説明

噴霧装置

【課題】高粘度の液体の噴霧機構を簡易な構成として、噴霧装置を小型化させることができる噴霧装置を提供する。
【解決手段】噴霧装置1は、内部に貯溜した高粘度の液体に吐出圧調整手段11により吐出圧を付与して、タールを吐出するシリンジ装置2と、空気を圧縮して、その圧縮空気を吐出する圧縮ポンプ3と、シリンジ装置2及び圧縮ポンプ3と接続されて、シリンジ装置2から吐出された高粘度の液体を圧縮ポンプ3から吐出された圧縮空気により噴霧口31から噴霧対象物に噴霧する噴霧部材4と、を備え、噴霧部材4は、シリンジ装置2からのタールを充填する充填室と、圧縮ポンプ3からの圧縮空気を噴霧口に向かって流通させる気液混合流路体とを有し、充填室内で気液混合流路体に縮径部を形成して、充填室と気液混合流路体の縮径部とを切れ込みを介して連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度の液体を圧縮空気により噴霧する噴霧装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重質油類等を液状で噴霧装置を用いて噴霧する技術が公知となっている。例えば、特許文献1の技術は、重質油類(高粘度の液体)を微細粒子化するため、噴霧装置を用いて気体の噴流により霧吹きの原理で噴霧する。そして、この技術は、特定の有機溶剤と接触させることを目的としているため、噴霧装置を用いて重質油類を広範囲に噴霧する。
【0003】
また、特許文献1の技術において、噴霧装置は、重質油類を噴霧により微細粒子化して有機溶剤と接触させ、高軟化点の微細粒子ピッチを製造することを目的とする装置であるから、製造する微細粒子の量を多くするために装置が大型化していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−102067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、エンジンの耐久性評価試験を行う場合、高粘度の有機液体(タール等)を噴霧するために、噴霧装置を用いる。この噴霧装置は、エンジンの大きさに対応する大きさにして、エンジンの吸気流路付近に取り付ける必要がある。しかも、高粘度の有機液体をエンジンの吸気流路に集中して噴霧する必要がある。そのため、このように取付条件により噴霧装置の大きさに制限があり、かつ高粘度の有機液体を特定の箇所に集中して噴霧しなければならない場合に、仮に特許文献1の噴霧装置を用いると、噴霧装置の大きさが大きすぎるという問題や、噴霧範囲が広すぎて利用性が悪いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、利用性を向上させつつ、小型化することができる噴霧装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、内部に貯溜した高粘度の液体に吐出圧調整手段により吐出圧を付与して、高粘度の液体を吐出するシリンジ装置と、空気を圧縮して、その圧縮空気を吐出する圧縮機と、前記シリンジ装置及び前記圧縮機と接続されて、前記シリンジ装置から吐出された高粘度の液体を前記圧縮機から吐出された圧縮空気により噴霧口から噴霧対象物に噴霧する噴霧部材と、を備え、前記噴霧部材は、前記シリンジ装置からの高粘度の液体を充填する充填室と、前記圧縮機からの圧縮空気を前記噴霧口に向かって流通させる流路とを有し、前記充填室内で前記流路に縮径部を形成して、前記充填室と流路の縮径部とを連通路を介して連通させるものである。
【0009】
請求項2においては、前記噴霧口の口径を0.5mm〜2mmに設定するものである。
【0010】
請求項3においては、前記圧縮機の吐出圧を0.6MPa以上に設定するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、ベンチュリ効果を利用して、高粘度の液体を噴霧対象物に噴霧することが可能となる。したがって、高粘度の液体の噴霧機構を簡易な構成として、噴霧装置を小型化させることができる。
また、高粘度の液体を噴霧部材の噴霧口から特定の方向に集中して噴霧することが可能となる。したがって、噴霧装置の利用状況に応じて、噴霧装置の利用性を向上させることができる。
【0013】
請求項2においては、高粘度の液体の噴霧範囲が広がることが抑制されるとともに、噴霧される液滴が大きくなりすぎて噴霧対象物まで届かずに落下することが防止される。したがって、噴霧装置の利用性を向上させることができる。
