説明

回路モジュール

【課題】送信信号の損失を発生させることなく小型化を図ることが可能な回路モジュールを提供することである。
【解決手段】コアアイソレータ8aは、フェライトと、直流磁界を該フェライトに印加する永久磁石とにより構成されている。スイッチ9は、コアアイソレータ8aから出力される高周波信号を信号経路SL1又は信号経路SL2に出力する。SAWフィルタ11aは、信号経路SL1に設けられている。SAWフィルタ11cは、信号経路SL2に設けられている。整合回路10aは、信号経路SL1に設けられ、かつ、アイソレータ8aのコアアイソレータの出力インピーダンスとSAWフィルタ11aの入力インピーダンスとのインピーダンス整合をとる。整合回路10bは、信号経路SL2に設けられ、かつ、アイソレータ8aのコアアイソレータの出力インピーダンスとSAWフィルタ11cの入力インピーダンスとのインピーダンス整合をとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路モジュールに関し、より特定的には、アイソレータを備えている回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回路モジュールとしては、例えば、特許文献1に記載の送信装置が知られている。該送信装置は、電力増幅器、アイソレータ、スイッチ、第1のデュプレクサ及び第2のデュプレクサを備えている。電力増幅器は、異なる複数の周波数帯である第1の周波数帯域の送信信号及び第2の周波数帯域の送信信号を増幅してアイソレータに出力する、いわゆるマルチバンド対応の電力増幅器である。アイソレータは、電力増幅器から出力されてきた第1の周波数帯域の送信信号及び第2の周波数帯域の送信信号を通過させ、電力増幅器の反対側から入力してくる信号を電力増幅器に出力しない。スイッチは、アイソレータを通過してきた送信信号を第1のデュプレクサ又は第2のデュプレクサに対して出力する。第1のデュプレクサは、第1の周波数帯域の送信信号を通過させるフィルタであり、第2のデュプレクサは、第2の周波数帯域の送信信号を通過させるフィルタである。
【0003】
以上のような送信装置では、第1の周波数帯域の送信信号及び第2の周波数帯域の送信信号のそれぞれに対してアイソレータの出力インピーダンスと第1のデュプレクサの入力インピーダンス及び第2のデュプレクサの入力インピーダンスとのインピーダンス整合を最適にする必要がある。そして、特許文献1には説明されていないものの、一般的には、インピーダンス整合をとるための整合回路がアイソレータ内に設けられている。
【0004】
ただし、第1のデュプレクサと第2のデュプレクサとは通過する信号の周波数帯域が異なっているため、各デュプレクサの通過帯域において入力インピーダンスが50Ωになるように設計されている。そのため、アイソレータの出力側の整合回路は、第1のデュプレクサの入力インピーダンス及び第2のデュプレクサの入力インピーダンスの両方にインピーダンス整合させることは難しい。したがって、従来のアイソレータの出力側整合回路は、第1のデュプレクサの通過周波数帯域及び第2のデュプレクサの通過周波数帯域の両方に対して最も最適な周波数、例えば第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の中間の周波数において整合をとるような整合回路の設計を行っていた。しかし、このような設計では第1周波数帯域の信号及び第2の周波数帯域の信号の両方においてインピーダンスが完全な整合状態とはならないため、送信信号に損失が発生する。また、この送信信号の損失の発生を防ぐために、スイッチと第1のデュプレクサとの間、及び、スイッチと第2のデュプレクサとの間に整合回路を設ける構成も考えられるが、その場合は複数の整合回路を用いるため素子数が多くなり、送信装置が大型化するという問題がある。
【0005】
