説明

噴霧装置

【課題】液剤を均一に微粒化することを可能にしながら、狭い空間内でも噴霧を行えるようにする。
【解決手段】回転霧化頭20は、液剤(離型剤B)が供給される供給室40と、供給室40に連通するとともに回転霧化頭20の回転中心から偏心した位置で供給室40の外部に開口する供給路43と、供給路43と対向する拡散面35とを備える。供給室40内の液剤は、遠心力により供給路43から拡散面35に対して衝突するように供給され、その衝突の勢いにより拡散面35上で薄く延ばされ、拡散面35の外周から微粒化されて噴霧される。液剤を、拡散面35上で径方向に長く移動させなくても、薄く延ばすことができるので、拡散面35の外径を小さく抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力を利用して液剤を微粒化して噴霧する噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、固定金型と可動金型を型開きした状態において、両金型の成形面に離型剤を噴霧するための手段として、両金型の間に、噴霧方向が互いに反対向きとされた一対のノズルを有する噴霧装置を配置し、一方のノズルから微粒化状に吐出した離型剤を固定金型に向けて噴霧し、他方のノズルから微粒化状に吐出した離型剤を可動金型に向けて噴霧する構造が開示されている。
【0003】
しかし、この噴霧装置では、固定金型専用のノズルと可動金型専用のノズルとが別々に設けられていて構造が複雑となる。そこで、回転霧化頭を用いた噴霧装置を用いることが考えられる。回転霧化頭は、正面に皿状に凹んだ拡散面を有しており、この拡散面に供給した液体状の離型剤を、遠心力を利用して拡散面上で径方向外側へ移動させながら薄く延ばし、拡散面の外周縁から放射状に放出させるときに微粒化するようになっている。
このような形態の回転霧化頭を、型開きした固定金型と可動金型の間に進入させ、回転霧化頭の回転軸を、固定金型と可動金型の離型方向に対して直交する方向に向ければ、固定金型と可動金型の両金型に対して同時に離型剤を噴霧することが可能である。
【特許文献1】特開2005−34845公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の回転霧化頭において離型剤を均一に微粒化させるためには、離型剤を拡散面上でできるだけ薄く延ばすことが必要であり、離型剤を薄く延ばすためには、拡散面における離型剤の径方向の移動距離を長くすることが必要である。ところが、離型剤の移動距離を長く確保するためには、拡散面の外径を大きくしなければならないため、回転霧化頭が大型化することになる。このように均一な微粒化を図るために大型した回転霧化頭を用いて噴霧を行う場合、型開き状態における固定金型と可動金型との間隔も大きく確保しなければならない。
【0005】
ところが、型開き時に固定金型と可動金型との間に確保すべき間隔は、両金型によって成形される成型品を取り出すのに必要な寸法があれば十分であることから、小型の成型品を製造するための金型に対して、均一な微粒化を図るために大径化した回転霧化頭を適用しようとすると、型開き時における固定金型と可動金型との隙間を必要以上に広げることになり、その分、金型の設置に必要なスペースが大きくなってしまう。また、型開き時における両金型の間隔を大きく確保できない場合には、均一な微粒化を図るために大径化した回転霧化頭を用いることはできない。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、液剤を均一に微粒化することを可能にしながら、狭い空間内でも噴霧を行うことのできる噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、前端部に回転霧化頭を備えており、前記回転霧化頭に供給した液剤を、前記回転霧化頭の外周縁から微粒化した状態で放出して噴霧するようにした噴霧装置において、前記回転霧化頭は、液剤が供給される供給室と、前記供給室に連通するとともに前記回転霧化頭の回転中心から偏心した位置において前記供給室の外部