説明

器用さ獲得装置

【課題】従来のノイマン型コンピュータは高度な工夫を必要とする処理は不得手である。高度な工夫に対応するには外部から人間がプログラムを書き換えるか、新たな設計を行って、新たな機能を追加する必要がある。新たな機能を追加する度に、開発コストがかさむという問題がある。このような問題点を解決すべく、人間が持つ特徴の一つである器用さ、と同様の機能を得ることができる、器用さ獲得装置を提供する。
【解決手段】器用さ獲得機能を可能とするため、処理するデータ全てに快・不快の指標値を付与して、デジタルデータ化してなり、処理要求を満たす学習データには、より大きい(高い、上位)快指標値を付与し直してデータ保存(記憶)してなり、最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して、出力装置に指令を出す自律型学習システムとして動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間が持つ特徴の一つである器用さ、と同様の機能を、人工的な装置で提供する自律型学習システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータの発展に依り、大規模なデータを使用しての演算性能が飛躍的に向上してきている。指定時間内に必ず処理を行うリアルタイム処理が可能となり、将棋やチェスのコンピュータソフトが、人間を相手に、勝利する程になってきている。しかし、高度な工夫を必要とする処理は依然として不得手である。高度な工夫に対応するには外部から人間がプログラムを書き換えるか、新たな設計を行って、新たな機能を追加する必要があった。新たな機能を追加する度に、開発コストがかさむという問題がある。前記問題を解決することが望まれている。
【0003】
これまでのコンピュータの標準的な構造は、ノイマン型と言われ、一般的に入力装置、記憶装置、制御装置、演算装置、出力装置を備えることとされている。論理演算による情報の処理が目的となっている。計算可能な問題については、論理演算で処理可能である。
【0004】
前記ノイマン型コンピュータにおいては、膨大な処理を効率的に行う為に、分散処理ソフトが提供されてきている。前記分散処理ソフトは、作業を分担し、演算処理を行い、時間短縮することを目的としている。分散処理を受け持った個々のコンピュータは、演算負荷を軽減する役割を持って動作する。
【0005】
通信技術が進歩したことにより、膨大なデータを処理する為に、複数のコンピュータを1台のコンピュータであるかのように使用する、通信ネットワークを活用したコンピュータクラスタ、地理的に分散したコンピュータ間でのグリッドコンピューティングが登場している。さらに、プログラム上でプログラムを動かす仮想化技術が進み、ネットワーク上の仮想環境で動作するクラウドコンピューティングやサーバー仮想化等の仮想化テクノロジーも注目を集めている。しかし、ノイマン型コンピュータであり、高度な工夫を必要とする処理は依然として不得手である。高度な工夫に対応するには外部から人間がプログラムを書き換えるか、新たな設計を行って、新たな機能を追加する必要がある。
【0006】
図2は従来のノイマン型コンピュータの一例を示すブロック図である。1は入力装置、2は記憶装置、3は制御装置、4は演算装置、5は出力装置である。
【0007】
図2に例示のように従来のノイマン型コンピュータは記憶装置にプログラムを読み込む内蔵方式で、プログラムの書き換えや入れ替えは容易にできる。制御装置の役割は次に実行する命令を記憶装置から読みだすことである。
【0008】
先行技術文献について本願発明と対比すると、特許文献1には人型人工知能システムについて提案がされている。細胞と同等の情報記憶及び伝達機能の有した人工頭脳モジュールを多次元的にネットワークで結んだ装置を製作して、情報処理を各人工頭脳モジュールに分散させる事で、情報の量に検索時間が依存しない、特定情報から関連した情報が検索可能である超並列型コンピュータシステムを構築した後、情報処理の結果を蓄積情報にフィードバックすることによって自己学習させ、人工頭脳システムの機能が一定のレベルに達する毎に、基本処理系を順次追加していき、多岐の分野に渡って自動的に問題解決が行えるようにしていくとしている。特許文献1に記載の人工頭脳システムは3次元接続、多段のブロードキャスト通信、蓄えるべき情報の性質は書き換え回数や情報維持の堅牢性、アクセス時間、優先順位、役割等が主な特徴としている。本願発明の、処理する全てのデータに快・不快指標値を付与して、デジタル情報化して、シミュレーション専用機能、記憶機能、指令機能、情報整理・統合機能、リアルタイム補正機能等を各々独立して形体を設けてなり、協調的に動作学習させることで、快指標値の最も高いケースを動作モデルとして記憶して、出力装置に指令を出すことで器用さを獲得する、器用さ獲得装置とは異なる。また、本願発明の様な快・不快指標値を付与して動作学習させる言及は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−123052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のノイマン型コンピュータは高度な工夫を必要とする処理は不得手である。高度な工夫に対応するには外部から人間がプログラムを書き換えるか、新たな設計を行って、新たな機能を追加する必要がある。新たな機能を追加する度に、開発コストがかさむという問題がある。
