説明

回帰型フーリエ変換装置およびプログラム

【課題】波形データである入力信号の任意の周波数に対する周波数変換をリアルタイムに行うことが可能であり、かつ極めて単純な構成である回帰型フーリエ変換装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】過去の全ての期間を対象とし、入力信号の時系列の波形値に対して指数関数を乗じた値の離散フーリエ変換を演算するフーリエ変換手段を備えており、指数関数は波形値が過去に遡るにつれて重みが小さくなるように乗じられる回帰型フーリエ変換装置である。極めて単純な演算により周波数変換を演算することができるので、演算速度が速く、入力信号のサンプリング周期ごとに周波数変換の演算結果を得ることができ、入力信号の変化をリアルタイムに周波数解析することができる。検出周波数を任意の値に設定することが可能であるので、所望の周波数に対する周波数解析を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回帰型フーリエ変換装置およびプログラムに関する。さらに詳しくは、音楽データや動画データなどの波形データを入力信号とし、その入力信号をフーリエ変換により周波数変換を行う回帰型フーリエ変換装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
波形データである入力信号の周波数変換は極めて多くの分野で行われており、デジタル画像関連装置、超音波診断装置、音響装置、計測装置などで離散フーリエ変換(DFT)もしくは高速フーリエ変換(FFT)といわれる周波数変換手法が用いられている。
【0003】
図15に示すように、一般的な DFT は、周波数変換を行う一定期間を窓期間と定め、その窓期間中の入力信号の波形値を一定のサンプリング周期で離散化された波形値のデータ列 Dn へと変換し、そのデータ列 Dn に対して離散フーリエ変換を行う。窓期間中のサンプリング数をNとしたときの、時刻tにおいて得られるデータ列 Dn(n=t−N+1, t−N+2,..., t:n は N 個の整数)に対する離散フーリエ変換は次式で表わされる。
【数1】

【数2】

ここで、j は虚数単位であり、ωk は窓期間を1周期とした基本波に対する第 k 高調波(k=0, 1,..., N−1)の角周波数である。FC(k,t) および FS(k,t) はそれぞれ第 k 高調波の余弦変換出力および正弦変換出力であり、次式で表わされる。
【数3】

【数4】

FC(k,t)およびFS(k,t) から、入力信号の振幅スペクトルA(k,t)、位相スペクトルθ(k,t)、電力スペクトル P(k,t) がそれぞれ次式で得られる。
【数5】

【数6】

【数7】

【0004】
DFT を行う DFT 装置における処理手順は以下のとおりである。まず、規定のサンプリング周期で入力信号の波形値を読み込み、各サンプリングにおける波形値を N 個のメモリに一時記憶する。すなわち、メモリに Dt-N+1 〜 Dt のデータ列 Dn が記憶されることになる。そのデータ列 Dn に対して、乗算回路や加算回路などで組み合わされた演算回路により式(3)および式(4)の演算を行う。式(3)および式(4)の演算は、各 k ごとの角周波数 ωk(=0,2π/N,4π/N,...)に対して行われ、それぞれの余弦変換出力および正弦変換出力が求められる。角周波数 ωk に対する余弦変換出力および正弦変換出力を用いて式(5)から式(7)の演算が行われ、入力信号の各種スペクトルが得られる。
【0005】
しかし、DFT 装置においては、式(3)および式(4)で表わされる演算を直接行うため、N2 のオーダーの時間計算量が必要であり、演算処理の負担が非常に大きくなるという問題がある。
【0006】
そこで、式(3)および式(4)の演算にあたり、三角関数の周期性や対称性を利用して高速に演算する手法(バタフライ演算)を用いる FFT が近年では採用されている。この FFT では時間計算量が Nlog2N のオーダーとなり DFT に比べて演算効率を高めることができる。
【0007】
しかし図16に示すように、一般的な FFT および DFT においては、入力信号の波形値を順次メモリに記憶していき、メモリに記憶されたデータ数が N 個になった時点で、式(3)および式(4)の演算が開始される。式(3)および式(4)の演算には一定の演算時間がかかるが、その演算時間の間は入力信号がサンプリングされることはなく、メモリが更新されることはない。式(3)および式(4)の演算終了後に、あるいはさらに式(5)から式(7)の演算の終了後に、再度入力信号の波形値を順次メモリに記憶しなおしていき、メモリに記憶されたデータ数が N 個になった時点で、再び演算が開始される。
つまり、1回目の入力信号のサンプリングと、2回目の入力信号のサンプリングとの間には休止時間があり、その休止時間の間に演算処理が行われている。このため、周波数変換の演算結果はサンプリング時間と演算処理時間を合わせた時間ごとに出力されることになり、入力信号のサンプリング周期ごとに周波数変換の演算結果を得ることができないという問題がある。
【0008】
入力信号の変化を時々刻々と調べる必要がある場合、たとえばリアルタイムに計測され続けている電圧や音の波形などの入力信号の変化を調べる場合には、サンプリング周期ごとにデータ列 Dn を更新して、その更新されるデータ列 Dn に追従して式(3)および式(4)の演算を実行しなければならない。この場合には、式(3)および式(4)の演算を、サンプリング周期ごとに窓期間を変えながら行う必要がある。たとえば図17に示すように、時刻 0 において D-N+1 〜 D0 のデータを窓期間として使用したとすれば、時刻 1 では窓期間の範囲が1単位時間だけずれて D-N+2 〜 D1 のデータを使うことになり、さらに時刻 2 では D-N+3 〜 D2 のデータを使う。
このようなサンプリング周期ごとに更新されるデータ列 Dn に対して、サンプリング周期ごとに周波数変換を行うには演算効率の高い FFT であっても困難である。そのため従来では、同じ処理装置を複数搭載し、並列処理を行うことによりサンプリング周期ごとの演算を実現するパイプライン処理が行われることもある。
しかし、パイプライン処理の場合、同じ処理装置を複数搭載する必要があるため演算装置の規模が大きくなってしまうという問題がある。
【0009】
このようなサンプリング周期ごとの演算に対し、特許文献1には、時刻 t-1 の演算結果に補正を加えて時刻 t の演算結果を得るフーリエ変換装置が記載されている。より詳細には、時刻 t-N と時刻 t との間に入力信号の波形値が変化した値 Dt-Dt-N を用いて、この変化により生じる余弦変換出力および正弦変換出力を求める手法であり、式(3)および式(4)に代えて次式が用いられる。
【数8】

【数9】

このように、式(3)および式(4)に代えて単純な演算とすることで演算処理の負担を小さくし、サンプリング周期ごとに演算結果を出力することを可能としている。
【0010】
しかし、特許文献1記載のフーリエ変換装置は、後述の窓関数を導入したフーリエ変換について考慮されていない。
理論上、フーリエ変換を行うには無限の区間に渡って積分を行わなければならないが、フーリエ変換装置におけるフーリエ変換では、有限区間のデータしか扱うことができないため、式(1)に示すように窓期間のデータ列 Dn が周期的に無限に繰り返されていると仮定して演算している。つまり図18に示すように、時刻 t において Dt-N+1 〜 Dt がデータ列 Dn として取り扱われる場合には、時刻 t-N より過去もしくは時刻 t+1 より未来のデータは Dt-N+1 〜 Dt が周期的に無限に繰り返されており、Dt-N+1 の1つ前のデータは Dt であると仮定して演算している。そのため、最初の値 Dt-N+1 と最後の値 Dt を無理やりつなげることになり、本来の入力信号とは異なった不連続な要素が発生する。この不連続な要素は周波数変換の結果に影響を及ぼし、本来の入力信号とは異なった周波数を検出してしまう。
【0011】
この不連続な要素の影響を排除するために、有限区間外が 0 で、区間内が有界な関数(窓関数)をデータ列 Dn に乗じてフーリエ変換を行うことが知られている。すなわち、式(1)においてデータ列 Dn に窓関数 W(n) をかけた次式を用いるのである。
【数10】

