器具
【課題】湯水から引き上げた後の液漏れを回避し、衛生的に保管し、且、抽出対象物の抽出作業を効率的に行うことができる器具を提供する。
【解決手段】器具7は、第1の部材1と、第2の部材2とを含む。第1の部材1は、第1の基体部10と、抽出部17とを有している。第1の基体部10は、管状である。抽出部17は、袋状であって、液透過性を有するシート材で構成され、第1の基体部10の管軸方向Lの少なくとも一端(101)に取り付けられている。第2の部材2は、管状であって、管状の内部に第1の部材1が挿通され、挿通された状態で、第1の基体部10の外周において可動的に取り付けられ、抽出部17を外部に露出可能に覆っている。
【解決手段】器具7は、第1の部材1と、第2の部材2とを含む。第1の部材1は、第1の基体部10と、抽出部17とを有している。第1の基体部10は、管状である。抽出部17は、袋状であって、液透過性を有するシート材で構成され、第1の基体部10の管軸方向Lの少なくとも一端(101)に取り付けられている。第2の部材2は、管状であって、管状の内部に第1の部材1が挿通され、挿通された状態で、第1の基体部10の外周において可動的に取り付けられ、抽出部17を外部に露出可能に覆っている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具に関し、具体的にはコーヒーや紅茶、緑茶などを手軽に飲むための器具に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーや紅茶、緑茶などを手軽に飲むための器具について、例えば、特許文献1、2に開示されているものが知られている。特許文献1記載の器具は、所謂ティーパックであって、抽出袋と、紐とを含む。抽出袋は、液透過性を有するシート材で構成されており、内部に茶葉が収納される。紐は、一端が抽出袋に結び付けられている。この構造によると、例えば、容器に溜めた湯水(溶媒)に抽出袋を浸すだけで、当該湯水に同袋内の茶葉の香味成分(溶質)を溶かし出し、飲むことができる。また、香味成分を抽出した後、紐の他端を持ち上げることにより、別途漉し器を用いることなく、当該湯水から茶葉を引き上げることができる。
【0003】
他方、特許文献1では、抽出袋を動かし難いという不具合が生じる。即ち、茶葉の香味成分を効率よく抽出するためには、湯水内で抽出袋を動かすことにより、当該湯水とともに袋内の茶葉を攪拌させる必要がある。しかし、紐の一端をつまんで抽出袋を動かそうとしても、水圧によって抽出袋を十分に動かすことができない。
【0004】
特許文献2記載の器具は、上述した不具合を解決するものであって、ストロー状器具の一端に抽出袋が収納されている。この構造によると、ストロー状器具の一端を湯水に浸した状態で、他端をつまんで掻き混ぜることにより、湯水内で袋内の茶葉を攪拌させ、香味成分を効率よく抽出することができる。
【0005】
ところで、この種のティーパックを用いた場合の問題点として、湯水から引き上げた後の液漏れの処理が面倒であることが知られている。即ち、ティーパックの抽出袋は、湯水から引き上げられた状態で多量の水分を含んでいる。従って、ティーパックを、例えばテーブル上にそのままおくと、抽出袋から染み出した水分や、水分に残留している香味成分により、テーブル上が汚れてしまう問題が生じる。上述した問題を回避するためには、抽出袋を当該湯水から引き上げた後、直ちにゴミ箱などに捨てなければならず、非常に面倒である。
【0006】
また、ティーパックを用いた場合のもう1つの問題点として、再利用しにくいことが知られている。即ち、ティーパックは、抽出袋に収納される茶葉の量を増やすことにより、複数回、繰り返して使用することも可能である。ただし、ティーパックを繰り返し使用するには、抽出袋を当該湯水から一旦引き上げた後、次に使うまでの間、衛生的に保管する必要があるから、非常に面倒である。
【0007】
上述した湯水から引き上げた後の液漏れの処理の問題、及び、使用後の抽出袋を次に使うまでの間、衛生的に保管する問題について、特許文献1及び2記載の発明では、解決することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2005−206256号公報
【特許文献2】特願2002−240854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、湯水から引き上げた後の液漏れを回避することができる器具を提供することである。
本発明のもう1つの課題は、衛生的に保管することができる器具を提供することである。
本発明の更にもう一つの課題は、抽出対象物の抽出作業を効率的に行うことができる器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明に係る器具は、第1の部材と、第2の部材とを含む。第1の部材は、第1の基体部と、抽出部とを有している。第1の基体部は、管状である。抽出部は、袋状であって、液透過性を有するシート材で構成され、第1の基体部の管軸方向の少なくとも一端に取り付けられている。第2の部材は、管状であって、管状の内部に第1の部材が挿通されており、挿通された状態で、第1の基体部の外周において可動的に取り付けられ、抽出部を外部に露出可能に覆っている。
【0011】
上述のように、本発明に係る器具を構成する第1の部材は、管状の第1の基体部と、袋状の抽出部とを有している。抽出部は、液透過性を有するシート材で構成され、第1の基体部の管軸方向の少なくとも一端に取り付けられている。この構造によると、抽出部に、例えば茶葉、コーヒー粉末、ココア粉末等の抽出対象物を収納させた状態で、容器に溜めた湯水に第1の基体部の一端を差し込みし、抽出部を当該湯水に浸すだけで、抽出対象物の成分(溶質)を当該湯水に溶かし出すことができる。
【0012】
また、第1の基体部の一端を湯水に浸した状態で、他端をつまんで掻き混ぜる操作をすることにより、別途スプーンなどを用いずに湯水を攪拌し、抽出対象物の抽出作業を効率的に行うことができる。
【0013】
さらに、抽出対象物を当該湯水に溶かし出した後、第1の基体部の他端をつまみ、持ち上げることにより、別途漉し器を用いることなく、当該湯水から抽出部、及び、抽出部に収納された抽出対象物を引き上げることができる。
【0014】
本発明に係る器具は、上述した構成に加え、第2の部材を有する点に特徴のひとつがある。第2の部材は、管状であって、管状の内部に第1の基体部が挿通されており、挿通された状態で、第1の基体部の外周において可動的に取り付けられ、抽出部を外部に露出可能に覆っている。この構造によると、抽出部は第2の部材によって覆われているから、抽出部、及び、抽出部に収納された抽出対象物を衛生的に保管することができる。
【0015】
また、抽出時には第2の部材を操作して抽出部を外部に露出させ、露出させた状態で、例えば容器に溜めた溶媒(湯水)に第1の基体部の一端を差し込みし、抽出部を当該湯水に浸すだけで、抽出対象物の成分(溶質)を当該湯水に溶かし出すことができる。
【0016】
さらに、当該湯水から引き上げた後、第2の部材を操作して抽出部を被覆させることにより、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部から水分や、水分に残留している抽出対象物の成分が外部に漏出する不具合は生じない。従って、湯水から引き上げた後の液漏れを回避することができる。
【0017】
しかも、抽出部を第2の部材で覆うことにより、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部に塵埃等が付着する不具合は生じないから、抽出袋を当該湯水から一旦引き上げた後、次に使うまでの間、衛生的に保管することができる。その結果、例えば再び湯水に浸して飲用に供することも可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
【0019】
(1)湯水から引き上げた後の液漏れを回避することができる器具を提供することができる。
(2)衛生的に保管することができる器具を提供することができる。
(3)抽出対象物の抽出作業を効率的に行うことができる器具を提供することができる。
【0020】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る器具の斜視図である。
【図2】図1の器具の一部を取り出して示す斜視図である。
【図3】図1の器具の正面断面図である。
【図4】図1の器具の別の状態を示す斜視図である。
【図5】図4の器具の正面断面図である。
【図6】図1乃至図5の器具の使用状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明のもう一つ実施形態に係る器具について一部を拡大して示す正面断面図である。
【図8】本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具の正面図である。
【図9】図8の器具の平面図である。
【図10】図8及び図9の器具の使用状態を示す部分断面図である。
【図11】本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具の斜視図である。
【図12】図1の器具の別の状態を示す斜視図である。
【図13】図11及び図12の器具の内部構造を示す部分断面図である。
【図14】本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具について一部を省略して示す正面図である。
【図15】本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具の部分断面図である。
【図16】図15の器具の別の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1乃至図3の器具は、第1の部材1と、第2の部材2とを含む。第1の部材1(図2参照)は、第1の基体部10と、抽出部17とを有している。
【0023】
第1の基体部10は、断面視、円形状の管状体、筒状体、又は、パイプ状体であって、耐水シート材で構成されている。本明細書において「耐水シート材」とは、基材となる紙の表面を、合成樹脂材料塗料を用いて被膜加工したもの、又は、合成樹脂材料フィルムでコーティングしたものを指し、一般的な耐水紙の他、耐熱紙なども含まれる。第1の基体部10が耐水シート材で構成されることにより、器具の使い捨てが可能となり、材料コストを低減することができる。もっとも、器具を繰り返し使用する場合には、第1の基体部10をポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂材料で構成し、又は、ステンレス等の金属材料などで構成することもできる。
【0024】
第1の基体部10は、第1の中空部100と、第1の開口部11と、一対の膨張部131、132と、一対の凸部141、142とを有している。第1の基体部10は、管状の側壁部分を構成し、管軸方向Lの両側に、それぞれ一端101と、他端102とを有し、管軸方向Lに交差する管径方向Dに外面103と、内面104とを有している。
【0025】
第1の中空部100は、内面104によって画定され、第1の基体部10の内部を管軸方向Lに沿って伸びている。図1及び2の第1の中空部100は、一端101及び他端102でそれぞれ開口しているが、必ずしもこれに限定されない。例えば、後述する液漏れの問題をより完全に回避するべく、第1の中空部100が一端101に開口させない構造を採ることができる。
【0026】
第1の開口部11は、管軸方向Lでみた第1の基体部10の中間部から一端101までの間の部分において、第1の基体部10を外面103から内面104に貫通し、第1の中空部100に開口している。
【0027】
