説明

噴水装置

【課題】水の流れが複雑で見る人を惹きつける噴水装置を提供する。
【解決手段】二つの支持体21,22間に配置された基板23と、意匠部24と、複数の孔25aから径方向外側へポンプPからの水Wを射出する円筒状で回転自在に支持された射出管25と、断面略コ字状で射出管25を内包し後壁26aの高さが前壁26bの高さよりも高く、前壁26bの前面の位置は意匠部24の前面の位置と略等しい貯水部26と、貯水部26の上方を覆う蓋部27と、貯水部26の前壁26bから離間して貯水部26の前方を覆う覆い部28と、射出管25を所望の回転角度で固定する回転位置設定部29と、を備え、射出管25の複数の孔25aを覆い部28に対向させるように射出管25の回転角度を位置設定したときには射出された水Wが、貯水部26の前方から溢れ出て意匠部24の前面を伝って流れることに加え、覆い部28の後面を伝って流れるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水をポンプで循環させて連続的に水を流す噴水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水の流れる音やその見た目によるリラックス効果を得るために、屋外及び屋内には大小様々な噴水装置が設置されている。
屋外用の噴水装置には、例えば上方に勢いよく水を吹き上げるものがある。また、連続的に水を吹き上げるだけでなく、間欠的に吹き上げるものもある。
一方、屋内用のものとしては、図13に示すような噴水装置10が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−1017号公報
【0004】
図13に記載の噴水装置10は、ポンプPで吸い上げた水Wを立設パイプ11の上端から流すことで、立設パイプ11の外周面を伝って水Wが流れる。この水Wは立設パイプ11下部に設けられた第一貯水部12に一旦溜められ、ここから溢れ出た水Wがその下方の第二貯水部13に溜まる。そして、第二貯水部13の水Wが再びポンプPで立設パイプ11の上端まで吸い上げられる。
【0005】
この噴水装置10によると、水Wが流れる様子は見る人に安らぎを与えるだけでなく、水Wの音によるリラックス効果も期待できる。また、水Wが蒸発することで屋内が加湿される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この噴水装置10では、単なるパイプ11の外周面を水Wが伝って流れているだけであるので、噴水装置10の重要な要素の一つである見た目が単純で、面白味に欠ける。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、水の流れが複雑で見る人を惹きつける噴水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の噴水装置(20)は、水(W)をポンプ(P)で循環させて連続的に水(W)を流す噴水装置(20)であって、左右に所定間隔離間して立設された二つの支持体(21,22)と、前記二つの支持体(21,22)間に配置された基板(23)と、前記基板(23)の前面に取付けられ複数の凹凸が形成された意匠部(24)と、前記基板(23)の上方で左右に延びるとともに周面に複数の孔(25a)が形成され、前記複数の孔(25a)から径方向外側へ前記ポンプ(P)からの水(W)を射出する円筒状で回転自在に支持された射出管(25)と、上方が開口した断面略コ字状で前記射出管(25)を内包するように左右に延び、後壁(26a)の高さが前壁(26b)の高さよりも高く、しかも前記前壁(26b)の前面の位置は前記意匠部(24)の前面の位置と略等しい貯水部(26)と、前端部(27a)は前記貯水部(26)の前壁(26b)よりも前方に位置するとともに、前記貯水部(26)の後壁(26a)に接し水平に延びて前記貯水部(26)の上方を覆う蓋部(27)と、前記蓋部(27)の前端部(27a)から下方に設けられ、前記貯水部(26)の前壁(26b)から離間して前記貯水部(26)の前方を覆う覆い部(28)と、前記射出管(25)を所望の回転角度で固定する回転位置設定部(29)と、を備え、前記射出管(25)の複数の孔(25a)を前記覆い部(28)に対向させるように前記射出管(25)の回転角度を位置設定したときには射出された水(W)が、前記貯水部(26)の前方から溢れ出て前記意匠部(24)の前面を伝って流れることに加え、前記覆い部(28)の後面を伝って流れるようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の噴水装置(20)は、前記射出管(25)の複数の孔(25a)を前記覆い部(28)に対向させるように前記射出管(25)の回転角度を位置設定したときには射出された水(W)が、前記覆い部(28)の後面で跳ね、その跳ねた水(W)が前記意匠部(24)の前面に届くように、前記貯水部(26)の前壁(26b)と前記覆い部(28)との間隔を設定したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の噴水装置(20)は、前記射出管(25)の複数の孔(25a)は、それぞれ所定間隔を開けて前記射出管(25)の軸に平行な一直線上に形成されたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の噴水装置(20)は、前記意匠部(24)は、水平方向の突出量の異なるガラス板(24a)を複数上下に貼り合わせてなることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の噴水装置(20)は、前記覆い部(28)の下端は、前記貯水部(26)の前壁(26b)の下端よりも下方に位置することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の噴水装置(20)は、前記射出管(25)の軸は、前記貯水部(26)の前壁(26b)の上端よりも上方に位置することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に記載の噴水装置(20)は、前記射出管(25)の軸は、前記貯水部(26)の前壁(26b)の上端よりも下方に位置するとともに、前記射出管(25)の複数の孔(25a)は、前記貯水部(26)の前壁(26b)の上端よりも下方に位置することを特徴とする。
【0015】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の噴水装置によれば、基板の上方で左右に延びるとともに周面に複数の孔が形成され、複数の孔から径方向外側へポンプからの水を射出する円筒状で回転自在に支持された射出管と、上方が開口した断面略コ字状で射出管を内包するように左右に延びる貯水部と、貯水部の上方を覆う蓋部と、射出管を所望の回転角度で固定する回転位置設定部と、を備えるので、射出管の複数の孔を貯水部の内部又は蓋部に対向させるように射出管の回転角度を位置設定したときには射出された水が貯水部に溜まる。
そして、貯水部の後壁の高さが前壁の高さよりも高く、貯水部の前壁の前面の位置は意匠部の前面の位置と略等しいので、貯水部に溜まった水は貯水部の前方から溢れ出て意匠部の前面を伝って流れる。ここで、意匠部には複数の凹凸が形成されているので、その前面を伝って流れる水は複雑な動きとなる。
特に、射出管の複数の孔を覆い部に対向させるように射出管の回転角度を位置設定したときには射出された水が、貯水部の前方から溢れ出て意匠部の前面を伝って流れることに加え、覆い部の後面を伝って流れる。
このように、水の流れが複雑であるので、見る人を惹きつける。また、一つの噴水装置において、例えば時間帯や日時によって異なる水の流れ方を選べるので、見る人を飽きさせない。
【0017】
また、請求項2に記載の噴水装置によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加え、射出管の複数の孔を覆い部に対向させるように射出管の回転角度を位置設定したときには射出された水が、覆い部の後面で跳ね、その跳ねた水が意匠部の前面に届くように、貯水部の前壁と覆い部との間隔を設定したので、射出管の複数の孔を覆い部に対向させるように射出管の回転角度を位置設定したとき、射出された水は覆い部の後面を伝って流れるだけでなく、意匠部の前面を伝って流れる。
このように水の流れが複雑であるので、意匠性に優れ、見る人を惹きつける。
【0018】