【0012】
一般に窓関数 W(n) としては両端が滑らかに小さくなる山形の関数が使われ、周波数変換に用いられる窓関数としては、ハミング関数(図19参照)やハニング関数などが知られている。窓関数 W(n) をデータ列 Dn にかけることにより、両端の波形値を小さくし、不連続な要素の影響を排除することができる。
【0013】
特許文献1記載のフーリエ変換装置は、このような窓関数 W(n) が使用されると演算することができない。これは式(8)および式(9)に示すように、演算にデータ列 Dn の両端の値の差 Dt-Dt-N を用いており、この両端の値 Dt、Dt-N は窓関数をかけると 0 に近づいてしまうためである。そのため、特許文献1記載のフーリエ変換装置は、窓期間の両端の不連続な要素を排除できず、本来の入力信号とは異なった周波数を検出してしまうという問題がある。
【0014】
ところで、FFT においては、各 k ごとの角周波数 ωk に対する演算、すなわち窓期間を1周期とする基本周波数の整数倍の周波数に対する演算を一度に行うことができるが、任意の k のみについての演算を行うことはできない。また、バタフライ演算において時間計算量を Nlog2N のオーダーとするためには、サンプリング数 N が 2 の累乗でなければならないという制限があり、式(2)に示すように角周波数 ωk はサンプリング数 N の逆数の整数倍となるため、角周波数 ωk のとりうる値に制限がある。そのため、任意の周波数におけるフーリエ変換処理を行うことが極めて困難であるという問題がある。
【0015】
しかし、音楽情報科学における平均率の音階を持つ採譜技術、あるいは画像工学における周波数解析においては、ある周波数の整数倍の周波数だけを対象にした周波数解析では不十分であり、任意の周波数に対する周波数解析が必要である。
【0016】
これに対して特許文献1記載のフーリエ変換装置は、式(8)および式(9)に示すとおり、各 k に対して相互に依存することなく独立に演算することが可能であるので、任意の k の角周波数 ωk のみにつての演算が可能であり、また、サンプリング数 N も 2 の累乗に制限されることなく任意の数を設定することが可能であるので、任意の周波数に対するフーリエ変換処理が可能である。
【0017】
しかし、任意の周波数に対するフーリエ変換処理を行うにはサンプリング数 N を変更しなければならないため、これを演算装置として実現するにはメモリの数の制約などがあり、依然として困難であるという問題がある。
【0018】
また、特許文献1記載のフーリエ変換装置は、従来の DFT 装置や FFT 装置に比べて、構成が単純であり、演算処理も単純であるが、依然として入力信号の波形値をある一定の期間メモリに蓄積し、サンプリングごとにメモリ内の値を更新していく必要がある。そのため、装置としてメモリが必要でありその分だけ装置の規模が大きくなり、処理としてメモリの更新処理が必要でありその分だけ演算時間がかかるという問題がある。
【0019】
なお、特許文献1と同様の従来技術として特許文献2から5があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2002‐32356号公報
【特許文献2】特開1989‐59454号公報
【特許文献3】特開2002‐14948号公報
【特許文献4】特開2002‐49611号公報
【特許文献5】特開2002‐82928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は上記事情に鑑み、波形データである入力信号の任意の周波数に対する周波数変換をリアルタイムに行うことが可能であり、かつ極めて単純な構成である回帰型フーリエ変換装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1発明の回帰型フーリエ変換装置は、波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換装置であって、周波数変換の対象とする入力信号の、周波数変換の基準となる時刻までの過去の全ての期間を対象とし、前記入力信号の時系列の波形値に対して指数関数を乗じた値の離散フーリエ変換を演算するフーリエ変換手段を備えており、前記指数関数は前記波形値が過去に遡るにつれて重みが小さくなるように乗じられることを特徴とする。
第2発明の回帰型フーリエ変換装置は、第1発明において、前記フーリエ変換手段が、離散フーリエ変換の実部である余弦変換出力を演算する余弦変換手段と、離散フーリエ変換の虚部である正弦変換出力を演算する正弦変換手段とからなることを特徴とする。
第3発明の回帰型フーリエ変換装置は、第2発明において、前記余弦変換手段が、入力信号の波形値を入力とし、下式に基づいて余弦変換の演算を行い、
FC(ω,t)=Dtcosωt+αFC(ω,t-1)
(FC(ω,t) は時刻 t における余弦変換出力、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FC(ω,t-1) は時刻 t-1 における余弦変換出力である。)
前記時刻 t における余弦変換出力を出力とすることを特徴とする。
第4発明の回帰型フーリエ変換装置は、第2発明において、前記余弦変換手段が、第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と余弦波発生器と一時記憶装置とからなり、前記余弦波発生器は、周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数の余弦波を生成し、前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と前記余弦波発生器の出力とを乗算し、前記加算器は、前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の余弦変換出力とを加算し、前記余弦変換出力を出力し、前記第2の乗算器は、前記余弦変換出力と前記定数 α とを乗算し、前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の余弦変換出力として一時記憶することを特徴とする。
第5発明の回帰型フーリエ変換装置は、第2発明において、前記正弦変換手段が、入力信号の波形値を入力とし、下式に基づいて正弦変換の演算を行い、
FS(ω,t)=Dtsinωt+αFS(ω,t-1)
(FS(ω,t) は時刻 t における正弦変換出力、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FS(ω,t-1) は時刻 t-1 における正弦変換出力である。)
前記時刻 t における正弦変換出力を出力とすることを特徴とする。
第6発明の回帰型フーリエ変換装置は、第2発明において、前記正弦変換手段が、第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と正弦波発生器と一時記憶装置とからなり、前記正弦波発生器は、周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数の正弦波を生成し、前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と前記正弦波発生器の出力とを乗算し、前記加算器は、前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の正弦変換出力とを加算し、前記正弦変換出力を出力し、前記第2の乗算器は、前記正弦変換出力と前記定数 α とを乗算し、前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の正弦変換出力として一時記憶することを特徴とする。
第7発明の回帰型フーリエ変換装置は、第1,第2,第3,第4,第5または第6発明において、前記フーリエ変換手段は周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対する周波数変換を行うものであり、該フーリエ変換手段を複数備えており、該複数のフーリエ変換手段は並列に配置され、該複数のフーリエ変換手段の前記検出周波数はそれぞれ異なった値に設定されていることを特徴とする。
第8発明の回帰型フーリエ変換装置は、第1,第2,第3,第4,第5または第6発明において、前記フーリエ変換手段と直流成分除去手段を備えており、該直流成分除去手段は、入力信号の波形値を入力とし、該入力信号の直流成分を除去して出力とし、該直流成分除去手段の出力は前記フーリエ変換手段に入力されることを特徴とする。
第9発明の回帰型フーリエ変換装置は、第8発明において、前記直流成分除去手段が、入力信号の波形値を入力とし、該入力信号の波形値を一定期間一時記憶し、下式に基づいて直流成分除去の演算を行い、
D’t=Dt-Dt-T/2
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値、T は周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数の波長、Dt-T/2 は時刻 t-T/2 における入力信号の波形値である。)
前記時刻 t における直流成分除去後の波形値を出力とする減算型直流成分除去手段であることを特徴とする。
第10発明の回帰型フーリエ変換装置は、第8発明において、前記直流成分除去手段が、一時記憶装置と減算器とからなり、前記一時記憶装置は、前記入力信号の波形値を一定期間一時記憶し、前記減算器は、前記入力信号の波形値から、前記一時記憶装置に一時記憶された過去の入力信号の波形値において、周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数の半波長過去の時点の波形値を減算する減算型直流成分除去手段であることを特徴とする。
第11発明の回帰型フーリエ変換装置は、第8発明において、前記直流成分除去手段が、入力信号の波形値を入力とし、下式に基づいて前記入力信号の波形値の平均値を演算し、
<Dt>=cDt+(1-c)<Dt-1>
(<Dt> は時刻 t における入力信号の波形値の平均値、c は 0<c<1 を満たす定数、<Dt-1> は時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値である。)
下式に基づいて直流成分除去の演算を行い、
D’t=Dt-<Dt>
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値である。)
前記時刻 t における直流成分除去後の波形値を出力とする回帰型直流成分除去手段であることを特徴とする。
第12発明の回帰型フーリエ変換装置は、第8発明において、前記直流成分除去手段が、第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と一時記憶装置と減算器とからなり、前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と定数 c(0<c<1)とを乗算し、前記加算器は、前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の入力信号の波形値の平均値とを加算し、前記第2の乗算器は、前記加算器の出力と定数 1-c とを乗算し、前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の入力信号の波形値の平均値として一時記憶し、前記減算器は、前記入力信号の波形値から、前記加算器の出力を減算する回帰型直流成分除去手段であることを特徴とする。
第13発明の回帰型フーリエ変換装置は、第8,第9,第10,第11または第12発明において、前記フーリエ変換手段は周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対する周波数変換を行うものであり、該フーリエ変換手段を複数備えており、前記直流成分除去手段を前記フーリエ変換手段と同数備えており、前記複数のフーリエ変換手段は並列に配置され、前記複数のフーリエ変換手段の前記検出周波数はそれぞれ異なった値に設定され、前記複数のフーリエ変換手段のそれぞれの前段に前記直流成分除去手段が配置され、前記複数のフーリエ変換手段のそれぞれには、前記前段の直流成分除去手段の出力が入力されることを特徴とする。
第14発明の回帰型フーリエ変換装置は、第8,第11または第12発明において、前記フーリエ変換手段は周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対する周波数変換を行うものであり、該フーリエ変換手段を複数備えており、前記直流成分除去手段を1つ備えており、前記複数のフーリエ変換手段は並列に配置され、前記複数のフーリエ変換手段の前記検出周波数はそれぞれ異なった値に設定され、前記直流成分除去手段の出力は前記複数のフーリエ変換手段に入力されることを特徴とする。
第15発明の回帰型フーリエ変換装置は、第2発明において、前記フーリエ変換手段の前記余弦変換出力と前記正弦変換出力とを入力とし、該余弦変換出力と該正弦変換出力とから、前記入力信号の周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対応する成分の振幅を演算し、該入力信号の振幅を出力とする振幅演算手段を備えていることを特徴とする。
第16発明の回帰型フーリエ変換装置は、第2発明において、前記フーリエ変換手段の前記余弦変換出力と前記正弦変換出力とを入力とし、該余弦変換出力と該正弦変換出力とから、前記入力信号の周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対応する成分の位相を演算し、該入力信号の位相を出力とする位相演算手段を備えていることを特徴とする。
第17発明の回帰型フーリエ変換装置は、第2発明において、前記フーリエ変換手段の前記余弦変換出力と前記正弦変換出力とを入力とし、該余弦変換出力と該正弦変換出力とから、前記入力信号の周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対応する成分の電力を演算し、該入力信号の電力を出力とする電力演算手段を備えていることを特徴とする。
第18発明の余弦変換装置は、波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換装置における、余弦変換を演算する余弦変換装置であって、入力信号の波形値を入力とし、下式に基づいて余弦変換の演算を行い、
FC(ω,t)=Dtcosωt+αFC(ω,t-1)
(FC(ω,t) は時刻 t における余弦変換出力、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FC(ω,t-1) は時刻 t-1 における余弦変換出力である。)
前記時刻 t における余弦変換出力を出力とすることを特徴とする。
第19発明の余弦変換装置は、波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換装置における、余弦変換を演算する余弦変換装置であって、第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と余弦波発生器と一時記憶装置とからなり、前記余弦波発生器は、余弦変換において検出する周波数を定める検出周波数の余弦波を生成し、前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と前記余弦波発生器の出力とを乗算し、前記加算器は、前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の余弦変換出力とを加算し、前記余弦変換出力を出力し、前記第2の乗算器は、前記余弦変換出力と前記定数 α とを乗算し、前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の余弦変換出力として一時記憶することを特徴とする。
第20発明の正弦変換装置は、波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換装置における、正弦変換を演算する正弦変換装置であって、入力信号の波形値を入力とし、下式に基づいて正弦変換の演算を行い、
FS(ω,t)=Dtsinωt+αFS(ω,t-1)
(FS(ω,t) は時刻 t における正弦変換出力、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FS(ω,t-1) は時刻 t-1 における正弦変換出力である。)
前記時刻 t における正弦変換出力を出力とすることを特徴とする。
第21発明の正弦変換装置は、波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換装置における、正弦変換を演算する正弦変換装置であって、第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と正弦波発生器と一時記憶装置とからなり、前記正弦波発生器は、正弦変換において検出する周波数を定める検出周波数の正弦波を生成し、前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と前記正弦波発生器の出力とを乗算し、前記加算器は、前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の正弦変換出力とを加算し、前記正弦変換出力を出力し、前記第2の乗算器は、前記正弦変換出力と前記定数 α とを乗算し、前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の正弦変換出力として一時記憶することを特徴とする。
第22発明の減算型直流成分除去装置は、波形データである入力信号の直流成分を除去する直流成分除去装置であって、入力信号の波形値を入力とし、前記入力信号の波形値を一定期間一時記憶し、下式に基づいて直流成分除去の演算を行い、
D’t=Dt-Dt-T/2
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値、T は想定する入力信号の波長、Dt-T/2 は時刻 t-T/2 における入力信号の波形値である。)
前記時刻 t における直流成分除去後の波形値を出力とすることを特徴とする。
第23発明の減算型直流成分除去装置は、波形データである入力信号の直流成分を除去する直流成分除去装置であって、一時記憶装置と減算器とからなり、前記一時記憶装置は、前記入力信号の波形値を一定期間一時記憶し、前記減算器は、前記入力信号の波形値から、前記一時記憶装置に一時記憶された過去の入力信号の波形値において、想定する入力信号の波長の半波長過去の時点の波形値を減算することを特徴とする。
第24発明の回帰型直流成分除去装置は、波形データである入力信号の直流成分を除去する直流成分除去装置であって、入力信号の波形値を入力とし、下式に基づいて前記入力信号の波形値の平均値を演算し、
<Dt>=cDt+(1-c)<Dt-1>
(<Dt> は時刻 t における入力信号の波形値の平均値、c は 0<c<1 を満たす定数、<Dt-1> は時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値である。)
下式に基づいて直流成分除去の演算を行い、
D’t=Dt-<Dt>
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値である。)
前記時刻 t における直流成分除去後の波形値を出力とすることを特徴とする。
第25発明の回帰型直流成分除去装置は、波形データである入力信号の直流成分を除去する直流成分除去装置であって、第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と一時記憶装置と減算器とからなり、前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と定数 c(0<c<1)とを乗算し、前記加算器は、前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の入力信号の波形値の平均値とを加算し、前記第2の乗算器は、前記加算器の出力と定数 1-c とを乗算し、前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の入力信号の波形値の平均値として一時記憶し、前記減算器は、前記入力信号の波形値から、前記加算器の出力を減算することを特徴とする。
第26発明の回帰型フーリエ変換プログラムは、波形データである入力信号の周波数変換をコンピュータに行わせるためのフーリエ変換プログラムであって、入力信号の波形値を読み込む第1ステップと、下式に基づいて余弦変換を演算する第2ステップと、
FC(ω,t)=Dtcosωt+αFC(ω,t-1)
(FC(ω,t) は時刻 t における余弦変換結果、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FC(ω,t-1) は時刻 t-1 における余弦変換結果である。)
前記時刻 t における余弦変換結果を、次回の前記第2ステップの実行において前記時刻 t-1 における余弦変換結果とするために一時記憶装置に一時記憶する第3ステップと、下式に基づいて正弦変換を演算する第4ステップと、
FS(ω,t)=Dtsinωt+αFS(ω,t-1)
(FS(ω,t) は時刻 t における正弦変換結果、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FS(ω,t-1) は時刻 t-1 における正弦変換結果である。)
