説明

哺乳動物発現ベクター

本発明は、調節エレメントの新規組み合わせと一つ又は複数の選択マーカー遺伝子とを含む、新しい哺乳動物発現ベクターを記載する。該ベクターは、少なくとも一つ、好ましくは二つ以上の関心対象の遺伝子の組み込み、その後のその発現、ならびに、例えばG418および/またはMTXを使用したトランスフェクト細胞の選択を可能にする。本発明に係る哺乳動物発現ベクターの例としてのpDGPΔGOIベクターは9555bpの配列を呈し、その一方の鎖が配列番号:2で表される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物ゲノムへ組み込むための(関心対象の遺伝子(gene of interest;GOI)を有するまたは有しない)新しい哺乳動物発現ベクターを記載し、該ベクターは、調節エレメントの新規組み合わせを含む。特に本発明は、調節エレメントであるシミアンウイルス40エンハンサーおよび初期プロモーター領域と、HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、および修飾体とを含む、発現ベクターを記載し、該発現ベクターは少なくとも一つの関心対象の遺伝子を組み込むことおよびその発現を可能にすることができる。好ましくは、そのような発現ベクターは、少なくとも一つの選択マーカー遺伝子を含む(例えば関心対象の遺伝子を含むpDGP、図1を参照されたい;例えば、関心対象の遺伝子を有しないpDGPΔGOI)。(関心対象の遺伝子を有しない)ベクターは、少なくとも一つ、好ましくは二つ以上の関心対象の遺伝子の組み込み、その後のその発現を可能にし、ならびに、例えば、ジェネティシン(G418)および/またはメトトレキサート(MTX)を使用することによりトランスフェクト細胞の選択をも可能にする。本発明に係る哺乳動物発現ベクターの一例としてのpDGPΔGOIベクターは、9555bpの配列を呈し、その一方の鎖が配列番号:2で表される。本発明に係る哺乳動物発現ベクターの別例としてのpDGP-AΔGOIベクターは、3830bpの配列を呈し、その一方の鎖が配列番号:3で表される。
【背景技術】
【0002】
現在、細胞クローニングの前に高産生性の細胞プールを生成してスクリーニングするためには、多数の細胞プールに対して多数回の連続した選択段階を実施しなければならない。その結果、細胞株開発は時間がかかり且つ多くの作業を要する行為となっている。
【0003】
発現レベルに対する調節エレメントの影響に取り組んでいる刊行物は非常に多数存在している。
【0004】
GOIコード配列中に位置するかまたはその上流に隣接する様々なイントロン配列の正の効果が長年に渡り知られており、多数の刊行物に記載されてきた(2、4、5、6)。様々なプロモーターの転写効率に取り組む研究が行われ、CMVプロモーターが最も効率的であると同定された(2、3、4、5、6)。この理由のため、今日のほとんどの哺乳動物発現ベクター中のGOI発現カセットは、CMVプロモーターにより駆動され、GOIコード配列の上流側に隣接したイントロン配列を有している。
【0005】
特定の発現ベクター中でのGOI発現カセットと選択マーカー遺伝子との組み合わせに関しては、数種類の組み合わせが報告され、機能的に試験された(1)。モノクローナル抗体(mAb)発現に関しては、同一プラスミド上にneo発現カセットおよびdhfr発現カセットと共にmAbの両鎖に対する発現カセットを包含するベクターに加えて、軽鎖と重鎖を別々に発現する2つのベクターを用いる解決策が記載されてきた(1)。ほとんどの場合、ルシフェラーゼ(2、5、6)の様な細胞内レポータータンパク質を用いた一過性発現レベルしか測定されなかった。染色体に組み込まれた後の調節エレメントおよび/またはベクターが分泌されたタンパク質の安定な発現レベルにどのような影響を与えるのかを、このアプローチによって予測することは困難であり、その最終的な発現レベルは、転写、翻訳、細胞内輸送、および分泌速度の間の複雑な相互作用の結果である。バイオ医薬品産業にとって最も重要であるにも関わらず、この課題は文献においてほとんど取り組まれていない(3)。特に、細胞株開発に要する時間および細胞株開発の効率に対する調節エレメントと選択マーカーとの具体的組み合わせの妥当性については、全く取り組まれたことが無いように思われる。よって、本発明の主要な目的は、上述したパラメーターである時間および効率に関して、当技術分野で既知のものよりも優れた調節エレメントと選択マーカーとの組み合わせを探索することである。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は上記した欠点を克服し、個々の哺乳動物ゲノムへと組み込むための哺乳動物発現ベクター(特に、関心対象の遺伝子が無い場合には、配列番号:2の配列を呈するpDGPΔGOIおよび配列番号:3の配列を呈しpDGP-AΔGOIと称するベクター;ならびに、関心対象の遺伝子を含む場合には、pDGPおよびpDGP-Aと称するベクターであり、それぞれ図1および図3を参照されたい)を提供し、これは、以下の調節エレメントの新規組み合わせと任意で少なくとも一つの選択マーカー遺伝子(例えば、neo、dhfr)とを含む:シミアンウイルス40(SV40)エンハンサーおよび初期プロモーター領域ならびに、HbbイントロンII(文献、例えば、Xuらの(2)に記載のキメライントロンとは異なり、したがってそれと混同しないようにしなければならないもの)またはそのイントロンの断片、誘導体、および修飾体。そのような発現ベクターは、少なくとも一つの関心対象の遺伝子を組み込むのに適しており、かつそうであるならば、その発現と、引き続く、少なくとも一つの適切な選択剤(例えば、G418および/またはMTX)を使用したトランスフェクト細胞の選択とを可能にするのに、適している。G418を用いたわずか一回の選択段階で、該少なくとも一つの関心対象の遺伝子によりコードされる少なくとも一つのポリペプチドを再現性の高い様式で多量に発現する細胞が選択され、これにより、細胞株を開発するための時間と作業量が有意に減少する。
【0007】
傍注として、以下が考慮されるべきである:二つ以上の選択段階(そのうち一つは通常、MTX選択である)においてゲノムに組み込まれている、先行技術において既知の発現ベクターは通常、そのゲノムに組み込まれた数コピーのGOIを包含する細胞を生成し、したがってGOIの発現率が増加する。非常に対照的に、本発明の発現ベクターは、ゲノムに組み込まれるべきその複数コピーを必要とせず、かつ/または、哺乳動物宿主細胞にGOIを高率で発現させるための2回以上の選択段階を必要としない。このことは、本発明に係る調節エレメントの組み合わせの直接的な成果であり、ゲノムに組み込まれた遺伝子コピー数に関係なく増大した発現率に帰する。本発明の利点は、したがって、十分な発現率を実現するためにG418とMTXをそれぞれ用いる少なくとも一回の選択段階を実施する必要が無く、例示的な選択系として言及すると、G418またはMTXのいずれかを用いるたった一回の選択段階のみで十分であるということである。
【0008】
