説明

回路モジュール、回路モジュールのロット管理方法および回路モジュールの真贋判断方法

【課題】 金属ケースを有さず、ロット情報をレーザで印字することができないような回路モジュールにおいても、容易にロット管理ができるようにする。
【解決手段】 回路基板上に複数の表面実装部品を実装してなる回路モジュールにおいて、前記回路基板上に、ロットごとに異なる電気特性を有する表面実装型受動部品を、ロット管理用部品として実装するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
工業製品の多くは、所定個数を1ロットとしてロット単位で製造され、ロットごとに品質などが管理されることが多い。たとえば、出荷された製品に不具合が見つかった場合、その製品と同じロットの製品を追跡し、品質を確認したり、回収したり、修理したりすることがおこなわれている。そのため、各製品には、ロット番号を明記することが必要になる。
【0003】
たとえば、回路基板上に電子部品を実装してなる回路モジュールにおいては、特許文献1(特開2002−36149号)に開示されるように、製品上部を覆う金属ケースにレーザを照射して、ロット番号(製造番号)を印字することがおこなわれている。
【0004】
しかしながら、近時、金属ケースを有さず、実装された電子部品が回路基板上に露出した回路モジュールが増加してきている。このような金属ケースを有さない回路モジュールに対しては、レーザ照射によりロット番号を印字することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−36149号公報
【発明の概要】
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記金属ケースを有さない回路モジュールに対しては、回路基板上の電子部品が実装されていない部分にロット番号を印刷することが考えられるが、近時の電子部品が高密度に実装された回路モジュールにおいては、回路基板上の電子部品が実装されていないスペースは非常に小さいことが多く、そのような小さなスペースにロット番号を印刷することは極めて難しいという問題がある。
【0008】
また、回路基板上に実装された電子部品のうち、比較的大きいICなどの上面にロット番号を印刷することも考えられるが、その電子部品にダメージを与えるおそれがあるという問題がある。
【0009】
また、シールにロット番号を記載し、そのシールを回路基板上に実装された電子部品のうち、比較的大きいICなどの上面に貼ることも考えられるが、シールが貼られているためその部分を実装機によって吸着することができなくなる、シールがリフロー処理の高温に耐えることができない、シールが剥がれてロット番号が判らなくなるなどの問題がある。
【0010】
さらに、回路モジュールの裏面側の回路基板にロット番号を印刷することも考えられるが、その回路モジュールを電子機器の回路基板に実装した後にロット番号を確認するためには、その回路モジュールを電子機器の回路基板から取り外さなければならないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記した問題を解決するためになされたものであり、その手段として本発明の回路モジュールは、回路基板上に複数の表面実装部品が実装されてなる回路モジュールにおいて、回路基板上に、前記表面実装部品の他に、ロットごとに異なる電気特性を有する表面実装型受動部品を、ロット管理用部品として実装するようにした。
【0012】
ロット管理用部品は、ロットごとに異なる抵抗値を有する、表面実装型抵抗チップとすることができる。
【0013】
また、ロット管理用部品は、他の表面実装部品の実装工程と同一の工程で回路基板に実装するようにしても良い。
【0014】
また、回路基板に測定用パッドを設け、ロット管理用部品の端子電極が測定用パッドに接続されるようにしても良い。
【0015】
さらに、前記回路基板には、ロット管理用部品を複数個実装するようにしても良い。
【0016】
なお、本発明の回路モジュールは、前記ロット管理用部品に換えて、真贋判断用部品を実装することが可能である。
【0017】
一方、本発明の回路モジュールのロット管理方法は、回路基板上に、表面実装部品の他に、ロットごとに異なる電気特性を有する表面実装型受動部品をロット管理用部品として実装しておき、このロット管理用部品の電気特性を測定することにより、ロット管理をおこなうようにした。
【0018】
また、本発明の回路モジュールの真贋判断方法は、回路基板上に、表面実装部品の他に、当該回路モジュールが真正品であることを示す特定の電気特性を有する表面実装型受動部品を真贋判断部品として実装しておき、この真贋判断用部品の電気特性を測定することにより、当該回路モジュールが真正品であるか否かの判断をおこなうようにした。
【発明の効果】
【0019】