第1の開口部11は、一対であって、第1の基体部10において、管径方向Dの両側に向かい合う関係で形成されている。違う言葉で表現すれば、第1の開口部11は、第1の基体部10を部分的に切り欠くことにより構成されており、第1の基体部10の中間部から一端101までの間には、開口端縁により画定された一対の第1の開口部11、11と、一対の第1の開口部11を除いた条状部分12とが形成されている。
【0028】
一対の膨張部131、132のそれぞれは、一端101及び他端102のそれぞれにおいて、外面103から管径方向Dに突出している。膨張部131、132の突出面と、外面103との間には高低差が生じている。図3を参照すると、一対の膨張部131、132は、第1の基体部10と一体的に形成されているが必ずしもこれに限定されない。例えば、帯状、又は、リング状の耐水シート材を一端101及び他端102に別途積層することにより構成することもできる。
【0029】
一対の凸部141、142のそれぞれは、一端101及び他端102のそれぞれにおいて、外面103から管径方向Dに突出しており、凸部141又は142の突出面と、外面103との間に高低差が生じている。一対の凸部141、142のうち、凸部141は、一端101付近において膨張部131より手前側の条状部分12上に形成されており、凸部142は、他端102付近において膨張部132より手前側に設けられている。
【0030】
抽出部17は、液透過性を有している。図1乃至図3の抽出部17は、濾紙や不織布、メッシュなどの多孔質構造を有するシート材で構成され、一端101において、第1の中空部100に取り付けられ、取り付けられた状態で、一対の第1の開口部11、11から外部に露出している。抽出部17は、袋状であって、シート材の内面によって画定される内部空間170を有している。抽出部17は、内部空間170に収納された抽出対象物4を溶媒(湯水)へ溶かし出す際に、フィルターとして機能する。
【0031】
図1乃至図3からは必ずしも明らかではないが、管軸方向Lでみた抽出部17の長さ寸法L17は、同じく管軸方向Lでみた第1の開口部11の長さ寸法L11よりも長くなっており、抽出部17の両端が内面104と一体化され、固定されている。もっとも、上記構成は、器具が使い捨てされる場合を想定したものである。従って、器具が繰り返し使用される場合には、固定具などを用いることにより、抽出部17を内面104に着脱可能に固定することもできる。
【0032】
また、抽出部17は、湯水(6)に浸した場合、抽出対象物4が湯水(6)を吸収して、差し渡し寸法が増大、又は、膨張するから、抽出部17の外面と、内面104との間には、予め抽出対象物4の膨張量を想定した隙間があることが好ましい。
【0033】
第2の部材2は、第1の基体部10の外面103に取り付けられ、抽出部17を覆っている。即ち、図1乃至図3の器具は、第1の部材1と、第2の部材2との二重筒構造となっている。より詳細に説明すると、第2の部材2は、第2の基体部20を有し、第2の基体部20は、断面視、円形状の管状体、筒状体、又は、パイプ状体であって、第1の基体部10と同様に耐水シート材で構成されている。
【0034】
第2の基体部20は、管状の側壁部分であって、管軸方向Lの両側に、それぞれ一端201と、他端202とを有し、管軸方向Lに交差する管径方向Dに外面203と、内面204とを有している。さらに、第2の基体部20は、第2の中空部200と、一対の凹溝241、242とを有している。第2の中空部200は、内面204によって画定され、第2の基体部20の内部を管軸方向Lに沿って伸び、管軸方向Lの両端で開口している。
【0035】
第2の中空部200には、第1の部材1が挿通されている。即ち、第2の基体部20は内面204でみた最大差し渡し内径寸法(内寸法D2)を有し、第1の基体部10は外面103でみた最大差し渡し外径寸法(外寸法D1)を有し、内寸法D2は外寸法D1よりも大きい関係にある。
【0036】
一対の凹溝241、242のそれぞれは、一端201及び他端202のそれぞれにおいて、内面204にリング状に形成されており、内面204と、一対の凹溝241、242のそれぞれの底面との間に高低差が生じている。
【0037】
一対の凹溝241、242は、一対の凸部141、142と嵌合されることにより、第2の部材2の管軸方向Lに沿った動きを規制するものであって、凹溝241、242の高低差(深さ寸法)は、嵌合される凸部141、142の高低差(突出寸法)に対応して決定される。図1、図3の第2の部材2は、第1の基体部10の一端101側に配置され、配置された状態で、向かい合う凸部141と凹溝241とが凹凸嵌合されていることにより固定されている。
【0038】
第2の部材2は、第2の中空部200に第1の部材1が挿通され、挿通された状態で、第1の基体部10の外面103において可動的に取り付けられ、抽出部17を外部に露出可能に覆っている。具体的に、図1、図3の第2の部材2は、外面103において、管軸方向Lに沿って矢印M1、M2で示す方向にスライド可能に取り付けられ、一端101から他端102にスライドM1させることにより、抽出部17を外部に露出させる。第1の部材1は、管軸方向Lの両端に一対の膨張部131、132を有しているから、第2の部材2のスライドM1操作は、一対の膨張部131、132の間隔L13内がスライド可能な距離となる。
【0039】
また、第1の部材1は、一対の凸部141、142を有しているから、第2の部材2をスライドM1させたとき、他端102の位置で向かい合う凸部142と凹溝242とが凹凸嵌合され、抽出部17を外部に露出させた状態で固定される(図4及び図5参照)。
【0040】
他方、第2の部材2をスライドM2させたとき、一端101の位置で向かい合う凸部141と凹溝2421が凹凸嵌合され、抽出部17を被覆した状態で固定される(図3参照)。
【0041】
図1乃至図5の器具は、抽出対象物4を含む。抽出対象物4は、抽出部17の内部空間170に収納されている。抽出対象物4の具体的な種類は、飲用する物(溶液)に応じて適宜決定することができる。例えば、器具が、お茶やコーヒー、ココアなどの簡易調理器として用いられる場合、抽出対象物4は、紅茶、緑茶、烏龍茶などの各種茶葉、又は、コーヒー粉末、ココア粉末等の飲料用固形粉末である。さらに抽出対象物4としては、上述した物にミルク粉末、砂糖等の調味料を予め混合したものでもよい。
【0042】
また、抽出対象物4が、各種スープ粉末である場合、器具は、インスタント調理器として用いられ、抽出対象物4が、漢方薬や粉末薬剤である場合、器具は、飲み薬の簡易製造器として用いられる。
【0043】
さらに違う観点から見れば、図1乃至図5の器具において、抽出対象物4は、予め1杯分あるいは数杯分ずつに所定の量に計量されて内部空間170に収納されるから、器具は計量器としても機能する。
【0044】
図6は、図1乃至図5の器具の使用状態を示す部分断面図である。図6において、図1乃至図5に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図6の器具7は、第2の部材2をスライド(M1)させることにより抽出部17が外部に露出されており、容器5に溜めた溶媒(湯水)6に抽出部17を所定の時間浸すことにより、内部空間170に収納されている抽出対象物4の溶質(香味成分)が、湯水6に溶かし出される。器具7は、図6の抽出作業後、湯水6から引き上げ、第2の部材2をスライド(M2)させることにより、抽出部17が第2の部材2によって被覆される。
【0045】
図1乃至図6を参照して説明した器具7によると、以下の効果を奏することができる。まず、抽出部17は、袋状であって、液透過性を有するシート材で構成され、第1の基体部10の一端101に取り付けられている。この構造によると、抽出部17に、抽出対象物4を収納した状態で、湯水6に一端101を差し込み、抽出部17を湯水6に浸すだけで、抽出対象物4の香味成分を当該湯水6に溶かし出し、飲用に供することができる。
【0046】
抽出部17は、一端101に取り付けられているから、一端101を湯水6に浸した状態で、他端102をつまんで矢印M3で示す方向に操作することにより、スプーンなどを用いずに湯水6、及び、内部空間170の抽出対象物4を攪拌させることができる。従って、抽出作業の効率が向上する。
【0047】
さらに、抽出部17は、一端101に取り付けられているから、抽出対象物4を湯水6に溶かし出した後、他端102をつまみ、持ち上げることにより、別途漉し器を用いることなく、当該湯水6から抽出部17、及び、抽出部17に収納された抽出対象物4を引き上げることができる。
【0048】
本発明の一実施形態に係る器具7は、第2の部材2を有する点に特徴の一つがある。第2の部材2は、管状であって、第1の基体部10の外面103に取り付けられ、抽出部17を覆っている。この構造によると、器具7が実際に使用されるまでの間、抽出部17及び抽出対象物4を衛生的に保管することができる。
【0049】
さらに、第2の部材2は、外面103において可動的に取り付けられ、抽出部17を外部に露出可能に覆っている。図1乃至図5の第2の部材2は、スライドM1させることにより抽出部17を外部に露出し、スライドM2させることにより抽出部17を被覆する。この構造によると、抽出時には第2の部材2をスライドM1して抽出部17を露出させ、露出させた状態で湯水6に一端101の抽出部17を差し込むだけで、抽出対象物4を当該湯水6に溶かし出すことができる。
【0050】
他方、抽出作業を終了し、一端101の湯水6から引き上げた後、第2の部材2をスライドM2して抽出部17を被覆させることができる。その結果、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部17から水分や、水分に残留している抽出対象物4の成分が外部に漏出する不具合は生じない。従って、湯水6から引き上げた後の液漏れを回避することができる。
【0051】
しかも、湯水6から引き上げた後、第2の部材2をスライドM2して抽出部17を被覆させることにより、抽出部17及び抽出対象物4が衛生的に保管することができる。その結果、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部17に塵埃等が付着する不具合は生じない。従って、抽出部17を当該湯水6から一旦引き上げた後、次に使うまでの間、衛生的に保管することができる。その結果、例えば再び湯水に浸して飲用に供することも可能になる。
【0052】
第2の部材2のスライドM1、M2操作について、第1の部材1は、管軸方向Lの両端に一対の膨張部131、132を有しているから、一対の膨張部131、132の間隔L13内によってスライド可能な距離が予め規制されている。従って、第2の部材2のスライドM1、M2操作を円滑に行うことができる。
【0053】
しかも、第1の部材1は一対の凸部141、142を有し、第2の部材2は一対の凹溝241、242を有している。この構造によると、第2の部材2をスライドM1させたとき、一端101の位置で向かい合う凸部141と凹溝241とが凹凸嵌合され、第2の部材2が外面103上に固定される。この構造によると、スライドM1の下げ止まりが明確になると共に、外部からの圧力により第2の部材2が不正移動する不具合は生じないから、保管中にスライドM2し、抽出部17が外部に露出する不具合は生じない。
【0054】
他方、第2の部材2をスライドM2させたとき、他端102の位置で向かい合う凸部142と凹溝242とが凹凸嵌合され、第2の部材2が外面103上に固定される。この構造によると、スライドM2の上げ止まりが明確になると共に、外部からの圧力により第2の部材2が不正移動する不具合は生じないから、抽出作業中にスライドM1し、抽出部17が被覆される不具合は生じない。
【0055】
上述したように、図1乃至図6を参照して説明した器具7によると、従来のティーパックを用いた場合の問題点を解決することができる。即ち、従来のティーパックの抽出袋は、湯水から引き上げられた状態で多量の水分を含んでいる。従って、ティーパックを、例えばテーブル上にそのままおくと、抽出袋から染み出した水分や、水分に残留している香味成分により、テーブル上が汚れてしまう問題が生じる。上述した問題を回避するためには、抽出袋を当該湯水から引き上げた後、直ちにゴミ箱などに捨てなければならず、非常に面倒である。
