表示ユニット40のOKランプ46の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって通知して(ステップS246)、一連の処理を終了する。なお、CPU95は、ステップS244においてスイッチ81aを閉じた後、5分間が経過すると、スイッチ81aを開く。したがって、運転者は、5分以内にスタータキースイッチ114のキーを回して端子114aと、START端子114eとを電気的に接続させることによって、車両100のエンジンを始動することができる。すなわち、スタータキースイッチ114の端子114aと、START端子114eとが電気的に接続させられると、コントロールユニット80のインターロック用リレー81のスイッチ81aと、スタータキースイッチ114とを介してスタータリレー113の電磁石113bにバッテリ111の電力が供給されてスイッチ113aが閉じ、それによってスタータリレー113のスイッチ113aを介してセルモータ112にバッテリ111の電力が供給されて、車両100のエンジンが始動させられる。
【0076】
なお、LOGメモリ94に記録された各種情報は、後で様々な目的で使用されることができる。例えば、LOGメモリ94に記録された飲酒状態の判定結果は、飲酒運転の常習者の場合には定期的に所轄の警察署で監視に使用されたり、業務用の場合には定期的に管理本部で監視に使用されたりすることができる。
【0077】
また、LOGメモリ94に記録される各種情報は、コントロールユニット80のアンテナ83および通信モジュール87によって外部に送信されるようになっていても良い。例えば、飲酒状態の判定結果は、飲酒運転の常習者の場合にはリアルタイムで所轄の警察署のメールサーバに送信されたり、業務用の場合にはリアルタイムで管理本部のメールサーバに送信されたりすることができる。もちろん、LOGメモリ94に記録された各種情報は、コントロールユニット80のアンテナ83および通信モジュール87を介して外部から読み出されるようになっていても良い。
【0078】
また、アルコールインターロックシステム10は、登録者IDを指紋認証によって入力するようになっているが、他の方法によって入力するようになっていても良い。例えば、登録者IDは、磁気カードやIC(Integrated Circuit)カードによって入力されるようになっていても良い。
【0079】
以上に説明したように、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350(図4参照。)内である場合に呼気の圧力を区分371〜374(図4参照。)によって段階的に通知することができるので、呼気の圧力を維持している運転者に現在の呼気の圧力がどの区分であるかを認識させることができる。そのため、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力を維持している運転者に現在の呼気の圧力が適正呼気圧範囲350を外れそうか否かを認識させることができる。したがって、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力が適正である状態を運転者に従来より容易に維持させることができる。
【0080】
アルコールインターロックシステム10は、ハンディーユニット20のマウスピース23に呼気を注入している最中の運転者によって圧力の表示が視認可能な位置に表示ユニット40の表示部48が配置されているので、呼気の圧力を維持している運転者に現在の呼気の圧力が適正呼気圧範囲350を外れそうか否かを視認させることができる。
【0081】
なお、アルコールインターロックシステム10は、運転者の呼気が注入されるためのマウスピース23と、呼気の圧力を表示する表示部48とが別々のユニットに備えられているので、マウスピース23に呼気を注入している最中の運転者によって圧力の表示が視認可能な位置に表示部48が配置されている。しかしながら、アルコールインターロックシステム10は、マウスピース23に呼気を注入している最中の運転者によって圧力の表示が視認可能な位置に表示部48が配置されていれば、マウスピース23および表示部48が同一のユニットに備えられていても良い。
【0082】
アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力の区分371〜374と、測定されたアルコール濃度とを同一の7セグメント表示によって表示することができるので、装置全体の構成を簡略化することができる。
【0083】
なお、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力の区分371〜374を表示する7セグメント表示と、測定されたアルコール濃度を表示する7セグメント表示とを別々に備えた構成になっていても良い。
【0084】
アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力の区分371〜374を7セグメント表示の桁数によって表示しているので、呼気の圧力の区分371〜374を被測定者に直感的に認識させることができる。したがって、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に容易に維持させることができる。
【0085】
なお、表示ユニット40の表示部48は、本実施の形態において4桁の7セグメント表示であるので、適正呼気圧範囲350を4分割した区分371〜374によって適正呼気圧範囲350内の呼気の圧力を通知するようになっているが、7セグメント表示の桁数が4桁以外である場合にも桁数に応じた数の区分を通知することができる。例えば、表示ユニット40の表示部48は、6桁の7セグメント表示である場合には適正呼気圧範囲350を6分割した区分によって適正呼気圧範囲350内の呼気の圧力を通知することができ、8桁の7セグメント表示である場合には適正呼気圧範囲350を8分割した区分によって適正呼気圧範囲350内の呼気の圧力を通知することができ、N桁の7セグメント表示である場合には適正呼気圧範囲350をN分割した区分によって適正呼気圧範囲350内の呼気の圧力を通知することができる。
【0086】
アルコールインターロックシステム10は、適正呼気圧範囲350の限界値である下限値350a(図4参照。)および上限値350b(図4参照。)を含まない区分372(図4参照。)に対応した第2適正呼気圧レベルを運転者に呼気の圧力の目標とさせることができるので、運転者の呼気の圧力がその区分を外れたとしても先ずは区分371(図4参照。)に対応した第1適正呼気圧レベルまたは区分373(図4参照。)に対応した第3適正呼気圧レベルになり、直ちに適正呼気圧範囲350を外れるということを防止することができる。同様に、アルコールインターロックシステム10は、適正呼気圧範囲350の限界値である下限値350aおよび上限値350bを含まない区分373に対応した第3適正呼気圧レベルを運転者に呼気の圧力の目標とさせることができるので、運転者の呼気の圧力がその区分を外れたとしても先ずは区分372に対応した第2適正呼気圧レベルまたは区分374(図4参照。)に対応した第4適正呼気圧レベルになり、直ちに適正呼気圧範囲350を外れるということを防止することができる。したがって、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力が適正である状態を運転者に容易に維持させることができる。
【0087】
なお、本発明の呼気中アルコール測定装置は、本実施の形態においてアルコールインターロックシステム10として構成されているが、アルコールインターロックシステム以外の装置で構成されていても良い。例えば、本発明の呼気中アルコール測定装置は、公共交通機関の事業者が乗務員に対して乗車前に飲酒状態を検査するための装置として、公共交通機関の営業所に設置されていても良い。
【0088】
また、本発明の呼気圧通知部は、本実施の形態において図5(d)〜図5(g)に示す方法によって呼気の圧力の区分371〜374(図4参照。)を7セグメント表示で表示するようになっているが、図5(d)〜図5(g)に示す方法以外の方法によって呼気の圧力の区分371〜374を7セグメント表示で表示するようになっていても良い。例えば、本発明の呼気圧通知部は、呼気の圧力の区分371〜374を7セグメント表示による数字“1”、“2”、“3”、“4”で表示するようになっていても良い。
