説明

哺乳動物における新規トランスポータータンパク質およびその利用

【課題】哺乳動物における有機カチオン(OC)排泄の最終段階を担う輸送体タンパク質の実体を同定するとともに、有機カチオン(OC)輸送を測定するアッセイ系を構築する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列からなり、細胞膜、または膜小胞においてトランスポーター活性を有するポリペプチドを含有する脂質膜を提供する。更に該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを備える脂質膜を作製するためのキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における新規トランスポータータンパク質およびその利用に関するものであり、より詳細には、薬物および/または老廃物の排出最終段階を司る新規有機カチオントランスポータータンパク質ならびにその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物は、環境中の毒物および/または代謝排泄物を処理しなければならず、ヒトでは特に、非常に多岐にわたる構造の薬物などを処理しなければならない。哺乳動物において、これらの毒性を有する有機化合物は、主に腎臓および/または肝臓を介して排泄されている。腎臓での排泄は糸球体での濾過および尿細管での分泌によって行われている。毒性を有する有機化合物は、尿細管細胞の血管側膜にて取り込まれ、尿細管細胞の刷子縁膜側にて排泄されている(非特許文献1〜7を参照のこと)。肝細胞もまた、毒性を有する有機化合物を類洞にて吸収して、これらを毛細胆管に排泄している(非特許文献1〜7を参照のこと)。
【0003】
これまで非常に多くの生化学的研究または生物学的研究によって、特定の輸送体が有機カチオン(OC)の排泄の最終段階を担っているであろうということが明らかになっており、electroneutralなプロトンとOCとの交換輸送を仲介するOC輸送体の存在が示唆されている(非特許文献5〜7を参照のこと)。この推定の輸送体は、カチオン性薬物を含む広範な種々のOC、数種のビタミン、または生体内在性化合物(例えば、コリンまたはドーパミンなど)を認識するので、多剤認識性の排泄輸送体であると考えられている。
【0004】
これまでトランスポーターの実体は知られておらず、その分子実体を同定するために既知の腎臓トランスポーターのホモログが探索されていた。しかし、目的の機能を発揮する分子(タンパク質)が同定されるには至っていない。すなわち、具体的にどのような分子が有機カチオン(OC)の排泄の最終段階を担う輸送体タンパク質として存在するのかは全く不明であり、具体的な分子の同定が望まれていた。
【0005】
本発明者らは、目的の機能を有するタンパク質のファミリーが細菌(バクテリア)から哺乳動物まで保存されているのではないかと考え、バクテリアにおいて多剤排泄ポンプとして機能するタンパク質のオルソログが哺乳動物に存在し、このオルソログが哺乳動物でのOCの排泄を担っていると想定した。
【0006】
バクテリアの多剤排泄ポンプは、いくつかのグループ(例えば、major facilitator superfamily(MSF)、small multidrug resistance(SMR)ファミリー、resistance modulation cell division(RND)ファミリー、ATP binding cassette(ABC)ファミリー、およびmultidrug and toxin extrusion(MATE)ファミリー)に分類されている(非特許文献8〜10を参照のこと)。
【0007】
本発明者らは、独自の観点からデータベース上で検索した結果、MATEファミリータンパク質に分類されそうなタンパク質をコードする遺伝子が哺乳動物に存在することを見出した(非特許文献11を参照のこと)。
【非特許文献1】Pritchard, J. B. and Miller, D. S. (1993) Physiol. Rev.: 73, 765-96
【非特許文献2】Ullrich, K. J. (1994) Biochim. Biophys. Acta: 1197, 45-62
【非特許文献3】Oude Elferink, R. P., et al. (1995) Biochim. Biophys. Acta: 1241, 215-68
【非特許文献4】Koepsell, H. (1998) Annu. Rev. Physiol.: 60, 243-66
【非特許文献5】Inui, K. I. Et al., (2000) Kidney Int.: 58, 944-58
【非特許文献6】Wright, S. H. and Dantzler, W. H. (2004) Physiol. Rev.: 84, 987-1049
【非特許文献7】Koepsell, H. (2004) Trends Pharmacol. Sci.: 25, 375-81
【非特許文献8】Brown, M. H. et al. (1999) Mol. Microbiol.: 31, 394-5
【非特許文献9】Putman, M. et al. (2000) Microbiol. Mol. Biol. Rev.: 64, 672-93
【非特許文献10】Hvorup, R. N. et al. (2003) Eur. J. Biochem.: 270, 799-813
【非特許文献11】Genbankアクセッション番号AK001709
【非特許文献12】Ito, W. et al. (1991) Gene: 1002, 67-70
【非特許文献13】Morimoto, R. et al. (2003) J. Neurochem.84: 382-91
【非特許文献14】Tamai, I. Et al. (1997) FEBS Lett.: 419, 107-11
【非特許文献15】Morita, Y. et al. (1998) Antimicrob. Agents Chemother.: 42, 1778-82
【非特許文献16】Smith, A. C. et al. (1986) Am. J. Med. Genet.: 24, 393-414
【非特許文献17】Bi, W. et al. (2002) Genome Res.: 12, 713-28
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献11に記載の遺伝子による推定のアミノ酸配列は、MATEファミリーのプロトタイプである、ビブリオ菌のNa依存性多剤排泄輸送体NorMとの配列相同性が非常に低く、MATEファミリータンパク質に分類されるとは容易に想像できない。
【0009】
また、MATEファミリーは、最近分類分けされた多剤耐性獲得タンパク質の一群であり、そのいくつかが、バクテリアにおいてHまたはNa依存的カチオン性薬物を排泄することが知られているのみである。すなわち、MATEファミリー全体の特性は依然として解明されていないばかりか、目的のタンパク質が哺乳動物でのMATEファミリータンパク質であることを確認するためのアッセイ系もなかった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、MATEファミリータンパク質であることを確認するためのアッセイ系を確立し、哺乳動物でのMATEファミリータンパク質を見出すとともに、その機能を利用した技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る脂質膜は、以下のポリペプチドを含有していることを特徴としている:配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド。
【0012】
本発明に係る脂質膜は、天然由来の脂質膜であっても人工の脂質膜であってもよく、天然由来の脂質膜である場合は、細胞膜または膜小胞であることが好ましく、人工の脂質膜である場合は、脂質平面膜またはリポソームであることが好ましい。
【0013】
本発明に係る形質転換体は、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド、をコードするポリヌクレオチドが導入されていることを特徴としている。
【0014】
本発明に係る形質転換体において、上記ポリペプチドは、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、あるいは配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列の1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドであってもよい。
【0015】
本発明に係る形質転換体において、上記ポリペプチドはまた、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、あるいは配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドによってコードされかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドであってもよい。
【0016】
本発明に係る形質転換体において、上記ポリペプチドはまた、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、あるいは配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の相同性を有するポリヌクレオチドによってコードされかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドであってもよい。
【0017】
本発明に係るリポソーム組成物は、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド含有していることを特徴としている。
【0018】
本発明に係るリポソーム組成物において、上記ポリペプチドは、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、あるいは配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列の1または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドであってもよい。
【0019】
本発明に係るリポソーム組成物において、上記ポリペプチドはまた、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、あるいは配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドによってコードされかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドであってもよい。
【0020】
本発明に係るリポソーム組成物において、上記ポリペプチドはまた、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、あるいは配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと80%以上の相同性を有するポリヌクレオチドによってコードされかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドであってもよい。
【0021】
本発明に係るリポソーム組成物は、H−ATPaseタンパク質をさらに含有していてもよい。なお、H−ATPaseタンパク質は、細胞内のプロトンを細胞外へ能動的に輸送するタンパク質であって、プロトンポンプとも称される。
【0022】
本発明に係る脂質膜作製方法は、上記脂質膜を作製するために、下記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでいるベクターを用いる工程を包含することを特徴としている:配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド。
【0023】
本発明に係る脂質膜作製キットは、上記脂質膜を作製するために、下記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでいるベクターを備えていることを特徴としている:配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド。
【0024】
本発明に係る試験方法は、薬剤の腎毒性および/または肝毒性を試験するために、上記の脂質膜を、評価すべき薬剤とともにインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0025】
本発明に係る試験方法は、上記インキュベートする工程において、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンを共存させることが好ましい。
【0026】
本発明に係る試験方法は、薬剤の腎毒性および/または肝毒性を試験するために、上記形質転換体を細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質とともにインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0027】
本発明に係る試験方法において、上記基質は、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンであることが好ましい。
【0028】
本発明に係る試験方法は、薬剤の腎毒性および/または肝毒性を試験するために、上記リポソーム組成物を細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質とともにインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0029】
本発明に係る試験方法において、上記基質は、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンであることが好ましい。
【0030】
本発明に係る試験キットは、薬剤の腎毒性および/または肝毒性を試験するために、上記の脂質膜を備えていることを特徴としている。
【0031】
本発明に係る試験キットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの少なくとも1つをさらに備えていてもよい。
【0032】
本発明に係る試験キットは、薬剤の腎毒性および/または肝毒性を試験するために、上記形質転換体を備えていることを特徴としている。
【0033】
本発明に係る試験キットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの少なくとも1つをさらに備えていることが好ましい。
【0034】
本発明に係る試験キットは、薬剤の腎毒性および/または肝毒性を試験するために、上記リポソーム組成物を備えていることを特徴としている。
【0035】
本発明に係る試験キットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの少なくとも1つをさらに備えていることが好ましい。
【0036】
本発明に係るスクリーニング方法は、細胞膜における物質輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、上記の脂質膜を候補因子とともにインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0037】
本発明に係るスクリーニング方法において、上記物質輸送は、ニコチン、メラトニンまたはステロイドホルモンの輸送、あるいは薬物および/または老廃物の排泄であることが好ましい。
【0038】
また、本発明に係るスクリーニング方法は、上記インキュベートする工程において、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンを共存させることが好ましい。
【0039】
本発明に係るスクリーニング方法は、薬物および/または老廃物の排泄を調節する薬剤をスクリーニングするために、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質とともに上記の形質転換体をインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0040】
本発明に係るスクリーニング方法において、上記基質は、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンであることが好ましい。
【0041】
本発明に係るスクリーニング方法は、薬物および/または老廃物の排泄を調節する薬剤をスクリーニングするために、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質とともに上記のリポソーム組成物をインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0042】
