説明

喘息およびアトピーの生物学的データセットプロファイリング方法

喘息および他のアトピー性状態に関する生物学的データセットプロファイルを評価するための方法および系が提供され、ここで複数の細胞パラメーターの情報を含むデータセットは、比較および同定され、かつ候補薬剤の治療剤としての適合性に関する評価に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の分野は、異なる細胞経路間の区別、ならびに喘息を含むアレルギーおよびアトピー状態に対する作用物質の作用の判定におけるそれらの使用である。
【背景技術】
【0002】
背景
細胞が刺激を検出し反応する生化学的経路の知識は、薬学的産物の発見、開発、および正確な適用のために重要である。細胞生理は、複雑な関係を有する複数の経路を含む。例えば、経路は分岐および合流し;特異的な作用の実施において重複性が存在し;ならびに一つの経路における変化への反応が、細胞内および細胞間の両方において他の経路の活性を改変し得る。候補作用物質がどのように作用し、それが所望の作用を有するか否か理解するために、最終結果、および関心対象の経路への作用は、標的タンパク質を知ることと同じくらい重要である。
【0003】
作用物質または細胞の遺伝子型改変により影響される経路を決定するため、および作用物質と遺伝子型改変の間の共通作動様式を同定するためのBioMAP(登録商標)分析法が、国際特許出願第WO 01/067103号(特許文献1)に記載されている。因子に応答可能で、関心対象の状態をシミュレートする細胞が用いられる。好ましくは、細胞は生物学的に関連した状況(context)にある初代細胞である。複数の経路を含むよう十分な数の因子を用い、有益なデータセットを提供するために十分な数のパラメーターが選択される。アッセイによりもたらされたデータは、異なる環境および作用物質の間の強固な比較を提供するために処理されうる。
【0004】
関心対象の生理状態には免疫障害が含まれる。様々な形態の免疫系のアレルギー、または過敏症が、ヒト集団の20%超を冒している。さらに、ヒトはアナフィラキシーに高度に罹患しやすい種である。アレルゲンによる感作の後、二度目の曝露が細気管支の狭窄を誘発し、いくつかの症例では、窒息により死に至る。このアレルギー反応は、アレルゲン特異的抗体、主にIgEクラスにより媒介される。抗体は、花粉、真菌、食物、イエダニ、膜翅目毒、または動物の鱗屑由来の分子のようなさまざまな抗原に向けられ得る。IgEおよび抗原による、マスト細胞および好塩基球高親和性IgE受容体の凝集は、ヒスタミン、ヘパリン、好酸球走化因子および好中球走化因子、ロイコトリエン、ならびにトロンボキサンを含む、媒介物質およびサイトカインの放出を引き起こす。アレルギー反応および喘息における炎症プロセスの理解が過去十年で著しく向上したのに対し;それらを制御する能力はささやかなままである。先進国における喘息の有病率は、1980年から約80%増大した。この有病率の増大についての特異的な原因は明らかではないが、有病率の増加は、この疾患の進行を逆転させるか、または治療する有効な治療法の欠如に一部起因しうる。
【0005】
現在では喘息は、複数の遺伝因子および環境因子間の相互作用の結果生じ得る、間欠的かつ可逆的な気道閉塞、気道過敏反応性、および気道炎症の3つの基本的特徴により典型的に特徴付けられる症候群であると一般的に考えられている。それにも関わらず、この障害の大半の症例(いわゆる、「アトピー性」または「アレルギー性」喘息)は、定義された環境アレルゲンへの即時型過敏症反応をも示す被験体において生じ、これらの被験体の気道へのそのようなアレルゲンによる攻撃は、可逆的な気道閉塞を生じうる。いくつかの異なる集団における喘息の全発生率が、血清IgE濃度と強い正の相関を示すことも公知である。IgEはヒトにおいて即時型過敏症反応を媒介しうる主要なIgアイソタイプである。
【0006】
存在する末梢組織において、最終段階の分化/成熟を経る造血前駆細胞の誘導体であるマスト細胞は、IgEのFc部分に高親和性で結合可能な、細胞表面受容体(FcRI)を発現する。そのようなIgE感作されたマスト細胞は、それらのFcRI結合IgEにより認識される特異的抗原に遭遇すると直ちに、以下を含む幅広い生体活性媒介物質の一団を分泌する:細胞の細胞質顆粒に貯蔵される、予め形成された媒介物質、例えば、ヒスタミン、ヘパリン、および中性プロテアーゼ、新規に合成された脂質産物、例えば、プロスタグランジンD2およびロイコトリエンC4、ならびにさまざまなサイトカイン。これらの潜在的なマスト細胞由来媒介物質の多くは、可逆的な気道閉塞、気管支過敏反応、および/または気道炎症を促進しうる。
【0007】
しかしながら、共に、喘息を有する患者の気道における慢性炎症性浸潤においてよく見られる、好酸球およびTh2リンパ球を含む、さらなる細胞型も、この疾患の特徴の多くに寄与し得るサイトカインまたは他の媒介物質を産生できる。かつては組織マスト細胞および好塩基球に限定されると考えられていたFcRIは、単球、循環中の樹状細胞、ランゲルハンス細胞、および好酸球の表面にも発現され、従って、さまざまなIgE依存性炎症反応における媒介物質のさらなる潜在的供給源としての、これらの細胞の関与が示唆される(概説としては、Galli(1997)J.E.M. 186:343-347(非特許文献1)を参照されたい(その開示およびそこで引用される参考文献は、参照として本明細書に組み入れられる))。
【0008】
現在の証拠は、T細胞およびマスト細胞(ならびに他のFcRI+細胞)の両方が、これらの障害においてエフェクター細胞の役割および免疫制御性の役割の両方を有し得るという、アレルギー性疾患の発症機構の複雑な見解を裏付ける。このことは、喘息および他のアレルギー性疾患の治療的アプローチは複数の系に対する作用を考慮しなくてはならないことを示す。例えば、抗IgEに基づく戦略は、CD23依存性抗原提示およびFcRI+細胞のエフェクター機能を低減できるだけではなく、マスト細胞(または好塩基球)IL-4/IL-13産生およびFcRI+依存性抗原提示の両方を低減させることにより、FcRI+細胞の免疫制御性機能を減少させることもできる。逆に、コルチコステロイドおよび他の免疫抑制薬がマスト細胞のサイトカイン産生を減少でき、かつインビボでIgEおよびマスト細胞依存性炎症、および白血球の動員を減少できるという発見は、喘息におけるそのような作用物質の臨床的有益性が、少なくとも部分的には、マスト細胞、ならびにT細胞、好酸球、ならびにこれらの複雑な障害に関与する他のエフェクターおよび標的細胞に対する作用を反映しうる可能性を提示する。
【0009】
アトピー性疾患の発症に関与する多数の細胞および経路から、治療法の評価には、複数の系における有効性の複雑な評価が必要である。本発明はこれらの問題を扱う。
【0010】
【特許文献1】国際特許出願第WO 01/067103号
【非特許文献1】Galli(1997)J.E.M. 186:343-347
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は喘息および他のアトピー性状態に関する生物学的データセットプロファイルを評価するための方法ならびに系を提供し、ここで複数の細胞パラメーターの情報を含むデータセットは、比較および同定され、かつ候補薬剤の治療剤としての適合性に関する評価に用いられる。典型的なデータセットは、候補作用物質の非存在下または存在下における、細胞の生物学的因子への曝露に由来する、複数の細胞パラメーターからの読出し値(readout)を含み、ここで作用物質は化学物質、例えば薬物候補;または遺伝物質、例えば発現されるコード配列であり得る。データセットは対照データセット、および/または公知の作用物質のパラメーター変化を反映するプロファイルデータセットを含んでもよい。公知の作用物質は、喘息およびアトピー性疾患に対し許容される治療活性を有するもの、ならびに望ましくない副作用を例示するものを含み得る。複数の状況規定系(context-defined systems)の分析のために、複数の系由来の出力データが連結される。
【0012】
本発明の一つの態様において生物学的データセットプロファイルは一つまたは複数の喘息に関連した細胞系を含む。喘息に関連した細胞は、マスト細胞;平滑筋細胞、気管支上皮細胞、T細胞、内皮細胞などを含む。
【0013】
態様の詳細な説明
本発明の方法および組成物は、喘息を含むアトピー性疾患に対する候補治療法の評価のための系を提供する。アトピー性疾患は、遺伝的に罹患しやすい個体における環境誘導性の免疫反応の結果として発症する複雑な形質である。アトピー性疾患は、気道、皮膚、または胃腸管におけるアレルギー性炎症、ならびに血清IgEの上昇、好酸球増加、および喘鳴、くしゃみ、またはじんま疹の症状を呈する。さらに、アレルギー性炎症反応は、好酸球、マスト細胞、好塩基球、およびIgE産生性B細胞の増殖、分化、および/または動員を増強する高レベルのIL-4、IL-5、IL-9、およびIL-13を産生するTh2リンパ球の存在により特徴付けられる。