【0056】
また、ティーパックを用いた場合のもう1つの問題点として、再利用しにくいことが知られている。即ち、ティーパックは、抽出袋に収納される茶葉の量を増やすことにより、複数回、繰り返して使用することも可能である。ただし、ティーパックを繰り返し使用するには、抽出袋を当該湯水から一旦引き上げた後、次に使うまでの間、衛生的に保管する必要があるから、非常に面倒である。
【0057】
これに対して、図1乃至図6の器具7では、湯水6から引き上げた後、第2の部材2をスライドM1して抽出部17を被覆させることにより、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部17から水分や、水分に残留している抽出対象物4の成分が第2の部材2で遮られ、外部に漏出する不具合は生じない。従って、湯水6から引き上げた後の液漏れを回避することができ、当該湯水6から引き上げた後、直ちにゴミ箱などに捨てにいく必要はない。また、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部17に塵埃等が付着する不具合は生じない。従って、再び湯水6に浸して飲用に供することができる。
【0058】
図7は、本発明のもう一つ実施形態に係る器具について一部を拡大して示す正面断面図である。図7において、図1乃至図6に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図7の器具と、図1乃至図6の器具(7)とは、抽出部17の構造が異なる以外は、共通の基本的構成を有している。以下、相違点を中心に説明する。
【0059】
図7の器具において、抽出部17の内部空間170は、隔壁171によって複数の収納空間172〜174に画定されている。隔壁171は、紙や不織布、メッシュなどの多孔質構造を有するシート材で構成され、好ましくは抽出部17を構成するシート材と一体的に構成されている。複数の収納空間172〜174のそれぞれには、同種、又は、異種の抽出対象物(4)を収納することができる。
【0060】
さらに、図7の器具は、凸部15と、凸部16を有している。凸部15、16は、管軸方向Lでみた外面103の点P1、P2に間隔を隔てて突設されている。
【0061】
第2の部材2のスライドM1、M2操作について、例えば、第2の部材2のスライドM1操作した場合、凹溝242はP1の位置で凸部15と嵌合され、嵌合された状態で、第2の部材2の一端がP3まで移動し、第3の収納空間174が第2の部材2によって被覆される。
【0062】
さらに、第2の部材2のスライドM1操作した場合、凹溝242は凸部15との嵌合が解除され、次のP2の位置で凸部16と嵌合されることにより、第2の部材2の一端がP4まで移動し、第2の、第3の収納空間174が第2の部材2によって被覆する。
【0063】
即ち、図7の器具は、複数の収納空間172〜174の位置に応じて凸部15、16が突設されており、第2の部材2を管軸方向Lに沿って段階的にスライドM1させ、スライドさせた位置で掛けとめることができる。なお、逆のスライドM2操作をすることにより、抽出部17を段階的に外部に露出しうることは明白である。
【0064】
図7の実施形態において、複数の収納空間172〜174のそれぞれに、同種の抽出対象物(4)を収納した場合、抽出効率を向上することができる。即ち、スティック状器具に抽出対象物(4)が収納されている場合、抽出対象物(4)は重力に従い一端101に偏って塊状となり、湯水(6)に浸した時に攪拌させ難いことがある。図7の実施形態では、抽出対象物(4)を収納空間172〜174に分けて収納することができるから、重力による抽出対象物(4)の偏りを回避することができる。しかも、湯水(6)に浸したとき、抽出対象物(4)はそれぞれの収納空間172〜174内で攪拌されるから、抽出効率を向上することができる。
【0065】
他方、複数の収納空間172〜174のそれぞれに、異種の抽出対象物(4)を収納した場合、作成しうる溶液のバリエーションが増加し、使い勝手が良くなる。例えば、第1の収納空間172にコーヒー粉末を収納し、第2の収納空間173に砂糖を収納し、第3の収納空間174にミルク粉末を収納することにより、予め1杯分ずつに計量されたコーヒーの簡易調理器として器具を用いることができる。
【0066】
また、抽出部17を湯水(6)に浸す位置を、収納空間172〜174の何れかに設定することにより、例えば、コーヒーについて、砂糖の有無、ミルクの有無を使用者自ら決定して抽出することができる。しかも、図7の実施形態では、収納空間172〜174の位置に応じて第2の部材2のスライドM1位置を段階的に調節することができるから、例えば、砂糖有り、ミルク無しのコーヒーを飲みたい場合には、凹溝242をP1の位置で凸部15と嵌合させ、第3の収納空間174を第2の部材2で被覆することにより、第1の収納空間172のコーヒー粉末と、第2の収納空間173の砂糖のみを湯水(6)に浸して抽出させることができる。
【0067】
図8は本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具7の正面図、図9は図8の器具7の平面図である。また、図10は、図8及び図9の器具7の使用状態を示す部分断面図である。図8乃至図10において、図1乃至図7に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0068】
図8乃至図10の器具7は、掛止部18を有する以外は、図1乃至図7の器具(7)と共通の基本的構成を有している。以下、相違点を中心に説明する。
【0069】
まず、図8及び図9の器具7を構成する掛止部18は、第1の部材1の外面103に突設されている。より詳細に説明すると、掛止部18は、基体部180と、開口部181とを有している。基体部180は、フック状、又は、鉤状であって、外面103において管軸方向Lに沿って突設されている。開口部181は、基体部180において、抽出部17の側に開口し、開口部分を構成する先端面と、第2の部材2の外面203との間に間隔が形成されている。
【0070】
第2の部材20は、スリット25を有し、スリット25は、第2の部材2の外面203から内面204に貫通し、外面203において、管軸方向Lの他端202から中間で延びている。第1の部材1の掛止部18は、スリット25に案内され、第2の部材2の外面203に突出している。第2の部材20は、掛止部18がスリット25に案内された状態で、管軸方向LにスライドM1、M2可能に取り付けられている。
【0071】
次に、図10を参照して、図8及び図9の器具7の利点を説明する。図10に示すように、器具7が掛止部18を有している構造によると、抽出作業を効率的に行うことができる。即ち、器具7が、お茶やコーヒー、ココアなどの簡易調理器として用いられる場合、湯水6を溜める容器5の容量は様々であり、器具7の長さ寸法よりの底の深い容器5に用いた場合、器具7が容器5内の湯水6に沈んでしまう問題が生じる。
【0072】
これに対し、図8乃至図9の器具7は、掛止部18を有しているから、図10に示すように容器5の側壁51に器具7を掛け止めることにより、器具7の水没を回避することができる。
【0073】
また、器具7が掛止部18を有する構造によると、器具7を容器5に取り付たまま、抽出が終わるまで放置することができるから、例えば、飲食店において多数の客にコーヒーを提供する場合や、一般家庭において多数の来客にコーヒーを提供する場合に、抽出作業を効率的に行うことができる。
【0074】
図8及び図9の器具を構成する掛止部18は、第1の部材1の外面103に突設され、スリット25を通じて第2の部材2の外面203に突出しているから、第2の部材2をスライドM1又はM2させるとき、掛止部18がガイド溝として機能する。また、第2の部材2をスライドM2させるとき、掛止部18の基部がスリット25の一端にぶつかることにより上げ止まりとして機能する。従って、第2の部材2のスライドM1又はM2操作を円滑に行うことができる。
【0075】
また、掛止部18が、スリット25を通じて外面203に突出している構造によると、第2の部材2のスライドM1又はM2操作の有無にかかわらず、器具7における掛止部18の位置が固定されるから、例えば、筒体などに差して容易に保管することができる。
【0076】
他方、掛止部18は器具7を容器5に取り付けるためのものであるから、必ずしも第1の部材1の外面103上に設けられる必要はない。例えば、掛止部18を、第2の部材2の外面203上に直接突設することもできる。掛止部18を、外面203上に突設する構造によると、スリット25を設ける必要がなくなり、部品点数が少なくなる分、製造コストを低減することができる。
【0077】
また、掛止部18を、外面203上に突設する構造によると、掛止部18を保持して第2の部材2をスライドM1又はM2操作させることができる。従って、第2の部材2のスライド操作が容易になる。
【0078】
しかも、掛止部18が固定されているかぎり、第2の部材20のスライドM1又はM2操作が規制されるから、例えば、容器5の側壁51に器具7を掛け止めた状態で、第2の部材2が不正にスライドすることはない。従って、抽出作業中に第2の部材2が不正移動し、抽出部17が覆われる不具合は生じない。
【0079】
図11は本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具の斜視図、図12は図1の器具の別の状態を示す斜視図、図13は図11及び図12の器具の内部構造を示す部分断面図である。図11乃至図13において、図1乃至図10に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図11乃至図13の器具と、図1乃至図10の器具とは、第2の部材2の構造が異なる以外は、共通の基本的構成を有している。以下、相違点を中心に説明する。
【0080】
図11乃至図13の器具において、第2の部材2は、第2の開口部26を有し、第1の基体部10の外面103において、第1の開口部11から外部に露出する抽出部17に対応する領域に取り付けられ、取り付けられた状態で抽出部17を覆っている。第2の開口部26は、第2の基体部20の側壁を貫通し、第2の中空部200に開口している。
【0081】
第2の部材2は凸部27を有し、第1の部材1は凹溝19を有している。凸部27は、第2の基体部20の他端202側において、内面204から管径方向Dに突出しており、内面204と、凸部27の突出面との間に高低差が生じている。他方、凹溝19は、管軸方向Lでみた第1の基体部10の中間部分において、外面103にリング状に形成されており、外面103と、凹溝27の底面との間に高低差が生じている。凹溝19は、凸部27と嵌合されることにより、管軸方向Lでみた第2の部材2の動きを規制するものであって、凹溝19のそれぞれの高低差(深さ寸法)は、凸部27のそれぞれの高低差(突出寸法)に対応して決定される。
【0082】
第2の部材2は、第1の基体部10の外面103において、周方向Cに回転可能に取り付けられ、第2の部材2を周方向Cに回転させ、第2の開口部26が抽出部17と重なる位置で、抽出部17を外部に露出させる。図11の実施形態では、第2の開口部26が第1の開口部11と重なる位置にあり、抽出部17が第2の開口部26を通じて外部に露出している。
【0083】
他方、図12の実施形態では、図11の状態から第2の部材2を周方向Cに回転C1させることにより、図13の一点鎖線で示す第2の開口部26が、条状部分12と重なる位置に配置されている。違う言葉で表現すれば、図12の状態では、抽出部17は外部に露出されないこととなる。
【0084】