【0014】
請求項3においては、高粘度の液体が、充填室から流路内に流入せず充填室内で滞留することが防止される。したがって、噴霧装置の利用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る噴霧装置の全体的な概略構成を示す図。
【図2】噴霧部材の構成を示す図。(a)側面断面図。(b)平面断面図。
【図3】充填室及び気液混合流路体を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0017】
まず、本発明の一実施形態に係る噴霧装置1について図1を用いて説明する。
噴霧装置1は、高粘度の液体を圧縮空気により霧状に吐出(噴霧)する装置である。噴霧装置1は、例えば、本実施形態のように、エンジン100の高粘度の有機液体(タール等)に対する耐久性評価試験に用いられる。
【0018】
噴霧装置1は、シリンジ装置2と、圧縮機としての圧縮ポンプ3と、噴霧部材4と、制御装置5と、シリンジ装置2及び噴霧部材4を固定するための固定台21と、を備える。
【0019】
シリンジ装置2は、内部に貯溜した高粘度の液体に対して後述する吐出圧調整手段11により吐出圧を付与して、高粘度の液体を吐出する装置である。高粘度の液体とは、例えばタールやシリコンオイルなどの物質である。エンジン100の耐久性評価試験には、高粘度の液体としてタールが用いられる。
また、シリンジ装置2は、吐出圧調整手段11と、プランジャ12と、シリンダ13と、可動板14と、から構成される。シリンジ装置2は、固定台21の上面に設けられている。
【0020】
シリンダ13は、軸方向を長手方向とする円筒状に構成されている。シリンダ13は、固定台21の上面に固定されて、横長に配置されている。シリンダ13の軸方向一端部には吐出口15が設けられている。吐出口15は、タールを吐出する部分であり、シリンダ13の本体部よりも断面直径が小さくなるように構成されている。吐出口15は液体通路22と接続されている。また、シリンダ13の吐出口15が設けられている側と反対側の軸方向他端部は開口しており、プランジャ12を挿入することができるように構成されている。また、シリンダ13内部には、高粘度の液体としてのタールが貯溜されている。
【0021】
液体通路22は、配管等から構成されている。液体通路22の液体流通方向上流端は吐出口15に接続され、液体流通方向下流端は後述する噴霧部材4の螺子孔46(図2参照)に接続されている。液体通路22には、電磁弁からなる開閉弁23が設けられる。
開閉弁23は、液体通路22の開閉を切り換える弁である。また、開閉弁23は制御装置5と接続されている。
また、この液体通路22の液体流通方向下流端には螺子22a(図2参照)が設けられて、噴霧部材4の螺子孔46に螺合されている。
【0022】
また、シリンダ13側壁には、シリンダ13内での高粘度の液体の吐出圧を検出するための圧力センサ16が設けられている。圧力センサ16は、例えば、ロードセル型のセンサであり、シリンダ13内部の吐出圧を検出することができるよう構成されている。また、圧力センサ16は、制御装置5と接続されている。
【0023】
プランジャ12は、シリンダ13の軸方向他端部に設けた開口から挿入される。このプランジャ12は、シリンダ13と同軸に配置され、シリンダ13内を軸方向に往復摺動自在に設けられている。プランジャ12の他端は、吐出圧調整手段11と接続された可動板14と連結されている。
【0024】
可動板14は、プランジャ12の他端側に配置され、固定台21にシリンダ13の軸方向に往復移動可能に支持される。可動板14は、吐出圧調整手段11によって、シリンダ13の軸方向に往復移動することができるように構成されている。そして、可動板14がプランジャ12と連結されていることから、この可動板14の往復移動に伴って、プランジャ12が可動板14と一体的に同方向に移動するようになっている。
【0025】
また、吐出圧調整手段11は、可動板14の移動量を調節して、シリンダ13からのタールの吐出量を調整するものである。吐出圧調整手段11は、固定台21内に配置され、この固定台21内で可動板14と連結されている。
本実施形態において、吐出圧調整手段11は、ステップモータと、ステップモータの駆動により回転するガイド螺子とから構成されている。ガイド螺子は、シリンダ13の軸方向と平行に設けられている。ガイド螺子の長さは少なくともプランジャ12の往復摺動の範囲よりも長く設定されている。そして、ガイド螺子が可動板14に形成された螺子孔に螺挿されている。