【0089】
また、本発明の呼気圧通知部は、本実施の形態において7セグメント表示の表示部48として構成されているが、7セグメント表示以外の表示を行う装置で構成されていても良い。例えば、本発明の呼気圧通知部は、コンピュータのディスプレイで構成されていても良い。
【0090】
また、本発明の呼気圧通知部は、本実施の形態において呼気の圧力の区分371〜374を通知する方法として表示を使用しているが、例えば区分371〜374毎に音の高低を変えるなどして区分371〜374を音によって通知するようになっていても良いし、音および表示の組み合わせによって区分371〜374を通知するようになっていても良い。
【符号の説明】
【0091】
10 アルコールインターロックシステム(呼気中アルコール測定装置)
23 マウスピース(呼気注入部)
32 呼気圧センサ(呼気圧測定部)
34 アルコール燃料電池センサ(アルコール測定部)
48 表示部(呼気圧通知部)
95 CPU(測定制御部、通知制御部)
350 適正呼気圧範囲(所定の範囲)
350a 下限値(限界値)
350b 上限値(限界値)
371〜374 区分
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者の呼気中のアルコール濃度を測定する呼気中アルコール測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、呼気中アルコール測定装置として、被測定者の呼気の圧力が適正であるときに呼気中のアルコール濃度を測定するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような呼気中アルコール測定装置としては、正確なアルコール濃度を測定するために、被測定者の呼気の圧力が適正である場合にのみ、呼気中のアルコール濃度を測定するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−212217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
呼気の圧力を一定に維持することは人間にとって容易ではない。そのため、人間の呼気の圧力は、不安定である。したがって、上記従来の呼気中アルコール測定装置においては、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に維持させることが容易でないため、呼気中のアルコール濃度の測定を完了することができない場合があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に従来より容易に維持させることができる呼気中アルコール測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の呼気中アルコール測定装置は、被測定者の呼気中のアルコール濃度を測定するアルコール測定部と、前記呼気の圧力を測定する呼気圧測定部と、前記呼気圧測定部によって測定された前記圧力を音および表示の少なくとも一方によって通知する呼気圧通知部と、前記圧力が所定の範囲内である場合に前記アルコール測定部に前記アルコール濃度を測定させる測定制御部と、前記範囲を複数の区分に分割して前記呼気圧通知部に前記圧力を前記区分によって通知させる通知制御部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この構成により、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力が所定の範囲内である場合に呼気の圧力を区分によって段階的に通知することができるので、呼気の圧力を維持している被測定者に現在の呼気の圧力がどの区分であるかを認識させることができる。そのため、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力を維持している被測定者に現在の呼気の圧力が所定の範囲を外れそうか否かを認識させることができる。したがって、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に従来より容易に維持させることができる。
【0008】
本発明の呼気中アルコール測定装置は、前記被測定者の呼気が注入されるための呼気注入部を備えており、前記呼気圧通知部は、前記圧力を少なくとも表示によって通知し、前記呼気注入部に前記呼気を注入している最中の前記被測定者によって前記圧力の表示が視認可能な位置に配置されていることが好ましい。
【0009】
この構成により、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力を維持している被測定者に現在の呼気の圧力が所定の範囲を外れそうか否かを視認させることができる。
【0010】
本発明の呼気中アルコール測定装置の前記呼気圧通知部は、前記区分を少なくとも7セグメント表示によって通知するとともに、前記アルコール測定部によって測定された前記アルコール濃度を前記7セグメント表示によって表示することが好ましい。
【0011】
この構成により、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力の区分と、測定されたアルコール濃度とを同一の7セグメント表示によって表示することができるので、装置全体の構成を簡略化することができる。
【0012】
本発明の呼気中アルコール測定装置の前記呼気圧通知部は、前記区分を少なくとも前記7セグメント表示の桁数によって通知することが好ましい。
【0013】
この構成により、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力の区分を被測定者に直感的に認識させることができるので、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に容易に維持させることができる。
【0014】
本発明の呼気中アルコール測定装置の前記複数の区分は、前記範囲の限界値を含まない区分を含んでいることが好ましい。
【0015】
この構成により、本発明の呼気中アルコール測定装置は、所定の範囲の限界値を含まない区分を被測定者に呼気の圧力の目標とさせることができるので、被測定者の呼気の圧力がその区分を外れたとしても直ちに所定の範囲を外れるということを防止することができる。したがって、本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に容易に維持させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の呼気中アルコール測定装置は、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に従来より容易に維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るアルコールインターロックシステムの斜視図である。
【図2】図1に示すアルコールインターロックシステムの構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示すハンディーユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す表示部によって表示される呼気圧レベルを示すグラフである。
【図5】図1に示す表示部の表示例を示す図である。
【図6】図1に示す表示ユニットの構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示すカメラユニットの構成を示すブロック図である。
【図8】図1に示すコントロールユニットの構成を示すブロック図である。
【図9】図1に示すアルコールインターロックシステムの動作のフローチャートである。
【図10】図9に示す呼気圧レベル通知処理のフローチャートである。
【図11】図1に示すハンディーユニットのマウスピースに吹込まれた空気の圧力、炭酸ガス濃度、温度および体積の時間経過の例を示すグラフである。
【図12】図1に示すアルコールインターロックシステムの動作のうち図9に示す動作の続きのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0019】