本明細書中に使用される用語「HbbイントロンII」は、ヒトβ-グロビン(hbb)遺伝子の第2イントロン(Hbbイントロン2)の配列を呈する任意の核酸分子に関し、これは、hbb遺伝子の該Hbbイントロン2の上流側に隣接する10bpの配列とhbb遺伝子のHbbイントロン2の下流に隣接する10bpの配列とを含む。本発明によれば、用語「HbbイントロンIIの断片、誘導体、および修飾体」は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でHbbイントロンIIへハイブリダイズ可能な核酸分子を包含し、該核酸分子は、(SV40エンハンサーと初期領域とを組み合わせる場合)該SV40エンハンサー/プロモーターの組み合わせにおけるHbbイントロンIIが有するのと同じ発現増強活性を有する。特に、用語「HbbイントロンIIの断片、誘導体、および修飾体」は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号:1の配列を呈する核酸分子の鎖もしくはその相補体またはその一部にハイブリダイズし、かつ同じSV40エンハンサー/プロモーターの組み合わせにおいて配列番号:1の配列を呈する核酸分子と同じ発現増強活性を有する、核酸分子を包含する。本発明の好ましい態様によれば、HbbイントロンIIは、配列番号:1に記載される配列を呈する。
【0009】
核酸分子を用いてハイブリダイゼーション実験を実行する様式は、当技術分野において周知である。すなわち、当業者であれば、本発明に従って使用しなければならないハイブリダイゼーション条件がどれであるのかを知っている。そのようなハイブリダイゼーション条件については、標準的な教科書、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual (Sambrook J., RusseII D.W.) Cold Spring Harbor Laboratory (2001) N.Y.、Current Protochols in Molecular Biology (編:Ausubel F.M., Brent R., Kingston R.E., Moore D.D., Seidman J.G, Smith J.A., Struhl K.)[1987年に中核部分を発刊-四半期ごとにアップデート]、著作権2007年、John Wiley and Sons, Inc.が参照される。
【0010】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、例えば、50%ホルムアミドと、5x SSC (750 mM NaCl、75 mMクエン酸ナトリウム)と、50mMリン酸ナトリウム(pH 7.6)と、5x デンハート液と、10% デキストラン硫酸と、20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAとを含む溶液中において40〜60℃で一晩インキュベーションし、その後0.1x SSC中において約65℃でフィルターを洗浄することを指す。より低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件で配列番号:1の配列を呈する核酸分子もしくはその相補体またはその一部にハイブリダイズする核酸分子も意図される。ハイブリダゼーションおよびシグナル検出のストリンジェンシーの変更は、ホルムアミド濃度の操作(ホルムアミドの割合を低くすればするほど、ストリンジェンシーは低くなる)、塩条件または温度の操作によって主に達成される。例えば、より低いストリンジェンシー条件は、6x SSPE (20x SSPE = 3M NaCl; 0.2M NaH2PO4; 0.02M EDTA、pH7.4)と、0.5%SDSと、30%ホルムアミドと、100mg/mlの変性剪断サケ精子DNAとを含む溶液中において37℃で一晩インキュベーションし、その後、1x SSPEおよび0.1%SDSを用いて50℃で洗浄することを含む。また、さらに低いストリンジェンシーを実現するために、ストリンジェントなハイブリダイゼーションに続いて実施される洗浄を、より高い塩濃度(例えば、5x SSC)で実行することが可能である。上記条件におけるバリエーションは、ハイブリダイゼーション実験においてバックグラウンドを抑制するために使用される代替ブロッキング試薬を含めることおよび/または置換することによって達成可能であることに、注目されたい。典型的なブロッキング試薬は、デンハート試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、および市販の専売製剤を含む。特異的ブロッキング試薬を含めることは、相容性の問題により、上記ハイブリダイゼーション条件の改変を必要とする場合がある。
【0011】
したがって、本発明の第1局面は、哺乳動物ゲノムへの組み込み用の発現ベクターの提供を含み、該発現ベクターは、以下の調節エレメント:シミアンウイルス40(SV40)エンハンサーおよび初期プロモーター領域と、HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、および修飾体とを含み、好ましくは、該イントロンは配列番号:1の配列を呈し、該発現ベクターは、少なくとも一つの関心対象の遺伝子の組み込みおよびその発現を可能にする。
【0012】
本発明の前記局面の好ましい態様は、
(i)真核生物および/または原核生物の選択マーカーをコードする少なくとも一つの遺伝子、特にTn5由来ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo)および/またはジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子を含む、本発明の第1局面のベクター;
(ii)環状である、本発明の第1局面のベクター;
(iii)少なくとも一つの関心対象の遺伝子を、前記調節エレメントの制御下に含む、本発明の第1局面のベクター;
(iv)少なくとも一つの関心対象の遺伝子が、免疫グロブリンの軽鎖をコードする遺伝子および/または免疫グロブリンの重鎖をコードする遺伝子である、本発明の第1局面のベクター;
(v)調節エレメント、関心対象の遺伝子、および選択マーカーをコードする遺伝子の順番が以下である、本発明の第1局面のベクター:5'-SV40エンハンサー/初期プロモーター領域、HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、および修飾体、免疫グロブリンの軽鎖をコードする遺伝子、SV40ポリアデニル化シグナル配列;SV40エンハンサー/初期プロモーター領域、HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、および修飾体、免疫グロブリンの重鎖をコードする遺伝子、SV40ポリアデニル化シグナル配列;SV40エンハンサー/初期プロモーター領域、Tn5ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、合成ポリアデニル化シグナル配列、エンハンサー配列を有しないSV40初期プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、SV40ポリアデニル化シグナル配列-3';
(vi)少なくとも一つの原核生物選択マーカー遺伝子、例えば、アンピシリン耐性遺伝子等の抗生物質耐性遺伝子、および/または、哺乳動物発現ベクター中に有利に包含される当業者に既知のさらなる調節エレメントを含む、本発明の第1局面のベクター;ならびに
(vii)9555bpの配列を呈するpDGPΔGOIベクターであり、その一方の鎖が配列番号:2により表される、本発明の第1局面のベクター
である。
【0013】
本発明の第2局面は、前記発現ベクターが機能的であるためおよび哺乳動物宿主ゲノムへ組み込まれるために一般に必要であるさらなるエレメントを含むベクター中に、以下の調節遺伝子エレメント(a)および(b)を配置する工程を含む、本発明の第1局面の発現ベクターの産生方法である:(a)シミアンウイルス40エンハンサーおよび初期プロモーター領域、ならびに(b)HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、および修飾体。