【0014】
情報のデータセットは、アトピー性疾患の処置または関与の候補である作用物質の、生物学的多重活性プロファイリング(BioMAP(登録商標))から得られる。そのような方法は例えば、それぞれ参照により具体的に本明細書に組み入れられる、米国特許第6,656,695号;2003年4月23日出願の同時係属中の米国特許仮出願第60/465,152号;2004年1月26出願の同時係属中の米国特許仮出願第60/539,447号;ならびに2001年9月13日出願の米国特許出願第09/952,744号;米国特許出願第10/220,999号;および2002年9月5日出願の米国特許出願第10/236,558号に記載される。簡単には、方法は生物活性物質のスクリーニングアッセイを提供し、ここで培養細胞の環境を変化させる作用は複数の出力パラメーターをモニターすることにより評価される。結果は、作用物質が作用する経路の決定、共通の経路で作用する作用物質の分類、経路間の相互作用の同定、および経路の構成要素の順序付けのために、シグナル経路に対する作用物質の作用に関して分析可能なデータセットである。
【0015】
薬物開発に早期にヒトの生物学を組み入れることで、薬物標的および薬物リードの質を向上させ、ならびに下流の化合物消耗の頻度を低減させることができる。関心対象のスクリーニング法は、複数のヒト初代細胞に基づく疾患系に由来するタンパク質発現データセットの統計的分析に基いた、薬物機能の特徴付けに向けたシステムズアプローチ(systems approach)を利用する。これらのモデルにおいて、生物学的複雑性は複数のシグナル経路の活性化;複数のヒト初代細胞型の相互作用;および/またはデータ分析のための複数の系の使用により提供される。これらのモデル系は驚くほどに強固で、再現性があり、かつ多数の認可された、および試験中の治療剤の活性に対する反応性があり、かつ識別性がある。
【0016】
炎症プロセス、特に喘息およびアレルギーに関連したものを調節する作用物質を分析するため、Th2 T細胞、気管支上皮細胞、ヒト初代マスト細胞などを含むモデル系が用いられる。系の多細胞設計および/または多因子設計、ならびに多パラメーター活性プロファイルを通じたそれらの分析は協働して情報量の最適化を行い、臨床疾患に関連した複雑な細胞反応における薬物および遺伝子標的の活性の、迅速だが有効な分析を可能にする。
【0017】
アレルギーまたはアトピーは、例えば、昆虫毒、チリダニ、花粉、かび、動物の鱗屑、食物抗原、またはラテックスを含む免疫原に対する特異的なIgE抗体の産生をもたらす、IgEに基づく感受性傾向の増大である。アレルギー性反応は抗原特異的であり、かつ例えば、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13などのようなTh2型サイトカインの産生により特徴付けられる。特定のアレルゲンへの感作は、遺伝的に罹患しやすい人々において、抗原への曝露後に起こり;タバコの煙およびウイルス感染が感作プロセスを補助する可能性がある。
【0018】
アトピーを患う個体群には、喘息関連アレルギーを有する個体が含まれる。人口の約40%がアトピー性であり、この群の約半分が些細な鼻炎から命に関わる喘息に及ぶ臨床疾患を発症する。感作後の、アレルゲンに対する連続的な曝露は喘息の有病率の著しい増大をもたらす。喘息を有する小児の90%および成人の80%はアトピー性である。一旦感作が起これば、アレルゲンへの再曝露は喘息の悪化の危険因子である。アレルギー性喘息の有効な管理には典型的には薬学的治療およびアレルゲン回避が必要である。アレルギーに関連した喘息の特異的な生理学的作用には、気道炎症、好酸球増加、および粘液産生、ならびにIL-4および抗原特異的IgEの産生が含まれる。
【0019】
アレルゲンは、罹患しやすい個体において、Th2型T細胞反応およびIgE B細胞反応を引き起こす免疫原性化合物である。アレルゲンは、果物(例えば、メロン、イチゴ、パイナップル、および他のトロピカルフルーツ)、ピーナッツ、ピーナッツ油、他のナッツ、乳タンパク質、卵白、貝類・甲殻類、トマトなどのような食物に見いだされる抗原;花粉、動物の鱗屑、イエダニ排出物などの、空中の抗原;ペニシリンおよび関連した抗生物質、サルファ薬、バルビツレート、抗痙攣剤、インスリン製剤(特に動物のインスリン源由来)、局所麻酔薬(例えば、ノボカイン)、およびヨウ素(多くのX線造影剤に見いだされる)のような薬物抗原;カ(ハマダラカ種(Anopheles sp.)、ヤブカ種(Aedes sp.)、ハボシカ種(Culiseta sp.)、イエカ種(Culex sp.))、ハエ(サシチョウバエ種(Phlebotomus sp.)、サシバエ種(Culicoides sp.))、特にブヨ、メクラアブ、およびヌカカを含む双翅目、ダニ(デルマセンター種(Dermacenter sp.)、カズキダニ種(Ornithodoros sp.)、オトビウス種(Otobius sp.))、ノミ(例えば、ネズミノミ属(Xenopsylla)、ヒトノミ属(Pulex)、およびネコノミ(Ctenocephalides felis felis)を含む、ノミ目)のような吸血節足動物により引き起こされる、アレルギー性皮膚炎の原因となる昆虫毒および作用物質;ならびにラテックスを含む。特異的なアレルゲンは、例えば多糖類、脂肪酸部分、タンパク質などのような、任意の型の化学物質であり得る。抗原調製物は、例えば天然源からの単離、組換えDNA分子のインビボまたはインビトロ発現(例えば、Zeiler et al.(1997)J. Allergy Clin. Immunol. 100(6 Pt 1):721-727を参照されたい)、化学合成、または他の当技術分野において公知の技術を含む、任意の利用可能な技術により調製できる。
【0020】
アナフィラキシー性アレルゲンは、過敏性の個体においてアナフィラキシー反応の危険性をもたらす抗原である。アナフィラキシーは、個体が抗原に感作された後に起こる、急性の、全身性アレルギー反応である。アナフィラキシーは、高レベルのIgE抗体の産生、および筋収縮、気道の狭窄、および血管の拡張を引き起こすヒスタミンの放出を伴う。アナフィラキシー反応の症状はじんま疹、全身の痒み、鼻閉、喘鳴、呼吸困難、せき、チアノーゼ、めまい(lightheadedness)、めまい(dizziness)、錯乱、不明瞭言語、頻脈、動悸、悪心および嘔吐、腹痛または腹部痙攣、皮膚の発赤または炎症、鼻の発赤、肋間陥凹などを含む。
【0021】
本明細書において定義されるように、喘息は、個体における、しばらくの間続く可逆的な気流の制限である。喘息は、好酸球、マスト細胞、好塩基球、およびCD25+ Tリンパ球などの細胞が気道壁に存在することにより特徴付けられる。さまざまなコミュニケーションおよび生物学的エフェクター特性を有するサイトカイン活性のために、これらの細胞間には緊密な相互作用が存在する。ケモカインは細胞を炎症部位に誘引し、サイトカインはそれらを活性化して、炎症および粘膜への損傷をもたらす。プロセスは慢性的であるので、基底膜の肥厚および線維化のような二次性変化が起こる。この疾患は、さまざまな刺激に対する気道の過敏反応性の増大、および気道の炎症により特徴付けられる。喘息性と診断された患者は、一般的に時間と共に、喘鳴、喘息発作、およびメタコリン曝露(challenge)への正の反応(すなわちメタコリン曝露でのPC20が約4mg/ml未満)を含む、複数の徴候を示す。診断の指針は例えば、National Asthma Education Program Expert Panel Guidelines for Diagnosis and Management of Asthma, National Institutes of Health, 1991, Pub. No. 91-3042において見いだすことができる。
【0022】
データ分析
典型的な「系」由来のデータは、本明細書において用いられるように、インビトロの培養条件下での、単一の細胞型または細胞型の組み合わせ(ウェル中に複数の細胞が存在する場合)を提供する。細胞株により導入される潜在的なアーチファクトを回避するため、初代細胞、またはマスト細胞の場合は、初代細胞由来の細胞が好ましい。系において、培養条件は、共通の生物学的に関連した状況を提供する。各系は対照、例えば、通常は生物学的な状況における因子の存在下にあるが、候補生物活性物質の非存在下にある細胞を含む。系内の試料は通常3つ組で提供され、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の3つ組セットを含んでもよい。
