説明

哺乳類人工染色体

【課題】体細胞遺伝子治療に使用しうる可能性のある、新規なベクター〜哺乳類人工染色体形成用材料を提供する。
【解決手段】哺乳類テロメアと、セントロメアとを含むDNAコンストラクトであって、該セントロメアは、以下の配列;5’−NTTCGNNNNANNCGGGN−3’(ただし、Nは、A,T,C及びGのいずれかである)からなるCENP-B box配列を複数個有する配列を備えているDNAコンストラクトを、哺乳類細胞に導入することによって得られる、哺乳類人工染色体形成用材料。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
哺乳類人工染色体 技術分野 この発明は、哺乳類細胞内で自律的に複製され、染色体外で安定して維持され、娘細胞に伝達される、哺乳類人工染色体(MACs)に関する。
また、この発明は、哺乳類細胞に導入された際にMACsを形成する能力を有する酵母人工染色体(YACs)を、酵母細胞内で構築し、改変し、維持させる方法に関する。
[背景技術]
染色体複製のために必要な機能的エレメント、すなわち、複製と、安定的な染色体外での維持と、分離とに必要とされるエレメントを、操作可能な形態で保有する哺乳類人工染色体を構築することは、哺乳類染色体の構造や機能における基本的研究のみならず、所望のDNAフラグメント(遺伝子)を哺乳類細胞や動物に導入してそれらの機能を確認するためのベクターを提供することにおいても有意義である。MACsによって保持される遺伝子は、染色体への組み込みの位置効果によって発現量が変化したり、予測不可能な挿入変異を引き起こしたりもしないからである。さらに、MACは、大きな遺伝子の全体、複数の遺伝子からなる遺伝子群、さらには調節エレメントをも含まれるような、メガベースに及ぶDNAセグメント、を保有することができる。
【0002】
したがって、これらの理由から、MACsは、体細胞遺伝子治療のために現在使用されているベクターに替わる新規なベクターを提供するこ可能性がある。よく用いられる、ウイルス由来の感染ベクターは、宿主染色体にランダムに組み込まれたり、ごく一時的にしか染色体外に存在しないからである。さらに、これらのベクターは、ごく短いDNAセグメントを保持できるに過ぎない。もし、哺乳動物の発生段階における減数分裂でのMACsの安定性が確立されれば、トランスジェニックマイスを作出する新規な方法がMACsの発明によって提供されることになる。
【0003】
しかしながら、MACsの構築は、技術的な困難があるために未だ達成されてはいない(Willard、Proc.Natl.Acad.Sci.93,6874-6850,1996)。酵母人工染色体(YACs)は、出芽酵母であるSuccharomyces
serevisiaeから、3つの本質的なDNAエレメント、すなわち、DNAの複製開始に必要な複製起点あるいは自律複製配列(ORIまたはARS)、染色体末端の安定化と完全な複製のためのテロメア(TEL)、および複製後の各姉妹染色分体への確実な分配のために必要なセントロメア(CEN)を有する酵母人工染色体(YACs)が構築されている(Burke et al.Science,236,806-812、1987)。その後、YACは、複雑なゲノムから大きな遺伝子セグメントをクローニングするための主要なツールとなってきた。YACsから類推して、MACsは、哺乳類ゲノムに由来する3つのDNAエレメントを用いれば構築できるだろうと信じられている。これら3つのエレメントのうち、テロメアは哺乳類染色体から分離されており、哺乳類染色体の操作においても使用されている(Brown et
al.,Hum.Mol.Genet.,27-1237,1994;Farr et al.,EMBO J.,14,5444-5454,1995)。しかし、セントロメアと複製起点は、その機能活性を検出する測定法がないために分離することが難しいことがわかっている。
【0004】
本出願の発明者らは、哺乳類染色体のセントロメア部位の特徴的構造を分析し、哺乳類セントロメアの本質的な機能的構造について知ろうとした。そして、抗セントロメア抗体(Moroi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,1627-1631,1980)によって認識され、各種哺乳類染色体に存在する、セントロメアタンパクB(CENP−B)が、ヒトゲノムにあるセントロメアサテライトDNA(アルフォイドDNA)に存在する17bpの塩基配列(CENP−B box)を認識し結合することを見いだした(Masumoto
et al.,J.Cell.Biol.,109,1963-1973,1989;Muro
et al,J.Cell.Biol.,116,585-596,1992)。このCENP−Bの認識配列は、マウスのセントロメアサテライトDNAにおいても見いだされ(Masumoto et al.,J.Cell.Biol.,109,1963-1973,1989;Kipling
et al.,Mol.Cell.Biol.,15,4009-4020,1995)、このCENP−B boxの共通配列は、5'−NTTCGNNNNANNCGGGN-3'であることが確立された(Masumoto et al.,NATO ASI
Series,vol.H72,Springer-Verlag,pp31-43,1993;Yoda et
al.,Mol.Cell.Biol.,16,5169-5177,1996)。
【0005】
本出願人らは、また、一対のCENP−Bが、そのC末端においてダイマーを形成して、各CENP−BポリペプチドのN末端において、セントロメアサテライトDNAにあるCENP−B boxに結合し、この結果、実質的にダイマープロテインとDNAの二つの領域(あるいは鎖)とからなる安定した複合体が形成されることを見いだした(Muro et al.,J.Cell Biol.,116,585-596,1992;Yoda et al.,J.Cell Biol.,119,1413-1427,1992;Kitagawa
et al.,Mol.Cell.Biol.15,1602-1612,1995)。さらに、ヒト21番染色体のCENP−B
boxの配置について研究し、ヒト21番染色体のアルフォイドDNA領域には、CENP−B boxに関連して2つの明確に区別できる領域があることがわかった。一つ(α21−I)は、CENP−B box配列の規則的な繰り返しを備えた領域であり、他方(α21−II)は、CENP−B box配列をほとんど有しない領域である。これら2つの領域は、数メガベースにわたって隣り合っており、前者は、セントロメアタンパクが存在する染色体上の部位に位置しており、後者は、染色体の短腕側よりにわずかにシフトした部位に位置していることもわかった(Ikeno et al.,Hum.Mol.Genet.,3,1245-1257,1994)。
【0006】
この発明は、CENP−B boxを備えたDNA領域に関する。本発明の目的は、上記DNA領域に由来し、哺乳類細胞、特に、ヒト細胞の染色体外領域で安定して維持され、次世代細胞に伝達される、人工染色体を供給することである。また、本発明は、哺乳類細胞に導入されたとき、哺乳類人工染色体を形成する能力を有する上記人工染色体の前駆体を、YACsとして酵母細胞内で構築し、改変し、安定して維持させる方法を提供することも目的とする。
【0007】
[発明の開示]
この発明は、ヒト21番染色体のアルフォイドDNA領域から得られ、CENP−B、すなわちセントロメアタンパクB、と相互作用するCENP−B box配列を含むDNA配列と、ヒトテロメア配列を有するセグメントとを有する酵母人工染色体コンストラクトを、酵母細胞内における相同組換えを利用して構築する方法を見いだすことによって達成された。また、本発明は、そのコンストラクトをヒト細胞に導入した際に、ヒト細胞中でこのコンストラクトが自律的に複製され、線状で安定して維持されることを見いだすことによって達成された。この発明は、CENP−B box配列を複数個有するDNA配列を備える単離されたDNAを用いて哺乳類人工染色体を形成することに関する。また、この発明は、哺乳類テロメアと、5‘−NTTCGNNNNANNCGGGN−3’(ただし、Nは、A,T,C及びGのいずれかである)からなるCENP−B
box配列を複数個有するDNA配列を備えるセントロメア、とを含むDNAコンストラクトを提供する。
【0008】
この発明の好ましい形態として、哺乳類テロメアと、配列番号1で特定されるCENP−B box配列の複数のコピーを有するDNA配列を有するセントロメア、とを備えるDNAコンストラクトを提供する。より好ましくは、前記セントロメアは、CENP−B box配列の離間した繰り返し(spaced
repeats)を有するDNAコンストラクトを提供する。
【0009】
この発明は、また、哺乳類テロメアと、配列番号2で特定される配列、または配列番番号2で特定される配列に対して1またはそれ以上のヌクレオチドが付加、欠失および/または置換されている配列、を複数個有するDNA配列を有するセントロメアとを含むDNAコンストラクトを提供する。好ましくは、前記セントロメアは、ヒト染色体に由来する。また、前記DNAコンストラクトは、酵母細胞内でDNAコンストラクトの増殖のための1または2以上の配列を備えることが好ましい。
【0010】
また、前記DNAコンストラクトは、選択マーカー遺伝子をコードする配列を備えることも好ましい。前記DNAコンストラクトは、そのDNAコンストラクトが導入された細胞において染色体として維持可能であることが好ましい。好ましくは、ヒト細胞内において染色体として維持可能であることが好ましい。さらに、DNAコンストラクトは、マウス細胞内で染色体として維持可能であることが好ましい。
【0011】
この発明は、また、上記DNAコンストラクトが導入された宿主細胞を提供する。好ましくは、この宿主細胞は、ヒト細胞である。また、この宿主細胞は、酵母細胞である。また、この宿主細胞は、マウス細胞である。
【0012】
この発明は、さらに所望の遺伝子を備えたDNAコンストラクトを提供する。
このDNAコンストラクトは、構造遺伝子及びその調節遺伝子を含むゲノムDNA配列を備える。
【0013】
また、この発明は、 (i)DNA組換え用プラスミドを有するDNA組換え不活性宿主細胞内で、部分的に相同的である、2またはそれ以上の線状あるいは環状のDNA配列から、組換えDNAコンストラクトを形成する工程 (ii)前記組換えDNAコンストラクトを有し、前記プラスミドを有しない宿主細胞を採取する工程、 含む相同組換え法を提供する。この発明によれば、細胞内で高頻度で相同組換えを起こさせることができるため、制限酵素を用いて行う従来の試験管内組換えを簡略化することができる。また、所望のDNA領域を形成することができる新規な組換え法を提供することができる。好ましくは、宿主細胞は、酵母細胞である。また、組換えDNAコンストラクトは、酵母人工染色体である。また、前記DNA配列の一つは、酵母人工染色体であり、さらに前記DNA配列の一つは、繰り返しDNA配列を有する酵母人工染色体である。
【0014】
この発明は、(i)DNA組換え用プラスミドを有するDNA組換え欠損細胞内で、哺乳類テロメアと、以下の配列;
5’−NTTCGNNNNANNCGGGN−3’
(ただし、Nは、A,T,C及びGのいずれかである。)
からなるCENP−B box配列を複数個有するセントロメアとを有する第1の酵母人工染色体を形成する工程と、(ii)第1の組換え酵母人工染色体を有し前記プラスミドを有しない細胞を選択する工程、(iii)第1の組換え酵母人工染色体に由来するテロメアとセントロメアを有する第2の組換え酵母人工染色体を、DNA組換え用プラスミドを有する前記宿主細胞中で形成する工程と、(iv)第2の組換え酵母人工染色体を有し、前記プラスミドを有しない細胞を選択する工程、を有する酵母人工染色体コンストラクトを製造する方法を提供する。
【0015】
また、この発明は、哺乳類テロメアと、以下の配列:
5’−NTTCGNNNNANNCGGGN−3’
(ただし、Nは、A,T,C及びGのいずれかである)
からなるCENP−B box配列を複数個有するセントロメアとを有するDNAコンストラクトを、哺乳類細胞に導入する、哺乳類人工染色体の製造方法を提供する。さらに、前記哺乳類細胞はヒト細胞である方法も提供する。さらに、前記哺乳類細胞がマウス細胞である方法も提供する。さらに、前記DNAコンストラクトが、FERM BP−5625で特定されるサッカロマイセスセレビジエα7C5hTEL由来である方法も提供する。また、本発明は、この方法によって得られる哺乳類染色体も提供する。
【0016】
さらに、この発明は、 哺乳類テロメアと、
以下の配列;5’−NTTCGNNNNANNCGGGN−3’
(ただし、Nは、A,T,C及びGのいずれかである)
からなるCENP−B box配列を複数個有するセントロメアと、染色体に部分的に相同であるDNA配列とを備えたDNAコンストラクトと、 哺乳類テロメアと染色体に部分的に相同であるDNA配列とを有するDNAコンストラクトを、哺乳類細胞に導入する染色体のフラグメンテーション法を提供する。
【0017】
以下の記載において、遺伝子組換えの技術における当業者に公知の各種手法について参照されるであろう。そのような公知の手法を説明する出版物やその他の材料はこの記載に基づいて引用され、引用されることにより明細書に包含される。
【0018】
この発明は、セントロメアと哺乳類テロメアとを含むDNAコンストラクトを提供するものである。このコンストラクトは、染色体として維持されうる。長いDNA断片であっても、本発明のDNAコンストラクトに導入されることにより、哺乳類細胞やその他の細胞にクローニングすることができ、安定して発現させることができる。
【0019】
(セントロメア)
この発明におけるセントロメアは、以下の配列からなるCENP−B box配列を複数個有している(Masumoto
et al.,NATO ASI Series,vol.H72,Springer-Verlag,pp31-43,1993;Yoda et al.,Mol.Cell B iol.,16,5169-5177,1996)。
5’−NTTCGNNNNANNCGGGN−3’
(ただし、Nは、A,T,CおよびGのいずれかである).