【0014】
本発明の第2局面の好ましい態様は、ベクターによってその発現が付与されるように、(c)少なくとも一つの関心対象の遺伝子、および/または(d)少なくとも一つの選択マーカー遺伝子を配置する工程をさらに含む、方法である。別の好ましい態様によると、少なくともひとつの選択マーカー遺伝子は、Tn5由来のネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子および/またはジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子である。
【0015】
本発明の第3局面は、好ましい態様(i)、(ii)、および(iii)のいずれかにおいて定義された少なくとも2つのベクターを含むベクターシステムであり、該少なくとも2つのベクターの各々が少なくとも一つの関心対象の遺伝子を含む。第1のベクター上に位置する第1の関心対象の遺伝子が免疫グロブリンの軽鎖をコードし、第2のベクター上に位置する第2の関心対象の遺伝子が免疫グロブリンの重鎖をコードする、そのようなベクターシステムが好ましい。本発明により同じく意図される別のベクターシステムは少なくとも2つのベクターを含み、第1のベクターは本発明の第1局面に従うが、真核生物選択マーカーを有さず、第2のベクターは、トランスフェクトされる細胞に耐性を付与する選択マーカーをコードする少なくとも一つの遺伝子を含む。
【0016】
本発明の第4局面は、本発明の第1局面の好ましい態様(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、および(vii)のいずれかの発現ベクター、または本発明の第3局面に係るベクターシステムを含む、哺乳動物細胞である。基本的に、ポリペプチドの組換え発現を可能にする限り、任意の哺乳動物細胞を本発明と組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明の第4局面の好ましい態様によれば、そのような細胞は、COP細胞、L細胞、C127細胞、Sp2/0細胞、NS-0細胞、NS-1細胞、NIH3T3細胞、PC12細胞、PC12h細胞、BHK細胞、CHO細胞、COS1細胞、COS3細胞、COS7細胞、CV1細胞、Vero細胞、HeLa細胞、HEK-293細胞、PER C6細胞、または、2倍体線維芽細胞由来、ミエローマ細胞由来、およびHepG2由来の細胞である。
【0018】
本発明の第5局面は、本発明の第1局面の好ましい態様(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、および(vii)のいずれかの発現ベクターを、または本発明の第3局面のベクターシステムを、哺乳動物細胞に提供し、かつ好ましくはトランスフェクトする工程を含む、本発明の第4局面の細胞の産生方法に関する。
【0019】
本発明の第6局面は、少なくとも一つの関心対象のポリペプチドの発現を可能にする条件下で、細胞培養培地中にて本発明の第4局面の細胞を培養する工程を含む、該少なくとも一つの関心対象のポリペプチドの産生方法である。
【0020】
本発明の上記第6局面の好ましい態様によれば、少なくとも一つの関心対象のポリペプチドを、本発明の第4局面に係るCHO細胞を培養することにより産生する。本発明に係るベクターは、CHO細胞等のげっ歯類細胞中でポリペプチドを産生するのに特に適している。本発明の上記第6局面の別の好ましい態様によれば、そのような方法は、細胞培養培地から、前記少なくとも一つの関心対象のポリペプチドを単離する工程をさらに含む。
【0021】
本発明の第7局面は、HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、および修飾体の使用に関するが、好ましくは、配列番号:1の配列を呈するHbbイントロンIIの使用に関し、該イントロンは好ましくは、哺乳動物発現系における異種遺伝子発現の増強用の哺乳動物発現ベクター中において、SV40エンハンサーおよび初期プロモーター領域と組み合わされる。
【0022】
本発明の第7局面の好ましい態様によれば、そのような使用は、異種遺伝子をコードする配列と該異種遺伝子発現を駆動するSV40エンハンサーおよび初期プロモーター領域との間における、HbbイントロンIIの位置、ならびにその断片、誘導体、および修飾体の位置により定義される。
【0023】
本発明の第8局面は、タンパク質のハイスループットスクリーニング方法における、本発明に係るベクターの使用に関する。
【0024】
アミノ酸配列が異なるタンパク質の、例えばある候補タンパク質の様々な変異体のスクリーニング(試験)は、新しい治療用タンパク質(バイオ医薬品)の開発における通常の初期工程である。このスクリーニングプログラムの目的は、関心対象の試験タンパク質の生物活性、免疫原性、凝集挙動、発現可能性、翻訳後修飾等の分子特徴の評価および引き続く最適化である。
【0025】
現在、ほとんどの場合、上記評価を実施するのに必要な量のタンパク質は、HEK293細胞等のHEK(ヒト胎児腎臓)細胞における一過的タンパク質発現から得る。しかしながらとりわけ法的理由のために、バイオ医薬品の場合には、CHO細胞を最終的な産生細胞として使用することが最も多い。この不一致にも関わらず、産業界および学術界の研究者は、現状のアプローチに沿っている。なぜなら、CHO細胞と比較した場合、HEK細胞中では一過的タンパク質発現により比較的高いタンパク質力価をほぼ最初から得ることができ、これにより、安定的にトランスフェクトされたCHO細胞を得るための長期にわたる選択プロセスの必要性が回避されている。しかしながらこの従来型アプローチの大きな欠点の一つは、スクリーニング(試験)系と最終産生系とが別々の起源の宿主細胞(ヒト細胞対ハムスター細胞)を利用することである。スクリーニング系と産生系とのこの不一致のために別々の増殖培地および処理条件等の使用が当然ながら必要となり、このことによって、例えば関心対象のタンパク質が最終的な産生系で発現されるべき場合には凝集挙動、発現レベル、および翻訳後修飾等の予測に関するデータは、あったとしても限りなくほとんど比較できない(すなわち、関連性のない)ものとなる。したがって、迅速かつ高力価のタンパク質発現(例えば、HEK細胞中での一過的タンパク質発現により得られる)の利点と、最終産生系に主として対応するタンパク質発現系から得られた関心対象タンパク質の初期評価を実行することの利点とを組み合わせるスクリーニング系/試験系が必要である。
【0026】
本発明に係るベクターは、ごく短い選択期間の後に(例えばG418含有培地中で例えば2週間の選択後に)安定的にトランスフェクトされた細胞における関心対象のタンパク質の高容量発現を可能にするので、上記の課題は該ベクターにより解決される。したがって、本発明のベクターを有利に用いて、最終バイオ医薬品を産生するために最終的に使用されうる産生系(例えば、CHO細胞)においておよび細胞培養(例えば、培地および処理)条件下において、試験/スクリーニングの目的のための関心対象のタンパク質(例えば、様々なタンパク質変異体)を直接発現させることができる。本アプローチは、特に複数の治療用タンパク質候補(例えば、タンパク質変異体)の初期開発フェーズにおける、さもなくば該候補タンパク質それぞれに関する安定的にトランスフェクトされた産生細胞株の作製に付随しうる、重大な時間の損失を排除する。同時にこの新しいアプローチは、タンパク質の品質の予後と、(大規模)産生の際のならびに前臨床試験および臨床試験におけるその後の挙動とに関して、より比較できる(すなわち関連性のある)データを生じる。