【0023】
本明細書において用いられるように、生物学的状況は、培養物に添加される、細胞内の経路を刺激する外来因子を指す。反応性細胞において経路を誘導する多数の因子が公知である。細胞反応を誘発するために因子の組み合わせを用いることにより、複数の個々の細胞生理経路を調べることができ、かつ環境の変化に対する生理反応をシミュレートできる。
【0024】
喘息/アトピーについての関心対象の生物学的状況には、ヒト初代臍帯静脈内皮細胞(HUVEC);初代微小血管内皮細胞、大動脈または小動脈内皮細胞などにより提供され得る初代内皮細胞が含まれる。初代内皮細胞は多様な細胞刺激に反応する。内皮細胞はそれらの環境に対し高度に感受性であり、それらは多数のシグナル経路を含む。このことは、多数の経路および/または経路の相互作用に対する化合物の作用を評価するための機会を提供する。内皮細胞は多数の疾患プロセスに関与する。炎症においては、それらはエフェクター白血球およびリンパ球の遊走および局在化を制御する。これらの目的のために内皮細胞を刺激するのに有用な因子には、IL-4 (20ng/ml);ヒスタミン;TNF-α;IL-1;IFNγ;IL-13;TGFβ;マスト細胞トリプターゼ(tryptase);フィブロネクチンなどがあり、これらは1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の因子を組み合わせて用いてもよい。また内皮細胞は以下に列挙する細胞との共培養に用いてもよい。
【0025】
Th2型T細胞、特にヒトT細胞を含むT細胞が用いられ得る。関心対象のT細胞源は、末梢血単核細胞調製物などを含み、これは選択されないことにより骨髄性細胞およびリンパ球細胞の複雑な混合物を提供してもよく、またはCD4+、CD3+のようなT細胞マーカーの発現について選択してもよい。長期のTh2アッセイの組み合わせは、TNF-αおよび/またはIL-1、ならびにIL-4を伴った、HUVECの24時間の培養により定義できる。喘息のような、慢性的Th2環境下における炎症は、TNF-α、IL-1、およびIL-4の存在により特徴付けられるが、IFN-γにはよらない。リンホカイン産生性活性型リンパ球(CD45RO+、CD44hiなど)は、喘息のような炎症性疾患の顕著な特徴である。疾患環境および組織部位に依存して、活性型リンパ球は、それらの、接着分子および他の受容体の発現および機能、ならびにそれらの、さまざまなサイトカインおよび他の因子の産生が異なることがある。感染および新生物と戦うための能力に関連したリンパ球の活性化を阻害または抑制することなく、炎症性疾患に関連したリンパ球活性化を選択的に阻止する能力が、炎症の薬物療法の目標である。これらの目的のためにT細胞を刺激するのに有用な因子には、IL-2;SEA、SEB、TSSTなどを含む超抗原;抗CD3;抗CD28;PHA;ConAなどがある。
【0026】
新生児繊維芽細胞を含む繊維芽細胞が系を構成してもよい。繊維芽細胞は単独で、または内皮細胞と、および/または平滑筋細胞と、および/または気管支上皮細胞と組み合わせて培養してもよい。気管支上皮細胞を単独で使用してもよい。この状況において有用な因子にはTNF-α;IFNβ;IFNγ;TGFβ;IL-4;IL-13;PDGF;FGF;ヒスタミンなどが含まれる。
【0027】
本発明は、マスト細胞活性化を阻害または変化させる化合物の同定に適用できる。そのような化合物は、マスト細胞産物が疾患病理を媒介する、アレルギーおよび喘息の処置において有用性を有する。マスト細胞はそれらの環境に依存して変化した反応を示す。マスト細胞がIL-3およびGM-CSFを産生する能力は、フィブロネクチンまたはビトロネクチンの存在下で著しく増大する。アトピー性患者におけるアレルゲン誘導性の後期の皮膚反応でのマスト細胞は、対照皮膚にあるマスト細胞に比べ、高レベルの高親和性IgE受容体を発現する。フィブロネクチンおよびビトロネクチンの少なくとも一方を含む生物学的状況は、生理環境または疾患環境を反映している。
【0028】
マスト細胞は初代供給源から単離されてもよいが、好ましくはインビトロで前駆細胞から作製される。そのような目的に有用な骨髄前駆細胞は当技術分野において周知であり、骨髄、臍帯血、動員された幹細胞集団などに由来するCD34+細胞を含む。前駆細胞は当技術分野において公知の方法、例えば幹細胞因子(SCF)およびIL-6の存在下により培養される。マスト細胞の誘導のための他の補充物には、IL-9、IL-10、TPO、FLT-3L、PGE-2、IL-3、およびヒトIgEが含まれ得る。マスト細胞の刺激に有用な因子は、IL-4;抗IgE;A23187;Compound 48/80;ConA;NP-BSAなどを含む。
【0029】
BioMAPデータセットは、系内の細胞のパラメーターまたはマーカーの測定により得られた値を含む。従って、各データセットは定義された細胞型および生物学的状況に由来するパラメーター出力を含み、系の対照を含む。上述したように、各試料、例えば候補作用物質、遺伝的構築物などは、一般的に3つ組のデータポイントを有し;複数の3つ組セットであってもよい。経路における関係は強度に状況依存性であるので、感度を増強するために、複数の系由来のデータセットを連結してもよい。2つ、3つ、4つまたはそれ以上の系の同時分析による複数のデータセットの連結が、分析の感度の増強を提供することが見いだされる。
【0030】
BioMAPへの言及は、データセットが、少なくとも2セットのパラメーター、好ましくは少なくとも3つのパラメーター、より好ましくは4つのパラメーターのレベルの値を含み、5つ、6つまたはそれ以上のパラメーターを含み得ることを意図する。
【0031】
多くの場合、文献は有用なBioMAPを提供するための系の条件を確立するための十分な情報を有する。情報が入手できない場合、文献に記載されている疾患のマーカーを同定するための手順を用いること、正常と関心対象の生理状態にある細胞との間での、RNA転写比較、プロテオミクスまたは免疫学的比較のためのサブトラクションライブラリー、マイクロアレイを用いること、ノックアウトまたはノックイン動物モデルを用いること、生理状態をシミュレートする動物モデルを用いることにより、1つの種由来の細胞または組織を、外来の細胞または組織を受容可能な異なる種、例えば免疫無防備状態の宿主に導入することにより、生理状態に関連した内因性因子および生理状態に関連した細胞により産生されるマーカーを確認できる。
【0032】
パラメーターは、系のデータセットを取得すること、ならびに異なるパラメーターセットを比較し対比するためにパターン認識アルゴリズムおよび統計分析を用いることにより最適化できる。パラメーターは、異なる作用様式を有することが公知である細胞培養の環境における変化の間を区別するデータセットを提供するものが選択される、すなわちBioMAPは共通の作用様式を有する作用物質に関しては類似しており、異なる作用様式を有する作用物質に関しては異なっている。最適化プロセスにより最小限のパラメーターセットの同定および選択が可能となり、パラメーターはそれぞれが強固な読出し値を提供し、併せて刺激または作用物質の異なる作用様式を区別可能にするBioMAPを提供する。反復性のプロセスは、有効性、ならびに同定および区別可能な、アッセイ形態において産生されるシグナル経路および/または機能的に異なる細胞状態の数を最大化するために、アッセイの組み合わせおよび読出しパラメーターを最適化することに集中し、同時に一方ではそのような区別のために必要なパラメーターまたはアッセイの組み合わせの数を最小化することに集中する。最適なパラメーターは強固で再現性があり、個々の因子および因子の組み合わせによるそれらの調節により選択される。
【0033】
パラメーターは細胞の定量可能な構成要素である。パラメーターは、細胞表面決定基、受容体、タンパク質またはその高次構造もしくは翻訳後修飾物、脂質、炭水化物、有機または無機分子、核酸、例えばmRNA、DNAなど、あるいはそのような細胞構成要素に由来する部分、またはその組み合わせを含む、任意の細胞構成要素または細胞産物であり得る。大部分のパラメーターが定量的な読出し値を提供するのに対し、いくつかの場合において、半定量的または定性的な結果が許容される。読出し値は単一の決定された値を含んでよく、または平均値、中央値、もしくは分散などを含んでよい。
【0034】
