説明

噴霧ノズル

【課題】 連続鋳造装置の二次冷却帯において、ノズル先端部への塵芥の付着及び堆積を防止し、長期に亘り安定な噴霧パターンが得られる噴霧ノズルを提供する。
【解決手段】 連続鋳造装置の二次冷却帯で鋳片を冷却するため、横方向に向けてノズル噴射口から気液混合ミストを噴霧するためのノズル3は、ノズル3の先端の上面にノズル噴射口4よりも前方に突出する角状の突出部6と、ノズル噴射口4の下部に形成され、後方へいくにつれて湾曲して半径方向に拡がる切欠部7を備えている。噴霧ノズル3の噴霧パターンはフラットパターンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造の冷却帯(二次冷却帯など)などにおいて、ダストの付着堆積を防止しつつ、横方向に向けて気液混合ミストを噴霧するのに有用な噴霧ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造の二次冷却帯(スプレー冷却帯)では、均一に冷却して鋳片の割れや欠陥を防止するため、複数のガイドロールにより縦方向に搬送される鋳片に対して、縦方向に間隔をおいてガイドローラ間に位置し、かつ横向きに配された複数の噴霧ノズルから気液混合ミストを噴霧している。
【0003】
このようなスラブ連続鋳造装置の二次冷却帯での鋳片のミスト冷却において、「鉄と鋼」第70年(1984)第7号、第694頁〜700頁(非特許文献1)、「鉄と鋼」第74年(1988)第7号、第1282頁〜1289頁(非特許文献2)には、ノズルの閉塞の防止が必須であることが記載されている。
【0004】
しかし、二次冷却帯で用いると、噴霧ノズルが閉塞し、安定して操業できなくなる。噴霧ノズルの閉塞の原因は明確ではないが、次のように考えられる。すなわち、ミストの噴霧に伴ってノズル先端部が負圧となる。そのため、上方から落下する種々の塵芥、例えば、鋳造において金型との焼き付けを防止するために使用されている焼き付け防止用粉末などの塵芥が気流とともに移送され、ノズル先端部に付着し堆積し、最終的にはノズルの吐出口を塞ぐものと思われる。そして、ノズル先端部に塵芥が付着し堆積すると、ミストの噴霧パターンが変わり、噴霧による均一な冷却が困難となり、最終的には、噴霧ノズルの交換が必要となる。
【0005】
なお、製紙分野においては、紙を切断するため、水を直射させるためのノズルが使用されている。このノズルは、軸心方向に直射孔が形成されたノズル本体と、このノズル本体の外周に装着され、かつ前記ノズル本体の先端部から前方に延出した筒状カバー又はキャップとを備えており、前記筒状カバーは、先端部において、上面から下面にいくにつれて後方に傾斜している。このノズルでは、ノズル本体の先端部が筒状カバーで覆われているため、ノズル本体の先端部に塵芥が付着又は堆積するのを防止できる。しかし、筒状カバーが全周に亘りノズル本体の先端部よりも前方に延出している。そのため、気液混合ミスト(エアーミスト)を広角で噴霧したり、フラットパターンでミストを噴霧できない。
【非特許文献1】「鉄と鋼」第70年(1984)第7号、第694頁〜700頁
【非特許文献2】「鉄と鋼」第74年(1988)第7号、第1282頁〜1289頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、ノズル先端部への塵芥の付着及び堆積を防止できる噴霧ノズル(又はノズルチップ)及びそれを備えた噴霧装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、ノズルの閉塞を有効に防止できるとともに、フラットパターンなどの広角の噴霧パターンで気液混合ミストを均一に噴霧できる噴霧ノズル(又はノズルチップ)及びそれを備えた噴霧装置を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、スラブなどの連続鋳造装置の二次冷却帯において、ノズル先