【0027】
本発明の特に好ましい態様は、以下の方法および使用を含む。
A. 機能的発現ベクターに関して一般的に必要なさらなるエレメントを含むベクター中に、以下の調節エレメント(a)および(b)を配置する工程を含む、請求項1または2記載の発現ベクターを産生する方法:(a)シミアンウイルス40エンハンサーおよび初期プロモーター領域、ならびに(b)HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、および修飾体。
B. (c)前記ベクターがその発現を付与できるように少なくとも一つの関心対象の遺伝子を配置する工程、および(d)選択マーカーをコードする少なくとも一つの遺伝子を配置する工程をさらに含む、Aの方法。
C. 前記少なくとも一つの選択マーカー遺伝子がTn5由来のネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子および/またはジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子である、Bの方法。
D. 哺乳動物発現系での異種遺伝子発現増強用の哺乳動物発現ベクターにおいて異種遺伝子発現を駆動するシミアンウイルス40エンハンサーおよび初期プロモーター領域と組み合わせた、HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、もしくは修飾体の使用。
E. HbbイントロンIIが配列番号:1の配列を呈する、Dの使用。
F. HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、もしくは修飾体が前記異種遺伝子をコードする配列とSV40エンハンサーおよび初期プロモーター領域との間に位置する、DまたはEの使用。
【0028】
2つ以上のGOI発現カセットを呈する本発明の哺乳動物発現ベクターは、多量体タンパク質、特にモノクローナル抗体を含むヘテロ多量体タンパク質の発現のために特に有用である。GOI発現カセットを一つだけ呈する本発明のベクターを有利に用いて、ダルベポエチンαの様な赤血球造血因子を含む、サイトカインおよびホルモン等の単量体タンパク質を発現させることができる。多量体タンパク質、特にモノクローナル抗体を発現させる場合、ベクターシステムは本発明の少なくとも2つのベクターからなるように意図され、ここで、第1のベクターは第1の関心対象の遺伝子を含み、第2のベクターは第2の関心対象の遺伝子を含む。好ましくは、前記ベクターシステムでは、第1のベクター上に位置する第1の関心対象の遺伝子は免疫グロブリンの軽鎖をコードし、第2のベクター上に位置する第2の関心対象の遺伝子は免疫グロブリンの重鎖をコードする。
【0029】
本発明に係る哺乳動物ベクターは、単量体タンパク質および、抗体のような多量体タンパク質の(組換え)産生に適している。一般に、本発明の哺乳動物ベクターを用いて産生可能な(組換え)タンパク質には、以下のタンパク質の一つの全体もしくは一部と同じまたは実質的に類似しているアミノ酸配列を含むものが含まれる:Flt3リガンド、CD40リガンド、エリスロポエチン(EPO)などの赤血球産生刺激タンパク質、ダルベポエチンαを含むダルベポエチン、ならびに、トロンボポエチン、カルシトニン、レプチン、Fasリガンド、NF-κBの受容体アクチベーターに対するリガンド(RANKL)、腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、胸腺間質由来リンホポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マスト細胞増殖因子を含む増殖因子、幹細胞増殖因子、上皮増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、巨核球増殖分化因子、RANTES、増殖ホルモン、インスリン、インスリノトロピン、インスリン様増殖因子、副甲状腺ホルモン、インターフェロン、例えばα-インターフェロン、β-インターフェロン、およびγ-インターフェロン、神経増殖因子、脳由来神経栄養因子、シナプトタグミン様タンパク質(SLP1-5)、ニューロトロフィン-3"グルカゴン、インターロイキン、例えばIL-1、IL-1a、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、およびIL-18、コロニー刺激因子、リンホトキシン-p、腫瘍壊死因子(TNF)、白血病抑制因子、オンコスタチン-M、ならびに、細胞表面分子ELKおよびHekに対する各種リガンド(eph関連キナーゼもしくはLERKSに対するリガンドなど)。
【0030】
本発明の哺乳動物ベクターを使用して産生可能なさらなるタンパク質は、上記タンパク質のいずれかに対するレセプターの、上記タンパク質のいずれかの該レセプターに対するアンタゴニストの、および該レセプターまたはアンタゴニストに実質的に類似するタンパク質の、アミノ酸配列の全体もしくは一部を含むタンパク質を包含する。
【0031】
また、本発明の哺乳動物ベクターを使用して産生可能なさらなるタンパク質は、分化抗原(CDタンパク質と称される)もしくはそのリガンド、またはこれらのいずれかに実質的に類似するタンパク質のアミノ酸配列の全体または一部を含むタンパク質を包含する。そのような抗原の例は、CD20、CD22、CD27、CD30、CD39、CD40、およびそれらに対するリガンドを含む分化抗原である。
【0032】
酵素的に活性なタンパク質またはそのリガンドを、本発明の哺乳動物ベクターを使用して産生することもできる。例としては、以下のタンパク質のいずれかもしくはそのリガンド、またはこれらのいずれかに実質的に類似するタンパク質の、全体または一部を含むタンパク質が挙げられる:メタロプロテイナーゼ-ディスインテグリンファミリーメンバー、キナーゼ、グルコセレブロシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、第VIII因子、第IX因子、アポリポプロテインE、アポリポプロテインA-1、グロビン、IL-2アンタゴニスト、α-1アンチトリプシン、TNF-α転換酵素、上記酵素のいずれかに対するリガンド、ならびに多数の他の酵素およびそのリガンド。
【0033】
本発明の哺乳動物ベクターを用いて、特異的標的タンパク質に結合させその活性を修飾するためにインビトロにて選択されたキメラタンパク質を産生することもでき、かつ、抗体またはその一部およびキメラ抗体、すなわち、一つもしくは複数のマウス可変抗体免疫グロブリンドメインに結合したヒト定常抗体免疫グロブリンドメインを有する抗体、その断片、または実質的に類似するタンパク質を産生することもできる。本発明の哺乳動物ベクターを使用して、抗体と細胞傷害性物質または発光物質とを含む結合体を産生してもよい。本発明の哺乳動物ベクターを使用して産生可能な、抗体、インビトロにて選択されるキメラタンパク質、または、抗体/細胞毒結合体もしくは抗体/発光団結合体の例には、上記タンパク質および/もしくは下記の抗原のいずれかを含むがこれらに限定されないタンパク質の、任意の一つまたは組み合わせを認識するものが含まれる:CD2、CD3、CD4、CD8、CD11a、CD14、CD18、CD20、CD22、CD23、CD25、CD33、CD40、CD44、CD52、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD147、IL-1a、IL-1、IL-2、IL-3、IL-7、IL-4、IL-5、IL-8、IL-10、IL-2レセプター、IL-4レセプター、IL-6レセプター、IL-13レセプター、IL-18レセプターサブユニット、PDGF-βおよびその類似体、VEGF、TGF、TGF-β2、TGF-p1、EGFレセプターVEGFレセプター、肝細胞増殖因子、オステオプロテジェリンリガンド、インターフェロンγ、Bリンパ球刺激物質、C5補体、IgE、腫瘍抗原CA125、腫瘍抗原MUCl、PEM抗原、ErbB2/HER-2、患者の血清中に高レベルで存在する腫瘍関連エピトープ、乳癌、結腸癌、扁平上皮癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、および/もしくは腎臓癌の細胞上ならびに/またはメラノーマ、グリオーマ、もしくは神経芽細胞腫の細胞上で発現する癌関連エピトープまたはタンパク質、腫瘍の壊死性コア、インテグリンα4β7、インテグリンVLA-4、B2インテグリン、TRAILレセプター1、2、3、および4、RANK、RANKリガンド、TNF-α、接着分子VAP-1、上皮細胞接着分子(EpCAM)、細胞間接着分子-3(ICAM-3)、ロイコインテグリンアドヘシン、血小板糖タンパク質gp IIb/IIIa、心筋ミオシン重鎖、副甲状腺ホルモン、MHC I、癌胎児性抗原(CEA)、α-フェトプロテイン(AFP)、腫瘍壊死因子(TNF)、Fc-y-1レセプター、HLA-DR10β、HLA-DR抗原、L-セレクチン、ならびにIFN-γ。
【0034】
本発明の哺乳動物ベクターを用いて、上記タンパク質または実質的に類似するタンパク質のいずれかを含む、組換え融合タンパク質を産生することもできる。例えば、上記タンパク質の一つとロイシンジッパー、コイルドコイル、抗体のFc部分、または実質的に類似するタンパク質等の多量体化ドメインとを含む組換え融合タンパク質を、本発明の哺乳動物ベクターを使用して産生することもできる。そのような組換え融合タンパク質には、TNFRまたはRNAKの少なくとも一部を抗体のFc部分に融合させたタンパク質が特に含まれる。
【0035】
当業者であれば、本発明に関連した使用を意図される種々のさらなるタンパク質を十分に決定可能であることが理解される。
【0036】
本発明に係るベクター(特に、pDGPΔGOI/pDGP)に含まれる遺伝子エレメント(図1中に用いられる略称を参照されたい)は以下である:
・SV40 enh/prom:シミアンウイルス40エンハンサーおよび初期プロモーター領域;
・上記に定義される、HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、および修飾体。
【0037】
本発明に係るベクター(特に、pDGPΔGOI/pDGP)に含まれ得る遺伝子エレメント(図1中に用いられる略称を参照されたい)は以下である:
・neo:アミノグリコシド-3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH 3' II)遺伝子、同じくTn5由来ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子とも呼ばれる;APH 3' IIは、抗生物質ジェネティシン(G418)を不活性化する;
・dhfr:ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子;
・SV40 polyA:SV40由来ポリアデニル化シグナル配列;
・synth polyA:ウサギβ-グロビン遺伝子のポリアデニル化シグナルに基づく合成ポリアデニル化シグナル。
【0038】
(少なくとも一つの関心対象の遺伝子を有するベクターに関して)本発明を例示する一つの態様としてのpDGPベクターを、図1に概略的に示す。これは、発現される遺伝子が異なること、すなわちそれぞれモノクローナル抗体(抗CD20抗体)の軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子であることを除いて、各々が基本的に同一の構造および調節エレメントを示す、2つのGOI発現カセットを含み、したがって該発現カセットは、哺乳動物細胞における2つの異なる関心対象の遺伝子の発現を可能にする。
【0039】
(一つの関心対象の遺伝子を有するベクターに関して)本発明を例示する別の態様としてのpDGP-Aベクターを、図3に概略的に示す。これは、新規かつ進歩的な上記組み合わせの調節エレメントの制御下の(ホルモンまたは赤血球造血因子である)ダルベポエチンα遺伝子を呈する、一つのGOI発現カセットを含む。
【0040】
関心対象の遺伝子は典型的にはcDNA配列であるが、同様に(ゲノム)DNA配列であってもよい。
【0041】
前述したように、本発明に係るベクター(特に、pDGPΔGOI/pDGPおよびpDGP-AΔGOI/pDGP-A)は、選択マーカーをコードする遺伝子/発現カセットを含んでいてもよい。好適な選択マーカーは、neo遺伝子/発現カセットによりコードされるネオマイシンホスホトランスフェラーゼおよびdhfr遺伝子/発現カセットによりコードされるジヒドロ葉酸還元酵素である。選択マーカーをコードする遺伝子/発現カセットは、例えばジェネティシン(G418)およびメトトレキサート(MTX)による、トランスフェクト細胞の選択を可能にする。pDGPのneo発現カセットは、SV40エンハンサーおよび初期プロモーター領域により駆動されるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含み、かつ合成ポリアデニル化シグナル配列(図1にみられるもの)によりさらに転写調節される。ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子は細菌に由来し、上記した調節エレメントの制御下にある場合に哺乳動物細胞中で発現される。非常に対照的に、pDGPのdhfr発現カセットは、(エンハンサー配列を持たない)SV40初期プロモーター領域により駆動されるdhfr遺伝子を含み、3'から5'の方向に配置されるSV40ポリアデニル化シグナルによりさらに転写調節される。酵素であるジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)は、ジヒドロ葉酸をテトラヒドロ葉酸に転換するのに必要であり、これは次に、細胞中での核酸合成に必要となる。メトトレキサートによるジヒドロ葉酸還元酵素の不可逆的阻害により、効率的な細胞選択が実現する。したがって、pDGPベクターを用いたトランスフェクトに成功した(およびしたがって、DHFRタンパク質が過剰発現している)哺乳動物細胞の増殖は、メトトレキサート添加増殖培地中で可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】2つの関心対象の遺伝子、すなわちmAb HCおよびmAb LCを含む、本発明の好ましい態様に係るベクター(ベクターpDGP)を概略的に示す(mAb:モノクローナル抗体;HC:重鎖;LC:軽鎖)。
【図2】対照ベクターを概略的に示す図である。
【図3】一つの関心対象の遺伝子、すなわちダルベポエチンα(略称:Darbe α)を含む、本発明の好ましい態様に係るベクター(ベクターpDGP-A)を概略的に示す。
【図4】GOI(ダルベポエチンα)発現がCMVエンハンサー/プロモーター(CMV enh/prom)およびHbbイントロンIIの調節制御下にある、別の対照ベクター、すなわち対照ベクター1を概略的に示す。