【0020】
さらに、CENP−B box配列は、配列番号1で特定される17bpの配列である。この配列は、ヒト21番染色体由来である(Ikeno et al,Human Mol.Genet.,3,1245-1247)。
【0021】
この発明におけるセントロメアは、CENP−B box配列の離間した繰り返しを有する。セントロメアは、宿主細胞においてDNAコンストラクトにセントロメア機能を付与するのに十分なだけのCENP−B box配列の繰り返し、を有する。好ましくは、セントロメアは、高頻度でCENP−B box配列を有する領域を備えている。ヒト染色体のセントロメア領域に位置される、CENP−B box配列の規則的な繰り返しを有するDNA配列は、11量体の巨大な繰り返しを一つの単位として有している。各11量体は、約1900bpのサイズを有しており、11量体を構成する各単量体(約170bp)は、5つの離間したCENP−B box配列の繰り返しを有している(Ikeno
et al,Human Mol.Genet.,3,1245-1257)。
【0022】
ヒト21番染色体上にある11量体の一つが分離され、シークエンスされ、配列番号2として特定されている(Ikeno et al,Human Mol.Genet.,3,1245-1257)。配列番号2で特定される配列を複数個、または、配列番号2で特定される配列に対して1または2以上のヌクレオチドが付加、欠失、および/または置換された配列を複数個有するDNA配列を、本発明のセントロメアは有している。さらに、11量体の一部を含む2量体や、他の11量体も分離されており、それらはシークエンスされ、配列番号3、4、5、6及び7として特定されている(Ikeno et al,Human Mol.Genet.,3,1245-1257)。
【0023】
(セントロメアのクローニング)
CENP−B box配列を有するセントロメアは、ヒト細胞や、WAV17等の特定のヒト染色体を有する融合細胞やその他の哺乳類細胞から調製される。好ましい形態としては、これらの細胞のPBS懸濁液がLMPアガロース溶液と混合され、これらの細胞をプラグとして固化される。プラグは、プロテアーゼ、EDTA及びラウリル−サルコシンで処理され、透析で精製されて、濃縮されたヒトDNAを含むアガロースプラグが調製される。その後、このプラグは、BglI、Bgl IIあるいはBam
HI等の制限酵素で処理され、パルスフィールドゲル電気泳動(以下、PFGEという。)が施され、50kb以下のDNA断片が排除される。残存したプラグは、回収され、さらに、MspIで処理され、溶解される。得られたDNA溶液は、精製のため透析される。
【0024】
透析後、濃縮されたDNAは、それぞれ選択マーカーを有するYACベクターに組み込まれて、このYACがPFGEで分画され、50kb以上のDNA断片を含むアガロースブロックが回収される。このDNA抽出及び精製において、他の公知の方法も利用することが可能である。
【0025】
アガロースブロックから抽出されたこれらのDNA断片(YACs)は、スフェロプラスト化されたDNA組換え酵素を欠いた酵母細胞と混合され、YACsがこの酵母細胞に導入される。この酵母細胞は、YACが導入された細胞のみが選択される条件下で培養される。DNA組換え酵素を欠いた酵母細胞宿主を使用するため、YACsを導入細胞内で安定して維持させることができる。導入細胞の中から、CENP−B box配列を有するセントロメアDNA配列を選択するには、CENP−B
box配列、11量体の全体あるいはその一部、2量体の全体あるいはその一部をプローブとして、コロニーあるいは導入細胞からのDNA抽出物とハイブリダイズされる。この方法により、ヒト染色体のCENP−B box配列を有する導入細胞を分離することができる。
【0026】
上記プローブとハイブリダイズするセントロメアDNA配列は、発明者らによってα21−I領域として特定されているヒト21番染色体のアルフォイド領域の一部である場合もあり、他の哺乳類染色体のアルフォイド領域の一部である場合もある。α21−I領域は、実質的に、11量体の繰り返しから構成されており、その長さは、約1.3Mbpである。この領域は、ヒト由来の遺伝子材料としてヒト21番染色体のみを有するマウス−ヒト融合細胞であるWAV17のゲノムDNAから容易に抽出される。
【0027】
ヒト21番染色体上の他のアルフォイド領域には、非常にわずかのCENP−B box配列を有するか、若しくはCENP−B box配列がない。この領域のDNA配列は、上記の方法と同様の方法によって抽出される。すなわち、適当な制限酵素でヒトゲノムを処理し、好ましいDNA断片をPFGEで採取し、さらに、YACに導入する。さらにこのYACsをDNA組換え酵素を欠いた酵母細胞に導入し、α(Y)aやα(Y)b配列をプライマーとして用いてPCR法にて増幅する。このPCR産物を前記酵母細胞からのDNA抽出物とハイブリダイズさせて所望のDNA配列を検出し分離する。このようにしてクローニングされたDNA配列は、CENP−B box配列の繰り返しを有する上記DNA配列や、11量体や2量体をプローブとして検出されるようなDNA領域を含んではいない。
【0028】
このDNA配列は、ヒト21番染色体のアルフォイド領域の一部を構成するものであり、発明者らによってα21−IIとして特定されている。この配列は、α21−I領域に近接して、21番染色体の短腕側に位置される(Ikeno et al,Human Mol.Genet.,3,1245-1257)。α21−II領域は、α21−Iと同様に、WAV17細胞から容易に抽出される。
【0029】
(哺乳類テロメア)
哺乳類テロメア配列とは、テロメアに位置される繰り返し配列、すなわち、哺乳類染色体の末端配列を含んだDNA配列を意味する。哺乳類染色体として機能するDNAコンストラクトを構築するには、ヒトテロメアの繰り返し単位である、5’−TTAGGG−3’配列の繰り返しを備えたDNA配列を用いるのが好ましい。
【0030】
(DNAコンストラクト)
CENP−B box配列をもったセントロメアと哺乳類テロメアとを備えたDNAコンストラクトは、そのコンストラクトが導入された哺乳類細胞において染色体として安定して維持される。換言すれば、哺乳類細胞内で自律的に複製され、染色体外で安定して維持され、娘細胞に伝達される。CENP−B box配列は、ヒトや、マウスや類人猿等の他の哺乳動物界において保存されている(T.Haaf et al J.Mol.Evol.,41:487-491)。加えて、ヒト21番染色体は、ヒト−マウス融合細胞であるWAV17内において安定して維持されている。したがって、CENP−B box配列を有するセントロメアを備えた本DNAコンストラクトが哺乳類細胞に導入されると、セントロメアの起源にかかわらず、哺乳類細胞において、染色体として維持される。
【0031】
(DNAコンストラクトの調製)
宿主細胞内における相同組換えによりDNAコンストラクトを調製するには、その宿主細胞が、相同組換え能を有していると同時に、得られた組換えDNAを安定して維持できることが必要である。後者の条件を満たすためには、DNA組換えが不活性であることが必要である。したがって、この相同組換え法では、DNA組換え不活性の宿主細胞内に一時的にDNA組換えのための遺伝子を保有したプラスミドを存在させ(このプラスミドは、宿主細胞中にある間は、DNA組換え酵素を発現する)、一時的に可能となった相同組換えによりDNAを形成し、その後、組換えDNAを有しプラスミドを有しない細胞を選択する。
【0032】
(DNA組換え不活性宿主細胞)
この発明のDNA組換え不活性宿主細胞は、哺乳類細胞や酵母細胞等の真核細胞や細菌細胞も包含する。好ましくは、この宿主細胞は酵母細胞である。さらに好ましくは、宿主細胞として、1または2以上のDNA組換え酵素(DNA recombination enzyme)を欠損した細胞である。DNA組換えのための遺伝子を備えたプラスミドを保有する前記宿主細胞が、相同組換えのための宿主細胞とされ、このプラスミドを保有しない前記宿主細胞が、組換えDNAコンストラクトを維持する宿主細胞とされ、組換えDNAの安定した供給源とされる。この発明で用いる、DNA組換え酵素を欠損した酵母細胞としては、rad51やrad52遺伝子の他、各種のDNA組換え酵素の発現遺伝子を欠いた酵母変異株や、その他のDNA組換え酵素発現のために必要な遺伝子を欠いた各種細胞が含まれる。特に、rad52-株(rad52欠損株)であるSaccharomyces
cerevisiae EPY305-5b株(provided by Dr.Resnick,NHEHS,USA)が好ましく用いられる。
【0033】
(DNA組換えのための遺伝子を備えたプラスミド)
かかるプラスミドは、宿主細胞において、相同組換えのために、DNA組換え酵素を発現する。DNA組換えのためのプラスミドが、細胞分裂において娘細胞に均等に分配されないとき、一時的にDNA組換え酵素を発現させることが可能となる。かかるプラスミドとして、RAD52発現プラスミドである、YpSPL1(Adzuma et al.,Mol.Cell.Biol.4,2735-2744,1984)(国立遺伝学研究所(日本)の小川(T.Ogawa)博士より提供されたものである)やYpSL1-Uraを使用することができる。後者のプラスミドは、以下のようにして得ることができる。
【0034】
YpSPL1をEcoRVによって切断し、0.57kbpのEcoRV断片(この断片は、TRP1遺伝子の一部を含んでいる)を、ブラントエンド処理された、pYAC55のSalI-Xhol断片(この断片にはURA3遺伝子を含んでいる)によって置換する。宿主細胞において同様の機能を発揮する他のプラスミドも本発明において利用できる。この発明において用いるプラスミドは、好ましくは、細胞がそのプラスミドを保有するかしないかを区別することができる選択マーカー遺伝子を含んでいることが好ましい。また、この発明で用いるプラスミドは、宿主細胞内の染色体外で自律複製できる遺伝子因子を意味する。
【0035】
(組換えDNA)
相同組換えによって構築された組換えDNAは、その細胞内で自律的に複製され、かつ染色体外で安定して維持されなければならない。したがって、酵母細胞内で相同組換えにより構築された組換えDNAは、酵母細胞内で自律的に複製し安定して維持される、酵母人工染色体として機能するものである必要がある。組換えDNAは、好ましくは、特定の条件下で形質転換細胞を選択できる選択マーカー遺伝子を保有している。
【0036】
(組換えのためのDNA配列)
宿主細胞に導入される一つのDNA配列は、同様に組換えのために導入される他のDNA配列の一つに対して部分的に相同である必要がある。相同組換えは、これらの二つの配列間で達成される。組換えのためのDNA配列は、線状および/または環状とすることができる。いずれの形態であっても、相同的に組換え可能である。組換えのためのDNA配列は、それぞれ、細胞内での相同組換えによって形成される組換えDNAが、その宿主細胞内で自律的に複製され、染色体外で安定して維持されるように設計される。
【0037】
宿主細胞が酵母細胞の場合には、組換えDNAは、テロメア配列と、自律複製配列(ARS)やセントロメア(CEN)を備えるようになっている。したがって、組換えDNAを形成するためのDNA配列には、これらの要素を備えている必要があり、この結果、相同組換え後において、組換えDNAは、酵母人工染色体として機能する。例えば、2つのDNA配列から酵母人工染色体を形成しようとする場合には、酵母人工染色体が一方のDNA配列として使用され、他方のDNA配列として、3’末端あるいは5’末端にテロメア配列を有し、さらに、前記酵母人工染色体に対して相同的な配列を有するように他方のDNA配列が形成される。この結果、酵母人工染色体の3’末端あるいは5’末端側が、他方のDNA配列によって置換される。
【0038】
さらに、酵母人工染色体の3’末端と5’末端を、それぞれ3’末端にテロメア配列を有するDNA配列、および5’末端にテロメア配列を有するDNA配列とで置換することもできる。組換えのためのDNA配列には、所望の遺伝子のためのDNA配列を含めることもできる。相同組換え後、組換えDNAは、そのような遺伝子を保有するようになる。
【0039】