以上のように、特許文献1に記載の送信装置は、送信信号に損失を発生させたり、3箇所に整合回路を設ける必要があるので、素子数が多くなり、大型化してしまうという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−154201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、送信信号に損失を発生させることなく小型化を図ることが可能な回路モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る回路モジュールは、フェライトと、直流磁界を該フェライトに印加する永久磁石と、該フェライトに設けられ、一端が入力ポートに接続され、他端が出力ポートに接続されている第1の中心電極と、該第1の中心電極と絶縁状態で交差するように該フェライトに設けられ、一端が該出力ポートに接続され、他端がグランドポートに接続されている第2の中心電極と、を有するコアアイソレータと、一方端が前記コアアイソレータの出力ポートに接続され、前記出力ポートから出力される信号を第1の信号経路又は第2の信号経路に出力する分岐部と、前記第1の信号経路に設けられている第1の処理回路と、前記分岐部の前記第1の信号経路側の切替端子に接続されて前記第1の信号経路に設けられ、かつ、前記コアアイソレータの出力インピーダンスと前記第1の処理回路の入力インピーダンスとのインピーダンス整合をとるための第1の整合回路と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、送信信号に損失を発生させることなく回路モジュールの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る回路モジュールの分解斜視図である。
【図2】図1の回路モジュールのブロック図である。
【図3】アイソレータの外観斜視図である。
【図4】中心電極が設けられたフェライトの外観斜視図である。
【図5】フェライトの外観斜視図である。
【図6】コアアイソレータの分解斜視図である。
【図7】アイソレータの等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る回路モジュールについて図面を参照しながら説明する。
【0012】
(回路モジュールの構成)
まず、回路モジュールの構成について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る回路モジュール1の分解斜視図である。図2は、図1の回路モジュール1のブロック図である。なお、図1では、主要な電子部品のみが示されており、チップコンデンサやチップインダクタ等の細かな電子部品については省略してある。
【0013】
回路モジュール1は、携帯電話等の無線通信機の送信回路の一部を構成しており、複数種類の高周波信号を増幅して出力する。回路モジュール1は、図1及び図2に示すように、回路基板2、送信経路R1,R2(図1には図示せず)及び金属ケース50を備えている。
【0014】
回路基板2は、図1に示すように、表面及び内部に電気回路が形成された板状のプリント多層基板である。回路基板2は、主面S1,S2を有している。
【0015】
送信経路R1は、図2に示すように、入力信号RFin_BC0(800MHz帯),RFin_BC3(900MHz帯)を増幅して、出力信号RFout1_BC0(800MHz帯),RFout1_BC3(900MHz帯)として出力する。送信経路R1は、図2に示すように、SAWフィルタ(表面波フィルタ)3a,3b、スイッチ4、パワーアンプ(増幅器)6a、カプラ7、アイソレータ8a、スイッチ9、整合回路10a,10b及びSAWフィルタ11a〜11dにより構成されている。SAWフィルタ3a,3b、スイッチ4、パワーアンプ6a、カプラ7、アイソレータ8a、スイッチ9、整合回路10a,10b及びSAWフィルタ11a〜11dは、図1に示すように、回路基板2の主面S1上に実装されている電子部品である。
【0016】
SAWフィルタ3a,3bは、図1に示すように、一つの電子部品により構成されており、所定の周波数帯域の信号のみを通過させるバンドパスフィルタである。SAWフィルタ3aには、図2に示すように、入力信号RFin_BC3が入力している。また、SAWフィルタ3bには、図2に示すように、入力信号RFin_BC0が入力している。
【0017】
スイッチ4は、図2に示すように、SAWフィルタ3a,3b及びパワーアンプ6aに接続されており、SAWフィルタ3aから出力されてくる入力信号RFin_BC3、又は、SAWフィルタ3bから出力されてくる入力信号RFin_BC0のいずれかをパワーアンプ6aに出力する。
【0018】