また、請求項3に記載の噴水装置によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用効果に加え、射出管の複数の孔は、それぞれ所定間隔を開けて射出管の軸に平行な一直線上に形成されたので、意匠部全体に満遍なく水を流すことができる。
【0019】
また、請求項4に記載の噴水装置によれば、請求項1乃至3に記載の発明の作用効果に加え、意匠部は、水平方向の突出量の異なるガラス板を複数上下に貼り合わせてなるので、雰囲気下での光(太陽光や室内灯)が意匠部で乱反射し、見る人を惹きつける。さらに、前面又は後面からライトアップすれば、一層意匠部での光の反射が鮮やかである。
【0020】
また、請求項5に記載の噴水装置によれば、請求項1乃至4に記載の発明の作用効果に加え、覆い部の下端は貯水部の前壁の下端よりも下方に位置するので、貯水部から溢れ出た水及び覆い部の後面で跳ねた水が前方に飛び散り難い。
【0021】
また、請求項6に記載の噴水装置によれば、請求項1乃至5に記載の発明の作用効果に加え、射出管の軸は貯水部の前壁の上端よりも上方に位置するので、射出管の複数の孔を覆い部に対向させるように射出管の回転角度を位置設定したときに、貯水部に水が溜まった場合でも、射出管の複数の孔が水没しない。したがって、貯水部内に溜まった水によって、射出された水の勢いが落ちないので、水圧を必要以上に上げずとも所望の水の流れを実現できる。
【0022】
また、請求項7に記載の噴水装置によれば、請求項1乃至5に記載の発明の作用効果に加え、射出管の軸は、貯水部の前壁の上端よりも下方に位置するとともに、射出管の複数の孔は、貯水部の前壁の上端よりも下方に位置するので、射出管の複数の孔から射出された水が貯水部に溜まることで、射出管の複数の孔が水没する。このとき、覆い部の後面に対し射出された水の勢いが強ければ、射出された水が覆い部まで届き、意匠部の前面での所望の水の流れを実現することができる。しかも、水中から勢いよく射出された水が多くの空気を巻き込むので、意匠部を流れる水が動きのある泡状となり、見る人をより惹きつける。
【0023】
なお、上述した特許文献1には、水をポンプで吸い上げて上方から水を流す点は記載されているが、本発明の噴水装置のように、回転自在に支持された射出管と、その回転角度を固定する回転位置設定部を備えて、水の流れ方を適宜設定する点は、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態に係る噴水装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る噴水装置を示す正面図である。
【図3】(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ、図1に示す噴水装置における意匠部を構成するガラス板を示す斜視図である。
【図4】図3に示すガラス板を貼り合わせてなる意匠部を示す斜視図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る噴水装置を示す、図2のA−A線拡大断面図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る噴水装置を示す、図2のB−B線拡大矢視図である。
【図7】本発明の第一実施形態に係る噴水装置を示す、図2のC−C線拡大矢視図である。
【図8】本発明の第一実施形態に係る噴水装置を示す、図2のD部拡大正面図である。
【図9】本発明の第一実施形態に係る噴水装置を示す、図2のE−E線拡大断面図である。
【図10】図9に示す噴水装置における射出管を回転させた状態を示す、図2のE−E線拡大断面図である。
【図11】本発明の第二実施形態に係る噴水装置を示す、図2のE−E線拡大断面図である。
【図12】図11に示す噴水装置における射出管を回転させた状態を示す、図2のE−E線拡大断面図である。
【図13】従来例に係る噴水装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第一実施形態)
図1乃至図10を参照して、第一実施形態に係る噴水装置20を説明する。
本実施形態に係る噴水装置20は、水WをポンプPで循環させて連続的に水Wを流すもので、例えばホテルの待合室や飲食店、または住居の庭等に観賞用として設置される。