端部への塵芥の付着及び堆積を有効に防止でき、噴霧パターンを長期に亘り安定に維持しつつ鋳片を冷却するのに有用な噴霧ノズル(又はノズルチップ)及びそれを備えた噴霧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、横向きに配設されるノズル(又はノズルチップ)の上面に噴射口(又は吐出口)よりも前方に突出する突出部を形成し、ノズルの下面を噴射口(又は吐出口)よりも後方に後退した切欠部を形成すると、フラット噴霧パターンであっても、前記突出部によりノズル噴射口(又は吐出口)への塵芥の付着及び堆積を有効に規制できることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の噴霧ノズル(又はノズルチップ)は、横方向に向けてノズル噴射口から気液混合ミスト(エアーミスト)を噴霧するためのノズル(又はノズルチップ)であって、ノズル先端の上面にノズル噴射口よりも前方に突出する突出部(又は鍔部、遮蔽部)を備えている。このノズル(又はノズルチップ)において、ノズル噴射口の下部は、後方へいくにつれて半径方向に拡がる切欠部(先細状に傾斜した切欠部など)を備えていてもよい。また、前記ノズルによる噴霧パターンは、フラットパターンであってもよい。このような噴霧ノズルは、連続鋳造装置の二次冷却帯で鋳片を冷却するために有用である。
【0011】
本発明は、前記噴霧ノズル(又はノズルチップ)と、この噴霧ノズル(又はノズルチップ)に気体を供給するための気体供給管と、前記噴霧ノズルに液体を供給するための液体供給管とを備えている噴霧装置も含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ノズル(又はノズルチップ)の上面に形成された突出部が噴射口よりも前方へ突出しているため、ノズル先端部への塵芥の付着及び堆積を有効に防止できる。そのため、ノズル(又はノズルチップ)の閉塞を長期間に亘り有効に防止できる。また、前記突出部が突出していても、ノズル(又はノズルチップ)の上面に形成されているため、フラットな広角の噴霧パターンで気液混合ミストを均一に噴霧できる。そのため、スラブなどの連続鋳造装置の二次冷却帯において、ノズル先端部への塵芥の付着及び堆積を有効に防止し、噴霧パターンを長期に亘り安定に維持しつつ鋳片を冷却できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。図1は連続鋳造装置の二次冷却帯の概要を示す概略側面図であり、図2は図1の噴霧ノズル本体を示す概略斜視図であり、図3は図2の噴霧ノズル本体を備えたノズル装置の一例を示す概略断面図であり、図4は図2の噴霧ノズル本体を備えた噴霧装置の一例を示す概略図である。
【0014】
スラブなどの連続鋳造において、金型又は鋳型(図示せず)から引き抜かれた鋳片1は、ガイドローラ2により所定の搬送路(縦方向及び/又は湾曲した搬送路)を案内されながら二次冷却帯(スプレー冷却帯)で噴霧ノズル本体(又はノズルチップ)3からの噴霧ミスト(気液混合ミスト)で冷却される。噴霧ノズル本体(又はノズルチップ)3は、鋳片1に対してノズル先端部を向けて、搬送路に沿ってガイドローラ2間に配設されている。この例では、複数の噴霧ノズル本体3は、鋳片1の両側方(左右)に配設された複数のガイドローラ2,2間に位置し、縦方向の搬送路に沿って間隔をおいて横向きに配設され、縦列の噴霧ノズルを構成している。
【0015】
前記噴霧ノズル本体(又はノズルチップ)3は、図2に示されるように、気液混合流体を案内するための流路(円筒状流路など)Pを有する中空管体3aで構成されており、この中空管体の先端部で横方向に延びる形成された帯状帯4aには、前記流路に通じ、かつ横方向に延びるスリット状噴射口(又は吐出口)4が開口しており、この噴射口4(又は帯状帯4a)の両側部は、それぞれ後方(上流方向)へいくにつれて拡がる方向に傾斜して切欠かれ、切欠壁5を形成している。すなわち、この切欠壁5は、ノズル先端部に向かって狭まる傾斜壁を構成している。切欠部を構成する切欠壁5は上側端面5aと下側端面5bとを含む。なお、中空管体3aの上流側の端部の内周面又は外周面には装着部(螺合部など)が形成されている。
