説明

哺乳類の組織再生用のスキャフォールド

相互に連通する孔を有する、組織修復用の三次元スキャフォールドであって、該スキャフォールドは、組織スキャフォールドの構造支持のためのスキャフォールド本体を含んでおり、前記スキャフォールド本体は、該スキャフォールド本体を規定し且つ0.4MPaを超えるスキャフォールド本体の圧縮強さを提供するために、相互に結合されたスキャフォールド本体の要素を含み、前記スキャフォールド本体の要素は、約40〜約90重量%のBと2種以上の酸化物とを含んでおり、前記スキャフォールド本体は約15〜約90容量%の多孔率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織の修復、再生および増殖を促進するための、哺乳類への移植用の生体適合性スキャフォールドに関する。
【背景技術】
【0002】
Dayらの米国特許第6,709,744号には、
NaO - 20〜35重量%
CaO - 20〜35重量%
- 0〜10重量%
- 30〜50重量%
を含有するホウ酸塩系のガラスまたはセラミック材料を含んでいる移植用の生体適合性材料が記載されている。具体例は、約22.9重量%のNaO、約22.9重量%のCaO、約5.6重量%のP、および約48.6重量%のBを含むガラスである。これらの材料は、生体内(in vivo)または移植前にリンを含む流体にさらされた場合に、ヒドロキシアパタイトの形成を促進するために、高濃度のCaOを含む。これらの材料は、例えば、ホストへ放出するためのガラス製キャピラリーチューブ内に緩やかに詰められた緩い(ルーズな)粒子の形態にされている。Liangら、Bioactive Borate Glass Scaffold for Bone Tissue Engineering, J. Non-Crystalline Solids 354 (2008), p. 1690-96;およびYaoら、In-Vitro Bioactive Characteristics of Borate-Based Glasses with Controllable Degradation Behavior, J. Am. Cer. Soc. 90 (2007), p. 303-306 にも、そのようなヒドロキシアパタイトの形成を促進するために高濃度のCaOを含んで処方(formulated)されたホウ酸塩系のガラスが開示されている。例えば、Yaoらにより記載されている、0B、1B、2Bおよび3Bガラスは、0重量%、17.7重量%、35.4重量%および53重量%のホウ酸塩を含んでいる。
【発明の概要】
【0003】
従って、簡潔に述べると、本発明は、組織の修復のための相互に連通した孔を備えた三次元スキャフォールド(scaffold:足場)であって、組織スキャフォールドの構造的な支持のためのスキャフォールド本体を含むものを対象としており、ここでスキャフォールド本体は、スキャフォールド本体を規定し且つ0.4MPaを超えるスキャフォールド本体の圧縮強さを提供するために、相互に結合されたスキャフォールド本体の要素(scaffold body components)を含んでおり、スキャフォールド本体の要素は、約40〜約90重量%のBおよび以下に記載された他の酸化物の中から2種以上の酸化物を含む要素材料(component material)から成り、スキャフォールド本体は約15〜約90容量%の多孔率を有する。
【0004】
他の目的および本発明の特徴は、一部は明らかであり、一部は以下に指摘される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1A】図1Aは、本発明のスキャフォールドの調製に用いられるガラス繊維の写真である。
【図1B】図1Bは、本発明のスキャフォールドの調製に用いられる型(mold)の写真である。
【図1C】図1Cは、本発明のスキャフォールドの写真である。
【図2】図2は、本発明のスキャフォールドの断面の写真である。
【図3】図3は、本発明のスキャフォールドの断面のSEM顕微鏡写真である。
【図4】図4は、本発明のスキャフォールドの断面のSEM顕微鏡写真である。
【図5】図5は、組織染色に付した本発明のスキャフォールドの断面の光学顕微鏡写真である。
【図6】図6は、組織染色に付した本発明のスキャフォールドの断面の光学顕微鏡写真である。
【図7】図7は、組織染色に付した本発明のスキャフォールドの断面の光学顕微鏡写真である。
【図8】図8は、組織染色に付した本発明のスキャフォールドの断面の光学顕微鏡写真である。
【図9】図9は、組織染色に付した従来技術のスキャフォールド材料を使用しているスキャフォールドの断面の光学顕微鏡写真である。
【図10】図10は、組織染色に付した従来技術のスキャフォールド材料を使用しているスキャフォールドの断面の光学顕微鏡写真である。
【図11】図11は、以下の実施例に記載されたスキャフォールドのX線回折プロファイルである。
【図12】図12A〜12Fは、実施例のスキャフォールドの写真である。
【図13】図13は、図12のスキャフォールドの移植後の写真である。
【図14】図14は、図12のスキャフォールドの移植後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<好適な実施形態の説明>
本発明の組織スキャフォールドは、1つの態様において、繊維、中空繊維、チューブ、リボン、中実球、中空球、粒子、およびそれらの組合せの1つ以上の形態の構造要素を使用する。要素は、ホウ酸塩系の要素材料で、ガラス、結晶、またはガラスと結晶との組合せであるものから形成されており、ヒドロキシアパタイトまたは他のリン酸カルシウム化合物の生成を促進するためのCaOは含んでも含まないでもよい。
【0007】