本発明の回路モジュールによれば、ロット番号などのロット情報を印字できない回路モジュールにおいても、容易にロット管理をおこなうことができる。
【0020】
また、本発明の回路モジュールは、当該回路モジュールが、自社の真正品であるか否かの真贋判断を容易におこなうことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる回路モジュール、および本発明の第2の実施形態にかかる回路モジュールを示す斜視図である。なお、両者は構造的に同じものであるため図面を共用しているが、第1の実施形態にかかる回路モジュールでは表面実装型受動部品がロット管理用部品として使用され、第2の実施形態にかかる回路モジュールでは表面実装型受動部品が真贋判断用部品として使用されている。
【図2】本発明の第3の実施形態にかかる回路モジュールを示す斜視図である。
【図3】本発明の第4の実施形態にかかる回路モジュールを示す斜視図である。
【図4】本発明の第4の実施形態にかかる回路モジュールの、ロット管理用部品が実装された近傍の回路基板を示す部分断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態にかかる回路モジュールのロット管理用部品の電気特性の測定方法の一例を示す斜視図である。
【図6】本発明の第5の実施形態にかかる回路モジュールを示す斜視図である。
【図7】本発明の第5の実施形態にかかる回路モジュールの、ロット管理用部品が実装された近傍の回路基板を示す部分断面図である。
【図8】本発明の第6の実施形態にかかる回路モジュールを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる回路モジュールを示す斜視図である。
【0023】
図において、1は回路基板であり、回路基板1上には、比較的大きなICなどの表面実装部品2や、コンデンサ、抵抗チップ、コイルチップなどの表面実装部品3が実装されている。なお、図においては、回路基板1上の表面実装部品2、3を実装するためのランド電極の記載を省略した。
【0024】
4は本発明の特徴となる、表面実装型受動部品からなるロット管理用部品であり、両端に端子電極4a、4bが形成されている。ロット管理用部品4は、端子電極4a、4bがリフローはんだなどにより回路基板1上に形成されたランド電極5a、5bに接続固定されて、回路基板1上に実装されている。
【0025】
本実施形態においては、ロット管理用部品4として、表面実装型の抵抗チップを用いた。
【0026】
ロット管理用部品(抵抗チップ)4には、表1に示すように、ロット番号ごとに、異なる抵抗値のものが用いられる。そして、このロット管理用部品4の端子電極4a、4b間の抵抗値をテスターなどで測定することにより、この回路モジュールのロット番号を確認することができる。
【0027】
【表1】

【0028】
なお、ロット管理用部品(抵抗チップ)4は、表2に示すように、ロット番号に換えて、そのロットの製造年月日ごとに、異なる抵抗値のものを用いるようにしてもよい。
【0029】
【表2】

【0030】
また、ロット管理用部品4は抵抗チップではなく、コンデンサチップやコイルチップなどに置き換えても良い。なお、コンデンサチップの場合は容量値で、コイルチップの場合はインダクタンス値でロット情報を管理することになる。ただし、ロット管理用部品4に抵抗チップを用いた場合は、コンデンサチップやコイルチップを用いた場合に比較して、安価である、周囲の他の電子部品からの電磁的な干渉を受けにくい、周囲の他の電子部品に電磁的な干渉を与えにくい、電気的特性(抵抗値)を測定し易いといった利点を有する。また、RFID(Radio Frequency Identification)によりロット情報を管理した場合に比較しても、周囲の他の電子部品からの電磁的な干渉を受けにくい、周囲の他の電子部品に電磁的な干渉を与えにくい、安価であるといった利点を有する。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態にかかる回路モジュールは、図1に示した第1の実施形態にかかる回路モジュールと同じ構造をもつ。(したがって、図1は、本発明の第1および第2の実施形態にかかる回路モジュールの両方を示す斜視図である。)
第1の実施形態にかかる回路モジュールでは、4は表面実装型受動部品からなるロット管理用部品であったが、第2の実施形態にかかる回路モジュールでは、これを真贋判断用部品として用いた。
【0031】
真贋判断用部品4は、自社の真正品の回路モジュールと、第三者のいわゆる模倣品(贋物)との区別をはかるため用いるものである。すなわち、近時、有益な回路モジュールを販売すると、その後から、第三者が外観の極めて類似した回路モジュールを製造、販売してくることがある。当該第三者の回路モジュールが、知的財産権などを侵害する違法品であるか否かは別にしても、市場に流通している回路モジュールや、顧客において使用された回路モジュールが、自社の真正品であるか否かを確認する必要が生じている。真贋判断用部品4は、この確認に用いるものである。