マーカーは以下の基準に基づきパラメーターとして役立つよう選択される。ここで、任意のパラメーターは全ての基準を有する必要はない:パラメーターは、アッセイの組み合わせによりシミュレートしている生理状態において調整される;パラメーターは容易に検出および区別可能な強固な反応を有する;提供された情報に重複があるように、パラメーターは他のパラメーターと共調節されない;および、いくつかの場合において、パラメーターの変化は細胞死をもたらす毒性を示唆する。選択されたパラメーターのセットは、データセット間の区別を可能にするのに十分な程大きいが、計算要件を満たすのに十分なほど選択的である。
【0035】
関心対象のパラメーターは、細胞質性、細胞表面、または分泌性生体分子、しばしば生体高分子、例えば、ポリペプチド、多糖、ポリヌクレオチド、脂質などの検出を含む。細胞表面および分泌性分子は、これらが細胞のコミュニケーションおよび細胞のエフェクター反応を媒介し、かつ容易にアッセイできることから、好ましいパラメーター型である。一つの態様において、パラメーターは特異的なエピトープを含む。エピトープは、特異的なモノクローナル抗体または受容体プローブを用いてしばしば同定される。いくつかの場合では、エピトープを含む分子的実体は、2つまたはそれ以上の物質に由来し、定義された構造を含む;例は、組み合わせ的に(combinatorially)決定された、ヘテロ二量体インテグリンに付随するエピトープを含む。パラメーターは、特異的に修飾されたタンパク質またはオリゴ糖、例えば、STAT転写タンパク質のような、リン酸化タンパク質;もしくは、セレクチン(selectin)リガンドである糖鎖構造Sialyl Lewis xのような硫酸化されたオリゴ糖の検出でもよい。活性高次構造の受容体の存在は1つのパラメーターを構成し得るが、不活性高次構造の受容体の存在はもう1つのパラメーターを構成し得る、例えばヘテロ二量体インテグリンαMβ2またはMac-1の活性型および不活性型である。
【0036】
喘息の評価のための関心対象のパラメーターは非限定的に、ACE(CD143);α5β1;α-平滑筋アクチン;B7-H1;B7-H2;CCR2;CCR3;CCR4;CCR5;CCR6;CCR7;CCR9;CD106;CD117;CD119;CD11c;CD134;CD137;CD150;CD200;CD26;CD30;CD31;CD38;CD40;CD55;CD59;CD62E;CD62P;CD69;CD87;CD87;CD90;CD154;コラーゲンI;コラーゲンIII;CTLA-4(CD152);皮膚リンパ球抗原(cutaneous lymphocyte antigen)(CLA);CXCR3;CXCR4;CXCR5;エラフィン(Elafin)/SKALP;エンドセリン-1;エオタキシン(Eotaxin)-2;エオタキシン-3;エオタキシン-1;エフリン(Ephrin)A2;E-セレクチン;FasL(CD178);FGF;FGF受容体;GM-CSF;Gro-a;ヒスタミン;HLA-DR;ICAM-1;IFN-γ;IL10;IL-13;IL-16;IL-1α;IL-2;IL-4;IL-4Rα;IL-5;IL-6;IL-8;IL-9;インテグリン a5b1;IP-10;I-TAC;ケラチン8/18;LDL受容体;L-セレクチン(CD62L);LT-α;マスト細胞トリプターゼ;MCP-1;MCP-4およびMIP-3a;m-CSF;MIG;MMP1;MMP-13;MMP2;MMP2;MMP-9;MMP-9;MMP-9;OX40(CD134);PAI-1;PAR2;PDGF;P-セレクチン;Tarc;TGF-β;トロンボモジュリン(thrombomodulin);TIMP-2;組織因子(CD142);TNF-α;uPA;uPAR(CD87);VCAM-1;VEGFR2などを含む。
【0037】
候補生物活性物質は、多数の化学的分類、主に、有機金属化合物分子を含み得る有機分子、無機分子、遺伝子配列などを包含してもよい。本発明の重要な局面は、好ましい生物反応機能を用いて、候補薬物を評価し、治療的抗体、およびタンパク質に基づいた療法を選択することである。候補作用物質は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的には少なくともアミン基、カルボニル基、水酸基、またはカルボキシル基を、しばしば少なくとも2つの化学官能基を含む。候補作用物質は、一つまたは複数の上記の官能基により置換された、環状炭素もしくは複素環構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造をしばしば含む。候補作用物質は、ペプチド、ポリヌクレオチド、糖、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、またはそれらの組み合わせを含む、生体分子にも見いだされる。
【0038】
薬理学的に活性な薬物、遺伝物質などが含まれる。関心対象の化合物は、化学療法剤、抗炎症剤、ホルモンまたはホルモンアンタゴニスト、イオンチャネル調整剤、および神経刺激剤を含む。本発明に適した薬学的作用物質の例は、全て参照により本明細書に組み入れられる、"The Pharmacological Basis of Therapeutics," GoodmanおよびGilman, McGraw-Hill, New York, New York,(1996), Ninth editionの以下の節:Drugs Acting at Synaptic and Neuroeffector Junctional Sites;Drugs Acting on the Central Nervous System;Autacoids: Drug Therapy of Inflammation;Water, Salts and Ions;Drugs Affecting Renal Function and Electrolyte Metabolism;Cardiovascular Drugs;Drugs Affecting Gastrointestinal Function;Drugs Affecting Uterine Motility;Chemotherapy of Parasitic Infections;Chemotherapy of Microbial Diseases;Chemotherapy of Neoplastic Diseases;Drugs Used for Immunosuppression;Drugs Acting on Blood-Forming organs;Hormones and Hormone Antagonists;Vitamins, Dermatology;およびToxicologyに記載されるものである。毒物、ならびに生物戦および化学戦薬剤も含まれ、例えばSomani, S.M.(Ed.)、"Chemical Warfare Agents," Academic Press, New York, 1992を参照されたい。
【0039】
用語「遺伝物質」はポリヌクレオチドおよびそれらの類似体を指し、遺伝物質は本発明のスクリーニングアッセイにおいて、細胞への遺伝物質の添加により試験される。遺伝物質は、例えば物質が因子の発現を提供する場合、因子として用いられてもよい。遺伝物質は、化学物質と類似した様式でスクリーニングされてもよい。遺伝物質の導入は細胞の遺伝的構成全体の変化をもたらす。DNAのような遺伝物質は、一般的には染色体への配列の組込みにより、細胞のゲノムに実験的に導入された変化をもたらすことができる。遺伝的変化は一時的な場合もあり、ここで外来性の配列は組込まれないが、エピソーム性の作用物質として維持される。アンチセンスオリゴヌクレオチドのような遺伝物質も、mRNAの転写または翻訳を阻害することにより、細胞の遺伝型を変化させることなくタンパク質の発現に影響を与えることができる。遺伝物質の作用は、細胞内の一つまたは複数の遺伝子産物の発現を増大または減少させることである。
【0040】
作用物質は、系内の細胞に作用物質を添加することにより生物活性についてスクリーニングされ;複数の系内の細胞に添加されてもよい。作用物質に反応したパラメーター読出し値の変化が測定されて、BioMAPデータセットが提供される。
【0041】
データ、特に複数の喘息関連系由来のデータは、プロファイル間の関係を明らかにするために、教師なし(non-supervised)階層的クラスター分析に供せられてもよい。例えば、階層的クラスター分析を行ってもよく、ここでピアソン相関がクラスター分析の測定基準として用いられる。相関マトリックスのクラスター分析は、例えば多次元尺度構成法を用いて、機能相同性の類似性および非類似性の可視化を増強する。多次元尺度構成法(MDS)は、1、2、または3次元に適用できる。MDSの適用は、線上の作用物質プロファイルの距離に基づく、作用物質の一意的な順序付けを提示する。化合物活性間の全ての関係の有意性の客観的な評価を可能にするため、全ての複数系に由来するプロファイルデータを連結してもよく;多系データはピアソン対相関により相互比較される。次いで、これらの相関により示唆される関係が、多次元尺度構成法を用いて可視化され、それらを2次元または3次元に示す。