【0016】
そして、ノズル本体(又はノズルチップ)3の先端部の上面又は上部には、噴射口(又は吐出口)4よりも前方に突出して角状突出部(鍔部)6が形成されている。この角状突出部は、ノズル本体3の上部において外周面に沿って前方方向に鍔状に突出しており、ノズル本体(又はノズルチップ)3の上面では平面形状において両側方へいくにつれて(中心軸線から遠ざかるにつれて)後方へアール状に湾曲している。また、突出部6の下面は、帯状体4aの上縁から前方にいくにつれて上方向へ直線的に又は湾曲して傾斜して突出部6の先端に至っており、傾斜面を形成している。
【0017】
一方、ノズル本体(又はノズルチップ)3の先端部の下面には、噴射口(又は吐出口)4が開口した帯状帯4aの下縁から後方に向かって直線的に又は湾曲して切欠かれた切欠部7が形成されている。この例では、ノズル本体(又はノズルチップ)3の噴射口4の下部は湾曲し、湾曲切欠部7を形成している。すなわち、ノズル本体3の先端部の下部は、湾曲切欠部7により先細状に湾曲している。
【0018】
このような噴霧ノズル本体(又はノズルチップ)3からは、縦方向(垂直方向)に配管されたエア供給管(図示せず)供給されるエア(空気)と、縦方向(垂直方向)に配管された水供給管(図示せず)から供給される水とを混合して形成される気液混合ミスト(エアーミスト)が噴霧可能である。すなわち、前記エア供給管及び前記水供給管からは、それぞれ縦方向に間隔をおいて横方向(又は水平方向)に複数のエア分岐管11及び水分岐管21が分岐しており、各一対のエア分岐管11及び水分岐管21が、各噴霧ノズル本体3の気液混合ユニット9のエア供給部及び水供給部に接続されている。
【0019】
図3及び図4に示されるように、各噴霧ノズル本体(又はノズルチップ)3は、単一の又は互いに接続可能な複数のノズル管体8に装着されており、このノズル管体には、前記気液混合ユニット9が接続されている。この気液混合ユニットは、前記エア分岐管11に接続された内管状ヘッド13と、前記エア分岐管11に装着された外管15とを備えており、内管状ヘッド13と外管15とは二重管状の流路を形成している。すなわち、前記内管状ヘッドの先端部の外周は、断面台形状に膨出した膨出部(又は流路規制部)14が形成され、前記内管状ヘッド13及び膨出部14は、所定の間隔をおいて前記外管15の径大部16内に収容されている。この径大部の下流端からは、前記膨出部14の下流側の傾斜面と略平行に下流方向に向かって狭まる傾斜部が形成され、この傾斜部を経て外管15と前記ノズル管体8とが連通して接続されている。
【0020】
このような噴霧ノズル及び噴霧装置では、エア分岐管11からのエアと水分岐管21からの水とを混合ゾーンで効率よく混合でき、鋳片1に対して混合ミストを均一に噴霧できる。特に、噴霧ノズル本体(又はノズルチップ)3の上面に噴射口4よりも前方へ突出した角状突出部6が形成されているため、ノズル本体3の先端部への塵芥(焼き付け防止用粉末などの塵芥など)の付着及び堆積を有効に防止できるとともに、ノズル本体(又はノズルチップ)3の閉塞を長期間に亘り有効に防止できる。しかも、前記角状突出部6がノズル本体(又はノズルチップ)3の先端部の上面又は上部に形成されているため、横方向(又は鋳片の幅方向)に広角でフラットな噴霧パターンでの噴霧の障害とはならず、気液混合ミストを広角でしかも均一に噴霧できる。そのため、噴霧パターンを長期に亘り安定に維持しつつ、スラブなどの連続鋳造装置の二次冷却帯において鋳片1を均一かつ効率よく冷却できる。
【0021】
