説明

回路装置および液滴吐出装置

【課題】入力信号を送信する側の基板の層構成を容易にして、製造コストを削減する。
【解決手段】複数のノズルそれぞれに対応するアクチュエータを駆動して、複数のノズルから液滴を吐出させるドライバICであって、入力端子31の配列に対する信号の割り当ての種類を示す端子配列信号とアクチュエータを駆動する駆動信号とを含む入力信号を受信する受信部321と、端子配列信号に基づいて、入力端子31の配列に対する信号の割り当てを切り替える切替部322と、信号の割り当てが切り替えられた入力端子31に入力された駆動信号を、アクチュエータに伝達する伝達部323と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出して画像を形成する液滴吐出ヘッドを駆動する回路装置、および該回路装置を搭載した液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オンデマンド型のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)には、インク(液滴)を充填した液室の壁の一部に振動板を設け、圧電アクチュエータ等により振動板を変位させ、圧力を高めインクを吐出する方式や、通電によって発熱する発熱体を液室内に設け、発熱体の発熱により生じる気泡によって液室内の圧力を高めてインクを吐出する方式が広く知られている。そして、このようなインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置(液滴吐出装置)の低価格化、高画質化が進むとともに、一般家庭へのPC(Personal computer)の普及により、インクジェット記録装置(プリンタ)が多くの人に様々な用途で使用されるようになっている。
【0003】
近年ではインクジェット記録装置の印字速度の高速化に伴い、ドライバIC(Integrated Circuit)自体の処理能力の高機能化やプリンタサイズの小型化が要求されている。特にドライバICの性能は製品の性能のみならず、周辺関連部品の製造コストに大きな影響を及ぼすものである。
【0004】
そこで、基板の両面いずれにも部品等を実装可能なインターフェース回路を備えた集積回路装置及び電子機器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この集積回路装置は、端子の中心軸に対して端子を線対称に配置し、基板の表面及び裏面の双方のいずれかを選択してドライバICを実装するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これらのインクジェット記録装置の高速化に伴い、シャトル型のインクジェット記録装置の可動部の重量を最低限に抑えるため、装置本体側に駆動回路を設けているものがある。この場合、装置本体側の駆動回路で生成された入力信号を可動部側に伝達するために、装置本体と可動部とを接続する中継基板を可動部側に設けることが必要となる。そして、1種類のドライバICで各ヘッド(液滴吐出ヘッド)を駆動させる場合、近年の複雑なドライバIC制御を実現するための入力信号線数の多数化により、中継基板の配線が複雑になることが多く、多層基板を用いることになってしまう。
【0006】
上記特許文献1に記載の集積回路装置では、部品等が実層される基板、すなわち信号を受信する側の基板の表面及び裏面の双方のいずれかに部品等を実装可能にすることで小型化を実現している。しかし、特許文献1に記載の集積回路装置は、信号を受信する側の基板そのものの構成に関するものであり、上述した中継基板のように、装置本体側で生成された入力信号を送信する側の基板の構成を容易にすることはできない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、入力信号を送信する側の基板の層構成を容易にして、製造コストを削減することを目的とする回路装置および液滴吐出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数のノズルそれぞれに対応する駆動素子を駆動して、前記複数のノズルから液滴を吐出させる回路装置であって、入力端子の配列に対する信号の割り当ての種類を示す端子配列信号と前記駆動素子を駆動する駆動信号とを含む入力信号を受信する受信手段と、前記端子配列信号に基づいて、入力端子の配列に対する信号の割り当てを切り替える切替手段と、信号の割り当てが切り替えられた入力端子に入力された前記駆動信号を、前記駆動素子に伝達する伝達手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、複数のノズルから液滴を吐出する液滴吐出装置であって、前記複数のノズルそれぞれに対応する駆動素子を駆動する回路装置と、前記回路装置の入力端子の配列に対する信号の割り当ての種類を示す端子配列信号と前記駆動素子を駆動する駆動信号とを含む入力信号を生成する信号生成部と、前記入力信号を前記回路装置に送信する送信手段と、を備え、前記回路装置は、前記入力信号を受信する受信手段と、前記端子配列信号に基づいて、入力端子の配列に対する信号の割り当てを切り替える切替手段と、信号の割り当てが切り替えられた入力端子に入力された前記駆動信号を、前記駆動素子に伝達する伝達手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、入力信号を送信する側の基板の層構成を容易にして、製造コストを削減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施の形態にかかるインクジェット記録装置の構成を示す概要図である。