に開口する供給路と、前記供給路と対向するように配された拡散面とを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記拡散面が、前記回転霧化頭の回転中心と略直交する形態であり、前記供給路が、前記回転霧化頭の回転中心と略平行な向きに開口しているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記供給路は、前記拡散面と対向するように開口する吐出部と、前記吐出部と前記供給室との間に配されて前記回転霧化頭の回転中心に対して交差するように径方向に延びた加速部とを備えて構成されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記拡散面が、前記回転霧化頭の前端に位置して後方に面する形態とされ、前記回転霧化頭の後方には、前記回転霧化頭の回転中心を挟んだ2位置から前記回転霧化頭の外周に沿うように前方へエアを噴出する一対のエア噴出部が設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
<請求項1の発明>
供給室内の液剤は、遠心力により供給路から拡散面に対して衝突するように供給され、その衝突の勢いにより、拡散面上で薄く延ばされ、拡散面の外周から微粒化されて噴霧される。本発明によれば、液剤を、拡散面上で径方向に長く移動させなくても、薄く延ばすことができるので、拡散面の外径を小さく抑えることが可能であり、狭い空間においても均一に微粒化して良好な噴霧を行うことができる。
【0012】
<請求項2の発明>
拡散面は、回転霧化頭の回転中心と略直交する面となっているので、拡散面に向けて吐出された液剤は、遠心力により径方向外側へ薄く延ばされながら速やかに拡散する。液剤が拡散面上で滞留し難いので、液剤は薄く延ばされ、微粒化が促進される。また、供給路が、回転霧化頭の回転中心と略平行な向き、即ち拡散面に対して略直角に開口しているので、拡散面に対する液剤の衝突の勢いが減衰されることはない。
【0013】
<請求項3の発明>
供給室内の液剤は、加速部を通る間に遠心力により十分に加速され、吐出部から加圧された状態で拡散面に向けて吐出されるので、拡散面に対する衝突の勢いが強められる。これにより、液剤は十分に薄く延ばされ、良好な微粒化が行われる。
【0014】
<請求項4の発明>
一対のエア噴出口から回転霧化頭の外周に沿うように噴出したエアは、2手に分かれたエア流となって拡散面に衝突し、2手に分かれた状態のままで、拡散面に沿って径方向外向きに流動して拡散面の外周縁から互いに反対の向きに放出される。このとき、拡散面の外周縁のうち2つのエア流と対応する領域においては、霧化状態の液剤が対応するエア流に巻き込まれ、拡散面の外周縁のうちエア流と対応しない領域においては、霧化状態の液剤が2つのエア流のうちいずれかのエア流に吸い寄せられる。これにより、霧化状態の液剤は、2手に分かれたエア流に乗じて互いに反対向きに放出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図9を参照して説明する。本実施形態の噴霧装置Aは、本体部10の前端部に回転霧化頭20を回転可能に設けた形態である。本体部10内には、軸線を前後方向に向けた円筒形をなす回転軸11が、周知形態のエアタービン機構(図示せず)によって高速で回転し得るように支持されており、回転軸11の前端部は、本体部10の前端面から前方へ突出している。また、本体部10には、離型剤B(本発明の構成要件である液剤)を回転霧化頭20に供給するための供給管12が固定して設けられている。供給管12は、軸線を前後方向に向けた円筒状をなし、回転軸11の内部に同心状に収容されていて、供給管12の前端部は、回転軸11の前端から前方へ突出されている。
【0016】