【0032】
本実施形態においては、真贋判断用部品4として抵抗チップを用いた。そして、抵抗チップの電気特性としては、抵抗値の他に、抵抗温度特性、定格電力、最高負荷電圧など、種々の電気特性がある。真贋判断用部品4は、これらの少なくとも1つの電気特性を真贋判断材料に用いるものであり、たとえば、第三者が自社の真正品の回路モジュールを模倣して、類似した回路モジュールを製造するにあたり、模倣が発覚しないように、真贋判断用部品4と同じ位置に同じ抵抗値を持つ抵抗チップを実装したとしても、その抵抗温度特性などを測定することにより、当該抵抗チップが真正品の回路モジュールの真贋判断用部品4に採用したものと同じものであるか否か、ひいては当該回路モジュールが真正品であるか否かを判断することができる。
【0033】
この真贋判断用部品4についても、抵抗チップに限らず、コンデンサチップやコイルチップなど、他の表面実装型受動部品を用いることができる。
【0034】
なお、以下に説明する第3から第7の実施形態にかかる回路モジュールは、いずれもロット管理部品を備えたものであるが、これに換えて、真贋判断用部品を備えたものとして構成することができる。
[第3の実施形態]
図2は、本発明の第3の実施形態にかかる回路モジュールを示す斜視図である。
【0035】
第3の実施形態にかかる回路モジュールにおいては、第1の実施形態にかかる回路モジュールのランド電極5a、5bに換えて、一端に測定用パッド16a、16bが一体的に形成されたランド電極15a、15bに、ロット管理用部品4を実装するようにした。
【0036】
第3の実施形態にかかる回路モジュールにおいては、テスターなどを測定用パッド16a、16b間にあて、ロット管理用部品4の電気的特性を測定することによって、この回路モジュールのロット情報(ロット番号など)を確認することができる。
[第4の実施形態]
図3は本発明の第4の実施形態にかかる回路モジュールを示す斜視図、図4はその回路モジュールの、ロット管理用部品4が実装された近傍を示す部分断面図である。
【0037】
第4の実施形態にかかる回路モジュールにおいては、第3の実施形態にかかる回路モジュールのランド電極15a、15bに換えて、回路基板1の裏面に測定用パッド26a、26bが形成され、それらの測定用パッド26a、26bと回路基板1を貫いて形成されたスルーホール27a、27bを介して接続されたランド電極25a、25bに、ロット管理用部品4を実装するようにした。
【0038】
第4の実施形態にかかる回路モジュールにおいては、テスターなどを回路基板1の裏面の測定用パッド26a、26b間にあて、ロット管理用部品4の電気的特性を測定することによって、この回路モジュールのロット情報を確認することができる。あるいは、図5に示すように、この回路モジュールを電子機器などの回路基板8に実装した後に、テスターなどを実装基板8上に形成された測定パッド9a、9b間にあて、ロット管理用部品4の電気的特性を測定することによって、この回路モジュールのロット情報を確認することができる。
[第5の実施形態]
図6は本発明の第5の実施形態にかかる回路モジュールを示す斜視図、図7はその回路モジュールの、ロット管理用部品4が実装された近傍を示す部分断面図である。
【0039】
第5の実施形態にかかる回路モジュールにおいては、表面実装部品2、3(図示せず)やロット管理用部品4が実装された回路基板1上が、樹脂10によって覆われている。ロット管理用部品4は、回路基板1上に形成されたランド電極35a、35bに実装されている。そして、ランド電極35a、35bは、樹脂10上に形成された測定用パッド36a、36bと、樹脂10を貫いて形成されたスルーホール37a、37bを介して接続されている。
【0040】
なお、樹脂10は、たとえば、加熱されて半溶融状態の熱硬化性樹脂層を、表面実装部品2、3やロット管理用部品4が実装された回路基板1上に配置し、表面実装部品2、3やロット管理用部品4の間に充填した上で、さらに高温で加熱して硬化させて形成することができる。また、スルーホール37a、37bは、硬化後の樹脂10に、たとえば表面側からレーザを照射するなどして孔を形成し、その孔に導電ペーストを充填したうえで焼付けるなどして形成することができる。
【0041】
第5の実施形態にかかる回路モジュールにおいては、テスターなどを樹脂1上の測定用パッド36a、36b間にあて、ロット管理用部品4の電気的特性を測定することによって、この回路モジュールのロット情報を確認することができる。
[第6の実施形態]
図8は、本発明の第6の実施形態にかかる回路モジュールを示す斜視図である。
【0042】