【図2】図2は、本実施の形態にかかるインクジェット記録装置の機能ブロック図である。
【図3−1】図3−1は、端子配列信号がLの場合(Mode2=L)における入力端子のスイッチの説明図である。
【図3−2】図3−2は、端子配列信号がHの場合(Mode2=H)における入力端子のスイッチの説明図である。
【図4−1】図4−1は、入力端子の配列に対する信号の割り当ての一例を示す図である。
【図4−2】図4−2は、入力端子の配列に対する信号の割り当ての一例を示す図である。
【図5】図5は、ドライバICがFPCに実装された状態を示す図である。
【図6−1】図6−1は、入力信号に端子配列信号が含まれていない場合の入力端子の説明図である。
【図6−2】図6−2は、入力信号に端子配列信号が含まれている場合の入力端子の説明図である。
【図7−1】図7−1は、中継基板の一例を示す図である。
【図7−2】図7−2は、入力端子の配列に対する信号の割り当てを切り替えられない場合の中継基板の配線を示す図である。
【図8】図8は、本実施の形態におけるインクジェット装置のキャリッジの斜視図である。
【図9−1】図9−1は、端子配列信号による制御をノズル列ごとに行う場合の説明図である。
【図9−2】図9−2は、端子配列信号による制御を液滴吐出ヘッドごと行う場合の説明図である。
【図10】図10は、インクジェット記録装置の斜視図である。
【図11】図11は、インクジェット記録装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる回路装置および液滴吐出装置の最良な実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、液滴吐出装置を、インク(液滴)を吐出する液滴吐出ヘッドを用いたインクジェット記録装置に適用した例を示す。
【0013】
図1は、本実施の形態にかかるインクジェット記録装置のハードウェア構成を示す概要図である。図1に示すように、本実施の形態のインクジェット記録装置は、装置本体1と可動可能なキャリッジ7とから構成されている。キャリッジ7は、装置本体1と接続される中継基板2と、入力端子31を備えたドライバIC30と、液滴吐出ヘッド(不図示)等を主に備えている。
【0014】
そして、ドライバIC30は、FPC(Flexible printed circuits:フレキシブルプリント基板)3に実装されており、入力端子31と、演算回路32とを主に備えている。FPC3は、中継基板2を介して装置本体1と接続されている。
【0015】
本実施の形態のインクジェット記録装置は、液滴吐出ヘッドに設けられた複数のノズルに対応してそれぞれ個別液室が設けられている。そして、それらの個別液室に圧力を加えるアクチュエータ(アクチュエータ素子)を所定の印字タイミングで駆動信号により駆動して、それぞれ対応するノズルからインク(液滴)を吐出させて記録媒体に記録を行うものである。
【0016】
また、本実施の形態では、上述した駆動信号を含む入力信号を装置本体1で生成し、生成した入力信号を、中継基板2を介してドライバIC30に送信する。そして、ドライバIC30は、受信した入力信号に含まれた駆動信号をアクチュエータに伝達することによってノズルからインクを吐出させている。
【0017】
入力端子31は、各種信号を受信する接続端子であり、本実施の形態では、装置本体1から中継基板2を介して入力信号を受信する端子である。
【0018】
演算回路32は、種々の論理回路から構成されており、各演算を行うものである。
【0019】
図2は、本実施の形態にかかるインクジェット記録装置の機能的構成を示すブロック図である。装置本体1は、信号生成部11と、送信部12とを備えている。
【0020】
信号生成部11は、ドライバIC30の入力端子31に送信する入力信号を生成するものである。信号生成部11により生成される入力信号は、アクチュエータを駆動させてノズルからインクを吐出させるための信号であって、24種の信号から生成されている。そして、その24種の信号の中には、電源ラインの信号、各種アクチュエータを駆動する駆動信号、および入力端子31の配列に対する信号の割り当ての種類を示す端子配列信号(Mode2)等が含まれている。
【0021】
送信部12は、信号生成部11で生成された入力信号を、中継基板2を介してドライバIC30に送信するものである。
【0022】
次に、ドライバIC30について説明する。本実施の形態のインクジェット記録装置は、演算回路32(図1参照)によって、受信部321、切替部322、および伝達部323の機能が実現され、ドライバIC30の入力端子31に対するロジック信号の割り当てを切り替えている。