特に、組換えのためのDNA配列が、サイズの大きいDNA配列を有する場合に、本法の相同組換え法は有用である。制限酵素を用いる従来の試験管内でのDNA組換え法では、サイズの大きなDNA配列を持った組換えDNAを構築するのは非常に困難であったにもかかわらず、本細胞内相同組換え法によれば、容易に、大きなサイズのDNAを持った組換えDNAを形成できるし、得られた組換えDNAを安定して、宿主細胞中に維持させることができるのである。例えば、構造遺伝子とその調節遺伝子を含むヒトゲノムDNA配列や、繰り返し配列を含むようなDNA配列が、本相同組換え法における大サイズのDNA配列として挙げることができる。より好ましくは、組換えのためのDNA配列は、所望の繰り返しDNA配列を有する。このような繰り返しDNA配列を組換え用DNA配列が有していると、機能するDNA組換え酵素を発現する宿主細胞中では、直ちに変化してしまう。しかしながら、本細胞内相同組換え法によれば、そのような繰り返しDNA配列を有するDNA配列であっても、適切に組換えすることができる。得られた組換えDNAは、DNA組換え酵素のない酵母細胞内で安定して維持される。このような繰り返しDNA配列は、哺乳類染色体上に存在している。
【0040】
さらに、この相同組換え法では、大きなサイズのDNA配列や、繰り返し配列を備えた組換えDNAは、宿主細胞内で適切に改変され、かつ安定して維持される。このようなDNA配列は、好ましくは、組換えDNAを保有する細胞を選択的に回収するための選択マーカー遺伝子を有している。
【0041】
(酵母人工染色体)
酵母人工染色体(YAC)は、組換え用DNA配列として用いられる。組換え用DNA配列としてのYACと、この発明の相同組換え法によって構築されたYACは、少なくとも、酵母細胞内で自律的に複製し、染色体外で維持されるDNA断片であることを意味する。したがって、これらのYACは、テロメアと自律複製配列とセントロメアと複製開始のための配列を有し、これらの要素が有効に作用するように配列されていることが必要である。この他、従来公知の各種YACが本発明において利用される。
【0042】
(組換え用DNA配列としてのYAC)
YACは、DNA組換えのための便利なツールであり、所望の遺伝子のDNA配列を有するYACは、酵母細胞において安定して維持される。YACは、大きなサイズのDNA配列あるいは繰り返し配列を備えたDNA組換え用のDNA配列として用いるのが好ましい。また、YACには、相同組換えにより組換え体となったYACを保有する酵母細胞を選択できるように、選択マーカー遺伝子を有するようにしておくことが好ましい。
【0043】
特に、この発明において用いるのに好ましいYACベクタープラスミドとしては、pYAC(ワシントン大学のDr.Olsonより提供)を修飾して得られるpYAC55pkcである。pYAC55pkcは、図6に示す方法によって得ることができる。pYAC55pkcを、ClaIによりClaIサイトで切断し、ブラントエンドとする。次いで、T4DNAポリメラーゼの存在下でセルフライゲーションさせる。そして、NotIの粘着性末端と、PstI(BstXI)、KpnIとClaIサイトを有するDNA配列を、このプラスミドのNotIサイトに導入して、pYAC55pkcを得る。このプラスミドは、NotI、PstI(BstXI)、KpnIとClaIのクローニングサイトを有する。このプラスミドをBamHIにより完全に消化した後、この発明で用いるYACとする。また、このプラスミドを、BamHIおよびClaIで完全に消化すると、YACの左腕と右腕とを得ることができる。これらの左腕と右腕は、所望のDNA領域をクローニングするためのYACを調製するのに利用することができる。
【0044】
(細胞内での相同組換え)
DNA組換えのための遺伝子を保有し、かつ細胞分裂時に各娘細胞に均等に分配されないプラスミドを染色体外に保有するDNA組換え非活性宿主細胞は、このようなプラスミドを宿主細胞に導入することによって得るのが好ましい。
【0045】
酵母人工染色体をDNA組換え用DNA配列として用いるときは、DNA組換え用の宿主細胞は、以下の方法によって得るのが好ましい。すなわち、YACの導入によって酵母宿主細胞を形質転換し、その後、プラスミドをその形質転換細胞に導入するのが好ましい。特に、プラスミドを導入する際に同時に相同組換え用のDNA配列を導入することが好ましい。プラスミドと同時にDNA配列を導入すると、DNA組換え酵素を発現しているホスト細胞を選択する工程を省くことができるので、効率的に酵母細胞内で相同組換えを起こさせることができる。
【0046】
プラスミドの酵母細胞への導入や、プラスミドとDNA配列との酵母細胞への導入には、LiCl2やLi(CH3COO)2等を利用する方法を初めとして、酵母細胞への各種DNA導入方法を利用することができる。このようにして、組換えDNAを形成するためのプラスミドを保有する細胞内で、導入したDNA配列間で相同組換えが行われる。
【0047】
(組換えDNAを安定して維持することができる細胞の選択)
組換えDNAが安定して細胞内で維持されるには、組換えDNAを有し、かつ前記プラスミドを保有しない細胞を選択することが必要である。この選択は、複数の選択マーカーを適切に組み合わせることにより行うことができる。すなわち、組換えDNAが有する選択マーカーと、プラスミドの脱落により失われた選択マーカーと、相同組換えによりDNA配列から失われた選択マーカーとを組み合わせて行う。このような過程を経て選択された細胞においては、組換えDNAは、安定して維持される。
【0048】
(本発明のDNAコンストラクトに対する改変)
このようにして形成された、最低限のDNA領域を備えたDNAコンストラクトには、種々の改変をすることができる。これにより、このDNAコンストラクトを哺乳類細胞や他の細胞に利用可能なベクターとして利用することができる。例えば、このようなDNAコンストラクトは、DNAコンストラクトを保有する形質転換細胞を特定の条件下で選択できるようにするための選択マーカーをコードするDNA配列を含むように形成することができる。このような選択マーカーは、ある種の薬剤耐性や栄養要求性に関与するDNA配列等を挙げることができる。
【0049】
選択マーカーを含むDNA配列を本DNAコンストラクトに含めるようにすることにより、選択された化合物や化合物群が存在する条件下、あるいは選択された化合物や化合物群が存在しない条件下で、このDNAコンストラクトを保有する細胞を選択することができる。このような選択マーカーとしては、この分野の当業者に周知であり、当業者における通常の知識により、このDNAコンストラクトに適した選択マーカーを選択して用いることができる。なお、本発明のDNAコンストラクトは、哺乳類細胞内で保有されるので、用いる選択マーカーは、哺乳類細胞において機能しなければならない。
【0050】
さらに、このDNAコンストラクトは、哺乳類細胞以外の細胞で自律的に増殖可能とする1または2以上のDNA配列を含ませるようにすることができる。このDNA配列により、他の細胞内で染色体として機能させることができる。このようなDNA配列により、哺乳類細胞と、酵母細胞や細菌細胞等の哺乳類以外の細胞との間のシャトルベクターとして、本DNAコンストラクトを利用できる。酵母細胞や細菌細胞等において自律増殖する染色体として必要なDNA配列は、当業者において周知である。
【0051】
哺乳類細胞以外の細胞であって、このDNAコンストラクトによって形質転換された細胞を選択するには、DNAコンストラクト上の選択マーカーは、哺乳類以外の細胞で機能する選択マーカーである必要がある。このようなマーカーは、当業者において周知であり、当業者は、必要に応じて選択してこれらを用いることができる。さらに、本DNAコンストラクトは、組み込まれた外来遺伝子を発現するのに必要なDNA配列を含めるようにすることができる。このようなDNA配列は、本人工染色体を、哺乳類細胞において所望の遺伝子を発現させることのできるベクターとして利用できるようにする。各種細胞において所望の遺伝子を発現させるのに必要なDNA配列は、当業者において周知である。哺乳類細胞内で遺伝子を発現させるためには、少なくとも、プロモータ領域とPoly−A配列とを含めるようにするのが好ましい。
【0052】
さらに、このDNAコンストラクトには、構造遺伝子とその調節遺伝子とを含んだゲノムDNA配列を含めることができる。この場合、この構造遺伝子に由来する産物は、調節遺伝子領域によって、形質転換細胞内で適切に制御されて発現される。
【0053】
(セントロメアを有するDNAコンストラクトの調製)
相同組換えにより、哺乳類テロメアとCENP−B box配列を複数個含むDNA配列を有するDNAコンストラクトを得るには、CENP−B box配列を有するDNA配列を持ったYACを、組換え用DNA配列として用いる。この発明方法は、2段階の組換え工程を有している。
【0054】
相同組換え用DNA配列としての、もう一方のDNA配列(第1の腕(arm;アーム)となる)は、少なくとも、前記YACの一端側に位置するDNA配列に相同的なDNA配列と、哺乳類テロメア配列と、前記YACの一端側にある酵母人工染色体が機能するのに必要な1または2以上のDNA配列とを有する。なお、哺乳類テロメアとは、DNAコンストラクトにおいて定義されているとの同義に用いる。
【0055】
YACの一端側にある、酵母人工染色体が機能するのに必要なDNA配列とは、酵母細胞で機能するテロメアを含む。さらに、セントロメア、ARS、ORIのうちどれか(1あるいは2以上であってもよい)が、YACの一端側、すなわち、第1の腕となるDNA配列によって置換されるYACの一方の腕の側にある場合には、これらの配列がテロメアに追加されて含まれることになる。
【0056】
第1の腕となるDNA配列には、好ましくは、第1の腕が付与された第1の組換え体YACを保有する酵母細胞を選択することができるように、選択マーカー遺伝子を備えている。さらに、第1の腕となるDNA配列には、第1の腕が挿入された組換え体YACを保有する哺乳類細胞を選択できるような選択マーカー遺伝子を備えているのが好ましい。
第1の腕となるDNA配列が、酵母細胞内で、YACと相同組換えされた場合には、YACの一方の腕(一端側)が、この第1のアームで置換され、第1の組換え体YACが得られる。この組換え体は、CENP−B
box配列を有するセントロメアと、前記一端側に哺乳類テロメアとを備えている。
【0057】
(第2の腕による第1の組換え体YACの置換)
次に、得られた第1の組換え体YACと、第2の組換え用DNA配列(第2の腕)との間で相同組換えを行う。第1の組換え体YACを保有する酵母細胞が細胞分裂するときには、プラスミドも各細胞周期に一回づつ複製するが、分裂した細胞に均等分配されない。したがって、YACと第1の腕のそれぞれにあった選択マーカーと、プラスミド上にあった選択マーカーとを組み合わせることにより、プラスミドを保有しないが第1の組換え体YACを保有する酵母細胞を選択することができる。
【0058】
このようにすると、得られた酵母細胞は、DNA組換えのための遺伝子を保有していないため、第1の組換え体YACを、安定して染色体外で維持することができる。次に、第1の組換え体YACを保有する酵母細胞に、前記プラスミドと第2のDNA配列が導入される。
【0059】
第2の組換えに用いる第2の腕は、第1の組換えによって置換されてないYACの他端側を置換するためのものである。第2の腕は、第1のDNA配列の場合と同様に、少なくとも、YACの他端側にあるDNA配列に相同的なDNA配列と、哺乳類テロメアと、前記YACの他端側にある、YACが機能するのに必要なDNA配列とを有する。
【0060】
第2の腕となるDNA配列には、好ましくは、第2の腕が挿入された第2の組換え体YACを保有する酵母細胞を選択することができるように、選択マーカー遺伝子を備える。さらに、第2の腕となるDNA配列には、第2の腕が挿入された組換え体YACを保有する哺乳類細胞を選択できるような選択マーカー遺伝子を備える。
【0061】
このように調製された酵母細胞内で、相同組換えが行われると、第1の組換え体YACの他端側が、第2の腕によって置換され、CENP−B box配列を含むDNA配列を有し、かつ、哺乳類テロメアを両端に有する第2の組換え体YACが得られる。
【0062】
このような相同組換えによって得られた第2の組換え体YACは、酵母細胞内で酵母人工染色体として機能するのに必要なDNA配列を有しているが、このYACが哺乳類細胞に導入し、哺乳類細胞内で維持する状態においては、これらのDNA配列は必ずしも必要ではなく、これらの配列が除去されていてもよい。
【0063】
さらに、この相同組換え法によって得られた組換え体YACや組換えDNAコンストラクトは、さらに、この相同組換え法を繰り返して行うことにより、さらに改変された組換えYACあるいは組換えDNAコンストラクトを得ることができる。
【0064】
(組換えDNAコンストラクトの哺乳類細胞への導入)
精製されたYACやDNAは、当業者において公知の各種方法によって哺乳類細胞に導入される。例えば、リポフェクトアミン(Gibco.BRL)を用いるDNA導入法は、基本的に、製造者使用説明書に従えば行うことができる。また、マイクロインジェクションによっても可能である。さらに、他の手法がこの発明において用いることができる。哺乳類細胞に導入されたYACやDNAコンストラクトは、ホスト染色体に組み込まれることなく、安定して維持され、自律的に複製され、分裂細胞に伝達される。換言すれば、本発明のDNAコンストラクトに位置する、CENP−B box配列を複数個有するセントロメアは、明らかにセントロメア機能を備えている。この結果、染色体の断片化のためのベクターを構築することができる。