ガイド螺子がステップモータの駆動により回転すると、ガイド螺子に対する可動板14の位置が相対的に変わり、可動板14が軸方向に移動する。ステップモータの駆動量を調節することにより、可動板14の移動量を調節することができる。また、吐出圧調整手段11によって機械的にプランジャ12を移動させることにより、プランジャ12を一定速度で滑らかに移動させることが可能となる。したがって、タールの吐出における脈動(気泡の混入)を防止することができる。
なお、吐出圧調整手段11は、本実施形態のようなステップモータとガイド螺子とから構成されるものに特に限定するものではない。
【0026】
圧縮ポンプ3は、空気を圧縮してその圧縮空気を吐出する装置である。圧縮ポンプ3は、噴霧部材4と気体通路24を介して接続されている。気体通路24には、電磁弁からなる圧力調整弁25が設けられる。そして、圧力調整弁25の開度を変更することにより、圧縮ポンプ3の吐出圧力を調整することができるようになっている。
【0027】
気体通路24は、配管等から構成されている。気体通路24の気体流通方向上流端は圧縮ポンプ3に接続され、気体流通方向下流端は後述する噴霧部材4の螺子孔45に接続されている。この気体通路24の気体流通方向下流端には螺子24a(図2参照)が設けられて、噴霧部材4の螺子孔45に螺合されている。
また、気体通路24には、気体圧を検出するための気体圧センサ27が設けられている。また、気体圧センサ27は、制御装置5と接続されている。
【0028】
制御装置5は、シリンジ装置2の吐出量及び圧縮ポンプ3の吐出圧力を制御する装置である。制御装置5は、吐出圧調整手段11のステップモータと、開閉弁23と、圧力調整弁25と、圧力センサ16と、気体圧センサ27と、接続されている。
制御装置5は、圧力センサ16及び気体圧センサ27の計測値に基づき、吐出圧調整手段11と圧力調整弁25とを作動させて、吐出圧調整手段11による可動板14の移動量と、圧縮ポンプ3の吐出圧力とを制御することができるように構成されている。
【0029】
制御装置5は、圧力センサ16の計測値に基づき吐出圧調整手段11のステップモータの回転量を調整して、可動板14の移動量を制御する。これにより、制御装置5は、プランジャ12の移動量を制御し、ひいてはプランジャ12がシリンダ13内の高粘度の液体を吐出口15から押し出す量、即ちシリンジ装置2の吐出量を制御することができるようになっている。また、制御装置5は、気体圧センサ27の計測値に基づき、圧縮ポンプ3の圧力調整弁25の開度を調整して、圧縮ポンプ3の吐出圧力を制御することができるようになっている。
【0030】
また、制御装置5は、開閉弁23を作動させて、液体通路22の開閉を制御することができるように構成されている。制御装置5は、シリンジ装置2から噴霧部材4へ高粘度の液体の吐出が行われている場合には、開閉弁23を開状態にし、液体流路22内を高粘度の液体が流れるように制御する。シリンジ装置2から噴霧部材4へ高粘度の液体の吐出が行われていない場合には、開閉弁23を閉状態にし、液体流路22内を高粘度の液体が流れないように制御する。
【0031】
次に、噴霧部材4について図1及び図2を用いて説明する。
噴霧部材4は、シリンジ装置2及び圧縮ポンプ3に接続されて、シリンジ装置2から吐出された高粘度の液体を圧縮ポンプ3から吐出された圧縮空気により噴霧口31から噴霧対象物に噴霧する部材である。噴霧部材4は、図2に示すように、本体部32と噴霧口31を具備する噴霧ノズル33とから構成されている。
【0032】
本体部32は、直方体状に形成されており、金属で構成されている。本実施形態において本体部32は真鍮で構成されている。本体部32は、固定台21に固定されており、シリンジ装置2の一端側に長手方向が本体部32の長手方向(軸方向)と平行になるように配置されている。本体部32には長手方向一端側から挿通孔47が穿設され、該挿通孔47内に後述する気液混合流路体51が挿入され、挿通孔47の他端側が、気体流通孔41と連通される。また、挿通孔47の中途部が液体注入孔42と連通され、挿通孔47内の気液混合流路体51外周側に充填室43が形成されている。そして、挿通孔47の一端側には、噴霧ノズル33の根元側を螺挿するための螺子孔48が設けられている。こうして、本体部32の長手方向一端面、即ちシリンジ装置2側に位置する長手方向他端面の反対側の面に、噴霧ノズル33が取り付けられて、挿通孔47内の気液混合流路体51と連通されている。