本発明に係るスクリーニング方法において、上記基質は、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンであることが好ましい。
【0043】
本発明に係るスクリーニング方法は、ニコチンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質とともに上記の形質転換体をインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0044】
本発明に係るスクリーニング方法において、上記基質は、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンであることが好ましい。
【0045】
本発明に係るスクリーニング方法は、ニコチンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質とともに上記のリポソーム組成物をインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0046】
本発明に係るスクリーニング方法において、上記基質は、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンであることが好ましい。
【0047】
本発明に係るスクリーニング方法は、メラトニンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質とともに上記の形質転換体をインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0048】
本発明に係るスクリーニング方法において、上記基質は、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンであることが好ましい。
【0049】
本発明に係るスクリーニング方法は、メラトニンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質とともに上記のリポソーム組成物をインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0050】
本発明に係るスクリーニング方法において、上記基質は、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンであることが好ましい。
【0051】
本発明に係るスクリーニング方法は、ステロイドホルモンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質とともに上記の形質転換体をインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0052】
本発明に係るスクリーニング方法において、上記基質は、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンであることが好ましい。
【0053】
本発明に係るスクリーニング方法は、ステロイドホルモンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質とともに上記のリポソーム組成物をインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0054】
本発明に係るスクリーニング方法において、上記基質は、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンであることが好ましい。
【0055】
本発明に係るスクリーニングキットは、細胞膜における物質輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、上記の脂質膜を備えていることを特徴としている。
【0056】
本発明に係るスクリーニングキットにおいて、上記物質輸送は、ニコチン、メラトニンまたはステロイドホルモンの輸送、あるいは薬物および/または老廃物の排泄であることが好ましい。
【0057】
また、本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンをさらに備えていてもよい。
【0058】
本発明に係るスクリーニングキットは、薬物および/または老廃物の排泄を調節する薬剤をスクリーニングするために、上記形質転換体を備えていることを特徴としている。
【0059】
本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの少なくとも1つをさらに備えていることが好ましい。
【0060】
本発明に係るスクリーニングキットは、薬物および/または老廃物の排泄を調節する薬剤をスクリーニングするために、上記リポソーム組成物を備えていることを特徴としている。
【0061】
本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの少なくとも1つをさらに備えていることが好ましい。
【0062】
本発明に係るスクリーニングキットは、ニコチンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、上記形質転換体を備えていることを特徴としている。
【0063】
本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの少なくとも1つをさらに備えていることが好ましい。
【0064】
本発明に係るスクリーニングキットは、ニコチンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、上記リポソーム組成物を備えていることを特徴としている。
【0065】
本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの少なくとも1つをさらに備えていることが好ましい。
【0066】
本発明に係るスクリーニングキットは、メラトニンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、上記の形質転換体を備えていることを特徴としている。
【0067】
本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの少なくとも1つをさらに備えていることが好ましい。
【0068】
本発明に係るスクリーニングキットは、メラトニンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、上記のリポソーム組成物を備えていることを特徴としている。
【0069】
本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの少なくとも1つをさらに備えていることが好ましい。
【0070】
本発明に係るスクリーニングキットは、ステロイドホルモンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、上記の形質転換体を備えていることを特徴としている。
【0071】
本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの少なくとも1つをさらに備えていることが好ましい。
【0072】
本発明に係るスクリーニングキットは、ステロイドホルモンの輸送を調節する薬剤をスクリーニングするために、上記のリポソーム組成物を備えていることを特徴としている。
【0073】
本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの少なくとも1つをさらに備えていることが好ましい。
【0074】
本発明に係るスクリーニング方法は、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質をスクリーニングするために、上記の脂質膜を候補因子とともにインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0075】
また、本発明に係るスクリーニング方法は、上記インキュベートする工程において、テトラエチルアンモニウム(TEA)または1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)を共存させることが好ましい。
【0076】
本発明に係るスクリーニング方法は、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質をスクリーニングするために、上記形質転換体をテトラエチルアンモニウム(TEA)または1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)とともにインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0077】
本発明に係るスクリーニング方法は、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質をスクリーニングするために、上記リポソーム組成物をテトラエチルアンモニウム(TEA)または1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)とともにインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0078】
本発明に係るスクリーニングキットは、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質をスクリーニングするために、上記の脂質膜を備えていることを特徴としている。
【0079】
また、本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)または1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)をさらに備えていてもよい。
【0080】
本発明に係るスクリーニングキットは、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質をスクリーニングするために、上記形質転換体を備えていることを特徴としている。
【0081】
本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)または1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)をさらに備えていることが好ましい。
【0082】
本発明に係るスクリーニングキットは、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質をスクリーニングするために、上記リポソーム組成物を備えていることを特徴としている。
【0083】
本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)または1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)をさらに備えていることが好ましい。
【0084】
本発明に係るスクリーニング方法は、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドに対する阻害剤または活性増強剤をスクリーニングするために、上記形質転換体を候補化合物とインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0085】
本発明に係るスクリーニングキットは、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドに対する阻害剤または活性増強剤をスクリーニングするために、上記形質転換体を備えていることを特徴としている。
【0086】
本発明に係るスクリーニング方法は、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドに対する阻害剤または活性増強剤をスクリーニングするために、上記リポソーム組成物を候補化合物とインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
【0087】
本発明に係るスクリーニングキットは、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドに対する阻害剤または活性増強剤をスクリーニングするために、上記リポソーム組成物を備えていることを特徴としている。
【0088】
本発明に係る診断方法は、細胞膜における物質輸送異常に起因する疾患を診断するために、下記ポリヌクレオチドのフラグメントまたはその相補配列でありかつ連続する少なくとも12塩基からなるオリゴヌクレオチドを、生物学的サンプルから調製したmRNAとハイブリダイズさせる工程を包含することを特徴としている:
・配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
・配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列の1個または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド;
・配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;または
・配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列と少なくとも80%同一である塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【0089】
本発明に係る診断方法は、上記オリゴヌクレオチドが配列番号11〜18のいずれか1つに示される塩基配列からなることが好ましい。
【0090】
本発明に係る診断キットは、細胞膜における物質輸送異常に起因する疾患を診断するために、下記ポリヌクレオチドのフラグメントまたはその相補配列でありかつ連続する少なくとも12塩基からなるオリゴヌクレオチドを備えていることを特徴としている:
・配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
・配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列の1個または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド;
・配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;または
・配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列と少なくとも80%同一である塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【0091】
本発明に係る診断キットは、上記オリゴヌクレオチドが配列番号11〜18のいずれか1つに示される塩基配列からなることが好ましい。
【0092】
本発明に係る診断方法は、細胞膜における物質輸送異常に起因する疾患を診断するために、下記ポリペプチドと特異的に結合する抗体を、生物学的サンプルとインキュベートする工程を包含することを特徴としている:
・配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは
・配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド。
【0093】
本発明に係る診断方法において、上記抗体は、配列番号19または配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるペプチドによって惹起されることが好ましい。
【0094】
本発明に係る診断方法は、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドが寄与する物質輸送異常に起因する疾患を診断するために、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いる工程を包含し、ここで、該ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド、であることを特徴としている。
【0095】
本発明に係る診断キットは、細胞膜における物質輸送異常に起因する疾患を診断するために、下記ポリペプチドと特異的に結合する抗体を備えていることを特徴としている:
・配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは
・配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド。
【0096】