【図5】GOI(ダルベポエチンα)発現が(イントロン配列を全く持たない)SV40エンハンサー/プロモーター(SV40 enh/prom)のみの調節制御下にある、さらに別の対照ベクター、すなわち対照ベクター2を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明に係るpDGP発現ベクターの性能を試験する試みにおいて、本発明者らは、(図1に示される)pDGPと(図2に示される)対照ベクターとを比較した。pDGPと対照ベクターはどちらも、以下の同じ2つの関心対象の遺伝子を含む:(抗CD20抗体の)mAb HCおよびmAb LC。両方のベクターを、同一宿主細胞株(例えば、CHO K1PD、COS1、CV1、Vero、HeLa、HEK-293、PER C6)にトランスフェクトした。次に細胞を、G418およびMTXの存在下で連続的な選択段階に供した。それぞれの選択段階の後、標準的な振とうフラスコバッチでのmAb力価を測定し、比較した。実験の詳細を以下に提示する。
【0044】
本発明に係るpDGP-A発現ベクターの性能を試験するさらなる試みにおいて、本発明者らは、(図3に示される)pDGP-Aと(それぞれ、図4および5に示される)対照ベクター1および2とを比較した。pDGP-Aならびに対照ベクター1および2はいずれも、以下の同じ関心対象の遺伝子を含む:ホルモン(赤血球造血因子)であるダルベポエチンα。ベクターを、同一宿主細胞株(例えば、CHO K1PD、COS1、CV1、Vero、HeLa、HEK-293、PER C6)にトランスフェクトした。上記pDGPベクターと対照的に、発現ベクターpDGP-A、対照ベクター1、および対照ベクター2の各々は、単一のGOI発現カセットを含み、いかなる真核生物選択マーカー遺伝子も含まない。したがって、ジェネティシン(G418)を含有する培地における一段階選択を可能にするために、Neoベクター-ネオマイシン耐性遺伝子を含む-をコトランスフェクトした。実験の詳細を以下に提示する。
【実施例】
【0045】
実験
種々の異なる(組換え)タンパク質を産生するために、本発明に係る哺乳動物ベクターが使用可能でありかつ使用した。以下の実施例は、多量体タンパク質および単量体タンパク質各々の組換え発現の一般的な実験設定を説明する。特に、本発明で後述するデータは、本発明に係る哺乳動物ベクターを使用して発現可能な例示的なタンパク質として、CD20に対するモノクローナル抗体とホルモン(赤血球造血因子)であるダルベポエチンαとを用いることにより、収集された。
【0046】
実施例1:多量体タンパク質(モノクローナル抗CD20抗体)の発現
発現ベクターの設計および作製
この試験で用いたベクターは、ベクターNTI 9.0評価ソフトウエアを用いてインシリコ(in silico)で設計した。pDGPベクターおよび対照ベクター(図2)等のベクターの構築に必要な断片はGeneart AG、レーゲンスブルク、ドイツにおいて調製した。本発明の教示に従って複数のベクター組み立てが実行可能であることは、当業者により理解される。本発明に係るベクターの個々のエレメントは当技術分野において公知であるので、基本的な遺伝子エレメントおよび発現カセットの配列決定または増幅および適当なクローニングにより、適切なベクターを組み立てることができる。したがって、各ベクターを得るためのいくつかの他の態様および様式が適切であり且つ容易に利用可能であることが理解されよう。
【0047】
各発現ベクターにおいて4種類の発現カセットの発現を駆動する調節遺伝子エレメントを、表1に列挙する。
【0048】
(表1)pDGP/対照ベクターに含まれる調節遺伝子エレメントの一覧

【0049】
トランスフェクション用のベクター調製
シングルカットの制限エンドヌクレアーゼSwaI(ATTT AAAT、ロッシュ、カタログ番号11 371 525 001)を使用して、両方の発現ベクターを直線化した。反応当たり最大100μgのベクターDNAを、5U/μg DNAのSwaIを使用して消化した。適切な量の10x反応緩衝液およびH2Oを、反応混合物に加えた。反応混合物を25℃で4時間〜一晩にわたりインキュベートした。消化後、層流チャンバー中で下記のようにDNA沈降を実行した。
・1容量のイソプロパノールを加える。
・徹底的にボルテックスする。
・4℃で21000 x gにて30分間遠心分離する。
・上清を捨てる。
・1容量の滅菌氷冷70%エタノールを慎重に加える。
・4℃で最大速度にて1分間遠心分離する。
・上清を捨てる。
・RTで5〜30分間(層流にて)、ペレットを空気乾燥する。
・100μlの滅菌水中にDNAを再懸濁する。
【0050】
消化後に、直線化DNAの純度(OD 260/280)および濃度を、NanoDrop ND-1000を使用して測定した。消化したDNAのゲル電気泳動(0.8% agarose e-gel、インビトロジェン)を実行して、直線化を調節した。
【0051】
宿主細胞
CHO K1PD細胞、COS1細胞、CV1細胞、Vero細胞、HeLa細胞、HEK-293細胞、PER C6細胞を使用した。
【0052】
CHO K1PD細胞株は、ATCC(カタログ番号CCL-61.3)を起源とするCHO K1細胞株の亜集団である。元の細胞株を、DM122培地中で無血清の浮遊培養に適応させた。CHO K1PD細胞を用いる全ての実験に関して、DM122増殖培地を使用した。
【0053】
トランスフェクション
細胞トランスフェクションにAmaxaシステムを使用した(NucleofectorキットV、カタログ番号VCA-1003)。全ての必要な細胞操作にとって十分な時間を可能にするため、5つ以下のプールを一度にトランスフェクトした。詳細なプロトコルは、以下である。
1. トランスフェクション時、細胞は、生存率≧90%で最大2 x 106個/mlにすべきである。
2. トランスフェクション当たり5 x 106個の細胞を用いる。
3. 細胞を計数して、50mlの遠心管にて、90 x gで10分間、RTで遠心分離する。
4. 慎重に培地を除去し、細胞ペレットを、100μlの溶液V(Amaxaキットに含まれる)中に再懸濁する。
5. DNA(3μg)を加え、穏やかに混合する。
6. 工程5からの混合物をトランスフェクションキュベットに加えて、これをAmaxa Nucleofector装置に配置する。
7. AmaxaプログラムU23を使用して細胞のトランスフェクトを行う。
8. 振とうフラスコにて増殖している細胞(例えば、CHO K1PD)に関しては、キュベット中に幾分かの増殖培地を加え、20mlの増殖培地を用いて125ml振とうフラスコへ慎重に細胞を移す。一度か二度キュベットを新鮮な増殖培地を用いて濯ぎ、前記振とうフラスコへ加える。細胞を、シェーカー(110rpm)中で37℃、10%CO2にて24〜48時間インキュベートする。
【0054】
増殖培地およびG418/MTX選択
細胞(例えば、CHO K1PD細胞、COS1細胞、CV1細胞、Vero細胞、HeLa細胞、HEK-293細胞、PER C6細胞)を、哺乳動物細胞の培養に適した培地中、例えば、実験にCHO K1PDを用いる場合には8mM L-グルタミン(シグマ、カタログ番号G7513)を添加したDM122増殖培地中で、培養した。
【0055】
G418(ジェネティシン、Gibco、カタログ番号10131-027;終濃度:0.8mg/ml)および/またはメトトレキサート(メトトレキサート水和物、シグマ、カタログ番号M8407150;終濃度:150もしくは250nM)をさらに添加した同一の培地中で、選択段階を実行した。
【0056】