図11乃至図13の実施形態によっても、図1乃至図10を参照して説明した、器具の利点を全て奏することができる。さらに、図11乃至図13の実施形態では、第2の部材2を周方向Cに回転させる操作により、抽出部17を第2の開口部26を通じて外部に露出させ、又は、抽出部17を第2の基体部20の側壁部分によって被覆させる。この構成によると、図1乃至図10を参照して説明したスライドM1又はM2操作により抽出部17を露出させる実施形態と比較して、外部からの圧力により、第2の開口部26が不正に移動する危険を回避することができる。従って、例えば、筒体などに差して容易に保管することができる。
【0085】
図14は、本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具について一部を省略して示す正面図である。図14において、図1乃至図13に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図14の器具と、図1乃至図13の器具とは、抽出部17の設置数および配置が異なる以外は、共通の基本的構成を有している。以下、相違点を中心に説明する。
【0086】
図14の実施形態において、第1の部材1は2つの抽出部17、17を有し、2つの抽出部17、17は、第1の基体部10の管軸方向Lの両端に取り付けられている。2つの抽出部17、17のそれぞれには、点線で示す第2の部材2が取り付けられている。図14の第2の部材2は、図11乃至図13の第2の部材2と同じものが用いられている。もっとも、図14の実施形態において、図1乃至図13の第2の部材2、即ち、管軸方向LにスライドM1又はM2操作させるものを用いることができる。
【0087】
図14の実施形態によっても、図1乃至図13を参照して説明した、器具の利点を全て奏することができる。さらに、図14の実施形態では、2つの抽出部17、17を有するから、例えば、2つの抽出部17、17のそれぞれに異種の抽出対象物(4)を収納した場合、作成しうる溶液のバリエーションが増加し、使い勝手が良くなる。例えば、一方の抽出部17にコーヒー粉末を収納し、他方の抽出部17に砂糖を収納することにより、コーヒーについて、砂糖の有無を使用者自ら決定して飲用に供することができる。
【0088】
図15は、本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具の部分断面図、図16は図15の器具の別の状態を示す斜視図である。図15及び図16において、図1乃至図14に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図15及び図16の器具は、第3の部材3を有している点で、図1乃至図13の器具とは異なる。以下、相違点を中心に説明する。
【0089】
図15及び図16の器具は、第1の部材1と、第2の部材2と、第3の部材3とを含む。第1の部材1は、凸部14を有している。凸部14は、リング状であって、管軸方向Lでみた第1の基体部10の他端102付近の外面(103)に突設されている。
【0090】
第2の部材2は、凸部27と、凹溝28とを有している。凸部27は、リング状であって、管軸方向Lでみた第2の基体部20の他端202付近において、外面203から管径方向Dに突出しており外面203と、凸部27の突出面との間に高低差が生じている。凹溝28は、一端201付近において、内面204にリング状に形成されており、内面204と、凹溝28の底面との間に高低差が生じている。凹溝28は、凸部14と嵌合されることにより、第2の部材2の動きを規制するものであって、凹溝28のそれぞれの高低差(深さ寸法)は、凸部14のそれぞれの高低差(突出寸法)に対応して決定される。
【0091】
第3の部材3は、第3の基体部30を有し、第2の中空部200に挿通され、挿通された状態で、第2の基体部20の外周において可動的に取り付けられ、抽出部17を外部に露出可能に覆っている。即ち、図15及び図16の器具は、第1の部材1と、第2の部材2と、第3の部材3の三重筒構造となっている。より詳細に説明すると、第3の部材3は、第3の基体部30を有し、第3の基体部30は、断面視、円形状の管状体、筒状体、又は、パイプ状体であって、第1、第2の基体部10、20と同様に耐水シート材で構成されている。
【0092】
第3の基体部30は、管状の側壁部分であって、管軸方向Lの両側に、それぞれ一端301と、他端302とを有し、管径方向Dに外面303と、内面304とを有している。さらに、第3の基体部30は、第3の中空部300と、凹溝34とを有している。第3の中空部300は、内面304によって画定され、第2の基体部20の内部を管軸方向Lに沿って伸び、管軸方向Lの両端で開口している。
凹溝34は、一端301側において、内面304にリング状に形成されており、内面304と、凹溝34の底面との間に高低差が生じている。凹溝34は、凸部27と嵌合されることにより、第2の部材2の動きを規制するものであって、凹溝34の高低差(深さ寸法)は、凸部28のそれぞれの高低差(突出寸法)に対応して決定される。
【0093】
第3の中空部300には、第2の部材2が挿通されている。第3の基体部30は内面304でみた最大差し渡し内径寸法(内寸法D3)を有し、第2の基体部20は外面203でみた最大差し渡し外径寸法(外寸法D20)を有し、内寸法D3は外寸法D20よりも大きい関係にある。第1〜第3の基体部10〜30において、第1の基体部10の外寸法D1は第2の基体部20の内寸法D2より小さく、第2の基体部20の外寸法D20は第3の基体部30の内寸法D3より小さい関係となっている。即ち、第1〜第3の部材1〜3は、外側に向かって管径が段々に大きくなっており、入れ子状に組み合わされている。
【0094】
図15において、第1〜第3の基体部10〜30は、管軸方向Lでみて同じ長さ寸法を有している。
【0095】
図16の実施形態は、図15の状態から、第1〜第3の部材1〜3を順次スライドM1させることにより、抽出部17を外部に露出させた状態を示している。第1の部材1は他端102に凸部14を有し、第2の部材2は一端201に凹溝28を有している。従って、第2の部材2を管軸方向Lに沿ってスライドM1させたとき、第2の部材2の最大引き出し位置P6で凸部14と、凹溝28が凹凸嵌合され、固定される。
【0096】
さらに、第2の部材2は他端202に凸部27を有し、第3の部材3は一端301に凹溝34を有している。従って、第3の部材3を管軸方向Lに沿ってスライドM1させたとき、第3の部材3の最大引き出し位置P5で凸部27と、凹溝34が凹凸嵌合され、固定される。なお、逆のスライドM2操作をすることにより、図15に示した状態に戻しうることは明白である。
【0097】
図15及び図16の実施形態によっても、図1乃至図14を参照して説明した、器具の利点を全て奏することができる。例えば、第1の部材1を構成する抽出部17は、第2、第3の部材2、3を管軸方向Lに順次スライドM1操作することにより外部に露出させることができる。従って、抽出部17に、抽出対象物(4)を収納した状態で、湯水(6)に第1の基体部10の一端101を差し込みし、抽出部17を当該湯水(6)に浸すだけで、抽出対象物(4)を当該湯水(6)に溶かし出すことができる。
【0098】
また、第1の部材1を構成する抽出部17は、第2、第3の部材2、3を管軸方向Lに順次スライドM2操作して被覆させることができる。従って、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部17から水分や、水分に残留している抽出対象物(4)の成分が外部に漏出する不具合は生じない。よって、湯水(6)から引き上げた後の液漏れを回避することができる。
【0099】
さらに、図15及び図16の実施形態では、第1〜第3の部材1〜3は、管径方向Dでみた外側に向かって管径が段々に大きくなっており、入れ子状に組み合わされているから、第2、第3の部材2、3を管軸方向LにスライドM2操作して抽出部17を被覆させた状態(図15)で、長さ寸法が、第1〜第3の基体部10〜30それぞれの長さ寸法と同程度に短くなり、省スペース化が図られる。従って、携帯性が向上するとともに、保管効率が向上する。
【0100】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。以下、変形態様について説明する。
【0101】
図1乃至図16の実施形態において、第1〜第3の部材1〜3は、断面視、楕円形状、三角形形状、四角形形状、さらには多角形形状とすることができる。この構造によると、抽出部17に収納される抽出対象物に応じて器具の断面視形状を設定することができる。例えば、コーヒー用器具の場合は断面視円形状とし、紅茶用器具の場合は断面視三角形形状とし、緑茶用器具の場合は断面視四角形形状とする等と使い分けることにより、冠婚葬祭向けのギフトセット用に複数の器具を販売する場合の美観を向上させ、又は、飲食店などのドリンクバーにおいて複数の器具を併設する場合の取り違えを防ぐことができる。
【0102】
また、抽出部17の長さ寸法(L17)や径寸法は、抽出対象物の種類に応じて適宜調節することができる。例えば、一杯分のコーヒー粉末の収納量は8g程度であり、ココアに用いられる場合に一杯分のココア粉末の収納量は22g程度であり、適量とされる抽出対象物4の収納量は異なるから、第1の部材1を構成する抽出部17の長さ寸法(L17)や、径寸法は抽出対象物4の性質に応じて適宜設定される。
【0103】
さらに、図1乃至図6に係る実施形態のスライド動作M1、M2と、図11乃至図13に係る実施形態の回転動作C1とは、必ずしも択一的な関係にあるものではなく、1つの器具上で同時に行うよう構成することもできる。
【符号の説明】
【0104】
1 第1の部材
10 第1の基体部
11 第1の開口部
17 抽出部
18 掛止部
2 第2の部材
20 第2の基体部
26 第2の開口部
4 抽出対象物
5 容器
7 器具
L 管軸方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具に関し、具体的にはコーヒーや紅茶、緑茶などを手軽に飲むための器具に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーや紅茶、緑茶などを手軽に飲むための器具について、例えば、特許文献1、2に開示されているものが知られている。特許文献1記載の器具は、所謂ティーパックであって、抽出袋と、紐とを含む。抽出袋は、液透過性を有するシート材で構成されており、内部に茶葉が収納される。紐は、一端が抽出袋に結び付けられている。この構造によると、例えば、容器に溜めた湯水(溶媒)に抽出袋を浸すだけで、当該湯水に同袋内の茶葉の香味成分(溶質)を溶かし出し、飲むことができる。また、香味成分を抽出した後、紐の他端を持ち上げることにより、別途漉し器を用いることなく、当該湯水から茶葉を引き上げることができる。
【0003】
他方、特許文献1では、抽出袋を動かし難いという不具合が生じる。即ち、茶葉の香味成分を効率よく抽出するためには、湯水内で抽出袋を動かすことにより、当該湯水とともに袋内の茶葉を攪拌させる必要がある。しかし、紐の一端をつまんで抽出袋を動かそうとしても、水圧によって抽出袋を十分に動かすことができない。
【0004】
特許文献2記載の器具は、上述した不具合を解決するものであって、ストロー状器具の一端に抽出袋が収納されている。この構造によると、ストロー状器具の一端を湯水に浸した状態で、他端をつまんで掻き混ぜることにより、湯水内で袋内の茶葉を攪拌させ、香味成分を効率よく抽出することができる。
【0005】
ところで、この種のティーパックを用いた場合の問題点として、湯水から引き上げた後の液漏れの処理が面倒であることが知られている。即ち、ティーパックの抽出袋は、湯水から引き上げられた状態で多量の水分を含んでいる。従って、ティーパックを、例えばテーブル上にそのままおくと、抽出袋から染み出した水分や、水分に残留している香味成分により、テーブル上が汚れてしまう問題が生じる。上述した問題を回避するためには、抽出袋を当該湯水から引き上げた後、直ちにゴミ箱などに捨てなければならず、非常に面倒である。