【0042】
生物学的データセットは、データセット間、通常は試験データセットと対照の間、またはプロファイルデータセット間の統計的に有意な対応を決定するため、分析される。比較は2つまたはそれ以上のデータセット間で行われ、ここで、典型的なデータセットは候補作用物質の非存在下または存在下における、生物学的因子への細胞の曝露に由来する、複数の細胞パラメーターからの読出し値を含み、ここで、作用物質は遺伝物質、例えば発現されるコード配列;または化学物質、例えば候補薬物であり得る。
【0043】
対照プロファイルの反復から予測包絡線が作製され;この予測包絡線はパラメーター値の実験的変動の上限および下限値を提供する。予測包絡線は、例えば試験データセットとの比較における、ユーザーによる検索のためにコンピューターのデータベースに保存されてもよい。
【0044】
本発明の一つの態様において、本明細書において提供される分析法は、2つの作用物質の間の機能相同性の決定に用いられる。本明細書において用いられるように、用語「機能相同性」は、2つの候補作用物質の間の、例えば作用物質が同一の標的タンパク質に作用する場合または同一の経路に影響を与える場合の、機能の類似性の決定を指す。機能相同性は、二次的な経路、すなわち副作用に対する作用によっても、化合物を区別しうる。この様式において、構造的には類似していない化合物または遺伝子が、それらの生理学的機能に関して関係していることがある。平行分析により、試験された系を超えて統計的に類似した機能を有する化合物の同定が可能となり、関係した経路または分子標的が明らかにされる。多系分析も、機構的に異なる薬物により誘導される機能的反応の類似性を明らかにできる。
【0045】
喘息に関連した状況において作用する作用物質の分類は、抗ヒスタミン剤、コルチコステロイド、β-アゴニスト、気管支拡張剤、抗コリン作用剤、ロイコトリエン調整剤、IgEアンタゴニスト、およびマスト細胞安定剤(例えば、クロモリン)を含む。これらの分類に含まれる化合物を用いて、活性に関する既知のプロファイルを作製することができる。さらに、これらの分類に含まれる化合物を、本発明のアッセイにおいて治療的プロファイルについて試験してもよく、例えば、ここで既知の作用物質の誘導体および類似体;これらの分類に含まれる既知の作用物質と共通の構造的特徴を共有する作用物質などが活性について試験される。
【0046】
実施例
以下の実施例は、当業者に対し、どのように本発明を作成し使用するのかについての完全な開示および記載を提供することを目的として示され、本発明と見なされるものの範囲を限定することは意図されない。使用された数字(例えば、量、温度、濃度など)に関しては正確さを期すよう努力が払われたが、いくらかの実験上の誤差および偏差は許容されるべきである。他に特に示されない限り、部分は重量部分であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり;圧力は大気圧またはその付近である。
【0047】
本明細書において引用された全ての刊行物および特許出願は、それぞれ個々の刊行物または特許出願が具体的にかつ個々に参照により組み入れられることが示されたかのように、参照により本明細書に組み入れられる。
【0048】
前述の発明は、理解の明確さを目的として、例証および例としてある程度詳細に記載されたが、本発明の教示を鑑みて、当業者には、添付の特許請求の範囲の意図または範囲から逸脱することなく、そこに特定の変更および改変を加えてもよいことが容易に明らかである。本発明は本明細書において記載される特定の態様に限定されないことは、特に理解されるべきである。例えば、本発明は、本明細書において記載される特定の方法、プロトコル、細胞株、動物の種または属、構築物、および試薬には限定されず、従って変化してもよい。前述のものは、本発明の特定の好ましい態様の単なる説明であり、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0049】
実施例1
アレルギー性炎症に対する内皮細胞反応の制御因子
(HUVEC-IL4/His)
本発明は、Th2表現型またはTh2型免疫反応の傾向を示す、アレルギー、喘息、アトピー性皮膚炎、および慢性炎症性疾患のような、アレルギー性炎症反応の処置に使用するための化合物のスクリーニングに適用される。
【0050】
ヒト初代臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いる。スクリーニングにおいてHUVECに代わることができる他の細胞には、初代微小血管内皮細胞、大動脈または小動脈内皮細胞が含まれる。2〜10×104細胞/mlをEGM-2(Clonetics)中でコンフルエントまで培養する。EGM-2に代わることができる他の培地には、0.1mg/mlのヘパリンおよび0.03〜0.05mg/mlの内皮細胞成長サプリメント(ECGS)、ならびに10% FBSを補ったEGM(Clonetics)およびHam's F12K培地、または20%ウシ胎仔血清および2ng/ml塩基性線維芽細胞成長因子(Jaffe, J. Clin. Invest. 52:2745, 1973;Hoshi, PNAS 81:6413, 1984)を含むM199(Life Technologies, Inc.)培地が含まれる。
【0051】
次いで、以下を24時間適用する:IL-4(5ng/ml)、およびヒスタミン(HIS)(10μM)。次のパネルにおいて、 TNF-α(5ng/ml)、IL-1(1ng/ml)、IFNγ(20〜100ng/ml)IL-13 (20ng/ml)、TGFβ(20ng/ml)マスト細胞トリプターゼ、またはフィブロネクチンの一つまたは複数を、最初の2つの因子に加えるか、またはいずれか一方の因子と置換してもよい。作用物質の標準濃度は、文献に記載されるように用いた。示された因子により変化したパラメーターに基づき、CD55、VCAM-1、P-セレクチン、エオタキシン-3、MCP-1、VEGF受容体2、およびuPAR(CD87)のパラメーターについてBioMAPを作製する。BioMAPに加えられる、他の関心対象のマーカーは以下を含む:ACE(CD143)、a5b1、CD31、エンドセリン-1、エフリンA2、IL-6、LDL受容体、MMP1、MMP2、PAI-1、エオタキシン-1 -2、HLA-DR、MIG、TARC、トロンボモジュリン、コラーゲンI、III、IV、および組織因子(CD142)。
【0052】
実施例2
T細胞機能の制御因子-TH2反応
HUVEC/TH2-SAG/IL2
本発明はTh2リンパ球の活性化を阻害する化合物のスクリーニングに適用される。
【0053】
ヒト末梢血CD4+ T細胞を用いる。用いられ得る他の細胞は、ヒト末梢血CD3+細胞を含む。細胞は、記載されたように(Ponath, JEM 183:2437, 1996)、フィコール-ハイパック比重遠心法を用いて、ヒト末梢血単核細胞から単離する。細胞をプラスチックに付着させた後、記載されたように(Andrew, JI 166:103, 2001)、Miltenyl磁気ビーズを用いてCD4+細胞を非付着性細胞から単離するか、または記載されたように(Kim, JCI 108:1331, 2001)、MACSビーズを用いる陰性選択により単離する。次いで、精製されたCD4+リンパ球を、1〜5μg/ml抗CD3(Pharmingen)で12時間プレコーティングしたプレートで、完全RPMI(RPMI-1640+50μg/50Uペニシリン/ストレプトマイシン+10% FCS+50μMβ-メルカプトエタノール+1mMピルビン酸ナトリウム+2mM L-グルタミン)中で、0.5×106細胞/mlで6〜7日間培養する。
【0054】
これらの培養されたT細胞に対して、共刺激のために1μg/ml抗CD28抗体(Pharmingen)および増殖のために5ng/ml IL-2を添加する。共刺激のために、置換可能な他の試薬は、有効濃度の抗CD49d、抗CD2、または抗CD40-Igを含むが、これらに限定されない。さらに、T細胞の分化に重要なサイトカインを、分化および極性化を誘導する他のサイトカインに対する抗体とともに特定の組み合わせで添加する。通常の組み合わせは、TH2の極性化条件を模倣する、10ng/mlのIL-4、3μg/mlの抗IL-12、3μg/mlの抗INFγを含む。続く実験において、10ng/mlのIL-13、IL-6、またはIL-9をTH2条件に加えてもよい。6〜7日後、同一のT細胞集団を分割し、上記と同一の様式にて再刺激し、さらなる極性化のために、細胞をさらなる6〜7日間のサイクルで刺激してもよい。細胞を回収し、105細胞/mlに再懸濁し、コンフルエントな内皮細胞に添加する。