パワーアンプ6aは、スイッチ4から出力されてくる入力信号RFin_BC0,RFin_BC3を増幅する。パワーアンプ6aは、図2に示すように、後段のカプラ7の入力端子(図示せず)に接続されている。カプラ7は、図2に示すように、アイソレータ8aの入力端子(図示せず)に接続されている。そして、カプラ7は、パワーアンプ6aが増幅した入力信号RFin_BC0,RFin_BC3の一部を出力信号Coupler outとして、回路モジュール1外に分離して出力すると共に、入力信号RFin_BC0,RFin_BC3を後段のアイソレータ8aに対して出力する。
【0019】
アイソレータ8aは、図2に示すように、入力信号RFin_BC0,RFin_BC3を後段のスイッチ9に出力し、スイッチ9側から反射してきた信号をカプラ7側に出力しない非可逆回路素子である。なお、アイソレータ8aの詳細については後述する。
【0020】
スイッチ9は、図2に示すように、アイソレータ8aから出力されてきた入力信号RFin_BC3,RFin_BC0を信号経路SL1,SL2に出力する。より詳細には、スイッチ9は、アイソレータ8aから出力されてきた入力信号RFin_BC3を信号経路SL1に出力し、アイソレータ8aから出力されてきた入力信号RFin_BC0を信号経路SL2に出力する。
【0021】
SAWフィルタ11a,11cはそれぞれ、信号経路SL1,SL2に設けられており、入力信号RFin_BC3,RFin_BC0に対して所定の処理を施して、出力信号RFout1_BC3,RFout1_BC0として回路モジュール1外に出力する処理回路を構成している。具体的には、SAWフィルタ11aは、第1の周波数帯域である所定の周波数帯域(900MHz帯)の高周波信号を通過させ、所定の周波数帯域外の高周波信号を通過させないバンドパスフィルタである。SAWフィルタ11cは、第2の周波数帯域である所定の周波数帯域(800MHz帯)の高周波信号を通過させ、所定の周波数帯域外の高周波信号を通過させないバンドパスフィルタである。なお、ここでの高周波信号を通過させるとは、高周波信号に対する挿入損失が相対的に小さいことを示し、高周波信号を通過させないとは、高周波信号に対する挿入損失が相対的に大きいことを示している。
【0022】
整合回路10aは、信号経路SL1に設けられ、かつ、アイソレータ8aに含まれているコアアイソレータ30a(詳細については後述する)の出力インピーダンスとSAWフィルタ11aの入力インピーダンスとのインピーダンス整合をとる回路である。整合回路10aは、スイッチ9とSAWフィルタ11aとの間に設けられ、例えば、コンデンサやインダクタ等の組み合わせにより構成されている。整合回路10bは、信号経路SL2に設けられ、かつ、アイソレータ8aに含まれているコアアイソレータ30a(詳細については後述する)の出力インピーダンスとSAWフィルタ11cの入力インピーダンスとのインピーダンス整合をとる回路である。整合回路10bは、スイッチ9とSAWフィルタ11cとの間に設けられ、例えば、コンデンサやインダクタ等の組み合わせにより構成されている。
【0023】
SAWフィルタ11b,11dはそれぞれ、入力信号RFin1_BC3,RFin1_BC0に対して所定の処理を施して、受信回路(図示せず)に出力する。なお、SAWフィルタ11a,11bは、図1に示すように、一つの電子部品により構成されており、SAWフィルタ11c,11dは、図1に示すように、一つの電子部品により構成されている。
【0024】
送信経路R2は、図2に示すように、入力信号RFin_BC6(2GHz帯)を増幅して、出力信号RFout1_BC6(2GHz帯)として出力する。送信経路R2は、図2に示すように、SAWフィルタ3c、パワーアンプ6b、アイソレータ8b、整合回路10c及びSAWフィルタ11e,11fにより構成されている。SAWフィルタ3c、パワーアンプ6b、アイソレータ8b、整合回路10c及びSAWフィルタ11e,11fは、図1に示すように、回路基板2上に実装されている電子部品である。
【0025】
SAWフィルタ3cは、所定の周波数帯域の信号のみを通過させるバンドパスフィルタである。SAWフィルタ3cには、図2に示すように、入力信号RFin_BC6が入力している。
【0026】
パワーアンプ6bは、図2に示すように、SAWフィルタ3cから出力されてくる入力信号RFin_BC6を増幅する。アイソレータ8bは、図2に示すように、入力信号RFin_BC6を後段の整合回路10cへと出力し、整合回路10c側から反射してきた信号をパワーアンプ6b側に出力しない非可逆回路素子である。なお、アイソレータ8bの詳細については後述する。