【0065】
一つのベクターは、本発明のセントロメアと、組換えようとする染色体に対して相同な配列と、哺乳類テロメアを末端に有するように構築される。他方のベクターは、組換えようとする染色体に対して相同な配列と、末端に哺乳類テロメアとを有するように構築される。これらのベクターは、所望の位置で染色体を切断できかつ、所望の長さの染色体断片を得ることができるように設計される。もし、設計されたベクターが宿主細胞内で宿主染色体と相同組換えされると、組換えベクターは、宿主染色体の所望の断片を有するミニ染色体となり、安定して宿主細胞に維持される。さらに、この染色体の断片化技術とYACの技術とにより、哺乳類染色体の断片を持った断片化用ベクター(ミニ染色体)を酵母細胞にクローニングすることができるようになる。加えて、ミニ染色体を細胞や個体に導入することができる。これらの技術は、染色体工学を発展させることができる。
【0066】
[産業上の利用可能性]
この哺乳類人工染色体の発明によると、哺乳類細胞内で、自律的に複製されかつ維持されるので、哺乳類細胞に外来遺伝子を導入するためのベクターとして、また、外来遺伝子を哺乳類細胞内で発現させることができるベクターとして作用する。また、この人工染色体によると、遺伝子を内在する染色体に組み込むことなく、細胞内にこの人工染色体を導入するだけで細胞を形質転換することができる。この人工染色体をベクターとして用いると、所望の遺伝子が安定してクローニングされる。すなわち、導入された細胞内で分解されることがなく、ホスト染色体の遺伝子の導入部位の位置効果にに左右されることなく形質転換される。特に、このようなベクターは、遺伝子治療において、正常遺伝子を罹患細胞(affected cells)中に導入するためのベクター、あるいは罹患細胞における異常遺伝子の発現をコントロールするためのベクターとして有用である。
【0067】
[発明を実施するための最良の形態]
この発明は詳細に説明されたが、以下のある特定の実施例を参照すれば、より一層はっきりと理解できるであろう。この実施例はもっぱら解説のためのものであって、明細書に記述がない限り発明の範囲を限定するものではない。
【0068】
[哺乳類細胞系列]
WAV17は、マウスとヒトとの体細胞融合細胞であり、ヒト由来の要素として、2または3個のヒト21番染色体を有している。この細胞は、Dr.F.Ruddle(Yale University,USA)より得られた。また、H1080株は、Dr.D.Broccoli(The
Rockfeller University)から得られたヒト男性フィブロブラスト細胞である。WAV17とH1080は、10%ウシ胎児血清(BioWhittaker)をくわえたDME培地(ニッスイ、日本)中、37℃、5%CO下で維持される。
【0069】
[抗体]
3つの主要なセントロメア抗原であるCENP−A、B及びCを、Hela核抽出物とのイムノブロッティングで認識する、強皮症患者K.Gからのアンチセントロメア抗体(ACA)ボジティブ血清を、Dr.Y.Muro(名古屋大学)から得た。ヒトCENP−B(BN1)のNH2末端領域に対するポリクローナル抗体は、すでに報告されている(Kitagawa et
al.,Mol.Cell.Biol.15,1602-1612,1995)。ヒトCENP−CのCOOH末端領域に対するポリクローナル抗体であるCGp2と、CRa2は、ギニアピッグとウサギを、それぞれ、CENP−Cの第630番目から943番目のアミノ酸残基を含むポリペプチドで免疫することにより得た。CENP-C,pETCC630-CのCOOH末端を発現するプラスミドは、岡山バーグライブラリ(岡山ら,Mol.Cell.Biol.3;280-289,1983)からスクリーニングされたpCNPCC1由来のCENP−CのcDNAのXbalI−BamHI断片を、NdeL-XbalIリンカー(5'-TATGAATCTTGATTGTT-3')を用いてpET3cのNdelI-BamHIサイトにクローニングすることにより構築した。ポリペプチドは、T7発現系(Studier
et al.,Methods Enz.185;60-89,1990)によって、pETCC630-Cを用いてE.collにおいて発現させ、Kitagawaら(1995)の方法と同じ方法によって精製した。
【0070】
[酵母株と培地]
サッカロマイセスセレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)のEPY305-5b株(MATα,rad52-Δ2000,leu2-Δ1,lys2,ade2-101,his3-Δ200,trp1::HisG,ura3-52)は、Dr.M.Resnick(NIEHS,USA)から得、高栄養培地であるYPDかあるいは合成の最小SD培地中で増殖させた。
【0071】
以下の実施例で用いた培地及び溶液は以下に記載するとおりである。
YPD:1%酵母エキストラクト,2%ポリペプトン,2%グルコース
SCE(トランスフォーメーション用):1Mソルビトール, 0.1Mクエン酸ナトリウムpH5.8, 10mM EDTA pH8.0
SCE(アガロースプラグ用):1Mソルビトール,0.1Mクエン酸ナトリウムpH7.0, 50mM,EDTA pH8.0
STC:1Mソルビトール,10mM
Tris-HCl pH7.4,10mM CaCl2
PEG:20%PEG8000,10mM Tris-HCl pH7.4,10mM
CaCl2
SOS(10ml):5ml of 2Mソルビトール,2.5ml of YPD,2.4ml of DW, 70μl of 1M CaCl2,100μlof 100xウラシル
SORBプレート:1Mソルビトール,0.67%アミノ酸非含有酵母窒素塩基, 2%グルコース,1.7%バクトアガー,1xアミノ酸
トップアガー:1Mソルビトール,0.67%アミノ酸非含有酵母窒素塩基(yeast nitrogen base without amino acids),2%グルコース,17%バクトアガー,1xアミノ酸
SD:0.67%アミノ酸非含有酵母窒素塩基(yeast nitrogen base without amino acids),
2%グルコース,1xアミノ酸
10xアミノ酸:400mg/l
アルギニン-HCl,200mg/l ヒスチジン-HCl,600mg/lイソロイシン,600mg/l ロイシン,500mg/l
リジン-HCl,200mg/l メチオニン,500mg/lフェニルアラニン,500mg/lチロシン,100mg/lアデニンサルフェート,2000mg/lスレオニン,400mg/lトリプトファン,200mg/lウラシル
100x トリプトファン:4.0g/l
トリプトファン
100x ウラシル:2.0g/l
ウラシル
100x リジン:5.0g/l
リジン
【0072】
溶液I:SCE(アガロースプラグ用)に2mg/mlの濃度にザイモリアーゼ100T(生化学 株式会社)を、33mMの濃度にDTTを添加する。
溶液II:0.45M EDTA pH9.0,10mM Tris-HCl pH8.0,50mM DTT
溶液III:0.45M EDTA pH9.0,10mM Tris-HCl pH8.0,1%ラウリル−サルコシン,1mg/ml プロテアーゼK
【0073】
[YACベクターとプラスミド]
YACクローニングベクターの構築
アルフォイドDNAのクローニングに使用するYACベクターであるpYAC55pkcは、pYAC55の誘導体である(Dr.M.V.Olson,U.Washingtonにより提供)。pYAC55のClaIサイトは、ClaIによる消化とT4DNAポリメラーゼによるブラントエンド処理後のセルフライゲーションによって壊しておき、このプラスミド誘導体を、NotIで消化し、NotIサイトに隣接させたPstI(Bst XI),KpnI,及びClaIサイトを含むオリゴヌクレオチド(YL1 and YL2)を、このプラスミドのNotIサイトに導入し、NotI,PstI(Bst XI),KpnI,ClaIのクローニングサイトを有したpYAC55pkcを創製した(図2)。
【0074】
Rad52発現プラスミド Rad52発現ARSプラスミドYpSL1(Azuma et al.,Mol.Cell.Biol.4,2735-2744,1984)は、Dr.T.Ogawa(National Institute of Genetics,Japan)から提供された。YpSL1を、EcoRVで消化し、TRP1遺伝子を含む0.57kbのEcoRV断片を、T4DNAポリメラーゼによるブラントエンド処理後に、pYAC55由来のURA3遺伝子を含む、2.6kbのSalI-XhoI断片によって置換した。得られたプラスミドであるYpSL1-Uraは、URA3遺伝子をTRP1遺伝子の替わりに有している。この方法において使用するオリゴヌクレオチドは以下に示すとおりであった。
【化1】

【0075】
[アガロースプラグの調製]
PBS中8X107cells/mlの濃度のWAVl7細胞を等量の低融点(Low Melting
Point(LMP))アガロース(Seaplaque
GTG,FMC)の1%PBS溶液と混合し、100μlプラグフォーマー(モールド)に注入した。固化したアガロースプラグを、0.5M EDTA,1%ラウリル-サルコシン、1mlあたり10mgのプロテアーゼKで24時間、50℃で処理した。制限エンドヌクレアーゼ処理の直前に、アガロースプラグを、1mM PMSFを含むTE(10mM
Tris-HCl pH7.4and0.1mM EDTA)に対して透析し、その後、TEに対して透析した。サザンハイブリダイゼーション用には、約8μL容量のスライスされたアガロースプラグを、各実施例において特定される20-50単位の制限エンドヌクレアーゼ50μlの混合液(タカラ,日本or NEB)中において処理した。
【0076】
YACを含む酵母株は、50mlのSD培地(-Ura,-Trp
or-Lys,-Trp)に植菌され、対数増殖後期(4days,at30℃)にまでフラスコ中で増殖させた。細胞を、50mlファルコンチューブに移して、2000gで5分間遠心することにより回収し、50mlの50mM EDTAで懸濁し洗浄した。遠心後、上澄み液を取り除いて、細胞ペレット(約330μl)を同量の溶液I(33mM DTT、4mg/mlzymolyasc100T(生化学工業株式会社)を含む)に懸濁し、37℃で15分間インキュベートした。
【0077】
その後、細胞懸濁液を、カットオフチップでピペッティングすることにより、同量の(約330μl)の2% LMPアガロース(Seaplaque GTG.)の0.15M
EDTA溶液と十分に混合した。黄色のカットオフチップを用いて、100μlの混合液を、氷上のプラグフォーマーキットに注入した。アガロースプラグは、溶液II中に移されて、37℃で一晩インキュベートした。その後、バッファを溶液IIIで置換し、プラグは、50℃で一晩インキュベートした。このプラグは、使用するまで4℃で保存した。
【0078】
[パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)]
PFGEは、パルサファー電気泳動ユニット(ファルマシア)を用いて、1%LEアガロース(FMC)and 0.5xTBE(50mM
Tris-HCl,50mMホウ酸and 1mM EDTA)中、10℃で実施した。エチジウムブロマイドによる染色及び写真撮影後、ゲルは、0.25M HClで20分間処理し、0.4M NaOH中のナイロン膜(Hybond
N,Amersham)に一晩かけて転移させた。
【0079】
[サザーンハイブリダイゼーション]
ハイブリダイゼーションプローブは、プラスミドDNAのゲル精製インサートフラグメントをラベリングするか、あるいはランダムプライマー法を用いて得たPCR32P-dCTPで調製した。PFGEゲルからDNAが移されているナイロン膜は、50%ホルムアミド,4xSSPE,1%
SDS,0.5%スキムミルク及び500μg/ml超音波処理されたサーモンスパームDNAが存在し、さらにプローブDNAが存在する状態あるいは存在しない状態で、42℃でプレハイブリダイズ及びハイブリダイズした。最終的な洗浄は、0.1xSSCと0.1%SDSを用いて68℃で行った。
【0080】
[免疫沈降競合試験]
CENP-B box配列を有する相補的オリゴヌクレオチドが化学的に合成された。
【化2】

【0081】