【0023】
受信部321は、装置本体1の信号生成部11で生成された入力信号を受信するものである。
【0024】
切替部322は、端子配列信号に基づいて、入力端子31の配列に対する信号の割り当てを切り替えるものである。
【0025】
ここで、切替部322による入力端子31の配列に対する信号の割り当ての切り替えついて具体的に説明する。図3−1は、端子配列信号がLの場合(Mode2=L)における入力端子のスイッチの説明図である。図3−2は、端子配列信号がHの場合(Mode2=H)における入力端子のスイッチの説明図である。切替部322は、図3−1、3−2において示すようなスイッチa、スイッチbである。
【0026】
ドライバIC30では、内部の信号の割り当てが決まっており、例えば、図3−1、3−2では、上から内部MCK信号、内部MD信号、内部SL_n信号、内部SCK信号の順番で信号が割り当てられている。
【0027】
端子配列信号がLを示す入力信号を受信した場合、スイッチaがONになり、スイッチbがOFFになる。そして、ドライバIC30の入力端子31には、上からMCK信号、MD信号、SL_n信号、SCK信号が入力される(図3−1参照)。このとき、スイッチaがONになっているため、MCK信号は内部MCK信号に、MD信号は内部MD信号に、SL_n信号は内部SL_n信号に、SCK信号は内部SCK信号に入力される。
【0028】
次に、端子配列信号がHを示す入力信号を受信した場合、スイッチaがOFFになり、スイッチbがONになる。そして、ドライバIC30の入力端子31には、上から、SCK信号、SL_n信号、MD信号、MCK信号が入力される(図3−2参照)。この場合、図3−1とは逆順の信号が入力されているが、スイッチbがONになっているため、MCK信号は内部MCK信号に、MD信号は内部MD信号に、SL_n信号は内部SL_n信号に、SCK信号は内部SCK信号に入力される。
【0029】
ドライバIC30は、このように構成されているため、内部信号に対して、常に正しい外部信号(入力信号)が入力される。
【0030】
次に、入力端子31の配列に対する信号の割り当てについて説明する。図4−1、4−2は、入力端子の配列に対する信号の割り当ての一例を示す図である。装置本体1から受信する入力信号に含まれている端子配列信号(Mode2)は、H(Highレベル)またはL(Lowレベル)によって、入力端子31の配列に対する信号の割り当ての種類を示している。具体的には、入力端子31の配列に対する信号の割り当ての種類は、第1の順番、第2の順番の2種類があり、端子配列信号のHが第1の順番を示し、端子配列信号のLが第2の順番を示している。図4−1は、端子配列信号がHの場合(Mode2=H)の第1の順番の割り当てを示しており、図4−2は、端子配列信号がLの場合(Mode2=L)の第2の順番の割り当てを示している。
【0031】
図4−1、4−2における範囲tの端子に割り当てられた信号は、アクチュエータを駆動するための駆動信号である。ここで、図4−1と図4−2を参照して、範囲tの端子に割り当てられた信号の順番を比較する。まず、図4−1の範囲tの端子に割り当てられた信号の順番は、左から、MCK(MN0)信号、MD(MN1)信号、ML_n(MN2)信号、SD2(MN3)信号、SD1信号、SD0信号、SL_n信号、SCK信号となっている(第1の順番)。
【0032】
一方、図4−2の範囲tの端子に割り当てられた信号の順番は、図4−1の信号の順番と逆の順番になっている。すなわち、図4−2の範囲tの端子に割り当てられた信号の順番は、左から、SCK信号、SL_n信号、SD0信号、SD1信号、SD2(MN3)信号、ML_n(MN2)信号、MD(MN1)信号、MCK(MN0)信号となっている(第2の順番)。
【0033】
そして、入力信号に含まれる端子配列信号(Mode2)がHの場合は、入力端子31の駆動信号の割り当てが図4−1のようになり、端子配列信号(Mode2)がLの場合は、入力端子31の駆動信号の割り当てが図4−2のようになる。
【0034】
切替部322は、まず、受信した入力信号に含まれた端子配列信号(Mode2)がHかLかを判断する。そして、切替部322は、端子配列信号がHであると判断した場合は、ROM33に記憶された信号の割り当てのパターンを参照して、入力端子31の配列に対する割り当てを図4−1に示す割り当てに切り替える。一方、切替部322は、端子配列信号がLであると判断した場合は、ROM33に記憶された信号の割り当てのパターンを参照して、入力端子31の配列に対する割り当てを図4−2に示す割り当てに切り替える。
【0035】
伝達部323は、信号の割り当てが切り替えられた入力端子31に入力された駆動信号を、アクチュエータに伝達するものである。この駆動信号を受けてアクチュエータが駆動してノズルからインクを吐出する。
【0036】
次に、FPC3にドライバIC30が実装された状態について説明する。図5は、ドライバICがFPCに実装された状態を示す図である。
【0037】