【0033】
気体流通孔41は、圧縮ポンプ3からの空気を本体部32の内部に導入するためのものである。気体流通孔41は、本体部32のシリンジ装置2側上面から本体部32の軸心方向(短手方向中心側)に穿設されて挿通孔47の他端側と連通されている。気体流通孔41の前記シリンジ装置2側上面に開口する入口側には、螺子孔45が設けられている。そして、前述のように気体通路24の気体流通方向下流端にある螺子24aが螺子孔45に螺合されて、気体流通孔41が気体通路24と連通されている。
【0034】
液体注入孔42は、シリンジ装置2からの高粘度の液体を本体部32の内部に導入するためのものである。液体注入孔42は、本体部32の横側面から本体部32の軸心方向(短手方向中心側)に穿設されて挿通孔47の中途部と連通されている。液体注入孔42の前記横側面に開口する入口側には、螺子孔46が設けられている。そして、前述のように液体通路22の液体流通方向下流端にある螺子22aが螺子孔46に螺合されて、液体注入孔42が液体通路22と連通されている。
【0035】
充填室43は、本体部32の挿通孔47内面と気液混合流路体51外周面との間に形成される空間であり、高粘度の液体をシリンジ装置2から液体注入孔42を介して流入し、気液混合流路体51内に吐出させるまで充填しておくための空間である。充填室43は、その延出方向中途部(円筒の側部)で液体注入孔42の出口と接続される。
【0036】
噴霧ノズル33は、その長手方向を本体部32の長手方向と同方向として、本体部32と同軸に配置される。噴霧ノズル33は、把持部33aと、噴霧部33bと、螺子33cとから構成されている。
噴霧部33bは長手方向一端である先端側に配置され、把持部33aよりも小径に形成される。
把持部33aは、長手方向中央部に形成されて、つまり、噴霧部33bと螺子33cとの間に配置される。把持部33aは、ナット状に形成されて、噴霧ノズル33の螺子33cを螺子孔37に螺挿する際に作業者が把持、または、工具を嵌める部分である。
噴霧部33bは、その根元側端部を把持部33aの先端側であって噴霧ノズル33の長手方向、即ち気体流通方向と直交する断面の中心部に嵌合させて、把持部33aに取り付けられている。
螺子33cは、長手方向他端である根元側に配置され、本体部32の螺子孔48に螺合されている。これにより、噴霧ノズル33が、先端側(噴霧部33b)が本体部32から離間する方向に突出するように、本体部32の一端面に取り付けられている。
【0037】
また、噴霧ノズル33の中心部には、噴霧通路34が穿設されている。
噴霧通路34は、噴霧ノズル33の気体流通方向に延びて、その気体流通方向と直交する断面の中心部を貫通するように形成されている。噴霧通路34の気体流通方向と直交する断面直径(噴霧ノズル33の内径)は、把持部33aの気体流通方向中途部から徐々に小さくなり、噴霧部33b内では一定となるように設定されている。
【0038】
噴霧部33bの最先端に位置する噴霧通路34の気体流通方向下流端には、噴霧口31が設けられている。噴霧口31は、霧状の高粘度の液体を含んだ空気を噴霧対象物、本実施形態においてはエンジン100の吸気通路へ向けて噴霧ノズル33から噴出させる部分である。噴霧口31の先端部の口径D(図2参照)は、0.5mm〜2mmに設定されている。
【0039】
また、本体部32の内部には圧縮空気の流路として気液混合流路体51が設けられている。気液混合流路体51は、長手方向両端に開口を有する円筒形状の金属製の管から構成される。気液混合流路体51は、その長手方向を本体部32の長手方向と同方向として、充填室43内に本体部32と同軸に配置される。そして、気液混合流路体51の一部が、挿通孔47に隙間なく挿通されている。挿通孔47の気体流通孔41側の開口の口径は、図2(b)に示すように、気液混合流路体51の直径よりも僅かに小さく設定されている。
【0040】
気液混合流路体51は、気体流通孔41側の端部にテーパ加工を施される。そして、気液混合流路体51は、前記テーパ加工を施された端部を充填室43側から挿通孔47に圧入するようにして、挿通孔47を押し広げつつ、この挿通孔47に挿通される。この挿通により、気液混合流路体51の外周面と挿通孔47の内周面とが密着することになる。こうして、圧縮空気が気液混合流路体51の外周面と挿通孔47の内周面との間を流通することが防止されている。気液混合流路体51は、気体流通孔41側の端部を気体流通孔41内に突出させて、気体流通孔41と連通されている。