スキャフォールド本体の構造要素は、スキャフォールド本体を規定し且つ0.4MPaを超えるスキャフォールド本体の圧縮強さを提供するために、典型的には加熱によって、相互に結合されている。所望の圧縮強さは、構成要素が決して流動しないように、および、個々の本体要素に分解せずにスキャフォールド本体を取り扱うことができるように、選ばれる。所望の圧縮強さはまた、耐力本体部(load-bearing body part)または非耐力部(non-load-bearing part)の修復のためであろうとなかろうと、衝撃または著しい動きにさらされるもののため、移植後に全体を保持するのに必要な強度を提供するように選ばれる。いくつかの好ましい実施形態では、スキャフォールド本体の圧縮強さは少なくとも約5MPaであり、さらに、より大きな剛性が必要とされる他の実施形態では、圧縮強さは少なくとも約20MPa、例えば約20〜約200MPaである。
【0008】
好ましい実施形態において、材料は、
40〜90
NaO 0〜25
LiO 0〜25
O 0〜25
RbO 0〜25
CaO 0〜40
MgO 0〜25
SrO 0〜40
BaO 0〜50
LiO+NaO+KO+RbO 累積で0〜50
MgO+SrO+BaO+CaO 累積で0〜50
0〜10
SiO 0〜18
Al 0〜3
F 0〜4
遷移金属元素 累積で0〜10
を含み、特記しない限り、記載された全てのパーセンテージは重量基準である。これらの実施形態で特定のものにおけるKOおよびMgOの濃度は、それぞれ約1〜約25重量%である。大部分の実施形態において、LiO、NaO、KOおよびRbOの1種以上は、累積濃度(cumulative concentration)で約1〜約50重量%存在し、そして、MgO、SrO、BaOおよびCaOの1種以上は累積濃度で約1〜約50重量%存在する。
【0009】
大部分の実施形態において、スキャフォールドは、これらの組成に関する要件または本明細書に記載されたその他のより狭い記載事項を満足する要素のみから、または本質的に当該要素から形成されている。しかしながら一般的に言って、いくつかの実施形態には、これらの記載事項を満足しない他の材料をスキャフォールドに取り込んでもよい。
【0010】
本明細書の範囲内にある典型的なスキャフォールド要素の材料は、以下の成分を重量%で含む。
【0011】
【表1】

【0012】
当然のことながら、スキャフォールドは、40〜90重量%のBまたは50〜90重量%のB、場合によっては本明細書に記載されたより狭い範囲Bを、1〜25重量%のNaO、1〜25%のKO、1〜40重量%のCaO、1〜25重量%のMgO、および1〜10重量%のPと組み合わせて含有する要素材料を含んでいる。または、要素材料は、40〜90重量%のB、1〜25重量%のLiOおよび1〜40重量%のCaOを含むことができる。または、それらは、40〜90重量%のB、1〜25重量%のNaOおよび1〜40重量%のCaOを含むことができる。または、それらは、40〜90重量%のB、1〜25重量%のNaOおよび1〜40重量%のBaOを含むことができる。または、それらは、40〜90重量%のB、1〜25重量%のLiOおよび1〜25重量%のMgOを含むことができる。または、それらは、40〜90重量%のB、1〜25重量%のLiOおよび1〜40重量%のBaOを含むことができる。本明細書のスキャフォールド要素の材料は種々の酸化物を重量%で含むと記載しているが、当業者であれば、最終的なガラスまたはガラス/結晶の組成物中で、酸素、バリウム、ホウ素などの個々の元素の大部分が解離していること、そして特定の酸化物(例えばBなど)が単、独で同定可能はなく必ずしも単独で存在するわけではないことを理解する。それにもかかわらず、最終組成物を、個々の酸化物を所定の%(割合)で含む、と称することは技術分野における慣習であり、従って本明細書でもそのようにする。よって、この観点から、本願明細書の組成物は等価ベース(equivalent basis)である。
【0013】
本発明のスキャフォールド要素の材料は、約40〜約90重量%のB、例えば約50〜約90重量%のBを含むので、ホウ酸塩系(borate-based)である。ホウ酸塩ガラスは、生物学的使用においていくつかの重要な利点、例えば、調製が容易であること、比較的低い温度にて結晶化せずにガラスの粒子、微小球体または繊維にできること、そして、特に、生体適合性および高い生理活性などの利点を有する。本願明細書に開示したホウ酸塩ガラスは、ケイ酸塩ガラスに比べて、著しく速い反応速度、低い溶融温度、結晶化に対する耐性を有し、そして、シリカが存在しない特定の場合には、体内でゆっくりと分解する。本明細書の多くの他の好ましい実施形態のうち特定の実施形態は約18重量%までのSiOを使用するが、スキャフォールドは、0.1重量%未満でケイ酸塩を含むまたはケイ酸塩をまったく含まない「ケイ酸塩フリー」である。ホウ酸塩ガラスは生体内(in vivo)で反応すると中空糸を形成するが、ケイ酸塩ガラスは形成しない。そしてそれらの中空糸は生体内での血管形成を容易にする。また、本願明細書に記載のホウ酸塩材料は、体液と反応したときに生体内(in vivo)でホウ素を放出するが、ホウ素は骨密度を高め、MgおよびCa(これは、自然骨の成分である)の生物学的機能をサポートすることが報告されているので、ホウ酸塩ガラスは骨の修復/再生に付加的な作用をもたらすことができる。
【0014】
本明細書の実施例および図面に記載されたホウ酸塩ガラス繊維の自己結合スキャフォールド(self-bonded scaffolds)は、体液と急速に反応し、4週間未満で、初期重量の60%まで減って、血管新生した軟組織で完全に含浸された(impregnated with)。ホウ酸塩ガラスの生体内(in vivo)での反応速度(後述の実施例9での計算によって近似することができる)が速いほど、その人工材料が体内に存在する時間は短縮され、より速く完全な欠損の治癒を促進することができる。事前の生体内実験では、ホウ酸塩ガラスは、市販の生理活性ケイ酸塩ガラス組成物よりも、著しく軽度な免疫反応を引き起こすようである。
【0015】