まず、本実施の形態に係る呼気中アルコール測定装置としてのアルコールインターロックシステムの構成について説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係るアルコールインターロックシステム10の斜視図である。図2は、アルコールインターロックシステム10の構成を示すブロック図である。
【0021】
図1および図2に示すように、アルコールインターロックシステム10は、車両100のダッシュボード101の正面のうちハンドル102の左側の部分に着脱可能に取り付けられたハンディーユニット20と、ダッシュボード101の上面のうちハンドル102の近傍の部分に設置されて各種の表示を行う表示ユニット40と、車両100のバックミラー103の上部に設置されて運転者を撮影するためのカメラユニット60と、ダッシュボード101の内部に設置されてハンディーユニット20、表示ユニット40およびカメラユニット60の制御を行うコントロールユニット80と、ハンディーユニット20およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル11と、表示ユニット40およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル12と、カメラユニット60およびコントロールユニット80を電気的に接続するケーブル13とを備えている。アルコールインターロックシステム10は、運転者が飲酒状態であるときに運転者による車両100の運転を許可しないシステムである。
【0022】
図2に示すように、コントロールユニット80は、スイッチ81aと、スイッチ81aの接続状態を切り替えるための電磁石81bとを備えたインターロック用リレー81を備えている。スイッチ81aは、端子81cおよび端子81dを備えている。
【0023】
車両100は、バッテリ111と、バッテリ111によって駆動されてエンジンを始動させるためのセルモータ112と、バッテリ111およびセルモータ112の電気的な接続状態を切り替えるスタータリレー113と、キーが回されることによってバッテリ111およびスタータリレー113の電気的な接続状態を切り替えるスタータキースイッチ114と、車両100の速度を表す車速パルス信号を発生させる車速パルス発生器115とを備えている。バッテリ111は、アースに電気的に接続されたマイナス端子111aと、プラス端子111bとを備えている。セルモータ112は、アースおよびバッテリ111のマイナス端子111aに電気的に接続された端子112aと、端子112bとを備えている。スタータリレー113は、スイッチ113aと、スイッチ113aの接続状態を切り替えるための電磁石113bとを備えている。スタータリレー113のスイッチ113aは、セルモータ112の端子112bに電気的に接続された端子113cと、バッテリ111のプラス端子111bに電気的に接続された端子113dとを備えている。スタータリレー113の電磁石113bは、アース、バッテリ111のマイナス端子111aおよびセルモータ112の端子112aに電気的に接続された端子113eと、インターロック用リレー81のスイッチ81aの端子81cに電気的に接続された端子113fとを備えている。スタータキースイッチ114は、バッテリ111のプラス端子111bおよびスタータリレー113の端子113dに電気的に接続された端子114aと、車両100のエンジンを切るためのOFF端子114bと、車両100のアクセサリ電源をオン状態とするためのACC端子114cと、イグニッション電源をオン状態とするためのON端子114dと、セルモータ112を始動させるためのSTART端子114eとを備えている。START端子114eは、コントロールユニット80のインターロック用リレー81の端子81dに電気的に接続されている。
【0024】
なお、バッテリ111の電力は、コントロールユニット80に供給され、コントロールユニット80からケーブル11、12、13を介してハンディーユニット20、表示ユニット40、カメラユニット60にも供給されている。以下の説明においては、電力の供給についての説明を省略する。
【0025】
図1に示すハンディーユニット20は、運転者が運転前に呼気中のアルコール濃度を測るための装置である。図1に示すように、ハンディーユニット20は、ケース21と、ケース21の上部に設けられた交換可能なマウスピース23と、ケース21の正面に設けられて運転者に押されるスイッチ25とを備えており、ケース21の下部にケーブル11が接続されている。マウスピース23は、運転者の呼気が注入されるためのものであり、呼気注入部を構成している。
【0026】
図3は、ハンディーユニット20の構成を示すブロック図である。
【0027】
図3に示すように、ハンディーユニット20は、ケーブル11(図1参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース29と、被測定者である運転者の呼気の温度を測定するための呼気温度センサ31と、呼気の圧力を測定するための呼気圧測定部としての呼気圧センサ32と、呼気中の炭酸ガスの濃度を測定するための呼気CO2センサ33と、呼気中のアルコール濃度を測定するためのアルコール測定部としてのアルコール燃料電池センサ34と、アルコール燃料電池センサ34から出力された信号を増幅するアンプ35と、アルコール燃料電池センサ34の内部に呼気を取り込むための吸引ポンプ36と、ハンディーユニット20の各構成を制御するCPU(Central Processing Unit)38とをケース21(図1参照。)の内部に備えている。
【0028】
図1に示す表示ユニット40は、運転者の呼気中のアルコール濃度を表示したり、操作手順を音声および表示によって示したりする装置である。図1に示すように、表示ユニット40は、ケース41と、ケース41の正面の左端に設けられてハンディーユニット20のアルコール燃料電池センサ34(図3参照。)がウォームアップ中であることを表示するためのWarmUPランプ43と、ケース41の正面のWarmUPランプ43の右隣に設けられて運転者に呼気の吹込みを促すためのBlowランプ44と、ケース41の正面のBlowランプ44の右隣に設けられてアルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定中であることを表示するためのWaitランプ45と、ケース41の正面のWaitランプ45の右隣に設けられて運転者が飲酒状態であると判定されなかったことを表示するOKランプ46と、ケース41の正面のOKランプ46の右隣に設けられて運転者が飲酒状態であると判定されたことを表示するNGランプ47と、ケース41の正面のNGランプ47の右隣に設けられてアルコール濃度を表示する7セグメント表示の表示部48と、ケース41の上面に設けられて運転者の右手の指の指紋を読み取る指紋読取部50と、ケース41の上面の指紋読取部50の右隣に設けられたスピーカ52とを備えており、ケース41の背面にケーブル12が接続されている。また、表示部48は、運転者の呼気の圧力のレベル(以下「呼気圧レベル」という。)を表示によって通知するようにもなっており、呼気圧通知部を構成している。
【0029】
図4は、表示部48によって表示される呼気圧レベルを示すグラフである。図4において、横軸は、ハンディーユニット20(図3参照。)の呼気圧センサ32(図3参照。)の出力電圧の大きさ、すなわち運転者の呼気の圧力の大きさを示している。また、黒丸は、その箇所の値を含むことを意味しており、白丸は、その箇所の値を含まないことを意味している。
【0030】
図4に示すように、呼気圧レベルは、アルコール燃料電池センサ34によって正確なアルコール濃度を測定するための適正な呼気の圧力の範囲(以下「適正呼気圧範囲」という。)350より下の範囲361の呼気圧レベル(以下「下側不適正呼気圧レベル」という。)と、適正呼気圧範囲350より上の範囲362の呼気圧レベル(以下「上側不適正呼気圧レベル」という。)と、適正呼気圧範囲350を4分割した最も下の区分371の呼気圧レベル(以下「第1適正呼気圧レベル」という。)と、適正呼気圧範囲350を4分割した下から2番目の区分372の呼気圧レベル(以下「第2適正呼気圧レベル」という。)と、適正呼気圧範囲350を4分割した下から3番目の区分373の呼気圧レベル(以下「第3適正呼気圧レベル」という。)と、適正呼気圧範囲350を4分割した最も上の区分374の呼気圧レベル(以下「第4適正呼気圧レベル」という。)という6段階で構成されている。ここで、区分371は、適正呼気圧範囲350の限界値のうち下限値350aを含んでおり、区分374は、適正呼気圧範囲350の限界値のうち上限値350bを含んでおり、区分372および区分373は、適正呼気圧範囲350の限界値である下限値350aおよび上限値350bの何れをも含んでいない。
