説明

回路モジュール装置

【課題】基板のシールドケース構造を改良して薄型化を実現し、かつコネクタ部分を通じて外部からシールドケース内の基板に外来ノイズや電磁波が到達することを防止可能な回路モジュール装置を提供する。
【解決手段】この発明の回路モジュール装置は、基板3上に配置された電気部品4を囲むように取り付け可能なシールド枠1と、シールド枠の所定の位置に取り付けられるシールドカバー2にてなり、シールド枠は、平面部1aと、その平面部に対して所定の角度で折り曲げられ、基板に配置された電気部品を囲むように取り付けられる折り曲げ部とを有し、シールドカバーは、基板上の電気部品を覆うようにシールド枠に取り付けられ、シールドカバーの平面部分2aがシールド枠の平面部と重なりあうことのない形状に形成され、シールドカバーとシールド枠とを組み立てた状態で、シールド枠の平面部とシールドカバーの平面部がほぼ面一になるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回路基板に設けられた信号端子から入力信号または出力信号に重畳されることのある不要輻射を低減可能な回路モジュール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路モジュールから発生する不要輻射を削減するために、回路モジュール全体をシールドカバー等の電磁波遮蔽物で覆い、外部回路との接続部分に穴をあけ、この穴から接続ケーブル等を用いて信号を入・出力する接続構造が広く利用されている。また、コネクタ等の接続部品をシールド構造物の外部に露出させて接続する接続構造も広く利用されている。
【0003】
なお、特許文献1には、高周波回路部をシールドするシールドケースが提案されており、高周波回路部を囲んでマウントされたシールド枠と、シールド枠の上面から嵌合されて高周波回路部を閉塞するシールドカバーとを有し、シールド枠の少なくとも一部に基板の上面に対して垂直に形成されたフランジ部が設けられ、そのフランジにシールドカバーの縁を嵌合させた状態で、フランジ部先端を、シールドカバーに設けた差込孔に入り込ませる構造が示されている。
【特許文献1】特開2003−133777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシールドケースは、シールドカバー縁部に、シールド先端を差し込む孔を設けたことにより、シールドケースの高さ寸法を吸収することを特徴としているが、シールド枠のマウント面が基板面に実装されることにより、マウント部の厚み分だけシールドケースの厚さが増大する。
【0005】
このことは、シールドケースが、例えば携帯電話のように、大きさに制約のある装置に組み込まれる際に、小型化の妨げとなる問題がある。
【0006】
この発明の目的は、基板のシールドケース構造を改良して薄型化を実現し、かつコネクタ部分を通じて外部からシールドケース内の基板に外来ノイズや電磁波が到達することを防止可能な回路モジュール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記問題点に基づきなされたもので、電気部品が配置された基板と、この基板上に前記電気部品を覆うように取り付けられたシールドケースとを含む回路モジュール装置であって、前記シールドケースは、前記基板上に配置された電気部品を囲むように取り付け可能なシールド枠と、前記シールド枠の所定の位置に取り付けられるシールドカバーにてなり、前記シールド枠は、平面部と、その平面部に対して所定の角度で折り曲げられ前記基板に配置された電気部品を囲むように取り付けられる折り曲げ部とを有し、前記シールドカバーは、前記基板上の電気部品を覆うように前記シールド枠に取り付けられ、前記シールドカバーの平面部分が前記シールド枠の平面部と重なりあうことのない形状に形成され、前記シールドカバーと前記シールド枠とを組み立てた状態で、前記シールド枠の平面部と前記シールドカバーの平面部がほぼ面一になるようにしたことを特徴とする回路モジュール装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シールドカバーの平面部がシールド枠の平面部(フランジ部)に重ならないような形状にすることにより、シールド枠にシールドカバーを取り付けた際、シールドカバーの天面とフランジ部とをほぼ同一平面上に規定できる。従って、シールドカバーの厚み分だけシールドケースを薄型にできる。
【0009】