トランスフェクション後の第1の選択段階はG418選択であった。細胞生存率が60%を超えた、トランスフェクションの2〜5日後に、G418を細胞に加えた。G418選択は通常2〜4週間要する。細胞生存率が少なくとも85%に達したら、MTX選択を実行した。
【0057】
1ml当たり生細胞2 x 105個の播種密度を用いて、G418で予め選択した細胞に対してMTX選択を開始した。2回の副選択段階を、上記したMTX濃度(150/250nM)を使用して実施した。MTX選択は、細胞生存率が85%超に達するまでに、通常2〜3週間要する。
【0058】
細胞の融解/凍結
細胞を37℃にて融解し、1ml当たり生細胞約105個の初期細胞密度で、予め温めた培地50mlを含む250ml振とうフラスコへ直接滴下接種した。細胞を、37℃、10%CO2、110rpmにて培養した。
【0059】
生存率>90%の指数増殖期にある細胞を凍結させた。1バイアル当たり5〜10 x 106個の生細胞を、7.5%DMSOを含む条件培地中で凍結させた。まず、細胞培養物を、180 x g、5分、RTにて遠心分離した。次に、上清を一部除去した。その後、DMSOを残余上清に加えて、7.5%の終濃度にした。細胞ペレットを穏やかに再懸濁した。クライオバイアルを各細胞懸濁物1mlで充填し、ミスターフロスティークライオボックスに入れて-80℃のディープフリーザーへ移した。1ヶ月以内に、クライオバイアルに入った凍結細胞を、液体窒素容器へ移した。
【0060】
細胞の培養および取り扱い
2〜3日ごとに、1ml当たり生細胞1〜1.5 x 105個の密度で細胞を分割し、適切な予め温めた増殖培地に加えて、指数増殖を維持した。
インキュベーション条件:37℃、(125および250mlの振とうフラスコの場合)90〜110rpm、(DM122培地の場合)10%CO2。
【0061】
mAb発現の試験
各選択段階(G418、MTX)の後、適切な添加培地(例えば、DM122)における10日間バッチ実験を実施して、mAbの発現を評価した。細胞を、125ml振とうフラスコ中で、生細胞1.5 x 105個/mlの最終密度で播種した。総培養容量は、25mlであった。細胞を、振とうインキュベーター(37℃、110rpm、10%CO2)にて培養した。10日目に、1mlの細胞培養上清試料を分取し、mAbの力価を測定した。mAb含量を、AC(プロテインAを用いたアフィニティークロマトグラフィー)により測定した。
【0062】
結果
異なる選択段階後の、pDGPベクターをトランスフェクトした細胞の10日目バッチ力価を、表2に示す。
【0063】
(表2)10日目バッチ力価;異なる選択段階後の、pDGPベクターをトランスフェクトした細胞

【0064】
異なる選択段階後の、対照ベクターをトランスフェクトした細胞の10日目バッチ力価を、表3に示す。
【0065】
(表3)10日目バッチ力価;異なる選択段階後の、対照ベクターをトランスフェクトした細胞

【0066】
pDGPをトランスフェクトした細胞では、対照ベクターをトランスフェクトした細胞と比較して4〜5倍高い力価が、G418選択後に測定された。平均すると、MTX選択後の両実験アプローチでは、同等の力価が測定された。しかしながら、pDGPをトランスフェクトした細胞(±10%)で得られた力価は、対照ベクターをトランスフェクトした細胞(±50%)よりもずっと再現性が高かった。
【0067】
実施例2:単量体タンパク質(ダルベポエチンα)の発現
発現ベクターの設計および構築
この試験で使用されるベクターおよび断片が、実施例1に記載されるように設計および調製した。ダルベポエチンαを用いる発現実験は、上記pDGPΔGOIベクターのさらなる誘導体であるpDGP-AΔGOIベクターを用いて実施した。pDGP-AΔGOIベクターは、前述のpDGPΔGOIベクター(および実施例1のpDGPベクター)と同じ、挿入されたらGOI発現を駆動する以下の調節エレメントの新規かつ進歩的な組み合わせを含む:シミアンウイルス40エンハンサーおよび初期プロモーター領域ならびにHbbイントロンII。本実施例では、例示的な関心対象のタンパク質として、ダルベポエチンαをpDGP-AΔGOIに挿入する。またこの試験は、対照ベクター1、対照ベクター2、およびNeoベクターを使用した(下記を参照されたい)。
【0068】
実施例1で使用したpDGPベクターと対照的に、(Neoベクターを除く)上記発現ベクターの各々は、単一のGOI発現カセットを含み、いかなる真核生物選択マーカー遺伝子も含まない。したがって、ジェネティシン(G418)を含有する培地中での選択を可能にするために、すべての実験において、Neoベクター-ネオマイシン耐性遺伝子を含む-をコトランスフェクトした。実施例2は、したがって、本発明の第3局面に係るベクターシステムを表す。
【0069】
pDGP-Aベクターならびに対照ベクター1および2においてダルベポエチンαの発現を駆動する調節遺伝子エレメントを、表4に列挙する。同じく表4は、Neoベクターにおいてネオマイシン耐性遺伝子の発現を駆動する調節遺伝子エレメントを示す。
【0070】
(表4)pDGP-Aベクター、対照ベクター1、対照ベクター2、およびNeoベクターに含まれる遺伝子調節エレメントの一覧

【0071】
宿主細胞
実施例1と同じ細胞株を使用した。
【0072】
トランスフェクション
実施例1と同じトランスフェクション方法およびシステムを使用した。
【0073】
増殖培地およびG418選択
細胞(例えば、CHO K1PD細胞、COS1細胞、CV1細胞、Vero細胞、HeLa細胞、HEK-293細胞、PER C6細胞)を、哺乳動物細胞の培養に適した培地中、例えば実験にCHO K1PDを用いる場合には8mM L-グルタミン(シグマ、カタログ番号G7513)を添加した社内開発DM122増殖培地中で、培養した。
【0074】
選択段階は、G418(ジェネティシン、Gibco、カタログ番号10131-027;終濃度:0.8mg/ml)をさらに添加した同一培地中で実施した。
【0075】
細胞生存率が60%を超えた、トランスフェクションの2〜5日後に、G418を細胞に加えた。G418選択は通常2〜4週間要する。
【0076】
細胞の融解/凍結
細胞の融解/凍結は実施例1に記載したように実行した。
【0077】
細胞の培養および取り扱い
細胞の培養および取り扱いは実施例1に記載したように実行した。
【0078】
ダルベポエチンα発現に関する試験
G418選択段階後に、安定的なダルベポエチンαの発現に関して、プールを試験した。適切な添加培地(例えば、DM122)におけるバッチ実験を実行して、ダルベポエチンαの発現を評価した。細胞を、125mlの振とうフラスコ中で、生細胞1.5 x 105個/mlの最終密度で播種した。総培養容量は、25mlであった。細胞を、振とうインキュベーター(37℃、110rpm、10%CO2)にて培養した。5日目と9日目に、0,5mlの細胞培養上清試料を分取して、ダルベポエチンαの力価を測定した。ダルベポエチンα含量を、EPO特異的ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)試験(Epo-ELISA Quantikineキット、R&D Systems、カタログ番号:DEP00)により測定した。
【0079】
結果
pDGP-A、対照ベクター1、および対照ベクター2をトランスフェクトした細胞のバッチ培養物における5日目および9日目のダルベポエチンα含量を、表5に示す。
【0080】
(表5)pDGP-Aベクター、対照ベクター1、および対照ベクター2をそれぞれトランスフェクトした細胞のバッチ培養物における、5日目および9日目のダルベポエチンα含量