特定の用途において特定の優先度(specific preference)を有する1つの実施形態が存在し、そこではスキャフォールド本体の要素の材料中にあるCa(元素として、CaO中に、または他の化合物として)の濃度は、約5重量%未満に制御される。特定の好ましい実施形態では、Ca濃度は約0.5重量%未満(例えば0.2重量%未満、さらには0.1重量%未満)に厳密に制御される。この実施形態においてCa濃度を厳密に制御する利点は、生理的リン含有流体にさらされたときにアパタイトおよび関連する化合物が形成されるのを回避できることである。そのようなアパタイト化合物は、ヒドロキシアパタイト Ca(PO(OH)、フルオロアパタイト Ca(POF、アモルファスリン酸カルシウム (ACP)を含む。特定の用途では、Ca−アパタイト化合物は、例えば類似のBa化合物に比べて比較的低い放射線不透過性を有するので、Ca−アパタイト化合物の形成を回避することが有利である。特定の状況では、より急速に、あるいはよりゆっくりと分解する化合物を形成するために、Ca−アパタイト化合物を回避することが有利である。また、粘度、溶融温度および/または結晶化傾向などの溶融特性(melt characteristics)を制御するためにCaを回避することも有利であろう。
【0016】
1つの実施形態において、Caフリー材料から形成された本発明のスキャフォールドは、アルカリ酸化物およびアルカリ土類酸化物から選ばれた残部を含む約40〜約90重量%のBと、以下に記載されている他の任意成分とを含むことが好ましい。例えば、このスキャフォールド材料は、重量%で
40〜90
NaO 0〜25
LiO 0〜25
O 0〜25
RbO 0〜25
MgO 0〜25
SrO 0〜40
BaO 0〜25
LiO+NaO+KO+RbO 累積で0〜50
MgO+SrO+BaO 累積で0〜50
0〜10
SiO 0〜18
Al 0〜3
F 0〜4
遷移金属元素 累積で0〜10
を含む。
これらの実施形態のいくつかは、上述したように低レベルのCaを含むが、その一方、他の実施形態は実質的にCaフリーであり、Caを本質的に含まないか、またはCaを0.1重量%未満で含む。
【0017】
1つの好ましい実施形態では、材料は、約50〜約80重量%のBと、約5〜約20重量%の、LiO、NaO、KO、RbOおよびそれらの組合せからなる群から選ばれるアルカリ酸化物成分と、約5〜約40%の、MgO、SrO、BaOおよびそれらの組合せからなる群から選ばれるアルカリ土金属酸化物成分と、場合によりP、SiO、Al、Fおよび遷移金属元素を含む。ランタニドは、特定の好ましい実施例からは、とりわけ厳密に除外される。いくつかの実施形態において、スキャフォールド材料は、本質的には、約50〜約80重量%のBと、約5〜約20重量%の、LiO、NaO、KO、RbOおよびそれらの組合せからなる群から選ばれるアルカリ酸化物成分と、約5〜約40重量%の、MgO、SrO、BaOおよびそれらの組合せからなる群から選ばれるアルカリ土金属酸化物成分と、から成る。
【0018】
典型的なホウ酸塩系のスキャフォールド要素のCaフリー材料は、重量%で、以下のものを含む。
【0019】
【表2】

【0020】
本発明の特定の実施形態において、スキャフォールド要素の材料は、LiO、NaO、KOおよび/またはRbOのうちの少なくとも2種のアルカリ酸化物を約5〜約25重量%、例えば約8〜20重量%の累積濃度で含むように選ばれる。結晶化傾向を低減させるために2種以上のそのようなアルカリ化合物を含むことは有利であり、それは最終的には、スキャフォールドを作成するためのガラスの加工性および製造可能性を向上させる、ということが見出された。1種以上のアルカリ(すなわち混合アルカリ)を使用することによって、ガラスのコストを低減でき、体液との反応速度を変更でき、そして骨の成長および再生に有益な追加の元素を提供できる。
【0021】
本発明の特定の実施形態の更なる特徴は、MgO、SrO、BaO、CaOおよびそれらの組合せからなる群からのアルカリ土類酸化物の累積的濃度が1〜約50重量%、例えば約1〜30重量%、さらには約8〜25重量%の範囲であることである。これらの実施形態のうち特定のものは、2種以上のそのようなアルカリ土類酸化物を累積的に1〜45重量%、例えば5〜25重量%の範囲で含んでいる。
【0022】
混合アルカリ酸化物を含有するスキャフォールド材料を使用するこれらのスキャフォールドの実施形態は、約40〜約90重量%のBを含む。これらの実施形態の特定のものは、本質的には、約40〜90重量%のBと、LiO、NaO、KOおよびRbOからなる群から選ばれる混合アルカリ酸化物と、MgO、SrO、BaOまたはCaOのうち1種と、から成る。他の実施形態は、本質的には、約40〜約90重量%のBと、LiO、NaO、KOおよびRbOからなる群から選ばれる2種以上のアルカリ酸化物と、MgO、SrO、BaOおよびCaOからなる群からの2種以上のアルカリ土類酸化物と、から成る。例えば、表Iの組成Aは、本質的には、約40〜約90重量%のBと、累積して5〜25重量%の、LiO、NaO、KOおよびRbOからなる群から選ばれる2種以上の混合アルカリ酸化物、および累積して8〜25重量%の、MgO、SrO、BaOおよびCaOからなる群から選ばれるから2種以上から成る。他の実施形態は、任意で、1種以上のP、SiO、Al、Fおよび遷移金属元素を含む。
【0023】
本発明は、特に高いB組成、すなわち約60〜約90重量%、好ましくは約60〜約82重量%、更に好ましくは約70〜約80重量%のB組成を含むスキャフォールド材料を使用しているスキャフォールドの実施形態を含む。これらの実施形態は、LiO、NaO、KO、RbOおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれるアルカリ酸化物を、累積して約1〜約50重量%、例えば約5〜約25重量%、さらには約8〜約20重量%と、任意で2種以上のそのような酸化物を、累積してこの範囲で使用する。これらはまた、任意で、MgO、SrO、BaO、CaOおよびそれらの組合せからなる群からのアルカリ土類酸化物を、累積して約1〜約50重量%、例えば約1〜30重量%、さらには約8〜25重量%と、さらに2種以上のそのような酸化物を、累積してこの範囲で使用する。これらの実施形態の特定のもの、例えば表IIの組成II、III、IVおよびVIIは、本質的にはこれらの成分から成るが、他の実施形態は、任意で、P、SiO、Al、Fおよび遷移金属元素の1種以上を含む。