【0055】
ヒト初代臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いる。スクリーニングにおいてHUVECに代わることができる他の細胞には、初代微小血管内皮細胞、大動脈または小動脈内皮細胞が含まれる。2〜10×104細胞/mlをEGM-2(Clonetics)中でコンフルエントまで培養する。EGM-2に代わることができる他の培地には、0.1mg/mlのヘパリンおよび0.03〜0.05mg/mlの内皮細胞成長補充物(ECGS)、ならびに10% FBSを補ったEGM(Clonetics)およびHam's F12K培地、または20%ウシ胎仔血清および2ng/ml塩基性線維芽細胞成長因子(Jaffe, J. Clin. Invest. 52:2745, 1973;Hoshi, PNAS 81:6413, 1984)を含むM199(Life Technologies, Inc.)培地が含まれる。
【0056】
内皮細胞にTh2細胞を添加した後、以下を適用する:被験作用物質の存在下または対照緩衝液中に、IL-2(2ng/ml)および超抗原(SEB、2ng/ml+TSST、2ng/ml)。IL-2または超抗原に代わることができる他の刺激は:抗CD3(1μg/ml)、抗CD28(10μg/ml)、PHA(1μg/ml)、およびConAを含む。
【0057】
示された因子により変化したパラメーターに基づき、IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-5、IL-8、IL10、IL-13、LT-α、CCR4、CCR5、CXCR3、IL-4Rα、CD11c、CD38、CD40、CD69、E-セレクチン、エオタキシン-3、CD106、CD134、CD150、CD137、CD69、CD200、B7-H1、B7-H2、MIGおよびウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子受容体(uPAR、CD87)のパラメーターについてBioMAPを作製する。他の関心対象のパラメーターは、α4β7インテグリン、L-セレクチン(CD62L)、CD40L、OX40(CD134)、FasL(CD178)、CCR3、CCR6、CCR7、CXCR4、CXCR5、CCR9、CCR2、皮膚リンパ球抗原(CLA)、CTLA-4(CD152)およびCD154、CD26、CD30、組織因子、P-セレクチンリガンド活性を含む。
【0058】
実施例3
繊維芽細胞反応の制御因子
HDF-3C/TGF、HDF-TGF、HDF-IL4/IL13/TGF
本発明は繊維芽細胞反応を阻害する化合物のスクリーニングに適用される。
【0059】
ヒト新生児繊維芽細胞(HDFn)を用いる。細胞を、LSGSキット(Cascade Biologicsより);ウシ胎仔血清、2% v/v、ヒドロコルチゾン1μg/ml、ヒト上皮成長因子10ng/ml、塩基性線維芽細胞成長因子3ng/ml、およびヘパリン10μg/ml、ならびにペニシリン/ストレプトマイシン アンフォテリシンB溶液(PSA)を補った、DMEM/F12(50/50)(Cellgro)中で、3×104細胞/mlでコンフルエントに至るまで培養する。培地をペニシリン/ストレプトマイシン アンフォテリシンB溶液(PSA)のみを含むDMEM/F12に置換し、次いで24時間後、以下を適用する:

【0060】
さらに24時間インキュベート(37℃、5% CO2)した後、培養物を以下のパラメーターについて評価する:HDF3CT系について: ICAM、VCAM、CD40、CD90、IP-10、MCP-1、コラーゲンI、Mig、m-CSF、TIMP-2、PAI-1、およびIL-8;HDFT系について:CD90、コラーゲンI、コラーゲンIII、HLA-DR、PAI-1、およびVCAM;ならびにHDF413T 系について:CD40、CD90、コラーゲンI、コラーゲンIII、MMP-1、MMP-13、エオタキシン3、m-CSF、ICAM、TIMP-2、PAI-1、およびVCAM。
【0061】
実施例4
平滑筋反応の制御因子
SMC-3C
本発明は平滑筋細胞反応を阻害する化合物のスクリーニングに適用される。
【0062】
ヒト初代臍動脈平滑筋細胞(UASMC)を用いる。スクリーニングにおいてUASMCに代わることができる他の細胞には、初代大動脈、気管支、冠動脈、または肺動脈平滑筋細胞が含まれる。5〜7継代の細胞をスクリーニングに用いる。4×104細胞/mlを、5% FBSを含むSmGM-2(Clonetics)中で80%コンフルエントまで培養する。いくつかの場合において、SmGM-2をスクリーニングの24時間前に除き、インスリンを補った無血清SmBM基本培地(Clonetics)に置換してもよい。
【0063】
次いで以下を24時間適用する:因子は、IL-4(5ng/ml)およびヒスタミン(HIS)(10μM)の組み合わせ、またはIL-1(1ng/ml)、TNF-α(5ng/ml)、およびIFNγ(20ng/ml)の組み合わせを含む。作用物質の標準濃度は、文献に記載されるように用いた。
【0064】
示された因子により変化したパラメーターに基づき、VCAM、CD40、HLA-DR、ICAM、IL-8、MCP-1、M-CSF、MIG、トロンボモジュリン、およびuPARのパラメーターについてBioMAPを作製する。他の関心対象のマーカーは以下を含む:ACE、α5β1、IP-10、α平滑筋アクチン、コラーゲンI、FGF受容体、IL-6、LDL受容体、MMP1、MMP2、PAI-1、およびVEGF受容体II。
【0065】
実施例5
気管支上皮細胞反応の制御因子
BREPI3C、BREPITNF413
本発明は気管支上皮細胞反応を阻害する化合物のスクリーニングに適用される。
【0066】
正常なヒト気管支上皮細胞を用いる。細胞は補足BEBM培地(Cambrex)中で、2×104/mlで培養および蒔種する。細胞をBronchial/Tracheal Epithelial Cell Serum-Free Growth Medium (Cell Applications, Inc.)、または10μg/mlのrhu-インスリン、10μg/mlのトランスフェリン、10ng/mlの上皮成長因子(EGF)、1μMのエタノールアミン、25μg/mlのアプロチニン、25μg/mlのグルコース、1μMのホスホエタノールアミン、5pMのトリヨードチロニン、50nMのセレニウム、1nMのヒドロコルチゾン、1nMのプロゲステロン、5μMのフォルスコリン、10μMのヘレグリン(heregulin)β177-244、5μl/mlのフィブロネクチン、4μl/mlのウシ下垂体抽出物、およびレチノイド酸を補ったF12/DMEMを用いて培養することもできる。
【0067】
コンフルエントに達し次第、被験作用物質または対照緩衝液を添加し、以下を適用する:10ng/mlのIL-1β、10ng/mlのTNFα、および100ng/ml IFN-γ(BrEPI3C);5ng/mlのIL-4、10ng/mlのIL-13、および5ng/mlのTNFα(BrEPITNF413)。さらに24時間インキュベート(37℃、5% CO2)した後、培養物を以下のパラメーターについて評価する:BrEPI3Cについて:ICAM-1、IL-1a、IP-10、TGF-β、MIG、HLA-DR、PAI-1、I-TAC、MMP-1、MMP-9、CD87、およびケラチン8/18。BrEPITNF413について:エオタキシン-3、ICAM-1、IL-1a、IL-8、TGF-β、PAI-1、MMP-9、uPA、およびケラチン8/18。関心対象の他の読出し値は、CD44、E-カドヘリン、CD40、EGF-受容体、IL-15Rα、CD1d、CD80、CD86、TARC、エオタキシン-1、CD95、エラフィン/SKALP、エンドセリン-1、Gro-a、CD119、IL-6、GM-CSF、IL-16、FGF、PDGF、MCP-4、およびMlP-3aを含み得る。
【0068】
実施例6
繊維芽細胞/気管支上皮細胞反応の制御因子
本発明は繊維芽細胞/気管支上皮細胞反応を阻害する化合物のスクリーニングに適用される。
【0069】