この噴水装置20は、支持体21,22と、基板23と、意匠部24と、射出管25と、貯水部26と、蓋部27と、覆い部28と、回転位置設定部29と、を備えるものである。
【0026】
支持体21,22は、図1に示すように、水Wを内部に溜めることができる受け皿30上に、左右に所定間隔離間して二つ垂直に立設されている。それぞれは中空状の角パイプからなり、その下端には足部21a,22aが取付けられていて逆T字状となっている。
また、支持体21,22間には、上部後方に角パイプからなる上側連結部材31が、同様に下部前方には角パイプからなる下側連結部材32がそれぞれ渡されていて、支持体21,22同士を連結している。
また、図2に示すように、右側の支持体22の下部側面には吸水口22bが形成されており、右側の支持体22の内部下部に、吸水口22bから受け皿30内の水Wを吸水するポンプPが収められている。
そして、その水Wは右側の支持体22内に配管された給水管33を通じて支持体22の上部まで送られる。
また、右側の支持体22の左側(図5参照)、及び左側の支持体21の右側には、下側連結部材32の真上に、それぞれ上下に延び左右内側に開口する断面略コ字状のレール34が取付けられている。また、二つのレール34の前後位置は等しい。
【0027】
基板23は、図5乃至図7に示すように、左右のレール34にそれぞれ左側端部と右側端部とが嵌められることで、二つの支持体21,22間に配置される。
レール34は下側連結部材32の真上にあるので、レール34に嵌められた基板23は下側連結部材32に上載された状態となる。よって、基板23の下端位置が下側連結部材32の上面より下がることはない。
ここで、基板23の上端の高さは、図9に示すように、上側連結部材31上面の高さに等しい。
なお、基板23はここでは一枚のガラスである。
【0028】
意匠部24は、基板23の前面に、水平方向の突出量の異なるガラス板24a,24b,24c,を複数上下に貼り合わせて取付けられる。ここでは、電気炉の熱によって溶着した。
この異なる突出量とは、それぞれのガラス板24a,24b,24cの突出量が異なるだけでなく、図3に示すように、一つ一つのガラス板24a,24b,24cにおいてもその前面(図3においては上面)は波打つように、位置によって突出量が異なっている。したがって、それらを上下に貼り合わせると図4に示すように、意匠部24の前面は複雑な凹凸形状となる。ここでは、形状の異なる三種類のガラス板24a,24b,24cを示したが、これは例示であり、現実にはそれ以上の種類のガラス板を貼り合わせて意匠部24はなる。
なお、図2及び図8では、一つ一つのガラス板24a,24b,24cは省略している。
【0029】
射出管25は、円筒状の透明アクリルパイプであって、基板23の上方で左右に延びる。そして、射出管25の周面には、複数の孔25aがそれぞれ所定間隔を開けて、射出管25の軸に平行な一直線上に並ぶように形成されている。
また、射出管25の右端は給水管33に対し回転自在に連結されている。
一方、射出管25の左端は塞がれ、さらに左側の支持体21の上部内部に配置されたハンドル35に連結されている(図7参照)。射出管25はハンドル35と連動して軸回転するので、左側の支持体21に被せられている蓋を外し、手でハンドル35を回転させることによって、射出管25の回転角度を位置設定することができる。
そして、ポンプPによって射出管25内には水圧が掛かるので、複数の孔25aから径方向外側へポンプPからの水Wが射出される。この射出の勢いは、ポンプP又はその他の水圧を調整する手段によって適宜変更できる。
【0030】
貯水部26は、上方が開口した断面略コ字状で、射出管25を内包するように左右に延びる。詳しくは、射出管25が二つの支持体21,22の上端間で支持されることで、貯水部26も支持されるとともに、図9及び図10に示すように、貯水部26は上側連結部材31と基板23の両者に上載されている。
また、後壁26aの高さは前壁26bの高さよりも高く、左右の側壁26cの高さは後壁26aの高さと等しい。
加えて、前壁26bの前面の位置は意匠部24の前面の位置と略等しくなっている。