末端がラベルされたプローブDNAは、末端を対合させてアニールしたCB29aとCB29bの一本鎖部分をクレノウフラグメントで修復して調製した。末端ラベルオリゴヌクレオチド(0.5ng)を、各種濃度のラベルしていないDNAと混合し、100μlのバインディングバッファ(10mM Tris-HCI pH 8.0,10% glycerol,1mM EDTA,2mM DTT,150mM NaCl,0.05% NP-40,100μg/ml poly(dl・dC),poly(dl・dC))中で、ヒーラ(HeLa)の0.5M NaCl抽出物(1.5x105nuclei)とともに1時間、室温でインキュベートした。その後、5倍量の前記バインディングバッファで希釈した1μlのアンチセントロメア血清(K.G.)を、この混合液に添加して、氷上で30分間インキュベートした。25μlのプロテインA-セファロース(ファルマシア)を添加した後、混合液を氷上で30分間インキュベートし、0.5%NP-400を含む0.5mlの前記バインディングバッファで3回洗浄した。最終的に、ペレットの放射能を液体シンチレーションカウンター(Beckman)を用いて測定した。間期の核からの0.5M NaCl抽出物の調製は、Masumoto et al.(1989,J.Cell
Biol.109,1963-1973)によって記載される方法によって行った。
【0082】
[PCR]
ヒトα21-I領域やα21-II領域に特異的なアルフォイドDNAの様々なサブファミリーを増幅するために、アルフォイドモノマーにおける共通配列から選択された相補鎖のプライマーを用いてPCRが実施された。タンデム繰り返し配列の場合には、保存されているモチーフの相補鎖プライマーをPCRに用いると、繰り返し構造におけるモチーフ間の多様な配列が増幅される。
【0083】
α(1)a/bプライマーは、α7C5
YACにクローニングされたアルフォイド配列を増幅するのに用い、α(Y)a/bプライマーは、αB13
YAC.にクローニングされたアルフォイド配列を増幅するのに用いる。
【化3】

【0084】
すべてのPCR反応は、50mlの反応混合液中で行われた。この反応混合液には、10mM Tris-HCL pH 8.4,50mM KCl,1.5mM MgCl2,0.01%ゼラチン,0.2mM dNTPsおよび1 unitのタックポリメラーゼ(Perkin-Elmer)を含んでおり、1mMのプライマーおよび、1ngのWAV17ゲノムDNAあるいはYACを含む酵母ゲノムDNAを使用することによって行った。30回の反応サイクルが実施され、1サイクルは、94℃で30秒変性、55℃あるいは57℃で90秒アニール、73℃で60秒エクステンション、という工程からなっていた。PCR産物は、エタノールで沈殿され、プライマーを除去し、プローブとして用いた。
【0085】
[蛍光インサイトゥハイブリダイゼーション]
コルセミドまたはTN16(Wako Pure chemical)によって分裂中期で停止させた形質転換細胞や、間期のHT1080細胞およびその派生株は、メタノール/アセテート(3:1)中で固定し、通常の方法でカバースリップ上に拡げた。FISHは、Masumoto
et al.,1989,Exp.Cell Res.,181,181-196に記載された方法によって行われた。ビオチンでラベルしたプローブは、アビジンと結合したFITC(1:250に4×SSC,1%スキムミルクで希釈、Vector)で検出され、ジゴキシゲニンでラベルしたプローブは、抗ジゴキシゲニンと結合したTRITC(1:20に4×SSC,1%スキムミルクで希釈,Boehringer Mannhcim)で37℃で1時間インキュベーションして検出される。染色体と核は、DAPIで対比染色した。
【0086】
[FISHと間接的免疫沈降との同時検出]
Masumoto et al 1989,Exp.Cell Res.,181,181-196に記載される同時検出法を、以下のように変形した。膨潤しPLPで固定した形質転換細胞を、抗CENP-B(BN1)や抗CENP-C(CGp2)抗体と、37℃で1時間インキュベートして、その後、洗浄し、第2の抗体である、FITC-結合アンチウサギあるいはアンチギニアピッグIgG(Bcthy Labolatry)とインキュベートした。
細胞を洗浄し、30分間PLP固定液で再度氷上に固定し、その後、メタノール/酢酸(3:1)で固定した。脱水および乾燥後、カバースリップ上の細胞を、70%のホルムアミドで70℃で30分間変性させ、以下に記載したのと同様の条件でハイブリダイズさせた。カバースリップは、50%ホルムアミド/2×SSCで、37℃で7分間、2回洗浄し、2×SSCで、37℃で7分間、2回洗浄し、1×SSCで、室温、10分間で1回洗浄し、さらに、5%スキムミルク/4×SSCで室温、1時間ブロックした。YACアームからのシグナルは、同時に、CENP-BやCENP-C、TRITC-結合抗ジゴキシゲニン、からのシグナルのそれぞれによって検出した。
【0087】
[プレート効率]
非選択状態での形質転換細胞の継代を、60日(おおよそ60代)までのプレート効率によって分析した。各4日ごとに、細胞は、BSを含まない新たな培地で1:16の希釈割合でプレートした。継代開始から、20,40および60日経過後、1-2×103個の細胞が複製され、BSを含む培地およびBSを含まない培地のそれぞれにプレートした。コロニー数は、7-8経過後にカウントした。耐性のない細胞は、3-5以内で死滅した。
【0088】
[FISHのためのDNAプローブ]
プローブは、ラベルしたdUTPを基質とするランダムプライマー法あるいはニックトランスレーションにより調製した。配列番号2(11-4アルフォイドDNA)として記載されるゲル精製した11量体(α21-I座およびクローン検出用)、α(Y)a/bプライマーによるPCR産物(α21-II座およびクローン検出用),YACベクター(テロメア配列がCla I・Kpn Iにより、あるいはCla I-Xho I消化されてベクターから除去されたもの)、およびテロメア配列(TTAGGG)nが、ビオチン-11-dUTP(Enzo Biochem)あるいはジゴキシゲニン-11-dUTP(Boehringer Mannheim)によってラベルされた。反応混合液から、Sephadex G-50スパンカラムを用いて遊離ヌクレオチドを除去した後、エタノールで沈殿させ、ホルムアミドに溶解した。
【0089】
[実施例1]
[ヒト21番染色体のアルフォイドDNA領域のYACへのクロ−ニング]
我々は、セントロメアアルフォイドDNA領域を、rad52-酵母宿主細胞のEPY305-5bを用いてYACにクローニングした。WAV17ゲノムDNAを含む1個のアガロースプラグを4個に分割し、37℃で一晩放置してBgll(60U),Bgl II(60U)or BamHl(72U)で完全に消化した。その後、酵素反応をEDTAが50mMとなるように添加して停止させ、NDS(0.45M
EDTA,1%ラウリル−サルコシン,10mM
Tris-HCl pH7.4)で溶液置換して、4℃に保存した。プラグは1xTBEで2時間平衡化し、その後、1%pre-cooled LMTアガロースゲルに載せた。50kb以下のDNA断片をPFGE(90v,30秒.パルス70分から90分)で除去した後、アガロースプラグを、分離用ゲルから回収した。これらの工程により、ヒト21番染色体由来のアルフォイドDNA領域は、当初のバルクゲノムDNAに対して8倍から10倍に濃縮された。
【0090】
回収されたプラグ(合計100μI)を、Msp I消化バッファ中に2時間インキュベートして、そのバッファを平衡化した後、新たなバッファに交換した。プラグ中のDNAは、Mspl(120U)で37℃で1時間処理して部分的に分解し、その後、最終濃度が5mMとなるようにEDTAを添加して反応を停止させた。ゲル中のバッファを50mM NaClを添加した1xTAEで2時間インキュベートして交換した後、残存するバッファを除いて、プラグのアガロースを68℃、3分間で溶解し、その後42℃に冷却した。20Uのアガラーゼ(シグマSigma)をその溶解液(100ml)に添加し、42℃一晩でインキュベートした。この溶液中のDNAは、コロディオンバッグ(孔径8nm,cut off MW 12000,sartorius)中に、10mM
Tris-HCl(pH7.4)0.5mM EDTA pH8.0,50mM NaClを含むバッファに対して減圧透析することにより20倍に濃縮され、この濃縮液をさらに、同じバッファに対して4時間透析を行った。
【0091】
濃縮されたゲノムDNA(17個のアガロースプラグから約35μg)は、同量のYAC55pkcの右腕と左腕(42μlの液体と3360Uリガーゼ)とライゲーションした。ライゲーション後のDNA溶液は、ゲルローディングバッファと混合して、予め冷却した1.2%LMPアガロースゲルにのせて、PFGE(170V,8秒パルス)で2時間でサイズ分画し、その後120v,8秒パルスでさらに18時間かけた。
【0092】
50kb以上の長さのDNA断片を含むアガロースブロックを、コントロールマーカーとなるレーンを染色することにより区別して、切り出し、このゲル中のDNAを、50mM
NaClを添加した1xTAEでバッファ交換した後に、アガラーゼ処理して、酵母へのトランスフォーメーションに使用した。
【0093】
(スフェロプラストでの酵母トランスフォーメーション)
YPDプレート上の酵母コロニー(EPY305-5b)を、50ml YPD培地に対してOD660が0.02となるように植菌し、30℃で14〜20時間培養して、OD660を1.6-1.8とした。
細胞を50mlチューブに移して1500rpm、5分、室温で遠沈して、25mlの水で1回洗った後、さらに、25mlの1Mソルビトールで洗い、さらに遠心した。細胞を20mlのSCEに再懸濁し、40μlのβ-メルカプトエタノールと混合した。
100μlの試料をこの懸濁液から採取し、900μlの水で希釈した後に開始点のOD800を測定した。
【0094】
この細胞懸濁液を、100μlの2mg/mlのザイモリアーゼと混合し、30℃でインキュベートした。OD800が開始時の75-80%までに減少した時にインキュベーションを停止した。その後、このスフェロプラスト細胞を5分間、950rpmで遠心し、そのペレットを15mlのSTCに懸濁し丁寧に洗うことを2回行った。細胞を、再び遠沈し、1mlのSTCに懸濁した。各100μlのスフェロプラスト細胞液を、実施例1で調製した10μlのYAC DNAと穏やかに混合し、室温で10分間インキュベートし、その後、PEG溶液と混合し、10分間室温でインキュベートした。スフェロプラストは、950rpmで5分間遠沈し、上澄液をできるだけ除いて200μlのSOSに懸濁して、30℃で30分間インキュベートした。これらの細胞は、遠沈して回収し、SD(-ura-trp)に懸濁した。この懸濁液を、50℃で溶解したトップアガー7mlと混合して、予め42℃に調整された5枚のSORBプレート(-ura-trp)に流した。このプレートを25℃で5〜7日間インキュベートした。
【0095】
YACライブラリーを、ただ一つのヒト由来の要素として21番染色体を含むヒトとマウスの体細胞ハイブリッド細胞(WAV17)のゲノムDNAを用いて構築し、おおよそ10000のコロニーを、アルフォイドDNAプローブ(α21-Iの高頻度繰り返しユニットのアルフォイド11量体とPCR産物であるα21-II(Ikeno
et al Hum.Mol.Genet.3,1245-1257,1994)でスクリーニングした。その結果、α21-Iとα21-II配列を含む,4クローンおよび7の安定したアルフォイドYACクローンを得た。図3は、それぞれ、α21I由来のα7C5とα21-II由来のαB13のYACクローンとを示している(図2)。これらのクローンは、PFGEによって最大約100〜110kbのインサートサイズを有していることがわかった(図4)。これらの二つのクローンは、繰り返しDNAプローブを用いたドットハイブリダイゼーション、制限酵素による消化、サザーンハイブリダイゼーション、クローン末端のPCR分析、CENP−Bタンパクを用いたDNA免疫沈降競争アッセイによって分析した(図4、5、6)。これらの結果は、α7C5が11mer体の繰り返しユニットの規則的な繰り返しから構成されていることと、CENP−B box配列を各アルフォイドモノマー体中に高頻度に有していることがわかった(図4)。このクローンと反対に、αB13はほとんどの部分が、多様化したアルフォイドDNAから構成されており、その一端に約2kbのサテライトIII配列の断片を有してはいたが、CENP−B box配列は有していなかった。αB13はいくつかのAlu配列を有していた。
したがって、α21-Iとα21-IIから得られた、これらの二つのYACクローンは、21番染色体のアルフォイド領域の特徴を表しており、互いに、これらの二つのアルフォイド配列のうちいずれがヒト細胞においてセントロメア機能を有しているか否かを確認するのに良好なコントロールを提供することになる。
【0096】
[実施例2]