前記時刻 t における正弦変換結果を、次回の前記第4ステップの実行において前記時刻 t-1 における正弦変換結果とするために一時記憶装置に一時記憶する第5ステップとを、順に繰り返しコンピュータに実行させることを特徴とする。
第27発明の回帰型フーリエ変換プログラムは、第26発明において、前記第1ステップにおいて、入力信号の波形値を読み込んだ後に、該入力信号の直流成分を除去する直流成分除去処理を実行し、該直流成分除去処理で得られる直流成分除去後の波形値を、前記第2ステップおよび前記第4ステップにおける前記時刻 t における入力信号の波形値として用いることを特徴とする。
第28発明の回帰型フーリエ変換プログラムは、第26または第27発明において、前記第2ステップおよび前記第4ステップにおける前記検出周波数を、あらかじめ定められた複数の検出周波数に順に置き換えながら、前記第2ステップから前記第5ステップまでを順に繰り返しコンピュータに実行させることを特徴とする。
第29発明の減算型直流成分除去プログラムは、波形データである入力信号の直流成分の除去をコンピュータに行わせるための直流成分除去プログラムであって、入力信号の波形値を読み込み、前記入力信号の波形値を一定期間一時記憶装置に一時記憶し、下式に基づいて直流成分除去の演算を行う
D’t=Dt-Dt-T/2
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値、T は想定する入力信号の波長、Dt-T/2 は時刻 t-T/2 における入力信号の波形値である。)
ことを特徴とする。
第30発明の回帰型直流成分除去プログラムは、波形データである入力信号の直流成分の除去をコンピュータに行わせるための直流成分除去プログラムであって、入力信号の波形値を読み込み、下式に基づいて前記入力信号の波形値の平均値を演算し、
<Dt>=cDt+(1-c)<Dt-1>
(<Dt> は時刻 t における入力信号の波形値の平均値、c は 0<c<1 を満たす定数、<Dt-1> は時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値である。)
前記時刻 t における入力信号の波形値の平均値を、次回の演算において前記時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値とするために一時記憶装置に一時記憶し、下式に基づいて直流成分除去の演算を行う
D’t=Dt-<Dt>
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の入力信号の波形値である。)
ことを特徴とする。
第31発明の回帰型フーリエ変換方法は、波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換方法であって、入力信号の波形値を読み込む第1ステップと、下式に基づいて余弦変換を演算する第2ステップと、
FC(ω,t)=Dtcosωt+αFC(ω,t-1)
(FC(ω,t) は時刻 t における余弦変換結果、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FC(ω,t-1) は時刻 t-1 における余弦変換結果である。)
前記時刻 t における余弦変換結果を、次回の前記第2ステップの実行において前記時刻 t-1 における余弦変換結果とするために一時記憶する第3ステップと、下式に基づいて正弦変換を演算する第4ステップと、
FS(ω,t)=Dtsinωt+αFS(ω,t-1)
(FS(ω,t) は時刻 t における正弦変換結果、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FS(ω,t-1) は時刻 t-1 における正弦変換結果である。)
前記時刻 t における正弦変換結果を、次回の前記第4ステップの実行において前記時刻 t-1 における正弦変換結果とするために一時記憶する第5ステップとを、順に繰り返し実行することを特徴とする。
第32発明の回帰型フーリエ変換方法は、第31発明において、前記第1ステップにおいて、入力信号の波形値を読み込んだ後に、該入力信号の直流成分を除去する直流成分除去処理を実行し、該直流成分除去処理で得られる直流成分除去後の波形値を、前記第2ステップおよび前記第4ステップにおける前記時刻 t における入力信号の波形値として用いることを特徴とする。
第33発明の回帰型フーリエ変換方法は、第31または第32発明において、前記第2ステップおよび前記第4ステップにおける前記検出周波数を、あらかじめ定められた複数の検出周波数に順に置き換えながら、前記第2ステップから前記第5ステップまでを順に繰り返し実行することを特徴とする。
第34発明の減算型直流成分除去方法は、波形データである入力信号の直流成分の除去を行う直流成分除去方法であって、入力信号の波形値を読み込み、前記入力信号の波形値を一定期間一時記憶し、下式に基づいて直流成分除去の演算を行う
D’t=Dt-Dt-T/2
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値、T は想定する入力信号の波長、Dt-T/2 は時刻 t-T/2 における入力信号の波形値である。)
ことを特徴とする。
第35発明の回帰型直流成分除去方法は、波形データである入力信号の直流成分の除去を行う直流成分除去方法であって、入力信号の波形値を読み込み、下式に基づいて前記入力信号の波形値の平均値を演算し、
<Dt>=cDt+(1-c)<Dt-1>
(<Dt> は時刻 t における入力信号の波形値の平均値、c は 0<c<1 を満たす定数、<Dt-1> は時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値である。)
前記時刻 t における入力信号の波形値の平均値を、次回の演算において前記時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値とするために一時記憶し、下式に基づいて直流成分除去の演算を行う
D’t=Dt-<Dt>
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の入力信号の波形値である。)
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
第1発明によれば、周波数変換の基準となる時刻までの過去の全ての期間を対象としたフーリエ変換を行うので、窓期間の両端により生じる不連続な要素が発生せず、本来の入力信号とは異なった周波数を検出することがない。また、検出周波数を任意の値に設定することが可能であるので、所望の周波数に対する周波数変換を得ることができる。
第2発明によれば、フーリエ変換の実部である余弦変換出力と虚部である正弦変換出力をそれぞれ出力することができるので、その余弦変換出力および正弦変換出力から入力信号の振幅、位相、電力などを演算するのに用いることができる。
第3発明によれば、余弦変換手段は極めて単純な演算を実行するだけであるので、演算速度が速く、入力信号のサンプリング周期ごとに余弦変換の演算結果を得ることができ、入力信号をリアルタイムに余弦変換することができる。また、過去の全ての入力信号を対象としたフーリエ変換を前提としているので、窓期間の両端により生じる不連続な要素が発生せず、本来の入力信号とは異なった周波数を検出することがない。さらに、検出周波数を任意の値に設定することが可能であるので、所望の周波数に対する余弦変換を得ることができる。
第4発明によれば、余弦変換手段により余弦変換の演算を行うことができるので、入力信号に対する余弦変換を得ることができる。また、極めて単純な構成であり、入力信号の波形値を一定期間記憶するメモリも不要であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。また、メモリの更新処理が不要であるので演算速度が速い。
第5発明によれば、正弦変換手段は極めて単純な演算を実行するだけであるので、演算速度が速く、入力信号のサンプリング周期ごとに正弦変換の演算結果を得ることができ、入力信号をリアルタイムに正弦変換することができる。また、過去の全ての入力信号を対象としたフーリエ変換を前提としているので、窓期間の両端により生じる不連続な要素が発生せず、本来の入力信号とは異なった周波数を検出することがない。さらに、検出周波数を任意の値に設定することが可能であるので、所望の周波数に対する正弦変換を得ることができる。
第6発明によれば、正弦変換手段により正弦変換の演算を行うことができるので、入力信号に対する正弦変換を得ることができる。また、極めて単純な構成であり、入力信号の波形値を一定期間記憶するメモリも不要であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。また、メモリの更新処理が不要であるので演算速度が速い。
第7発明によれば、複数の検出周波数に対応するフーリエ変換手段が設けられているので、それぞれの検出周波数に対する入力信号の周波数変換を出力することができ、これにより周波数解析結果をスペクトルとして得ることができる。また、所望の検出周波数に対応するフーリエ変換手段のみを設けることで、所望の周波数のみの周波数解析が可能であり、余分な周波数に対する演算処理を行う必要がないため、演算速度が速く、装置の規模を小さくすることができる。
第8発明によれば、直流成分除去装置が前段に設けられているので、入力信号に直流成分が含まれる場合であっても演算結果が発散することなく、周波数解析を行うことができる。
第9発明によれば、減算型直流成分除去手段は極めて単純な演算を実行することで入力信号の直流成分を除去することができるので、入力信号に直流成分が含まれる場合であっても演算結果が発散することなく、周波数解析を行うことができる。
第10発明によれば、減算型直流成分除去手段により直流成分除去の演算を行うことができるので、入力信号の直流成分を除去することができる。また、極めて単純な構成であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。
第11発明によれば、回帰型直流成分除去手段は極めて単純な演算を実行することで入力信号の直流成分を除去することができるので、入力信号に直流成分が含まれる場合であっても演算結果が発散することなく、周波数解析を行うことができる。
第12発明によれば、回帰型直流成分除去手段により直流成分除去の演算を行うことができるので、入力信号の直流成分を除去することができる。また、極めて単純な構成であり、入力信号の波形値を一定期間記憶するメモリも不要であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。また、メモリの更新処理が不要であるので演算速度が速い。
第13発明によれば、複数の検出周波数に対応するフーリエ変換手段が設けられているので、それぞれの検出周波数に対する入力信号の周波数変換を出力することができ、これにより周波数解析結果をスペクトルとして得ることができる。また、所望の検出周波数に対応するフーリエ変換手段のみを設けることで、所望の周波数のみの周波数解析が可能であり、余分な周波数に対する演算処理を行う必要がないため、演算速度が速く、装置の規模を小さくすることができる。さらに、直流成分除去装置が前段に設けられているので、入力信号に直流成分が含まれる場合であっても演算結果が発散することなく、周波数解析を行うことができる。
第14発明によれば、複数の検出周波数に対応するフーリエ変換手段が設けられているので、それぞれの検出周波数に対する入力信号の周波数変換を出力することができ、これにより周波数解析結果をスペクトルとして得ることができる。また、所望の検出周波数に対応するフーリエ変換手段のみを設けることで、所望の周波数のみの周波数解析が可能であり、余分な周波数に対する演算処理を行う必要がないため、演算速度が速く、装置の規模を小さくすることができる。また、直流成分除去装置が前段に設けられているので、入力信号に直流成分が含まれる場合であっても演算結果が発散することなく、周波数解析を行うことができる。さらに、複数のフーリエ変換手段に対して直流成分除去装置を共通化することができるので、構成が単純となり、装置の規模を小さくすることができる。
第15発明によれば、振幅演算装置が後段に設けられているので、余弦変換出力および正弦変換出力から入力信号の振幅を得ることができる。
第16発明によれば、位相演算装置が後段に設けられているので、余弦変換出力および正弦変換出力から入力信号の位相を得ることができる。
第17発明によれば、電力演算装置が後段に設けられているので、余弦変換出力および正弦変換出力から入力信号の電力を得ることができる。
第18発明によれば、極めて単純な演算を実行するだけであるので、演算速度が速く、入力信号のサンプリング周期ごとに余弦変換の演算結果を得ることができ、入力信号をリアルタイムに余弦変換することができる。また、過去の全ての入力信号を対象としたフーリエ変換を前提としているので、窓期間の両端により生じる不連続な要素が発生せず、本来の入力信号とは異なった周波数を検出することがない。さらに、検出周波数を任意の値に設定することが可能であるので、所望の周波数に対する余弦変換を得ることができる。
第19発明によれば、余弦変換の演算を行うことができるので、入力信号に対する余弦変換を得ることができる。また、極めて単純な構成であり、入力信号の波形値を一定期間記憶するメモリも不要であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。また、メモリの更新処理が不要であるので演算速度が速い。
第20発明によれば、極めて単純な演算を実行するだけであるので、演算速度が速く、入力信号のサンプリング周期ごとに正弦変換の演算結果を得ることができ、入力信号をリアルタイムに正弦変換することができる。また、過去の全ての入力信号を対象としたフーリエ変換を前提としているので、窓期間の両端により生じる不連続な要素が発生せず、本来の入力信号とは異なった周波数を検出することがない。さらに、検出周波数を任意の値に設定することが可能であるので、所望の周波数に対する正弦変換を得ることができる。
第21発明によれば、正弦変換の演算を行うことができるので、入力信号に対する正弦変換を得ることができる。また、極めて単純な構成であり、入力信号の波形値を一定期間記憶するメモリも不要であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。また、メモリの更新処理が不要であるので演算速度が速い。
第22発明によれば、極めて単純な演算を実行することで、入力信号の直流成分を除去することができるので、フーリエ変換手段に直流成分除去後の信号を入力することができる。
第23発明によれば、直流成分除去の演算を行うことができるので、入力信号の直流成分を除去することができる。また、極めて単純な構成であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。
第24発明によれば、極めて単純な演算を実行することで、入力信号の直流成分を除去することができるので、フーリエ変換手段に直流成分除去後の信号を入力することができる。
第25発明によれば、直流成分除去の演算を行うことができるので、入力信号の直流成分を除去することができる。また、極めて単純な構成であり、入力信号の波形値を一定期間記憶するメモリも不要であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。また、メモリの更新処理が不要であるので演算速度が速い。
第26発明によれば、極めて単純な演算により余弦変換と正弦変換を演算することができるので、演算速度が速く、入力信号のサンプリング周期ごとに周波数変換の演算結果を得ることができ、入力信号の変化をリアルタイムに周波数解析することができる。また、過去の全ての入力信号を対象としたフーリエ変換を前提としているので、窓期間の両端により生じる不連続な要素が発生せず、本来の入力信号とは異なった周波数を検出することがない。さらに、検出周波数を任意の値に設定することが可能であるので、所望の周波数に対する周波数解析を行うことができる。
第27発明によれば、直流成分除去処理を実行するので、入力信号に直流成分が含まれる場合であっても演算結果が発散することなく、周波数解析を行うことができる。
第28発明によれば、複数の検出周波数に対する演算を実行するので、それぞれの検出周波数に対する周波数解析をすることができ、これにより周波数解析結果をスペクトルとして得ることができる。また、所望の検出周波数に対する演算のみを実行することで、所望の周波数のみの周波数解析が可能であり、余分な周波数に対する演算を実行する必要がないため、演算速度が速い。
第29発明によれば、極めて単純な演算を実行することで、入力信号の直流成分を除去することができるので、回帰型フーリエ変換プログラムに直流成分除去後の信号を引き渡すことができる。
第30発明によれば、極めて単純な演算を実行することで、入力信号の直流成分を除去することができるので、回帰型フーリエ変換プログラムに直流成分除去後の信号を引き渡すことができる。
第31発明によれば、極めて単純な演算により余弦変換と正弦変換を演算することができるので、即時に演算結果を導くことができる。また、過去の全ての入力信号を対象としたフーリエ変換を前提としているので、窓期間の両端により生じる不連続な要素が発生せず、本来の入力信号とは異なった周波数を検出することがない。さらに、検出周波数を任意の値に設定することが可能であるので、所望の周波数に対する周波数解析を行うことができる。
第32発明によれば、直流成分除去処理を実行するので、入力信号に直流成分が含まれる場合であっても演算結果が発散することなく、周波数解析を行うことができる。
第33発明によれば、複数の検出周波数に対する演算を実行するので、それぞれの検出周波数に対する周波数解析をすることができ、これにより周波数解析結果をスペクトルとして得ることができる。また、所望の検出周波数に対する演算のみを実行することで、所望の周波数のみの周波数解析が可能であり、余分な周波数に対する演算を実行する必要がないため、即時に演算結果を導くことができる。
第34発明によれば、極めて単純な演算を実行することで、入力信号の直流成分を除去することができるので、回帰型フーリエ変換に直流成分除去後の信号を用いることができる。
第35発明によれば、極めて単純な演算を実行することで、入力信号の直流成分を除去することができるので、回帰型フーリエ変換に直流成分除去後の信号を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る余弦変換装置の回路ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る正弦変換装置の回路ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る回帰型フーリエ変換装置の回路ブロック図である。
【図4】複数の検出周波数に対する周波数解析を可能とした回帰型フーリエ変換装置の回路ブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る減算型直流成分除去装置の回路ブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る回帰型直流成分除去装置の回路ブロック図である。
【図7】直流成分除去装置を回帰型フーリエ変換装置の前段に配置した回路ブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る直流成分除去装置を組み合わせた複数の検出周波数に対する周波数解析を可能とした回帰型フーリエ変換装置の回路ブロック図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る直流成分除去装置を組み合わせた複数の検出周波数に対する周波数解析を可能とした回帰型フーリエ変換装置の回路ブロック図である。
【図10】本発明に係る回帰型フーリエ変換プログラムを実行するコンピュータの一実施形態に係るハードウエア構成図である。
【図11】本発明に係る回帰型フーリエ変換プログラムを実行するコンピュータの他の実施形態に係るハードウエア構成図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る回帰型フーリエ変換プログラムのフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態に係る減算型直流成分除去プログラムを含む回帰型フーリエ変換プログラムのフローチャートである。
【図14】本発明の一実施形態に係る回帰型直流成分除去プログラムを含む回帰型フーリエ変換プログラムのフローチャートである。
【図15】一般的な DFT の窓期間の説明図である。
【図16】一般的な FFT および DFT のサンプリング時間と演算処理時間の説明図である。
【図17】サンプリング周期ごとに周波数解析する場合の窓期間の説明図である。
【図18】一般的な FFT および DFT の入力信号の仮定の説明図である。
【図19】ハミング関数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1)原理
つぎに、本発明の原理について説明する。
本発明においては、式(10)における窓関数 W(n) として指数関数 ea(n-t)(a は 0 より大きい定数)を用いる。この窓関数をかけることによりデータ列 Dn に対して現在時刻(周波数変換の基準となる時刻) t よりも過去に遡るにつれてその重みを小さくしていく。
【数11】

