説明

咀嚼判定用キット及び咀嚼判定方法

【課題】 従来の咀嚼評価方法に欠けていた広義の咀嚼判定に不可欠な要素として、咀嚼を判定するための成分が含まれた試験用食品を用いると、咀嚼の度合により成分の浸出具合に差が現れ、それを特殊な高価な機器を用いることなく、簡便な方法で測定できるような咀嚼評価方法の構築並びに咀嚼判定キットの提供する。
【解決手段】 検出用成分としてアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを含有した試験用食品と、前術の成分に反応する指示薬とからなる咀嚼判定用キットとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトの咀嚼能力の評価を行うための咀嚼判定用キット及びそれを用いた咀嚼判定方法に関する。
【0002】
良好な咀嚼は生命活動を維持するために必要不可欠な基本行動であることは言及するまでもない。咀嚼は単に食物を切断・粉砕・混合し嚥下しやすくするのみでなく、口腔内を刺激することにより各臓器の消化液の分泌を促進し口腔内の自浄を行い、また、食物と共に口腔内に侵入した異物の除去等の役割がある。また咀嚼に障害がある場合はその原因として口腔内の種々の疾患が原因となっているわけで、例えば、う蝕・歯周病・額関節異常・義歯・咬合不適等が考えられる。従って、良好な咀嚼ができていなければ口腔内の異常・疾患が想定されるから、それの治療をせねばならない。
【0003】
この症状は、そのまま放置すれば口腔内の疾患は全身へと波及し生命活動の維持を不安定・危うくするものであると言っても過言ではない。従って、良好な咀嚼ができているか否かを簡便かつ的確な手段により早期に把握しうることは、直接的かつ間接的に生命維持活動にも影響を及ぼすのである。従来、被験者の咀嚼機能を評価する代表的な方法としては、下記に記載するようなものがあった。
【0004】
1. 嚼機判定法として例えば3gの乾燥ピーナッツを一定の時間咀嚼をした後、蒸留水を口腔内に含ませ、口腔内の残留ピーナッツ粉砕塊および歯の表面残留ピーナッツ粉砕塊等を全て回収し、回収したピーナッツ粉砕塊の粒子を規定された(例えば10メッシュの)篩上に移し、流水下で洗浄、篩上に残留した当該粒子を回収し、これを恒温乾燥器で一定時間・一定温度のもとで乾燥させた後、秤量し全量に対する篩を通過した重量の割合を算出し、これを咀嚼値として、予め集めておいたデータと比較して咀嚼能力を判定する方法がある。方法は咀嚼で多くを占める粉砕・混合といった咀嚼機能を判定することができる方法として有意義であるが、内容が複雑多岐にわたり短時間に簡便に咀嚼機能を測定できない。
【0005】
2. 咀嚼判定として変色チューインガムを用いた方法もある(例えば、特許文献1参照。)。咀嚼前は当該ガムに僅かに配合されている酸によりガムは酸性に傾いていることで緑色となっている。これを咀嚼し噛むことで唾液と混ざり、中和が進むに従って緑色からオレンジ色から赤色と変化していくことを咀嚼判定に用いたものである。この方法は咀嚼で不可欠な混合における咀嚼機能を判定することには有意義であり、短時間での判定、簡便性については利点が多い。しかしながら、定量性という点に関しては不十分である。
【0006】
3. 咀嚼することにより流出する色素等を含んだグミゼリーを咀嚼後に分光光度計を用いた比色法により測定する方法がある。この方法も混合段階での咀嚼機能の判定には有効であるが、分光光度計のような高価な測定機器が必要であり、何時でも、何処でもできるという試験ではない(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
4. 咀嚼判定法において機械的な検査法としては、直接、口腔内に各種センサを装着して咀嚼力の計測を行う方法と(例えば、特許文献3参照。)、咀嚼に用いる筋の活動や顎の動きから間接的に計測を行う方法がある(例えば、特許文献4参照。)。しかし、センサを口腔内に保持しなければならず、実際の咀嚼効果の評価は不可能である。また噛み締めの計測においても呼吸等の妨げになるため、フィールドでの身体運動時の計測には不向きである。間接的に計測を行う方法は、これには顎の動きを計測する方法と、顎運動をつかさどる咀嚼筋の活動に着目する方法があるが、顎運動の計測は咀嚼や発声に伴う顎の動きや閉口状態と噛み締め時の判別が困難なため、咀嚼、噛み締めの計測には適当ではない。更に、これらも特殊で高価な計測機器が必要であり咀嚼評価を簡便に行うこともできない。
【特許文献1】特開平02-308759号公報
【特許文献2】特開平06-167452号公報
【特許文献3】特開2001-178706号公報
【特許文献4】特開2004-033494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、前記従来の咀嚼評価方法のそれぞれの欠点を解決することを課題とした。即ち、従来の咀嚼評価方法に欠けていた広義の咀嚼判定に不可欠な要素として、咀嚼を判定するための成分が含まれた試験用食品を用いると、咀嚼の度合により成分の浸出具合に差が現れ、それを特殊な高価な機器を用いることなく、簡便な方法で測定できるような咀嚼評価方法の構築、並びに咀嚼判定キットの提供を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、検出用の成分を含有した試験用食品と、それぞれの成分に対応する指示薬を利用することで、咀嚼具合いの検査を簡単に行うことができる咀嚼判定キットを開発した。