また、本体部10内の前端部には、回転軸11と同心の円環形をなすエア供給空間13が形成されているとともに、このエア供給空間13から本体部10の前端面に連通する形態の複数のエア流路14が形成され、複数のエア流路14の前端は、本体部10の前端面において噴出口15として開口されている。図2に示すように、この複数の噴出口15は、回転軸11の軸心と同心の円弧に沿い、且つ回転軸11の軸心を挟んで左右対称な2つの領域に分かれて配置されており、周方向における各配置領域の形成範囲は、夫々、約90°の角度範囲に亘っている。この右側と左側に分かれて配置された複数ずつの噴出口15は、夫々、回転軸11と同心の円弧状なすエア噴出部16を構成している。また、各エア流路14の向き(噴出口15の開口方向)は、回転軸11の軸線に対し、前方に向かうほど回転軸11の軸線に近づくように傾斜している。
【0017】
回転霧化頭20は、筒状部材21とフロント部材22と閉塞部材23とを組み付けて構成され、回転軸11に対して同心に取り付けられている。
筒状部材21は、回転霧化頭20と同心であって軸線を前後方向に向けた円筒状をなす。筒状部材21の前端部には、前端面を同心の円形に切欠した形態の前部取付孔24が形成され、前部取付孔24の内周には係止溝25が形成されている。筒状部材21の後端部には、その後端面を同心の円形に切欠した形態の後部取付孔26が形成され、後部取付孔26の内周には雌ねじ孔が形成されている。また、筒状部材21内には、前部取付孔24と後部取付孔26とを連通させる形態の連通孔27が形成されている。連通孔27は、筒状部材21と同心の円形をなし、前部取付孔24及び後部取付孔26よりも内径が小さい。
【0018】
前部取付孔24の前端の開口縁部には、筒状部材21と同心の円環形をなし、前方に向かって拡径するように筒状部材21の軸線に対して傾斜したテーパ状の転向面28が、全周に亘って連続して形成されている。また、筒状部材21の前端面には、筒状部材21と同心の円環形をなし、前方に向かって拡径するように筒状部材21の軸線に対して傾斜したテーパ面29が、転向面28の外周縁に沿うように全周に亘って連続して形成されている。筒状部材21の軸線に対するテーパ面29の傾斜角度は、転向面28の傾斜角度よりも大きい。つまり、テーパ面29は、筒状部材21の軸線と直角に近い角度をなすのに対し、転向面28は、筒状部材21の軸線と平行に近い角度をなしている。
【0019】
フロント部材22は、回転霧化頭20と同心であって軸線を前後方向に向けた円形の円盤部30と、筒状突出部31と、フランジ部32とを有する。円盤部30には、その後端面から外周面に貫通した孔状をなす複数の加速部33が形成されている。複数の加速部33の外周面における開口部と後端面における開口部は、いずれも、フロント部材22と同心の円に沿って一定ピッチで配置されている。また、加速部33の貫通方向は、フロント部材22の軸線に対して斜めであって、その角度は、軸線と直角に近い角度となっている。
【0020】
筒状突出部31は、フロント部材22の後端部の外周縁から円盤部30と同心の円筒形をなすように後方へ突出した形態である。筒状突出部31の形成領域は、円盤部30の後端面における加速部33の開口領域よりも外周側となっている。筒状突出部31の外周には係止溝34が形成されている。
【0021】
フランジ部32は、円盤部30の外周から円盤部30の前端面に対して面一状となるように径方向外側へ同心円形状に張り出しており、フランジ部32の外径は、筒状部材21の外径よりも大きい寸法となっている。また、フランジ部32の前端面はフロント部材22の軸線に対して直角をなしている。フランジ部32の後面は、フロント部材22と同心の円環形をなす拡散面35となっている。拡散面35のうち円盤部30の外周に連なる内側の同心円環形領域は、フロント部材22の軸線と直角に近いテーパ状をなす衝突面36となっている。この衝突面36は、筒状部材21のテーパ面29とほぼ平行をなしている。一方、拡散面35のうちその外周縁に連なる外側の同心円環形領域は、フロント部材22の軸線に対して直角な平坦面からなる流動面37となっている。この流動面37と衝突面36との境界となる円は、筒状部材21の前端部の外径とほぼ同じ寸法となっている。
【0022】