【0026】
ここで、本発明では、現在時刻までの過去の全ての期間をフーリエ変換に用いるとして、負の無限大から現在時刻 t までの和としている。すなわち、式(1)におけるサンプリング数 N を無限大としている。
また、角周波数 ω は式(2)で表わされるが、本発明においては N が無限大であり、k は 0 〜無限大までの値をとりうるため、角周波数 ω は 0 〜 2π の任意の値をとることができる。式(11)は1サンプリング周期を1単位時間とした表記としているので、角周波数 ω は、1サンプリング周期を最高の周波数とし、任意の周波数に設定可能である。すなわち本発明においては任意の周波数に対する周波数解析が可能である。以下、この角周波数 ω を検出周波数と称する。
【0027】
フーリエ変換が式(11)で表わされるとき、フーリエ変換の実部を表す余弦変換出力および虚部を表す正弦変換出力は、次式で表わされる。
【数12】

【数13】

【0028】
式(12)で表わされる余弦変換出力 FC は、時刻 t において以下の通りに展開される。
【数14】

また、時刻 t-1 においては以下の通りに展開される。
【数15】

したがって式(14)および式(15)より、余弦変換出力 FC(ω,t) は以下の式で表わすことができる。
【数16】

ここで、e-a は定数であるので、
【数17】

とおくと、式(16)は以下の式で表わすことができる。
【数18】

式(18)は、余弦変換出力 FC(ω,t) が、1単位時間過去の余弦変換出力の演算結果 FC(ω,t-1) と、現在時刻の波形値 Dt との一次線形演算で得られることを示す。すなわち、極めて単純な演算で余弦変換出力を得ることができるのである。
【0029】
同様に正弦変換出力 FS(ω,t) についても次式で表わされ、正弦変換出力が、1単位時間過去の正弦変換出力の演算結果 FS(ω,t-1) と、現在時刻の波形値 Dt との一次線形演算で得ることができ、極めて単純な演算で正弦変換出力を得ることができる。
【数19】