【0011】
本発明はこのような問題点を解決すべく為されたものであり、人間が持つ特徴の一つである器用さ、と同様の機能を得ることができる、器用さ獲得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は人工的に器用さ獲得機能を可能とするため、各データについて、目的達成できる度がどの程度かを、個別データ毎に持たせることを特徴とする。目標達成できる指標について、快と定義し、前記快指標は指標値を設けてなり、目的達成できる度を階層化してなる。前記指標値を比較判定出来るように設けてなる。前記快指標とは逆の、目的達成出来ない度は、不快と定義する。
【0013】
処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して、デジタルデータ化してなり、処理要求を満たす学習データには、より大きい(高い、上位)快指標値を付与し直してデータ保存(記憶)してなり、最も大きい快指標値を持つデータを使用して出力装置に指令を出す自律型学習システムとして動作する。機能として、シミュレーション機能、情報選択機能、リアルタイム補正機能、記憶機能を設けてなる形体で、デジタル化された情報を整理・統合し、指令することを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、請求項2、請求項3の器用さ獲得装置によれば、高度な工夫を必要とする処理において、作業時間短縮を実現できる。繰り返しの作業でも、総作業時間を短縮することができ、結果として、産業生産性を高めることが出来る。
本発明を使用することで、1回の学習動作で器用さが改善し、さらに何回かの学習動作でさらに器用さが改善する。前記改善された動作を記憶しておくことで、長い間練習しなくても上手に動作を遂行出来る。このようにして、器用さを獲得できる。
脳損傷者の動作を補助する装置への活用も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明、器用さ獲得装置の一つの実施例で、請求項1、請求項2、請求項3の例を示すブロック図である。
【図2】コンピュータの従来例を示すブロック図である。
【図3】本発明、器用さ獲得装置の一つの実施例で、請求項1、請求項2、請求項3で設けてなる快・不快指標の階層例を示す図である。
【図4】本発明、器用さ獲得装置の一つの適用例で、電線と圧着端子を正しく挿入終えた状態図である。
【図5】不良電線の一つの実施例で、電線の撚り線の先端が開いて曲がっている図である。
【図6】本発明、器用さ獲得装置の一つの適用例で、先端が開いて曲がっている前記図5の電線を、器用さ獲得装置を使用して、圧着端子に挿入できるように、工夫して動作させた状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
シミュレーションや実動作学習で動作方法を変えられるようにするには、器用さを生みだす装置部分に、変化する性質、を持たせる必要がある。また、運動は時間軸上で起こり、動作順序や動作タイミング等の時間的な調節が必要である。本発明は、処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して、デジタルデータ化してなり、処理要求(目的)を満たす学習データには、より大きい(高い、上位)快指標値を付与し直して、データ保存(記憶)してなり、最も大きい快指標値を持つデータを使用して出力装置に指令を出す自律型学習システムを特徴とする。快・不快の指標値は、快指標値をxとし、不快指標値をyとし、あらかじめ任意に設けた定数をCとすると、式x+y=Cが成り立ち、前記快指標値xと前記不快指標値yとは、二律背反的関係にあることが好適である。前記式において、例えばCをあらかじめ5として、xを3とすると、yは2となる。これは快指標が不快指標を上回っている、ことを意味している。この定数Cは本システム全体で共有するのが、好適である。快・不快指標値を保存する配列は、図3の様にピラミッド形とし、学習した結果を前記快・不快指標値を使用して、レベル(階層)化して、記憶蓄積し、前記ピラミッド形配列のレベルの高い(前記快指標値が大きい)階層側の情報から参照することで、次回の動作からは、わずかの学習量で、うまく動作出来るようになることを特徴とする。
【0017】
入力装置は人間やセンサーからの情報を受けつけて、制御装置や記憶装置にその内容を伝える装置である。使用するセンサーの種類としては、温度、湿度、加速度、光、赤外線、磁気、圧力、歪、CO2、煙、人感知、位置、近接、照度、体温、塵埃、各種ガス、各種化学物質検知等があり、選択的に利用するのが好適である。
【0018】
