説明

商品販売データ処理装置

【課題】煩雑な設定をすることなく所定の時間以降の割引販売を実行できるようにする。
【解決手段】読み取ったコードシンボルに含まれる情報を取得し、この情報に含まれている商品コードに対応する単価を取得して(ステップS3,S14)、取得した単価に基づいて商品販売データ処理を実行し、また、取得した情報に含まれている設定時刻を現在時刻が経過することによる時刻イベントの発生の有無を判断し(ステップS12)、時刻イベントが発生していると判断した場合(ステップS12のY)、取得した情報に設定時刻と共に含まれている割引処理のための割引情報に基づいて、商品販売データ処理において割引処理(ステップS16,S17)を実行するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECR(Electronic Cash Register:電子式キャッシュレジスタ)やPOS(Point of Sales:販売時点管理)端末等の商品販売データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーマーケット等の店舗では、時間の経過に応じて商品の割引販売を行う場合、商品に付されるバーコードが利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、商品コード番号とその商品の製造年月日データとを組み合わせてコードシンボル化したバーコードを商品に付して、そのバーコードを読み取った時に製造年月日から所定の日数が経過している場合に割引処理を実行するようにした技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−188298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、時間の経過に応じた割引販売としては、毎日、所定の時刻以降に割引販売を実施する形態が考えられる。例えば、弁当や惣菜等の商品を賞味期限等に関係なく毎日閉店時刻の30分前から割引販売するというような場合である。
【0006】
特許文献1に記載された技術は、製造年月日からの期間を認識するものであるため、このような割引販売の形態を実施するためには、個々の商品毎に異なる期間を設定するという非常に煩雑な作業が必要となってしまう。
【0007】
本発明の目的は、煩雑な設定をすることなく所定の時刻以降の割引販売を実行できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の商品販売データ処理装置は、コードシンボルを読み取るコード読取装置を備え、前記コード読取装置が読み取ったコードシンボルに含まれている情報を取得し、前記取得した情報に含まれている商品コードに基づいて、商品コードに対応付けて単価を記憶する商品データファイルを検索して対応する単価を取得し、取得した単価に基づいて商品販売データ処理を実行し、また、日時を計時する計時手段が計時する現在時刻が前記取得した情報に含まれている設定時刻を経過することによる時刻イベントの発生の有無を判断し、前記時刻イベントが発生していると判断した場合、前記取得した情報に前記設定時刻と共に含まれている割引処理のための割引情報に基づいて、前記商品販売データ処理において割引処理を実行するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、煩雑な設定を行うことなく所定の時刻以降に割引販売を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の一形態を、図1ないし図6に基づいて説明する。本実施の形態の商品販売データ処理装置は、スーパーマーケットで使用されるPOS端末への適用例である。
【0011】
図1は、POS端末1を示す斜視図である。店舗の精算場所に配設されるPOS端末1は、ハウジング2を備え、ハウジング2内に各部を収納し、一方でハウジング2の外部に各部を露出させている。ハウジング2の上面には、キーボード3、キャッシャ用表示器4、客用表示器5、レシート発行口6、および客から預かった札を一時的に置いておくための札置き台7が配置されている。そして、POS端末1の操作者であるキャッシャから見てキャッシャ用表示器4が正面に、キーボード3はその下方に、レシート発行口6および札置き台7はその左方にそれぞれ配置され、キャッシャが商品情報等を入力しやすいようにまとめられている。また、客用表示器5は、キャッシャ用表示器4よりも高い位置に設けられ、客に見やすいように配置されている。ハウジング2の内部には、レシートを印字するためのプリンタ6a(図4参照)が設けられている。
【0012】
また、POS端末1は、買物客から受領した硬貨や紙幣を保管しておくための装置であるドロワ8の上に載置されている。当該ドロワ8の内部には、引出し9が設けられており、締め処理時には手前に引き出され、その中に買物客から受領した金銭等を収納する。
【0013】