本発明に係る診断キットにおいて、上記抗体は、配列番号19または配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるペプチドによって惹起されることが好ましい。
【0097】
本発明に係る診断用キットは、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドが寄与する物質輸送異常に起因する疾患を診断するために、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体を備えており、ここで、該ポリペプチドは、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド、であることを特徴としている。
【0098】
本発明に係るポリペプチドは、配列番号22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいは配列番号22に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド、であることを特徴としている。
【0099】
本発明に係るポリヌクレオチドは、上記ポリペプチドをコードすることを特徴としている。
【0100】
また、本発明に係るポリヌクレオチドは、配列番号21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;配列番号21に示される塩基配列の1個または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド;配列番号21に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;または、配列番号21に示される塩基配列と少なくとも80%同一である塩基配列からなるポリヌクレオチド、であり得る。
【0101】
本発明に係るベクターは、上記ポリヌクレオチドを含んでいることを特徴としている。
【0102】
本発明に係る形質転換体は、上記ポリヌクレオチドを含有していることを特徴としている。
【0103】
本発明に係る抗体は、上記ポリペプチドと特異的に結合することを特徴としている。
【0104】
本発明に係るノックアウト動物は、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの発現が抑制されていることを特徴としており、マウスであることが好ましい。
【0105】
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【発明の効果】
【0106】
本発明を用いれば、薬物および/または老廃物の排泄を調節する薬剤(例えば、医薬品、農薬など)をスクリーニングし得る。また、本発明を用いれば、薬剤の腎毒性および/または肝毒性を試験し得る。さらに、本発明は、モノアミン類、揮発性有機カチオン類、ニコチンの吸収または排出、メラトニン、ステロイドホルモン、性ホルモンおよびこれらの関連製剤の分泌、吸収または排出、植物アルカノイド類またはフェノール類の植物体内への濃縮など、多くの生体成分(特に、疎水度の強い生体成分)の輸送、分泌、蓄積または排出を測定するための実験系として利用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0107】
本発明者らは、非特許文献11に記載される遺伝子によってコードされると推定されるタンパク質が実際に哺乳動物に存在するのか、そして当該タンパク質がMATEファミリータンパク質であるのかを確認するために、哺乳動物から当該遺伝子の取得を試みるとともに、MATEファミリータンパク質としての機能を確認するために必要なアッセイ系を構築した。
【0108】
上記遺伝子の塩基配列情報に基づいて種々のプライマーを設計して哺乳動物の組織を用いたRT−PCRを試みたが、MATEファミリー分子に関する情報があまり得られていないこと、特に、特定の機能ドメインがMATEファミリー分子には存在しないことから、好ましいプライマーを設計するための指標が全くなかった。
【0109】
しかし、本発明者らは、独自の着眼点の確からしさを検証すべく試行錯誤を繰り返し、その結果、特定のプライマーを用いれば目的の遺伝子を増幅し得ることをついに見出した。
【0110】
このように、本発明者らの独自の着眼点および試行錯誤に基づいて取得し得た遺伝子は、ヒトおよびマウスにおいて存在しかつ当該遺伝子によってコードされるタンパク質が腎臓の尿細管および胆管の管腔側の膜に存在して、新規輸送体として機能していることを見出した。
【0111】
すなわち、本発明者らは、バクテリア由来MATEファミリーのヒトおよびマウスにおけるオルソログである哺乳動物MATEポリペプチドを同定し、哺乳動物MATEポリペプチドが腎臓および/または肝臓に発現して、プロトンとの交換輸送によって有機カチオン性化合物を排泄する最後の段階を担っていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0112】
〔1〕哺乳動物MATEポリペプチドおよびポリヌクレオチド
本発明者らは、細菌において見出された毒物排出トランスポーターのオルソログが哺乳動物において存在することを見出し、そのcDNAを単離し、その機能を解析した。
【0113】
本発明は、哺乳動物MATEポリペプチドを提供する。本明細書中で使用される場合、「MATEポリペプチド」は、「MATEタンパク質」または「MATEファミリータンパク質」と交換可能に使用され、MATE活性を有するポリペプチド、すなわち、細胞膜を介して有機カチオン(OC)を輸送するトランスポーター活性(輸送活性)を有するポリペプチドが意図される。すなわち、本明細書中で使用される場合、用語「MATE活性」は、細胞膜におけるトランスポーター活性(細胞膜を介して物質を輸送する活性)が意図され、より具体的には、細胞膜を介して有機カチオン(OC)を輸送するトランスポーター活性(輸送活性)が意図される。
【0114】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」と交換可能に使用される。また、ポリペプチドの「フラグメント」は、当該ポリペプチドの部分断片が意図される。本発明に係るポリペプチドはまた、化学合成されても、天然供給源より単離されてもよい。
【0115】
用語「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、その天然の環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質が意図される。例えば、宿主細胞中で発現された組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適切な技術によって実質的に精製されている天然または組換えのポリペプチドおよびタンパク質と同様に、単離されていると考えられる。
【0116】
本発明に係るポリペプチドは、天然の精製産物、化学合成手順の産物、および原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。
【0117】
本発明に係るポリペプチドは、後述する本発明に係るポリヌクレオチド(本発明に係るポリペプチドをコードする遺伝子)を宿主細胞に導入して、そのポリペプチドを細胞内発現させた状態であってもよいし、細胞、組織などから単離精製された場合であってもよい。
【0118】
また、本発明に係るポリペプチドは、付加的なペプチドを含むものであってもよい。付加的なペプチドとしては、例えば、HisやMyc、Flag等のエピトープ標識ペプチドが挙げられる。好ましい実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、融合タンパク質のような改変された形態で組換え発現され得る。例えば、本発明に係るペプチドの付加的なアミノ酸、特に荷電性アミノ酸の領域が、宿主細胞内での、精製の間または引き続く操作および保存の間の安定性および持続性を改善するために、ポリペプチドのN末端またはC末端に付加され得る。
【0119】
好ましくは、本発明に係る哺乳動物MATEポリペプチドは、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドあるいはその変異体であり得る。上記哺乳動物としては、ヒトまたはマウスであることが好ましい。本明細書中においてポリペプチドまたはタンパク質に関して用いられる場合、用語「変異体」は、MATE活性を有するポリペプチドまたはタンパク質が意図される。なお、ヒトMATE1ポリペプチド(hMATE1)、ヒトMATE2ポリペプチド(hMATE2)、マウスMATE1ポリペプチド(mMATE1)、マウスMATE2ポリペプチド(mMATE2)およびヒトMATE3ポリペプチド(hMATE3)のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2、4、6、8および22に示される。また、hMATE3ポリペプチドは、これまでに全く知られていない新規ポリペプチドである。
【0120】
一実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、MATEポリペプチドまたはその変異体であって、ここで当該変異体は、MATE活性を有するポリペプチドであって、配列番号2、4、6、8または22に示されるアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであることが好ましい。
【0121】
このような変異体としては、欠失、挿入、逆転、反復、およびタイプ置換(例えば、親水性残基の別の残基への置換、しかし通常は強く親水性の残基を強く疎水性の残基には置換しない)を含む変異体が挙げられる。特に、ポリペプチドにおける「中性」アミノ酸置換は、一般的にそのポリペプチドの活性にほとんど影響しない。
【0122】
ポリペプチドのアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
【0123】
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書中に記載される方法を用いれば、作製した変異体が所望のMATE活性を有するか否かを容易に決定し得る。
【0124】
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または添加を有する。好ましくは、サイレント置換、添加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明に係るポリペプチドのMATE活性を変化させない。
【0125】
代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1アミノ酸の別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
【0126】
一実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、MATEポリペプチドまたはその変異体であって、ここで当該変異体は、MATE活性を有するポリペプチドであって、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列の1個もしくは数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい。
【0127】
他の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、MATEポリペプチドまたはその変異体であって、ここで当該変異体は、MATE活性を有するポリペプチドであって、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい。
【0128】
ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法のような周知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなる)、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。適切なハイブリダイゼーション温度は、塩基配列やその塩基配列の長さによって異なり、例えば、アミノ酸6個をコードする18塩基からなるDNAフラグメントをプローブとして用いる場合、50℃以下の温度が好ましい。
【0129】
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントな(ハイブリダイゼーション)条件」は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。ポリヌクレオチドの「一部」にハイブリダイズするポリヌクレオチドによって、参照のポリヌクレオチドの少なくとも約15ヌクレオチド(nt)、そしてより好ましくは少なくとも約20nt、さらにより好ましくは少なくとも約30nt、そしてさらにより好ましくは約30ntより長いポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)が意図される。このようなポリヌクレオチドの「一部」にハイブリダイズするポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチド)は、本明細書中においてより詳細に考察されるような検出用プローブとしても有用である。
【0130】
他の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、MATEポリペプチドまたはその変異体であって、ここで当該変異体は、MATE活性を有するポリペプチドであって、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列と少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%または99%同一である塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい。
【0131】
例えば、「本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの参照(QUERY)塩基配列に少なくとも95%同一の塩基配列からなるポリヌクレオチド」によって、対象塩基配列が、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの参照塩基配列の100ヌクレオチチド(塩基)あたり5つまでの不一致(mismatch)を含み得ることを除いて、参照配列に同一である、ということが意図される。換言すれば、参照塩基配列に少なくとも95%同一の塩基配列からなるポリヌクレオチドを得るために、参照配列における塩基の5%までが、欠失され得るかまたは別の塩基で置換され得るか、あるいは参照配列における全塩基の5%までの多くの塩基が、参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの不一致は、参照塩基配列の5’または3’末端位置または参照配列における塩基中で個々にかまたは参照配列内の1以上の隣接した群においてのいずれかで分散されて、これらの末端部分の間のどこでも起こり得る。
【0132】
本発明はまた、MATEポリヌクレオチドを提供する。本明細書中において使用される場合、「MATEポリヌクレオチド」は、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはその変異体が意図される。本明細書中においてDNAまたはポリヌクレオチドに関して用いられる場合、用語「変異体」は、MATE活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意図される。なお、ヒトMATE1ポリヌクレオチド、ヒトMATE2ポリヌクレオチド、マウスMATE1ポリヌクレオチド、マウスMATE2ポリヌクレオチドおよびヒトMATE3ポリヌクレオチドの塩基配列は、それぞれ配列番号1、3、5、7および21に示される。また、hMATE3ポリヌクレオチドは、これまでに全く知られていない新規ポリヌクレオチドである。
【0133】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)もしくはリボヌクレオチド(C,A,GおよびU)の配列として示される。また、「配列番号1に示される塩基配列を含むポリヌクレオチドまたはそのフラグメント」とは、配列番号1の各デオキシヌクレオチドA、G、Cおよび/またはTによって示される配列を含むポリヌクレオチドまたはその断片部分が意図される。
【0134】
本発明に係るポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、または、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
【0135】