【0041】
気液混合流路体51の噴霧ノズル33側の端面は、充填室43内で噴霧ノズル33(螺子33c)の根元側の端面と接している。噴霧ノズル33は、螺子33cを螺子孔48へ螺挿することにより、気液混合流路体51を挿通孔47内に圧入させる。この圧入により、気液混合流路体51の噴霧ノズル33側の端面と、噴霧ノズル33の根元側の端面との当接面に圧力がかかり、両端面が密着することになる。こうして、気液混合流路体51内を流れる圧縮空気が充填室43内に漏れることが防止されている。
【0042】
気液混合流路体51の長手方向中途部においては、長手方向(気体流通方向)と直交する断面直径、即ち気液混合流路体51の内径が絞られその他の部分と比較して小さくなっている縮径部51aが形成されている。縮径部51aは、気液混合流路体51の長手方向両側の拡径部51bに挟まれた状態で、充填室43内に配置されて、この気液混合流路体51を長手方向の所定長さにわたって狭くするようになっている。
縮径部51aには、高粘度の液体を充填室43から気液混合流路体51に流入させるための連通路としての切れ込み61が設けられている。切れ込み61は、縮径部51aにおいて気液混合流路体51の側面の一部分を周方向に所定幅切欠いて形成されて、気液混合流路体51を充填室43と連通させるようになっている。切れ込み61の気液混合流路体51長手方向側の幅は、縮径部51aの気液混合流路体51長手方向と直交する断面直径に比べて微小に設定される。ただし、前記連通路は、切れ込み61の代わりに、気液混合流路体51の側面に形成した微少な小孔としてもよい。
【0043】
次に、噴霧装置1を用いて高粘度の液体を噴霧する方法について説明する。
圧縮ポンプ3を駆動させて、空気を圧縮ポンプ3から吐出させる。吐出された圧縮空気は、気体通路24内を通り、気体流通孔41内へと流入する。気体流通孔41内へ流入した空気は、気体流通孔41と連通する気液混合流路体51内へと流入する。
この際、圧縮ポンプ3の吐出圧力は、圧力調整弁25により少なくとも高粘度の液体を本体部32において充填室43から気液混合流路体51内に切れ込み61を介して流入させることができる圧力に調整しており、本実施形態においては0.80MPaとしている。なお、0.60MPa以上の圧力であっても、高粘度の液体を高粘度の液体を本体部32において充填室43から気液混合流路体51内に切れ込み61を介して流入させることができる。
【0044】
また、吐出圧調整手段11により可動板14を移動させて、高粘度の液体をシリンジ装置2のシリンダ13から吐出させる。吐出された高粘度の液体は、液体通路22内を通り、液体注入孔42内へと流入する。液体注入孔42内へと流入した高粘度の液体は、液体注入孔42と連通する充填室43内へと流入する。
この際、吐出圧調整手段11により可動板14を移動させる量を調整して、シリンジ装置2の吐出量、即ち充填室43内へと流入させる高粘度の液体の量を適宜に調節する。
【0045】
充填室43は、シリンジ装置2からの高粘度の液体により充填される。充填室43内に配置された気液混合流路体51においては、図3の矢印Aにて示すように、空気が流れる。このような状態では、気液混合流路体51の縮径部51aにおいて、気液混合流路体51の他の部分に比べて空気の圧力が低下するベンチュリ効果が発生する。
【0046】
すなわち、図3に示すように、気液混合流路体51においては、縮径部51aの位置P2における流速が、位置P2よりも気体流通方向上流側の拡径部51bの位置P1における流速よりも速くなる。そのため、位置P2における空気の圧力が位置P1における空気の圧力より低くなる。このベンチュリ効果により、充填室43内に充填された高粘度の液体が、図3の矢印Bにて示すように、空気の圧力の低くなっている縮径部51a内に臨むように設けられた切れ込み61を通じて、充填室43から気液混合流路体51の縮径部51a内に流入する。流入した高粘度の液体は霧状となって気液混合流路体51を流れる空気と混合し、気液混合流路体51を図3の矢印C方向へ流れる。
【0047】