【0027】
SAWフィルタ11eはそれぞれ、入力信号RFin_BC6に対して所定の処理を施して、出力信号RFout1_BC6として回路モジュール1外に出力する処理回路を構成している。具体的には、SAWフィルタ11eは、所定の周波数帯域(2GHz帯)の高周波信号を通過させ、所定の周波数帯域外の高周波信号を通過させないバンドパスフィルタである。
【0028】
整合回路10cは、アイソレータ8bに含まれているコアアイソレータ30b(詳細については後述する)の出力インピーダンスとSAWフィルタ11eの入力インピーダンスとのインピーダンス整合をとる回路である。整合回路10cは、アイソレータ8bとSAWフィルタ11eとの間に設けられ、例えば、コンデンサやインダクタ等の組み合わせにより構成されている。
【0029】
SAWフィルタ11fは、入力信号RFin1_BC6に対して所定の処理を施して、受信回路(図示せず)に出力する。なお、SAWフィルタ11e,11fは、図1に示すように、一つの電子部品により構成されている。
【0030】
また、図2に示すように、出力信号Coupler outが出力される配線と信号経路R2との間には、コンデンサCcが設けられている。より詳細には、コンデンサCcの一端は、アイソレータ8bとパワーアンプ6bとの間に接続され、コンデンサCcの他端は、出力信号Coupler outを出力する配線に接続されている。そして、コンデンサCcは、パワーアンプ6bが増幅した入力信号RFin_BC6の一部を、出力信号Coupler outとして回路モジュール1外に出力する。
【0031】
金属ケース50は、回路基板2に取り付けられており、回路基板2の主面S1と対向し、かつ、長方形状をなしている主面S3を有している。そして、金属ケース50は、主面S3によって、SAWフィルタ3a〜3c、スイッチ4、パワーアンプ6a,6b、カプラ7、アイソレータ8a,8b、スイッチ9、整合回路10a〜10c及びSAWフィルタ11a〜11fを覆っている。更に、金属ケース50には、回路基板2内のグランド電極を介して接地電位が印加されている。
【0032】
(アイソレータの構成)
以下に、アイソレータ8a,8bについて図面を参照しながら説明する。図3は、アイソレータ8aの外観斜視図である。図4は、中心電極35,36が設けられたフェライト32の外観斜視図である。図5は、フェライト32の外観斜視図である。図6は、コアアイソレータ30a,30bの分解斜視図である。
【0033】
アイソレータ8aは、集中定数型アイソレータであり、図3に示すように、回路基板2、コアアイソレータ30a、コンデンサC1,CS1及び抵抗Rにより構成されている。アイソレータ8bも、アイソレータ8aと同様に、集中定数型アイソレータであり、回路基板2、コアアイソレータ30b、コンデンサC1,CS1及び抵抗Rにより構成されている。ただし、アイソレータ8a,8bは、直流磁界が外部に漏れることを防止するヨークを有していない。なお、アイソレータ8a,8bの構成は同じであるので、以下では、アイソレータ8aを例にとって説明する。
【0034】
コアアイソレータ30aは、図3に示すように、フェライト32、及び、一対の永久磁石41により構成されている。なお、本実施形態におけるコアアイソレータ30aとは、フェライト32及び永久磁石41のみで構成された部分である。フェライト32には、図4に示すように、表裏の主面32a,32bに互いに電気的に絶縁された中心電極35,36が設けられている。ここで、フェライト32は、互いに対向する平行な主面32a,32bを有する直方体形状をなしている。
【0035】
また、永久磁石41は、フェライト32に対して直流磁界を主面32a,32bに略垂直方向に印加するように主面32a,32bに対して、例えば、エポキシ系の接着剤42を介して接着されている(図6参照)。永久磁石41の主面41aは、フェライト32の主面32a,32bと同一寸法である。そして、フェライト32及び永久磁石41は、主面32a,32bの外形と主面41aの外形とが一致した状態で対向するように、配置されている。
【0036】