【0031】
図5は、表示部48の表示例を示す図である。
【0032】
表示部48は、例えば“0.050”(図5(a)参照。)mg/Lから“2.000”(図5(b)参照。)mg/Lまでの4桁の数値でアルコール濃度を表示することができる。また、表示部48は、下側不適正呼気圧レベルを“L”(図5(c)参照。)で表示し、第1適正呼気圧レベルを横線1本である“−”(図5(d)参照。)で表示し、第2適正呼気圧レベルを横線2本である“−−”(図5(e)参照。)で表示し、第3適正呼気圧レベルを横線3本である“−−−”(図5(f)参照。)で表示し、第4適正呼気圧レベルを横線4本である“−−−−”(図5(g)参照。)で表示し、上側不適正呼気圧レベルを“H”(図5(h)参照。)で表示するようになっている。
【0033】
図6は、図1に示す表示ユニット40の構成を示すブロック図である。
【0034】
図6に示すように、表示ユニット40は、ケーブル12(図1参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース54と、数千人の指紋の画像をID(以下「登録者ID」という。)とともに登録可能であって登録された指紋の画像に基づいて指紋読取部50によって読み取られた指紋の認証を行う指紋認証モジュール55と、スピーカ52によって出力される音声を生成する音声LSI(Large Scale Integration)57と、表示ユニット40の各構成を制御するCPU58とをケース41(図1参照。)の内部に備えている。
【0035】
図1に示すように、カメラユニット60は、ケース61と、ケース61の正面の中央に設けられたレンズ63とを備えており、ケース61にケーブル13が接続されている。
【0036】
図7は、カメラユニット60の構成を示すブロック図である。
【0037】
図7に示すように、カメラユニット60は、ケーブル13(図1参照。)を介してコントロールユニット80に電気的に接続された外部インターフェース66と、レンズ63(図1参照。)を介して運転者を撮影するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ67と、場所を特定するためのGPS(Global Positioning System)電波を受信する内蔵アンテナ68と、内蔵アンテナ68によって受信したGPS電波を復号するためのGPS受信モジュール69と、CCDイメージセンサ67によって撮影された画像データがコントロールユニット80に転送されるまで画像データを一時的に記録するメモリ70と、カメラユニット60の各構成を制御するCPU71とをケース61(図1参照。)の内部に備えている。
【0038】
図1に示すように、コントロールユニット80は、ケース82と、ケース82の上面に立てられたアンテナ83とを備えており、ケース82の背面にケーブル11〜13が接続されている。
【0039】
図8は、コントロールユニット80の構成を示すブロック図である。
【0040】
図8に示すように、コントロールユニット80は、上述したインターロック用リレー81と、外部インターフェース85と、インターロック用リレー81の電磁石81bに電気的に接続されたアンプ86と、アンテナ83を介して外部と無線通信を行うための通信モジュール87と、時間を計測するための時計LSI88と、時計LSI88の電力源であるリチウム電池89と、車両100(図1参照。)の加速度を測定するための加速度センサ90と、飲酒状態の判定結果の履歴情報などの各種のデータを記録するLOGメモリ94と、コントロールユニット80の各構成を制御するCPU95とをケース82(図1参照。)の内部に備えている。インターロック用リレー81の端子81cは、図1に示していないケーブルを介してスタータリレー113(図2参照。)の端子113fに電気的に接続されている。インターロック用リレー81の端子81dは、図1に示していないケーブルを介してスタータキースイッチ114(図2参照。)のSTART端子114eに電気的に接続されている。外部インターフェース85は、それぞれケーブル11、12、13(図1参照。)を介してハンディーユニット20、表示ユニット40、カメラユニット60に電気的に接続されているとともに、図1に示していないケーブルを介してバッテリ111(図2参照。)のマイナス端子111aおよびプラス端子111bと、スタータキースイッチ114のACC端子114cと、車速パルス発生器115とに電気的に接続されている。
【0041】
次に、アルコールインターロックシステム10の動作について説明する。
【0042】
図9は、アルコールインターロックシステム10の動作のフローチャートである。
【0043】
運転者が車両100の運転席に座ってハンディーユニット20のスイッチ25を押すと、コントロールユニット80のCPU95は、スイッチ25が押されたことを検知して、図9に示す動作を開始する。
【0044】
図9に示すように、まず、CPU95は、車両100の車速パルス発生器115からの出力に基づいて車両100の速度が0より大きいか否かを判断する(ステップS202)。CPU95は、ステップS202において車両100の速度が0より大きいと判断すると、車両100を止めてから操作をやり直すように表示ユニット40のスピーカ52から音声で出力して(ステップS204)、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、車両100の速度が0より大きかったこととをLOGメモリ94に記録した後、一連の処理を終了する。
【0045】
CPU95は、ステップS202において車両100の速度が0であると判断すると、加速度センサ90からの出力に基づいて車両100の加速度が0より大きいか否かを判断する(ステップS206)。CPU95は、ステップS206において車両100の加速度が0より大きいと判断すると、車両100を止めてから操作をやり直すように表示ユニット40のスピーカ52から音声で出力して(ステップS204)、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、車両100の加速度が0より大きかったこととをLOGメモリ94に記録した後、一連の処理を終了する。
【0046】
なお、車両100が動いているか否かは、車両100の速度や加速度以外の情報に基づいても判断することができる。例えば、車両100が動いているときにはバッテリ111が発電および充電されて電圧が高くなることを利用して、バッテリ111の電圧が所定の電圧以上であるときに車両100が動いていると判断することもできる。また、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置の変化によっても、車両100が動いているか否かを判断することもできる。
【0047】
CPU95は、ステップS206において車両100の加速度が0であると判断すると、表示ユニット40の指紋認証モジュール55に指紋認証を行わせる。指紋認証モジュール55は、自身に事前に登録されている指紋の画像と、表示ユニット40の指紋読取部50から読み取った運転者の指紋の画像とに基づいて認証を行って、認証が成功した場合には、指紋読取部50から読み取った運転者の指紋の画像に対応する登録者IDをCPU95に送信し、認証が失敗した場合には、認証の失敗を示す登録者ID、例えばNo.9999をCPU95に送信する。CPU95は、指紋認証モジュール55から登録者IDが送信されると、指紋認証モジュール55から送信された登録者IDに基づいて、認証が成功したか否かを判断する(ステップS208)。なお、CPU95は、指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置とをLOGメモリ94に記録する。
【0048】
CPU95は、ステップS208において認証が失敗したと判断すると、認証が失敗したことをスピーカ52から音声で出力して(ステップS210)、一連の処理を終了する。