また、射出管25の軸は、貯水部26の前壁26bの上端よりも上方に位置する(図9及び図10のS参照)。
なお、射出管25の右端が給水管33と連結できるように、また射出管25の左端がハンドル35と連結できるように、貯水部26の左右の側壁26cにはそれぞれ連結孔(図示しない)が形成されている。この連結孔から貯水部26内の水Wが漏れないための処理がなされている。
ここで、貯水部26に溜まった水Wが前方に溢れ出易いように、貯水部26をやや前傾させてもよい。
【0031】
蓋部27は、その前端部27aが貯水部26の前壁26bよりも前方に位置するとともに、貯水部26の後壁26a及び左右側壁26cに接し、水平に延びて貯水部26の上方を覆う。貯水部26の前壁26bの高さは後壁26aの高さより低いので、蓋部27は貯水部26の前壁26bとは接しない。
【0032】
覆い部28は、蓋部27の前端部27aから鉛直下方に設けられ、貯水部26の前壁26bから離間して貯水部26の前方を覆う。
また、覆い部28の左右の長さは、蓋部27や貯水部26の左右の長さと等しい。
ここで、図10に示すように、射出管25の複数の孔25aを覆い部28に対向させるように射出管25の回転角度を位置設定したときには射出された水Wが、覆い部28の後面で跳ねるが、その跳ねた水Wが意匠部24の前面に届くように、貯水部26の前壁26bと覆い部28との間隔を設定した。ここではその間隔を5mmとした。
そして、覆い部28の下端は、貯水部26の前壁26bの下端よりも下方に位置し、意匠部24の上端に掛かっている。
なお、貯水部26、蓋部27、及び覆い部28は、水Wの流れを視認できるように透明のアクリルからなる。
【0033】
回転位置設定部29は、回転自在に支持されている射出管25を所望の回転角度で固定する。本実施形態においては、回転位置設定部29は射出管25の右端と給水管33との連結部分である。この回転位置設定部29によって、所定の力より大きい力を加えないと給水管33に対して射出管25が回転しないようにしている。
その他、各部位において、当業者が通常用いるパッキン、Oリング等のシール材や、溶接等の連結方法を適宜用いた。
【0034】
以上のように構成された噴水装置20によれば、基板23の上方で左右に延びるとともに周面に複数の孔25aが形成され、複数の孔25aから径方向外側へポンプPからの水Wを射出する円筒状で回転自在に支持された射出管25と、上方が開口した断面略コ字状で射出管25を内包するように左右に延びる貯水部26と、貯水部26の上方を覆う蓋部27と、射出管25を所望の回転角度で固定する回転位置設定部29と、を備えるので、図9に示すように、射出管25の複数の孔25aを貯水部26の内部又は蓋部27に対向させるように射出管25の回転角度を位置設定したときには射出された水Wが貯水部26に溜まる。
そして、貯水部26の後壁26aの高さが前壁26bの高さよりも高く、貯水部26の前壁26bの前面の位置は意匠部24の前面の位置と略等しいので、貯水部26に溜まった水Wは貯水部26の前方から溢れ出て意匠部24の前面を伝って流れる。ここで、意匠部24には複数の凹凸が形成されているので、その前面を伝って流れる水Wは複雑な動きとなる。
【0035】
特に、図10に示すように、射出管25の複数の孔25aを覆い部28に対向させるように射出管25の回転角度を位置設定したときには、射出された水Wが覆い部28の後面で跳ね、その跳ねた水Wの一部が少しずつ貯水部26に溜まり、貯水部26の前方から溢れ出て意匠部24の前面を伝って流れる。それに加え、射出された水Wの大部分は覆い部28の後面を伝って流れる。
また、このとき、貯水部26の前壁26bと覆い部28との間隔は、覆い部28の後面で跳ねた水Wが意匠部24の前面に届く距離であるので、意匠部24の前面を流れる水Wは貯水部26から溢れたものだけでなく、覆い部28で跳ねたものもある。よって、水Wの流れが複雑であるので、見る人を惹きつける。
このように、一つの噴水装置20において、例えば時間帯や日時によって異なる水Wの流れ方を選べるので、見る人を飽きさせない。
【0036】
さらに、射出管25の複数の孔25aは、それぞれ所定間隔を開けて射出管25の軸に平行な一直線上に形成されたので、意匠部24全体に満遍なく水を流すことができる。
【0037】