中心電極35は、導体膜である。すなわち、中心電極35は、図4に示すように、フェライト32の主面32aにおいて右下から立ち上がって2本に分岐した状態で左上に長辺に対して比較的小さな角度で傾斜している。そして、中心電極35は、左上方に立ち上がり、上面32c上の中継用電極35aを介して主面32bに回り込んでいる。更に、中心電極35は、主面32bにおいて主面32aと透視状態で重なるように2本に分岐するように設けられている。中心電極35の一端は、下面32dに形成された接続用電極35bに接続されている。また、中心電極35の他端は、下面32dに形成された接続用電極35cに接続されている。このように、中心電極35は、フェライト32に1ターン巻回されている。そして、中心電極35と以下に説明する中心電極36とは、間に絶縁膜が設けられることにより互いに絶縁された状態で交差している。中心電極35,36の交差角は、必要に応じて設定され、入力インピーダンスや挿入損失が調整されることになる。
【0037】
中心電極36は、導体膜である。中心電極36は、0.5ターン目36aが主面32aにおいて右下から左上に長辺に対して比較的大きな角度で傾斜して中心電極35と交差した状態で形成され、上面32c上の中継用電極36bを介して主面32bに回り込み、この1ターン目36cが主面32bにおいてほぼ垂直に中心電極35と交差した状態で形成されている。1ターン目36cの下端部は下面32dの中継用電極36dを介して主面32aに回り込み、この1.5ターン目36eが主面32aにおいて0.5ターン目36aと平行に中心電極35と交差した状態で形成され、上面32c上の中継用電極36fを介して主面32bに回り込んでいる。以下同様に、2ターン目36g、中継用電極36h、2.5ターン目36i、中継用電極36j、3ターン目36k、中継用電極36l、3.5ターン目36m、中継用電極36n、4ターン目36o、がフェライト32の表面にそれぞれ形成されている。また、中心電極36の両端は、それぞれフェライト32の下面32dに形成された接続用電極35c,36pに接続されている。なお、接続用電極35cは中心電極35及び中心電極36のそれぞれの端部の接続用電極として共用されている。
【0038】
また、接続用電極35b,35c,36p及び中継用電極35a,36b,36d,36f,36h,36j,36l,36nは、フェライト32の上面32c及び下面32dに形成された凹部37(図5参照)に銀、銀合金、銅、銅合金などの電極用導体を塗布又は充填することにより設けられている。また、上面32c及び下面32dには、各種電極と平行に凹部38も設けられ、かつ、ダミー電極39a,39b,39cが設けられている。この種の電極は、マザーフェライト基板に予めスルーホールを形成し、このスルーホールを電極用導体で充填した後、スルーホールを分断する位置でカットすることによって形成される。なお、各種電極は凹部37,38に導体膜として形成したものであってもよい。
【0039】
フェライト32としてはYIGフェライトなどが用いられている。中心電極35,36及び各種電極は、銀や銀合金の厚膜又は薄膜として印刷、転写、フォトリソグラフなどの工法で形成可能である。中心電極35,36の絶縁膜としては、ガラスやアルミナなどの誘電体厚膜、ポリイミドなどの樹脂膜などを用いることができる。これらも印刷、転写、フォトリソグラフなどの工法で形成することができる。
【0040】
なお、フェライト32を絶縁膜及び各種電極を含めて磁性体材料にて一体的に焼成することが可能である。この場合、各種電極を高温焼成に耐えるPd,Ag又はPd/Agを用いることになる。
【0041】
永久磁石41には、通常、ストロンチウム系、バリウム系、ランタン−コバルト系のフェライトマグネットが用いられる。永久磁石41とフェライト32とを接着する接着剤42としては、一液性の熱硬化型エポキシ接着剤を用いることが最適である。
【0042】
回路基板2は、通常のプリント多層基板と同種の樹脂材料からなるが、複数のセラミック絶縁層を積層して得られた多層セラミック基板でもよい。回路基板2の表面には、図3に示すように、コアアイソレータ30a、コンデンサC1,CS1及び抵抗Rを実装するための端子電極21a,21b,21c,22a,22b,22e,22f,22i,22jや入出力用電極、グランド電極(図示せず)等が設けられている。
【0043】
コアアイソレータ30aは、回路基板2上に実装される。具体的には、フェライト32の下面32dの接続用電極35b,35c,36pが回路基板2上の端子電極21a,21b,21cとリフローはんだ付けされて一体化される。すなわち、コアアイソレータ30aは、一直線上に並ぶ端子電極(固定部)21a,21b,21cにより回路基板2に固定されている。更に、コアアイソレータ30aは、永久磁石41の下面が回路基板2上に接着剤にて一体化される。