閉塞部材23は、回転霧化頭20と同心の円盤状をなし、閉塞部材23には、その前面を同心円形の皿状に凹ませた形態の凹部38が形成されている。また、閉塞部材23には、その中心部を前後に貫通した形態の同心円形の貫通孔39が形成されている。この貫通孔39の内径は、上記供給管12の前端部の外径よりも少し大きい寸法となっている。
【0023】
かかる閉塞部材23は、フロント部材22に対し後方から筒状突出部31の内周に嵌合されるように圧入された状態で組み付けられている。閉塞部材23をフロント部材22に組み付けた状態では、円盤部30の後端面と凹部38とによって囲まれた円形の供給室40が、回転霧化頭20と同心に形成されている。また、閉塞部材23が組み付けられたフロント部材22は、筒状部材21に対し前方から筒状突出部31を前部取付孔24に嵌合させるようにして組み付けられる。組付け状態では、筒状部材21の係止溝25とフロント部材22の係止溝34とに係止リング41を係止させることにより、フロント部材22と筒状部材21の前後方向への離脱が規制され、筒状部材21とフロント部材22が組付状態にロックされる。また、係止溝25,34と係止リング41の係止作用により、筒状部材21とフロント部材22が前後方向において位置決めされる。
【0024】
フロント部材22と筒状部材21を組み付けた状態では、筒状部材21の転向面28が筒状突出部31の外周面に対して径方向に対峙し、この両面によって前方へ開口する略三角形断面の吐出部42が形成される。吐出部42は、回転霧化頭20の軸線と平行に近い角度で、且つ全周に亘って連続した円環形をなすように前方へ開放されている。この吐出部42内には、複数の加速部33の開口が臨んでおり、換言すると、加速部33の開口は転向面28に対して斜めに対向している。また、この前方に開口する吐出部42の前方近傍位置には、拡散面35の衝突面36が対向するように位置している。尚、拡散面35の流動面37は、吐出部42よりも外周側に位置しており、吐出部42と流動面37とは直接には対向していない。そして、フロント部材22と筒状部材21とを組み付けた状態では、吐出部42と複数の加速部33とにより、供給室40内の離型剤Bを拡散面35に供給するための屈曲した経路の供給路43が構成される。供給路43の吐出部42は、回転霧化頭20の回転中心から偏心した位置において供給室40の外部に開口している。
【0025】
上記構成になる回転霧化頭20は、本体部10に対して相対回転可能に取り付けられている。取付けに際しては、後部取付孔26に回転軸11の前端部と供給管12の前端部を進入させ、回転軸11の前端部に後部取付孔26をねじ込みにより固着する。これにより、回転霧化頭20が、回転軸11と一体となって本体部10に対して高速で回転可能となる。また、供給管12の前端部は貫通孔39を貫通し、供給管12の前端の開口が供給室40内に臨んだ状態となる。さらに、回転霧化頭20を本体部10に組み付けた状態では、左右一対のエア噴出部16が、回転霧化頭20に対しその左方位置と右方位置とに分かれ、且つ回転霧化頭20と同心の円弧状に配置される。エア噴出部16の開口方向は、回転霧化頭20の筒状部材21の外周前端部を指向する向きとなっている。
【0026】
次に、本実施形態の作用を説明する。
かかる噴霧装置Aは、図8及び図9に示すように、水平方向に並ぶ固定金型Daと可動金型Dbに対して離型剤Bを塗布するために用いられる。塗布するときには、固定金型Daと可動金型Dbが左右方向に型開きして水平方向に離間した状態において、この両金型Da,Dbの間に回転霧化頭20(噴霧装置A)を進入させる。このときの回転霧化頭20の軸線は、水平方向、即ち両金型Da,Dbの型開き方向に対して直角な方向となっている。そして、両金型Da,Dbの間に回転霧化頭20を進入させた状態で、回転霧化頭20を高速回転させながら、回転霧化頭20に離型剤Bを供給するとともに、エア噴出部16からエアを噴出させる。
【0027】
離型剤Bは、供給管12を通して供給室40内に供給され、供給室40内では、回転霧化頭20の回転によって生じる遠心力により、離型剤Bが外周側へ移動し、供給路43の加速部33に流入する。加速部33内では、遠心力により離型剤Bが径方向外側へ移動するのであるが、加速部33内における離型剤Bの移動方向は、回転霧化頭20の回転中心に対して直角に近い角度、つまり遠心力とほぼ同じ向きとなっている。したがって、加速部33内では離型剤Bが十分に加速及び加圧される。