【0010】
即ち本発明は、検出用成分としてアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを含有した試験用食品と、前述の成分に反応する指示薬とからなる咀嚼判定用キットである。そしてその判定方法は、検出用成分としてアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを含有した試験用食品を被験者に咀嚼させた後、前述の成分に反応する指示薬によって被験者の唾液中のアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体、及び/またはエタノールの濃度を検出することを特徴とする咀嚼判定方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る咀嚼判定用キットは、従来の咀嚼判定方法と比較して操作及び方法が簡便であり、特別な高価な測定器を使用しないため何時でも何処でも行うことができ、しかもある程度定量的な結果も得ることが可能というユニークで優れた咀嚼判定用キットである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る咀嚼判定用キットは検出用成分としてアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを含有した試験用食品と、前述の成分に反応する指示薬とから構成される。試験用食品は、後述する試薬によって検出可能な成分であるアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体、及び/またはエタノールを安定な状態で含有させることが可能であり、咀嚼可能な食品が使用される。例えば、グミやガム等の柔らかい食感のもの。繊維を含んだグミやウエハス等のようなやや硬い食感のもの。ビスケット,タブレット,煎餅等のような硬い食感のものが挙げられる。
【0013】
試験用食品にはアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体,及び/又はエタノールを検出用の成分として含有させておく。特にアスコルビン酸,アスコルビン酸誘導体は、咀嚼が確実に行えているかを手軽に判定するため本キット上の重要な要素である。アスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体が試験用食品の一定回数、あるいは一定時間の咀嚼により口中に放出され、その後、口腔内をアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体と反応する指示薬を含む測定検査紙等により測定し、その検出結果により咀嚼の度あいが分かるという原理である。測定はエタノールを含有させエタノールに反応する指示薬を用いても行うことができ、アスコルビン酸とエタノールを組み合わせることもできる。
【0014】
アスコルビン酸は酸化や変性が起き易く安定性に欠ける物質のため、以前からアスコルビン酸の誘導体が作られ、多用されている。本発明においてもアスコルビン酸の代わりにアスコルビン酸誘導体を用いることは何ら差し支えない。
【0015】
本発明に使用されるアスコルビン酸誘導体としては、アスコルビン酸ナトリウム,アスコルビン酸カルシウム,アスコルビン酸カリウム,アスコルビン酸マグネシウム,イソアスコルビン酸,イソアスコルビン酸ナトリウム,アスコルビン酸リン酸エステル,アスコルビン酸ステアリン酸エステル,アスコルビン酸2-リン酸エステル3-ナトリウム,アスコルビン酸パルミチン酸エステル,アラボアスコルビン酸,アスコルビン酸2-グルコシド,リン酸アスコルビルマグネシウム等が挙げられ、いずれを用いても構わない。なお、アスコルビン酸はL体、D体のどちらも用いることができ、また2種類以上を使用しても差し支えない。
【0016】
アスコルビン酸誘導体として例えば安全・安定型ビタミンC(製品名:AA-2G)《株式会社アスコルバイオ研究所》や(製品名:アスコフレッシュ)《林原商事株式会社》がある。安全・安定型ビタミンCは従来の不安定なビタミンCの水酸基をグルコース化したもので、咀嚼判定材料として当該材料に内在させておいても長期的に安定である。また安全・安定型ビタミンCは製造の際、熱にも安定であるので使用し易いといった利点もある。安全・安定型ビタミンCは酵素であるマルターゼ及び/またはpH3以下の酸でグルコースとビタミンCに加水分解する。唾液にもマルターゼを含有している。咀嚼判定キットとして、安全・安定型ビタミンCを内在させた咀嚼判定材料を咀嚼することで唾液中のマルターゼと安全・安定型ビタミンCがふれることで加水分解がおこりビタミンCが放出される。この放出されたビタミンCをビタミンC試験紙《例えば株式会社共立理化学研究所製》の変色の度合いにより検出することで、当該咀嚼判定キットの擬似食物がどれ位咀嚼され唾液と混和できたかで咀嚼を判定するのである。
【0017】
アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、エタノールはその含有量の合計が試験用食品中に0.05〜10重量%であることが好ましい。0.05重量%より少ないと指示薬による判定が明確とならない傾向があり、10重量%を超えて配合すると咀嚼判定の精度が下がり、味覚も低下する。また食品の保存安定性が悪くなる。
【0018】
アスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを試験用食品に配合するには、そのまま試験用食品中に混合させても良いが、マイクロカプセルを利用して各成分を食品内部に分散させることもできる。特にグミやゼリー等の水分を多く含有する試験用食品中にアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体をそのままの状態で配合すると食品中に溶解して、短期間で酸化や失活をおこしてしまうためマイクロカプセルや後述する顆粒の状態で含有させることがより好ましい。
【0019】
マイクロカプセル形成法には、界面重合法,in situ重合法,液中硬化被覆法,相分離法,コアセルベーション法,スプレードライニング法等が挙げられるがいずれでも差し支えない。
【0020】
アスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを試験用食品に配合するには、そのまま試験用食品中に混合させても良いが、マイクロカプセルを利用して各成分を食品内部に分散させることもできる。特にグミやゼリー等の水分を多く含有する試験用食品中にアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体をそのままの状態で配合すると食品中に溶解して、短期間で酸化や失活をおこしてしまうため顆粒内部に含有させることがより好ましい。具体的には水分を含まない固形状の食品中にアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを配合し、この食品を細かく砕いてから試験用食品中に配合する方法である。
【0021】
顆粒を形成する方法は、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを含んだ食品を、造粒器等で圧縮成型法や加圧押し出し法、打ち抜き法等で顆粒を作る方法、また粉末原料を大きめのタブレットやペレットの塊や板状に形成し、それを破砕したり、打ち抜いて顆粒を形成する方法等が使用できる。
【0022】
アスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを含むマイクロカプセルや顆粒はその粒径が0.05〜3mmの大きさであることが好ましい。0.05mmより小さいと粒子が咀嚼により壊れにくいため成分が出にくくなり、逆に3mmより大きいとわずかの咀嚼で成分が浸出し易く、いずれも咀嚼判定材として咀嚼の検出が難しくなる虞がある。
【0023】
その他、本発明に係る咀嚼判定用キットの試験用食品には、従来から口腔用の組成物に広く用いられている各種の緩衝剤,甘味料,着色剤,保存料,防腐剤,防カビ剤,pH調整剤,香料等の添加剤も適宜配合することもできる。
【0024】
本発明に係る咀嚼判定用キットに用いる指示薬としては,アスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体の指示薬としては、アスコルビン酸の還元力を利用し、酸化還元指示薬の色変化を観察可能な指示薬を挙げることができる。アスコルビン酸の定量としては、2,6ジクロロフェノールインドフェノールを用いた定量法が一般的な試験法であるが、その他、メチレンブルー,メチルビオロゲン,トルイジンブルー,フェノサフラニン,インジゴテトラスルホン酸,ジフェニルアミン,ジフェニルベンジジン,ジフェニルアミンスルホン酸,フェロイン,エルオグラウシンA,メチルフェロイン等の各種酸化還元指示薬が使用できる。検出方法としては、溶液による滴定法の他、予め既知のアスコルビン酸濃度を測定した変色指示薬の色見本と比較する比色法や、その応用でろ紙等に変色指示薬を含浸させたものを使用する検査紙法等が挙げられ、いずれでも差し支えないが、本発明の特徴である簡便な評価という観点からは検査紙法がより好ましい。
【0025】
本発明に係る咀嚼判定用キットに用いる指示薬としてエタノールの指示薬としては、半導体センサを用いる方法,ガスクロマトグラフィーを用いる法,検出用試験紙を用いる方法等が挙げられ、いずれでも差し支えないが、本発明の特徴である簡便な測定という観点からは検出用試験紙を用いる検査紙法が好ましい。エタノール検出用試験紙には酵素法と呼ばれる方法が一般的に使用されており、これはエタノールを検知できる酵素(アルコールデヒドロゲナーゼ,アルコールオキシダーゼ等)と適当な発色試薬(フェリシアン化合物,ホルマザン色素等)を濾紙等に含浸させておき、エタノールと酵素の反応時に色素が酸化還元され変色することを利用したものである。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0027】
<実施例1>
『試験用食品1』
ゼラチン 24.3g
水 73g
キシリトール 1g
レモンフレーバー 0.6g
サッカリン 0.1g