【0024】
前述の混合アルカリおよび高ホウ酸塩の実施形態では、Ca濃度を約5重量%未満(0.5重量%未満(例えば0.2重量%未満または0.1重量%未満)を含む)に厳密に制御することによって、Ca化合物の生成を回避することができる。代わりに、ヒドロキシアパタイト、他のリン酸カルシウム化合物、またはアモルファスリン酸カルシウムの形成を容易にするために、さらにCaOを約40重量%以下で含有している2種以上のアルカリ酸化物を含む実施形態が存在する。
【0025】
本発明の別の特定の実施形態は、Zn、Cu、Fe、Mn、Si、F、Sr、Ni、MoおよびSeからなる群から選ばれる1種以上の元素を、1元素あたり約0.01〜10重量%で且つ累積して25重量%未満の量で含有する。これらは、酸化物または他の化合物の形態でガラスに提供される。これら種々の任意の元素の添加は、特定の用途に対して特定の機能および効果を提供する。これらの範囲内にあるこれらの元素の1種以上は、任意で、上述した実施形態、即ち、LiO、NaO、KO、RbOおよびそれらの組み合わせからなる群からの種々のアルカリ酸化物の累積濃度が約0〜約30重量%の範囲に維持される実施形態、およびCa濃度が約0.2重量%未満、例えば0.1重量%未満に厳密に制御される実施形態にも含まれてもよい。微量元素は、酸化物として、スキャフォールド材料に取り込まれてもよい。
【0026】
ニッケルは内皮細胞の運動性を向上させ、それは血管形成のために重要なステップである。細胞の運動性は、刺激物質(この場合は微量元素Niの存在)に起因するセルの遊走(migration)である。
【0027】
セレンは、微生物病原体およびウイルスを殺すおよび滅ぼすために過剰な活性酸素種を生成する自然な免疫反応に関連した酸化的ストレスから、身体を保護することができる酸化防止剤として機能する。本質的に、セレンは、体細胞および組織へのネガティブな反応が存在しないように、活性酸素種を抑制する。セレンが不足した動物は、正常に機能しない免疫反応を示し、抗原と戦うことのできない食作用性の好中球およびマクロファージをもたらす。動物モデルでのセレンの補給は、いくつかの免疫機能(これに限定されないが、好中球遊走、T細胞の増殖および機能、細胞障害性T細胞活性、T細胞反応、リンホカイン活性化キラー細胞の活性およびマラリアおよびポリオに対するワクチン導入性の免疫を含む)の増大を示した。これらの免疫機能の大部分は、創傷の治癒過程において自然なことであり、これらの細胞活性を増強または促進により創傷の治癒が促進される。従って、Seを本発明の要素に取り込むことにより、軟質組織の治癒および再生のために必要な自然な生物学的免疫反応が促進され、刺激される。
【0028】
亜鉛は、骨組織で見られる酵素のアルカリホスファターゼの形成に必要な補因子である。骨中での最大量のZnは、石灰化前の類骨層(layer of osteoid)にある。亜鉛はマグネシウムの補因子なので、いずれか一方の利益を得るためには両者とも存在しなくてはらない。亜鉛はヒドロキシアパタイトに取り込まれていることが見いだされており、さらにFも存在していると、ZnおよびZn−F錯体がアパタイトの結晶化度を向上させるだろう。
【0029】
銅は、不足すると、骨の成長が阻害され、骨粗鬆症と関連した変化が増加する。銅は、赤血球凝集抗体(HA、hemagglutinating antibody)に取り込まれず、骨芽細胞および破骨細胞によって使用される。欠乏すると、骨芽細胞(骨形成体: bone formers)および破骨細胞(骨吸収体: bone resorbers)の活動が低下する。骨粗鬆症は、破骨細胞に比べて、骨芽細胞がより多く減少することによって誘発される。銅は、血管形成に有用になりうる内皮細胞遊走に影響を及ぼすということも示されており、硬質組織および軟質組織の組織再生にとって潜在的に重要である。ガラスに対するCu源は、例えば、CuOもしくはCuOなどの酸化銅、または硝酸銅もしくは硫酸銅など他の銅化合物であってもよい。1つの実施形態において、Cuは約0.05〜約5重量%、例えば約0.1〜約2.5重量%の濃度でガラスに取り込まれる。約1重量%〜約2重量%の銅化合物、例えば約1重量%〜約2重量%のCuOを使用する好ましい実施形態が存在する。
【0030】
鉄は、コラーゲンを生成する酵素への信号として作用する。Feの除去または欠乏は、基本的に酵素をオフにする。
【0031】
マンガンは、糖転移酵素(ヌクレオチド二リン酸エステル糖から受容体分子(acceptor molecule)へと糖を移入する)の補因子として作用する。マンガンは、グリコサミノグリカン・コンドロイチン硫酸のいくつかの生成段階において重要である。コンドロイチン硫酸は、結合組織(例えば血管、骨および軟骨)の主要な構成要素である。
【0032】
ケイ素は、正常な骨基質形成と、おそらく骨石灰化にとって不可欠である。Siが不足すると、頭蓋骨、長骨および全体の骨構造に関連する成長低下異常(depressed growth, abnormalities)の条件が生じる可能性がある。骨内のケイ素は、主として骨芽細胞のミトコンドリア内に位置しており、その細胞は、新規な結合組織マトリックス物質の形成に関与する。
【0033】
フッ素は、ヒドロキシアパタイト結晶化において、ヒドロキシイオンを交換して結晶の安定性を改善することによって影響を及ぼすことができる。Fは、形成された骨の中には拡散しないので、骨が形成される際に骨に取り込まれている必要であることに注意することが重要である。骨格系は、骨芽細胞(骨形成細胞)の数を増加させることによってFに応答し、従って、より多くの骨が形成される。骨細胞の増加は、骨細胞分裂促進因子(細胞分裂を促進するタンパク質)の活性を向上させることによって骨細胞前駆細胞の増殖を増加させる、Fに起因する。
【0034】
ストロンチウムは、骨形成への代謝効果を有すると考えられている。ストロンチウムは、いくつかの動物モデルにおいて、破骨細胞にいかなる毒性作用も及ぼすことなく、破骨細胞(骨吸収細胞)の活性を低下させることが示された。前骨芽細胞の複製の増加は、Srの添加によって確認されており、骨基質合成の増加をもたらした。ストロンチウムは、骨粗鬆症の将来の治療のための成分であると考えられている。