【0028】
加速部33内で加速された離型剤Bは、吐出部42内に流入して、転向面28に当たる。転向面28に当たった離型剤Bは、径方向外向きから前向きへと移動方向を変えて拡散面35の衝突面36に供給される。このとき、離型剤Bは十分に加速されており、また衝突面36は、吐出部42からの離型剤Bの吐出方向に対して直角に近い面となっているので、離型剤Bは衝突面36に対して勢い良く衝突することになる。そして、この衝突の勢いにより、離型剤Bは拡散面35上で一気に薄く延ばされることになる。
【0029】
衝突面36において薄く延ばされた離型剤Bは、遠心力と衝突面36の傾斜とにより外周側の流動面37上へ速やかに移動し、流動面37上では離型剤Bが薄く延ばされた状態にままで、拡散面35(流動面37)の外周縁に至り、遠心力により、拡散面35の外周縁から微粒化(霧化)された状態で径方向外方へ放出される。
【0030】
また、回転霧化頭20の後方において回転霧化頭20の回転中心を挟んだ左右2位置に設けた一対のエア噴出部16からは、回転霧化頭20の外周に沿うように前方へエアが噴出される。この一対のエア噴出口15から回転霧化頭20の外周に沿うように噴出したエアは、左右2手に分かれたエア流となって拡散面35に衝突し、2手に分かれた状態のままで、拡散面35に沿って径方向外向き(つまり、左右方向)に流動し、そのまま拡散面35の外周縁から互いに反対の向き(つまり、左右方向)に分かれた状態で放出される。
【0031】
このとき、拡散面35の外周縁のうち2つのエア流と対応する左部領域と右部領域領域においては、霧化状態の液剤がそれと対応するエア流に巻き込まれる。一方、拡散面35の外周縁のうちエア流と対応しない上部領域と下部領域においては、霧化状態となった液剤が左右2つのエア流のうちいずれかのエア流に吸い寄せられる。これにより、拡散面35の外周縁から全周に亘って霧化状態で放出された液剤は、左右2手に分かれたエア流に乗じて互いに反対向きに放出されることになる。
【0032】
このように左右に分かれた霧化状態の離型剤Bは、夫々、固定金型Daの成形面と可動金型Dbの成形面に対して別々に塗布される。離型剤Bは上下方向には放出されないので、金型Da,Dbに塗布されずに無駄に放出される離型剤Bの量は少なくて済む。
【0033】
本実施形態の回転霧化頭20は、離型剤Bが供給される供給室40と、供給室40に連通するとともに回転霧化頭20の回転中心から偏心した位置において供給室40の外部に開口する供給路43と、供給路43と対向するように配された拡散面35とを備えて構成されている。そして、供給室40内の離型剤Bは、遠心力により供給路43から拡散面35に対して衝突するように供給され、その衝突の勢いにより、拡散面35上で薄く延ばされ、拡散面35の外周から微粒化されて噴霧される。本実施形態によれば、離型剤Bを、拡散面35上で径方向に長く移動させなくても、薄く延ばすことができるので、拡散面35の外径を小さく抑えることが可能であり、狭い空間においても均一に微粒化して良好な噴霧を行うことができる。
【0034】
また、拡散面35は、回転霧化頭20の回転中心と略直交する面となっているので、拡散面35に向けて吐出された離型剤Bは、遠心力により径方向外側へ薄く延ばされながら外周縁に向けて速やかに拡散することができる。このように、離型剤Bが拡散面35上で滞留し難くなっているので、離型剤Bは薄く延ばされ、微粒化が促進される。
また、供給路43が、回転霧化頭20の回転中心と略平行な向き、即ち拡散面35に対して略直角に開口しているので、拡散面35に対する離型剤Bの衝突の勢いが減衰されることはない。
【0035】
また、供給路43は、拡散面35と対向するように開口する吐出部42と、吐出部42と供給室40との間に配されて回転霧化頭20の回転中心に対して交差するように径方向に延びた加速部33とを備えて構成されている。この構成により、供給室40内の離型剤Bは、加速部33を通る間に遠心力により十分に加速され、吐出部42から加圧された状態で拡散面35に向けて吐出されるので、拡散面35に対する衝突の勢いが強められる。これにより、離型剤Bは十分に薄く延ばされ、良好な微粒化が行われる。