【0030】
また、式(11)において、負の無限大から現在時刻までの和としているが、これは従来技術のように有限区間の波形が周期的に無限に繰り返されていると仮定しておらず、本来のフーリエ変換に近い形をしている。そのため、従来技術で問題となる窓期間の両端により生じる不連続な要素が本発明では発生せず、本来の入力信号とは異なった周波数を検出することがない。
【0031】
さらに、式(18)および式(19)における検出周波数 ω は、前述のとおり、0 〜 2π の任意の値をとることができるので、1サンプリング周期を最高の周波数とし、所望の周波数に対する周波数解析が可能である。例えば、入力信号のサンプリングを 1000Hz で行えば、1000Hz 以下の任意の周波数に対する周波数解析が可能である。
【0032】
なお、窓関数として用いる指数関数 ea(n-t) において、係数 a は周波数分可能と時間分解能を決定する定数である。a の値が小さいほど指数関数のテイルが伸び、過去の波形値の影響を考慮に入れることができるので周波数分解能が高くなり、逆に a の値が大きいほど指数関数のテイルが縮み、現在時刻の波形値の重みが大きくなるので時間分解能が高くなる。
これを式(17)で表わされる α に置き換えると、α の値が大きいほど過去の波形値の影響を考慮に入れることができるので周波数分解能が高くなり、逆に α の値が小さいほど現在時刻の波形値の重みが大きくなるので時間分解能が高くなる。
【0033】
以下、上記のフーリエ変換を回帰型フーリエ変換(RFT:Recursive Fourier Transform)と称する。
【0034】
(2)装置
つぎに、本発明に係る回帰型フーリエ変換を用いた装置について図面に基づき説明する。
【0035】
(2.1)余弦変換装置
まず、式(18)の演算を実現する余弦変換装置について説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る余弦変換装置10は、2つの乗算器11、12と、加算器13と、余弦波発生器14と、レジスタ15とからなる。レジスタ15は1つの値を一時記憶することのできる一時記憶装置である。
余弦波発生器14は特定の検出周波数 ω の余弦波を生成する。乗算器11は入力信号からの波形値と余弦波発生器14からの入力を乗算し、加算器13に出力する。加算器13は乗算器11からの入力とレジスタ15に一時記憶されている値とを加算し、余弦変換出力として出力する。加算器13の出力は乗算器12にも入力され、乗算器12はその加算器13からの入力を α 倍して出力する。レジスタ15は乗算器12からの出力を一時記憶する。
【0036】
余弦変換装置10における時刻 t における余弦変換出力の演算は以下のように行われる。すなわち、時刻 t における入力信号の波形値 Dt と余弦波発生器14の出力 cosωt は乗算器11において乗算され、Dtcosωt が出力される。乗算器11の出力とレジスタ15に一時記憶されている値 αFC(ω,t-1)は、加算器13において加算され余弦変換の値 FC(ω,t) が演算結果として出力される。さらに余弦変換出力 FC(ω,t) は乗算器12において定数 α と乗算され、その出力はレジスタ15に一時記憶される。このレジスタ15に一時記憶された値は時刻 t+1 における余弦変換の際に、加算器13への入力となる。
時刻 t+1 以降の余弦変換出力の演算は上記の繰り返しで順次演算される。
【0037】
この余弦変換装置10によって前述の式(18)の演算を行い、入力信号に対する余弦変換を得ることができる。
余弦変換装置10は、極めて単純な構成であり、入力信号の波形値を一定期間記憶するメモリも不要であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。また、メモリの更新処理が不要であるので演算速度が速い。
なお、上記の余弦変換装置10が特許請求の範囲にいう余弦変換手段および余弦変換装置である。
【0038】
(2.2)正弦変換装置
つぎに、式(19)の演算を実現する正弦変換装置について説明する。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る正弦変換装置20は、2つの乗算器21、22と、加算器23と、正弦波発生器24と、レジスタ25とからなる。その構成と演算処理は余弦波変換装置10における余弦波発生器14を正弦波発生器24におきかえたものであるので説明を省略する。
【0039】
この正弦変換装置20によって前述の式(19)の演算を行い、入力信号に対する正弦変換を得ることができる。
正弦変換装置20も、極めて単純な構成であり、入力信号の波形値を一定期間記憶するメモリも不要であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。また、メモリの更新処理が不要であるので演算速度が速い。
なお、上記の正弦変換装置20が特許請求の範囲にいう正弦変換手段および正弦変換装置である。
【0040】
(2.3)回帰型フーリエ変換装置
これら余弦変換装置10と正弦変換装置20を組み合わせることで回帰型フーリエ変換装置40が構成される。すなわち図3に示すように、回帰型フーリエ変換装置40は、余弦変換装置10と正弦変換装置20が並列に配置され、これらに入力信号からの波形値が入力され、余弦変換装置10からの余弦変換出力と正弦変換装置20からの正弦変換出力が演算装置30に入力されることで構成される。このとき、同一の検出周波数 ω に対する余弦変換出力と正弦変換出力を得る必要があるため、余弦変換装置10の余弦波発生器14と正弦変換装置20の正弦波発生器24の検出周波数 ω は同一に設定される。
なお、上記の余弦変換装置10と正弦変換装置20とで構成される装置が特許請求の範囲にいうフーリエ変換手段である。
【0041】
演算装置30は、式(5)から式(7)の演算をする装置であり、既知の振幅演算装置、位相演算装置、電力演算装置である。これらは使用目的に応じて択一的にあるいは組み合わせて選択すればよい。また、演算装置30は振幅演算装置、位相演算装置、電力演算装置に限られず、余弦変換出力および正弦変換出力を入力とし、何らかの値を出力する演算装置であればよい。
【0042】
演算装置30を余弦変換装置10および正弦変換装置20の後段に設けることで、余弦変換出力および正弦変換出力から、入力信号の振幅、位相、電力などを得ることができる。
なお、上記の演算装置30が特許請求の範囲にいう振幅演算手段、位相演算手段および電力演算手段である。
【0043】
以上のように、回帰型フーリエ変換装置40は極めて単純な構成であり、入力信号の波形値を一定期間記憶するメモリも不要であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。
また、極めて単純な演算を実行するだけであるので、演算速度が速く、サンプリング周期ごとに周波数変換の演算結果を得ることができ、入力信号の変化をリアルタイムに周波数解析することができる。
また、前述のとおり、式(18)および式(19)は、過去の全ての入力信号を対象としたフーリエ変換を前提としているので、窓期間の両端により生じる不連続な要素が発生せず、本来の入力信号とは異なった周波数を検出することがない。
さらに、検出周波数 ω を任意の値に設定することが可能であるので、所望の周波数に対する周波数解析を行うことができる。
【0044】
(2.4)複数の周波数に対する周波数解析
ところで、余弦波発生器14および正弦波発生器24に設定された検出周波数 ω により、回帰型フーリエ変換装置40により検出される周波数が決定する。すなわち、検出周波数 ω により入力信号中の角周波数 ω の成分の振幅などを検出することができるのである。
【0045】
複数の検出周波数 ω に対しても解析を行うためには、目的とする検出周波数ごとに、対応する回帰型フーリエ変換装置40を設ければよい。
すなわち図4に示すように、目的とする検出周波数を ωm(= ω1, ω2,..., ωM:m は M 個の整数)とすれば、M 個の回帰型フーリエ変換装置40を並列に配置し、各回帰型フーリエ変換装置40の余弦波発生器14および正弦波発生器24の検出周波数を ωm に設定するのである。これらの回帰型フーリエ変換装置40に入力信号の波形値を入力することで、それぞれの検出周波数 ωm に対する振幅、位相、電力などを出力することができる。これにより最終的に振幅、位相、電力などのスペクトルを得ることができる。
【0046】
前述のとおり、回帰型フーリエ変換装置40は任意の周波数に対する周波数解析が可能であるので、所望の検出周波数に対応する回帰型フーリエ変換装置40を設けることで、所望の周波数の周波数解析が可能である。そのため、平均率の音階を持つ採譜技術など、特定の周波数のみの解析が必要な場合には、その特定の周波数に対応する回帰型フーリエ変換装置40のみを設けるだけでよい。これにより、他の余分な周波数に対する演算処理を行う必要がないため、演算速度が速く、装置の規模を小さくすることができる。
【0047】
(2.5)直流成分除去装置
前述の回帰型フーリエ変換装置40で実行する演算では、音響信号、超音波、あるいは電波などのように入力信号に直流成分が含まれない場合には問題がないが、入力信号に直流成分が含まれる場合には演算結果が発散してしまう。たとえば、画像の濃度分布を解析するような場合には、画像の平均明るさが直流成分に相当するため、この濃度分布をそのまま入力信号として取り扱うことはできない。
そこで、直流成分を含む入力信号を扱う場合には、回帰型フーリエ変換装置40の前段に入力信号の直流成分を除去する直流成分除去装置を設ける。
【0048】
(2.5.1)減算型直流成分除去装置
入力信号を正弦波や余弦波のような三角関数であると仮定すると、その入力信号に含まれる直流成分は、入力信号を半波長ずらして減じることにより除去することができる。すなわち、入力信号を X(t) とすると、直流成分除去後の信号 X’(t) は次式で表わされる。
【数20】

ここで、T は入力信号の波長である。
【0049】
式(20)を直流成分除去装置において実現する場合、データ列 Dt に対する以下の演算を行うことになる。
【数21】

回帰型フーリエ変換装置40において対象とするのは、入力信号のうち余弦波発生器14および正弦波発生器24に設定された検出周波数 ω の成分であるので、波長 T は、この検出周波数 ω を用いて以下の式で表わされる。
【数22】

また、入力信号のサンプリング周期を τ とすると、
【数23】

であるので、Dt-T/2 は、現在時刻の波形値 Dt から π/ωτ 回前のサンプリング時の波形値である。
なお、式(23)中の π/ωτ は整数でなければならないので、切り捨てや切り上げをして端数処理を行うか、π/ωτ が整数となるような検出周波数 ω を選択することになる。
【0050】
式(21)を演算する減算型直流成分除去装置50は、図5に示すように、メモリ51と減算器52とからなる。
メモリ51は、先入れ先出し(FIFO)型の一時記憶装置であり、Dt 〜 Dt-T/2 が一時記憶される。入力信号の波形値 Dt はこのメモリ51と減算器52に入力され、減算器52では現在時刻の波形値 Dt からメモリ51から入力される半波長過去の時点の波形値 Dt-T/2 が減算され、直流成分が除去された波形値 D’t が出力される。
【0051】
この減算型直流成分除去装置50によって前述の式(21)の演算を行い、入力信号の直流成分を除去することができる。
減算型直流成分除去装置50は、極めて単純な構成であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。
【0052】
図7に示すように、この減算型直流成分除去装置50を回帰型フーリエ変換装置40の前段に設け、減算型直流成分除去装置50により出力される直流成分除去後の波形値 D’t を回帰型フーリエ変換装置40の入力とすれば、入力信号に直流成分が含まれる場合であっても演算結果が発散することなく、周波数解析を行うことができる。
なお、上記の減算型直流成分除去装置50が特許請求の範囲にいう減算型直流成分除去手段および減算型直流成分除去装置である。
【0053】
直流成分を含む入力信号を複数の検出周波数 ωm に対して解析を行う場合には、図8に示すように、並列に配置した回帰型フーリエ変換装置40のそれぞれの前段に、各回帰型フーリエ変換装置40に設定された検出周波数 ωm に対応する減算型直流成分除去装置50を設ければよい。このとき、各減算型直流成分除去装置50において、波長 Tm が次式を満たすように、メモリ51に一時記憶されるデータ列の長さ Dt 〜 Dt-T/2 を設定する。
【数24】

【0054】
なお、式(21)の演算を行うと、入力信号の振幅が2倍になるが、その振幅の補正は、最終的に出力するまでのいずれかの段階で行えばよい。もしくは、最終的に振幅の絶対値が問題とならない場合には、補正を行わなくてもよい。
【0055】
(2.5.2)回帰型直流成分除去装置
前述の減算型直流成分除去装置50に代えて、他の構成をもつ回帰型直流成分除去装置60を直流成分除去装置として用いてもよい。
入力信号の直流成分は、入力信号の平均値で得られる。入力信号の平均値 <Dt> は以下の式で与えられる。
【数25】

ここで、係数 c は 0<c<1 を満たす定数である。
式(25)を展開すると以下の通りとなる。
【数26】

したがって、<Dt> は過去の入力信号の重み付き平均である。
係数 c の値が大きければ現在時刻の波形値 Dt の重みが大きくなり、平均値に算入される入力信号の期間が短くなるが、係数 c の値が小さければ平均値に算入される入力信号の期間が長くなる。現実的には、係数 c は 0.5 よりも小さい値が好ましい。
【0056】
式(25)で与えられる入力信号の平均値 <Dt> を用いれば、直流成分除去後の波形値 D’t は以下の式で表わされる。
【数27】