また、意匠部24は、水平方向の突出量の異なるガラス板24a,24b,24cを複数上下に貼り合わせてなるので、雰囲気下での光(太陽光や室内灯)が意匠部24で乱反射し、見る人を惹きつける。さらに、基板23もガラスからなり光を透過するので、基板23の後面からライトアップすることで、一層意匠部24での光の反射が鮮やかである。もちろん、意匠部24の前面をライトアップしてもよい。
【0038】
また、覆い部28の下端は貯水部26の前壁26bの下端よりも下方に位置するので、貯水部26から溢れ出た水W及び覆い部28の後面で跳ねた水Wが前方に飛び散り難い。
【0039】
また、射出管25の軸は貯水部26の前壁26bの上端よりも上方に位置するので、図10に示すように、射出管25の複数の孔25aを覆い部28に対向させるように射出管25の回転角度を位置設定したときに、貯水部26に水Wが溜まった場合でも、射出管25の複数の孔25aが水没しない。したがって、貯水部26内に溜まった水Wによって、射出された水Wの勢いが落ちないので、水圧を必要以上に上げずとも所望の水Wの流れを実現できる。
【0040】
(第二実施形態)
次に図11と図12を参照して、本発明の第二実施形態に係る噴水装置20を説明する。なお、第一実施形態と同一部分には同一符号を付した。
本実施形態の第一実施形態との違いは、射出管25と貯水部26の前壁26bとの関係であり、その他の構成要素に関しては第一実施形態と同一である。
【0041】
つまり、射出管25の軸は、貯水部26の前壁26bの上端よりも下方に位置し(図11及び図12のT参照)、この長さTは射出管25の半径と略等しい。したがって、射出管25の回転角度をどのように位置設定しても、射出管25の複数の孔25aは、貯水部26の前壁26bの上端よりも下方に位置する。
この場合であっても、図11に示すように、貯水部26の内部に対向させるように射出管25の回転角度を位置設定したときには射出された水Wが貯水部26に溜まるのは、第一実施形態と同じである。
一方、図12に示すように、射出管25の複数の孔25aを覆い部28に対向させるように射出管25の回転角度を位置設定し、覆い部28の後面で跳ねた水Wが少しずつ貯水部26に溜まったときには、射出管25の軸が貯水部26の前壁26bの上端よりも下方であり、射出管25の複数の孔25aは、貯水部26の前壁26bの上端よりも下方に位置するので、射出管25の複数の孔25aが水没してしまう。しかし、射出される水Wの勢いが強ければ、貯水部26に溜まった水Wによって勢いが落ちないので、射出された水Wが覆い部28まで届き、意匠部24前面での所望の水Wの流れを実現することができる。
しかも、水中から勢いよく射出された水Wが多くの空気を巻き込むので、意匠部24を流れる水Wが動きのある泡状となり、見る人をより惹きつける。
【0042】
なお、第一、第二実施形態において、貯水部26の前壁26bと覆い部28との間隔を、覆い部28の後面で跳ねた水Wが意匠部24の前面に届く距離としたが、これに限られるものではなく、その間隔が、覆い部28で跳ねた水Wが意匠部24まで届かない距離であってもよい。この場合であっても、射出管25の複数の孔25aを覆い部28に対向させるように射出管25の回転角度を位置設定したときには、意匠部24の前面に水Wが流れるとともに、覆い部28の後面から下方に滴り、意匠性に優れる。
【0043】
また、射出管25の複数の孔25aは、それぞれ所定間隔を開けて射出管25の軸に平行な一直線上に形成されたとしたが、これに限られるものではなく、例えば射出管25の周面に孔25aが螺旋状に形成されていてもよい。また、孔25aが不規則に形成されていてもよい。このとき、第二実施形態のように射出管25の全ての孔25aが水没してもよいし、一部の孔25aだけが水没してもよい。
【0044】
また、意匠部24は、水平方向の突出量の異なるガラス板24a,24b,24cを複数上下に貼り合わせてなるとしたが、アクリルや石材等の他の材質であってもよい。それぞれの材質で異なった趣となるので、この噴水装置20が設置される場所等に応じて、適宜最適なものを選択することができる。
また、覆い部28の下端は、貯水部26の前壁26bの下端よりも下方に位置するとしたが、これに限られるものではない。
【0045】