そして、POS端末1には、コードシンボルを光学的に読み取るコード読取装置であるコードスキャナ10が接続されている。本実施の形態のコードスキャナ10は、JANやCode128等の複数種類のコード体系で記述されたコードシンボルを読取対象としたものである。
【0014】
次に、コードスキャナ10が読み取る各種コードについて図2および図3に基づいて説明する。
【0015】
図2は、商品コード31を示す平面図である。商品コード31は、12桁の商品コード番号32がJAN形式でエンコードされてコードシンボル化されたものであり、商品コード番号32を示す数字も併せて印字されている。なお、13桁目の数字は、誤読を防止するための検査数字である。割引販売を実施しないで通常販売を行う商品については、この商品コード31のラベルが付されて店舗に陳列される。
【0016】
図3は、組合せコード36を示す平面図である。図3(a)に示す組合せコード36は、商品コード番号32、フラグ33、割引処理のための割引情報34である割引額34a、割引処理の実行が開始される設定時刻35が組み合わされてCode128形式でエンコードされてコードシンボル化されたものであり、これらの情報を示す数字も併せて印字されている。なお、末尾の英字は、誤読を防止するための検査数字をCode128形式に基づき英字で示したものである。図3(b)に示す組合せコード36は、割引情報34として割引率34bが用いられたものである。
【0017】
ここで、フラグ33および割引情報34について説明する。フラグ33は、4桁の数字の割引情報34が割引額34aであるのかそれとも割引率34bであるのかを「0」または「1」で示すものである。例えば、図3(a)では、フラグ33は「0」であるため、割引情報34は割引額34aを示し、「0100」は、割引額34aが100円であることを示している。つまり商品コード番号32が特定する商品の単価から100円減額するものである。一方、図3(b)では、フラグ33は「1」であるため、割引情報34は割引率34bを示し、「0100」は、割引率34bが0.100、つまり10%であることを意味し、商品コード番号32が特定する商品の単価に対して10%引きであることを示している。
【0018】
また、設定時刻35も4桁の数字であり、「1700」は17:00を示すものである。割引情報34に基づく割引処理が17:00以降実行されることを示している。そして、キャッシャおよび買物客は「1700」という数字を見ることによって、割引販売が17:00以降に行われるということを認識することもできる。つまり、設定時刻35を示す数字は、割引販売の開始時刻をキャッシャおよび買物客に対して認識させる表示としても機能する。
【0019】
なお、本実施の形態では、商品コード31および組合せコード36をそれぞれJANおよびCode128でコードシンボル化しているが、このコード形式に限られることはない。
【0020】
図4は、POS端末1に備えられる各部の電気的接続を示すブロック図である。POS端末1は、各種演算や各部の制御を実行するCPU(Central Processing Unit)51a、コンピュータプログラム等を格納するROM(Read Only Memory)51bおよび各種データを書き換え自在に格納するRAM(Random Access Memory)51c等で構成される制御部51を備えている。RAM51cは、可変的なデータを書き換え自在に格納する機能を利用して各種ワークエリアとしての機能を果たし、例えば売上バッファや印字バッファが形成される。
【0021】
制御部51には、バスライン52を介して、キーボード3、キャッシャ用表示器4、客用表示器5、プリンタ6a、ホストコンピュータ(図示しない)との間でデータ通信を実行する通信インターフェイス53、ドロワ8、コードスキャナ10等が接続されている。プリンタ6aは、レシート/ジャーナルプリンタであり、商品販売データ処理に伴い、取引単位でレシートを発行するとともに、並行してジャーナル用紙への印字を行うものである。
【0022】
また、制御部51には、バスライン52を介して2個のブザー54a,54bが接続されている。このブザー54a,54bは明確に区別し得る程度に異ならせた周波数の読取音A,Bをそれぞれ発するように設定されている。音を出力するスピーカ55もバスライン52を介して接続されている。なお、ブザーは必ずしも2個備えさせる必要はなく、制御部51にバスライン52を介してブザーを1個だけ接続させ、このブザーを鳴動させることで周波数の異なる読取音A,Bを発生させてもよい。また、読取音A,Bは、その差異が区別できれば周波数の違いに限定されないことは言うまでもなく、例えば、音色、音長、発生される音と音との間隔等を異ならせてもよい。
【0023】
さらに、制御部51には、現在時刻を計時するための計時手段であるタイマ56もバスライン52を介して接続されている。
【0024】