【0057】
式(27)を演算する回帰型直流成分除去装置60は、図6に示すように、2つの乗算器61、62と、加算器63と、レジスタ64と、減算器65とからなる。レジスタ64は1つの値を一時記憶することのできる一時記憶装置である。
乗算器61は入力信号からの波形値を c 倍して出力する。加算器63は乗算器61からの入力とレジスタ64に一時記憶されている値とを加算し、入力信号の平均値として出力する。加算器63の出力は乗算器62に入力され、乗算器62はその加算器63からの入力を 1-c 倍して出力する。レジスタ64は乗算器62からの出力を一時記憶する。加算器63の出力は減算器65にも入力され、減算器65は入力信号の波形値 Dt から減算器65からの入力を減算して、直流成分除去後の波形値として出力する。
【0058】
回帰型直流成分除去装置60における時刻 t における直流成分除去の演算は以下のように行われる。すなわち、時刻 t における入力信号の波形値 Dt は乗算器61において c 倍され cDt が出力される。乗算器61の出力とレジスタ64に一時記憶されている値 (1-c)<Dt-1> は、加算器63において加算され入力信号の平均値 <Dt> が出力される。平均値 <Dt> は乗算器62において 1-c 倍され、その出力はレジスタ64に一時記憶される。このレジスタ64に一時記憶された値は時刻 t+1 における演算の際に、加算器63への入力となる。一方、減算器65において入力信号の波形値 Dt から加算器63から出力された平均値 <Dt> が減算され、直流成分除去後の波形値 D’t が演算結果として出力される。
時刻 t+1 以降の直流成分除去の演算は上記の繰り返しで順次演算される。
【0059】
この回帰型直流成分除去装置60によって前述の式(25)および式(27)の演算を行い、入力信号の直流成分を除去することができる。
回帰型直流成分除去装置60は、極めて単純な構成であり、入力信号の波形値を一定期間記憶するメモリも不要であるので、装置の規模を小さくすることができ、ひいては生産コストを抑えることができる。また、メモリの更新処理が不要であるので演算速度が速い。
【0060】
図7に示すように、この回帰型直流成分除去装置60を回帰型フーリエ変換装置40の前段に設け、回帰型直流成分除去装置60により出力される直流成分除去後の入力信号を回帰型フーリエ変換装置40の入力とすれば、直流成分を含む入力信号であっても周波数解析を行うことができる。
なお、上記の回帰型直流成分除去装置60が特許請求の範囲にいう回帰型直流成分除去手段および回帰型直流成分除去装置である。
【0061】
直流成分を含む入力信号を複数の検出周波数 ωm に対して解析を行う場合には、図8において減算型直流成分除去装置50に代えて回帰型直流成分除去装置60を設ける構成、すなわち並列に配置した回帰型フーリエ変換装置40のそれぞれの前段に回帰型直流成分除去装置60を設ける構成としてもよいが、図9に示すように、1つの回帰型直流成分除去装置60を設け、その出力を並列に配置した回帰型フーリエ変換装置40に入力する構成とすればよい。回帰型直流成分除去装置60の場合、検出周波数 ωm に依存してその構成を変更する必要がないからである。
この場合、回帰型直流成分除去装置60が1つでよいので、構成が単純となり、装置の規模を小さくすることができる。
【0062】
(3)プログラム
つぎに、本発明に係る回帰型フーリエ変換を用いたプログラムについて図面に基づき説明する。
図10に示すように、本発明に係る回帰型フーリエ変換プログラムを実行するコンピュータ100は主に、ハードディスク110と、CPU120と、メモリ130と、キーボード140と、ディスプレイ150とから構成される。さらにコンピュータ100には、外部装置200がADC201を介して接続されており、ハードディスク110には、本発明に係る回帰型フーリエ変換プログラム111が記憶されている。
外部装置200は、デジタル画像関連装置、超音波診断装置、音響装置、計測装置などの波形データを出力する装置である。ADC201は、アナログデジタルコンバータであり、外部装置200から出力されるアナログ信号を受けて規定のサンプリング周期でデジタル信号に変換する装置である。ADC201は外部装置200の中に組み込まれている場合もある。
【0063】
(3.1)回帰型フーリエ変換プログラム
つぎに、図12に示すフローチャートに基づいて本発明の一実施形態に係る回帰型フーリエ変換プログラムの処理を説明する。
まずステップST1では、CPU120は式(18)および式(19)における定数 α および検出周波数 ω を設定する。ここで、複数の検出周波数 ω に対して解析を行う場合には、検出周波数を ωm(=ω1,ω2,...,ωM)として任意の M 個の値を設定する。定数 α および検出周波数 ωm はプログラムとして固定の値としてもよいが、ユーザがキーボード140から任意の値を入力し、その値を設定するようにしてもよい。
なお、定数 α は 0<α<1 を満たす値に、検出周波数 ω はADC201のサンプリング周波数を最高とした任意の値に設定する。
【0064】
ステップST2では、CPU120はメモリ130に各検出周波数 ωm に対応する余弦変換結果 Cm(=C1,C2,...,CM)および正弦変換結果 Sm(=S1,S2,...,SM)を一時記憶する領域を確保し、そのすべてをゼロクリアする。余弦変換結果 Cm および正弦変換結果 Sm はそれぞれ検出周波数 ωm と同じ M 個の領域である。
【0065】
ステップST3では、CPU120は外部装置200により生成され、ADC201によりデジタル化された波形値を入力信号として読み込み変数 D に設定すると共に、その波形値の時刻を変数 t に設定する。時刻 t は本プログラムのスタート時から経過した時間でもよく、あるいは外部装置200から出力される、波形値を生成した時刻でもよい。
【0066】
つぎにCPU120は、ステップST4で変数 m をゼロクリアし、ステップST5で変数 m をインクリメントする。
【0067】
ステップST6では、CPU120はステップST5で設定された m に対応する検出周波数 ωm に対する余弦変換を演算し、その結果をメモリ130上の Cm に一時記憶する。余弦変換の演算には式(18)に相当する次式が用いられる。
【数28】

ここで、右辺の Cm はメモリ130に一時記憶された余弦変換結果の値であり、1回目の演算ではステップST2においてゼロクリアされているため Cm=0 である。2回目以降の演算では、直前の余弦変換結果の値となる。
【0068】
ステップST7では、ステップST6と同様に、CPU120はステップST5で設定された m に対応する検出周波数 ωm に対する正弦変換を演算し、その結果をメモリ130上の Sm に一時記憶する。正弦変換の演算には式(19)に相当する次式が用いられる。
【数29】

ここで、右辺の Sm はメモリ130に一時記憶された正弦変換結果の値であり、1回目の演算ではステップST2においてゼロクリアされているため Sm=0 である。2回目以降の演算では、直前の正弦変換結果の値となる。
【0069】
ステップST8では、CPU120は m = M であるかどうかを判断し、m = M である場合には次のステップST9に進み、m = M でない場合にはステップST5にもどる。すなわち、ステップST5からステップST8の処理を m = 1, 2,..., M となるように繰り返し実行することで、各検出周波数 ωm に対応する余弦変換結果 Cm および正弦変換結果 Sm を演算し、それらの値をメモリ130に一時記憶するのである。
【0070】
ステップST9では、CPU120はステップST7までに演算した余弦変換結果 Cm および正弦変換結果 Sm を用いて、式(5)から式(7)に相当する演算を行い、各検出周波数 ωm に対する振幅、位相、電力を求める。もちろん、振幅、位相、電力に限らず、余弦変換結果 Cm および正弦変換結果 Sm から何らかの値を求める演算を行ってもよい。
【0071】
ステップST10では、CPU120はステップST9において求めた振幅、位相、電力などをディスプレイ150にスペクトルなどの形で画面表示する。
【0072】
ステップST11では、CPU120は、ユーザがキーボード140から入力する終了指示、あるいは外部装置200が波形データの生成終了時に発する終了指示があるかどうかを判断し、終了指示があれば本プログラムを終了し、終了指示がない間はステップST3に戻り、次の波形値の読み込み(ステップST3)から画面表示(ステップST10)までを繰り返し行う。
【0073】
なお、本実施形態においては、ステップST3において波形値を外部装置200から読み込んだが、これに代えて、図11に示すようにあらかじめハードディスクに記憶された波形データ112から読み込むようにしてもよい。この場合、過去に記録された、あるいはコンピュータ100に接続されていない外部装置で記録された波形データを本実施形態のプログラムで分析することが可能である。
【0074】
以上のように、本発明に係る回帰型フーリエ変換プログラムは、極めて単純な演算により余弦変換と正弦変換を演算することができるので、演算速度が速く、ADC201のサンプリング周期ごとに周波数変換の演算結果を得ることができ、入力信号の変化をリアルタイムに周波数解析することができる。
また、過去の全ての入力信号を対象としたフーリエ変換を前提としているので、窓期間の両端により生じる不連続な要素が発生せず、本来の入力信号とは異なった周波数を検出することがない。
また、複数の検出周波数 ωm に対する演算を実行するので、それぞれの検出周波数に対する周波数解析をすることができ、これにより周波数解析結果をスペクトルとして得ることができる。
さらに、検出周波数 ωm を任意の値に設定することが可能であるので、所望の周波数に対する周波数解析を行うことができる。この際、余分な周波数に対する演算を実行する必要がないため、演算速度が速い。
【0075】
(3.2)減算型直流成分除去プログラム
つぎに、図13に示すフローチャートに基づいて本発明の一実施形態に係る減算型直流成分除去プログラムを含む回帰型フーリエ変換プログラムの処理を説明する。減算型直流成分除去プログラムは、直流成分を含む入力信号を扱う場合に用いられるプログラムであり、前述の式(21)を実行するためのプログラムである。
本実施形態に係わるプログラムの処理は前述の回帰型フーリエ変換プログラムの処理とほぼ同じであるので、図13中、前述の処理に対応する処理に同じ符号を記した。以下前述の回帰型フーリエ変換プログラムと異なる処理の部分のみについて説明する。
【0076】
本実施形態におけるステップST2では、CPU120は余弦変換結果 Cm および正弦変換結果 Sm を一時記憶する領域に加えて、入力信号の波形値を一定期間一時記憶するための領域 Dn(=D0,D1,D2,...,DN)をメモリ130に確保し、そのすべてをゼロクリアする。波形値の記憶領域の数 N+1 は検出周波数 ωm によって決まり、検出周波数 ωm の中で一番小さい値(仮にω1とする)を用いて次式で表わされる。
【数30】

領域 Dn 中、D0 を現在時刻の波形値の記憶領域とし、残りの N 個の領域を π/ω1τ 回前のサンプリングまでの過去の波形値の記憶領域とするのである。
検出周波数 ωm の中で一番小さい値を用いたのは、式(21)の演算に当たり、この場合が一番過去の波形値を用いる必要があるからであり、他の検出周波数での演算に用いる過去の波形値を包括することができるからである。
【0077】
つぎにステップST3では、CPU120は波形値を外部装置200もしくは波形データ112から読み込み、その波形値をメモリ130上の Dn に一時記憶する。このとき、一番過去の波形値 DN は削除され、DN-1 の値が DN として一時記憶される。さらに、DN-2 の値が DN-1 の値へ一時記憶されるというように、Dn の値は順にシフトされ、最終的には D0 が今回読み込んだ波形値となり、D1〜DN が前回から N 回前のサンプリング時の波形値となるように一時記憶される。
【0078】
つぎに、ステップST5とステップST6の間に、直流成分除去処理Aが実行される。直成分除去処理Aが減算型直流成分除去プログラムに相当する。
直流成分除去処理Aにおいて、まずステップSTA1では、CPU120は以下の演算を行う。
【数31】

ここで、τ はADC201もしくは波形データ112のサンプリング周期であり、ωm はステップST5において設定される m に対応する検出周波数 ωm である。すなわち n は検出周波数 ωm の半波長過去の時点のサンプリングを示す値となる。
【0079】
つぎにステップSTA2において、CPU120は次式の演算を行う。
【数32】