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチドが数個ないし数十個結合したものが意図され、「ポリヌクレオチド」と交換可能に使用される。オリゴヌクレオチドは、短いものはジヌクレオチド(二量体)、トリヌクレオチド(三量体)といわれ、長いものは30マーまたは100マーというように重合しているヌクレオチドの数で表される。オリゴヌクレオチドは、より長いポリヌクレオチドのフラグメントとして生成されても、化学合成されてもよい。
【0136】
本発明に係るポリヌクレオチドはまた、その5’側または3’側で上述のタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。
【0137】
一実施形態において、本発明に係るポリヌクレオチドは、MATEポリヌクレオチドまたはその変異体であって、ここで当該変異体はMATEポリペプチドをコードし、かつ以下のポリヌクレオチドのいずれであることが好ましい:
・配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列の1個または数個の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド
・配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド
・配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列と少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%または99%同一である塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【0138】
他の実施形態において、本発明に係るポリヌクレオチドは、配列番号11に示される塩基配列からなるプライマーと配列番号12に示される塩基配列からなるプライマーとのプライマー対、または配列番号13に示される塩基配列からなるプライマーと配列番号14に示される塩基配列からなるプライマーとのプライマー対を用いて、ヒトcDNAライブラリーから増幅されるポリヌクレオチド、あるいは、配列番号15に示される塩基配列からなるプライマーと配列番号16に示される塩基配列からなるプライマーとのプライマー対、または配列番号17に示される塩基配列からなるプライマーと配列番号18に示される塩基配列からなるプライマーとのプライマー対を用いて、マウスcDNAライブラリーから増幅されるポリヌクレオチドであり、かつMATE活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであることを特徴としている。
【0139】
本発明に係るポリヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列またはベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
【0140】
本発明に係るポリヌクレオチドを取得するための供給源としては、特に限定されないが、生物材料(例えば、ヒトまたはマウスなどの諸器官)であることが好ましい。本明細書中で使用される場合、用語「生物材料」は、生物学的サンプル(生物体から得られた組織サンプルまたは細胞サンプル)が意図される。
【0141】
本発明に係るポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、本明細書中にさらに記載されるように、MATE活性を測定するためのツールとして使用され得る。
【0142】
つまり、本発明の目的は、MATEポリペプチドおよびMATEポリヌクレオチドを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載したポリペプチド作製方法およびポリヌクレオチド作製方法等に存するのではない。従って、上記各方法以外によって取得されるMATEポリペプチド、およびMATEポリヌクレオチドも本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
【0143】
〔2〕ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの利用
〔2−1〕ベクター
本発明は、MATEポリペプチドを生成するために使用されるベクターを提供する。本発明に係るベクターは、インビトロ翻訳に用いるベクターであっても組換え発現に用いるベクターであってもよい。
【0144】
本発明に係るベクターは、上述した本発明に係るポリヌクレオチドを含むものであれば、特に限定されない。例えば、MATE活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(MATEポリヌクレオチド)のcDNAが挿入された組換え発現ベクターなどが挙げられる。組換え発現ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いる方法が挙げられるが特に限定されない。
【0145】
ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターが適宜選択され得る。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明に係るポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明に係るポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。また、発現ベクターによる宿主の形質転換もまた、慣用的な手法に従って行うことができる。
【0146】
上記発現ベクターを用いて形質転換された宿主を、培養、栽培または飼育した後、培養物等から慣用的な手法(例えば、濾過、遠心分離、細胞の破砕、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等)に従って、目的タンパク質を回収、精製することができる。
【0147】
発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、およびE.coliおよび他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0148】
本発明に係るベクターを使用すれば、MATEポリヌクレオチドを生物または細胞に導入して、当該生物または細胞中にMATEポリペプチドを発現させることができる。さらに、本発明に係るベクターを無細胞タンパク質合成系に用いれば、MATEポリペプチドを合成することができる。
【0149】
このように、本発明に係るベクターは、少なくとも、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含めばよいといえる。すなわち、発現ベクター以外のベクターも、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
【0150】
〔2−2〕脂質膜
本発明は、MATEポリペプチドを含有する脂質膜を提供する。本発明に係る脂質膜は、天然由来の脂質膜であっても、人工の脂質膜であってもよい。本発明に係る脂質膜が天然由来である場合は、細胞膜または膜小胞であればよく、本発明に係る脂質膜が人工である場合は、脂質平面膜またはリポソーム(リポソーム組成物)であればよい。
【0151】
〔A〕形質転換体
一実施形態において、本発明に係る脂質膜は、MATEポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換体の形質膜であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「形質転換体」は、細胞、組織または器官だけでなく、生物個体をも含むことが意図される。
【0152】
本実施形態における形質転換体は、MATEポリペプチドを含有する形質膜が形成されていることを特徴とする。なお、本実施形態における形質転換体は、MATEポリペプチドが安定的に発現していることが好ましい。
【0153】
1つの局面において、本実施形態における形質転換体は、MATEポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、MATEポリペプチドが発現され得るように生物中に導入することによって取得される。本実施形態における形質転換体は、原核生物であっても真核生物であってもよい。本発明者らの解析によりMATEポリペプチドが膜タンパク質であることが示されたので、MATEポリペプチドが発現する形質転換体においては、MATEポリペプチドを含有する形質膜が提供される。
【0154】
上記発現ベクターを宿主に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。また、例えば、本発明に係るポリペプチドで昆虫細胞を形質転換させる場合には、バキュロウイルスを用いた発現系を用いればよく、本発明に係るポリペプチドで植物を形質転換させる場合には、アグロバクテリウム法、遺伝子銃(粒子ボンバードメント法)を用いて本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入すればよい。
【0155】
このように、本実施形態における形質転換体は、少なくとも、本発明に係るポリペプチドを含有する形質膜が形成されていればよいといえる。すなわち、上記方法以外の公知の方法によって作製された形質転換体も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
【0156】
〔B〕膜小胞
一実施形態において、本発明に係る脂質膜は、MATEポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入された細胞から得られる膜小胞であり得る。本明細書中で使用される場合、「膜小胞」は、超音波処理などに供されて破壊された細胞の形質膜が形成する、より小さな小胞が意図される。
【0157】
このように、本実施形態に係る膜小胞は、少なくとも、本発明に係るポリペプチドを含有する脂質膜によって形成されていればよいといえる。すなわち、機能を喪失した細胞内小器官などを内包する膜小胞もまた、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
【0158】
〔C〕リポソームおよびリポソーム組成物
MATEポリペプチドは種々の有機カチオン(OC)を輸送するトランスポーターである。本発明者らは、これまでに、放射標識した基質を用いて、MATEポリペプチドを発現させたHEK293細胞またはアフリカツメガエル卵母細胞の系で、MATEポリペプチドによってどのような物質が輸送されるのか調べた。このような発現細胞を用いる系では、MATEポリペプチド以外に細胞由来の多数のタンパク質が共存した条件下にて測定を行うが、共存する多数のタンパク質による干渉は、特に性ホルモンなどの疎水性の高い輸送基質を用いる場合に特に問題になる。すなわち、疎水性の高い輸送基質について信頼性の高い測定を行うためには、MATEポリペプチド以外のタンパク質が存在しない系を用いることが好ましい。
【0159】
また、上述した実験系は輸送基質として標識した物質(すなわち放射標識物質または蛍光標識物質)を用いるので、標識し得ない薬物、毒物、代謝性生体成分などが輸送対象となるトランスポータータンパク質についての輸送を確認することができなかった。
【0160】
そこで、本発明者らは、蛋白質科学的にほぼ均一なMATEポリペプチドを調製し、これを組み込んだリポソーム(いわゆるプロテオリポソーム)を調製し、このプロテオリポソームを輸送実験に供することにより、完全に定義された組成により構成されたMATEポリペプチドの輸送測定系を完成した。そして、この輸送測定系をマススペクロトスコピー(質量分析計)や蛍光分光計、HPLCなどと組み合わせることにより、これまでは不可能であった様々な非標識化合物について輸送基質となるかどうかを正確に調べることができるようになった。
【0161】
すなわち、一実施形態において、本発明に係る脂質膜は、MATEポリペプチドを含有しているリポソーム組成物であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「リポソーム組成物」は、特定の物質を含有したリポソームが意図される。リポソームは、ベジクルとも称される脂質人工膜であり、脂質(例えば、リン脂質)の懸濁液を激しく攪拌して分散させた後に超音波処理を施すことにより作製され得る。リポソームを用いた研究は広く行われており、細胞膜モデルとして利用されたり、薬物送達(DDS)の手段の一つとして利用されたりしている。
【0162】
本発明に係るリポソーム組成物は、MATEポリペプチドを含有していることを特徴とする。本発明に係るリポソーム組成物は、H−ATPaseタンパク質をさらに含有していてもよい。なお、H−ATPaseタンパク質は、細胞内のプロトンを細胞外へ能動的に輸送するタンパク質であって、プロトンポンプとも称される。プロトンポンプの精製方法は、特に限定されるものではなく、Moriyama Yら、J.Biol.Chem.266,22141−22146(1991)等の従来公知の方法を好適に用いればよい。なお、本発明に係るリポソーム組成物を用いてMATEポリペプチドの輸送活性を測定する場合、哺乳動物由来のMATEポリペプチドであればH−ATPaseタンパク質が共存しなくても活性測定が可能である。
【0163】
本発明を用いれば、MATEポリペプチド以外の夾雑タンパク質が存在しない系を構築することができるので、得られた結果がMATEポリペプチドに起因するものであるか否かをより明確に知ることができ、多数のタンパク質が共存することによって、MATEポリペプチドによる基質の輸送がどのくらい干渉されるのかを知ることができる。
【0164】
また、本発明を用いれば、放射標識または蛍光標識した基質を用いる必要がない系を構築することができるので、広範な種々の薬物、毒物、代謝性生体成分などについて、トランスポータータンパク質の輸送対象であるか否かを解析することができる。
【0165】
このように、本発明によって従来の問題点を解決することができ、MATEポリペプチドの輸送機能をより広くより深く理解することができる。もちろん、従来どおりの標識された化合物を本発明とともに用いることもできる。
【0166】
このように、本発明に係るリポソーム組成物は、少なくとも、本発明に係るポリペプチドを含有していればよいといえる。すなわち、上記方法以外の公知の方法によって作製されたリポソーム組成物も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
【0167】
〔D〕脂質平面膜
一実施形態において、本発明に係る脂質膜は、MATEポリペプチドを含有している脂質平面膜であり得る。脂質二重層は、極性脂質(特にリン脂質)が二層となった膜状の構造である。脂質二重層構造が二次元構造として安定化するのは球状であるが、末端を水分子から隔離すれば平面構造になり得る。本明細書中で使用される場合、人工的に作製される脂質二重層のうち球状のものをリポソーム、平面状のものを脂質平面膜という。
【0168】
本実施形態に係る脂質平面膜を得るためには、人工的に形成した脂質二重層の膜にMATEポリペプチドを埋め込めばよい。なお、人工的な脂質二重層は、膜タンパク質(例えば、チャネルタンパク質)の活性をin vitroで測定する際に使用されており、いずれの作製方法も当該分野において周知である。
【0169】
このように、本発明に係る脂質平面膜は、少なくとも、本発明に係るポリペプチドを含有していればよいといえる。すなわち、上記方法以外の公知の方法によって作製された脂質平面膜も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
【0170】
〔3〕ベクターの利用
上述したように、本発明に係るベクターを使用すれば、MATEポリヌクレオチドを導入した生物または細胞にてMATEポリペプチドを発現させることができる。細胞膜は、形質転換体として、または形質転換体の一部として供給されるので、本発明に係るベクターを用いれば、MATEポリペプチドを含有する天然由来の脂質膜を得ることができる。また、人工の脂質膜を得るためには、上述したベクターを用いて作製した精製MATEポリペプチド(発現系であっても無細胞系であってもよい。)を用いればよい。
【0171】
このように、本発明に係るベクターは、本発明に係る脂質膜を作製するためのツールとして利用され得る。すなわち、本発明は、MATEポリペプチドを含有する脂質膜を作製するための方法およびキットを提供する。
【0172】
本発明に係るMATEポリペプチドを含有する脂質膜を作製する方法は、MATEポリヌクレオチドを含むベクターを用いてMATEポリペプチドを生成する工程を包含することを特徴としている。天然由来の脂質膜を作製する場合は、生成したMATEポリペプチドを精製する必要はないが、人工の脂質膜を作製する場合は、生成したMATEポリペプチドを精製して用いればよい。本明細書を読んだ当業者は、MATEポリヌクレオチドを含むベクターを用いてMATEポリペプチドを生成することを容易になし得る。
【0173】