ヒト新生児繊維芽細胞(HDFn)および正常なヒト気管支上皮細胞(BrEPI)を用いる。HDFnを、LSGSキット(Cascade Biologics);ウシ胎仔血清、2% v/v、ヒドロコルチゾン1μg/ml、ヒト上皮成長因子10ng/ml、塩基性線維芽細胞成長因子3ng/ml、およびヘパリン10μg/ml、ならびにペニシリン/ストレプトマイシン アンフォテリシンB溶液(PSA)を補った、DMEM/F12(50/50)(Cellgro)中で培養する。BrEPIを、補足BEBM培地(Cambrex)中で、2×104/mlで培養する。BrEPIを、Bronchial/Tracheal Epithelial Cell Serum-Free Growth Medium (Cell Applications, Inc.)、または10μg/mlのrhu-インスリン、10μg/mlのトランスフェリン、10ng/mlの上皮成長因子(EGF)、1μMのエタノールアミン、25μg/mlのアプロチニン、25μg/mlのグルコース、1μMのホスホエタノールアミン、5pMのトリヨードチロニン、50nMのセレニウム、1nMのヒドロコルチゾン、1nMのプロゲステロン、5μMのフォルスコリン、10μMのヘレグリンβ177-244、5μl/mlのフィブロネクチン、4μl/mlのウシ下垂体抽出物、およびレチノイド酸を補ったF12/DMEMを用いて培養してもよい。HDFnをアッセイのため3×104細胞/mlで蒔種する。2日後、培地を104個のBrEPI細胞を含むBrEPIに置換し、さらに2日間培養する。
【0070】
コンフルエントに達し次第、被験作用物質または対照緩衝液を添加し、以下を適用する:5ng/mlのIL-4、および10ng/mlのIL-13(HDFBrEPI413)。さらに24時間インキュベート(37℃、5% CO2)した後、培養物を以下のパラメーターについて評価する:CD90、ケラチン8/18、エオタキシン-3、I-TAC、ICAM-1、CD119、IL-1α、IL-8、MCP-1、MMP-9、MMP-1、PAI-1、TGF-β、TIMP-2、uPA、CD87、およびVCAM-1。関心対象の他の読出しは、ICAM-1、IP-10、エラフィン/SKALP、エンドセリン-1、Gro-a、CD119、IL-6、GM-CSF、IL-16、FGF、PDGF、CD44、E-カドヘリン、CD40、EGF受容体、IL6、IL-15Rα、CD1d、CD80、CD86、TARC、エオタキシン-1、CD95、MCP-4、およびMIP-3aを含み得る。関心対象の他の刺激は以下を含む:TNFα、TGFβ、IL-5、Il-10、IL-9、トリプターゼ、GM-CSF、Il-17、CD40L、ヒスタミン、IgEに刺激されたマスト細胞、およびLPSまたはSAgにより刺激されたPBMC 。
【0071】
実施例7
マスト細胞反応の制御因子
HUVEC/MC-IGE
本発明はマスト細胞反応を阻害する化合物のスクリーニングに適用される。マスト細胞プロファイルが、細胞間相互作用により初代内皮細胞のパラメータープロファイルを調節する能力を有することが証明される。マスト細胞モデルにおける薬物プロファイリングは独自のプロファイルを生じ、マスト細胞特異的化合物の同定および特徴付けを可能にすることができる。高スループットアッセイ形式において、臍帯血(UCB)由来マスト細胞を、ヒト初代内皮細胞との共培養に組み入れた。共培養物は、多数のタンパク質の発現を調整することにより、カルシウムイオノホア(A23183)およびIgE架橋結合を含むマスト細胞の脱顆粒刺激に反応する。H1受容体アンタゴニスト、srcファミリーキナーゼ阻害剤、PDE4阻害剤、およびマスト細胞安定剤を含む、いくつかの異なる機構分類に由来する化合物が、これらのアッセイにおいて活性を有し、区別できた。
【0072】
低温保存されたCD34+臍帯血(UCB)細胞を、AllCells、LLC、またはCambrexより入手する。CD34+ UCB細胞は、非分画UCBから、Miltenyi CD34単離キットを用いて単離することもできる。CD34+ UCB細胞を、100ng/ml SCFおよび50ng/ml IL-6(Peprotech)を含むYssel's Media(Gemini)、または2% FBSもしくは2% BSA(Sigma)および1×Pen/Strep(Mediatech)、5mMの2-ME(Gibco)、1×インスリン/トラフェリン(Trasferrin)/セレニウムA(Gibco)、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)、ならびに0.1mM MEM Non-essential Amino Acids(Gibco)を補ったIMDM(Mediatech)、または10% FBSを含むIMDM中で培養する。マスト細胞の誘導のための他のサプリメントは、IL-9、IL-10、TPO、FLT-3L、PGE-2、IL-3、およびヒトIgEを含み得る。細胞を6ウェルプレートで培養する。7日ごとに、培地の半分をIL6およびSCFを補った新鮮な培地と置換し、非付着性の細胞を新たな組織培養プレートに継代し、プラスチック付着性の集団は廃棄する。培地の容量を、百万細胞/ml未満を維持するよう必要に応じて調整する。細胞をこのような条件下で5〜15週間培養する。
【0073】
10% FBS含有培地にて培養された細胞は、第5週までに10〜20%がマスト細胞になり、この数のマスト細胞を少なくとも第15週まで維持する。2% BSA含有培地にて培養された細胞は、培養第5週には>80%がマスト細胞となり、BioMAPアッセイに利用でき、他の培地にて培養された細胞は、培養第9〜10週には>80%がマスト細胞となり、BioMAPアッセイに利用できる。培養の最後に、マスト細胞を10% FBSおよび20ng/ml IL-4±5mg/mlヒトIgEを単独でまたは組み合わせて共に補った培地中にて1〜2週間誘導する。誘導されたマスト細胞を10mg/mlのヒトIgEと共に2〜12時間37℃でインキュベートしてから、BioMAPアッセイに添加する。IgE標識されたマスト細胞を、96ウェルプレート内に、EGM-2培地中の5〜20×103細胞/ウェルのコンフルエントなHUVEC上に播種する。
【0074】
ヒト初代臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いる。スクリーニングにおいてHUVECに代わることができる他の細胞には、初代微小血管内皮細胞、大動脈または小動脈内皮細胞が含まれる。2×104細胞/mlをEGM-2(Clonetics)中でコンフルエントまで培養する。EGM-2に代わることができる他の培地には、0.1mg/mlのヘパリンおよび0.03〜0.05mg/mlの内皮細胞成長補充物(ECGS)、ならびに10% FBSを補ったEGM(Clonetics)およびHam's F12K培地、または20%ウシ胎仔血清および2ng/ml塩基性線維芽細胞成長因子(Jaffe, J. Clin. Invest. 52:2745, 1973;Hoshi, PNAS 81:6413, 1984)を含むM199(Life Technologies, Inc.)培地が含まれる。
【0075】
被験作用物質または対照緩衝液を添加し、マスト細胞および共培養物を5ng/mlのIL-4、および20mg/mlのヤギ抗ヒトIgEまたは1mMのA23187(Sigma)もしくは3mg/mlのCompound 48/80(Sigma)もしくはNP-BSA(Biosearch Technologies, Inc.)もしくは5mg/mlのコンカバリンA(Sigma)もしくはLPSを用いて刺激する。24時間後、プレートを乾燥させ、マスト細胞トリプターゼ、VCAM-1、CD87、CD62P、ICAM-1、IL-8、エオタキシン-3、CD55、VEGFR2、エンドセリン-1、PAI-1、およびMCP-1の発現について評価する。関心対象の他のマーカーは、CD142、CD69、CD62E、PAR2、IL-1a、CD59、HLA-DR、CD117、IL-4、IL-5、GM-CSF、フィブロネクチン、ビトロネクチン、およびIL-6を含み得る。
【0076】
マスト細胞を、気管支上皮細胞、HEKn、HDFn、および平滑筋細胞と共培養して、喘息およびアレルギー状態と関連したBioMAPアッセイを作製することもできる。
【0077】
実施例8
多系分析
複数の系において分析を行った。IL-4刺激されたHUVECを、共培養物中のマスト細胞、またはマスト細胞由来の媒介物質であるヒスタミンもしくはTNFに対するそれらの反応性について評価した。コンフルエントなHUVEC単層を、多ウェルプレートで、ヒスタミンおよび/もしくはTNF、または104細胞/ウェルのIgE標識されたUCB由来MC(第10〜11週、低血清または無血清条件)の存在下または非存在下において、IL-4で刺激した。マスト細胞/HUVEC共培養物を、ヤギ抗ヒトIgEまたはA23187を用いてさらに刺激した。24時間後、細胞ベースELISAにより、さまざまなマーカーの発現について培養物を評価した。図1A、MC媒介物質、ヒスタミン(10mM)およびTNF(5ng/ml)の存在下または非存在下における、IL-4刺激されたHUVEC上のマーカーの発現。図1B、A23187の存在下または非存在下における、IL-4刺激されたHUVECおよびHUVEC/MC共培養物上のマーカーの発現。図1C、HUVEC/MC共培養物中のVCAM発現の誘導についてのMC誘導法の比較。図1D、HUVEC/MC共培養物中のVCAM発現の誘導についてのMC刺激法の比較。図1E、HUVEC/MC共培養物中のVCAM発現の誘導についてのUCBドナーの比較。UCBに由来する複数のMCの誘導体は、HUVECマーカーの発現の変化により判定されるように、非常に類似した媒介物質放出能力を示した。