【0035】
したがって、例えば下記の実施例7のような本発明のいくつかの典型的なスキャフォールドは、スキャフォールド本体の要素(例えば、概ね40〜90重量%のBと、0.1〜5%のCuOと、NaO、KO、MgOおよびPとを含む繊維など)から構成される。より具体的な例は、40〜90重量%のB、0.1〜5%のCuO、1〜25重量%のNaO、1〜25重量%のKO、1〜25重量%のMgOおよび1〜10重量%のPを含むかまたは本質的にこれらから成る。
【0036】
スキャフォールド要素の材料は、本質的に、ガラス質、ガラスセラミックまたはセラミックであってよい。しかしながら、一般的に言って、ガラス質の材料は、同じ組成の結晶質または部分的に結晶質の同等物に比べて、より強くかつ化学的により均一なので、本発明ではガラス質の状態が好ましい。従って、スキャフォールド本体の要素の材料は、要素の材料の約5重量%未満、より好ましくは1重量%未満が結晶質である実質的にガラス質であるのが好ましい。より詳細には、材料を20℃/分の平均昇温速度で800℃に加熱し、その温度に10分間保持され、そして室温および大気圧の標準状態(STP conditions)にさらすことによって室温まで冷却した場合に、結晶化度が5重量%未満、好ましくは1重量%未満であることが好ましい。より好ましくは、20℃/分の傾斜率(ramp rate)で575℃まで加熱され、その温度に20分間保持され、そして標準条件(STP conditions)にさらすことによって室温まで冷却した後、ガラスは、5重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満の結晶化度を含むだろう。
【0037】
本発明のスキャフォールド本体の要素は、中実繊維、中空繊維、リボン、中実球、中空球、粒子、およびそれらの組合せの形態にされている。多くの用途にとって特に好適な実施形態では、スキャフォールド本体の要素は繊維を含み、そのような実施形態では、スキャフォールド本体は、繊維である要素から本質的に形成されている。繊維は、長さ:横断寸法(例えば、直径)が少なくとも2:1、より典型的には5:1、例えば10:1のアスペクト比を有する。本発明の特定の1つの実施形態において、スキャフォールド本体の要素は、主に1つの形態(例えば繊維)を、前述の選択可能な形態(例えば微小球体)からの第2の形の微量成分と組み合わせている。
【0038】
本発明の選択肢には、特定の特性を戦略的に付与するための、独特の成分組成を使用するものもある。例えば、スキャフォールド本体は、上記の表Iおよび表IIから選ばれた組成を有する要素を10〜90重量%と、それらの表からの別の組成の要素を10〜90重量%とを使用する。或いは、2種以上のそのようなタイプの要素を使用してもよい。すなわち、スキャフォールドは、予定された組成のうちの第1の要素材料を少なくとも10重量%含有するスキャフォールド本体の成分と、予定された組成のうちの第2の要素材料を少なくとも10重量%含有するスキャフォールド本体の成分と、を含むことができ、第1の要素材料と第2の要素材料とは互いに異なる組成を有し得る。このことは、いくつか例を挙げると、反応の速い繊維を反応の遅い繊維と組み合せる選択、またはCa含有繊維をCaフリーの繊維と組み合わせる選択、または微量元素を含有する繊維を微量元素を含有しない繊維と組み合わせる選択などの選択を可能にする。従って、標準的組成の要素と非標準的な組成の要素とを組み合わせて、提示された用途のためのスキャフォールドまたはホストの特定のニーズのためのスキャフォールドを、効果的にカスタマイズすることまたはドープすることができる。代わりとして、ホストに送達するための成長因子または薬剤を含む中空球を、例えば繊維などの他の構造要素に取り込むこともできる。
【0039】
スキャフォールドは、取り扱いおよび移植のための充分な強さを維持しつつ、体液の取り込みを容易にするためにスキャフォールド中への流体の流れをもたらすよう選択された多孔率を有するように、形成されている。多孔率は、約15容量%〜約90容量%である。多孔率には異なるレベル、例えば約15〜約30容量%、または約30〜約60容量%、または約60〜約90%などのレベルがあり、これらは異なる用途で好まれる。多孔率は、例えば、繊維の方向、粒子または微小球体の形状、および元素(または要素:element)を一体に結合するために用いられる熱処理(時間/温度)などの多くのファクターに依存し、または当該多くのファクターによって制御される。このバルクの多孔率とは独立して、相互接続性(interconnectivity)は本発明のスキャフォールドにおいても重要である。組織修復は、スキャフォールドの中への体液の流れによって強く影響されるので、スキャフォールド内部の細孔が高いレベルで相互接続性を有し、低いレベルで閉鎖細孔を有することが好ましい。すなわち、大部分の細孔が他の細孔に連絡していること、そして、大部分の細孔からスキャフォールドの外側表面まで直接的または間接的な経路があることが重要である。ある実施形態では、スキャフォールドの細孔容積の少なくとも約80容量%、例えば少なくとも約90%は、スキャフォールド外部から他の細孔を通じて直接的または間接的にアクセス可能であり、従って、体液にアクセス可能である。
【0040】
スキャフォールド要素の材料を製造する方法は、本発明にとってそれほど重要という訳ではない。例えば、スキャフォールド要素材料を調製する際には、分析用試薬級の個々の成分を、計量し、十分に混合し、1050℃にて白金ルツボ中で約1時間の時間で溶融させる。溶融物は、その後、例えば、鋼または銅プレート上で急冷されてガラス質が形成され、所望の寸法の粒状物へと粉砕される。粒状物は、球状化されて、選ばれた直径の微小球体に形成することができる。溶融物の形態にあるときの好適な組成物の材料は、容易に繊維に形成することができる。ホウ酸塩ガラスの繊維を製造する場合、それらは溶融物から手で直接的に引くか、または、ブッシュを通して回転ドラムによって引くことができる。