また、シールドカバーの天面とフランジ部とを、ほぼ同一平面(高さ)としたことで、基板に実装する部品の高さを、基板とシールドカバーとの間の距離よりも小さくすれば、基板上で部品を配置できる位置の制約が解消される。これにより、シールド枠とシールドカバーと、基板上の部品とが接触することを防止でき、部品の配置が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1に示す回路モジュール装置は、例えば携帯端末すなわち携帯電話やパーソナルコンピュータ等のモバイル機器、およびPCカードに内蔵されるチューナ等に代表される高周波回路モジュール装置を示している。
【0012】
図1に示す回路モジュール装置は、シールド枠1と、シールド枠1に嵌合されるシールドカバー2と、シールド枠1の所定位置に固定されたプリント基板3からなる。なお、プリント基板(支持対象物)3には、チューナICや復調IC等の複数の高周波回路4が配置されている。また、シールド枠1とシールドカバー2とでシールドケースが構成されている。
【0013】
シールド枠1は、導電性を有する平面状のシールド板の中央部を、例えばプレス加工により打ち抜き、周辺部を概ね90°に折り曲げることにより、全体として矩形の枠状体を形成している。また、枠状体の四隅の部分には平面状のフランジ部1aが形成されている。また、シールド枠1の折り曲げ部のほぼ中心付近には突起部分1bが設けられており、この突起部分1bには凸部1cが形成されている。
【0014】
一方、シールドカバー2は、シールド枠1の表面を覆うようにシールドカバー1に嵌合するもので、シールドカバー1と組み合わせた際に、シールドカバー1の厚さよりも突出しないように、概ね同一の高さに収まる構造を有している。即ち、基板3の面方向と平行な面方向において、シールド枠1の表面とシールドカバー2の表面とが概ね「面一」となるよう、シールド枠1の打ち抜き部分を覆う平面部2aを有している。また、シールドカバー2は、前記フランジ部1aに対応する部分が除去され、前記シールド枠1の突起部分1bに対応する部分を、例えばプレス加工により概ね90°に折り曲げることにより、シールドカバー2の側面に突起部2bが形成され、この突起部2bには、凹部もしくは孔2cが設けられている。
【0015】
シールド枠1の平面状の部分のうち、フランジ部1aは、シールド枠1のねじれに対して所定の強度(抗力)を提供できる。また、シールド枠1の突起部分1bは、図2により詳述するプリント基板3の切り欠き部3aと接触するようになっている。
【0016】
シールド枠1の材質は、例えば金属で、その厚みは、1mm未満である。従って、突起部分1bの折り曲げ位置や曲げ角度が最適に設定されることで、プリント基板3の切り欠き3aに接触させた場合に、プリント基板3が突起部分1bから離脱することを抑止可能な所定の方向の力を発生できる。
【0017】
なお、プリント基板3の切り欠き部3aには、シールド枠1の突起部分1bが接触された状態で、例えばはんだ付け等ができるよう工夫されている。従って、シールド枠1は、プリント基板3に実装される。すなわち、フランジ部1aをプリント基板3の高周波回路(電子部品)側に位置させたことにより、後段にて説明するが、自動装着装置が利用可能となり、しかもシールドケース全体の厚みが抑制される。
【0018】
また、この構造は、プリント基板3にシールド枠1をマウントしてシールドカバー2を固定する形状であり、プリント基板3の一方の面に生じるターミナルやはんだ付けのための脚部(飛び出し)等を、シールドケースの外側に位置させることができ、シールド枠1とシールドカバー2からなるシールドケースの厚みを、一層低減可能である。
【0019】
より詳細には、シールド枠1は、一枚の金属板から切り出され、プレス加工により筒状に成形される。従って、図1に示したように、シールドカバー2の主要な部分である平面部2aの形状を、シールド枠1のフランジ部1aを避けるようような形状とすることで、図3に示すように、シールド枠1にシールドカバー2を取り付けた際に、シールドカバー2の天面とフランジ部1aの表面とを、ほぼ同一平面(高さ)にできる。
【0020】
従って、シールドカバー2の板厚分だけ、シールドケース(回路モジュール)の厚みを低減できる。
【0021】
回路モジュール装置は、電子部品(高周波回路)4を内部に収容することにより、電子部品から発生される不要輻射が外部に漏れること、および外界に存在するノイズ(不要輻射)が電子部品に到達することを阻止する閉鎖構造であることが要求される。
【0022】
このため、回路モジュールを、図1ないし図3により説明した構造のシールドケースに収容することにより、内部で発生する高周波が外部に漏れ出ることを防止し、外部で発生する妨害波(不要輻射)が内部に入り込んでくることを防止している。
【0023】
他の案として、シールド枠1の側面の高さ方向を可能な限り低くする方法も考えられるが、高周波機器(高周波回路4を構成する電子部品)は、携帯電話に代表されるモバイル機器に内蔵される場合、プリント基板3の厚みを含めた合計の厚みが、例えば1.4mm以下であることが望ましい。このため、シールド枠1の高さを低くするには、製造上限界がある。