[置換ベクターの構築]
YAC腕置換用ベクターを構築するには、YACベクターの左右の腕をヒトテロメア配列で改変する。そして、酵母と哺乳類の選択マーカー遺伝子(ブラスチシジンS耐性遺伝子:Bsr,および/またはネオマイシン耐性遺伝子:Neo)をこれらのベクターに挿入した。
【0097】
pEND2Rベクター(pHUTEL2のデリバテイブプラスミド[Thesis,Edinburgh University,U.K.])から得た600bpの哺乳類TTAGGGテロメア配列(0.6kb element)のNot
I-Cla I断片を順方向(a head to tail arrangement)で、0.5kbの哺乳類テロメア配列を0.3kbの酵母TG1-3テロメア配列に隣接して有するpgb4g7(Thceis,Edinburgh
University,U.K.)から得た0.8kbエレメントとともにサブクローンした。Bam Hl互換性末端に隣接した18bpのIsce I認識部位(Boehringer)を有するオリゴヌクレオチドを、前記0.6kbエレメントと0.8kbエレメントの結合部位にあるBamHlサイトに挿入した。この結果、Isce Iサイトのすぐ下流にあるただ一つのBam Hlサイトのみが維持された。0.6kbエレメント、Icse Iサイト、0.8kbエレメントとは、オメガカセットを形成する。
【0098】
左腕置換用ベクターは、すでに報告されたpCGS990(スミスら;Smith
et al 1993;Mammalian Genome,4,141-147)によって改変した。pCG990はD.T.Moir,Collaborative Research,Incより提供された。2.6kbのSal I-Cla I断片、これは、pMC1po1A(Stratagene)由来のネオマイシン耐性遺伝子と一つのオメガカセットを有するが、Sal I-Cla I消化されたpCGS990にクローニングし、この結果、pMeganeo(図7)が構築された。テトラヒメナのテロメア配列とpMegancoにあるネオマイシン遺伝子は、Not Iによる完全消化とXholによる部分消化により除去され、プラスミドを、T4DNAポリメラーゼによるブラントエンド処理後にセルフライゲーションした。その後、Cla I互換性サイトに隣接するSal I,Cla
IとNot Iサイトを有するオリゴヌクレオチド(YL3及びYL4)を、このプラスミドのCla
Iサイトに挿入した。この結果、唯一のSalIサイトとCla IサイトとNot Iサイトとを有するpMegaΔを構築できた(図8)。pSV2-neo由来のネオマイシン耐性遺伝子を含む3.6kbのApaLl-EcoRI断片をT4
DNAポリメラーゼで処理して、pMegaΔのLys2とTK遺伝子との間で部分消化して得たEcoRIサイトにクローニングし、pMegaSV-Neoを得た(図8)。pMegaΔまたはpMegaSV-Neoは、Sal IとNot Iで消化してリニアにした後、アルフォイドYACの左腕を相同組換えにより置換するのに用いた。
【0099】
右腕置換ベクターは、すでに報告されているpJS89(Shero et al 1991,Genomics,10,505-508)の誘導体である。pJS89を、Bam HIとCla Iで消化して、Y'aエレメントを除去した。オメガカセットを、Bam HI-Cla Iサイトに挿入して、pJS89megaを得た(図9)。pYAC4から得た1.1kbのSal I-Eco RV断片(1/2uraエレメント)は、Eco RVサイトから切り取られている(0.42kb)機能を発揮しないURA3遺伝子が、Sal Iサイトまでの0.7kbのYAC4配列に隣接されている(Burke et
al 1987,Science,236,806-812)。この断片をpBluescriptにクローニングして、pblue 1/2 uraを得た。
【0100】
このpblue 1/2 uraエレメントを、1.1kbのSal I-Bam HI断片としてSal
I-Bgl IIで消化したpJS89megaにサブクローンして、pMega Conversion Ura(pMCU)を得た(図9)。pMCUのNot IおよびSal Iサイトは、Not IあるいはSal Iによる消化と、T4DNAポリメラーゼ処理後のセルフライゲーションにより壊しておいた。その後、このプラスミドをEcoRVで部分的に消化して、pSV2-Bsr(科研製薬)由来のブラスチシジンS耐性遺伝子を有する2.6kbのPvu II-EcoRI断片を、pMCU誘導体の1/2 URAとARS H4遺伝子の間のEcoRVサイトの一つに挿入した。最終的に、Cla I互換性サイトによって隣接されているSal I,Cla IおよびNot Iサイトを有するオリゴヌクレオチド(YL3及びYL4)が、前記プラスミド誘導体のCla Iサイトに挿入されて、ただ一つのSal I,Cla IおよびNot
Iサイトを有するpMCU-Bsrが構築された(図10)。pMCU-Bsrは、Sal IおよびNot I消化後、相同組換えによるアルフォイドYACの右腕の置換に用いた。
この実施例で用いたオリゴヌタレオチドは以下の通りである。
【化4】

【0101】
[実施例3]
[ rad52-ホスト細胞におけるRAD52プラスミド媒介一過性相同組換え]
(YAC株と相同組換え)
インビボにおけるセントロメアの機能試験のためには、リニアDNA断片の末端を安定化して、組換えや末端からの分解や末端複製に関わる問題点が回避されていなければならない。それゆえ、前記した2つのYACクローンの左腕および右腕をヒトテロメア配列に置換した。YACは酵母内における相同組換え系を利用することにより容易に改変できることが知られている(Pachnis et al
1990,Proc.Natl.Acad.Sci.,87,5109-5113,Pavan,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.,87,1300-1304)。しかしながら、この場合、YACにおける繰り返し配列を安定化するためには、rad52-宿主細胞を使うというジレンマがあった。この問題を克服するために、rad52-宿主細胞に一時的にrad52タンパクを誘導するレトロフィッティング法(a retrofitting method)を開発した。
【0102】
アルフォイドYACの両腕は、rad52-宿主細胞内で、一時的にRAD52遺伝子を発現させることによる相同組換えによって改変YACベクターによって置換した。第1の工程では、α7C5またはαB13酵母細胞に、リニア化した左腕置換ベクター(MegaΔまたはMegaSVNeo)と、TRP1
gene(YpSL1)を含むRAD52発現プラスミドとを同時にトランスフェクションした(図11および12)。+LYS,+RA、および-trpという表現型の酵母のコロニーは、左腕が置換されていることを示すものである(図13)。RAD52発現プラスミドであるYpSL1は、酵母のARS断片を有してはいるが、酵母のCEN配列を有していないため、TRP選択性でない場合には、速やかに形質転換細胞から排除される。+LYS,+URAの表現型を示すコロニーのうち、14〜30%のコロニーが、−tupの表現型を示した。インサートサイズとクローンの置換されたYACの腕を、PFGEとサザーン分析によって確認した(図17)。無傷のインサートサイズを呈したクローンを、リニア化した右腕置換YACベクター(MCUBsr)とURA3遺伝子を有するRAD52発現プラスミド(YpSLlURA)とによる第2のレトロフィッティングに用いた(図11および図14)。
【0103】
第2のレトロフィッティング工程では、+LYS,+TRP表現型のコロニーのうち23〜42%のコロニーがura表現型であった。最終的に、両腕が、ヒトテロメア配列と選択マーカー遺伝子を含む新しいYAC右腕とYAC左腕で置換され、かつ挿入アルフォイドDNAが再配置(rearrangement)されていない状態の、目的とするYACクローン(MAC候補(キャンディデート;candidates),α7C5hTEL及びαB13hTEL)を得た(図15、16、17)。これらのテロメア修飾YAC DNAを、PFGEによる分離、アガラーゼ処理および透析を用いて、これらの酵母細胞から精製した。
【0104】
2段階相同組換え法の詳細な実験工程を以下に示す(図12および14)。ヒト21番染色体のアルフォイドDNAインサートをもつ、α7C5(100kb)およびα B 13(110kb)YACを有する2種類のrad52-株を、RAD52プラスミド媒介相同組換え法に用いた。各酵母株を、10mlの液体選択培地SD(1st;-ura-trp,2nd;-lys-ura)に植えて、1-2x107cells/ml(OD600=0.5-1.0)となるまで一晩培養した。この培養液を、新鮮な培地で2X106cell/mlに希釈し、さらに、1x107cell/mlとなるまで培養した。その後、これらの細胞を回収し、滅菌水で洗浄し、1.0mlの水で懸濁した後、1.5mlのマイクロフュージチューブに取った。これらの細胞は、1.0ml of LiAc/TEで洗浄し、2X108-2X109cells/mlの濃度でLiAc/TE(50-500μl)を用いて懸濁した。
【0105】
50μlの酵母懸濁液を、500ngのリニア化したYAC腕置換ベクターDNA(1st
step:α7C5についてはMegaΔ、またはαB13についてはMegaSV-Neo,2nd step:MCU-Bsr)と,RAD52遺伝子を含む500ngのARSプラスミド(1st:YpSL1 and
2nd:YpSL1-Ura)と、50μgの一本鎖のサーモンスパームキャリアDNAと混合し、さらに、300μlの40%PEG 4000溶液と混合した。この酵母とDNAとの混合液を、30℃で30分間攪拌しながらインキュベートして、その後42℃で15分間ヒートショックを与えた。こうして、酵母細胞を回収して、5分間、7000rpmで遠沈して、1ml YPDに懸濁し、30℃で2時間攪拌しながらインキュベートした。
【0106】
酵母細胞を回収し、選択培地であるSD(1st:-lys-ura,2nd:-trp-lys)で洗浄し、適切な選択用のSORBプレート上に置いた。25℃でインキュベートして4〜5日経過後、コロニーを、Trpを含むあるいは含まないSORB plate(1st:+/-trp,2nd:+/-ura)において増殖させた。そしてさらに、25℃でインキュベートした。3〜4日経過後、適切な表現型(1st:+LYS+URA-trp,2nd:+TRP+LYS-ura)を示したコロニーをピックアップして、インサートサイズとヒトテロメア配列の存否をPFGEとサザーンハイブリダイゼーションによって確認した。第1の相同組換え工程において、YAC55 pkcの左腕がリニア化したMegaΔまたはMegaSV-Neoによって置換された。
【0107】
第1の組換え工程で-trp/+LYS+URAの表現型を示すコロニーの発現頻度は、14〜30%であった。正しく改変された左腕を有するYACを有する酵母株を、リニア化したMCU-Bsr置換ベクターによる第2の相同組み合え工程に用いた。第2の組換え工程における-ura/+TRP+LYSの表現型を示すコロニーの発現頻度は、23〜42%であった。正しく改変された両腕を保有するYACを有する酵母株は、-lys-trpプレートで維持され、このような株をヒト細胞へのYAC DNAのトランスフェクションのための材料として用いた。
【0108】
α7C5インサートを有する組換え体YACをα7C5hTELと称した。また、αB13インサートを有する組換え体YACをαB13hTELと称した。α7C5hTELを含むサッカロマイセスセレビジエ(Saccaromyces cerevisiae EPY305-5bα7C5hTEL)は、工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に、1996年8月14日付けで寄託されており、寄託番号は、FERM BP-5625である。
【0109】
本実施例で使用したLiAc/TE、40%PEG溶液の組成は以下のとおりであった。
LiA/TE;(0.1M Li-酢酸pH7.5/10mM
Tris-HCL pH7.5/1mM EDTA)
10xLi/Ac(1M Li-酢酸,pH7.5 酢酸にて調整)とTEから使用毎に調製する。
40%PEG solution;40%PEG 4000/0.1Li-酢酸pH7.5/10mM
Tris-HCI pH7.5/1mM EDTA50%PEG4000,10xLi-酢酸,TEから使用毎に調製する。
【0110】
[実施例4]
[インタクトYAC DNAの精製]