さらに、ポンプPは支持体22の内部に収められているとしたが、流量や噴水装置20の高さによっては大型のポンプPが必要となるので、ポンプPを支持体21,22の外部に配置してもよい。
【0046】
また、ハンドル35及び回転位置設定部29によって手動で射出管25の回転角度を位置設定したが、従来用いられる他の手段によって回転角度を位置設定してもよく、さらには回転位置設定部29を設けず、モーター等を用いて射出管25を連続回転させてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 噴水装置
11 立設パイプ
12 第一貯水部
13 第二貯水部
20 噴水装置
21 支持体
21a 足部
22 支持体
22a 足部
22b 吸水口
23 基板
24 意匠部
24a ガラス板
24b ガラス板
24c ガラス板
25 射出管
25a 孔
26 貯水部
26a 後壁
26b 前壁
26c 側壁
27 蓋部
27a 前端部
28 覆い部
29 回転位置設定部
30 受け皿
31 上側連結部材
32 下側連結部材
33 給水管
34 レール
35 ハンドル
P ポンプ
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水をポンプで循環させて連続的に水を流す噴水装置であって、
左右に所定間隔離間して立設された二つの支持体と、
前記二つの支持体間に配置された基板と、
前記基板の前面に取付けられ複数の凹凸が形成された意匠部と、
前記基板の上方で左右に延びるとともに周面に複数の孔が形成され、前記複数の孔から径方向外側へ前記ポンプからの水を射出する円筒状で回転自在に支持された射出管と、
上方が開口した断面略コ字状で前記射出管を内包するように左右に延び、後壁の高さが前壁の高さよりも高く、しかも前記前壁の前面の位置は前記意匠部の前面の位置と略等しい貯水部と、
前端部は前記貯水部の前壁よりも前方に位置するとともに、前記貯水部の後壁に接し水平に延びて前記貯水部の上方を覆う蓋部と、
前記蓋部の前端部から下方に設けられ、前記貯水部の前壁から離間して前記貯水部の前方を覆う覆い部と、
前記射出管を所望の回転角度で固定する回転位置設定部と、を備え、
前記射出管の複数の孔を前記覆い部に対向させるように前記射出管の回転角度を位置設定したときには射出された水が、前記貯水部の前方から溢れ出て前記意匠部の前面を伝って流れることに加え、前記覆い部の後面を伝って流れるようにしたことを特徴とする噴水装置。
【請求項2】
前記射出管の複数の孔を前記覆い部に対向させるように前記射出管の回転角度を位置設定したときには射出された水が、前記覆い部の後面で跳ね、その跳ねた水が前記意匠部の前面に届くように、前記貯水部の前壁と前記覆い部との間隔を設定したことを特徴とする請求項1に記載の噴水装置。
【請求項3】
前記射出管の複数の孔は、それぞれ所定間隔を開けて前記射出管の軸に平行な一直線上に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の噴水装置。
【請求項4】
前記意匠部は、水平方向の突出量の異なるガラス板を複数上下に貼り合わせてなることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の噴水装置。
【請求項5】
前記覆い部の下端は、前記貯水部の前壁の下端よりも下方に位置することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の噴水装置。
【請求項6】
前記射出管の軸は、前記貯水部の前壁の上端よりも上方に位置することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の噴水装置。
【請求項7】
前記射出管の軸は、前記貯水部の前壁の上端よりも下方に位置するとともに、前記射出管の複数の孔は、前記貯水部の前壁の上端よりも下方に位置することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の噴水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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