【0081】
pDGP-Aベクターをトランスフェクトした細胞からは、対照ベクター1をトランスフェクトした細胞と比較して5〜10倍高い力価が、G418選択後に得られた。pDGP-Aベクターの使用により、対照ベクター2をトランスフェクトした細胞と比較して最大14倍高い力価のダルベポエチンαが得られ、このことは、組換えタンパク質発現を駆動する調節エレメントとしての、シミアンウイルス40エンハンサーおよび初期プロモーター領域とHbbイントロンIIとの組み合わせの利点および優位性を示している。
【0082】
結論
本発明の発現ベクター(例えばpDGPおよびpDGP-A)は、当技術分野で現在使用される発現ベクター(前記対照ベクターなど)に対して以下の利点を提供する。
・高い再現性のために、本発明に係るベクターの例としてのpDGPおよびpDGP-Aを使用することは、産生及び試験すべき細胞試料(すなわち、トランスフェクト細胞のプール)の数を、わずか3〜5つへと著しく減少させ、それにより作業負荷を有意に削減する。現在は、低い再現性のために、高産生性の細胞試料を同定するためには多数の細胞試料(最大50個)を生成することが一般に必要である。
・pDGPおよびpDGP-A等のベクターを使用することにより、産物の特徴決定、前臨床試験、および第一相試験のために十分な力価をもつ関心対象の発現タンパク質が、たった1回のG418一段階選択後に提供される。細胞クローニングの前にタンパク質(例えば、抗体)力価を増加させるための追加のMTX選択段階は必要ない。
・選択段階の回数がG418段階1回のみに削減されるので、例えばpDGPまたはpDGP-Aを使用すると、細胞株を開発するのに必要な時間を著しく削減することができる。
【0083】
参考文献


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の調節エレメントを含む哺乳動物発現ベクターであって、少なくとも一つの関心対象の遺伝子を組み込むことおよびその発現を可能にすることができる、ベクター:
(a) シミアンウイルス40エンハンサーおよび初期プロモーター領域;ならびに
(b) HbbイントロンIIまたは、その断片、誘導体、および修飾体。
【請求項2】
HbbイントロンIIが配列番号:1の配列を呈する、請求項1記載のベクター。
【請求項3】
真核生物および/または原核生物の選択マーカーをコードする少なくとも一つの遺伝子をさらに含む前記ベクターであって、
特に、少なくとも一つの該真核生物選択マーカー遺伝子がTn5由来のネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子および/またはジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子である、請求項1または2記載のベクター。
【請求項4】
環状であり、かつ/または、請求項1の(a)および(b)で定義される前記調節エレメントの制御下の少なくとも一つの関心対象の遺伝子を含む、前記請求項のいずれか一項記載のベクター。
【請求項5】
前記ベクターが少なくとも一つの関心対象の遺伝子を含み、該少なくとも一つの遺伝子が、免疫グロブリンの軽鎖および/または免疫グロブリンの重鎖をコードする、請求項4記載のベクター。
【請求項6】
前記調節エレメント、前記関心対象の遺伝子、および選択マーカーをコードする前記遺伝子の順序が以下である、請求項1〜5のいずれか一項記載のベクター:
5'-SV40エンハンサー/初期プロモーター領域、HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、および修飾体、免疫グロブリンの軽鎖をコードする遺伝子、SV40ポリアデニル化シグナル配列;SV40エンハンサー/初期プロモーター領域、HbbイントロンIIまたはその断片、誘導体、および修飾体、免疫グロブリンの重鎖をコードする遺伝子、SV40ポリアデニル化シグナル配列;SV40エンハンサー/初期プロモーター領域、Tn5ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、合成ポリアデニル化シグナル配列;SV40初期プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、SV40ポリアデニル化シグナル配列-3'。
【請求項7】
9555bpの配列を呈するpDGPΔGOIベクターであり、その一方の鎖が配列番号:2により表される、請求項1〜6のいずれか一項記載のベクター。
【請求項8】
請求項3または4記載のベクターを少なくとも2つ含むベクターシステムであって、少なくとも2つの該ベクターの各々が少なくとも一つの関心対象の遺伝子を含む、ベクターシステム。
【請求項9】
第1のベクター上に位置する第1の関心対象の遺伝子が免疫グロブリンの軽鎖をコードし、第2のベクター上に位置する第2の関心対象の遺伝子が免疫グロブリンの重鎖をコードする、請求項8記載のベクターシステム。
【請求項10】
第1のベクターが請求項1または2で定義され、第2のベクターが、トランスフェクトされる細胞に耐性を付与する選択マーカーをコードする少なくとも一つの遺伝子を含む、少なくとも2つのベクターを含む、ベクターシステム。
【請求項11】
第1のベクターが、3830bpの配列を呈するpDGP-AΔGOIベクターであり、その一方の鎖が配列番号:3で表される、請求項10記載のベクターシステム。
【請求項12】
請求項3〜7のいずれか一項記載の発現ベクターを含むか、または請求項8〜11のいずれか一項記載のベクターシステムを含む、哺乳動物細胞。
【請求項13】
COP細胞、L細胞、C127細胞、Sp2/0細胞、NS-0細胞、NS-1細胞、NIH3T3細胞、PC12細胞、PC12h細胞、BHK細胞、CHO細胞、COS1細胞、COS3細胞、COS7細胞、CV1細胞、Vero細胞、HeLa細胞、HEK-293細胞、PER C6細胞、または、2倍体線維芽細胞およびミエローマ細胞およびHepG2に由来する細胞である、請求項12記載の細胞。
【請求項14】
請求項3〜7のいずれか一項記載の発現ベクターまたは請求項8〜11のいずれか一項記載のベクターシステムを哺乳動物細胞に提供する工程を含む、請求項12記載の細胞を産生するためのエクスビボ法。
【請求項15】
少なくとも一つの関心対象のポリペプチドの発現を可能にする条件下で、細胞培養培地において請求項12記載の細胞を培養する工程を含む、該少なくとも一つの関心対象のポリペプチドを産生するための方法。
【請求項16】
前記少なくとも一つの関心対象のポリペプチドが前記細胞培養培地中に分泌される前記方法であって、該細胞培養培地から該少なくとも一つの関心対象のポリペプチドを単離する工程をさらに含む、請求項15記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−513192(P2012−513192A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541479(P2011−541479)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067540
【国際公開番号】WO2010/072676
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(507189080)レック・ファーマシューティカルズ・ディー・ディー (2)
【氏名又は名称原語表記】LEK PHARMACEUTICALS D.D.
【Fターム(参考)】