【0006】
また、ティーパックを用いた場合のもう1つの問題点として、再利用しにくいことが知られている。即ち、ティーパックは、抽出袋に収納される茶葉の量を増やすことにより、複数回、繰り返して使用することも可能である。ただし、ティーパックを繰り返し使用するには、抽出袋を当該湯水から一旦引き上げた後、次に使うまでの間、衛生的に保管する必要があるから、非常に面倒である。
【0007】
上述した湯水から引き上げた後の液漏れの処理の問題、及び、使用後の抽出袋を次に使うまでの間、衛生的に保管する問題について、特許文献1及び2記載の発明では、解決することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2005−206256号公報
【特許文献2】特願2002−240854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、湯水から引き上げた後の液漏れを回避することができる器具を提供することである。
本発明のもう1つの課題は、衛生的に保管することができる器具を提供することである。
本発明の更にもう一つの課題は、抽出対象物の抽出作業を効率的に行うことができる器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明に係る器具は、第1の部材と、第2の部材とを含む。第1の部材は、第1の基体部と、抽出部とを有している。第1の基体部は、管状である。抽出部は、袋状であって、液透過性を有するシート材で構成され、第1の基体部の管軸方向の少なくとも一端に取り付けられている。第2の部材は、管状であって、管状の内部に第1の部材が挿通されており、挿通された状態で、第1の基体部の外周において可動的に取り付けられ、抽出部を外部に露出可能に覆っている。
【0011】
上述のように、本発明に係る器具を構成する第1の部材は、管状の第1の基体部と、袋状の抽出部とを有している。抽出部は、液透過性を有するシート材で構成され、第1の基体部の管軸方向の少なくとも一端に取り付けられている。この構造によると、抽出部に、例えば茶葉、コーヒー粉末、ココア粉末等の抽出対象物を収納させた状態で、容器に溜めた湯水に第1の基体部の一端を差し込みし、抽出部を当該湯水に浸すだけで、抽出対象物の成分(溶質)を当該湯水に溶かし出すことができる。
【0012】
また、第1の基体部の一端を湯水に浸した状態で、他端をつまんで掻き混ぜる操作をすることにより、別途スプーンなどを用いずに湯水を攪拌し、抽出対象物の抽出作業を効率的に行うことができる。
【0013】
さらに、抽出対象物を当該湯水に溶かし出した後、第1の基体部の他端をつまみ、持ち上げることにより、別途漉し器を用いることなく、当該湯水から抽出部、及び、抽出部に収納された抽出対象物を引き上げることができる。
【0014】
本発明に係る器具は、上述した構成に加え、第2の部材を有する点に特徴のひとつがある。第2の部材は、管状であって、管状の内部に第1の基体部が挿通されており、挿通された状態で、第1の基体部の外周において可動的に取り付けられ、抽出部を外部に露出可能に覆っている。この構造によると、抽出部は第2の部材によって覆われているから、抽出部、及び、抽出部に収納された抽出対象物を衛生的に保管することができる。
【0015】
また、抽出時には第2の部材を操作して抽出部を外部に露出させ、露出させた状態で、例えば容器に溜めた溶媒(湯水)に第1の基体部の一端を差し込みし、抽出部を当該湯水に浸すだけで、抽出対象物の成分(溶質)を当該湯水に溶かし出すことができる。
【0016】
さらに、当該湯水から引き上げた後、第2の部材を操作して抽出部を被覆させることにより、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部から水分や、水分に残留している抽出対象物の成分が外部に漏出する不具合は生じない。従って、湯水から引き上げた後の液漏れを回避することができる。
【0017】
しかも、抽出部を第2の部材で覆うことにより、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部に塵埃等が付着する不具合は生じないから、抽出袋を当該湯水から一旦引き上げた後、次に使うまでの間、衛生的に保管することができる。その結果、例えば再び湯水に浸して飲用に供することも可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
【0019】
(1)湯水から引き上げた後の液漏れを回避することができる器具を提供することができる。
(2)衛生的に保管することができる器具を提供することができる。
(3)抽出対象物の抽出作業を効率的に行うことができる器具を提供することができる。
【0020】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る器具の斜視図である。
【図2】図1の器具の一部を取り出して示す斜視図である。
【図3】図1の器具の正面断面図である。
【図4】図1の器具の別の状態を示す斜視図である。
【図5】図4の器具の正面断面図である。
【図6】図1乃至図5の器具の使用状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明のもう一つ実施形態に係る器具について一部を拡大して示す正面断面図である。
【図8】本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具の正面図である。
【図9】図8の器具の平面図である。
【図10】図8及び図9の器具の使用状態を示す部分断面図である。
【図11】本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具の斜視図である。
【図12】図1の器具の別の状態を示す斜視図である。
【図13】図11及び図12の器具の内部構造を示す部分断面図である。
【図14】本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具について一部を省略して示す正面図である。
【図15】本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具の部分断面図である。
【図16】図15の器具の別の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1乃至図3の器具は、第1の部材1と、第2の部材2とを含む。第1の部材1(図2参照)は、第1の基体部10と、抽出部17とを有している。
【0023】
第1の基体部10は、断面視、円形状の管状体、筒状体、又は、パイプ状体であって、耐水シート材で構成されている。本明細書において「耐水シート材」とは、基材となる紙の表面を、合成樹脂材料塗料を用いて被膜加工したもの、又は、合成樹脂材料フィルムでコーティングしたものを指し、一般的な耐水紙の他、耐熱紙なども含まれる。第1の基体部10が耐水シート材で構成されることにより、器具の使い捨てが可能となり、材料コストを低減することができる。もっとも、器具を繰り返し使用する場合には、第1の基体部10をポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂材料で構成し、又は、ステンレス等の金属材料などで構成することもできる。
【0024】
第1の基体部10は、第1の中空部100と、第1の開口部11と、一対の膨張部131、132と、一対の凸部141、142とを有している。第1の基体部10は、管状の側壁部分を構成し、管軸方向Lの両側に、それぞれ一端101と、他端102とを有し、管軸方向Lに交差する管径方向Dに外面103と、内面104とを有している。
【0025】
第1の中空部100は、内面104によって画定され、第1の基体部10の内部を管軸方向Lに沿って伸びている。図1及び2の第1の中空部100は、一端101及び他端102でそれぞれ開口しているが、必ずしもこれに限定されない。例えば、後述する液漏れの問題をより完全に回避するべく、第1の中空部100が一端101に開口させない構造を採ることができる。
【0026】
第1の開口部11は、管軸方向Lでみた第1の基体部10の中間部から一端101までの間の部分において、第1の基体部10を外面103から内面104に貫通し、第1の中空部100に開口している。
【0027】
第1の開口部11は、一対であって、第1の基体部10において、管径方向Dの両側に向かい合う関係で形成されている。違う言葉で表現すれば、第1の開口部11は、第1の基体部10を部分的に切り欠くことにより構成されており、第1の基体部10の中間部から一端101までの間には、開口端縁により画定された一対の第1の開口部11、11と、一対の第1の開口部11を除いた条状部分12とが形成されている。
【0028】
一対の膨張部131、132のそれぞれは、一端101及び他端102のそれぞれにおいて、外面103から管径方向Dに突出している。膨張部131、132の突出面と、外面103との間には高低差が生じている。図3を参照すると、一対の膨張部131、132は、第1の基体部10と一体的に形成されているが必ずしもこれに限定されない。例えば、帯状、又は、リング状の耐水シート材を一端101及び他端102に別途積層することにより構成することもできる。
【0029】
一対の凸部141、142のそれぞれは、一端101及び他端102のそれぞれにおいて、外面103から管径方向Dに突出しており、凸部141又は142の突出面と、外面103との間に高低差が生じている。一対の凸部141、142のうち、凸部141は、一端101付近において膨張部131より手前側の条状部分12上に形成されており、凸部142は、他端102付近において膨張部132より手前側に設けられている。
【0030】
抽出部17は、液透過性を有している。図1乃至図3の抽出部17は、濾紙や不織布、メッシュなどの多孔質構造を有するシート材で構成され、一端101において、第1の中空部100に取り付けられ、取り付けられた状態で、一対の第1の開口部11、11から外部に露出している。抽出部17は、袋状であって、シート材の内面によって画定される内部空間170を有している。抽出部17は、内部空間170に収納された抽出対象物4を溶媒(湯水)へ溶かし出す際に、フィルターとして機能する。
【0031】
図1乃至図3からは必ずしも明らかではないが、管軸方向Lでみた抽出部17の長さ寸法L17は、同じく管軸方向Lでみた第1の開口部11の長さ寸法L11よりも長くなっており、抽出部17の両端が内面104と一体化され、固定されている。もっとも、上記構成は、器具が使い捨てされる場合を想定したものである。従って、器具が繰り返し使用される場合には、固定具などを用いることにより、抽出部17を内面104に着脱可能に固定することもできる。
【0032】
また、抽出部17は、湯水(6)に浸した場合、抽出対象物4が湯水(6)を吸収して、差し渡し寸法が増大、又は、膨張するから、抽出部17の外面と、内面104との間には、予め抽出対象物4の膨張量を想定した隙間があることが好ましい。
【0033】
第2の部材2は、第1の基体部10の外面103に取り付けられ、抽出部17を覆っている。即ち、図1乃至図3の器具は、第1の部材1と、第2の部材2との二重筒構造となっている。より詳細に説明すると、第2の部材2は、第2の基体部20を有し、第2の基体部20は、断面視、円形状の管状体、筒状体、又は、パイプ状体であって、第1の基体部10と同様に耐水シート材で構成されている。
【0034】
第2の基体部20は、管状の側壁部分であって、管軸方向Lの両側に、それぞれ一端201と、他端202とを有し、管軸方向Lに交差する管径方向Dに外面203と、内面204とを有している。さらに、第2の基体部20は、第2の中空部200と、一対の凹溝241、242とを有している。第2の中空部200は、内面204によって画定され、第2の基体部20の内部を管軸方向Lに沿って伸び、管軸方向Lの両端で開口している。