上記材料を加熱しながら均一に溶解する。アスコルビン酸含有顆粒※11gを均一になるように攪拌しながら加え、1gずつ型にとり室温で冷却し、グミ状の試験用食品1とした。
【0028】
<実施例2>
『試験用食品2』
ゼラチン 40g
水 53.3g
キシリトール 1g
麦ファイバー4g
ミントフレーバー0.6g
サッカリン0.1g

上記材料を実施例1と同様の方法で加工してグミ状の試験用食品2とした。
【0029】
<実施例3>
『試験用食品3』
マンニトール 58.8g
ソルビトール18g
キシリトール 2g
カルボキシメチルセルロースナトリウム 15g
シュガーエステル 4g
サッカリン 0.3g
ミントフレーバー 0.9g

上記材料を均一になるように攪拌混合し、アスコルビン酸含有顆粒※11gを加えて軽く攪拌し、1gずつ加圧器にて加圧して固形状の試験用組成物3とした。
【0030】
※1アスコルビン酸含有顆粒』
L−アスコルビン酸 30重量%
マルチトール 50重量%
ソルビトール 10重量%
カルボキシメチルセルロース 7重量%
シュガーエステル 3重量%

上記の配合を攪拌混合し、加圧器にて加圧して固形物を作り、それを約1mm位の大きさに細かく砕いて「アスコルビン酸含有顆粒」とした。
【0031】
<実施例4>
『試験用食品4』
寒天 23g
水 69g
キシリトール 4g
ショ糖 2.4g
レモンフレーバー 0.6g