なお、本発明の噴霧ノズル(又はノズルチップ)は、その軸線を横方向に向けて配設可能であればよく、水平方向に限らず、水平方向から上下方向に若干傾斜して配設してもよい。本発明のノズルは、ノズル本体の先端部の上面又は上部に、ノズル吐出口又はその周辺域に塵芥などの付着堆積を防止できる突出部(又は遮蔽部)を有する限り、ノズルの構造は特に制限されず、種々の構造(例えば、流路構造)を有するノズルが採用できる。噴射口からの混合ミストの噴霧パターンは、前記突出部により噴霧が規制されない限り、特に制限されず、フルコーンなどの噴霧パターンであってもよいが、通常、幅方向(又は横方向)に広角で縦方向に狭角なフラットパターンである。このような噴霧パターンを形成するため、通常、ノズルの先端部には、横方向に延びる噴射口(又は吐出口)が形成されている。
【0022】
なお、ノズル噴射口の両側部の切欠壁5も必ずしも必要ではない。また、この切欠壁5により形成される切欠部の下側端面5bなどに塵芥などが付着堆積するのを防止するため、切欠壁5の下部や切欠部のコーナー部(切欠部の下側端面5bの先端部)は切除してもよく、面取してもよい。
【0023】
図5は本発明の噴霧ノズル(又はノズルチップ)の他の例を示す概略斜視図である。
【0024】
この例では、ノズル本体(又はノズルチップ)33は、上流側に気液混合流体の流路(円筒状流路)Pが軸方向に形成された中空管体33aで構成されており、この中空管体の先端部には、横方向に延びる帯状帯(平坦な帯状ゾーン)34aが形成され、この帯状帯には、前記流路に通じ、かつ横方向に延びるスリット状噴射口(又は吐出口)34が開口している。この噴射口34は、ノズル本体33の先端部の側壁に上流方向に深く切り込まれて形成されている。なお、中空管体33aの上流側の端部の内周面又は外周面には装着部(螺合部など)が形成されている。
【0025】
そして、ノズル本体(又はノズルチップ)33の先端部の上面又は上部には、前記と同様に、噴射口(又は吐出口)34よりも前方に突出して角状突出部(鍔部)36が形成され、ノズル本体33のノズル噴射口34の下部は湾曲し、湾曲切欠部37を形成している。すなわち、帯状帯の上端からは角状突出部(鍔部)36が延出し、帯状帯の下端からは後方に向かって湾曲した切欠部37が形成されている。
【0026】
図6は本発明の噴霧ノズル(又はノズルチップ)のさらに他の例を示す概略斜視図である。
【0027】
この例では、ノズル本体(又はノズルチップ)43は中空管体43aで構成されており、この中空管体の先端部には、横方向に延びる帯状帯(平坦な帯状ゾーン)44aが形成され、この帯状帯には、前記流路に通じ、かつ横方向に延びるスリット状噴射口(又は吐出口)44が開口している。この噴射口44は、ノズル本体43の先端部の側壁に上流方向に浅く切り込まれて形成されている。なお、中空管体43aの上流側の端部には、前記と同様に、装着部(螺合部など)が形成されている。
【0028】
そして、ノズル本体(又はノズルチップ)43の先端部の上面又は上部には、前記と同様に、噴射口(又は吐出口)44よりも前方に突出して角状突出部(鍔部)46が形成され、ノズル本体43のノズル噴射口44の下部は湾曲し、湾曲切欠部47を形成している。
【0029】
なお、ノズル本体43を構成する中空管体43aの上流側には気液混合流体の円筒状流路P1が軸方向に形成され、この円筒状流路の下流端からは、前記スリット状噴射口44の延出方向に対して直交する方向に長軸を有する楕円体状流路P2が下流方向に延びており、この楕円状流路がスリット状噴射口44と連通している。
【0030】
このようなノズル(又はノズルチップ)も横方向に向けて配設可能であり、塵芥の付着及び堆積を防止しつつ、ノズル噴射口から気液混合ミスト(エアーミスト)を長期間に亘り安定して噴霧できる。
【0031】