また、本発明に係るMATEポリペプチドを含有する脂質膜を作製するためのキットは、MATEポリヌクレオチドを含むベクターを備えていることを特徴としている。天然由来の脂質膜を作製する場合は、上記ベクターは組換え発現ベクターであり、人工の脂質膜を作製する場合は、上記ベクターは組換え発現ベクターであってもなくてもよい。
【0174】
このように、本発明に係るMATEポリペプチドを含有する脂質膜を作製するための方法およびキットは、少なくとも、MATEポリヌクレオチドを含むベクターを用いればよいといえる。すなわち、上記以外の公知の技術を適用する方法およびキットも、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
【0175】
〔4〕脂質膜の利用
本発明は、上記脂質膜の利用をさらに提供する。本明細書中、形質転換体またはリポソーム組成物を例に挙げて、脂質膜の利用を説明するが、本発明に係る脂質膜の利用はこれらに限定されない。
【0176】
〔A〕MATEポリペプチドを発現する形質転換体の利用
MATE1ポリペプチドをHEK293細胞に発現させると、テトラエチルアンモニウム(TEA)および1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)のH依存的な輸送が生じた。MATE1の基質特異性は、腎臓または肝臓に存在するH依存性有機カチオン輸送体と類似していた。このように、MATE1は、長期にわたって探索されてきた、有機カチオン(OC)を直接尿中または胆汁中に排泄する多機能なOC輸送体であることが明らかになった。
【0177】
上述したように、MATEポリペプチドは、細胞膜におけるトランスポーター活性を有しており、より詳細には、細胞膜を介して有機カチオン(OC)を輸送するトランスポーター活性(輸送活性)を有している。本発明は、このような輸送活性の標的となる基質をさらにスクリーニングするための方法およびキットを提供する。
【0178】
本発明に係るスクリーニング方法は、上記形質転換体をテトラエチルアンモニウム(TEA)または1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)とともにインキュベートする工程を包含することを特徴としている。上記工程において、基質候補の存在下または非存在下においてTEAまたはMPPの上記形質転換体への取り込み量に変化が生じた場合、すなわち、基質候補の存在によってTEAまたはMPPの輸送が阻害された場合、基質候補がMATEポリペプチドの新たな基質であると判定することができる。
【0179】
後述する実施例において実証されているように、本発明に係るスクリーニング方法によって、テトラエチルアンモニウム(TEA)および1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)以外に、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、およびチアミンがMATEポリペプチドの基質となる。すなわち、これらの化合物は、MATEポリペプチドによって輸送される。
【0180】
このように、本発明に係るスクリーニング方法において、TEAまたはMPPの代わりに上記化合物の1つ以上を用いて、その輸送阻害の有無を判定基準に用いてもよいことを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。なお、これらの化合物は、本発明において使用される場合、検出可能に標識されていることが好ましい。好ましい標識としては放射標識が挙げられるが、これに限定されない。
【0181】
本発明に係るスクリーニングキットは、上記形質転換体を備えていることを特徴としている。好ましい実施形態において、本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)または1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)をさらに備えていることが好ましい。上記工程において、基質候補の存在下または非存在下においてTEAまたはMPPの上記形質転換体取り込み量に変化が生じた場合、すなわち、基質候補の存在によってTEAまたはMPPの輸送が阻害された場合、基質候補がMATEポリペプチドの新たな基質であると判定することができる。また、上述したように、TEAまたはMPPの代わりにシメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの1つ以上を用いて、その輸送阻害の有無を判定基準に用いてもよい。
【0182】
本発明は、MATEポリペプチドを発現する形質転換体のさらなる用途を提供する。1つの局面において、本発明は、薬物および/または老廃物の排泄を調節する薬剤をスクリーニングするための方法およびキットを提供する。別の局面において、本発明は、薬剤の腎毒性および/または肝毒性を試験するための方法およびキットを提供する。さらなる局面において、本発明は、モノアミン類、揮発性有機カチオン類、ニコチンの吸収または排出、メラトニン、ステロイドホルモン、性ホルモンおよびこれらの関連製剤の分泌、吸収または排出、植物アルカノイド類またはフェノール類の植物体内への濃縮など、多くの生体成分(特に、疎水度の強い生体成分)の輸送、分泌、蓄積または排出を測定するための方法およびキットを提供するとともに、これらの輸送、分泌、蓄積または排出を調節する薬剤をスクリーニングするための方法およびキットを提供する。いずれの場合においても、本発明は、MATEポリペプチドを発現する形質転換体を用いることを特徴としており、好ましくは、MATEポリペプチドの基質を利用する。また、本発明に係るスクリーニングキットを用いれば、細胞膜に存在するMATEポリペプチドにいかなる化合物が結合するかを調べることができるので、MATEポリペプチドに対する阻害剤または活性増強剤をスクリーニングし得る。
【0183】
これまではトランスポーターの実体が不明であったため、種々の医薬品試験を実施し得なかった。本発明に係るトランスポーターを阻害する薬剤は、薬剤の体内での長期貯留を引き起こし、種々の長期毒性を引き起こす可能性がある。よって、このトランスポーターに対する薬品の影響は、薬品を製品化する前に予め試験する必要がある。
【0184】
薬剤または毒素が体外(尿および/または便)に排出されるためには、これらの物質は何種類ものトランスポーターによっていくつもの細胞を通過する必要がある。本発明に係るトランスポーターは、このような排出の最終段階を司る。
【0185】
本発明は、不特定多数の有機カチオンを基質として、腎臓尿細管のアピカル部位(原尿に接する部位)または肝臓の微小胆管(胆汁を排泄する部位)に存在する新規トランスポーターを定常的に発現する培養細胞株を確立した。この細胞株は、種々の医薬品または農薬などの輸送(排出)試験を行うための測定系と使用され得る。
【0186】
なお、MATEポリペプチドを発現する形質転換体を用いて本発明に係る方法およびキットを説明してきたが、MATEポリペプチドを発現する形質転換体を作製するための工程をさらに包含する方法、およびMATEポリペプチドを発現する形質転換体を作製するためのツールをさらに備えているキットもまた、本発明の技術的範囲に属する。
【0187】
〔B〕MATEポリペプチドを含有しているリポソーム組成物の利用
実施例にて詳述するように、MATE1ポリペプチドをHEK293細胞に発現させると、テトラエチルアンモニウム(TEA)および1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)のH依存的な輸送が生じた。また、MATE1ポリペプチドを含有しているリポソーム組成物において、テトラエチルアンモニウム(TEA)のH依存的な輸送が確認された。MATE1の基質特異性は、腎臓または肝臓に存在するH依存性有機カチオン輸送体と類似していた。このように、MATE1は、長期にわたって探索されてきた、有機カチオン(OC)を直接尿中または胆汁中に排泄する多機能なOC輸送体であることが明らかになった。
【0188】
上述したように、MATEポリペプチドは、細胞膜におけるトランスポーター活性を有しており、より詳細には、細胞膜を介して有機カチオン(OC)を輸送するトランスポーター活性(輸送活性)を有している。本発明は、このような輸送活性の標的となる基質をさらにスクリーニングするための方法およびキットを提供する。
【0189】
本発明に係るスクリーニング方法は、上記リポソーム組成物をテトラエチルアンモニウム(TEA)または1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)とともにインキュベートする工程を包含することを特徴としている。上記工程において、基質候補の存在下または非存在下においてTEAまたはMPPの上記リポソーム組成物への取り込み量に変化が生じた場合、すなわち、基質候補の存在によってTEAまたはMPPの輸送が阻害された場合、基質候補がMATEポリペプチドの新たな基質であると判定することができる。
【0190】
後述する実施例において実証されているように、本発明に係るスクリーニング方法によって、テトラエチルアンモニウム(TEA)および1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)以外に、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、およびチアミンがMATEポリペプチドの基質となる。すなわち、これらの化合物は、MATEポリペプチドによって輸送される。
【0191】
このように、本発明に係るスクリーニング方法において、TEAまたはMPPの代わりに上記化合物の1つ以上を用いて、その輸送阻害の有無を判定基準に用いてもよいことを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。なお、これらの化合物は、本発明において使用される場合、検出可能に標識されていてもよい。好ましい標識としては放射標識または蛍光標識が挙げられるが、これに限定されない。
【0192】
本発明に係るスクリーニングキットは、上記リポソーム組成物を備えていることを特徴としている。好ましい実施形態において、本発明に係るスクリーニングキットは、テトラエチルアンモニウム(TEA)または1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)をさらに備えていることが好ましい。上記工程において、基質候補の存在下または非存在下においてTEAまたはMPPの上記リポソーム組成物取り込み量に変化が生じた場合、すなわち、基質候補の存在によってTEAまたはMPPの輸送が阻害された場合、基質候補がMATEポリペプチドの新たな基質であると判定することができる。また、上述したように、TEAまたはMPPの代わりにシメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、またはチアミンの1つ以上を用いて、その輸送阻害の有無を判定基準に用いてもよい。
【0193】
本発明は、MATEポリペプチドを含有しているリポソーム組成物のさらなる用途を提供する。1つの局面において、本発明は、薬物および/または老廃物の排泄を調節する薬剤をスクリーニングするための方法およびキットを提供する。別の局面において、本発明は、薬剤の腎毒性および/または肝毒性を試験するための方法およびキットを提供する。さらなる局面において、本発明は、モノアミン類、揮発性有機カオチン類、ニコチンの吸収または排出、メラトニン、ステロイドホルモン、性ホルモンおよびこれらの関連製剤の分泌、吸収または排出、植物アルカノイド類またはフェノール類の植物体内への濃縮など、多くの生体成分(特に、疎水度の強い生体成分)の輸送、分泌、蓄積または排出を測定するための方法およびキットを提供するとともに、これらの輸送、分泌、蓄積または排出を調節する薬剤をスクリーニングするための方法およびキットを提供する。いずれの場合においても、本発明は、MATEポリペプチドを含有しているリポソーム組成物を用いることを特徴としており、好ましくは、MATEポリペプチドの基質を利用する。また、本発明に係るスクリーニングキットを用いれば、細胞膜に存在するMATEポリペプチドにいかなる化合物が結合するかを調べることができるので、MATEポリペプチドに対する阻害剤または活性増強剤をスクリーニングし得る。
【0194】
これまではトランスポーターの実体が不明であったため、種々の医薬品試験を実施し得なかった。本発明に係るトランスポーターを阻害する薬剤は、薬剤の体内での長期貯留を引き起こし、種々の長期毒性を引き起こす可能性がある。よって、このトランスポーターに対する薬品の影響は、薬品を製品化する前に予め試験する必要がある。
【0195】
薬剤または毒素が体外(尿および/または便)に排出されるためには、これらの物質は何種類ものトランスポーターによっていくつもの細胞を通過する必要がある。本発明に係るトランスポーターは、このような排出の最終段階を司る。
【0196】
本発明は、不特定多数の有機カチオンを基質として、腎臓尿細管のアピカル部位(原尿に接する部位)または肝臓の微小胆管(胆汁を排泄する部位)に存在する新規トランスポーターを含有しているリポソーム組成物を確立した。このリポソーム組成物は、種々の医薬品または農薬などの輸送(排出)試験を行うための測定系と使用され得る。
【0197】
なお、MATEポリペプチドを含有しているリポソーム組成物を用いて本発明に係る方法およびキットを説明してきたが、MATEポリペプチドを含有しているリポソーム組成物を作製するための工程をさらに包含する方法、およびMATEポリペプチドを含有しているリポソーム組成物を作製するためのツールをさらに備えているキットもまた、本発明の技術的範囲に属する。
【0198】
〔5〕オリゴヌクレオチドおよびその利用
本発明は、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドもしくはその変異体のフラグメントまたはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドを提供する。
【0199】
本発明に係るオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列またはその相補配列の連続する少なくとも12塩基、好ましくは、少なくとも15塩基、そしてより好ましくは少なくとも20塩基、なおより好ましくは少なくとも30塩基、そしてさらにより好ましくは少なくとも40塩基の長さのフラグメントが意図される。一実施形態において、本発明に係るオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7または21に基づくDNAフラグメントであり得る。本明細書を参照すれば配列番号1、3、5、7または21に示される塩基配列が提供されるので、当業者は,配列番号1、3、5、7または21に基づくDNAフラグメントを容易に作製することができる。例えば、制限エンドヌクレアーゼ切断または超音波による剪断は、種々のサイズのフラグメントを作製するために容易に使用され得る。あるいは、このようなフラグメントは、合成的に作製され得る。別の実施形態において、本発明に係るオリゴヌクレオチドは、配列番号11〜18のいずれか1つに示される塩基配列またはその相補配列からなるオリゴヌクレオチドであり得る。
【0200】
本発明に係るオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のプライマーとして本発明に係るポリペプチドを作製するために使用され得る。また、本発明に係るオリゴヌクレオチドは、特定の組織における目的遺伝子のmRNA発現を検出するためのノーザンブロット分析またはPCRプライマーとして使用され得る。すなわち、MATEポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを検出するハイブリダイゼーションプローブまたはMATEポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーとして、本発明に係るオリゴヌクレオチドを利用することによって、MATEポリペプチドを発現する生物または組織を容易に検出することができる。また、本発明に係るポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを用いれば、MATEポリペプチドポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現の強弱を確認することができるので、物質輸送異常に起因する疾患、障害を診断することができる。
【0201】