図5に示すように、ドライバIC30は、FPC3に実装されている。入力信号は、接続電極4から配線41を介してドライバIC30に入力される。そして、駆動信号は、配線51を介してPZT(lead zirconate titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)接続電極5からアクチュエータに伝達される。
【0038】
ドライバICとは高価な部品であり、開発費として非常に大きな負荷となる。よって多くの機種に共通部品として用いられることが望まれている。本実施の形態のドライバIC30はFPC3に実装されることにより、アクチュエータに接続される直前で各アクチュエータの駆動信号をそれぞれのアクチュエータに伝達する。
【0039】
ドライバIC30へ入力される入力信号は各液体吐出ヘッド、各ノズル列へ入力される共通信号であり、入力線数も本実施の形態では24本(24種)であり、比較的周辺からのノイズの影響は少ない状態でドライバIC30へ入力される。これらの入力信号に基づいて、最も重要となる駆動波形を短距離にて各アクチュエータへ伝達することが可能となる。また、FPC3を用いることにより細ピッチのパターン実装も可能となっている。本実施の形態では、例えば、百数十μmのピッチで実装されている。
【0040】
ドライバIC30が実装されているFPC3も高価な部品であるが、搭載するドライバIC30に端子配列信号(Mode2)が存在することにより、入力端子31の配列に対する信号の割り当てを線対称的に扱うことが可能となる。
【0041】
次に、端子配列信号の有無によって比較した入力端子31の配列について説明する。図6−1は、入力信号に端子配列信号が含まれていない場合の入力端子の説明図である。図6−2は、入力信号に端子配列信号が含まれている場合の入力端子の説明図である。図6−1、6−2では、1つの液滴吐出ヘッドに2列のノズル列が形成された場合の液滴吐出ヘッドの図である。
【0042】
図6−1に示すように、入力信号に端子配列信号が含まれていない場合は、向かい合う2枚のFPC3(FPC301およびFPC302)に実装された入力端子31の配列は線対称にはならない。つまり、入力端子31の配列に対する信号の割り当てを変更することができないため、FPC3を向かい合わせた場合には、端子の配列が逆の配列になる。例えば、図6−1を参照すると、FPC301では、端子aが左側にあるが、FPC302では、端子aが右側にある。従って、FPC301およびFPC302のそれぞれへ入力信号が入力される場合、向かい合う端子に対して別の信号が入力される。このため、本実施の形態のように中継基板2を用いた場合、中継基板2に形成された配線が複雑になるほか、配線を交差させないために基板の層数が多くなってしまう。
【0043】
一方、図6−2に示すように、入力信号に端子配列信号が含まれている場合は、各端子に対して入力される信号の割り当てが変更できるため、向かい合う2枚のFPC3(FPC303およびFPC304)に実装された入力端子31の配列を線対称にすることができる。つまり、入力端子31の配列に対する信号の割り当てを変更することができるため、FPC3を向かい合わせた場合には、端子の配列が同じ配列になる。例えば、図6−2を参照すると、FPC303、FPC304ともに端子aが左側にある。従って、FPC303およびFPC304のそれぞれへ入力信号が入力される場合、向かい合う端子に対して同一の信号が入力される。このため、本実施の形態のように中継基板2を用いた場合、中継基板2に形成された配線を簡易にすることができるため、配線を交差させることがなく基板の層数を少なくすることができる。
【0044】
次に、中継基板2について説明する。中継基板2は、配線が形成されており、上述したように、装置本体1とドライバIC30が実装されたFPC3とを接続しており、装置本体1で生成された入力信号を受信して、ドライバIC30に送信する基板である。
【0045】
図7−1は、中継基板の一例を示す図である。図7−1に示すように、中継基板2には、液滴吐出ヘッドに接続されるためのヘッド接続コネクタ22が備えられている。図7−1では、ノズル列ごとに入力端子31の配列に対する信号を割り当てている。すなわち、CN202/CN203(ヘッド接続コネクタ22)で2列のノズル列が形成された1つの液体吐出ヘッドを駆動しており、CN204/CN205(ヘッド接続コネクタ22)で同じく2列のノズル列が形成された1つの液体吐出ヘッドを駆動する構成となっている。
【0046】
図7−1に示す液滴吐出ヘッドのODD/EVENで向かい合う入力端子が同一の信号である場合、上述したように(図6−2参照)、中継基板2上での配線が簡易となり中継基板2の層数を減少させることができ、小型化することができる。一方、液滴吐出ヘッドのODD/EVENで向かい合う入力端子が別信号である場合、上述したように(図6−1参照)、中継基板2上での配線が複雑になり、中継基板2の層数が増加したり、中継基板2のサイズが大きくなってしまう。
【0047】