【0049】
CPU95は、ステップS208において認証が成功したと判断すると、ハンディーユニット20のアルコール燃料電池センサ34のウォームアップを開始して、表示ユニット40のWarmUPランプ43の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、アルコール燃料電池センサ34をウォームアップ中であることを通知する(ステップS212)。ここで、アルコール燃料電池センサ34のウォームアップとは、周囲の気温が例えば−45℃のように低温であってもアルコール燃料電池センサ34の内部のヒータ回路によってアルコール燃料電池センサ34を加熱して、アルコール燃料電池センサ34の内部の温度を一定の33℃まで引き上げることにより均一な測定性能を維持する動作である。そして、CPU95は、ウォームアップが完了するまで待機する(ステップS214)。
【0050】
CPU95は、ステップS214においてウォームアップが完了したと判断すると、時計LSI88の出力値に基づいて時間の計測を開始して、表示ユニット40のBlowランプ44の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、運転者による呼気の吹き込みを促す(ステップS216)。
【0051】
次いで、CPU95は、計測中の時間が所定の時間を経過したか否かを判断する(ステップS218)。CPU95は、ステップS218において計測中の時間が所定の時間を経過したと判断すると、計測中の時間が所定の時間を経過したことをスピーカ52から音声で出力し(ステップS220)、ステップS208において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、計測中の時間が所定の時間を経過したこととをLOGメモリ94に記録して、一連の処理を終了する。
【0052】
CPU95は、ステップS218において計測中の時間が所定の時間を経過していないと判断すると、運転者によってハンディーユニット20のマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力のレベルを表示ユニット40の表示部48の表示によって通知し(ステップS221)、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350(図4参照。)内であるか否かを呼気圧センサ32の測定値に基づいて判断する(ステップS222)。呼気の圧力が判断対象となる理由は、ある程度の適正な圧力の呼気でなければアルコール濃度の正確な測定ができないからである。CPU95は、ステップS222において呼気の圧力が適正呼気圧範囲350内ではないと判断すると、ステップS218に戻る。
【0053】
図10は、図9に示す呼気圧レベル通知処理(ステップS221)のフローチャートである。
【0054】
図10に示すように、コントロールユニット80のCPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350(図4参照。)の下限値350a(図4参照。)より小さいか否かを判断する(ステップS260)。CPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の下限値350aより小さいとS260において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“L”(図5(c)参照。)を表示して(ステップS262)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0055】
CPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の下限値350a以上であるとS260において判断すると、呼気の圧力が第1適正呼気圧レベルの上限値371a(図4参照。)以下であるか否かを判断する(ステップS264)。CPU95は、呼気の圧力が第1適正呼気圧レベルの上限値371a以下であるとS264において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“−”(図5(d)参照。)を表示して(ステップS266)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0056】
CPU95は、呼気の圧力が第1適正呼気圧レベルの上限値371aより大きいとS264において判断すると、呼気の圧力が第2適正呼気圧レベルの上限値372a(図4参照。)以下であるか否かを判断する(ステップS268)。CPU95は、呼気の圧力が第2適正呼気圧レベルの上限値372a以下であるとS268において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“−−”(図5(e)参照。)を表示して(ステップS270)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0057】
CPU95は、呼気の圧力が第2適正呼気圧レベルの上限値372aより大きいとS268において判断すると、呼気の圧力が第3適正呼気圧レベルの上限値373a(図4参照。)以下であるか否かを判断する(ステップS272)。CPU95は、呼気の圧力が第3適正呼気圧レベルの上限値373a以下であるとS272において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“−−−”(図5(f)参照。)を表示して(ステップS274)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0058】
CPU95は、呼気の圧力が第3適正呼気圧レベルの上限値373aより大きいとS272において判断すると、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の上限値350b(図4参照。)以下であるか否かを判断する(ステップS276)。CPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の上限値350b以下であるとS276において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“−−−−”(図5(g)参照。)を表示して(ステップS278)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0059】
CPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の上限値350bより大きいとS276において判断すると、表示ユニット40の表示部48に“H”(図5(h)参照。)を表示して(ステップS280)、呼気圧レベル通知処理を終了する。
【0060】
すなわち、CPU95は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の下限値350aより小さい呼気圧レベルであるときに表示部48に“L”を表示し、呼気の圧力が第1適正呼気圧レベルであるときに表示部48に“−”を表示し、呼気の圧力が第2適正呼気圧レベルであるときに表示部48に“−−”を表示し、呼気の圧力が第3適正呼気圧レベルであるときに表示部48に“−−−”を表示し、呼気の圧力が第4適正呼気圧レベルであるときに表示部48に“−−−−”を表示し、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350の上限値350bより大きい呼気圧レベルであるときに表示部48に“H”を表示する。このように、CPU95は、適正呼気圧範囲350を区分371〜374(図4参照。)に分割して、適正呼気圧範囲350内の呼気の圧力を区分371〜374によって表示部48に通知させるようになっており、通知制御部を構成している。
【0061】