シミュレーションは1台にさせても良く、または複数機器(例えば3台のシミュレーション機器)にシミュレーション指示を出して、シミュレーション結果を比較して、統括シミュレーション処理装置を設けて、経由して、次の指令を出す態様でもよい。これは精度、緊急度、習熟度の要求レベルによって選択するようにする。人が指示してもよく、あらかじめ、プログラミングしておいても良い。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。図1は、処理するデータ全てに、快・不快指標値を付与する装置を設けてなる、器用さ獲得装置の一つの実施例である。従来のノイマン型コンピュータの5大機能である入力装置1と、記憶装置2と、制御装置3と、演算装置4と、出力装置5に加えて、新たに快・不快指標値付与専用処理装置6と、シミュレーション専用処理装置7と、リアルタイム補正専用処理装置8と、ガイドライン専用処理装置9と、動作手順専用処理装置10と、センサー情報専用処理装置11を設けている。装置間の各信号線は、単線の場合は割り込み要求信号を出す必要があり、処理の遅延が多く発生してしまう為に、複数経路での専用線による双方向通信を行うことにより、処理の遅延防止を図る。快・不快指標値付与専用処理装置6は、処理するデータ全てに快・不快指標値を付与したり、読み取って、他の装置に伝える役割を持つ。シミュレーション専用処理装置7は、学習効果を高めるため、制御装置3とは別に設けて、並列処理を行う。リアルタイム補正専用処理装置8は、制御装置3から出力装置5に指令が出たら、他の装置と協調して、リアルタイムでの動作補正指示を出す。ガイドライン専用処理装置9は望ましい基準や目安をあらかじめ設定しておき、異常値等を検出したら、即時の動作インターロック指令を出す。動作手順専用処理装置10は、シミュレーションや動作学習の結果を基に、快指標値が高くなるように、動作モデルを組み上げる役割を持つ。センサー情報専用処理装置11は、シミュレーションや動作学習、リアルタイムでの動作補正等に必要な空間情報、状態情報等を収集する役割を持つ。
【0020】
このような、快・不快指標値付与機能を設けてなる器用さ獲得装置によれば、多くの装置群に分かれながらも、全体を1つのシステムとして、各装置が互いに協調し、同期を取りながら、器用さを獲得し、目的を達成できる。
【0021】
本発明の器用さ獲得装置を使用して目的を達成する例を次に示す。電線を圧着端子に挿入する場合、正しく挿入終えた状態は図4である。これを人ではなく、ロボットに実施させる場合、前記図4の状態が目的になる。前記電線の心線が真っ直ぐの場合は、特に不都合は無く、容易に挿入できる。しかし、図5の様に、撚り線の先端がわずかに開いている場合は、前記電線を前記圧着端子に、単純に差し込んでも、前記撚り線の先端が前記圧着端子の穴形より大きい為に、前記電線が前記圧着端子入り口に当たって止まり、図4の様には、正しく挿入できない。本発明の器用さ獲得装置を使用すると、あらゆる空間情報や状態情報、単位系から選択的に学習することで、解決へ導くことができる。具体的には、センサー情報専用処理装置11で前記電線と前記圧着端子を認識し、制御装置3で挿入すると判断すると、動作手順専用処理装置10が動作をプログラムして、制御装置3にその実行を指示する。制御装置3は挿入動作を行う為に、出力装置5に動作指令を出す。各装置の連携により、前記電線を前記圧着端子に向けて、1次元で動かすことから始め、出来ないと判定したら、2次元の動作へ高度化し、それでも出来ないと判定すると、さらに3次元へ高度化して学習を行う。最終的に、前記電線を前記圧着端子に向けて、斜めに傾けて前進し、前記電線が圧着端子の入り口に触れる位置で、一旦、停止して、前記電線の中心軸と前記圧着端子の中心軸が傾斜を保ったままの状態で、前記電線を回転させる。前記圧着端子の入り口部分がガイドの役割を生じることに依って、先端がわずかに開いていた撚り線は、図6の様に、前記圧着端子の入り口径より小さく整えられる。然る後に、前記電線の中心軸を前記圧着端子の中心軸に重なるように、傾きを戻す。前記電線を前記圧着端子へ、中心軸の重なりを保ったまま、前進させて挿入すると、正しく作業を終えることができる。
【符号の説明】
【0022】
1・・・入力装置
2・・・記憶装置
3・・・制御装置
4・・・演算装置
5・・・出力装置
6・・・快・不快指標値付与専用処理装置
7・・・シミュレーション専用処理装置
8・・・リアルタイム補正専用処理装置
9・・・ガイドライン専用処理装置
10・・・動作手順専用処理装置
11・・・センサー情報専用処理装置
12・・・絶縁被覆付圧着端子
13・・・電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、処理するデータ全てに快・不快指標値を付与して、デジタルデータ化してなり、処理要求(目的)を満たす学習データには、より大きい(高い、上位)快指標値を付与し直して、整理・統合した後、データ保存(記憶)してなり、最も大きい快指標値を持つデータを選択的に使用して、出力装置に指令を出す自律型学習システム、で動作することを特徴とする、器用さ獲得装置。
【請求項2】
快・不快の指標値の間に、快指標値をxとし、不快指標値をyとし、あらかじめ任意に設けてなる定数をCとすると、式x+y=Cが成り立ち、前記快指標値xと前記不快指標値yとは、二律背反的関係にあることを特徴とする請求項1に記載の器用さ獲得装置。
【請求項3】
快・不快指標値を保存する配列はピラミッド形とし、学習した結果を前記快・不快指標値を使用して、レベル(階層)化して、記憶蓄積し、前記ピラミッド形配列のレベルの高い(前記快指標値が大きい)階層側の情報から参照することで、次回の動作からは、わずかの学習量で、うまく動作(目的達成)出来るようになることを特徴とした請求項1に記載の器用さ獲得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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