第6の実施形態にかかる回路モジュールにおいては、回路基板1上に形成されたランド電極45a、45bにロット管理用部品14が、ランド電極55a、55bにロット管理用部品24がそれぞれ実装されている。そして、たとえば、ロット管理用部品14にはロット番号ごとに異なる抵抗値の抵抗チップが用いられ、ロット管理用部品24にはロット製造年月日ごとに異なる抵抗値の抵抗チップが用いられている。
【0043】
第6の実施形態にかかる回路モジュールにおいては、テスターなどを端子電極14a、14b間にあててロット管理用部品14の電気的特性を測定し、また端子電極24a、24b間にあててロット管理用部品24の電気的特性を測定して、この回路モジュールのロット情報を確認することができる。
【0044】
なお、回路基板に実装されるロット管理用部品の数は2個に限られず、3個あるいはそれ以上にしても良い。
[第7の実施形態]
第7の実施形態にかかる回路モジュール(図示せず)においては、ロット管理用部品(抵抗チップなど)を複数個用い、かつ、それらを直列または並列に接続するようにした。
【0045】
たとえば、ロット管理用部品として、抵抗値R1の抵抗チップと、抵抗値R2の抵抗チップとを用い、両者を並列に接続した場合、全体抵抗値R=R12/(R1+R2)となり、抵抗値R1、R2の組み合わせを選択することにより、多数の種類の全体抵抗値Rを得ることができ、ロット情報、例えばロット番号を多数構成することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:回路基板
2、3:表面実装部品
4、14、24:ロット管理用部品(真贋判断用部品)
5a、5b、15a、15b、25a、25b、35a、35b、45a、45b、55a、55b:ランド電極
16a、16b、26a、26b、36a、36b:測定用パッド
27a、27b、37a、37b:スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に複数の表面実装部品を実装してなる回路モジュールにおいて、
前記回路基板上に、前記表面実装部品の他に、ロットごとに異なる電気特性を有する表面実装型受動部品が、ロット管理用部品として実装されていることを特徴とする回路モジュール。
【請求項2】
回路基板上に複数の表面実装部品を実装してなる回路モジュールにおいて、
前記回路基板上に、前記表面実装部品の他に、当該回路モジュールが真正品であることを示す特定の電気特性を有する表面実装型受動部品が、真贋判断用部品として実装されていることを特徴とする回路モジュール。
【請求項3】
前記ロット管理用部品または前記真贋判断用部品が、表面実装型抵抗チップであることを特徴とする、請求項1または2に記載された回路モジュール。
【請求項4】
前記ロット管理用部品または前記真贋判断用部品が、前記表面実装部品の実装工程と同一の工程で、前記回路基板に実装されたものであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載された回路モジュール。
【請求項5】
前記回路基板が測定用パッドを有し、前記ロット管理用部品または前記真贋判断用部品の端子電極が、前記測定用パッドに接続されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載された回路モジュール。
【請求項6】
前記ロット管理用部品または真贋判断用部品が、前記回路基板に複数個実装されていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載された回路モジュール。
【請求項7】
回路基板上に複数の表面実装部品を実装してなる回路モジュールのロット管理方法であって、
前記回路基板上に、前記表面実装部品の他に、ロットごとに異なる電気特性を有する表面実装型受動部品をロット管理用部品として実装しておき、このロット管理用部品の電気特性を測定することにより、ロット管理をおこなうことを特徴とする回路モジュールのロット管理方法。
【請求項8】
回路基板上に複数の表面実装部品を実装してなる回路モジュールの真贋判断方法であって、
前記回路基板上に、前記表面実装部品の他に、当該回路モジュールが真正品であることを示す特定の電気特性を有する表面実装型受動部品を真贋判断用部品として実装しておき、この真贋判断用部品の電気特性を測定することにより、当該回路モジュールが真正品であるか否かの判断をおこなうことを特徴とする回路モジュールの真贋判断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−61082(P2011−61082A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210722(P2009−210722)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】