【0044】
また、コンデンサC1,CS1及び抵抗Rは、回路基板2上の端子電極22a,22b,22e,22f,22i,22jとリフローはんだ付けされる。コンデンサCS1は、コアアイソレータ30aの入力インピーダンスとカプラ7の出力インピーダンスとのインピーダンス整合をとるための回路である。コアアイソレータ30aとコンデンサC1,CS1と抵抗Rとは、回路基板2内の配線により接続されており、アイソレータ8aを構成している。
【0045】
(アイソレータの回路構成)
次に、アイソレータ8a,8bの回路構成について図面を参照しながら説明する。図7は、アイソレータ8a,8bの等価回路図である。
【0046】
入力ポートP1は、コンデンサCS1を介してコンデンサC1と抵抗Rとに接続されている。コンデンサCS1は、中心電極35の一端に接続されている。中心電極35の他端及び中心電極36の一端は、抵抗R及びコンデンサC1に接続され、かつ、出力ポートP2に接続されている。中心電極36の他端は、グランドポートP3に接続されている。
【0047】
以上の等価回路からなるアイソレータ8a,8bにおいては、中心電極35の一端が入力ポートP1に接続され他端が出力ポートP2に接続され、中心電極36の一端が出力ポートP2に接続され他端がグランドポートP3に接続されているため、挿入損失の小さな2ポート型の集中定数型アイソレータとすることができる。
【0048】
(効果)
以上のように構成された回路モジュール1では、送信信号の損失を発生させることなく小型化を図ることが可能である。より詳細には、特許文献1に記載の送信装置では、アイソレータ内、スイッチと第1のデュプレクサとの間、及び、スイッチと第2のデュプレクサとの間の3箇所に整合回路を設ける必要がある。
【0049】
一方、回路モジュール1では、図2に示すように、スイッチ9とSAWフィルタ11aとの間に、整合回路10aが設けられている。これにより、第1の周波数帯域においてコアアイソレータ30aの出力インピーダンスとSAWフィルタ11aの入力インピーダンスとのインピーダンス整合がとられている。同様に、スイッチ9とSAWフィルタ11cとの間に、整合回路10bが設けられている。これにより、第2の周波数帯域においてコアアイソレータ30aの出力インピーダンスとSAWフィルタ11cの入力インピーダンスとのインピーダンス整合がとられている。このような構成により、第1及び第2の周波数帯域の送信信号のそれぞれをインピーダンス整合させることができ、送信信号の損失の発生を防ぐことができる。また、アイソレータ8aの出力側整合回路の機能を整合回路10aと整合回路10bに含めることにより、コアアイソレータ30aとスイッチ9との間には、コアアイソレータ30aの出力インピーダンスとスイッチ9の入力インピーダンスとのインピーダンス整合をとるための整合回路が設けられていなくてもよい。以上のように、回路モジュール1では、整合回路10a,10bを2箇所に設けるだけで足りる。よって、回路モジュール1では、特許文献1に記載の送信装置に比べて、送信信号の損失を発生させることなく電子部品の数を少なくすることができ、小型化を図ることが可能となる。また、各整合回路をその信号経路を通過する信号の周波数にあわせた最適な設計ができるため、信号経路における損失を低減することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
以上のように構成された回路モジュール1は、前記実施形態に示したものに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0051】
整合回路10a〜10cは、インピーダンス整合をとるための回路であるとしたが、例えば、所定の周波数帯域の信号を通過するフィルタとして機能していてもよい。整合回路10a〜10cは、パワーアンプ6a,6bよりも後段に設けられているので、パワーアンプ6a,6bにて発生した高次高調波を除くことができる。
【0052】