【0041】
要素は、炉内で粒状物の集合を単に加熱して繊維/粒子/球体を軟化させ相互に接着させることによって、自己結合させて、三次元スキャフォールドを形成することができる。所定の温度での設定された時間の後、構成物(生成物)を炉から取り出して、室温まで冷やす。従来技術における多くの生体活性ガラス、例えば45S5は、ガラスの結晶化のため自己結合が困難である。従って、本発明のホウ酸塩ガラスの自己結合能力は、今日使用されている他の生体活性材料に対して、明確な利点である。
【実施例1】
【0042】
図1Aに示すガラス繊維から本発明のスキャフォールドを作成したが、繊維は、平均して長さ約3mmであり、直径は約100〜約300ミクロンであった。繊維の組成は、Bが53重量%、NaOが6重量%、KOが12重量%、MgOが5重量%、CaOが20重量%、およびPが4重量%であった。繊維は、直径が7mmであって、図1Bのスキャフォールド型(ムライト管)に置かれ、そして、高さ2mmのスキャフォールドを作るために十分な繊維(70mg)が型に置かれた。繊維がランダムな向きに入れられている型を炉の中に入れ、周囲圧力の空気雰囲気で、575℃にて45分間加熱した。575℃までの昇温速度は約100℃/分であった。その後炉からスキャフォールドを取り出し、型を室温にて空冷した。その後、スキャフォールドを型から取り出して、図1Cに示す。
【実施例2】
【0043】
本発明のホウ酸塩系のガラス繊維スキャフォールドを、実施例1に記載したような方法で作成し、エポキシに埋設した。断面を形成して、光学顕微鏡写真を撮影し、図2に示す。明るい領域はエポキシであり、一方、暗い丸い形状はガラス繊維である。それらは、スキャフォールドの繊維がランダム配向であるため、不規則な形状を有している。2つ以上の丸みを帯びた形状が結合している部位では、実質的に自己結合が生じていることは明らかである。この図から、多孔質の相互接続性が高度であることも明らかである。
【実施例3】
【0044】
実施例1および2のタイプの自己接合したホウ酸塩ガラススキャフォールドを、ラットの背部の皮下に移植した。4週間後、スキャフォールドを取り出し、走査電子顕微鏡観察(SEM)によって観察した。顕微鏡写真を撮影すると(図3)、繊維を軟質組織が取り囲んでいることが示された。これは、スキャフォールドの中へ生理的流体が取り込まれたことおよびスキャフォールドの中で軟質組織が成長したことを示す。図のように、多くの繊維に形成された中空コアは、ガラス繊維と生理的流体とが反応したことを示している。このことは、図2に示す移植前の繊維が中実な性質を有することと、対照的である。図4A、B、CおよびDは、図3からの繊維の1つについて、連続的により高く倍率を上げた顕微鏡写真である。図4Cおよび4Dにおいて観察される多孔質の反応層は、ヒドロキシアパタイト形成の兆候である。このことは、Ca10(PO(OH)に一致するパターンを示している、図11のスキャフォールドのX線回折分析によって確認される。
【実施例4】
【0045】
4週間の皮下移植後にラットから取り出された図3に示すものと同様の断面を、組織染色(H&E)に付し、図5に示す。これは、組織とスキャフォールドとの間の生物学的親和性と、赤血球凝集抗体(HA)および/またはアモルファスリン酸カルシウム(ACP)の中空繊維を形成したガラスと体液との反応と、スキャフォールド全体および反応した繊維の中空孔中への組織の浸入と、を示している。反応した繊維の長手方向の中心軸と平行な方向において更に断面を撮影し、図6に示す。顕微鏡写真の中央部は、断面化された繊維の中に赤血球および軟質組織が実質的に存在することを示している。図7は、繊維の中央軸と直角をなす方向における断面積の更なる顕微鏡写真である。赤血球、血管および軟質組織は、反応したガラス繊維の中空コアの中に見ることができる。
【実施例5】
【0046】
従来技術のガラスと比較した、本発明のホウ酸塩ガラスの免疫反応は、各スキャフォールドの断面の組織染色(H&E)および観察によって調べた。図8の断面は、ラットの背部の皮下に移植して2週間後の本発明のスキャフォールドについて撮影したものである。これらの断面は、健康な軟質組織がガラス繊維の間に成長してそれらに付着したことを示している。繊維の近くには、目視できる巨細胞は存在していない。良好な血管新生を有する領域があり、それは新たな組織の成長にとって重要である。13−93として知られている従来技術のケイ酸塩系の生体活性ガラスの染色した部分を図9に示しており、ほとんどすべての繊維(例えば図9Bの符号F)は、それらに付着してそれらを取り囲んでいる巨細胞を有している。繊維に侵入した軟質組織は健康に見えるが、繊維を取り囲んでいる巨細胞は異物反応を表している。図10に示すように、従来技術の45S5ガラス繊維でも、13−93ガラス繊維と同様の反応が生じている。45S5繊維のほとんどすべては、異物反応を表す巨細胞によって取り囲まれている。図8〜10に示す結果は、本発明の材料が、軟質組織に対して著しい免疫反応を有さず、ケイ酸塩系の生体活性ガラスと比べてはるかに早い速度でヒドロキシアパタイトへ転化し得ることを示している。これは、本発明のスキャフォールドが、体液を含む組織と接触するように配置されると、中空コアを有する多孔性のヒドロキシアパタイト材料を形成し、それは(周囲の組織に応じて)硬質および軟質組織、血管、またはおそらくは身体の他の組織などの生物学的材料で満たされ得ることを示している。皮下の軟質組織部位への移植後の組織学的評価では、周囲のおよび侵入した軟質組織に対して最小の免疫反応を示した。また、45S5および13−93などのケイ酸塩系生体活性ガラスと比べて、より小さい異物反応を生じるように観察される。
【実施例6】
【0047】
以下のCaフリーのホウ酸塩系ガラス(重量%での組成)の反応生成物および反応速度を測定するために、生体外(in vitro)実験を行った。
【0048】
【表3】

【0049】
右端の列に記載した化合物は、KHPOの0.25モル溶液中で各ガラスの粒状物を、37℃にて108〜130時間で反応させた後の反応生成物である。
【実施例7】
【0050】