前記ノズル先端の上面又は上部に形成された突出部は、ノズル噴射口よりも前方に庇状に突出し、ノズル噴射口又はその近傍(又は周辺域)での塵芥の付着堆積を防止できればよく、角状の突出部に限らず、平板のプレート状、周方向に屈曲又は湾曲したプレート状突出部であってもよい。突出部の先端部の平面形状は、直線状であってもよく、円弧状などの形態で湾曲していてもよい。また、突出部(突出部の上面)は、ノズル先端の上面に沿って前方に突出している必要はなく、ノズル先端の上面から前方に向かって下降した傾斜面(例えば、平坦又は周方向に湾曲した湾曲面を有する傾斜面)を有していてもよい。さらに、突出部の下面は、ノズル先端から軸方向に沿って前方に延びていてもよいが、広い噴霧域を確保するためには、前方にいくにつれて上方に直線的に延びていてもよく湾曲していてもよい。延出部の延出長さ及び幅は、ノズル噴射口又はその周辺部で塵芥の付着堆積を防止できればよく、延出長さは、例えば、ノズル本体の直径100に対して5〜200程度の範囲から選択でき、例えば、10〜100、好ましくは15〜80、さらに好ましくは15〜50(例えば、15〜35)程度であってもよい。延出部の幅は、前方に向かって拡がっていてもよく、狭まっていてもよいが、延出部は、通常、ノズル本体の幅に沿って前方へ延出している場合が多い。
【0032】
前記帯状帯4a,34a,44aは必ずしも必要ではなく、ノズル先端の下面又は下部には、塵芥が付着堆積しやすい受け部を形成しないのが好ましく、例えば、ノズル噴射口の下部(ノズル噴射口が形成された先端面のうちノズル噴射口の下側端面又は壁面)は、直線的に垂下していてもよく、ノズル噴射口よりも後方(上流方向)へいくにつれて、直線的に又は湾曲(例えば、アール状に湾曲)して半径方向に拡がる切欠部を備えていてもよい。この切欠部は、通常、ノズル噴射口の近傍から軸方向の後方に傾斜して形成されている。
【0033】
また、噴霧装置において、噴霧ノズル(又はノズルチップ)には、気体を供給するための気体供給管(代表的にはエアー供給管)と、液体を供給するための液体供給管(代表的には水供給管)とが接続され、生成した気液混合ミスト(代表的にはエアーミスト)をノズル噴射口から噴霧する。そのため、噴霧ノズルには、前記縦横方向に管体が配管された状態で気体供給管及び液体供給管を接続する必要はなく、種々の形態で気体供給管及び液体供給管を接続できる。
【0034】
本発明の噴霧ノズルを連続鋳造装置の二次冷却帯での鋳片の冷却に利用する場合、噴霧ノズルは、鋳片のサイズによって種々の形態で配置でき、例えば、鋳片の搬送方向に間隔をおいて配設して搬送方向の噴霧ノズル列を構成するとともに、鋳片の幅方向に間隔をおいて配設して、横方向(又は幅方向)の噴霧ノズル列を構成してもよい。
【0035】
なお、前記の例のように、縦方向に配管された気体供給管及び液体供給管と、これらの供給管からそれぞれ横方向に分岐した気体分岐管及び液体分岐管と、各一対の気体分岐管及び液体分岐管が直接または間接的に接続された噴霧ノズルとを備えた装置において、水頭差があっても噴霧流量を均一化するため、絞り孔、オリフィスなどの流量制御ユニットを利用して気体供給量及び/又は液体供給量を制御してもよい。例えば、各混合アダプタに開口断面積が同じ二次オリフィスを装着し、各気体分岐管内に、上位の開口断面積が順次小さな一次オリフィスを装着してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の噴霧ノズルは、気液混合ミストを噴霧する種々の用途、例えば、連続鋳造装置の二次冷却帯での鋳片の冷却に限らず、各種高温ガス(焼却炉の排ガスなど)の冷却、薬剤の散布又は塗布、加湿(製紙工場での抄紙の加湿など)などにも利用できる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0038】
実施例1