【0078】
HUVEC/IL-4 BioMAP(登録商標)モデル系において試験されたいくつかの化合物についてのプロファイル。図2に示すように、HU/IL-4、HU/IL-4/His、HU/MC/IL4/A23187、およびHU/MC/IL4/IgEモデル系が分析のために連結された。マスト細胞(MC)はCD34+ UCB細胞から低/無血清条件下で誘導された。第10週において、MCをIL-4および10% FBSと共に7日間培養し、BioMAPアッセイの開始より前にヒトIgEを用いて処置した。HUVECまたはHUVEC+MCに、化合物(または対照緩衝液)および因子を24時間添加し、次いでELISAにより読出しパラメーターを測定した。系には、HUVEC+IL-4、HUVEC+IL-4+ヒスタミン、HUVEC+IL-4+104 MC+A23187、およびHUVEC+IL-4+104 MC+ヤギ抗ヒトIgEが含まれた。縦座標は対数発現比[log10(化合物が有る場合のパラメータ値/溶媒対照でのパラメーター値)]を示す。個々の読出し値は横座標に沿って示される。化合物は示された濃度において試験された。
【0079】
図3に示されるのは、HU/IL-4/His、HU/MC/IL4/A23187、およびHU/MC/IL4/lgEモデル系を用いた分析である。アッセイは、図2のように、 IL-1β(ヤギ抗hu IL-1)、TNFα(ヤギ抗hu TNF)、もしくはIL-4(ヤギ抗hu-IL-4)に対する2μg/mlのブロッキング抗体、または対照の存在下において行われた。縦座標は対数発現率[log10(化合物が有る場合のパラメータ値/溶媒対照でのパラメーター値)]を示す。代表的な実験、3試料の平均±標準偏差を示す。個々の読出しは横座標に沿って示される。
【0080】
図4に示されるのは、HU/MC/IL4/IgE、BrEPI/3C、HDF/TGFβ、HU/IL4/His、HU/Th2/SAg/IL2、およびHU/PBMC/SAgを用いた分析である。アッセイは、550nMクレマスチン、10μMデキサメタゾン、または溶媒対照の存在下において、記述されたように行われた。縦座標は対数発現比[log10(化合物が有る場合のパラメータ値/溶媒対照でのパラメーター値)]を示す。代表的な実験、3〜9試料の平均を示す。灰色の実線は、溶媒対照から計算された99%信頼限界を示す。個々の読出しは横座標に沿って示される。HU/MC/IL4/IgE系パラメーターは、エオタキシン-3、マスト細胞特異的トリプターゼ、エンドセリン-1、uPAR/CD87、CD106、およびP-セレクチンを含む。BrEPI/3C系パラメーターは、CXCR-4、フィブロネクチン、HLA-DR、I-TAC、ICAM-1、IL-1α、IP-10(P-10)、MIG、MMP1、MMP9、PAI-1、SRB、TGFβ、およびuPAR/CD87を含む。HDF/TGFβ系パラメーターは、CD90、コラーゲンI、コラーゲンIII、HLA-DR、PAI-1、SRB、およびCD106を含む。HU/IL4/His系パラメーターは、CD106、CD55、MCP-1、CD62P、レサズリン、SRB、uPAR/CD87、およびVEGFR2を含む。HU/TH2/SAg/IL2系パラメーターは、CD106、CD38、CD40、CD69、E-セレクチン、エオタキシン-3、IL-10、IL-5、IL-8、MCP-1、MIG、SRB、およびuPAR/CD87を含む。HU/PBMC/SAg系パラメーターは、CD38、CD40、CD69、E-セレクチン、IL-8、MCP-1、およびMIGを含む。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】IL-4刺激されたHUVECは、共培養中のマスト細胞、またはマスト細胞由来の媒介物質であるヒスタミンおよびTNFαに対して反応し読出しパラメーターの発現を調整する。コンフルエントなHUVECをヒスタミンおよび/もしくはTNFα、またはIgEの存在下で方法に記載されたように調製された104細胞/ウェルのUCB由来MC(第10〜11週、低血清または無血清条件)で刺激した。マスト細胞/HUVEC共培養物を、ヤギ抗ヒトIgEまたはA23187を用いてさらに刺激した。24時間後、細胞ベースELISAにより、さまざまなマーカーの発現について培養物を評価した。図1A:ヒスタミン(10μM)および/もしくはTNF(5ng/ml)の存在下または非存在下における、IL-4刺激されたHUVEC上の読出しパラメーターの調節。図1B:A23187の存在下または非存在下における、IL-4刺激されたHUVECおよびHUVEC/MC共培養物上の読出しパラメーターの調節。図1C:HUVEC/MC共培養物中のVCAM発現の誘導に対するのMC誘導法の作用の比較。図1D:HUVEC/MC共培養物中のVCAM発現の誘導に対するのMC刺激法(A23187または抗IgE)の比較。図1E:HUVEC/MC共培養物中のVCAM発現の誘導に対するUCBドナーの作用の比較。UCBに由来する複数のMCの誘導体は、VCAM-1発現の変化により判定されるように、類似した媒介物質放出能力を示す。p<0.05=*、p<0.005=**。
【図2】4つのモデル系において試験されたいくつかの化合物についてのBioMAP反応プロファイル。
【図3】3つのモデル系において試験されたブロッキング抗体についてのBioMAP反応プロファイル。
【図4】6つのモデル系において試験された、H1受容体アンタゴニストであるクレマスチン、およびグルココルチコイドであるデキサメタゾンについてのBioMAP反応プロファイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、喘息/アトピー状況における活性に関して候補作用物質を特徴付ける方法:
喘息/アトピー状況系において得られた2つまたはそれ以上の出力を含む、被験作用物質についての生物学的データセットプロファイルを導出する段階であって、該プロファイルが、該生物活性物質を欠く該喘息/アトピー状況系由来の対照データを含む、段階;
該プロファイルを参照プロファイルと比較して変動の存在を判定する段階であって、プロファイルの少なくとも1つのパラメータ値が、所定の有意水準を超過した場合、該被験作用物質プロファイルが対照とは異なる、段階。
【請求項2】
被験作用物質が遺伝物質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
被験作用物質が化学物質または生物学的物質である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
生物学的データセットプロファイルが、被験作用物質の非存在下または存在下における細胞の生物学的因子への曝露に由来する、複数の細胞パラメーターからの読出し値を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
系が、単一の細胞型、または共通の生物学的に関連した状況の複数の細胞型の複数の試料を含み;被験作用物質の非存在下にある少なくとも1つの対照を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
同時分析のために複数の系が連結される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
喘息/アトピー状況が初代気管支上皮細胞、初代マスト細胞、初代平滑筋細胞、およびTh2 T細胞の一つまたは複数を含む、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−527239(P2007−527239A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500892(P2007−500892)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/005247
【国際公開番号】WO2005/093561
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506074314)バイオシーク インコーポレイティッド (3)
【Fターム(参考)】