【0024】
このことから、プリント基板3に実装される電子部品(高周波回路4)の高さを、ある一定値(プリント基板3の厚みを0.4mmとし、シールドカバー2の厚みを0.2mmとしたとき、マージン(隙間余裕)を0.2mmとした場合には、0.6mm)以下に設定すれば、プリント基板3上のどの位置に電子部品を配置しても、シールドカバー2の平面部2aやシールド枠1のフランジ部1aと電子部品とが接触することが防止できる。このことは、電子部品の配置のための設計を容易とする。
【0025】
かくして本実施形態によれば、シールドカバー2の天面とフランジ部1aの表面は、ほぼ同一平面(高さ)、すなわち概ね面一に設定することができる。
【0026】
図4は、本発明の回路モジュール装置を組み立てた状態を示すもので、シールド枠1の複数の突起部分1bに、それぞれ複数の凸部1cを形成し、シールドカバー2の側面に突起部2bを設け、その突起部2bにシールド枠1の凸部1cに対応した凹部もしくは孔2cを設けているので、シールド枠1とシールドカバー2を取り付ける際、凸部1cと凹部もしくは孔2cが嵌合可能となる。この構造により、シールドカバー2がシールド枠1から不所望に脱落することを防止できる。
【0027】
これにより、回路モジュール装置あるいは回路モジュールが装着されるモバイル機器が、万一落下され、あるいは大きな外力が生じた場合にも、シールドカバー2が離脱するのを防止でき、プリント基板3上のプリントパターンや高周波回路(電子部品)のコンタクト(ボンディングワイヤまたはパターン)等とシールドカバー2とが接触して短絡することも防止できる。
【0028】
また、図5および図6に示すように、シールドカバー2の突起部2bに凸部2dが形成され、シールド枠1の突起部1bに孔もしくは凹部1dが設けられても、同様な作用が得られる。
【0029】
なお、図1および図4、あるいは図5および図6により説明した凸部と凹部もしくは孔は、主にシールド枠1およびシールドカバー2の形状や強度によって、使い分けられる。
【0030】
図7は、シールド枠1のフランジ部1aを利用した実装装置を説明するための概略図である。
【0031】
シールド枠1の平面部には、既に説明したフランジ部1aが形成されている。フランジ部1aは、シールド枠1のねじれ等を抑制可能であり、そのため一定の大きさが与えられる。
【0032】
このため、プリント基板3にシールド枠1を自動装着する際に使用する自動装着装置(図示せず)のノズル6のノズル径(例えば、直径1mm)に対して、フランジ部1aの大きさ(面積)を、ノズル径以上とすることで、シールド枠1をプリント基板3に組み込む(実装する)際に、周知の自動装着装置による自動装着が可能となる。
【0033】
なお、フランジ部1aは、図1ないし図3あるいは図6および図7に示した例では、4箇所設置されるが、自動装着装置向けのエリアとしては、最低1箇所でよい。この場合、シールド枠1の重量や形状(バランス)に支配されるが、通常矩形に規定されるシールド枠1の対角線上の2箇所のフランジ1aを、自動装着装置向けのノズルエリアとして所定の面積を与えることが好ましい。
【0034】
ところで、本発明のシールド構造においては、シールド枠1とシールドカバー2とが不所望に接触する(シールド枠1の一部にシールドカバー2の任意部分、特に平面部分2aが乗り上げる)ことを抑止するために、クリアランスを設ける必要がある。
【0035】
このクリアランスは、上述した妨害波の進入や高周波回路からの不要輻射の出射を可能とする隙間となりうる。
【0036】
このため、図4または図5に示すように、クリアランスのための隙間の部分を電気的に遮蔽可能な導電性部材、例えばアルミ箔やアルミシート等5により、シールドカバー2とシールド枠1とを覆うことが好ましい。なお、導電性を示す接着剤が塗布された金属箔、例えばアルミテープ等も利用可能であることはいうまでもない。
【0037】
以上説明したように、本発明の回路モジュール装置によれば、シールドカバー2に、シールド枠1のフランジ1aを避けるような形状を施したことにより、シールドカバーとフランジとを、ほぼ同一平面(高さ)に設定できる。この構造により、シールドケースおよびシールドケースを用いる回路モジュール装置の厚みが低減される。
【0038】
また、シールドカバーとシールド枠とを凸部と凹部もしくは孔により、直接、固定可能としたことにより、両者を固定するためのシールドケース全体の厚みを増大する虞のある固定部材が不要で、シールドケースの薄型化を図りながら、シールドカバーとシールド枠とを安定に、接続(組み立て)できる。
【0039】