そして、制御部51を動作させる制御プログラムや商品コード番号32に対応付けて商品名や単価等を格納する商品データファイルF1(図5参照)等が格納されているHDD(Hard Disc Drive)57もバスライン52を介して制御部51に接続されている。HDD57には、制御プログラム等の他、売上ファイルF2が格納されている。売上ファイルF2は、商品販売データ処理に伴い作成される商品販売データを記憶するものである。なお、RAM51cの売上バッファも同様のデータ構成である。
【0025】
また、HDD57には、「割引です」という音声データが記憶された音声データファイルF3が格納されており、POS端末1起動時にRAM51cに展開される。この音声データはスピーカ55を通じて音声出力される。
【0026】
図5は、商品データファイルF1を示す模式図である。商品データファイルF1は、商品コード番号32に対応付けて商品名や単価等を格納するファイルである。HDD57に格納されている商品データファイルF1は、POS端末1の起動時にRAM51cに展開されて使用される。なお、商品データファイルF1は、POS端末1とデータ通信を実行するストアコンピュータ(図示しない)によって逐次自動更新される。
【0027】
次に、HDD57に格納された制御プログラムが制御部51に各部を制御して実行させる処理について説明する。
【0028】
図6は、制御部51が実行する商品販売データ処理の流れを示すフローチャートである。まず、コードスキャナ10による商品コード31の読み取りに待機する(ステップS1)。ここで、商品コード31の読み取りがあったと判定されると(ステップS1のY)、ブザー54aを鳴動させて読取音Aを発生させ(ステップS2)、読み取った商品コード31に含まれている情報である商品コード番号32を取得する。そして、商品データファイルF1を検索して、商品コード番号32に対応する商品名、単価等の商品データを取得し(ステップS3)、取得された商品データに基づく商品販売データをRAM51cの売上バッファに記憶し、商品名や単価等の商品データをキャッシャ用表示器4および客用表示器5に表示する(ステップS4)。
【0029】
一方、コードスキャナ10によって、商品コード31ではなく(ステップS1のN)、組合せコード36の読み取りが行われた場合(ステップS11のY)、読み取られた組合せコード36に含まれる情報である設定時刻35を取得して、この設定時刻35をタイマ56が計時する現在時刻が経過しているか否かを判断する(ステップS12)。
【0030】
タイマ56が計時する現在時刻が設定時刻35を経過していないと判断された場合(ステップS12のN)、ブザー54aを鳴動させて読取音Aを発生させて(ステップS2)、この組合せコード36に含まれる商品コード番号32を取得し、この商品コード番号32に基づいて商品データファイルF1を検索し(ステップS3)、取得した単価に基づいて商品販売データ処理を実行する。つまり、コードスキャナ10が商品コード31を読み取ったときと同様の処理が実行される。
【0031】
一方で、ステップS12で、現在時刻が設定時刻35を経過していると判断された場合には(ステップS12のY)、ブザー54bを鳴動させて読取音Bを発生させ、RAM51cに展開されている「割引です」という音声データをスピーカ55から出力させる(ステップS13)。つまり、組合せコード36を読み取った場合で、さらに設定時刻35以降であった場合にのみ、ステップ13の処理が実行されて割引が報知される。次いで、この組合せコード36に含まれる商品コード番号32対応する商品データを商品データファイルF1から取得する(ステップS14)。
【0032】
そして、ステップS11で読み取った組合せコード36に含まれるフラグ33が「0」であるか否かを判定する(ステップS15)。
【0033】
フラグ33が「0」であった場合(ステップS15のY)、組合せコード36の割引情報34は割引額34aを示すことになるため(図3(a)参照)、ステップS14で取得した商品の単価から割引額34aを減算する(ステップS16:割引処理)。つまり、単価が500円であり、割引額34aが「0100」であれば、割引額34aの「0100」は100円を示すため、500円から100円減額して400円とする割引処理が実行される。
【0034】
また、ステップS15で、フラグ33が「0」ではなく(ステップS15のN)、「1」であった場合、組合せコード36の割引情報34は割引率34bを示すことになるため(図3(b)参照)、ステップS14で取得した単価から、この単価の割引率34b分の金額を減算する処理を実行する(ステップS17:割引処理)。つまり、単価が500円であり、割引率34bが「0100」であるならば、割引率34bの「0100」は10%を示すため、単価500円から500円の10%にあたる50円を減額して450円とする割引処理が実行される。
【0035】