微量のCu、Sr、ZnおよびFeを、以下の濃度に従って、酸化物として種々の量で含む、いくつかのホウ酸塩系ガラスを調製した。
【0051】
【表4】

【0052】
ガラス0、1、2、3、4、および5からスキャフォールドを調製して、図12A〜Fにそれぞれ示す。これらをラットの背部の皮下に移植して、血管新生について調べた。図13A〜Fは2週間後の、および、図14A〜Fは4週間後の、それぞれガラス0〜5についての血管新生の程度を示している。血管新生の増大に関するCu含量増加の効果は明らかである。
【実施例8】
【0053】
2種の異なる組成の繊維の50:50混合物(重量基準)から混合繊維スキャフォールドを調製した。
【0054】
【表5】

【実施例9】
【0055】
生体内(in vivo)でのホウ酸の溶解を計算する。53重量%のBガラスを用いた0.070gの典型的なスキャフォールドであり、Bの重量は0.0371gである。Bは体液に溶解して、BOイオンとして存在する。しかしながら、文献値との比較のために、ここではHBOを基礎として計算する。HBOに対するBの重量係数は1.78であるので、0.0371gのBは0.066gのHBOに溶解し、これは1.07E−3モルのHBOに相当する。生体内(in vivo)での観察に基づいて、このサイズのBベースのスキャフォールドが完全に反応するには4週間かかると仮定した。これは、1.07E−3/28日=3.814E−5モル/日 HBOの収率に相当する。従来の観察も、およそ0.05gの新しい組織重量がこのサイズのスキャフォールドの中に成長したことを示す。従来の観察も、概略で、組織1グラムあたり、約0.1(最小)〜約0.4(最大)ml/分の血流がスキャフォールドの中を流れることを示している。最初に、最小流量であると仮定すると、HBO収量は5.29mMの濃度を有すると算出される。すなわち、1440分/日(0.1ml/分*g)(1日)(0.05g)=7.2ml=0.0072Lとなり、3.814E−5モル/日 HBO/0.0072L=5.29E−3mol/L=5.29mM HBOとなる。次に、最大流量であると仮定すると、HBO収量は1.32mMの濃度を有すると算出される。すなわち、1440分/日(0.4ml/分/グラム)=28.8ml=0.0288Lとなり、3.814E−5モル/日 HBO/0.0288L=1.32E−3mol/L=1.32mM HBOとなる。「Action of Boron at the Molecular Level」, Bio. Trace Ele. Res., 85, 2002, で得られるデータに基づけば、この濃度のHBOはRNA取り込みを刺激し得る。従って、ケイ酸塩系のスキャフォールドとは際立って対照的に、本発明のスキャフォールドは、溶解の際に、治癒を促進する成長因子として機能することが報告されている物質を自然に産生するのである。
【0056】
以上より、本発明のいくつかの目的が達成され、および、他の有利な結果が実現されることが判るであろう。
【0057】
本発明のまたはその好適な実施形態の要素を導入する場合に、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は1つ以上の要素が存在することを意味することを目的とする。用語「comprising(含む)」、「including(含む)」および「having(有する)」は、包含的であることを意図しており、挙げられた要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0058】
上述の組成物および方法については、本発明の範囲から逸脱しない限り、種々の変更をすることができるので、上述の説明に含まれており、および、添付の図面に示されているすべての事項は説明のためのものであることを意図しているのであって、本発明はこれらに限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に連通する孔を有する、組織修復用の三次元スキャフォールドであって、
該スキャフォールドは、
組織のスキャフォールドの構造支持のためのスキャフォールド本体であって、前記スキャフォールド本体を規定し且つ0.4MPaを超えるスキャフォールド本体の圧縮強さを提供するために、相互に結合されたスキャフォールド本体の要素を含む、スキャフォールド本体を含んでおり、
前記スキャフォールド本体の要素は、重量%で
40〜90
NaO 0〜25
LiO 0〜25
O 0〜25
RbO 0〜25
CaO 0〜40
MgO 0〜25
SrO 0〜40
BaO 0〜50
0〜10
SiO 0〜18
Al 0〜3
F 0〜4
遷移金属元素 累積で0〜10
を含む要素材料から形成されており、
LiO、NaO、KOおよびRbOの1種以上は、約1〜約50重量%の累積濃度で存在し、
MgO、SrO、BaOおよびCaOの1種以上は約1〜約50重量%の累積濃度で存在し、
前記スキャフォールド本体は約15〜約90容量%の多孔率を有することを特徴とするスキャフォールド。
【請求項2】
濃度が約50〜約90重量%であることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールド。
【請求項3】
濃度が約60〜約82重量%であることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールド。
【請求項4】
濃度が約70〜約80重量%であることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールド。
【請求項5】
前記スキャフォールド本体の要素が、MgOを約1〜25重量%の濃度で含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項6】
前記スキャフォールド本体の要素が、KOを約1〜25重量%の濃度で含み、MgOを約1〜25重量%の濃度で含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項7】