すなわち、本発明はさらに、上記オリゴヌクレオチドを用いる診断方法および診断キットを提供する。上述したように、本発明に係るオリゴヌクレオチドは、「MATE活性」、すなわち、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド(MATEポリペプチド)をコードするポリヌクレオチド(MATEポリヌクレオチド)と特異的にハイブリダイズする。よって、本発明に係るオリゴヌクレオチドを用いて生体各組織におけるMATEポリヌクレオチドの存在の有無を検出することにより、物質輸送異常に起因する疾患、障害を診断することができる。具体的には、生体組織から生検等により採取した生物学的サンプル(特に、被検体から得られた組織、細胞または体液である被検体サンプル)から調整したmRNAと、本発明に係るオリゴヌクレオチドとを反応させることにより、生物学的サンプル中でのMATEポリヌクレオチドの発現量を知ることができる。
【0202】
本発明に係るMATEポリペプチドが寄与する物質輸送異常に起因する疾患を診断するキットは、本発明に係るオリゴヌクレオチドを少なくとも備えていればよい。本キットはさらに、必要に応じて、このオリゴヌクレオチドを検出するための試薬を備えていてもよい。なお、MATEポリペプチドによって輸送される物質としては、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、およびチアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0203】
つまり、本発明の目的は、本発明に係るオリゴヌクレオチドおよびその利用を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載したオリゴヌクレオチド作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得されるオリゴヌクレオチドも本発明の範囲に属することに留意しなければならない。
【0204】
〔6〕抗体およびその利用
本発明は、MATEポリペプチドと特異的に結合する抗体を提供する。一実施形態において、本発明に係る抗体は、hMATE1ポリペプチドまたはmMATE1ポリペプチドと特異的に結合することを特徴としている。本実施形態に係る抗体は、配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるペプチド抗原または配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるペプチド抗原によって惹起されることが好ましいが、抗体の生成方法としてはこれに限定されない。
【0205】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、IgMおよびこれらのFabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fcフラグメント)が意図され、例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体、抗イディオタイプ抗体およびヒト化抗体が挙げられるがこれらに限定されない。本発明に係る抗体は、MATEポリペプチドを発現する生物材料を選択するに有用であり得、発現部位を同定するになお有用である。
【0206】
本明細書中で使用される場合、用語「MATEポリペプチドと特異的に結合する抗体」は、MATEポリペプチドに特異的に結合し得る完全な抗体分子および抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)フラグメント)を含むことが意図される。FabおよびF(ab’)ならびに本発明に係る抗体の他のフラグメントは、代表的には、パパイン(Fabフラグメントを生じる)またはペプシン(F(ab’)フラグメントを生じる)のような酵素を使用するタンパク質分解による切断によって産生される。あるいは、MATEポリペプチド結合フラグメントは、組換えDNA技術の適用または合成化学によって産生され得る。
【0207】
このように、本発明に係る抗体は、少なくとも、上記ペプチド抗原を認識する抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)フラグメント)を備えていればよいといえる。すなわち、上記ペプチド抗原を認識する抗体フラグメントと、異なる抗体分子のFcフラグメントとからなる免疫グロブリンも本発明に含まれることに留意すべきである。
【0208】
本発明はまた、哺乳動物MATEポリペプチドを検出し得る抗体を惹起するペプチド抗原を提供する。すなわち、本発明に係るペプチド抗原は、免疫アッセイに有効な抗体を生成するための方法およびキットにおいて有用である。本明細書中で使用される場合、用語「免疫アッセイ」は、抗原抗体反応に基づいた免疫学的な結合反応を利用して行われるアッセイが意図される。免疫学的な結合反応を利用したアッセイとしては、免疫組織化学、免疫電子顕微鏡法、ウエスタンブロット、免疫沈降法、サンドイッチELISAアッセイ、放射性イムノアッセイ、および免疫拡散アッセイのような抗体アッセイ、ならびにアフィニティクロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0209】
上記ペプチド抗原は、MATEポリペプチドと同様に、化学合成されても、天然供給源より単離されてもよく、組換え発現(例えば、GST融合タンパク質)を利用して取得されてもよい。
【0210】
本明細書を読んだ当業者は、上記ペプチド抗原を用いて抗体を惹起する工程を包含する抗体の生成方法およびキットもまた本発明の範囲内に含まれることを容易に理解する。なお、本発明に係る抗体の生成方法において、上記ポリペプチドをアジュバントとの複合体を抗原として用いてもよい。
【0211】
本発明はさらに、上記抗体を用いる診断方法および診断キットを提供する。上述したように、本発明に係る抗体は、「MATE活性」、すなわち、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド(MATEポリペプチド)と特異的に結合する。よって、本発明に係る抗体を用いて生体各組織におけるMATEポリペプチドの存在の有無を検出することにより、物質輸送異常に起因する疾患、障害を診断することができる。具体的には、生体組織から生検等により採取した生物学的サンプル(特に、被検体から得られた組織、細胞または体液である被検体サンプル)と、MATEポリペプチドに特異的に結合する抗体とを反応させることにより、生物学的サンプル中にこの抗体と結合する抗原ペプチド(すなわちMATEポリペプチド)の発現量を知ることができる。
【0212】
本発明に係るMATEポリペプチドが寄与する物質輸送異常に起因する疾患を診断するキットは、MATEポリペプチドに特異的に結合する抗体を少なくとも備えていればよく、該抗体は、マウスまたはヒトのMATE1またはMATE2に対する抗体であることが好ましい。本キットはさらに、必要に応じて、この抗体を検出するための試薬を備えていてもよい。なお、MATEポリペプチドによって輸送される物質としては、テトラエチルアンモニウム(TEA)、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチン、ローダミン6G、クロロキン、キニン、ピリメタミン、クロロプロマジン、ベルベリン、シスプラチン、プロプラノロール、パパベリン、およびチアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0213】
つまり、本発明の目的は、本発明に係るMATEポリペプチドを認識する抗体およびその利用を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々の免疫グロブリンの種類(IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgM)、キメラ抗体作製方法、ペプチド抗原作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得される抗体も本発明の範囲に属することに留意しなければならない。
【0214】
〔7〕ノックアウト動物
ノックアウト動物は、特定の遺伝子を破壊することによって得られた遺伝子欠損動物である。ノックアウト動物(特にマウス)は、全能性を有する胚性幹細胞(ES細胞)において遺伝子破壊を行い、標的遺伝子破壊を起こしたES細胞を選抜し、その細胞とマウス胚を用いてキメラ個体を作製し、ES細胞に由来する生殖細胞を有するキメラ個体から二世代以上の交配によって標的破壊遺伝子をホモで有する個体として作出される。ノックアウト動物は、新しい実験動物、特に疾患モデル動物の作出に非常に有効な技術である。
【0215】
本発明は、MATE遺伝子を破壊したノックアウト動物を提供する。本発明に係るノックアウト動物は、マウスであることが好ましい。ノックアウト動物の作製方法は当該分野において周知であるので、本明細書によって提供されるMATE遺伝子の情報に基づけば、当業者はMATE遺伝子ノックアウト動物を容易に作製し得る。
【0216】
本発明に係るノックアウト動物を用いれば、細胞膜における物質輸送を調節する薬剤をスクリーニングしたり、細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチドの基質をスクリーニングしたりすることができる。また、本発明に係るノックアウト動物を用いれば、薬剤の腎毒性および/または肝毒性を試験することができる。さらに、本発明に係るノックアウト動物は、細胞膜における物質輸送異常に起因する疾患に関するモデル動物として疾患治療に大いに貢献し得る。
【0217】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これに限定されるべきではない。
【実施例】
【0218】
〔1:材料および方法〕
〔1−1.cDNAのクローニング〕
ヒトMATE1(hMATE1:アクセッション番号NP−060712)のcDNAをヒト脳より抽出した総RNAからRT−PCRによりクローニングした。逆転写反応後に、cDNA溶液を10倍希釈して、0.6mM dNTPs(150μMの各dNTP)、および25pmolのプライマー対、1.5ユニットのAmpli Taq polymerase(PerkinElmer)を含むPCR緩衝液中に添加した。PCR増幅を以下に従って行った:94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、72℃で1分間の伸長。増幅産物(1804塩基対)をアガロースゲル電気泳動にて解析した。なお、プライマーを、Genbankアクセッション番号AK001709に基づいて作製した(センスプライマー:5’−ggccggtacccgcgagtcacatggaagctc−3’;アンチセンスプライマー:5’−cacttctagacctgtgaattgtgtgtaagc−3’)。増幅したDNA断片を制限酵素(KpnIおよびXbaI)で消化して、pBluescriptKS(+)に挿入した。ヒトMATE1の遺伝子配列をヒトゲノム配列と比較して、エラーがないことを確認した。
【0219】
同様に、プライマー対(センス:5’−agtcgaattccaccatggacagcctccaggacacagtgg−3’;アンチセンス:5’agctctcgagctagtgcctggtggctaggatcctgac−3’)を用いてヒトMATE2(hMATE2:アクセッション番号NP−690872)を、プライマー対(センス:5’−cgccggtaccaccatggaacgcacggagga−3’;アンチセンス:5’−agacagtttattgctgtcctttggacggat−3’)を用いてマウスMATE1(mMATE1:アクセッション番号AAH31436)を、プライマー対(センス:5’−caccgaattcatggagccggccgaggaca−3’;アンチセンス:5’−cgtactcgagttagccacggtcattgaaa−3’)を用いてマウスMATE2(mMATE2:アクセッション番号XP_354611)をクローニングした。
【0220】
〔1−2.点変異導入〕
非特許文献12の方法に従って、オリゴヌクレオチドプライマー(5’−ggcccaccactgcatgcacagcatgagc−3’)を用いて、ヒトMATE1に点変異(E273Q)を導入した。
【0221】
〔1−3.ノーザンブロット解析〕
ヒトおよびマウスの多組織ノーザンブロット(MTN)をClontechより購入した。PCR増幅して得たヒトMATE1のN末端領域(nt10〜601;592bp)、ヒトMATE2のC末端領域(nt1412〜1712;301bp)、マウスMATE1のC末端領域(nt1336〜1599;264bp)およびマウスMATE2のC末端領域(nt1087〜1648;562bp)を、DNA labeling kit(Boehringer Mannheim)を用いて32P−dCTPで標識し、ノーザンブロットのプローブに用いた。ハイブリダイゼーションを、Express Hyb hybridization buffer(Clontech)を用いて68℃にて1時間行い、50℃にて洗浄した。
【0222】
〔1−4.抗体作製〕
ヒトMATE1のアミノ酸461〜546位またはマウスMATE1のアミノ酸P495〜Q532をGSTと融合させたGST融合タンパク質を抗原に用いて、ヒトMATE1またはマウスMATE1に特異的なウサギポリクローナル抗体を作製した。
【0223】
〔1−5.ウエスタンブロッティング〕
ヒト組織サンプルをコスモバイオより購入した。マウス組織1gから膜画分を調製した。各組織を、20mM MOPS−Tris(pH7.0)、0.3M sucrose、5mM EDTAおよびタンパク質分解酵素阻害剤(pepstatin A、leupeptin、antipainおよびchymostatinを各10μg/ml)からなる緩衝液中に懸濁した後、ホモジナイズした。核を除去した後、100,000×gで1時間遠心分離した。上清を除去し、沈殿を上記緩衝液中に懸濁した。1% SDSおよび10% β−メルカプトエタノールを含む緩衝液を加えた後、ヒト膜画分(100μg)およびマウス膜画分(200μg)を電気泳動用サンプルとして用いた。ウエスタンブロッティングを定法(非特許文献13を参照のこと)に従って行った。
【0224】
〔1−6.免疫組織染色〕
ヒトパラフィン組織切片をBiochain社より購入した。免疫組織化学解析を、HRP−DAB法または間接蛍光抗体顕微鏡法を用いて、非特許文献13に従って行った。1000倍希釈または1μg/mlの1次抗体を用いて、1次抗体反応を、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)中にて室温で1時間行った。サンプルを、Olymupus BX60顕微鏡またはOlympus FV300共焦点レーザ顕微鏡を用いて解析した。
【0225】
〔1−7.免疫電子顕微鏡〕
金コロイド銀増感電子顕微鏡法を、非特許文献13に従って行った。エーテルにて麻酔したマウスを、心臓から生理食塩水を灌流し、次いで、4%パラホルムアルデヒドを溶解した0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を還流した。腎臓を単離してPBSで洗浄した。30%ショ糖を含むPBS溶液を浸透させた組織を切片化(6mm厚)し、シラン化したスライドグラス上に配置して、OTC化合物(Sakura FineTek)中に包埋した。切片を、0.25%サポニンおよび5% BSAを含む0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中にて30分間インキュベートし、次いで、0.005%サポニン、10% BSA、10%ヤギ血清、および0.1% cold water fish gelatin(Sigma)を含むブロッキング溶液を用いてブロッキングした。次いで、切片を、ブロッキング溶液で1000倍希釈したウサギ抗マウスMATE1抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。0.005%サポニンを含む緩衝液で十分洗浄した後、切片を、ヤギ抗ウサギIgG金コロイド(金粒子の直径は1.4mm)を含むブロッキング溶液中で2時間インキュベートし、緩衝液で6回洗浄し、次いで、1%グルタルアルデヒドを用いて10分間固定した。さらに洗浄した後、切片を、銀増感キット(HQ silver Nanoprobes)を室温で5分間処理し、次いで、0.5% 4酸化オスミウムを用いて90分間固定した。超薄切片を、酢酸ウランおよびクエン酸鉛にて2重染色し、Hitachi H−7100電子顕微鏡にて解析した。
【0226】
〔1−8.輸送活性の測定〕
HEK293細胞を、非特許文献14に従って、10%ウシ胎仔血清、ペニシリンおよびストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地中、5% COにて、37℃で培養した。ヒトMATE1またはマウスMATE1をコードするcDNAを、発現ベクターpcDNA3.1(+)(Invitrogen)にサブクローニングして得たpcDNA3.1/hMATE1プラスミドを、TransIT試薬(Mirus)を用いて、培養24時間後のHEK293細胞にトランスフェクトした(細胞数:1.5×10細胞/10cm dish)。2日間培養した細胞を回収し、125mM塩化ナトリウム、4.8mM塩化カリウム、5.6mM D−グルコース、1.2mM塩化カルシウム、1.2mMリン酸二水素カリウム、1.2mM硫酸マグネシウムおよび25mMトリシンからなる活性測定用緩衝液(pH8.0)中に懸濁した。細胞を37℃で5分間インキュベートし、50μMのRI標識化TEA(5kBq/アッセイ)(PerkinElmer Life Science,Inc.)を添加して、輸送活性の測定を開始した。所定の時点で活性測定反応液を200μlずつ回収し、0.45μmのHAメンブレンフィルター(Millipore)を用いて濾過し、フィルター上に残存する放射活性を測定した。