【0035】
第2の中空部200には、第1の部材1が挿通されている。即ち、第2の基体部20は内面204でみた最大差し渡し内径寸法(内寸法D2)を有し、第1の基体部10は外面103でみた最大差し渡し外径寸法(外寸法D1)を有し、内寸法D2は外寸法D1よりも大きい関係にある。
【0036】
一対の凹溝241、242のそれぞれは、一端201及び他端202のそれぞれにおいて、内面204にリング状に形成されており、内面204と、一対の凹溝241、242のそれぞれの底面との間に高低差が生じている。
【0037】
一対の凹溝241、242は、一対の凸部141、142と嵌合されることにより、第2の部材2の管軸方向Lに沿った動きを規制するものであって、凹溝241、242の高低差(深さ寸法)は、嵌合される凸部141、142の高低差(突出寸法)に対応して決定される。図1、図3の第2の部材2は、第1の基体部10の一端101側に配置され、配置された状態で、向かい合う凸部141と凹溝241とが凹凸嵌合されていることにより固定されている。
【0038】
第2の部材2は、第2の中空部200に第1の部材1が挿通され、挿通された状態で、第1の基体部10の外面103において可動的に取り付けられ、抽出部17を外部に露出可能に覆っている。具体的に、図1、図3の第2の部材2は、外面103において、管軸方向Lに沿って矢印M1、M2で示す方向にスライド可能に取り付けられ、一端101から他端102にスライドM1させることにより、抽出部17を外部に露出させる。第1の部材1は、管軸方向Lの両端に一対の膨張部131、132を有しているから、第2の部材2のスライドM1操作は、一対の膨張部131、132の間隔L13内がスライド可能な距離となる。
【0039】
また、第1の部材1は、一対の凸部141、142を有しているから、第2の部材2をスライドM1させたとき、他端102の位置で向かい合う凸部142と凹溝242とが凹凸嵌合され、抽出部17を外部に露出させた状態で固定される(図4及び図5参照)。
【0040】
他方、第2の部材2をスライドM2させたとき、一端101の位置で向かい合う凸部141と凹溝2421が凹凸嵌合され、抽出部17を被覆した状態で固定される(図3参照)。
【0041】
図1乃至図5の器具は、抽出対象物4を含む。抽出対象物4は、抽出部17の内部空間170に収納されている。抽出対象物4の具体的な種類は、飲用する物(溶液)に応じて適宜決定することができる。例えば、器具が、お茶やコーヒー、ココアなどの簡易調理器として用いられる場合、抽出対象物4は、紅茶、緑茶、烏龍茶などの各種茶葉、又は、コーヒー粉末、ココア粉末等の飲料用固形粉末である。さらに抽出対象物4としては、上述した物にミルク粉末、砂糖等の調味料を予め混合したものでもよい。
【0042】
また、抽出対象物4が、各種スープ粉末である場合、器具は、インスタント調理器として用いられ、抽出対象物4が、漢方薬や粉末薬剤である場合、器具は、飲み薬の簡易製造器として用いられる。
【0043】
さらに違う観点から見れば、図1乃至図5の器具において、抽出対象物4は、予め1杯分あるいは数杯分ずつに所定の量に計量されて内部空間170に収納されるから、器具は計量器としても機能する。
【0044】
図6は、図1乃至図5の器具の使用状態を示す部分断面図である。図6において、図1乃至図5に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図6の器具7は、第2の部材2をスライド(M1)させることにより抽出部17が外部に露出されており、容器5に溜めた溶媒(湯水)6に抽出部17を所定の時間浸すことにより、内部空間170に収納されている抽出対象物4の溶質(香味成分)が、湯水6に溶かし出される。器具7は、図6の抽出作業後、湯水6から引き上げ、第2の部材2をスライド(M2)させることにより、抽出部17が第2の部材2によって被覆される。
【0045】
図1乃至図6を参照して説明した器具7によると、以下の効果を奏することができる。まず、抽出部17は、袋状であって、液透過性を有するシート材で構成され、第1の基体部10の一端101に取り付けられている。この構造によると、抽出部17に、抽出対象物4を収納した状態で、湯水6に一端101を差し込み、抽出部17を湯水6に浸すだけで、抽出対象物4の香味成分を当該湯水6に溶かし出し、飲用に供することができる。
【0046】
抽出部17は、一端101に取り付けられているから、一端101を湯水6に浸した状態で、他端102をつまんで矢印M3で示す方向に操作することにより、スプーンなどを用いずに湯水6、及び、内部空間170の抽出対象物4を攪拌させることができる。従って、抽出作業の効率が向上する。
【0047】
さらに、抽出部17は、一端101に取り付けられているから、抽出対象物4を湯水6に溶かし出した後、他端102をつまみ、持ち上げることにより、別途漉し器を用いることなく、当該湯水6から抽出部17、及び、抽出部17に収納された抽出対象物4を引き上げることができる。
【0048】
本発明の一実施形態に係る器具7は、第2の部材2を有する点に特徴の一つがある。第2の部材2は、管状であって、第1の基体部10の外面103に取り付けられ、抽出部17を覆っている。この構造によると、器具7が実際に使用されるまでの間、抽出部17及び抽出対象物4を衛生的に保管することができる。
【0049】
さらに、第2の部材2は、外面103において可動的に取り付けられ、抽出部17を外部に露出可能に覆っている。図1乃至図5の第2の部材2は、スライドM1させることにより抽出部17を外部に露出し、スライドM2させることにより抽出部17を被覆する。この構造によると、抽出時には第2の部材2をスライドM1して抽出部17を露出させ、露出させた状態で湯水6に一端101の抽出部17を差し込むだけで、抽出対象物4を当該湯水6に溶かし出すことができる。
【0050】
他方、抽出作業を終了し、一端101の湯水6から引き上げた後、第2の部材2をスライドM2して抽出部17を被覆させることができる。その結果、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部17から水分や、水分に残留している抽出対象物4の成分が外部に漏出する不具合は生じない。従って、湯水6から引き上げた後の液漏れを回避することができる。
【0051】
しかも、湯水6から引き上げた後、第2の部材2をスライドM2して抽出部17を被覆させることにより、抽出部17及び抽出対象物4が衛生的に保管することができる。その結果、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部17に塵埃等が付着する不具合は生じない。従って、抽出部17を当該湯水6から一旦引き上げた後、次に使うまでの間、衛生的に保管することができる。その結果、例えば再び湯水に浸して飲用に供することも可能になる。
【0052】
第2の部材2のスライドM1、M2操作について、第1の部材1は、管軸方向Lの両端に一対の膨張部131、132を有しているから、一対の膨張部131、132の間隔L13内によってスライド可能な距離が予め規制されている。従って、第2の部材2のスライドM1、M2操作を円滑に行うことができる。
【0053】
しかも、第1の部材1は一対の凸部141、142を有し、第2の部材2は一対の凹溝241、242を有している。この構造によると、第2の部材2をスライドM1させたとき、一端101の位置で向かい合う凸部141と凹溝241とが凹凸嵌合され、第2の部材2が外面103上に固定される。この構造によると、スライドM1の下げ止まりが明確になると共に、外部からの圧力により第2の部材2が不正移動する不具合は生じないから、保管中にスライドM2し、抽出部17が外部に露出する不具合は生じない。
【0054】
他方、第2の部材2をスライドM2させたとき、他端102の位置で向かい合う凸部142と凹溝242とが凹凸嵌合され、第2の部材2が外面103上に固定される。この構造によると、スライドM2の上げ止まりが明確になると共に、外部からの圧力により第2の部材2が不正移動する不具合は生じないから、抽出作業中にスライドM1し、抽出部17が被覆される不具合は生じない。
【0055】
上述したように、図1乃至図6を参照して説明した器具7によると、従来のティーパックを用いた場合の問題点を解決することができる。即ち、従来のティーパックの抽出袋は、湯水から引き上げられた状態で多量の水分を含んでいる。従って、ティーパックを、例えばテーブル上にそのままおくと、抽出袋から染み出した水分や、水分に残留している香味成分により、テーブル上が汚れてしまう問題が生じる。上述した問題を回避するためには、抽出袋を当該湯水から引き上げた後、直ちにゴミ箱などに捨てなければならず、非常に面倒である。
【0056】
また、ティーパックを用いた場合のもう1つの問題点として、再利用しにくいことが知られている。即ち、ティーパックは、抽出袋に収納される茶葉の量を増やすことにより、複数回、繰り返して使用することも可能である。ただし、ティーパックを繰り返し使用するには、抽出袋を当該湯水から一旦引き上げた後、次に使うまでの間、衛生的に保管する必要があるから、非常に面倒である。
【0057】
これに対して、図1乃至図6の器具7では、湯水6から引き上げた後、第2の部材2をスライドM1して抽出部17を被覆させることにより、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部17から水分や、水分に残留している抽出対象物4の成分が第2の部材2で遮られ、外部に漏出する不具合は生じない。従って、湯水6から引き上げた後の液漏れを回避することができ、当該湯水6から引き上げた後、直ちにゴミ箱などに捨てにいく必要はない。また、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部17に塵埃等が付着する不具合は生じない。従って、再び湯水6に浸して飲用に供することができる。
【0058】
図7は、本発明のもう一つ実施形態に係る器具について一部を拡大して示す正面断面図である。図7において、図1乃至図6に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図7の器具と、図1乃至図6の器具(7)とは、抽出部17の構造が異なる以外は、共通の基本的構成を有している。以下、相違点を中心に説明する。
【0059】
図7の器具において、抽出部17の内部空間170は、隔壁171によって複数の収納空間172〜174に画定されている。隔壁171は、紙や不織布、メッシュなどの多孔質構造を有するシート材で構成され、好ましくは抽出部17を構成するシート材と一体的に構成されている。複数の収納空間172〜174のそれぞれには、同種、又は、異種の抽出対象物(4)を収納することができる。
【0060】
さらに、図7の器具は、凸部15と、凸部16を有している。凸部15、16は、管軸方向Lでみた外面103の点P1、P2に間隔を隔てて突設されている。
【0061】
第2の部材2のスライドM1、M2操作について、例えば、第2の部材2のスライドM1操作した場合、凹溝242はP1の位置で凸部15と嵌合され、嵌合された状態で、第2の部材2の一端がP3まで移動し、第3の収納空間174が第2の部材2によって被覆される。
【0062】
さらに、第2の部材2のスライドM1操作した場合、凹溝242は凸部15との嵌合が解除され、次のP2の位置で凸部16と嵌合されることにより、第2の部材2の一端がP4まで移動し、第2の、第3の収納空間174が第2の部材2によって被覆する。
【0063】
即ち、図7の器具は、複数の収納空間172〜174の位置に応じて凸部15、16が突設されており、第2の部材2を管軸方向Lに沿って段階的にスライドM1させ、スライドさせた位置で掛けとめることができる。なお、逆のスライドM2操作をすることにより、抽出部17を段階的に外部に露出しうることは明白である。