上記材料を加熱しながら均一に溶解する。L−アスコルビン酸内包マイクロカプセル※21gを均一になるように攪拌しながら加え、1gずつ型にとり室温で冷却し、グミ状の試験用食品4とした。
【0032】
<実施例5>
『試験用食品5』
ゼラチン 20.8g
水 70.2g
キシリトール 5g
ブルーベリーフレーバー 1.5g
ショ糖 1.5g

上記材料を実施例4と同様の方法で加工してグミ状の試験用食品5とした。
【0033】
<実施例6>
『試験用食品6』
ゼラチン 49g
水 40g
キシリトール 5g
ピートファイバー 4g
ブルーベリーフレーバー 0.4g
ショ糖 0.6g

上記材料を実施例4と同様の方法で加工してグミ状の試験用食品6とした。
【0034】
<実施例7>
『試験用食品7』
マンニトール 66.2g
ソルビトール 10g
キシリトール 2g
でんぷん 15g
シュガーエステル 3g
ショ糖1.3g
ブルーベリーフレーバー 0.7g

上記材料を均一になるように攪拌混合し、L−アスコルビン酸内包マイクロカプセル※2)1.8gを加えて軽く攪拌し、1gずつ加圧器にて加圧して固形状の試験用食品7とした。
【0035】
※2L−アスコルビン酸含有マイクロカプセル』
シソ油1gに、L−アスコルビン酸 2gを加えて攪拌し、1重量%アルギン酸ナトリウム水溶液8g中に混入、これを攪拌した状態で1重量%塩化カルシウム水溶液中にピペットにより滴下する。形成した小球体を回収し、風乾してL−アスコルビン酸内包マイクロカプセルとした。
【0036】
<実施例8>
『試験用食品8』
寒天 20g
水 70.4g
キシリトール 5g
オレンジフレーバー 1.5g
ショ糖 1.5g

上記材料を加熱しながら均一に溶解する。L−アスコルビン酸ナトリウム内包マイクロカプセル※31.6gを均一になるように攪拌しながら加え、1gずつ型にとり室温で冷却し、グミ状の試験用食品8とした。
【0037】
<実施例9>
『試験用食品9』
寒天 37g
水 49.4g
キシリトール 5g
大麦ファイバー 4g
オレンジフレーバー 1.5g
ショ糖 1.5g

上記材料を実施例8と同様の方法で加工してグミ状の試験用食品9とした。
【0038】
<実施例10>
『試験用食品10』
マルチトール 66g
エリスリトール 10g
キシリトール 2g
でんぷん 15g
シュガーエステル 3g
ショ糖 1.4g
オレンジフレーバー 1g

上記材料を均一になるように攪拌混合し、約1mmに砕いたL−アスコルビン酸ナトリウム内包マイクロカプセル※3)1.6gを加えて軽く攪拌し、1gずつ加圧器にて加圧して固形状の試験用食品10とした。
【0039】
L−アスコルビン酸ナトリウム内包マイクロカプセル』
サフラワー油1gに、L−アスコルビン酸ナトリウム 2gを加えて攪拌し、1重量%アルギン酸ナトリウム水溶液8g中に混入、これを攪拌した状態で、1重量%塩化カルシウム溶液中にピペットにより滴下する。形成した小球体を採取し、風乾してL−アスコルビン酸ナトリウム含有マイクロカプセルとした。
【0040】
<実施例11>
『試験用食品11』
ゼラチン 20g
水 64.3g
グリセリン 10g
キシリトール 3g
レモンフレーバー 1g
サッカリン0.2g

上記材料を加熱しながら均一に溶解し、約1mmほどの大きさに細かく砕いたL−アスコルビン酸―エタノール含有顆粒※4)1.5gを均一になるように攪拌しながら加え、1gずつ型にとり室温で冷却し、グミ状の試験用食品11とした。
【0041】
<実施例12>
『試験用食品12』
ゼラチン 40g
水 48.8g
キシリトール 4.5g
トウモロコシファイバー 4g
レモンフレーバー 1g
サッカリン0.2g