ここで、割引処理の実行に伴って、割引情報34の内容を音声により報知してもよい。その場合、フラグ33および割引情報34に対応付けられた音声データを音声データファイルF3に記憶させておく。この音声データは、例えば、フラグ33「0」および割引情報34「0100」に対応付けて「100円引きです」という音声データを記憶するものである。そして、この音声データをRAM51cに展開させて、割引処理の実行に伴ってフラグ33および割引情報34に対応する音声データをスピーカ55から音声出力されるようにする。このような割引情報34の内容の音声報知により、割引額34a等が具体的に買物客に伝達されるため、買物客にとっての利便性を向上させることができる。
【0036】
ステップS18では、商品名、単価、割引額等をキャッシャ用表示器4および客用表示器5に表示し、割引処理に基づく商品販売データをRAM51cの売上バッファに記憶する。
【0037】
ステップS1ないしS4およびステップS11ないしS18の処理は、キーボード3の預/現計キー(図示しない)が操作されて締めが宣言されたと判断されるまで(ステップS31のY)、繰り返される。
【0038】
キーボード3の預/現計キーが操作されて締めが宣言されたと判断されると(ステップS31のY)、締め処理が実行される(ステップS32)。この締め処理では、RAM51cの売上バッファに記憶された商品販売データに基づき販売合計金額等で構成される印字データが生成されてRAM51cの印字バッファに記憶される。さらに、ドロワ8にドロワ開放信号が出力されて引出し9が開放される。そして、売上バッファに記憶された商品販売データは、HDD57の売上ファイルF2に記憶される。また、印字データは、プリンタ6aによって印字されてレシート発行口6からレシートとして発行される。
【0039】
このように本実施の形態によれば、商品に付された組合せコード36を読み取った時(現在時刻)が、その組合せコード36に含まれる設定時刻35を経過していれば、その組合せコード36に含まれる割引情報34に基づいた割引処理が実行されるため、POS端末1等に対する煩雑な設定作業等を必要とせずに、設定時刻35以降の割引販売を簡便に行うことができる。また、コードの読み取りに際して、キャッシャは割引販売の開始時間やその割引額34a等を意識して作業する必要がないため、キャッシャに対する労働負担を軽減させることができる。
【0040】
そして、割引処理が実行される場合にのみ、割引処理が実行されない場合と明確に異なる読取音が発生されるとともに音声による報知も行われるため、キャッシャおよび買物客に対して割引販売の実施を報知することができる。特に買物客に割引処理の実行が報知されることで、本当に割引が実施されているどうか判断できないといった疑問を買物客に対して抱かせることがなくなり、買物客の店舗に対する信頼感も増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態のPOS端末を示す斜視図である。
【図2】商品コードを示す平面図である。
【図3】組合せコードを示す平面図である。
【図4】POS端末に備えられる各部の電気的接続を示すブロック図である。
【図5】商品データファイルを示す模式図である。
【図6】制御部が実行する商品販売データ処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1…商品販売データ処理装置(POS端末),10…コード読取装置(コードスキャナ)31…コードシンボル(商品コード),32…商品コード(商品コード番号),34…割引情報,34a…割引額,34b…割引率,35…設定時刻,36…コードシンボル(組合せコード),56…計時手段(タイマ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コードシンボルを読み取るコード読取装置と、
日時を計時する計時手段と、
前記コード読取装置が読み取ったコードシンボルに含まれている情報を取得する手段と、
前記取得した情報に含まれている商品コードに基づいて、商品コードに対応付けて単価を記憶する商品データファイルを検索して対応する単価を取得し、取得した単価に基づいて商品販売データ処理を実行する手段と、
前記計時手段が計時する現在時刻が前記取得した情報に含まれている設定時刻を経過することによる時刻イベントの発生の有無を判断する手段と、
前記時刻イベントが発生していると判断した場合、前記取得した情報に前記設定時刻と共に含まれている割引処理のための割引情報に基づいて、前記商品販売データ処理において割引処理を実行する手段と、
を備える商品販売データ処理装置。
【請求項2】
前記コード読取装置でのコードシンボルの読み取りに応じて報知音を出力する手段を備え、前記割引処理を実行する場合としない場合とで前記報知音を異ならせる、請求項1記載の商品販売データ処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−114946(P2007−114946A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304402(P2005−304402)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】