【0036】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では液剤が離型剤である場合について説明したが、本発明は、塗料以外の液剤(例えば、塗料、潤滑油、防虫剤、殺虫剤、消毒剤、防水剤、防錆剤など)にも適用できる。
(2)上記実施形態では噴霧対象が金型である場合について説明したが、本発明は、噴霧対象が金型以外(例えば、被塗物、機械部品、植物など)である場合にも適用できる。
(3)上記実施形態では供給路の吐出部が前方に向けて開口するとともに、拡散面が後方に面する形態としたが、吐出部が後方に向けて開口するとともに、拡散面が前方に面する形態としてもよく、あるいは、吐出部が径方向外向きに開口するとともに、拡散面が径方向内側に面する形態としてもい。
(4)上記実施形態では供給路を屈曲させ、供給路の外部への吐出部とこの吐出部を除いた加速部とが、互いに異なる向きとなるようにしたが、供給路はその全長に亘って一直線状に延びた形態であってもよい。
(5)上記実施形態では回転霧化頭の回転軸を水平の向きにして噴霧を行うようにしたが、回転霧化頭の回転軸の方向は、両金型の型開き方向に対して交差する方向であれば、上下方向でも、斜め方向でもよい。
(6)上記実施形態では、円形に開口する複数の噴出口を円弧状に配置することによってエア噴出口を構成したが、エア噴出部は、円弧状に細長く開口する噴出口であってもよい。この場合、複数の円弧形のエア噴出口を、円弧状に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態1の噴霧装置の断面図
【図2】噴霧装置の正面図
【図3】回転霧化頭の断面図
【図4】回転霧化頭の背面図
【図5】回転霧化頭を構成する筒状部材の断面図
【図6】回転霧化頭を構成するフロント部材の断面図
【図7】フロント部材の背面図
【図8】噴霧装置を用いて金型に離型剤を塗布している様子をあらわす正面図
【図9】噴霧装置を用いて金型に離型剤を塗布している様子をあらわす平面図
【符号の説明】
【0038】
A…噴霧装置
B…離型剤
16…エア噴出口
20…回転霧化頭
33…加速部
35…拡散面
40…供給室
42…吐出部
43…供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部に回転霧化頭を備えており、前記回転霧化頭に供給した液剤を、前記回転霧化頭の外周縁から微粒化した状態で放出して噴霧するようにした噴霧装置において、
前記回転霧化頭は、
液剤が供給される供給室と、
前記供給室に連通するとともに前記回転霧化頭の回転中心から偏心した位置において前記供給室の外部に開口する供給路と、
前記供給路と対向するように配された拡散面とを備えていることを特徴とする噴霧装置。
【請求項2】
前記拡散面が、前記回転霧化頭の回転中心と略直交する形態であり、
前記供給路が、前記回転霧化頭の回転中心と略平行な向きに開口していることを特徴とする請求項1記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記供給路は、前記拡散面と対向するように開口する吐出部と、前記吐出部と前記供給室との間に配されて前記回転霧化頭の回転中心に対して交差するように径方向に延びた加速部とを備えて構成されていることを特徴とする請求項2記載の噴霧装置。
【請求項4】
前記拡散面が、前記回転霧化頭の前端に位置して後方に面する形態とされ、
前記回転霧化頭の後方には、前記回転霧化頭の回転中心を挟んだ2位置から前記回転霧化頭の外周に沿うように前方へエアを噴出する一対のエア噴出部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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