図9に示すように、コントロールユニット80のCPU95は、ステップS222において呼気の圧力が適正呼気圧範囲350内であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上であるか否かを呼気CO2センサ33の測定値に基づいて判断する(ステップS224)。呼気中の炭酸ガスの濃度が判断対象となる理由は、アルコールを含んでいない空気をマウスピース23に空気入れなどで吹込むことによって飲酒状態と判定されないようにする不正を防止するためである。人間の呼気には、空気と比較して、炭酸ガスが多く含まれている。CPU95は、ステップS224において呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上ではないと判断すると、ステップS208において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上ではないこととをLOGメモリ94に記録した後、ステップS218に戻る。
【0062】
CPU95は、ステップS224において呼気中の炭酸ガスの濃度が所定の濃度以上であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内であるか否かを呼気温度センサ31の測定値に基づいて判断する(ステップS226)。呼気の温度が判断対象となる理由は、アルコールを含んでいない空気をマウスピース23に空気入れなどで吹込むことによって飲酒状態と判定されないようにする不正を防止するためである。空気入れによって吹込まれた空気は、ハンディーユニット20の周囲の空気の温度に収束するのに対して、人間の呼気は、人間の体温に依存して安定しているためハンディーユニット20の周囲の空気の温度によらず常に34℃付近に収束する。CPU95は、ステップS226において呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内ではないと判断すると、ステップS208において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内ではないこととをLOGメモリ94に記録した後、ステップS218に戻る。
【0063】
CPU95は、ステップS226において呼気の温度が34℃を中心とした所定の温度の範囲内であると判断すると、運転者によってマウスピース23から吹込まれた空気の体積が所定の体積、例えば1.0L以上であるか否かを時計LSI88によって計測した時間と、呼気圧センサ32の測定値とに基づいて判断する(ステップS228)。吹込まれた空気の体積が判断対象となる理由は、吹込まれた空気の体積が少ないときにアルコール濃度を測定してしまうと口に入ったばかりの新鮮な空気のアルコール濃度を測定してしまうおそれがあり、呼気、すなわち肺に入っていた空気のアルコール濃度を測定するためにある程度の体積の空気が吹込まれる必要があるからである。CPU95は、吹込まれた空気の体積が所定の体積以上ではないとステップS228において判断すると、ステップS218に戻る。
【0064】
図11は、図1に示すハンディーユニット20のマウスピース23に吹込まれた空気の圧力、炭酸ガス濃度、温度および体積の時間経過の例を示すグラフである。図11において、縦軸は、ハンディーユニット20の呼気温度センサ31(図3参照。)、呼気圧センサ32(図3参照。)および呼気CO2センサ33(図3参照。)の出力電圧の大きさ、すなわち運転者の呼気の温度、呼気の圧力および呼気中の炭酸ガスの濃度の大きさを示している。また、横軸は、経過時間を示している。上述したステップS218からステップS228までの処理について、図11の例を使用して具体的に説明する。
【0065】
図11において、コントロールユニット80のCPU95は、計測中の時間txが時間311より前であるとき、計測中の時間txが所定の時間300aを経過しておらず(ステップS218)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が適正呼気圧範囲350外であるので(ステップS222)、ステップS218からステップS221を介してステップS222に進んだ後、再びステップS218に戻るという処理を繰り返す。
【0066】
次いで、CPU95は、計測中の時間txが時間311以降であって時間312より前になっているとき、計測中の時間txが所定の時間300aを経過しておらず(ステップS218)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が適正呼気圧範囲350内であり(ステップS222)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度302が所定の濃度302a未満であるので(ステップS224)、ステップS218からステップS221およびステップS222を介してステップS224に進んだ後、再びステップS218に戻るという処理を繰り返す。
【0067】
次いで、CPU95は、計測中の時間txが時間312以降であって時間313より前になっているとき、計測中の時間txが所定の時間300aを経過しておらず(ステップS218)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が適正呼気圧範囲350内であり(ステップS222)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度302が所定の濃度302a以上であり(ステップS224)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度303が34℃を中心とした所定の温度の範囲303a外であるので(ステップS226)、ステップS218からステップS221、ステップS222およびステップS224を介してステップS226に進んだ後、再びステップS218に戻るという処理を繰り返す。
【0068】
次いで、CPU95は、計測中の時間txが時間313以降であって時間314より前になっているとき、計測中の時間txが所定の時間300aを経過しておらず(ステップS218)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が適正呼気圧範囲350内であり(ステップS222)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度302が所定の濃度302a以上であり(ステップS224)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度303が34℃を中心とした所定の温度の範囲303a内であり(ステップS226)、運転者によってマウスピース23から吹込まれた空気の体積304(図11においてハッチングで示した面積)が所定の体積未満であるので(ステップS228)、ステップS218からステップS221、ステップS222、ステップS224およびステップS226を介してステップS228に進んだ後、再びステップS218に戻るという処理を繰り返す。
【0069】
次いで、CPU95は、計測中の時間txが時間314になったとき、計測中の時間txが所定の時間300aを経過しておらず(ステップS218)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の圧力301が適正呼気圧範囲350内であり(ステップS222)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気中の炭酸ガスの濃度302が所定の濃度302a以上であり(ステップS224)、運転者によってマウスピース23から吹込まれる呼気の温度303が34℃を中心とした所定の温度の範囲303a内であり(ステップS226)、運転者によってマウスピース23から吹込まれた空気の体積304が所定の体積以上であるので(ステップS228)、ステップS218からステップS221、ステップS222、ステップS224およびステップS226を介してステップS228に進んだ後、ステップS228から次のステップに進む。
【0070】
図12は、アルコールインターロックシステム10の動作のうち図9に示す動作の続きのフローチャートである。
【0071】
図12に示すように、コントロールユニット80のCPU95は、吹込まれた空気の体積が所定の体積以上であるとステップS228(図9参照。)において判断すると、カメラユニット60にシャッタコマンドを転送することによってCCDイメージセンサ67に運転者を撮影させる(ステップS230)。したがって、ハンディーユニット20のマウスピース23から呼気を吹込んでいる最中の運転者の画像がカメラユニット60のメモリ70に記録される。