上記材料を実施例12と同様の方法で加工してグミ状の試験用食品12とした。
【0042】
<実施例13>
『試験用食品13』
マルチトール 58.5g
エリスリトール 15g
キシリトール 5g
でんぷん 15g
シュガーエステル 4g
サッカリン0.3g
ミントフレーバー0.7g

上記材料を均一になるように攪拌混合し、約1mmに砕いたL−アスコルビン酸―エタノール含有顆粒※41.5gを加えて軽く攪拌し、1gずつ加圧器にて加圧して固形状の試験用食品13とした。
【0043】
※4L−アスコルビン酸―エタノール含有顆粒』
L−アスコルビン酸30g、マルチトール47g、ソルビトール10g、カルボキシメチルセルロース7g、シュガーエステル3g、を均一になるように攪拌混合し、エタノール3gを加えてふたたび攪拌混合し、加圧器にて加圧して固形物を作り、それを約1mmの大きさに細かく砕きアスコルビン酸―エタノール含有顆粒とした。
【0044】
《L−アスコルビン酸指示薬と測定方法》
各試験用食品を、咀嚼回数5回と30回咀嚼した後、回収用容器に唾液とともに回収し、さらに蒸留水5mLを含んで口腔内をうがいした後、これも回収用容器に回収した。
市販のビタミンC試験紙TPA-VC(共立理化学)を用いて回収用容器の咀嚼残渣のサンプルに15秒間浸した後引出し、1分後に標準色と比較して、類似色の数値をL−アスコルビン酸の簡易的定量値とした。
【0045】
《エタノール指示薬と測定方法》
上記L−アスコルビン酸指示薬と測定方法とは別に行った。各疑似食品を、咀嚼回数5回と30回咀嚼した後、回収用容器に唾液とともに回収し、さらに蒸留水5mLを含んで口腔内をうがいした後、これも回収用容器に回収した。市販のエタノール試験紙(商品名 Saliva Alcohol Test:Accuracy-One社製)を回収用容器の咀嚼残渣のサンプルに15秒間浸した後引出し、2分後に標準色と比較して、類似色の数値をエタノール量の簡易的定量値とした。
【0046】
試験結果を表1にまとめて示す。
<表1> 試験結果

【0047】
アスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体は、市販の検査紙の色変化を見るだけの簡便な試験方法なので濃度の数値は大雑把な結果であるが、咀嚼の程度でアスコルビン酸の浸出量にも差がでることが示された。エタノールは、実施例11〜13に含まれている。アスコルビン酸と同様に、30回咀嚼時はいずれも高いエタノールを示し咀嚼が良好であることが確認できる。また、5回咀嚼後では30回咀嚼時よりも明らかにエタノール量が少ないので、エタノールの場合も咀嚼の程度で検出量に差が出ることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出用成分としてアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを含有した試験用食品と、前術の成分に反応する指示薬とからなる咀嚼判定用キット。
【請求項2】
試験用食品中のアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールが、その粒径が0.05〜3mmのマイクロカプセル内に含まれている請求項1に記載の咀嚼判定用キット。
【請求項3】
試験用食品中のアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールが、その粒径が0.05〜3mmの顆粒内に含まれている請求項1または2に記載の咀嚼判定用キット。
【請求項4】
試験用食品中に含まれる、アスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールの量が、0.05〜10重量%である請求項1ないし3の何れか一項に記載の咀嚼判定用キット。
【請求項5】
検出用成分としてアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを含有した試験用食品を被験者に咀嚼させた後、前述の成分に反応する指示薬によって被験者の唾液中のアスコルビン酸及び/またはアスコルビン酸誘導体,及び/またはエタノールを検出することを特徴とする咀嚼判定方法。

【公開番号】特開2009−47604(P2009−47604A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215138(P2007−215138)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】