【0064】
図7の実施形態において、複数の収納空間172〜174のそれぞれに、同種の抽出対象物(4)を収納した場合、抽出効率を向上することができる。即ち、スティック状器具に抽出対象物(4)が収納されている場合、抽出対象物(4)は重力に従い一端101に偏って塊状となり、湯水(6)に浸した時に攪拌させ難いことがある。図7の実施形態では、抽出対象物(4)を収納空間172〜174に分けて収納することができるから、重力による抽出対象物(4)の偏りを回避することができる。しかも、湯水(6)に浸したとき、抽出対象物(4)はそれぞれの収納空間172〜174内で攪拌されるから、抽出効率を向上することができる。
【0065】
他方、複数の収納空間172〜174のそれぞれに、異種の抽出対象物(4)を収納した場合、作成しうる溶液のバリエーションが増加し、使い勝手が良くなる。例えば、第1の収納空間172にコーヒー粉末を収納し、第2の収納空間173に砂糖を収納し、第3の収納空間174にミルク粉末を収納することにより、予め1杯分ずつに計量されたコーヒーの簡易調理器として器具を用いることができる。
【0066】
また、抽出部17を湯水(6)に浸す位置を、収納空間172〜174の何れかに設定することにより、例えば、コーヒーについて、砂糖の有無、ミルクの有無を使用者自ら決定して抽出することができる。しかも、図7の実施形態では、収納空間172〜174の位置に応じて第2の部材2のスライドM1位置を段階的に調節することができるから、例えば、砂糖有り、ミルク無しのコーヒーを飲みたい場合には、凹溝242をP1の位置で凸部15と嵌合させ、第3の収納空間174を第2の部材2で被覆することにより、第1の収納空間172のコーヒー粉末と、第2の収納空間173の砂糖のみを湯水(6)に浸して抽出させることができる。
【0067】
図8は本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具7の正面図、図9は図8の器具7の平面図である。また、図10は、図8及び図9の器具7の使用状態を示す部分断面図である。図8乃至図10において、図1乃至図7に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0068】
図8乃至図10の器具7は、掛止部18を有する以外は、図1乃至図7の器具(7)と共通の基本的構成を有している。以下、相違点を中心に説明する。
【0069】
まず、図8及び図9の器具7を構成する掛止部18は、第1の部材1の外面103に突設されている。より詳細に説明すると、掛止部18は、基体部180と、開口部181とを有している。基体部180は、フック状、又は、鉤状であって、外面103において管軸方向Lに沿って突設されている。開口部181は、基体部180において、抽出部17の側に開口し、開口部分を構成する先端面と、第2の部材2の外面203との間に間隔が形成されている。
【0070】
第2の部材20は、スリット25を有し、スリット25は、第2の部材2の外面203から内面204に貫通し、外面203において、管軸方向Lの他端202から中間で延びている。第1の部材1の掛止部18は、スリット25に案内され、第2の部材2の外面203に突出している。第2の部材20は、掛止部18がスリット25に案内された状態で、管軸方向LにスライドM1、M2可能に取り付けられている。
【0071】
次に、図10を参照して、図8及び図9の器具7の利点を説明する。図10に示すように、器具7が掛止部18を有している構造によると、抽出作業を効率的に行うことができる。即ち、器具7が、お茶やコーヒー、ココアなどの簡易調理器として用いられる場合、湯水6を溜める容器5の容量は様々であり、器具7の長さ寸法よりの底の深い容器5に用いた場合、器具7が容器5内の湯水6に沈んでしまう問題が生じる。
【0072】
これに対し、図8乃至図9の器具7は、掛止部18を有しているから、図10に示すように容器5の側壁51に器具7を掛け止めることにより、器具7の水没を回避することができる。
【0073】
また、器具7が掛止部18を有する構造によると、器具7を容器5に取り付たまま、抽出が終わるまで放置することができるから、例えば、飲食店において多数の客にコーヒーを提供する場合や、一般家庭において多数の来客にコーヒーを提供する場合に、抽出作業を効率的に行うことができる。
【0074】
図8及び図9の器具を構成する掛止部18は、第1の部材1の外面103に突設され、スリット25を通じて第2の部材2の外面203に突出しているから、第2の部材2をスライドM1又はM2させるとき、掛止部18がガイド溝として機能する。また、第2の部材2をスライドM2させるとき、掛止部18の基部がスリット25の一端にぶつかることにより上げ止まりとして機能する。従って、第2の部材2のスライドM1又はM2操作を円滑に行うことができる。
【0075】
また、掛止部18が、スリット25を通じて外面203に突出している構造によると、第2の部材2のスライドM1又はM2操作の有無にかかわらず、器具7における掛止部18の位置が固定されるから、例えば、筒体などに差して容易に保管することができる。
【0076】
他方、掛止部18は器具7を容器5に取り付けるためのものであるから、必ずしも第1の部材1の外面103上に設けられる必要はない。例えば、掛止部18を、第2の部材2の外面203上に直接突設することもできる。掛止部18を、外面203上に突設する構造によると、スリット25を設ける必要がなくなり、部品点数が少なくなる分、製造コストを低減することができる。
【0077】
また、掛止部18を、外面203上に突設する構造によると、掛止部18を保持して第2の部材2をスライドM1又はM2操作させることができる。従って、第2の部材2のスライド操作が容易になる。
【0078】
しかも、掛止部18が固定されているかぎり、第2の部材20のスライドM1又はM2操作が規制されるから、例えば、容器5の側壁51に器具7を掛け止めた状態で、第2の部材2が不正にスライドすることはない。従って、抽出作業中に第2の部材2が不正移動し、抽出部17が覆われる不具合は生じない。
【0079】
図11は本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具の斜視図、図12は図1の器具の別の状態を示す斜視図、図13は図11及び図12の器具の内部構造を示す部分断面図である。図11乃至図13において、図1乃至図10に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図11乃至図13の器具と、図1乃至図10の器具とは、第2の部材2の構造が異なる以外は、共通の基本的構成を有している。以下、相違点を中心に説明する。
【0080】
図11乃至図13の器具において、第2の部材2は、第2の開口部26を有し、第1の基体部10の外面103において、第1の開口部11から外部に露出する抽出部17に対応する領域に取り付けられ、取り付けられた状態で抽出部17を覆っている。第2の開口部26は、第2の基体部20の側壁を貫通し、第2の中空部200に開口している。
【0081】
第2の部材2は凸部27を有し、第1の部材1は凹溝19を有している。凸部27は、第2の基体部20の他端202側において、内面204から管径方向Dに突出しており、内面204と、凸部27の突出面との間に高低差が生じている。他方、凹溝19は、管軸方向Lでみた第1の基体部10の中間部分において、外面103にリング状に形成されており、外面103と、凹溝27の底面との間に高低差が生じている。凹溝19は、凸部27と嵌合されることにより、管軸方向Lでみた第2の部材2の動きを規制するものであって、凹溝19のそれぞれの高低差(深さ寸法)は、凸部27のそれぞれの高低差(突出寸法)に対応して決定される。
【0082】
第2の部材2は、第1の基体部10の外面103において、周方向Cに回転可能に取り付けられ、第2の部材2を周方向Cに回転させ、第2の開口部26が抽出部17と重なる位置で、抽出部17を外部に露出させる。図11の実施形態では、第2の開口部26が第1の開口部11と重なる位置にあり、抽出部17が第2の開口部26を通じて外部に露出している。
【0083】
他方、図12の実施形態では、図11の状態から第2の部材2を周方向Cに回転C1させることにより、図13の一点鎖線で示す第2の開口部26が、条状部分12と重なる位置に配置されている。違う言葉で表現すれば、図12の状態では、抽出部17は外部に露出されないこととなる。
【0084】
図11乃至図13の実施形態によっても、図1乃至図10を参照して説明した、器具の利点を全て奏することができる。さらに、図11乃至図13の実施形態では、第2の部材2を周方向Cに回転させる操作により、抽出部17を第2の開口部26を通じて外部に露出させ、又は、抽出部17を第2の基体部20の側壁部分によって被覆させる。この構成によると、図1乃至図10を参照して説明したスライドM1又はM2操作により抽出部17を露出させる実施形態と比較して、外部からの圧力により、第2の開口部26が不正に移動する危険を回避することができる。従って、例えば、筒体などに差して容易に保管することができる。
【0085】
図14は、本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具について一部を省略して示す正面図である。図14において、図1乃至図13に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図14の器具と、図1乃至図13の器具とは、抽出部17の設置数および配置が異なる以外は、共通の基本的構成を有している。以下、相違点を中心に説明する。
【0086】
図14の実施形態において、第1の部材1は2つの抽出部17、17を有し、2つの抽出部17、17は、第1の基体部10の管軸方向Lの両端に取り付けられている。2つの抽出部17、17のそれぞれには、点線で示す第2の部材2が取り付けられている。図14の第2の部材2は、図11乃至図13の第2の部材2と同じものが用いられている。もっとも、図14の実施形態において、図1乃至図13の第2の部材2、即ち、管軸方向LにスライドM1又はM2操作させるものを用いることができる。
【0087】
図14の実施形態によっても、図1乃至図13を参照して説明した、器具の利点を全て奏することができる。さらに、図14の実施形態では、2つの抽出部17、17を有するから、例えば、2つの抽出部17、17のそれぞれに異種の抽出対象物(4)を収納した場合、作成しうる溶液のバリエーションが増加し、使い勝手が良くなる。例えば、一方の抽出部17にコーヒー粉末を収納し、他方の抽出部17に砂糖を収納することにより、コーヒーについて、砂糖の有無を使用者自ら決定して飲用に供することができる。
【0088】
図15は、本発明のさらにもう一つの実施形態に係る器具の部分断面図、図16は図15の器具の別の状態を示す斜視図である。図15及び図16において、図1乃至図14に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図15及び図16の器具は、第3の部材3を有している点で、図1乃至図13の器具とは異なる。以下、相違点を中心に説明する。
【0089】
図15及び図16の器具は、第1の部材1と、第2の部材2と、第3の部材3とを含む。第1の部材1は、凸部14を有している。凸部14は、リング状であって、管軸方向Lでみた第1の基体部10の他端102付近の外面(103)に突設されている。
【0090】
第2の部材2は、凸部27と、凹溝28とを有している。凸部27は、リング状であって、管軸方向Lでみた第2の基体部20の他端202付近において、外面203から管径方向Dに突出しており外面203と、凸部27の突出面との間に高低差が生じている。凹溝28は、一端201付近において、内面204にリング状に形成されており、内面204と、凹溝28の底面との間に高低差が生じている。凹溝28は、凸部14と嵌合されることにより、第2の部材2の動きを規制するものであって、凹溝28のそれぞれの高低差(深さ寸法)は、凸部14のそれぞれの高低差(突出寸法)に対応して決定される。