【0072】
次いで、CPU95は、ハンディーユニット20の吸引ポンプ36を駆動させてアルコール燃料電池センサ34の内部に呼気を導入することによって、アルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定を開始し(ステップS232)、表示ユニット40のWaitランプ45の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって、アルコール燃料電池センサ34によるアルコール濃度の測定中であることを通知する(ステップS234)。このように、CPU95は、呼気の圧力が所定の範囲、すなわち適正呼気圧範囲350(図4参照。)内である場合(ステップS222)にアルコール燃料電池センサ34にアルコール濃度を測定させるようになっており、測定制御部を構成している。
【0073】
そして、CPU95は、ステップS232において開始した測定が終了すると、ステップS208において指紋認証モジュール55から送信された登録者IDと、時計LSI88から得られる現在時刻と、カメラユニット60からのGPS情報に基づいた現在位置と、測定されたアルコール濃度と、ステップS230において撮影されてカメラユニット60のメモリ70に記録されている画像とをLOGメモリ94に記録し(ステップS236)、測定されたアルコール濃度を表示ユニット40の表示部48の表示によって通知する(ステップS238)。次いで、CPU95は、測定されたアルコール濃度が所定の基準値以下であるか否かを判断する(ステップS240)。
【0074】
CPU95は、ステップS240においてアルコール濃度が所定の基準値を超えていると判断すると、飲酒状態であると判定したためにエンジンを始動できないことを、表示ユニット40のNGランプ47の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって通知して(ステップS242)、一連の処理を終了する。
【0075】
CPU95は、ステップS240においてアルコール濃度が所定の基準値以下であると判断すると、アンプ86を介してインターロック用リレー81の電磁石81bに電力を供給してスイッチ81aを閉じ(ステップS244)、飲酒状態であると判定なかったためにエンジンを始動できることを、表示ユニット40のOKランプ46の点灯と、スピーカ52からの音声による出力とによって通知して(ステップS246)、一連の処理を終了する。なお、CPU95は、ステップS244においてスイッチ81aを閉じた後、5分間が経過すると、スイッチ81aを開く。したがって、運転者は、5分以内にスタータキースイッチ114のキーを回して端子114aと、START端子114eとを電気的に接続させることによって、車両100のエンジンを始動することができる。すなわち、スタータキースイッチ114の端子114aと、START端子114eとが電気的に接続させられると、コントロールユニット80のインターロック用リレー81のスイッチ81aと、スタータキースイッチ114とを介してスタータリレー113の電磁石113bにバッテリ111の電力が供給されてスイッチ113aが閉じ、それによってスタータリレー113のスイッチ113aを介してセルモータ112にバッテリ111の電力が供給されて、車両100のエンジンが始動させられる。
【0076】
なお、LOGメモリ94に記録された各種情報は、後で様々な目的で使用されることができる。例えば、LOGメモリ94に記録された飲酒状態の判定結果は、飲酒運転の常習者の場合には定期的に所轄の警察署で監視に使用されたり、業務用の場合には定期的に管理本部で監視に使用されたりすることができる。
【0077】
また、LOGメモリ94に記録される各種情報は、コントロールユニット80のアンテナ83および通信モジュール87によって外部に送信されるようになっていても良い。例えば、飲酒状態の判定結果は、飲酒運転の常習者の場合にはリアルタイムで所轄の警察署のメールサーバに送信されたり、業務用の場合にはリアルタイムで管理本部のメールサーバに送信されたりすることができる。もちろん、LOGメモリ94に記録された各種情報は、コントロールユニット80のアンテナ83および通信モジュール87を介して外部から読み出されるようになっていても良い。
【0078】
また、アルコールインターロックシステム10は、登録者IDを指紋認証によって入力するようになっているが、他の方法によって入力するようになっていても良い。例えば、登録者IDは、磁気カードやIC(Integrated Circuit)カードによって入力されるようになっていても良い。
【0079】
以上に説明したように、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力が適正呼気圧範囲350(図4参照。)内である場合に呼気の圧力を区分371〜374(図4参照。)によって段階的に通知することができるので、呼気の圧力を維持している運転者に現在の呼気の圧力がどの区分であるかを認識させることができる。そのため、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力を維持している運転者に現在の呼気の圧力が適正呼気圧範囲350を外れそうか否かを認識させることができる。したがって、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力が適正である状態を運転者に従来より容易に維持させることができる。
【0080】
アルコールインターロックシステム10は、ハンディーユニット20のマウスピース23に呼気を注入している最中の運転者によって圧力の表示が視認可能な位置に表示ユニット40の表示部48が配置されているので、呼気の圧力を維持している運転者に現在の呼気の圧力が適正呼気圧範囲350を外れそうか否かを視認させることができる。
【0081】
なお、アルコールインターロックシステム10は、運転者の呼気が注入されるためのマウスピース23と、呼気の圧力を表示する表示部48とが別々のユニットに備えられているので、マウスピース23に呼気を注入している最中の運転者によって圧力の表示が視認可能な位置に表示部48が配置されている。しかしながら、アルコールインターロックシステム10は、マウスピース23に呼気を注入している最中の運転者によって圧力の表示が視認可能な位置に表示部48が配置されていれば、マウスピース23および表示部48が同一のユニットに備えられていても良い。
【0082】
アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力の区分371〜374と、測定されたアルコール濃度とを同一の7セグメント表示によって表示することができるので、装置全体の構成を簡略化することができる。
【0083】
なお、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力の区分371〜374を表示する7セグメント表示と、測定されたアルコール濃度を表示する7セグメント表示とを別々に備えた構成になっていても良い。
【0084】
アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力の区分371〜374を7セグメント表示の桁数によって表示しているので、呼気の圧力の区分371〜374を被測定者に直感的に認識させることができる。したがって、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力が適正である状態を被測定者に容易に維持させることができる。
【0085】
なお、表示ユニット40の表示部48は、本実施の形態において4桁の7セグメント表示であるので、適正呼気圧範囲350を4分割した区分371〜374によって適正呼気圧範囲350内の呼気の圧力を通知するようになっているが、7セグメント表示の桁数が4桁以外である場合にも桁数に応じた数の区分を通知することができる。例えば、表示ユニット40の表示部48は、6桁の7セグメント表示である場合には適正呼気圧範囲350を6分割した区分によって適正呼気圧範囲350内の呼気の圧力を通知することができ、8桁の7セグメント表示である場合には適正呼気圧範囲350を8分割した区分によって適正呼気圧範囲350内の呼気の圧力を通知することができ、N桁の7セグメント表示である場合には適正呼気圧範囲350をN分割した区分によって適正呼気圧範囲350内の呼気の圧力を通知することができる。