【0227】
〔1−9.ニコチン輸送活性の測定〕
pH8.0における活性測定には、125mM塩化ナトリウム、4.8mM塩化カリウム、5.6mM D−グルコース、1.2mM塩化カルシウム、1.2mMリン酸二水素カリウム、1.2mM硫酸マグネシウムおよび25mMトリシンからなる緩衝液を用いた。また、pH7.0における活性測定には、125mM塩化ナトリウム、4.8mM塩化カリウム、5.6mM D−グルコース、1.2mM塩化カルシウム、1.2mMリン酸二水素カリウム、1.2mM硫酸マグネシウムおよび25mM MOPS−NaOHからなる緩衝液を用いた。
【0228】
上記8で作製したヒトMATE1発現HEK293細胞(8×10個)を懸濁した上記活性測定用緩衝液中に、放射性ニコチン(100nCi、2μM)を添加して最終容量を200μlとした。細胞を37℃で5分間インキュベートした後、懸濁液を5,000rpmにて37℃で遠心分離した。細胞と上清とを分画し、それぞれに含まれる放射活性を液体シンチレーションカウンターにて測定することにより、細胞中へのニコチンの取り込みを測定した。
【0229】
〔1−10.プロトンポンプタンパク質の精製〕
Moriyama Yら、J.Biol.Chem.266,22141−22146(1991)に記載の手順に従って、プロトンポンプであるFタンパク質を調製した。
【0230】
の大量発現プラスミドpBWU13を含有している大腸菌DK8を、0.5%グリセロールを含むTanaka培地(34mM一カリウムリン酸、64mM二カリウムリン酸、20mM硫酸アンモニウム、0.3mM塩化マグネシウム、1μM硫酸鉄、1μM塩化カルシウム、1μM塩化亜鉛、100μg/mlイソロイシン、100μg/mlバリン、2μg/mlチアミン)で培養した後、菌体を回収した。以降の調製を全て4℃で行った。
【0231】
菌体(DK8/pBWU13)約10gを、40mlの膜調製緩衝液(4℃の50mM Tris−HCl(pH8.0)、2mM塩化マグネシウム、0,5mM EDTA、1mM PMSF、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlペプスタチンA、10%(v/v)グリセロール、1mM DTT)に懸濁し、フレンチプレス(1,500kg/cm)で細胞を破砕した。破砕液を17,000×gにて10分間遠心分離し、得られた上清をさらに210,000×gで1時間20分間遠心分離した。得られた膜小胞の沈澱を、F調製用緩衝液(20mM MOPS/NaOH(pH7.0)、1mM硫酸マグネシウム、1mM DTT、1mM PMSF、0.8%オクチルグルコシド)中に懸濁し、再度遠心分離した。沈澱物として調製した膜小胞60mgを、2%のオクチルグルコシドを含む3mlのF調製用緩衝液中に懸濁し、Fを可溶化した。可溶化溶液を、260,000×gで30分間遠心分離し、上清画分からFを回収した。回収したFを、10%(w/v)〜30%(w/v)のグリセロール密度勾配遠心分離(330,000×gで5時間)によって精製した。グリセロール密度勾配を、1%オクチルグルコシドを含むF調製用緩衝液で作製した。密度勾配遠心後、遠心管の底から10分画に分けて分離し、最初の4画分をFとして回収し、−80℃で保存した。
【0232】
〔2:結果〕
〔2−1.遺伝子構造およびヒトMATE1の発現〕
バクテリアにおける多剤排泄輸送体であるMATEファミリーの哺乳動物における類似体をデータベース上で検索した結果、MATEファミリー類似体をコードする遺伝子がヒト第17染色体上に3つ並んで存在することを見出し、これらをhMATE1(アクセッション番号NP−060712)、hMATE2(アクセッション番号NP−690872)およびhMATE3と命名した(図1)。なお、MATE3遺伝子は新規遺伝子であった。
【0233】
上記遺伝子の推定のアミノ酸配列は、MATEファミリーのプロトタイプである、ビブリオ菌のNa依存性多剤排泄輸送体NorM(非特許文献15を参照のこと)に対してそれぞれ19.8%および18.6%の相同性を示した(図2)。図2中、同一のアミノ酸にアスタリスクを付し、推定の膜貫通領域を四角で囲んだ。E273は、輸送活性に重要なアミノ酸であるグルタミン酸である。ヒトMATE1は、その疎水性プロットに基づくと、12箇所の膜貫通領域を有するタンパク質である(図3)。
【0234】
ヒト組織に対するノーザンブロット解析の結果、ヒトMATE1遺伝子は、主に腎臓、肝臓および骨格筋において4.1kbの転写物として発現されていることがわかった。また、ヒトMATE2遺伝子は、腎臓において3.2kbの転写物として発現されているが、その他の組織においては発現されていなかった(図4(a))。
【0235】
〔2−2.腎臓および肝臓におけるヒトMATE1の局在〕
本発明者らは、ヒトMATE1がタンパク質レベルでのH依存性OC輸送体であると考え、その発現および局在を調べた。ヒトMATE1のC末端ペプチドに対する特異的抗体を用いたウエスタンブロット解析の結果、ヒト腎臓膜画分において、推定の分子量サイズに等しい62kDaのバンドを検出した(図4(b))。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)−DAB染色による免疫組織化学の結果、ヒトMATE1タンパク質は、腎臓の近位尿細管および遠位尿細管の表皮細胞部位に発現されており(図4(c))、特に、肝細胞の胆管部位に発現されていることがわかった(図4(d))。
【0236】
〔2−3.マウスMATE1の発現および局在〕
マウスにおけるMATEファミリー類似体を取得して、哺乳動物におけるMATEファミリーの解析をさらに行った。マウスMATEファミリー類似体をコードする遺伝子は、マウス第11染色体上に2つ並んで存在することを見出し、これらをmMATE1(アクセッション番号AAH31436)およびmMATE2(アクセッション番号XP_354611)と命名した(図5)。これらの推定のアミノ酸配列はヒトMATE1に対してそれぞれ78.1%および38.1%の相同性を有した(図6)。
【0237】
マウス組織に対するノーザンブロット解析の結果、マウスMATE1遺伝子は、主に腎臓、肝臓および心臓において3.8kbの転写物として発現されていることがわかった。また、マウスMATE2遺伝子は、特に精巣において3.3kbの転写物として発現されていることがわかった(図7(a))。
【0238】
マウスMATE1に対する特異的抗体を用いたウエスタンブロット解析の結果、マウスの腎臓および肝臓において、推定の分子量サイズに等しい53kDaのバンドを検出した(図7(b))。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)−DAB染色による免疫組織化学の結果、マウスMATE1タンパク質についての反応が、腎臓の集合管および近位尿細管に強く検出され、(図7(c))、特に、ヘンレループの周辺にも反応を検出した(図7(d))。また、弱いレベルではあるが遠位尿細管および糸球体においてもマウスMATE1タンパク質についての反応が明確に検出された(図7(c))。
【0239】
免疫電子顕微鏡解析の結果、近位尿細管の刷子縁膜にマウスMATE1の局在を確認した(図8(a))。肝臓では、マウスMATE1は毛細胆管に存在し、胆管の表面に分布していた(図8(b))。
【0240】
これらの結果より、哺乳動物のMATE1は、主に腎臓(特に近位尿細管の刷子縁膜)および肝臓(毛細胆管)に発現されていることがわかった。このことは、これまでに知られていたH/OCの交換輸送活性と一致している(非特許文献5〜7を参照のこと)。
【0241】
〔2−4.MATE1はプロトン依存性電位差を生じさせることなくOC交換輸送を担う〕
MATE1がプロトン共役のOC交換輸送活性を有するか否かを明らかにするために、ヒトMATE1を発現させたHEK293細胞において生体膜を介するOCのpH依存的な輸送を解析した。本方法に従えば、管腔におけるOC輸送を古典的な細胞取り込み活性として解析し得る(非特許文献14を参照のこと)。ヒトMATE1を発現した細胞は、プロトン共役性のOC輸送体に典型的な基質であるTEAに対して、時間依存的な輸送活性を示した(図9(a)、および(b))。野生型MATE1を発現する細胞において、輸送活性は飽和し、TEAに対するKm値は220μMであった(図9(c))。また、野生型MATE1を発現する細胞において、輸送活性はpH依存性を示し、pH6.0では活性が低く、pHが高くなるにつれて活性が増加し、pH8.0〜8.5において活性は最大であった(図9(d))。しかし、図9(e)に示すように、この輸送活性にはナトリウムイオンは必要ではなかった。すなわち、65mMの塩化カリウム存在下で5μMのバリノマイシンを添加することにより膜の脱分極を引き起こしても、TEA取り込み活性に影響はなかった。また、塩化アンモニウムによってTEA取り込み活性は60%阻害された。さらに、プロトンコンダクターであるSF6847(10μM)、または塩化カリウム存在下でのナイジェリシン(5μM)によりpH勾配を消滅させると、TEA取り込み活性は大きく減少した(図9(e))。
【0242】
これらの結果より、ヒトMATE1は、電位差を生じさせることなくH/TEA交換輸送を行うことがわかった。
【0243】
〔2−5.種々の化合物による輸送活性阻害〕
hMATE1またはmMATE1を発現させたHEK293細胞を用いて、表中の化合物を示した濃度で存在させた場合と存在させなかった場合において、50μMのRI標識化テトラエチルアンモニウム(TEA)の取り込みをpH8.0にて解析した(表1)。
【0244】
【表1】



【0245】
表中の値は、何も添加していない最大のTEAの取り込み活性値を100%とした場合の割合で示した。NMN:N−メチルニコチンアミド。データを、3〜9回の実験の平均値±標準偏差にて示した。*<0.05、**<0.001。
【0246】
記載した化合物の存在下での放射性TEAの細胞への取り込みを測定することにより、当該化合物が輸送基質となるか否かを検討することができる。表1に示すように、TEAの取り込み活性は、シメチジン、キニヂン、ベラパミル、1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP)、ニコチン、コルチコステロン、ローダミン123,テストステロン、メラトニン、プロゲステロン、アンドロステロン、ケルセチンで阻害されている。すなわち、これらの化合物が、MATE1によって輸送されることがわかった。特に、TEAの取り込み活性は、シメチジン、キニジンまたはベラパミルによって強く阻害され、ニコチンまたはコリンによって軽度に阻害された。しかし、有機アニオンであるパラアミノ酪酸または尿酸では全く阻害されなかった。プロトン共役性のOC輸送体の基質としてよく知られているMPPを用いると、TEAを用いた場合と同様のpH依存性が観察され、そのKm値およびVmaxはそれぞれ16μMおよび170pmol/min/mg proteinであった。このように、MATE1の特性は、これまでに予想されていた腎臓におけるプロトン共役性OC輸送活性と全く一致した。
【0247】
ニコチンについての輸送体はこれまでまったく知られていなかったが、放射性ニコチンを用いた実験により、MATE1タンパク質がニコチン輸送体として機能していることを見出した(図10)。図中、データを、3回の実験の平均値±標準偏差にて示した。
【0248】
このように、TEA輸送における競合阻害実験によってMATE1の基質特異性が明らかになった。また、TEA輸送の競合阻害実験の結果は、腎臓におけるプロトン共役性OC輸送活性と同様の結果を示した。
【0249】
〔3:リポソーム組成物を用いた測定系の構築〕
〔3−1.hMATE1発現用バキュロウイルスの作製〕
5’末端にCACCの4塩基対を付加したhMATE1 cDNAをTOPOベクターと混合し、これらをヒートショック法にてコンピテントセル(DH5α)に導入した。hMATE1を組み込んだプラスミドpENTER−hMATE1をカナマイシンにより選択し、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)にて回収した。このプラスミド中のhMATE1 cDNAを、LRリコンビナーゼ(INVITROGEN)を用いて、発現ベクターpDEST10(INVITROGEN)に組み換えた。得られたプラスミドを、アンピシリン培地上で選択し、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)にて回収した。このプラスミドを用いて形質転換したDH10Bac(INVITROGEN)を、カナマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、IPTG(イソプロピルチオガラクトシド)、X−gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)培地上で選択した。DH10Bac細胞はバキュロウイルスのゲノムDNAを有しており、pDEST10上に導入されたcDNAはトランスポゾンによって自動的にウイルスゲノム上に組み換えられる。その結果、ウイルスゲノム上のガラクトシダーゼ遺伝子が破壊され、精製されるコロニーは白くなる。この培地上の白いコロニーからバックミド(組換えウイルスゲノムDNA)を、以下の手順に従うミニプレップ法によって回収した。
【0250】
形質転換したDH10Bacを、0.3mlの溶液I(25mM Tris−HCl(pH8.0)、50mMグルコース、10mMエチレンジアミン4酢酸)に懸濁し、この懸濁液に、同量の溶液II(0.2N NaOH、1%ドデシル硫酸ナトリウム)を添加した。5分間静置した後、この懸濁液に、0.3mlの溶液III(3Mカリウム酢酸(pH5.2))を添加した。この懸濁液を18,000×gで10分間遠心分離し、得られた上清に0.8mlのイソプロピルを添加した。この溶液を氷上で5分間静置した後、さらに15分間遠心分離した。得られた沈澱物を、70%の氷冷エタノールで2回洗浄後、乾燥させた。乾燥した沈殿物を40μlのTE緩衝液(Tris−HCl(pH8.0)、1mMエチレンジアミン4酢酸)に懸濁し、組換えバックミド溶液を得た。
【0251】
組換えバキュロウイルスの作製を下記の手順に従って行った。調製したバックミド約3μlを、セルフェクチン試薬(INVITROGEN)を用いてsf9昆虫細胞(INVITROGEN)に導入した。バックミドを導入したsf9を、10%ウシ胎児血清、100μg/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、0.25μg/mlファンギゾンを含むTNM−FH培地(GIBCO)中で培養した。これらの細胞を27℃で4〜7日間培養した後に培養上清を回収し、培養上清から組換えバキュロウイルスを得た。得られた組換えバキュロウイルスを、再度sf9細胞に感染させ、この感染細胞を70〜75cmフラスコ中で4〜7日間培養した後に培養上清を回収し、培養上清から高濃度ウイルスを得た。
【0252】
〔3−2.hMATE1ポリペプチドの精製〕
21枚の1×10細胞/dishで培養したHi−Five cell(Invitrogen)に、hMATE1発現用ウイルスをMOI=1にて感染させた。感染細胞を、27℃で48時間インキュベートした後に回収した。回収した細胞を、100mM酢酸ナトリウム、10%グリセロール、10μg/mlロイペプチン、10μg/mlペプスタチンAを含有する20mM Tris−Cl(pH8.0)10mlに懸濁した。この懸濁液を遠心分離し、同一の緩衝液10mlに再度懸濁した。同じ操作を繰り返した(2回洗浄)。その後、同じ緩衝液10mlに懸濁した細胞を、超音波発生装置(TOMY UD200)により破砕した。未破砕細胞を2000rpmで8分間の遠心分離により除去し、得られた後の上清を、さらに40,000rpmで1時間遠心分離(Beckman L−60、60T1ローター))した。得られた沈殿を、2%オクチルグリコシド、10%グリセロール,10μg/mlロイペプチン、10μg/mlペプスタチンAを含有する20mM MOPS−Tris(pH7.0)3mlに懸濁し、この懸濁液を氷上で30分間放置した。続いて、TL−100 Ultracentrifugeを用いて70000rpmで30分間遠心分離し、可溶化されたMATE1粗標品を上清として得た。この粗標品にNi−NTA resin(QIAGEN)を加えて4℃で4時間インキュベートした。樹脂を、1%オクチルグリコシド、10%グリセロール,10μg/mlロイペプチン、10μg/mlペプスタチンAを含有する20mM MOPS−Tris(pH7.0)20mlで洗浄し、続いて、1%オクチルグリコシド、10%グリセロール,10μg/mlロイペプチン、10μg/mlペプスタチンAを含有する20mM MOPS−Tris(pH7.0)3ml中でインキュベートし、1.3mgの精製hMATE1ポリペプチドを得た(図11)。