さらに、シールド枠とシールドカバーとの間に要求される組み立て上(部品精度上)のクリアランスにより生じる不要輻射の漏洩あるいは外来ノイズの進入も抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の回路モジュール装置の実施形態を示すもので、シールドケース部の一例を示す概略斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係るシールド枠と基板の状態を示す概略斜視図。
【図3】本発明を実施形態のシールド枠とシールドカバーとを組み立てた状態を示す概略図。
【図4】本発明の実施形態に係るシールド枠とシールドカバーの固定状態の一例を示す断面図。
【図5】本発明の実施形態に係るシールド枠とシールドカバーの固定状態の別の例を示す断面図。
【図6】本発明の実施形態に係るシールドケースの別の一例を示す概略斜視図。
【図7】本発明の実施形態に係るシールド枠の形状の特徴を示す概略斜視図。
【符号の説明】
【0041】
1…シールド枠、1a…フランジ部、1b…突起部分、1c…凸部、1d…凹部もしくは孔、2…シールドカバー、2a…平面部、2b…突起部分、2c…凹部もしくは孔、2d…凸部、3…プリント基板(支持対象物)、3a…切り欠き部、4…高周波回路(電子部品)、5…導電性部材、6…ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品が配置された基板と、この基板上に前記電気部品を覆うように取り付けられたシールドケースとを含む回路モジュール装置であって、
前記シールドケースは、前記基板上に配置された電気部品を囲むように取り付け可能なシールド枠と、前記シールド枠の所定の位置に取り付けられるシールドカバーにてなり、
前記シールド枠は、平面部と、その平面部に対して所定の角度で折り曲げられ前記基板に配置された電気部品を囲むように取り付けられる折り曲げ部とを有し、前記シールドカバーは、前記基板上の電気部品を覆うように前記シールド枠に取り付けられ、前記シールドカバーの平面部分が前記シールド枠の平面部と重なりあうことのない形状に形成され、
前記シールドカバーと前記シールド枠とを組み立てた状態で、前記シールド枠の平面部と前記シールドカバーの平面部がほぼ面一になるようにしたことを特徴とする回路モジュール装置。
【請求項2】
前記シールド枠の前記折り曲げられた領域には、凹部または孔が形成され、前記シールドカバーには、前記凹部または孔に対向する位置に凸部が形成され、前記凹部または孔に前記凸部が嵌合するように組み合わせられることで、前記シールドケースを構成することを特徴とする請求項1記載の回路モジュール装置。
【請求項3】
前記シールド枠の前記折り曲げられた領域には、凸部が形成され、前記シールドカバーには、凸部に対向する位置に凹部または孔が形成され、凹部または孔に前記凸部が嵌合するように組み合わせられることで、前記シールドケースを構成することを特徴とする請求項1記載の回路モジュール装置。
【請求項4】
前記シールド枠の前記平面部のうちの所定の領域には、自動マウント装置による吸着が可能な大きさに規定された吸着領域(フランジ部)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の回路モジュール装置。
【請求項5】
前記吸着領域は、前記シールド枠の対角線上に設けられることを特徴とする請求項4記載の回路モジュール装置。
【請求項6】
前記基板には、前記シールド枠の折り曲げ部の一部が嵌合し、位置決めに利用可能な切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の回路モジュール装置。
【請求項7】
電気部品が配置された基板と、この基板上に前記電気部品を覆うように取り付けられたシールドケースとを含む回路モジュール装置であって、
前記シールドケースは、前記基板上に配置された電気部品を囲むように取り付け可能なシールド枠と、前記シールド枠の所定の位置に取り付けられるシールドカバーにてなり、
前記シールド枠は、平面部と、その平面部に対して所定の角度で折り曲げられ前記基板に配置された電気部品を囲むように取り付けられる折り曲げ部とを有し、前記シールドカバーは、前記基板上の電気部品を覆うように前記シールド枠に取り付けられ、前記シールドカバーの平面部分が前記シールド枠の平面部と重なりあうことのない形状に形成され、
前記シールドカバーと前記シールド枠とを組み立てた状態で、前記シールド枠の平面部と前記シールドカバーの平面部がほぼ面一になるようにし、前記シールド枠と前記シールドカバーの平面部が導電性部材により覆われたことを特徴とする回路モジュール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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