また、図1では、コアアイソレータ30a,30bは、離されて配置されているが、隣り合った状態で配置されていてもよい。コアアイソレータ30a,30bが隣り合って配置されている場合には、整合回路10a又は整合回路10bは、コアアイソレータ30a,30b間に位置するように回路基板2上に実装されていることが望ましい。これにより、整合回路10a又は整合回路10bがシールドとして機能して、コアアイソレータ30aの直流磁界がコアアイソレータ30bの直流磁界に影響をおよぼすことを抑制できるとともに、コアアイソレータ30bの直流磁界がコアアイソレータ30aの直流磁界に影響をおよぼすことを抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明は、回路モジュールに有用であり、特に、送信信号の損失を発生させることなく小型化を図ることができる点において優れている。
【符号の説明】
【0054】
C1,CS1 コンデンサ
R1,R2 送信経路
1 回路モジュール
2 回路基板
3a〜3c,11a〜11f SAWフィルタ
4,9 スイッチ
6a,6b パワーアンプ
8a,8b アイソレータ
10a〜10c 整合回路
50 金属ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライトと、直流磁界を該フェライトに印加する永久磁石と、該フェライトに設けられ、一端が入力ポートに接続され、他端が出力ポートに接続されている第1の中心電極と、該第1の中心電極と絶縁状態で交差するように該フェライトに設けられ、一端が該出力ポートに接続され、他端がグランドポートに接続されている第2の中心電極と、を有するコアアイソレータと、
一方端が前記コアアイソレータの出力ポートに接続され、前記出力ポートから出力される信号を第1の信号経路又は第2の信号経路に出力する分岐部と、
前記第1の信号経路に設けられている第1の処理回路と、
前記分岐部の前記第1の信号経路側の切替端子に接続されて前記第1の信号経路に設けられ、かつ、前記コアアイソレータの出力インピーダンスと前記第1の処理回路の入力インピーダンスとのインピーダンス整合をとるための第1の整合回路と、
を備えていること、
を特徴とする回路モジュール。
【請求項2】
前記回路モジュールは、
前記第2の信号経路に設けられている第2の処理回路と、
前記分岐部の前記第2の信号経路側の切替端子に接続されて前記第2の信号経路に設けられ、かつ、前記コアアイソレータの出力インピーダンスと前記第2の処理回路の入力インピーダンスとのインピーダンス整合をとるための第2の整合回路と、
を更に備えていること、
を特徴とする請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項3】
前記第1の処理回路及び/又は前記第2の処理回路は、第1の周波数帯域の高周波信号を通過させ、該第1の周波数帯域以外の高周波信号を通過させないフィルタであること、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の回路モジュール。
【請求項4】
前記第1の整合回路及び/又は前記第2の整合回路は、フィルタとして機能していること、
を特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の回路モジュール。
【請求項5】
前記コアアイソレータと前記分岐部との間には、該コアアイソレータの出力インピーダンスと前記第1の処理回路の入力インピーダンスとを整合させるための整合回路が設けられていないこと、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の回路モジュール。
【請求項6】
前記回路モジュールは、
回路基板を、
更に備えており、
前記コアアイソレータは、前記回路基板上に複数実装されており、
前記第1の整合回路又は前記第2の整合回路は、前記コアアイソレータ間に位置するように前記回路基板上に実装されていること、
を特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の回路モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−199721(P2011−199721A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65940(P2010−65940)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)