図7−1では、CN202のヘッド接続コネクタ22が端子配列信号(Mode2)のHの場合の配列となり、CN203のヘッド接続コネクタ22が端子配列信号(Mode2)のLの場合の配列となり、両者のコネクタの端子配列が対称となっている信号線の配線パターンである。また、同様に、CN204のヘッド接続コネクタ22が端子配列信号(Mode2)のHの場合の配列となり、CN205のヘッド接続コネクタ22が端子配列信号(Mode2)のLの場合の配列となり、両者のコネクタの端子配列が対称となっている信号線の配線パターンである。図7−1では、信号線の配線を1,2,3,4の線で示している。このように、端子配列信号による入力端子31の配列に対する信号の割り当てを切り替えることで、配線を容易にして配線を交差させることがないため、最上位の基板(中継基板2)層のみで配線することが可能となっている。
【0048】
なお、図7−1では、CN202およびCN204がそれぞれ端子配列信号のHの場合で、CN203およびCN205がそれぞれ端子配列信号のLの場合となっているが、ODD(CN202とCN204)が端子配列信号のHの場合で、EVEN(CN203とCN205)が端子配列信号のLの場合とする配列も可能である。
【0049】
図7−2は、入力端子の配列に対する信号の割り当てを切り替えられない場合の中継基板の配線を示す図である。信号の割り当てを切り替えられない場合にドライバIC30が搭載されたFPC3に中継基板2の配線1〜4を接続する場合、図7−2に示すように、1,2,3,4のそれぞれの配線が交差してしまう。このため、それぞれの配線に対応する中継基板を設けることになり、合計4層からなる中継基板が必要となってしまう。
【0050】
次に、中継基板2を搭載したキャリッジ7について説明する。図8は、本実施の形態におけるインクジェット装置のキャリッジの斜視図である。図8に示すように、キャリッジ7には、中継基板2と、液滴吐出ヘッド6とが主に備えられている。中継基板2には、さらに、本体接続コネクタ21と、ヘッド接続コネクタ22とが備えられている。そして、ヘッド接続用FFC(Flexible Flat Cable)23により、中継基板2と液滴吐出ヘッド6とが接続されている。
【0051】
本体接続コネクタ21は、中継基板2と装置本体1とを接続するためのケーブルが装着されるコネクタである。ヘッド接続コネクタ22は、中継基板2と液滴吐出ヘッド6とを接続するためのヘッド接続用FFC23が装着されるコネクタである。
【0052】
インクジェット記録装置では、印字中(記録中)にキャリッジが高速に稼動するため、キャリッジの軽量化が望まれている。しかし、アクチュエータを駆動する駆動信号を生成する信号生成部は、各種エレキ部品を組み合わせ成立しているため、複雑な回路構成となっている。また、近年の高画質化により発熱の問題もあり、ヒートシンクなどの大型発熱対策部品も使用されている。このため、上述のようにキャリッジを軽量化するには、駆動信号を生成する信号生成部をキャリッジに搭載することは望ましくない。
【0053】
従って、本実施の形態のインクジェット記録装置では、装置本体1に備えられたコントロールボード上で、アクチュエータを駆動するための駆動信号(駆動波形)を生成し、生成した駆動信号を含む入力信号をキャリッジ7上に搭載されている中継基板2に送信する。そして、中継基板2にて受信した入力信号は、ヘッド接続用FFC23を介して、液滴吐出ヘッド6へ印加される。
【0054】
次に、液滴吐出ヘッド6について説明する。本実施の形態のインクジェット記録装置は、2つの液滴吐出ヘッド6が備えられている。そして、それぞれの液滴吐出ヘッド6には、複数のノズルにより2列のノズル列が形成されている。
【0055】
本実施の形態における端子配列信号による制御は、キャリッジ7の1つの液滴吐出ヘッド6におけるそれぞれのノズル列に対しても可能であり、キャリッジ7の液滴吐出ヘッド6ごとに対しても可能である。図9−1は、端子配列信号による制御をノズル列ごとに行う場合の説明図である。図9−2は、端子配列信号による制御を液滴吐出ヘッドごと行う場合の説明図である。
【0056】
図9−1では、左右のノズル列への端子配列信号(Mode2)を入力する場合に、左列(ノズル列8a)に対してはLとし、右列(ノズル列8b)に対してはHとすることで、1つの液滴吐出ヘッド6内の各ノズル列を制御するドライバIC30の入力端子31の配列に対する信号の割り当てを切り替えることが可能となる。
【0057】
また、図9−2では、左右の液滴吐出ヘッドへの端子配列信号(Mode2)を入力する場合に、左側のヘッド6a(2つのノズル列8に共通)に対してはLとし、右側のヘッド6b(2つのノズル列8に共通)に対してはHとすることで、1つのキャリッジ内の各ヘッド、各ノズル列を制御するドライバIC30の入力端子31の配列に対する信号の割り当てを切り替えることが可能となる。
【0058】
次に、本実施の形態の液滴吐出ヘッド6を搭載したインクジェット記録装置の一例について、図10および図11を参照して説明する。図10は、インクジェット記録装置の斜視図である。図11は、インクジェット記録装置の断面図である。
【0059】