右辺の D0 はステップST3で一時記憶された現在時刻の波形値であり、Dn はメモリ130上に一時記憶された半波長過去の時点の波形値である。すなわち、式(32)は前述の式(21)に相当し、左辺の D は直流成分除去後の波形値を意味する。
この直流成分除去後の波形値 D を用いて、ステップST6およびステップST7で余弦変換および正弦変換を演算する。
【0080】
以上のような極めて単純な演算である直流成分除去処理Aを実行することで、入力信号の直流成分を除去することができるので、外部装置200により生成される波形データ、もしくはハードディスク110に記録された波形データ112が直流成分を含む場合であっても、演算結果が発散することなく、周波数解析を行うことができる。
【0081】
(3.3)回帰型直流成分除去プログラム
つぎに、図14に示すフローチャートに基づいて本発明の一実施形態に係る回帰型直流成分除去プログラムを含む回帰型フーリエ変換プログラムの処理を説明する。回帰型直流成分除去プログラムは、直流成分を含む入力信号を扱う場合に用いられるプログラムであり、前述の式(25)および式(27)を実行するためのプログラムである。
本実施形態に係わるプログラムの処理も前述の回帰型フーリエ変換プログラムの処理とほぼ同じであるので、図14中、前述の処理に対応する処理に同じ符号を記した。以下前述の回帰型フーリエ変換プログラムと異なる処理の部分のみを説明する。
【0082】
本実施形態におけるステップST1では、CPU120は定数 α、検出周波数 ω の他に、式(25)における定数 c を設定する。定数 c においてもプログラムとして固定の値としてもよいが、ユーザがキーボード140から任意の値を入力し、その値を設定するようにしてもよい。
なお、定数 c は 0<c<1 を満たす値に設定する。
【0083】
つぎにステップST2では、CPU120は余弦変換結果 Cm および正弦変換結果 Sm を一時記憶する領域に加えて、波形値の平均値を一時記憶するための領域 <D> をメモリ130に確保し、そのすべてをゼロクリアする。<D> は一つの値を保持できる領域である。
【0084】
つぎに、ステップST3とステップST4の間に、直流成分除去処理Bが実行される。直成分除去処理Bが回帰型直流成分除去プログラムに相当する。
直流成分除去処理Bにおいて、まずステップSTB1では、CPU120は以下の演算を行う。
【数33】

式(33)は前述の式(25)に相当し、右辺の D はステップST3で一時記憶された現在時刻の波形値であり、<D> はメモリ130上に一時記憶された過去の波形値の平均値である。<D> は、1回目の演算ではステップST2においてゼロクリアされているため <D>=0 である。2回目以降の演算では、直前の波形値の平均値となる。式(33)によって演算された結果で、メモリ130上の <D> を更新する。
【0085】
つぎにステップSTB2において、CPU120は次式の演算を行う。
【数34】