【0091】
第3の部材3は、第3の基体部30を有し、第2の中空部200に挿通され、挿通された状態で、第2の基体部20の外周において可動的に取り付けられ、抽出部17を外部に露出可能に覆っている。即ち、図15及び図16の器具は、第1の部材1と、第2の部材2と、第3の部材3の三重筒構造となっている。より詳細に説明すると、第3の部材3は、第3の基体部30を有し、第3の基体部30は、断面視、円形状の管状体、筒状体、又は、パイプ状体であって、第1、第2の基体部10、20と同様に耐水シート材で構成されている。
【0092】
第3の基体部30は、管状の側壁部分であって、管軸方向Lの両側に、それぞれ一端301と、他端302とを有し、管径方向Dに外面303と、内面304とを有している。さらに、第3の基体部30は、第3の中空部300と、凹溝34とを有している。第3の中空部300は、内面304によって画定され、第2の基体部20の内部を管軸方向Lに沿って伸び、管軸方向Lの両端で開口している。
凹溝34は、一端301側において、内面304にリング状に形成されており、内面304と、凹溝34の底面との間に高低差が生じている。凹溝34は、凸部27と嵌合されることにより、第2の部材2の動きを規制するものであって、凹溝34の高低差(深さ寸法)は、凸部28のそれぞれの高低差(突出寸法)に対応して決定される。
【0093】
第3の中空部300には、第2の部材2が挿通されている。第3の基体部30は内面304でみた最大差し渡し内径寸法(内寸法D3)を有し、第2の基体部20は外面203でみた最大差し渡し外径寸法(外寸法D20)を有し、内寸法D3は外寸法D20よりも大きい関係にある。第1〜第3の基体部10〜30において、第1の基体部10の外寸法D1は第2の基体部20の内寸法D2より小さく、第2の基体部20の外寸法D20は第3の基体部30の内寸法D3より小さい関係となっている。即ち、第1〜第3の部材1〜3は、外側に向かって管径が段々に大きくなっており、入れ子状に組み合わされている。
【0094】
図15において、第1〜第3の基体部10〜30は、管軸方向Lでみて同じ長さ寸法を有している。
【0095】
図16の実施形態は、図15の状態から、第1〜第3の部材1〜3を順次スライドM1させることにより、抽出部17を外部に露出させた状態を示している。第1の部材1は他端102に凸部14を有し、第2の部材2は一端201に凹溝28を有している。従って、第2の部材2を管軸方向Lに沿ってスライドM1させたとき、第2の部材2の最大引き出し位置P6で凸部14と、凹溝28が凹凸嵌合され、固定される。
【0096】
さらに、第2の部材2は他端202に凸部27を有し、第3の部材3は一端301に凹溝34を有している。従って、第3の部材3を管軸方向Lに沿ってスライドM1させたとき、第3の部材3の最大引き出し位置P5で凸部27と、凹溝34が凹凸嵌合され、固定される。なお、逆のスライドM2操作をすることにより、図15に示した状態に戻しうることは明白である。
【0097】
図15及び図16の実施形態によっても、図1乃至図14を参照して説明した、器具の利点を全て奏することができる。例えば、第1の部材1を構成する抽出部17は、第2、第3の部材2、3を管軸方向Lに順次スライドM1操作することにより外部に露出させることができる。従って、抽出部17に、抽出対象物(4)を収納した状態で、湯水(6)に第1の基体部10の一端101を差し込みし、抽出部17を当該湯水(6)に浸すだけで、抽出対象物(4)を当該湯水(6)に溶かし出すことができる。
【0098】
また、第1の部材1を構成する抽出部17は、第2、第3の部材2、3を管軸方向Lに順次スライドM2操作して被覆させることができる。従って、例えばテーブル上にそのまま放置しても、抽出部17から水分や、水分に残留している抽出対象物(4)の成分が外部に漏出する不具合は生じない。よって、湯水(6)から引き上げた後の液漏れを回避することができる。
【0099】
さらに、図15及び図16の実施形態では、第1〜第3の部材1〜3は、管径方向Dでみた外側に向かって管径が段々に大きくなっており、入れ子状に組み合わされているから、第2、第3の部材2、3を管軸方向LにスライドM2操作して抽出部17を被覆させた状態(図15)で、長さ寸法が、第1〜第3の基体部10〜30それぞれの長さ寸法と同程度に短くなり、省スペース化が図られる。従って、携帯性が向上するとともに、保管効率が向上する。
【0100】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。以下、変形態様について説明する。
【0101】
図1乃至図16の実施形態において、第1〜第3の部材1〜3は、断面視、楕円形状、三角形形状、四角形形状、さらには多角形形状とすることができる。この構造によると、抽出部17に収納される抽出対象物に応じて器具の断面視形状を設定することができる。例えば、コーヒー用器具の場合は断面視円形状とし、紅茶用器具の場合は断面視三角形形状とし、緑茶用器具の場合は断面視四角形形状とする等と使い分けることにより、冠婚葬祭向けのギフトセット用に複数の器具を販売する場合の美観を向上させ、又は、飲食店などのドリンクバーにおいて複数の器具を併設する場合の取り違えを防ぐことができる。
【0102】
また、抽出部17の長さ寸法(L17)や径寸法は、抽出対象物の種類に応じて適宜調節することができる。例えば、一杯分のコーヒー粉末の収納量は8g程度であり、ココアに用いられる場合に一杯分のココア粉末の収納量は22g程度であり、適量とされる抽出対象物4の収納量は異なるから、第1の部材1を構成する抽出部17の長さ寸法(L17)や、径寸法は抽出対象物4の性質に応じて適宜設定される。
【0103】
さらに、図1乃至図6に係る実施形態のスライド動作M1、M2と、図11乃至図13に係る実施形態の回転動作C1とは、必ずしも択一的な関係にあるものではなく、1つの器具上で同時に行うよう構成することもできる。
【符号の説明】
【0104】
1 第1の部材
10 第1の基体部
11 第1の開口部
17 抽出部
18 掛止部
2 第2の部材
20 第2の基体部
26 第2の開口部
4 抽出対象物
5 容器
7 器具
L 管軸方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と、第2の部材とを含む器具であって、
前記第1の部材は、第1の基体部と、抽出部とを有しており、
前記第1の基体部は、管状であり、
前記抽出部は、袋状であって、液透過性を有するシート材で構成され、前記第1の基体部の管軸方向の少なくとも一端に取り付けられており、
前記第2の部材は、管状であって、管状の内部に前記第1の部材が挿通され、前記挿通された状態で、前記第1の基体部の外周において可動的に取り付けられ、前記抽出部を外部に露出可能に覆っている、
器具。
【請求項2】
請求項1に記載された器具であって、
前記第2の部材は、前記管軸方向にスライド可能に取り付けられ、前記管軸方向の一端から他端にスライドさせることにより、前記抽出部を外部に露出させる、
器具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された器具であって、
前記第2の部材は、第2の基体部と、第2の開口部とを有しており、
前記第2の基体部は、管状であり、
前記第2の開口部は、前記第2の基体部の側面を貫通しており、
前記第2の部材は、前記管軸の周りを回転可能に取り付けられ、前記管軸の周りを回転させ、前記第2の開口部が前記抽出部と重なった時に、前記抽出部を外部に露出させる、
器具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された器具であって、さらに掛止部を有しており、
前記掛止部は、前記第1の部材の外面に突設されている、
器具。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載された器具であって、
前記抽出部は、隔壁によって画定された複数の収納空間を有している、
器具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載された器具であって、
前記抽出部は、前記第1の基体部の管軸方向の両端に取り付けられている、
器具。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載された器具であって、さらに前記抽出対象物を含み、
前記抽出対象物は、茶葉、コーヒー粉末、ココア粉末、ミルク粉末、砂糖、又は、それらの混合物であって、前記抽出部に収納されている、
器具。
【請求項1】
第1の部材と、第2の部材とを含む器具であって、
前記第1の部材は、第1の基体部と、抽出部とを有しており、
前記第1の基体部は、管状であり、
前記抽出部は、袋状であって、液透過性を有するシート材で構成され、前記第1の基体部の管軸方向の少なくとも一端に取り付けられており、
前記第2の部材は、管状であって、管状の内部に前記第1の部材が挿通され、前記挿通された状態で、前記第1の基体部の外周において可動的に取り付けられ、前記抽出部を外部に露出可能に覆っている、
器具。
【請求項2】
請求項1に記載された器具であって、
前記第2の部材は、前記管軸方向にスライド可能に取り付けられ、前記管軸方向の一端から他端にスライドさせることにより、前記抽出部を外部に露出させる、
器具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された器具であって、
前記第2の部材は、第2の基体部と、第2の開口部とを有しており、
前記第2の基体部は、管状であり、
前記第2の開口部は、前記第2の基体部の側面を貫通しており、
前記第2の部材は、前記管軸の周りを回転可能に取り付けられ、前記管軸の周りを回転させ、前記第2の開口部が前記抽出部と重なった時に、前記抽出部を外部に露出させる、
器具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された器具であって、さらに掛止部を有しており、
前記掛止部は、前記第1の部材の外面に突設されている、
器具。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載された器具であって、
前記抽出部は、隔壁によって画定された複数の収納空間を有している、
器具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載された器具であって、
前記抽出部は、前記第1の基体部の管軸方向の両端に取り付けられている、
器具。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載された器具であって、さらに前記抽出対象物を含み、
前記抽出対象物は、茶葉、コーヒー粉末、ココア粉末、ミルク粉末、砂糖、又は、それらの混合物であって、前記抽出部に収納されている、
器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−188927(P2011−188927A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56372(P2010−56372)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(510071219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(510071219)
【Fターム(参考)】
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