レトロフィッティングされたYAC(α7C5hTEL,αB13hTEL)をそれぞれ含む各酵母株から調製された10個のアガロースプラグを、1xTAE(40mM Tris/40mM酢酸/1mMEDTA)で平衡化し、1xTAEで調製された1.2%LMPアガロース(Seaplaque,FMC)にのせ、200v、4℃、パルス時間15秒、18-24時間の条件でPFGEを行った。試料レーンからYAC DNAだけを含むゲル断片を、両サイドにあるコントロールレーンをEtBr染色することによるサイズの確認に基づいて切り出し、YAC DNAを含むゲルスライスを、垂直にゲルトレイの中央に載置して、3%LMPアガロースをその周囲に流した。約0.1cm3のゲルキューブを、YAC DNAを含むゲルスライスと接触する底部領域から除去し、DNAを採取するために、小さい透析膜の小片をゲルスライスから0.5cm離れた位置に挿入し、そしてその空間を1.5%LMPアガロースで充填した。通常のゲル電気泳動(2時間、8V/cm)後、1.5%アガロースの領域の小片を、YAC DNAが濃縮された透析膜の直前から採取し、100mMのNaClを添加した1xTAEで平衡化し、その後、全ての液体を除去した。ゲルのアガロースは、その後、68℃、10分間で溶解して、1mlのゲルスライスあたり50Uアガラーゼ(シグマ)で42℃、4時間でインキュベーションして分解した。得られたYAC DNA溶液を、バッファ(100mM
NaCl,10mM Tris pH7.5,1mM EDTAを含む)に対してUltra Free C3(ミリポア;Millipore)またはMicrocon 100(アミコン;Amicon)を用いて透析(濃縮)し、DNAの濃度とintegrityを通例のゲル電気泳動とPFGEとで確認した。50〜100ngの精製DNAをこの実験スケールにおいて得られた。この精製DNAを、リポフェクションおよびマイクロインジェクションによるヒト培養細胞へのYACトランスフェクションの材料として用いた。
【0111】
[実施例5]
[ヒト細胞へのリポフェクションおよびマイクロインジェクションによる YACのトランスフェクション]
この修飾されたYACコンストラクトは、その両端に0.3kbの酵母テロメア配列に隣接されている1.1kbヒトテロメア配列を有している。しかしながら、導入したYAC DNAが、ホスト細胞のテロメラーゼ活性が低いことによってホスト染色体に組み込まれる可能性をできるだけ小さくするために、テロメア付随高度染色体断片化活性(High Telomere Associated Chromosome
Fragmentation(TACF)activity(Bamett et al.,1993,Nucleic Acids
Research,21,27-36))を有するヒトHT1080細胞をホスト細胞として選択した。精製したYAC DNAsをヒトHT1080培養細胞に、2種類の異なる方法、すなわち、リポフェクションと核に対するマイクロインジェクションとによって導入した。
【0112】
(リポフェクションによるYACのトランスフェクション)
YACのヒトHT1080細胞へのリポフェクトアミン(ギブコ;Gibco
BRL)を用いたトランスフェクションを、基本的に、製造者使用説明書に従って実施した。精製したYAC DNA溶液(30-100ng
DNA in 300μl溶液)を、30〜40分前にポリスチレンチューブ内にて予め混合したリポフェクタミン(10μl)と無血清培地(100μl of Opti-MEM,ギブコ;Gibco BRL)の混液に添加し、穏やかに混合し、室温で30分間放置して、DNA-リポソームの複合体を形成させた。25cm2のフラスコに播いたHT1080細胞(9×105cells)を、一晩培養して、70-80%のコンフル−エントを得、2mlのOpti-MEMで2回洗浄し、その後、全培地を完全に除去した。DNA-リポソーム複合体溶液を、1.6mlのOpti-MEMと穏やかに混合して、全量を2mlとし、洗浄した細胞上に重層した。
【0113】
16時間のインキュベーション(37℃ in 5%CO2)後、DNA-リポソーム複合体溶液を、10%FCSを添加したDMEで置換して、24時間さらにインキュベートした。その後、細胞を2個の10cm径の皿に移して4mg/ml
Blasticidine S(BS,科研製薬)による選択を開始した。
トランスフェクションしたYAC DNA(α7C5hTEL and αB13hTEL,110-120Kb)1μgあたり50から580個のBS耐性コロニーが、リポフェクタミンを用いたトランスフェタションによって得られ、トランスフェクションしたリニア化したMCU-Bsr(11.2kb)右腕ベクター(11.2Kb)1μgあたり410から470個のBS耐性コロニーが得られた。
【0114】
(マイクロインジェクションによるYACのトランスフェクション)
YACのマイクロインジェクションは、Zeiss Axiovert
135Mを用いて行った。この装置には、Eppendorf 5242のマイクロインジェクターと、5170マイクロマニュピレーター、37℃に設定されたステージインキュベーターおよびコントローラー(Zeiss)とを備えていた。HT1080細胞は、直径35mmのペトリ皿内に載置したポリ-D-リジンでコートされたエッチドグリッドカバースリップ(Bellco biotechnology)上で2日間培養された。インジェクションの直前に3mlの液状パラフィンオイル(Boots
company)を培地上に添加した。12000rpm,5分間の遠心後、精製YAC DNAの上澄み液1.5μlをマイクロインジェクションニードル(Eppendorf Femtotip)に、Eppendorfマイクロローダーチップを用いて導入し、マイクロインジェクションをP1;5000hPa,P2;30-60hPa,P2;30-60hPa,P3;15-30hPaの条件下で実施した。マイクロインジェクション後、液状パラフィンオイルと培地とをペトリ皿から除いて、新鮮な培地を添加し、細胞を37℃,5%CO2で36時間インキュベートした。ブラスチシジンS選択(4mg/ml)をこの時点において開始した。
【0115】
一部の実験では、インジェクションされた細胞を、エッチドカバースリップ上で増殖させ、現れたブラスチシジンS耐性コロニー数をグリッド上でインジェクションした細胞あたりでカウントし、採取した。他の実験では、インジェクションした細胞を、10cmの皿に移してBS選択を開始した。100から300個のYAC DNAインジェクション細胞につき、1個のBS耐性コロニーが得られた。
【0116】
[実施例6]
[アルフォイドYACのHT1080細胞における運命]
もし、これらのMAC候補(candidates)が、例えば、テロメア、機能的なセントロメア/キネトコア構造、および複製起点等の哺乳類染色体の安定性に必要とされるシスエレメントを保持しているのであれば、ヒト細胞に導入されたYAC DNAは、BS選別後に宿主染色体に組み込まれることなく維持される可能性がある。この可能性を確かめるために、BS耐性コロニーのうちの24,20および5の細胞系列(それぞれα7C5hTEL,αB13hTELおよびリニア化したMCUBsrベクターが導入された細胞である)につき、YAC
DNAの分布を蛍光インサイトゥハイブリダイゼーション(FISH)で分析した(図18)。
【0117】
α21-IプローブとYACベクタープローブのシグナルとがオーバーラップする染色体外シグナルとして検出されたミニ染色体を含む細胞の数は、細胞系列によってまちまちであった。しかしながら、導入法、すなわち、リポフェタションかマイクロインジェクションかにかかわらず、そのようなミニ染色体を含む細胞が、7C5hTEL YACを導入した多くの細胞系列(7C5HT細胞系列)において観察された(リポフェクションでは13中11細胞系列、マイクロインジェクションでは11中10細胞系列)。FISHで検出されたミニ染色体のサイズは、各クローンにおいて様々であり、BS耐性細胞系列の確立を経ることにより、当初のYACコンストラクト(〜110kb)から、メガベースオーダーのサイズに増大しているようである。これらの細胞系列から分析された分裂中期の細胞の合計30%において、ミニ染色体のシグナルが検出された(図19)。
【0118】
また、宿主染色体のセントロメアやテロメア領域への組み込みを示すシグナルも、細胞の約40%について観察された。しかしながら、ミニ染色体の存在と組み込み現象とが同じ細胞に存在するのは非常にまれであって(24クローンの全610個の細胞に対して、2クローンの2.3%の細胞)、ホスト染色体の腕の部分にYACが組み込まれるのも非常にまれであった(細胞数で1.8%)。
【0119】
これらの結果に反して、αB13hTEL YACとリニア化したMCUBsrベクターの導入によって得られた、総数400個及び100個の分裂中期の細胞においては、ミニ染色体の存在を示すシグナルを得ることができなかった(図19)。αB13hTEL YACを導入した細胞系列(B13HT細胞系列)では、75%の細胞において、YACのホスト染色体への組み込みの大部分がテロメア領域において起こっており(図19)、セントロメアへの組み込みが主であるのは、14%であり、ホスト染色体の腕の部分に組み込まれているのは、非常にまれであった(1.3%細胞)。しかしながら、リニア化したMCUBsrベクターを導入した細胞系列(MCUHTクローン)では、ベクターのテロメアへの組み込みは、56%であり、セントロメアには全く組み込まれず、ホスト染色体の腕の部分には、10倍の頻度で組み込まれていた。
【0120】
興味深いことに、α7C5hTEL YACのセントロメアとテロメア領域への組み込み位置は、同じ細胞系列においても細胞ごとに、複数の異なる染色体にばらついているのに対して、同じ細胞系列におけるαB13hTEL YACやリニア化したMCUBsrベクターの組み込みの多くは、単一の組み込み位置に起因するものであった。この結果は、7C5HT細胞系列の確立過程においては、組み込みは、複数工程として、しかも、それぞれ独立に起こるということを示している。しかしながら、多くのB13HTやMCUHT細胞系列の確立工程においては、組み込みはただ1回のみ起こるということを示している。これらの全ての結果から、α7C5hTEL YACは、ヒトミニ染色体を非常に効率良く創製するのに必要なエレメントを保有しているがαB13hTELはこれらを保有していないことが明らかである。
【0121】
[実施例7]
[選択をしない場合のミニ染色体の安定性]
セントロメア機能を有していない染色体外エレメントは、培地から選択のための薬剤を除去すると、速やかに失われてしまうという報告がされている(Huxley)。リポフェクションによって得られた3つの7C5HT細胞系列(7C5HT1,2及び3)と、マイクロインジェクションによって得られた2つの7C5HT細胞系列(7C5HTm1及び7C5HTm3)とについて、ミニ染色体の安定性を、これらの細胞系列を非選択培地に継代後20、40、60日後の時点で、FISHとプレートコロニー形成効率(プレート効率;非選択培地上におけるコロニー数に対する+BS選択培地上におけるコロニー数)によって分析した。これらの5つの細胞系列からのプレート効率は、これら5つの細胞系列の50%以上の細胞が、非選択培地に継代された後60日を経過した時点でもBS耐性を保持し、選択しない状態でも、7C5HT1と7C5HT3の97%はBS耐性を維持していることを示していた。これらの結果に関連して、FISHによる分析結果からも、7C5HT1細胞系列と7C5HT3細胞系列におけるミニ染色体は非選択培地に継代後60日を経過した後でも非常に安定であり、7C5HT2、7C5HTm1及び7C5HTm3の各細胞系列においては、非選択培地への継代後徐々にミニ染色体が消失していた。
【0122】
興味深いことに、7C5HT1細胞系列と7C5HT3細胞系列におけるミニ染色体のサイズは、7C5HT2、7C5HTm1及び7C5HTm3の各細胞系列のミニ染色体サイズよりも大きかった。ミニ染色体を保有するこれらのすべての細胞系列は、各細胞系列がYAC DNAの導入後約30〜40日経過して確立されたときには、染色体への組み込みもいくらか観察されている。そこで、7C5HT1を再クローニングして、7C5HT1-1,2,4〜9及び19を得て、これらの細胞系列におけるミニ染色体の安定性をFISHとプレート効率で分析した(図21)。10個のコロニーが7C5HT1から分離されたが、それらのうち一つは細胞系列確立の過程において失われた。
【0123】
9個の確立した細胞系列のうち7個の系列については、ホスト染色体への組み込みを示すシグナルを検出することなく、ミニ染色体のシグナルのみを示した。FISH及びプレート効率の両方の分析結果によれば、7C5HT1-1細胞系列におけるミニ染色体は、非選択培地における継代を通じて、1個あるいは2個のミニ染色体が保有された状態で非常に安定(100%)であった。7C5HT1-9の細胞は、ホスト染色体のセントロメアへの組み込みシグナルを示し、7C5HT1-19の細胞は、テロメアへの組み込みシグナルを示した。B13HT細胞系列とMCUHT細胞系列におけるBS耐性と染色体への組み込み位置は、非常に安定であり、選択を停止した60日経過後の継代においても変化はなかった(データは示していない)。