【0253】
図11には、hMATE1の精製段階の各工程(Sは可溶化した昆虫細胞膜画分100μg;W1、W2はそれぞれ洗浄した際の上清80μl;Eは精製hMATE 20μg protein;Lはリポソームに再構成されたhMATE 20μg protein)の一部をSDSゲル電気泳動し、このゲルをCBB染色した結果を示す。図11より、目的のhMATEポリペプチドをほぼ単一のタンパク質バンドとして精製したことがわかる。
【0254】
〔3−3.リポソーム組成物の生成〕
大豆リン脂質(Sigma type IIS)を、10mM MOPS−Tris(pH7.0)、0.5mM DTT中に懸濁した(10mg/ml)。この懸濁液をbath−type sonicatorで超音波処理し、均質な溶液を分注して−80℃で保存した。
【0255】
保存した溶液の一部を溶解し、この溶液150μlに対して1mgの精製hMATE1(800μl)を添加して激しく混和した。これらの混合液を−80℃にて迅速に凍結し、10分間保持した後に手中で溶解し、次いで、0.1M酢酸カリウム、5mM酢酸マグネシウム、0.5mM DTTを含有する、氷冷した20mM MOPS−Tris(pH7.0)20mlと迅速に混合した。この混合液を、45000rpmで1時間遠心分離し、再構成リポソームを沈殿として得た。この再構成リポソームを、0.1M 酢酸カリウム、5mM酢酸マグネシウム、0.5mM DTTを含有する、氷冷した20mM MOPS−Tris(pH7.0)500μlに懸濁して、輸送実験に供した。
【0256】
〔3−4.MATEポリペプチドの輸送活性の測定〕
上述した再構成リポソーム(MATEポリペプチドを含有するリポソーム)40μl(約12μg protein相当)を分取し、さらに、1mMの14C−TEA(0.5μCi)を含む緩衝液(20mM Tricine−NaOH(pH8.0),0.1M酢酸カリウム、5mM酢酸マグネシウム)540μlを添加することにより、測定を開始した。
【0257】
一定時間経過した後に反応液150μlを採取し、セファデックスG50を充填した1mlのテルモシリンジにアプライし、速やかに2000rpmで1分間遠心分離した。シリンジより溶出した液(リポソームを含有する。)を一定量採取し液体シンチレーションカウンターにて放射能量を測定した(図12)。なお、外液はシリンジ内にトラップされている。
【0258】
図12に、輸送の経時変化を示した。外液のpHを変更することにより、リポソーム膜内外に形成されるpH勾配の大きさを変化させることができる。図12に示すように、pHに依存したTEAの取り込みが観察された。トランスポーターであるMATEポリペプチドが存在しない場合は、放射活性はほとんど検出されない(バックグラウンドレベル)。
【0259】
〔4:排泄の最終段階のOC輸送体として機能するMATE1〕
以上の結果に基づけば、MATE1は、これまで長い間にわたって探索されてきた、腎臓および/または肝臓にてOCの排泄の最終段階を担うプロトン共役性OC輸送体であるといえる(図13)。上記結果に基づけば、毒性を有するOCを生体内から排泄する機構に関与する輸送体の全貌を明らかにし得る。
【0260】
OCは,肝臓の有機カチオン輸送体(OCT1)または腎臓の尿細管でのOCT2によって取り込まれるが、取り込まれたOCが、MATE1とP糖タンパク質との協奏反応によって細胞から排泄されることがわかった。競合阻害実験から、MATE1は種々の代謝物を基質とし得ることもわかった。
【0261】
また、動植物〜細菌にわたって、ニコチンの輸送体についてはこれまで全く知られていなかったが、本発明によりMATE1がその機能を担うことが始めて明かされた。また、メラトニンやホルモンの輸送体についてもこれまで知られていないことから、MATE1は臨床的にも非常に重要なタンパク質であるといえる。実際に、マウス肺胞上皮細胞の原形質膜(アピカル側)や脳血管にてMATEポリペプチドが発現している(図14および15)。また、ヒト肺胞上皮細胞においてもhMATE1の発現を確認している(図16)。
【0262】
MATEポリペプチドは、皮膚、松果体等の様々な組織において老廃物の排泄以外の機能を有していることが分かった。皮膚においては、汗腺、皮脂腺等にMATE1が発現しており、薬物の経皮吸収、体臭に関わる物質の排泄等に関わっていることを示している(図17)。メラトニンの分泌を通して概日リズムをコントロールしている松果体においても、MATE1が発現していることが分かった(図18)。このことは、MATE1がメラトニンを輸送基質とすることを間接的に示しており、表1に示した結果を支持する。したがって、MATE1は、松果体細胞でのメラトニントランスポーターであると考えられる。また、ヒトMATE1とマウスMATE1との相同性は非常に高いので、ヒトにおいても同様な役割を担っているものと推定される。
【0263】
さらに、マウスMATE2は、精巣においてテストステロン等のステロイドホルモンを分泌している精巣ライディッヒ細胞に特異的に発現していることが分かった(図19)。このことは、MATE2がステロイドホルモンを輸送することを間接的に示しており、表1に示した結果を支持する。したがって、MATE2はステロイドホルモントランスポーターであると考えられる。ヒトMATE3とマウスMATE2との相同性も非常に高く、発現部位も類似しているので(図20)、ヒトにおいても同様な役割を担っているものと推定される。
【0264】
さらに、植物フラボノイドであるケルセチンは、植物の液胞に蓄積されることが知られているが、その機能は不明である。本発明に従えば、植物において、MATE1様輸送体が植物フラボノイドの輸送体として機能することが示唆される。
【0265】
MATE1およびMATE2が腎臓、肝臓以外にも発現されていることから、MATEタイプの輸送体はOC輸送体以外の機能を有することが示唆される。すなわち、MATEタイプの輸送体は、種々の大きさ、構造、疎水性を有する生理的代謝物の輸送を機能的に制御し、かつ生体内電解質の恒常性を維持する分子機構を担うと考えられる。
【0266】
17q11.2染色体の異常によって生じる、多様性のある先天的な奇形および軽度の精神的発育遅延を呈するスミスマジェニス症候群において、欠損している約80個の遺伝子の中にMATE遺伝子が含まれていることが知られている(例えば、非特許文献16、17を参照のこと)。スミスマジェニス症候群の患者はH/OC輸送体を欠いていると考えられるが、本発明に基づくさらなる研究によって本症候群における症状とMATEファミリーとの関係を明らかにし得る。また、本発明に係る哺乳動物MATE分子によって、生体内毒素、薬物および生体内代謝物の相互作用、遺伝子多型、ならびに遺伝子変異に関する研究が飛躍的に進歩し得る。またさらに、植物における、薬剤に対する耐性または内在性の毒性代謝物に対する耐性は、その植物におけるMATEが関与していると考えられる。このように、MATEファミリーは、自然界における基本的なOC輸送体であり、OCおよびその関連化合物の排泄に広範な役割を担う。
【0267】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0268】
本発明を用いれば、これまで見出すことができなかった薬物および/または老廃物の排泄を調節する薬剤(例えば、医薬品、農薬など)をスクリーニングすることができるので、新たな医薬分野の発展に貢献し得る。また、本発明を用いれば、任意の薬剤の腎毒性および/または肝毒性を試験し得るので、医学/薬学における研究を推進し得るとともに研究ツールの開発に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【0269】
【図1】図1は、hMATE1遺伝子、hMATE2遺伝子およびhMATE3遺伝子の染色体上における位置および構成を示す図である。
【図2】図2は、hMATE1、hMATE2およびhMATE3のアミノ酸配列とバクテリア由来のNorMのアミノ酸配列とのアラインメントを示す図である。輸送活性に重要なE273は全てに保存されていることがわかる。
【図3】図3は、hMATE1の推定の2次構造を示すスキームである。図中、輸送活性に重要なグルタミン酸残基(E273)を丸で囲んだ。
【図4】図4(a)は、hMATE1遺伝子およびhMATE2遺伝子のヒトにおける発現を調べたノーザンブロット解析の結果を示す図である。hMATE1遺伝子は、主に、腎臓、肝臓および骨格筋において発現されており、hMATE2遺伝子は、腎臓において発現されていることがわかる。図4(b)は、抗hMATE1抗体を用いてhMATE1の発現を確認したウエスタンブロット解析の結果を示す図である。抗hMATE1抗体は、HEK293細胞に発現させたhMATE1を特異的に認識する。また、同一サイズのタンパク質が腎臓に存在し、抗hMATE1抗体によるこのタンパク質の検出が、抗原ペプチド(hMATE1のN461〜R546)によって吸収される。図4(c)は、腎臓におけるhMATE1の免疫組織化学の結果を示す図である。ヒト標本切片を、HRP−DAB法により染色した。図中、PCTは、近位尿細管、DCTは、遠位尿細管を示す。バーは100μmである。図4(d)は、肝臓におけるhMATE1の免疫組織化学の結果を示す図である。ヒト標本切片を、HRP法により染色した。バーは100μmである。
【図5】図5は、mMATE1遺伝子およびmMATE2遺伝子の染色体上における位置および構成を示す図である。
【図6】図6は、mMATE1およびmMATE2のアミノ酸配列とhMATE1のアミノ酸配列とのアラインメントを示す図である。図中、同一のアミノ酸にアスタリスクを付した。E273は、輸送活性に重要なアミノ酸であるグルタミン酸である。
【図7】図7(a)は、種々の臓器におけるmMATE1遺伝子およびmMATE2遺伝子の発現を調べたノーザンブロット解析の結果を示す図である。mMATE1遺伝子は、主に、腎臓および肝臓において発現されており、mMATE2遺伝子は、精巣において発現されていた。図7(b)は、抗mMATE1抗体を用いてmMATE1の発現を確認したウエスタンブロット解析の結果を示す図である。抗mMATE1抗体は、HEK293細胞に発現させたmMATE1を特異的に認識する。また、同一サイズのタンパク質が腎臓および肝臓に存在する。図7(c)は、腎臓におけるmMATE1の免疫組織化学の結果を示す図である。マウス標本切片を、HRP−DAB法により染色した。mMATE1は腎皮質に発現されている。図中、GLは糸球体を、PCTは近位尿細管を、DCTは遠位尿細管を、CCDは集合管を示す。バーは100μmである。図7(d)は、腎臓におけるmMATE1の免疫組織化学の結果を示す図である。マウス標本切片を、HRP−DAB法により染色した。mMATE1は腎髄質に発現されている。
【図8】図8(a)は、腎臓におけるmMATE1の免疫電子顕微鏡像を示す図である。mMATE1は尿細管の表皮(膜部分)に存在している。図中、BBMは刷子縁膜を、BMは基底膜を、Mはミトコンドリアを、Lは管腔を示す。バーは1μmである。図8(b)は、肝臓(毛細胆管膜)におけるmMATE1の間接免疫蛍光顕微鏡像を示す図である。図8(c)は、肝臓(胆管膜の表皮側)におけるmMATE1の間接免疫蛍光顕微鏡像を示す図である。図中、BDは小葉間胆管を、HPVは門脈を示す。バーは10μmである。
【図9】図9(a)は、HEK293細胞に発現させたhMATE1の野生型(Wild)、変異体(E273Q)の免疫蛍光顕微鏡像を示す図である。図9(b)は、図9aで示した細胞におけるpH8.0でのTEA(50μM)の取り込みを経時的に観察した結果を示すグラフである。図9(c)は、種々の濃度のTEA輸送を観察した結果を示すグラフである。hMATE1の野生型を発現する細胞における値からプラスミドのみ(Mock)をトランスフェクトした細胞における値を差し引いた。図9(d)は、種々のpHにおけるTEA輸送を観察した結果を示すグラフである。図9(e)は、TEA輸送に対するNaの影響を示すグラフである。図9(f)は、TEAの排泄に対するpHの影響を観察した結果を示すグラフである。
【図10】図10は、MATE1がニコチン輸送体として機能することを示すグラフである。
【図11】図11は、バキュロウイルスの系を用いて精製したhMATE1の各精製工程のサンプルを電気泳動したゲルをCBB染色した結果を示す図である。
【図12】図12は、MATEポリペプチドを含有するリポソームを用いて測定したTEA輸送の経時変化を示した図である。
【図13】図13は、MATE1がOC排泄の最終段階を担う多剤輸送性のOC輸送体であることを示すスキームである。肝臓において、肝細胞はsinusoidal membraneにて有機カチオン輸送体であるOCT1およびOCT2を介してOCを取り込み、MATE1およびMDR1を介して胆汁中に排泄している。腎臓において、尿細管細胞にて主にOCT2によりOCは取り込まれており、MATE1、MDR1およびOCTN2を介して排泄されている。
【図14】図14は、マウス肺胞上皮細胞におけるmMATE1を蛍光染色した結果を示す図である。
【図15】図15は、脳毛細血管におけるmMATE1を蛍光染色した結果を示す図である。図中、バーは10μmである。
【図16】図16は、ヒト肺胞上皮細胞におけるhMATE1をHRP法で染色した結果を示す図である。図中、バーは10μmである。
【図17】図17は、皮膚におけるmMATE1の局在を示す図である。皮脂腺にmMATE1が存在していることがわかる。図中、バーは10μmである。
【図18】図18は、松果体におけるmMATE1の局在を示す図である。松果体細胞にmMATE1が存在していることがわかる。図中、バーは10μmである。
【図19】図19は、精巣ライディッヒ細胞の原形質膜におけるmMATE2の局在を示す図である。図中、バーは10μmである。
【図20】図20は、精巣、骨格筋、腎臓および肝臓でのhMATE3遺伝子の発現量をRT−PCR法で調べたものである。hMATE3遺伝子はmMATE2と同様に精巣にのみ発現していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のポリペプチドを含有していることを特徴とする脂質膜:
・配列番号4または8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは
・配列番号4または8に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド。
【請求項2】
天然由来の脂質膜であることを特徴とする請求項1に記載の脂質膜。
【請求項3】
細胞膜または膜小胞であることを特徴とする請求項2に記載の脂質膜。
【請求項4】
人工の脂質膜であることを特徴とする請求項1に記載の脂質膜。
【請求項5】
脂質平面膜またはリポソームであることを特徴とする請求項4に記載の脂質膜。
【請求項6】
請求項1に記載の脂質膜を作製する方法であって、下記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでいるベクターを用いる工程を包含することを特徴とする方法:
・配列番号4または8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは
・配列番号4または8に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド。
【請求項7】
請求項1に記載の脂質膜を作製するためのキットであって、下記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでいるベクターを備えていることを特徴とするキット:
・配列番号4または8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;あるいは
・配列番号4または8に示されるアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなりかつ細胞膜におけるトランスポーター活性を有するポリペプチド。

【図10】
image rotate

【図12】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2008−22855(P2008−22855A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203497(P2007−203497)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【分割の表示】特願2007−71536(P2007−71536)の分割
【原出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】