図10および図11に示すように、インクジェット記録装置は、装置本体1の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ7、キャリッジ7に搭載された液滴吐出ヘッド6、液滴吐出ヘッド6へインクを供給するインクカートリッジ95等で構成される印字機構部82等を収納する。装置本体1の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット84(或いは給紙トレイでもよい)を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができ、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ87に排紙する。
【0060】
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ7を主走査方向に摺動自在に保持している。このキャリッジ7にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインクを吐出する液滴吐出ヘッド6のヘッドに複数のノズルを主走査方向と交差する方向に配列し、インク吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ7には液滴吐出ヘッド6のヘッドに各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
【0061】
インクカートリッジ95は上方に大気と連通する大気口、下方には液滴吐出ヘッド6へインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により液滴吐出ヘッド6のヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、液滴吐出ヘッド6のヘッドとしてここでは各色のヘッドを用いているが、各色のインクを吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
【0062】
ここで、キャリッジ7は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ7を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ7に固定しており、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ7が往復駆動される。
【0063】
一方、給紙カセット84にセットした用紙83を液滴吐出ヘッド6の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0064】
そして、キャリッジ7の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を液滴吐出ヘッド6の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109を設けている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ87に送り出す排紙ローラ113及び114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とを配設している。
【0065】
記録時には、キャリッジ7を移動させながら画像信号に応じて液滴吐出ヘッド6を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
【0066】
また、キャリッジ7の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液滴吐出ヘッド6の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャッピング手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ7は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段で液滴吐出ヘッド6をキャッピングされ、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全てのノズルのインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0067】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で液滴吐出ヘッド6のノズルを密封し、チューブを通して吸引手段でノズルからインクとともに気泡等を吸い出し、ノズル面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(図示しない)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0068】
このように、本実施の形態のインクジェット記録装置は、装置本体1においてアクチュエータを駆動する駆動信号、および入力端子31の配列に対する信号の割り当ての種類を示す端子配列信号を含む入力信号を生成し、生成した入力信号を中継基板2を介してドライバIC30に送信する。そして、ドライバIC30は、入力信号に含まれた駆動信号によりアクチュエータを駆動させ、ノズルからインクを吐出させる。このとき、ドライバIC30は、入力信号に含まれた端子配列信号に基づいて、入力端子31の配列に対する信号の割り当てを切り替える。