【0086】
アルコールインターロックシステム10は、適正呼気圧範囲350の限界値である下限値350a(図4参照。)および上限値350b(図4参照。)を含まない区分372(図4参照。)に対応した第2適正呼気圧レベルを運転者に呼気の圧力の目標とさせることができるので、運転者の呼気の圧力がその区分を外れたとしても先ずは区分371(図4参照。)に対応した第1適正呼気圧レベルまたは区分373(図4参照。)に対応した第3適正呼気圧レベルになり、直ちに適正呼気圧範囲350を外れるということを防止することができる。同様に、アルコールインターロックシステム10は、適正呼気圧範囲350の限界値である下限値350aおよび上限値350bを含まない区分373に対応した第3適正呼気圧レベルを運転者に呼気の圧力の目標とさせることができるので、運転者の呼気の圧力がその区分を外れたとしても先ずは区分372に対応した第2適正呼気圧レベルまたは区分374(図4参照。)に対応した第4適正呼気圧レベルになり、直ちに適正呼気圧範囲350を外れるということを防止することができる。したがって、アルコールインターロックシステム10は、呼気の圧力が適正である状態を運転者に容易に維持させることができる。
【0087】
なお、本発明の呼気中アルコール測定装置は、本実施の形態においてアルコールインターロックシステム10として構成されているが、アルコールインターロックシステム以外の装置で構成されていても良い。例えば、本発明の呼気中アルコール測定装置は、公共交通機関の事業者が乗務員に対して乗車前に飲酒状態を検査するための装置として、公共交通機関の営業所に設置されていても良い。
【0088】
また、本発明の呼気圧通知部は、本実施の形態において図5(d)〜図5(g)に示す方法によって呼気の圧力の区分371〜374(図4参照。)を7セグメント表示で表示するようになっているが、図5(d)〜図5(g)に示す方法以外の方法によって呼気の圧力の区分371〜374を7セグメント表示で表示するようになっていても良い。例えば、本発明の呼気圧通知部は、呼気の圧力の区分371〜374を7セグメント表示による数字“1”、“2”、“3”、“4”で表示するようになっていても良い。
【0089】
また、本発明の呼気圧通知部は、本実施の形態において7セグメント表示の表示部48として構成されているが、7セグメント表示以外の表示を行う装置で構成されていても良い。例えば、本発明の呼気圧通知部は、コンピュータのディスプレイで構成されていても良い。
【0090】
また、本発明の呼気圧通知部は、本実施の形態において呼気の圧力の区分371〜374を通知する方法として表示を使用しているが、例えば区分371〜374毎に音の高低を変えるなどして区分371〜374を音によって通知するようになっていても良いし、音および表示の組み合わせによって区分371〜374を通知するようになっていても良い。
【符号の説明】
【0091】
10 アルコールインターロックシステム(呼気中アルコール測定装置)
23 マウスピース(呼気注入部)
32 呼気圧センサ(呼気圧測定部)
34 アルコール燃料電池センサ(アルコール測定部)
48 表示部(呼気圧通知部)
95 CPU(測定制御部、通知制御部)
350 適正呼気圧範囲(所定の範囲)
350a 下限値(限界値)
350b 上限値(限界値)
371〜374 区分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の呼気中のアルコール濃度を測定するアルコール測定部と、前記呼気の圧力を測定する呼気圧測定部と、前記呼気圧測定部によって測定された前記圧力を音および表示の少なくとも一方によって通知する呼気圧通知部と、前記圧力が所定の範囲内である場合に前記アルコール測定部に前記アルコール濃度を測定させる測定制御部と、前記範囲を複数の区分に分割して前記呼気圧通知部に前記圧力を前記区分によって通知させる通知制御部とを備えていることを特徴とする呼気中アルコール測定装置。
【請求項2】
前記被測定者の呼気が注入されるための呼気注入部を備えており、
前記呼気圧通知部は、前記圧力を少なくとも表示によって通知し、前記呼気注入部に前記呼気を注入している最中の前記被測定者によって前記圧力の表示が視認可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の呼気中アルコール測定装置。
【請求項3】
前記呼気圧通知部は、前記区分を少なくとも7セグメント表示によって通知するとともに、前記アルコール測定部によって測定された前記アルコール濃度を前記7セグメント表示によって表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の呼気中アルコール測定装置。
【請求項4】
前記呼気圧通知部は、前記区分を少なくとも前記7セグメント表示の桁数によって通知することを特徴とする請求項3に記載の呼気中アルコール測定装置。
【請求項5】
前記複数の区分は、前記範囲の限界値を含まない区分を含んでいることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の呼気中アルコール測定装置。
【請求項1】
被測定者の呼気中のアルコール濃度を測定するアルコール測定部と、前記呼気の圧力を測定する呼気圧測定部と、前記呼気圧測定部によって測定された前記圧力を音および表示の少なくとも一方によって通知する呼気圧通知部と、前記圧力が所定の範囲内である場合に前記アルコール測定部に前記アルコール濃度を測定させる測定制御部と、前記範囲を複数の区分に分割して前記呼気圧通知部に前記圧力を前記区分によって通知させる通知制御部とを備えていることを特徴とする呼気中アルコール測定装置。
【請求項2】
前記被測定者の呼気が注入されるための呼気注入部を備えており、
前記呼気圧通知部は、前記圧力を少なくとも表示によって通知し、前記呼気注入部に前記呼気を注入している最中の前記被測定者によって前記圧力の表示が視認可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の呼気中アルコール測定装置。
【請求項3】
前記呼気圧通知部は、前記区分を少なくとも7セグメント表示によって通知するとともに、前記アルコール測定部によって測定された前記アルコール濃度を前記7セグメント表示によって表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の呼気中アルコール測定装置。
【請求項4】
前記呼気圧通知部は、前記区分を少なくとも前記7セグメント表示の桁数によって通知することを特徴とする請求項3に記載の呼気中アルコール測定装置。
【請求項5】
前記複数の区分は、前記範囲の限界値を含まない区分を含んでいることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の呼気中アルコール測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−217016(P2010−217016A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64593(P2009−64593)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【特許番号】特許第4323564号(P4323564)
【特許公報発行日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(302031454)東海電子株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【特許番号】特許第4323564号(P4323564)
【特許公報発行日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(302031454)東海電子株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
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