霧状の高粘度の液体が混合した空気は、気液混合流路体51の気体流通方向下流端から噴霧ノズル33の噴霧通路34内へ流入し、噴霧口31からエンジン100の吸気通路内へ噴霧される。この際、噴霧口31の先端部の口径は0.5mm〜2mmに設定されているため、圧縮空気に含まれた霧状のタールが滴下するのを防止することができる。また、タールの噴霧範囲が広がるのを抑制することができる。
【0048】
以上のように、噴霧装置1は、内部に貯溜した高粘度の液体に吐出圧調整手段11により吐出圧を付与して、タールを吐出するシリンジ装置2と、空気を圧縮して、その圧縮空気を吐出する圧縮ポンプ3と、シリンジ装置2及び圧縮ポンプ3と接続されて、シリンジ装置2から吐出された高粘度の液体を圧縮ポンプ3から吐出された圧縮空気により噴霧口31から噴霧対象物に噴霧する噴霧部材4と、を備え、噴霧部材4は、シリンジ装置2からのタールを充填する充填室43と、圧縮ポンプ3からの圧縮空気を噴霧口31に向かって流通させる気液混合流路体51とを有し、充填室43内で気液混合流路体51に縮径部51aを形成して、充填室43と気液混合流路体51の縮径部51aとを切れ込み61を介して連通させるものである。
このように構成することにより、気液混合流路体51においては、気体流通方向と直交する断面直径、即ち気液混合流路体51の内径の小さい縮径部51aでの空気の圧力が、ベンチュリ効果によりその他の部分に比べて低下して、高粘度の液体が充填室43から縮径部51a内に切れ込み61を介して流入し、噴霧対象物としてのエンジンの吸気通路内に噴霧されることになる。したがって、高粘度の液体の噴霧機構を簡易な構成として、噴霧装置1を小型化させることができる。
また、高粘度の液体を噴霧部材4の噴口から特定の方向に集中して噴霧することが可能となる。これにより、例えば、噴霧装置1を、エンジン100の高粘度の有機液体(タール等)に対する耐久性評価試験に用いる場合において、エンジン100の吸気経路内で高粘度の液体が混合した空気が拡散するのを防止することができるので、吸気に効率良く高粘度の液体が混合した空気を含ませることができる。したがって、噴霧装置1の利用性を向上させることができる。
【0049】
また、噴霧口31の口径を0.5mm〜2mmに設定するものである。
このように構成することにより、タールの噴霧範囲が広がることが抑制される。また、噴霧口31の口径が充分に小さいので、噴霧される液滴が大きくなりすぎて噴霧対象物まで届かずに落下することが防止される。したがって、噴霧装置1の利用性を向上させることができる。
【0050】
また、圧縮ポンプ3の吐出圧を0.6MPa以上に設定するものである。
このように構成することにより、高粘度の液体が、充填室43から気液混合流路体51内に流入せず充填室43内で滞留することが防止される。したがって、噴霧装置1の利用性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 噴霧装置
2 シリンジ装置
3 圧縮ポンプ(圧縮機)
4 噴霧部材
11 吐出圧調整手段
31 噴霧口
43 充填室
51 気液混合流路体
51a 縮径部
51b 拡径部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貯溜した高粘度の液体に吐出圧調整手段により吐出圧を付与して、高粘度の液体を吐出するシリンジ装置と、
空気を圧縮して、その圧縮空気を吐出する圧縮機と、
前記シリンジ装置及び前記圧縮機と接続されて、前記シリンジ装置から吐出された高粘度の液体と、前記圧縮機から吐出された圧縮空気とを混合して噴霧口から噴霧対象物に噴霧する噴霧部材と、
を備え、
前記噴霧部材は、前記シリンジ装置からの高粘度の液体を充填する充填室と、該充填室を貫通し前記圧縮機からの圧縮空気を前記噴霧口に向かって流通させる流路体とを有し、該流路体には前記充填室内で縮径部が形成され、該縮径部に前記充填室と内部とを連通する連通路が形成される、
噴霧装置。
【請求項2】
前記噴霧口の口径を0.5mm〜2mmに設定する、
請求項1に記載の噴霧装置。
【請求項3】
前記圧縮機の吐出圧を0.6MPa以上に設定する、
請求項1に記載の噴霧装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−173061(P2011−173061A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38681(P2010−38681)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】