【0069】
これにより、中継基板2からドライバIC30に配列が異なる入力信号が送信された場合でも、ドライバIC30において入力端子31の配列に対する信号の割り当てを切り替えることで、1種類のドライバIC30により複数種類の配列の入力信号を受信することができる。従って、入力信号を送信する側の中継基板2に形成された配線を簡易にすることができるため、配線を交差させることがなく中継基板2の層数を少なくすることができる。このように中継基板2の層数を少なくすることで層構成を容易にし、その結果、インクジェット記録装置の製造コストを削減することができる。
【0070】
なお、本発明の液滴吐出装置は、本実施の形態では、インクジェット記録装置に適用した例を示すが、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の液滴を吐出して記録を行う装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 装置本体
2 中継基板
4 接続電極
5 PZT接続電極
6 液滴吐出ヘッド
7 キャリッジ
8 ノズル列
11 信号生成部
12 送信部
21 本体接続コネクタ
22 ヘッド接続コネクタ
23 ヘッド接続用FFC
31 入力端子
321 受信部
322 切替部
323 伝達部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2007−258718号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルそれぞれに対応する駆動素子を駆動して、前記複数のノズルから液滴を吐出させる回路装置であって、
入力端子の配列に対する信号の割り当ての種類を示す端子配列信号と前記駆動素子を駆動する駆動信号とを含む入力信号を受信する受信手段と、
前記端子配列信号に基づいて、入力端子の配列に対する信号の割り当てを切り替える切替手段と、
信号の割り当てが切り替えられた入力端子に入力された前記駆動信号を、前記駆動素子に伝達する伝達手段と、
を備えることを特徴とする回路装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記端子配列信号がHighレベルであった場合、入力端子の配列に対する信号を第1の順番の割り当てに切り替え、前記端子配列信号がLowレベルであった場合、入力端子に対する信号を、前記第1の順番と逆の順番である第2の順番の割り当てに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の回路装置。
【請求項3】
複数のノズルから液滴を吐出する液滴吐出装置であって、
前記複数のノズルそれぞれに対応する駆動素子を駆動する回路装置と、
前記回路装置の入力端子の配列に対する信号の割り当ての種類を示す端子配列信号と前記駆動素子を駆動する駆動信号とを含む入力信号を生成する信号生成部と、
前記入力信号を前記回路装置に送信する送信手段と、を備え、
前記回路装置は、
前記入力信号を受信する受信手段と、
前記端子配列信号に基づいて、入力端子の配列に対する信号の割り当てを切り替える切替手段と、
信号の割り当てが切り替えられた入力端子に入力された前記駆動信号を、前記駆動素子に伝達する伝達手段と、
を備えることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
前記切替手段は、前記端子配列信号がHighレベルであった場合、入力端子の配列に対する信号を第1の順番の割り当てに切り替え、前記端子配列信号がLowレベルであった場合、入力端子に対する信号を、前記第1の順番と逆の順番である第2の順番の割り当てに切り替えることを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
フレキシブルプリント基板をさらに備え、
前記回路装置は、前記フレキシブルプリント基板に実装されていることを特徴とする請求項3または4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
配線が形成された中継基板をさらに備え、
前記フレキシブルプリント基板は、前記中継基板を介して、前記液滴吐出装置本体と接続されていることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
可動可能なキャリッジをさらに備え、
前記中継基板は、前記キャリッジに搭載されていることを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記キャリッジは、
前記複数のノズルにより形成された少なくとも2列以上のノズル列と、
前記ノズル列を有する1または複数の液滴吐出ヘッドと、を備えることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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