右辺の D はステップST3で一時記憶された現在の波形値であり、<D> はステップSTB1でメモリ130上に一時記憶された波形値の平均値である。式(34)は前述の式(27)に相当し、左辺の D は直流成分除去後の波形値を意味する。
この直流成分除去後の波形値 D を用いて、ステップST6およびステップST7で余弦変換および正弦変換を演算する。
【0086】
以上のような極めて単純な演算である直流成分除去処理Bを実行することで、入力信号の直流成分を除去することができるので、外部装置200により生成される波形データ、もしくはハードディスク110に記録された波形データ112が直流成分を含む場合であっても、演算結果が発散することなく、周波数解析を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る回帰型フーリエ変換装置およびプログラムは、デジタル画像関連装置、超音波診断装置、音響装置、計測装置などで得られる波形データの周波数解析に利用される。
その一例として、音楽の自動採譜技術に利用される。例えば、ピアノ音の場合、ピアノは88段階の音階しかないため、その88の音階に対応する回帰フーリエ変換装置を用意し、それぞれの周波数の振幅を求めることで、どの音階の音が鳴っているかを検出することができる。これにより、リアルタイムに自動採譜が可能となる。
また、超音波ドップラー装置やMRI装置においても利用可能である。超音波診断装置ではドップラー効果の応用により血流解析を行う機能があるが、この機能ではトランスデューサで送信した周波数 f の超音波の反射波に含まれる周波数分布を求める必要がある。この周波数分析は、送信した周波数 f の近傍 f±Δf の周波数成分の振幅検出をリアルタイムに行うことが求められる。また、MRIは強い磁気により水分子のスピン方向を一定方向にそろえた後、特定の電磁波を与えて歳差運動を発生させ、電磁波を遮断して元に戻る際に発生する周期信号を検出して画像化しており、ある特定の周波数の振幅をリアルタイムに測定することが求められる。すなわちこれらは、ある特定の周波数に対してのみ検出可能であればよいため、本発明の回帰型フーリエ変換装置に好適である。
さらに、心臓検査における心臓動態分析にも利用可能である。狭心症や心筋梗塞の診断・治療では、血管造影とともに心臓のどの部分の動きが悪いかを観測し、その領域を栄養する血管を選択的に治療対象とすることがある。この場合、透視X線画像でリアルタイムに心臓の動きの情報を医師に提示するシステムが必要である。現在、非リアルタイムに FFT などで動画の周波数成分を求め心振幅図、心位相図として表示する技術が知られているが、本発明の回帰型フーリエ変換装置を用いることにより、リアルタイムに心臓動態を提示することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 余弦変換装置
20 余弦変換装置
30 演算装置
40 回帰型フーリエ変換装置
50 減算型直流成分除去装置
60 回帰型直流成分除去装置
100 コンピュータ
110 ハードディスク
120 CPU
130 メモリ
140 キーボード
150 ディスプレイ
200 外部装置
201 ADC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換装置であって、
周波数変換の対象とする入力信号の、周波数変換の基準となる時刻までの過去の全ての期間を対象とし、
前記入力信号の時系列の波形値に対して指数関数を乗じた値の離散フーリエ変換を演算するフーリエ変換手段を備えており、
前記指数関数は前記波形値が過去に遡るにつれて重みが小さくなるように乗じられる
ことを特徴とする回帰型フーリエ変換装置。
【請求項2】
前記フーリエ変換手段が、
離散フーリエ変換の実部である余弦変換出力を演算する余弦変換手段と、
離散フーリエ変換の虚部である正弦変換出力を演算する正弦変換手段とからなる
ことを特徴とする請求項1記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項3】
前記余弦変換手段が、
入力信号の波形値を入力とし、
下式に基づいて余弦変換の演算を行い、
FC(ω,t)=Dtcosωt+αFC(ω,t-1)
(FC(ω,t) は時刻 t における余弦変換出力、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FC(ω,t-1) は時刻 t-1 における余弦変換出力である。)
前記時刻 t における余弦変換出力を出力とする
ことを特徴とする請求項2に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項4】
前記余弦変換手段が、
第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と余弦波発生器と一時記憶装置とからなり、
前記余弦波発生器は、周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数の余弦波を生成し、
前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と前記余弦波発生器の出力とを乗算し、
前記加算器は、
前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の余弦変換出力とを加算し、
前記余弦変換出力を出力し、
前記第2の乗算器は、前記余弦変換出力と前記定数 α とを乗算し、
前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の余弦変換出力として一時記憶する
ことを特徴とする請求項2に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項5】
前記正弦変換手段が、
入力信号の波形値を入力とし、
下式に基づいて正弦変換の演算を行い、
FS(ω,t)=Dtsinωt+αFS(ω,t-1)
(FS(ω,t) は時刻 t における正弦変換出力、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FS(ω,t-1) は時刻 t-1 における正弦変換出力である。)
前記時刻 t における正弦変換出力を出力とする
ことを特徴とする請求項2に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項6】
前記正弦変換手段が、
第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と正弦波発生器と一時記憶装置とからなり、
前記正弦波発生器は、周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数の正弦波を生成し、
前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と前記正弦波発生器の出力とを乗算し、
前記加算器は、
前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の正弦変換出力とを加算し、
前記正弦変換出力を出力し、
前記第2の乗算器は、前記正弦変換出力と前記定数 α とを乗算し、
前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の正弦変換出力として一時記憶する
ことを特徴とする請求項2に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項7】
前記フーリエ変換手段は周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対する周波数変換を行うものであり、
該フーリエ変換手段を複数備えており、
該複数のフーリエ変換手段は並列に配置され、
該複数のフーリエ変換手段の前記検出周波数はそれぞれ異なった値に設定されている
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項8】
前記フーリエ変換手段と直流成分除去手段を備えており、
該直流成分除去手段は、
入力信号の波形値を入力とし、
該入力信号の直流成分を除去して出力とし、
該直流成分除去手段の出力は前記フーリエ変換手段に入力される
ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項9】
前記直流成分除去手段が、
入力信号の波形値を入力とし、
該入力信号の波形値を一定期間一時記憶し、
下式に基づいて直流成分除去の演算を行い、
D’t=Dt-Dt-T/2
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値、T は周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数の波長、Dt-T/2 は時刻 t-T/2 における入力信号の波形値である。)
前記時刻 t における直流成分除去後の波形値を出力とする
減算型直流成分除去手段である
ことを特徴とする請求項8に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項10】
前記直流成分除去手段が、
一時記憶装置と減算器とからなり、
前記一時記憶装置は、前記入力信号の波形値を一定期間一時記憶し、
前記減算器は、
前記入力信号の波形値から、
前記一時記憶装置に一時記憶された過去の入力信号の波形値において、周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数の半波長過去の時点の波形値を減算する
減算型直流成分除去手段である
ことを特徴とする請求項8に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項11】
前記直流成分除去手段が、
入力信号の波形値を入力とし、
下式に基づいて前記入力信号の波形値の平均値を演算し、
<Dt>=cDt+(1-c)<Dt-1>
(<Dt> は時刻 t における入力信号の波形値の平均値、c は 0<c<1 を満たす定数、<Dt-1> は時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値である。)
下式に基づいて直流成分除去の演算を行い、
D’t=Dt-<Dt>
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値である。)
前記時刻 t における直流成分除去後の波形値を出力とする
回帰型直流成分除去手段である
ことを特徴とする請求項8に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項12】
前記直流成分除去手段が、
第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と一時記憶装置と減算器とからなり、
前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と定数 c(0<c<1)とを乗算し、
前記加算器は、前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の入力信号の波形値の平均値とを加算し、
前記第2の乗算器は、前記加算器の出力と定数 1-c とを乗算し、
前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の入力信号の波形値の平均値として一時記憶し、
前記減算器は、前記入力信号の波形値から、前記加算器の出力を減算する
回帰型直流成分除去手段である
ことを特徴とする請求項8に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項13】
前記フーリエ変換手段は周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対する周波数変換を行うものであり、
該フーリエ変換手段を複数備えており、
前記直流成分除去手段を前記フーリエ変換手段と同数備えており、
前記複数のフーリエ変換手段は並列に配置され、
前記複数のフーリエ変換手段の前記検出周波数はそれぞれ異なった値に設定され、
前記複数のフーリエ変換手段のそれぞれの前段に前記直流成分除去手段が配置され、
前記複数のフーリエ変換手段のそれぞれには、前記前段の直流成分除去手段の出力が入力される
ことを特徴とする請求項8,9,10,11または12に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項14】
前記フーリエ変換手段は周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対する周波数変換を行うものであり、
該フーリエ変換手段を複数備えており、
前記直流成分除去手段を1つ備えており、
前記複数のフーリエ変換手段は並列に配置され、
前記複数のフーリエ変換手段の前記検出周波数はそれぞれ異なった値に設定され、
前記直流成分除去手段の出力は前記複数のフーリエ変換手段に入力される
ことを特徴とする請求項8,11または12に記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項15】
前記フーリエ変換手段の前記余弦変換出力と前記正弦変換出力とを入力とし、
該余弦変換出力と該正弦変換出力とから、前記入力信号の周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対応する成分の振幅を演算し、
該入力信号の振幅を出力とする振幅演算手段を備えている
ことを特徴とする請求項2記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項16】
前記フーリエ変換手段の前記余弦変換出力と前記正弦変換出力とを入力とし、
該余弦変換出力と該正弦変換出力とから、前記入力信号の周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対応する成分の位相を演算し、
該入力信号の位相を出力とする位相演算手段を備えている
ことを特徴とする請求項2記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項17】
前記フーリエ変換手段の前記余弦変換出力と前記正弦変換出力とを入力とし、
該余弦変換出力と該正弦変換出力とから、前記入力信号の周波数変換において検出する周波数を定める検出周波数に対応する成分の電力を演算し、
該入力信号の電力を出力とする電力演算手段を備えている
ことを特徴とする請求項2記載の回帰型フーリエ変換装置。
【請求項18】
波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換装置における、余弦変換を演算する余弦変換装置であって、
入力信号の波形値を入力とし、
下式に基づいて余弦変換の演算を行い、
FC(ω,t)=Dtcosωt+αFC(ω,t-1)
(FC(ω,t) は時刻 t における余弦変換出力、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FC(ω,t-1) は時刻 t-1 における余弦変換出力である。)
前記時刻 t における余弦変換出力を出力とする
ことを特徴とする余弦変換装置。
【請求項19】
波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換装置における、余弦変換を演算する余弦変換装置であって、
第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と余弦波発生器と一時記憶装置とからなり、
前記余弦波発生器は、余弦変換において検出する周波数を定める検出周波数の余弦波を生成し、
前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と前記余弦波発生器の出力とを乗算し、
前記加算器は、
前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の余弦変換出力とを加算し、
前記余弦変換出力を出力し、
前記第2の乗算器は、前記余弦変換出力と前記定数 α とを乗算し、
前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の余弦変換出力として一時記憶する
ことを特徴とする余弦変換装置。
【請求項20】
波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換装置における、正弦変換を演算する正弦変換装置であって、
入力信号の波形値を入力とし、
下式に基づいて正弦変換の演算を行い、
FS(ω,t)=Dtsinωt+αFS(ω,t-1)
(FS(ω,t) は時刻 t における正弦変換出力、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FS(ω,t-1) は時刻 t-1 における正弦変換出力である。)
前記時刻 t における正弦変換出力を出力とする
ことを特徴とする正弦変換装置。
【請求項21】
波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換装置における、正弦変換を演算する正弦変換装置であって、
第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と正弦波発生器と一時記憶装置とからなり、
前記正弦波発生器は、正弦変換において検出する周波数を定める検出周波数の正弦波を生成し、
前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と前記正弦波発生器の出力とを乗算し、
前記加算器は、
前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の正弦変換出力とを加算し、
前記正弦変換出力を出力し、
前記第2の乗算器は、前記正弦変換出力と前記定数 α とを乗算し、
前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の正弦変換出力として一時記憶する
ことを特徴とする正弦変換装置。
【請求項22】
波形データである入力信号の直流成分を除去する直流成分除去装置であって、
入力信号の波形値を入力とし、
前記入力信号の波形値を一定期間一時記憶し、
下式に基づいて直流成分除去の演算を行い、
D’t=Dt-Dt-T/2
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値、T は想定する入力信号の波長、Dt-T/2 は時刻 t-T/2 における入力信号の波形値である。)
前記時刻 t における直流成分除去後の波形値を出力とする
ことを特徴とする減算型直流成分除去装置。
【請求項23】
波形データである入力信号の直流成分を除去する直流成分除去装置であって、
一時記憶装置と減算器とからなり、
前記一時記憶装置は、前記入力信号の波形値を一定期間一時記憶し、
前記減算器は、
前記入力信号の波形値から、
前記一時記憶装置に一時記憶された過去の入力信号の波形値において、想定する入力信号の波長の半波長過去の時点の波形値を減算する
ことを特徴とする減算型直流成分除去装置。
【請求項24】
波形データである入力信号の直流成分を除去する直流成分除去装置であって、
入力信号の波形値を入力とし、
下式に基づいて前記入力信号の波形値の平均値を演算し、
<Dt>=cDt+(1-c)<Dt-1>
(<Dt> は時刻 t における入力信号の波形値の平均値、c は 0<c<1 を満たす定数、<Dt-1> は時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値である。)
下式に基づいて直流成分除去の演算を行い、
D’t=Dt-<Dt>
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値である。)
前記時刻 t における直流成分除去後の波形値を出力とする
ことを特徴とする回帰型直流成分除去装置。
【請求項25】
波形データである入力信号の直流成分を除去する直流成分除去装置であって、
第1の乗算器と第2の乗算器と加算器と一時記憶装置と減算器とからなり、
前記第1の乗算器は、前記入力信号の波形値と定数 c(0<c<1)とを乗算し、
前記加算器は、前記第1の乗算器の出力と前記一時記憶装置に一時記憶されている前回の入力信号の波形値の平均値とを加算し、
前記第2の乗算器は、前記加算器の出力と定数 1-c とを乗算し、
前記一時記憶装置は、前記第2の乗算器の出力を前回の入力信号の波形値の平均値として一時記憶し、
前記減算器は、前記入力信号の波形値から、前記加算器の出力を減算する
ことを特徴とする回帰型直流成分除去装置。
【請求項26】
波形データである入力信号の周波数変換をコンピュータに行わせるためのフーリエ変換プログラムであって、
入力信号の波形値を読み込む第1ステップと、
下式に基づいて余弦変換を演算する第2ステップと、
FC(ω,t)=Dtcosωt+αFC(ω,t-1)
(FC(ω,t) は時刻 t における余弦変換結果、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FC(ω,t-1) は時刻 t-1 における余弦変換結果である。)
前記時刻 t における余弦変換結果を、次回の前記第2ステップの実行において前記時刻 t-1 における余弦変換結果とするために一時記憶装置に一時記憶する第3ステップと、
下式に基づいて正弦変換を演算する第4ステップと、
FS(ω,t)=Dtsinωt+αFS(ω,t-1)
(FS(ω,t) は時刻 t における正弦変換結果、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FS(ω,t-1) は時刻 t-1 における正弦変換結果である。)
前記時刻 t における正弦変換結果を、次回の前記第4ステップの実行において前記時刻 t-1 における正弦変換結果とするために一時記憶装置に一時記憶する第5ステップとを、
順に繰り返しコンピュータに実行させる
ことを特徴とする回帰型フーリエ変換プログラム。
【請求項27】
前記第1ステップにおいて、
入力信号の波形値を読み込んだ後に、
該入力信号の直流成分を除去する直流成分除去処理を実行し、
該直流成分除去処理で得られる直流成分除去後の波形値を、前記第2ステップおよび前記第4ステップにおける前記時刻 t における入力信号の波形値として用いる
ことを特徴とする請求項26記載の回帰型フーリエ変換プログラム。
【請求項28】
前記第2ステップおよび前記第4ステップにおける前記検出周波数を、あらかじめ定められた複数の検出周波数に順に置き換えながら、
前記第2ステップから前記第5ステップまでを順に繰り返しコンピュータに実行させる
ことを特徴とする請求項26または27記載の回帰型フーリエ変換プログラム。
【請求項29】
波形データである入力信号の直流成分の除去をコンピュータに行わせるための直流成分除去プログラムであって、
入力信号の波形値を読み込み、
前記入力信号の波形値を一定期間一時記憶装置に一時記憶し、
下式に基づいて直流成分除去の演算を行う
D’t=Dt-Dt-T/2
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値、T は想定する入力信号の波長、Dt-T/2 は時刻 t-T/2 における入力信号の波形値である。)
ことを特徴とする減算型直流成分除去プログラム。
【請求項30】
波形データである入力信号の直流成分の除去をコンピュータに行わせるための直流成分除去プログラムであって、
入力信号の波形値を読み込み、
下式に基づいて前記入力信号の波形値の平均値を演算し、
<Dt>=cDt+(1-c)<Dt-1>
(<Dt> は時刻 t における入力信号の波形値の平均値、c は 0<c<1 を満たす定数、<Dt-1> は時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値である。)
前記時刻 t における入力信号の波形値の平均値を、次回の演算において前記時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値とするために一時記憶装置に一時記憶し、
下式に基づいて直流成分除去の演算を行う
D’t=Dt-<Dt>
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の入力信号の波形値である。)
ことを特徴とする回帰型直流成分除去プログラム。
【請求項31】
波形データである入力信号の周波数変換を行うフーリエ変換方法であって、
入力信号の波形値を読み込む第1ステップと、
下式に基づいて余弦変換を演算する第2ステップと、
FC(ω,t)=Dtcosωt+αFC(ω,t-1)
(FC(ω,t) は時刻 t における余弦変換結果、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FC(ω,t-1) は時刻 t-1 における余弦変換結果である。)
前記時刻 t における余弦変換結果を、次回の前記第2ステップの実行において前記時刻 t-1 における余弦変換結果とするために一時記憶する第3ステップと、
下式に基づいて正弦変換を演算する第4ステップと、
FS(ω,t)=Dtsinωt+αFS(ω,t-1)
(FS(ω,t) は時刻 t における正弦変換結果、Dt は時刻 t における入力信号の波形値、ω は検出周波数、α は 0<α<1 を満たす定数、FS(ω,t-1) は時刻 t-1 における正弦変換結果である。)
前記時刻 t における正弦変換結果を、次回の前記第4ステップの実行において前記時刻 t-1 における正弦変換結果とするために一時記憶する第5ステップとを、
順に繰り返し実行する
ことを特徴とする回帰型フーリエ変換方法。
【請求項32】
前記第1ステップにおいて、
入力信号の波形値を読み込んだ後に、
該入力信号の直流成分を除去する直流成分除去処理を実行し、
該直流成分除去処理で得られる直流成分除去後の波形値を、前記第2ステップおよび前記第4ステップにおける前記時刻 t における入力信号の波形値として用いる
ことを特徴とする請求項31記載の回帰型フーリエ変換方法。
【請求項33】
前記第2ステップおよび前記第4ステップにおける前記検出周波数を、あらかじめ定められた複数の検出周波数に順に置き換えながら、
前記第2ステップから前記第5ステップまでを順に繰り返し実行する
ことを特徴とする請求項31または32記載の回帰型フーリエ変換方法。
【請求項34】
波形データである入力信号の直流成分の除去を行う直流成分除去方法であって、
入力信号の波形値を読み込み、
前記入力信号の波形値を一定期間一時記憶し、
下式に基づいて直流成分除去の演算を行う
D’t=Dt-Dt-T/2
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の波形値、T は想定する入力信号の波長、Dt-T/2 は時刻 t-T/2 における入力信号の波形値である。)
ことを特徴とする減算型直流成分除去方法。
【請求項35】
波形データである入力信号の直流成分の除去を行う直流成分除去方法であって、
入力信号の波形値を読み込み、
下式に基づいて前記入力信号の波形値の平均値を演算し、
<Dt>=cDt+(1-c)<Dt-1>
(<Dt> は時刻 t における入力信号の波形値の平均値、c は 0<c<1 を満たす定数、<Dt-1> は時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値である。)
前記時刻 t における入力信号の波形値の平均値を、次回の演算において前記時刻 t-1 における入力信号の波形値の平均値とするために一時記憶し、
下式に基づいて直流成分除去の演算を行う
D’t=Dt-<Dt>
(D’t は時刻 t における直流成分除去後の入力信号の波形値である。)
ことを特徴とする回帰型直流成分除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−267007(P2010−267007A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116692(P2009−116692)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】