前記要素材料中におけるCa濃度が5重量%未満に厳密に制御されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項8】
前記要素材料中におけるCa濃度が0.1重量%未満に厳密に制御されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項9】
前記要素材料が、LiO、NaO、KOおよびRbOから選ばれる2種以上の酸化物を約5〜約25重量%の累積濃度で含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項10】
前記要素材料が、LiO、NaO、KOおよびRbOから選ばれる2種以上の酸化物を約5〜約25重量%の累積濃度で含み、MgO、SrO、BaOおよびCaOから選ばれる2種以上の酸化物を約1〜約45重量%の累積濃度で含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項11】
前記要素材料が、さらに、Zn、Cu、Fe、Mn、Si、Sr、Ni、MoおよびSeからなる群から選ばれる1種以上の元素を、1元素あたり約0.01〜10重量%で且つ累積して25重量%未満の量で含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項12】
前記要素材料が、さらに、約0.01〜10重量%のCuを酸化銅として含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項13】
前記スキャフォールド本体の要素の少なくとも10重量%が、請求項1に記載の組成内の第1の要素材料を含み、
前記スキャフォールド本体の要素の少なくとも10重量%が、請求項1に記載の組成内の第2の要素材料を含み、
前記第1の要素材料と前記第2の要素材料とは互いに異なる組成を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項14】
前記要素材料の5重量%未満が結晶質材料であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項15】
前記要素材料は、天然または人工の生理的リン含有流体にさらされたときに、結晶質またはアモルファスリン酸カルシウムを形成する反応を起こさないことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項16】
前記本体の要素がガラス繊維を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項17】
前記スキャフォールド本体が本質的にガラス繊維から成ることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のスキャフォールド。
【請求項18】
前記スキャフォールド本体の要素が、本質的に、40〜90重量%のB、1〜25重量%のNaO、1〜25%のKO、1〜40重量%のCaO、1〜25重量%のMgO、および1〜10重量%のPから成ることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールド。
【請求項19】
前記スキャフォールド本体の要素が、本質的に、40〜90重量%のB、1〜25重量%のLiO、および1〜40重量%のCaOから成ることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールド。
【請求項20】
前記スキャフォールド本体の要素が、本質的に、40〜90重量%のB、1〜25重量%のNaO、および1〜40重量%のCaOから成ることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールド。
【請求項21】
前記スキャフォールド本体の要素が、本質的に、40〜90重量%のB、1〜25重量%のNaO、および1〜40重量%のBaOから成ることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールド。
【請求項22】
前記スキャフォールド本体の要素が、本質的に、40〜90重量%のB、1〜25重量%のLiO、および1〜25重量%のMgOから成ることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールド。
【請求項23】
前記スキャフォールド本体の要素が、本質的に、40〜90重量%のB、1〜25重量%のLiO、および1〜40重量%のBaOから形成されることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールド。
【請求項24】
前記スキャフォールド本体の要素が、本質的に、40〜90重量%のB、0.1〜5%のCuO、1〜25重量%のNaO、1〜25重量%のKO、1〜25重量%のMgOおよび1〜10重量%のPから成ることを特徴とする請求項1に記載のスキャフォールド。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図13F】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【公表番号】特表2012−533348(P2012−533348A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520710(P2012−520710)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/041773
【国際公開番号】WO2011/008726
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(501305844)ザ・キュレーターズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミズーリ (12)
【氏名又は名称原語表記】THE CURATORS OF THE UNIVERSITY OF MISSOURI
【Fターム(参考)】