【0124】
7C5HT細胞系列についてのプレート効率及びFISH分析の結果からα7C5hTEL YACに由来するミニ染色体は、BS選択をしない状態でも細胞分裂を通じて安定して分配されることがわかった。
【0125】
[実施例8]
[ミニ染色体上の機能的セントロメア/キネトコア構造]
このように、CENP-B box配列を高頻度に有するアルフォイドYAC(α7C5hTEL YAC)は、効率良くミニ染色体をを形成することができた。これに対して、CENP-B boxを含まないアルフォイドYAC(αB13hTEL YAC)はミニ染色体を形成することはできなかった。この結果は、CENP-Bが機能的なセントロメア構造のde novo形成に本質的に重要な要素であることを意味している。
【0126】
CENP-Cは、キネトコア構造の内層に位置されていると報告されており、また、ダイセントリック染色体の機能をもつセントロメア側においてのみ存在することが報告されている(Saitoh et
al.,1992,Cell,70,115-125,Sullivan,1995,Hum.Mol.Gent.,4,2189-2197)。ヒト染色体における機能的セントロメア/キネトコア構造のために必要な分子構造を明らかにするために、α7C5hTEL YACの導入に由来する、7C5HT1,1-1,1-2,及び7C5HT2の各細胞系列における20以上の各ミニ染色体についてのこれらの2つのセントロメアタンパク質の分布を、間接免疫蛍光法による同時染色及びFISHを用いて分析した(図22、23及び24)。CENP-BとCENP-Cの明瞭な二重のドットシグナルが、同時にYACベクタープローブによって検出された全てのミニ染色体上に観察できた。すなわち、これらのミニ染色体は、セントロメア/キネトコアの構成要素として本質的に重要なタンパク要素を備えていることを示している。一方、B13HT1細胞系列におけるαB13hTEL
YACの組み込み位置には、CENP-Bの染色による活性シグナルを検出することはできなかった。
【0127】
ヒトアルフォイドDNAを哺乳類培養細胞に導入した複数の報告によれば、分裂後期の染色体の分離の遅れは、ホスト染色体へのアルフォイドDNAの組み込みに基づいて観察され、この現象は、アルフォイドDNAの機能の一つであるとされてきた。そこで、7C5HT1-1,1-2,1-19に由来する、分裂中期の細胞と分裂後期の細胞のそれぞれ50以上について、ミニ染色体がメタフェイズプレートに適切に配列されているかどうか、及びミニ染色体の姉妹染色分体(もしくは組み込みを含む)が各紡錘体極に適切に分配されるかどうかを調べた。
【0128】
7C5HT1-1及び1-2の分裂中期の細胞に由来する全てのミニ染色体シグナルは、極方向に平行にメタフェイズプレートに配列され、7C5HT1-1及び1-2由来するミニ染色体の姉妹染色分体のシグナルの全ては、正確に分配され、染色分体のうち各極に対して最も近接した端部に位置していた。分裂中期及び分裂後期の染色体の分離の遅れ(もしくは組み込みシグナルを備えた染色体の分離の遅れ)は、7C5HT1-1,1-2さらには7C5HT1-19細胞のいずれにおいても全く観察されなかった。これらの結果は、α7C5hTEL YAC導入によって得られたミニ染色体が適切なセントロメア/キネトコア機能を保有し、分裂後期の染色体の分離の遅れは、アルフォイドDNAの染色体への組み込みによって引き起こされる共通した現象ではないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】第1図は、ヒト21番染色体のセントロメア領域の略図を示す。α21−I領域は5つのCENP-Bを含む11のモノマーオーダーの繰り返しユニットから構成されている。α21-II領域は、α21−I領域の短腕側に位置しており、多様化したアルフォイドファミリーから構成されているが、他の繰り返しDNA配列を含んでいてもよい。α21-I領域には規則的にCENP-B boxが配列されているが、一方、α21-II領域はほとんどCENP-B boxを有さない。
【図2】第2図は、アルフォイドDNAのクローニングに使用されるpYAC55pkcの構造を示す。
【図3】第3図は、ヒト21番染色体を有するWAV17からYAC55pkcにクローニングしたアルフォイドDNAインサートを示す。
【図4】第4図の(a)は、(EtBrで染色した)PFGEによって、クローニングされたアルフォイドDNAインサートを示す。第4図の(b)は、α21-Iプローブを用いるサザーンハイブリダイゼーションによる、クローニングされたアルフォイドDNAインサートの分析結果を示す。第4図の(c)は、α21-IIプローブを用いるサザーンハイブリダイゼーションによる、クローニングされたアルフォイドDNAインサートの分析結果を示す。
【図5】第5図は、サザーンハイブリダイセーションとドットハイブリダイセーションによる、アルフォイドYACクローンにおけるアルフォイドの長さと他の繰り返し配列の検出とを示す。
【図6】第6図は、CENP-B box免疫沈降競合の分析結果を示す。アルフォイドYACクローンからPCR産生されたアルフォイドDNAは、エンドラベリングされたCENP-B box DNA、CENP-Bと混合され、免疫沈降反応が発生した。この図では、競合体の量に対する免疫沈降プローブの割合(%)を示した。
【図7】第7図は、pCGS990を用いたpMegaΔの構築を示す略図である。
【図8】第8図は、pMegaΔを用いたpMegaΔSV-neoの構築を略図的に示す。
【図9】第9図は、pJS89を用いたpMCUの構築を略図的に示す。
【図10】第10図は、pMCUを用いたMCU-bsrの構築を略図的に示す。
【図11】第11図は、YpSL1、及び、YpSL1を用いたYpSL1-Uraの構築を示す。
【図12】第12図は、α7C5の左腕を構築する工程を略図的に示す。
【図13】第13図は、YAC左腕の相同組換え(第1工程)の略図を示す。
【図14】第14図は、α7C5hTELを構築する工程を略図的に示す。
【図15】第15図は、YAC右腕を相同組換え(第2工程)して、α7C5hTELを構築する工程略図を示す。
【図16】第16図は、BamHIで消化した組換えアルフォイドYACをヒトテロメア配列とハイブリダイズすることにより示す。
【図17】第17図は、PFGEによって分析された組換え工程後の改変されたYACを示す。
【図18】第18図の(a)は、組換えYACが導入された細胞系列をFISHで分析した合成イメージである。7C5HT1細胞系列における分裂中期の染色体は、α21−Iプローブ(グリーンシグナル)とYACのアームプローブ(レッドシグナル)とハイブリダイズされた。この染色体はDAPIによって対比染色されている。第18図の(b)は、組換えYACが導入された細胞系列をFISHで分析した合成イメージである。B13HT1細胞系列における分裂中期の染色体は、α21-Iプローブ(グリーンシグナル)とYACのアームプローブ(レッドシグナル)とハイブリダイズされた。その染色体はDAPIによって対比染色されている。第18図の(c)は、組換えYACが導入された細胞系列をFISHで分析したものである。H7C5HTm1細胞系列における分裂中期の染色体は、α21-Iプローブ(グリーンシグナル)とYACのアームプローブ(レッドシグナル)とハイブリダイズされた。この染色体はDAPIによって対比染色されている。
【図19】第19図は、アルフォイドYACのDNAトランスフェクションによる、ミニ染色体形成効率を示す。
【図20】第20図は、プレート効率及びFISH分析による、アルフォイドYACに由来するミニ染色体の安定性を示す。
【図21】第21図は、7C5HT1を再クローニングして得られた細胞系列における、アルフォイドYACに由来するミニ染色体(又は組み込み位置)の安定性を示す。
【図22】第22図の(a)は、ミニ染色体及び染色体におけるセントロメア抗体検出の合成イメージを示す。7C5HT2細胞系列における分裂中期の染色体は、α21-Iプローブ(パネルのグリーンシグナル)とYACのアームプローブ(レッドシグナル)を用いるFISHによって同時に分析された。第22図の(b)は、ミニ染色体及び染色体上におけるセントロメア抗体検出の合成イメージを示す。7C5HT2細胞系列における分裂中期の染色体は、YACのアームプローブ(レッドシグナル)を用いるFISHと抗CENP-B抗体(パネルのグリーンシグナル)を用いる間接的免疫蛍光とによって同時に分析された。第22図の(c)は、ミニ染色体及び染色体上におけるセントロメア抗体検出の合成イメージを示す。7C5HT2細胞系列における分裂中期の染色体は、YACのアームプローブ(レッドシグナル)を用いるFISHと、抗CENP-C抗体(グリーンシグナル)を用いる間接的免疫蛍光とによって同時に分析された。
【図23】第23図の(a)は、ミニ染色体及び染色体上におけるセントロメア抗体検出の合成イメージを示す。7C5HT1-2細胞系列における分裂中期の染色体は、α21-Iプローブ(パネルのグリーンシグナル)とYACのアームプローブ(レッドシグナル)とを有するFISHによって同時に分析された。第23図の(b)は、ミニ染色体及び染色体上におけるセントロメア抗体の検出の合成イメージを示す。7C5HT1-2細胞系列における分裂中期の染色体は、YACアームプローブ(レッドシグナル)を用いたFISHと、抗CENP-B抗体(パネルのグリーンシグナル)を用いた間接的免疫蛍光とによって、同時に分析された。第23図の(c)は、ミニ染色体と染色体上におけるセントロメア抗体検出の合成イメージを示す。7C5HT1-2細胞系列における分裂中期の染色体は、YACアームプローブ(レッドシグナル)を有するFISHと抗CENP-C抗体(グリーンシグナル)を有する間接的免疫蛍光とによって同時に分析された。
【図24】第24図は、抗CENP-B抗体(レッドシグナル)と抗CENP-C抗体(グリーンシグナル)を両方用いる間接的免疫蛍光によって検出された、7C5HT1細胞系列における分裂中期の染色体を示す。この染色体は、DAPIによって対比染色されている。
【図25】第25図は、7C5HT12におけるミニ染色体の有糸分裂分離を示す。第25図の(a)は、α21-Iプローブ(グリーンシグナル)とYACアームプローブ(レッドシグナル)とハイブリダイズされた7C5HT1-2細胞系列における分裂中期の細胞を示す。第25図の(b)は、α21-Iプローブ(グリーンシグナル)とYACアームプローブ(レッドシグナル)とハイブリダイズされた7C5HT1-2細胞系列における分裂後期の細胞を示す。[配列表]
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のDNA配列;
5’−NTTCGNNNNANNCGGGN−3’
(ただし、NはA,T,CおよびGのいずれかである)
を規則的に反復して有する哺乳類セントロメアのサテライトDNA領域から単離されたDNAであって、哺乳類細胞中で複製され染色体外で維持されその娘細胞に伝達される人工染色体にセントロメア機能を付与するのに十分量の前記DNA配列の繰り返しを備えるDNAを含む、哺乳類人工染色体形成用材料。
【請求項2】
前記DNA配列は、ヒトセントロアのサテライトDNA領域中のDNA配列である、請求項2に記載の哺乳類人工染色体形成用材料。
【請求項3】
配列番号1で特定される配列を規則的に反復して有する哺乳類セントロメアのサテライトDNA領域中のDNA配列を含む、請求項2に記載の哺乳類人工染色体形成用材料。
【請求項4】
配列番号2で特定される配列を反復して有するDNA配列を含む、請求項2に記載の哺乳類人工染色体用形成材料。
【請求項5】
以下のDNA配列;
5’−NTTCGNNNNANNCGGGN−3’
(ただし、NはA,T,CおよびGのいずれかである)
を規則的に反復して有する哺乳類セントロメアのサテライトDNA領域から単離されたDNAであって、哺乳類細胞中で複製され染色体外で維持されその娘細胞に伝達される哺乳類人工染色体のセントロメア構造の新生形成用材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2007−306928(P2007−306928A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166861(P2007−166861)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【分割の表示】特願平10−511447の分割
【原出願日】平成8年8月26日(1996.8.26)
【出願人】(307009045)株式会社クロモリサーチ (1)
【Fターム(参考)】