図2に示すノズル本体(直径19mmφ×長さ(突出部を除く)25mmのノズルチップ)を、図3及び図4に示されるように、気液混合ユニット9が接続されたノズル管体8に装着し、前記気液混合ユニット9にエア分岐管11と水分岐管21とを接続した。そして、図1に示す連続鋳造装置の二次冷却帯に適用し、空気圧PA=0.06MPa、空気流量QA=3.6m3/hr、水圧PW=0.04MPa、水量QW=1.2L/分(QA/QW=49.9)の噴霧条件で、鋳片を噴霧冷却したところ、ノズル本体には、塵芥の付着堆積がなく、12カ月後も噴霧パターンが変わることなく均一にエアーミストを噴霧できた。
【0039】
また、図7(A)に示されるように、上記の噴霧条件で、2つのノズル本体を距離L=480mmだけ離して配設し、高さH=240mmからエアーミストを噴霧したところ、図7(B)に示されるように水量密度分布が均一な噴霧パターンが得られた。
【0040】
比較例1
図8に示されるように、先端部が平坦面として形成されている以外、実施例1と同様のノズル本体(又はノズルチップ)53を用い、実施例1と同様にして鋳片を噴霧冷却したところ、3カ月後、ノズル本体のノズル噴射口の周辺域にも、塵芥が付着堆積し、ノズルが閉塞した。
【0041】
比較例2
図9に示されるように、ノズル噴射口の上下部をそれぞれ湾曲して切欠いた切欠部を有する以外、実施例1と同様のノズル本体(又はノズルチップ)63を用い、実施例1と同様にして鋳片を噴霧冷却したところ、5カ月後、ノズル本体の上面からノズル噴射口の周辺域にかけて、塵芥が付着堆積した。そのため、噴霧パターンが乱れ、フラットパターンでエアーミストを均一に噴霧できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は連続鋳造装置の二次冷却帯の概要を示す概略側面図である。
【図2】図2は図1の噴霧ノズル本体を示す概略斜視図である。
【図3】図3は図2の噴霧ノズル本体を備えたノズル装置の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は図2の噴霧ノズル本体を備えた噴霧装置の一例を示す概略側面図である。
【図5】図5は本発明の噴霧ノズルの他の例を示す概略斜視図である。
【図6】図6は本発明の噴霧ノズルのさらに他の例を示す概略斜視図である。
【図7】図7は実施例1の噴霧条件と水量密度分布との関係を示す図である。
【図8】図8は比較例1で用いたノズル本体を示す概略図である。
【図9】図9は比較例2で用いたノズル本体を示す概略図である。
【符号の説明】
【0043】
1…鋳片
2…ガイドローラ
3,33,43…ノズル本体(又はノズルチップ)
4,34,44…スリット状噴射口(又は吐出口)
6,36,46…角状突出部(鍔部)
7,37,47…切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に向けてノズル噴射口から気液混合ミストを噴霧するためのノズルであって、ノズル先端の上面にノズル噴射口よりも前方に突出する突出部を備えている噴霧ノズル。
【請求項2】
ノズル噴射口の下部に、後方へいくにつれて半径方向に拡がる切欠部が形成されている請求項1記載の噴霧ノズル。
【請求項3】
噴霧パターンがフラットパターンである請求項1記載の噴霧ノズル。
【請求項4】
連続鋳造装置の二次冷却帯で鋳片を冷却するために用いられる請求項1記載の噴霧ノズル。
【請求項5】
請求項1記載の噴霧ノズルと、この噴霧ノズルに気体を供給するための気体供給管と、前記噴霧ノズルに液体を供給するための液体供給管とを備えている噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−82058(P2006−82058A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272082(P2004−272082)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000142023)株式会社共立合金製作所 (24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】