説明

回転コネクタ

【課題】 突発音を一層低減可能な回転コネクタを提供する。
【解決手段】 互いに相対回転自在に組み合わされ、内部に環状の空間Sが形成される回転ケース2と固定ケース3及び渦巻き状に巻回されると共に、中間に配置されるローラによってU字状に巻き返され、一端が回転ケースに、他端が固定ケースに、それぞれ支持されて環状の空間に収容される複数の帯状伝送線6,7を備え、帯状伝送線の巻き締りや巻き緩みによって両ケース2,3が複数回相対的に回転可能な回転コネクタ1。複数の帯状伝送線は、最短の帯状伝送線6を除く他の帯状伝送線7の厚さが、最短の帯状伝送線6の厚さよりも薄い。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、相対的に回転する二部材間で電気信号,光信号あるいはこれら双方の信号等を伝送する回転コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】相対的に回転する二部材間で電気信号,光信号あるいはこれら双方の信号等を伝送する回転コネクタとして、例えば、回転ケースと固定ケースとによって形成される環状の空間に、複数のローラを有するリングを配置すると共に、渦巻き状に巻回される複数のフラットケーブルのそれぞれの中間部分を、前記各ローラでU字状に巻き返して収容したものがある(例えば、特開2001−112156号)。
【0003】このように中間部分を巻き返したフラットケーブルを有する回転コネクタは、85℃程度以上の高温の環境に2時間程放置すると、高温によって前記フラットケーブルに癖がつき、回転時に突発音と呼ばれる異音が発生する傾向がある。このような突発音は、前記ローラと回転ケースや固定ケースとの間の半径方向のクリアランスを小さくすると、音圧レベルを低減できることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記フラットケーブルは、扁平な金属導体を電気絶縁性の合成樹脂で被覆したものである厚さを有している。このため、前記回転コネクタは、前記クリアランスを小さくするうえで限界があり、従って突発音の音圧レベルを低減するうえで限界があった。
【0005】本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、突発音を一層低減可能な回転コネクタを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明においては上記目的を達成するため、互いに相対回転自在に組み合わされ、内部に環状の空間が形成される回転ケースと固定ケース及び渦巻き状に巻回されると共に、中間に配置されるローラによってU字状に巻き返され、一端が前記回転ケースに、他端が前記固定ケースに、それぞれ支持されて前記環状の空間に収容される複数の帯状伝送線を備え、前記帯状伝送線の巻き締りや巻き緩みによって前記両ケースが複数回相対的に回転可能な回転コネクタにおいて、前記複数の帯状伝送線は、最短の帯状伝送線を除く他の帯状伝送線の厚さが、最短の帯状伝送線の厚さよりも薄い構成としたのである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の回転コネクタに係る一実施形態を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。回転コネクタ1は、図1(a),(b)及び図2に示すように、回転ケース2、固定ケース3及びフラットケーブル6,7を有している。
【0008】回転ケース2は、図1(b)に示すように、フラットケーブル6,7の一端(内端)が支持される筒体で、フラットケーブル6,7の一端(内端)を収容して支持する支持部2aを有している。また、回転ケース2は、上方へ突出させたピン2bが上部に設けられている。ピン2bは、図示しないステアリング装置の係合部と係合し、ステアリングハンドルの回転が伝達されてステアリングハンドルと共に回転する。
【0009】固定ケース3は、回転ケース2と相対回転自在に組み合わされ、内部にフラットケーブル6,7を収納する環状の空間Sを形成し、回転ケース2と共にポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)等の合成樹脂から成形されている。固定ケース3は、図1(a),(b)及び図2に示すように、外筒部材4とカバー部材5とを有している。
【0010】外筒部材4は、図1(a),(b)に示すように、下フランジ4aの外周に外筒部4bが形成されている。一方、カバー部材5は、中央に回転ケース2の外直径と略同径の開口5aが形成されたリング状の部材である。フラットケーブル6,7は、例えば、複数の平行な電気導体、光ファイバ或いはこれら双方を電気絶縁性等の被覆で覆った可撓性を有する帯状伝送線である。フラットケーブル6,7は、渦巻き状に巻回されると共に、図2に示すように、中間に配置されるローラ8によってU字状に巻き返されて、一端が回転ケース2に、他端が固定ケース3に、それぞれ固定されて環状の空間Sに収容されている。
【0011】このとき、フラットケーブル6は、フラットケーブル7よりも短く設定され、厚さが0.195mmである。一方、フラットケーブル7は、電気絶縁性等の被覆を薄くすることで、厚さが0.125mmに形成されている。従って、回転コネクタ1は、フラットケーブル6の被覆を薄くした分を考慮して、ローラ8と回転ケース2や外筒部材4との間の半径方向におけるクリアランスが小さくなるように、設計段階において回転ケース2の厚みや固定ケース3の外筒部材4の厚みが決められる。
【0012】ここで、複数のローラ8は、環状の空間Sに回動自在に配置される図示しないリングに回転自在に支持されている。このリングは、回転ケース2が回転したときに、フラットケーブル6の巻き締りや巻き緩みによって環状の空間S内を移動させられる。以上のように構成される回転コネクタ1は、渦巻き状に巻回したフラットケーブル6,7の中間をローラ8によってU字状に巻き返し、その一端(内端)を支持部2aに、他端(外端)側を外筒部材4に、それぞれ支持させ、2本のフラットケーブル4を巻き締まりと巻き緩みの中立位置に調節した状態で、両ケース2,3によって形成される環状の空間S内にルーズに収容して組み立てられ、ステアリング装置に組み付けて使用される。
【0013】このため、回転コネクタ1は、フラットケーブル6,7の長さに応じた回数分だけ回転ケース2が固定ケース3に対して中立位置から左右方向へ回転することができる。このとき、回転コネクタ1は、フラットケーブル6よりも長いフラットケーブル7の厚さが薄く形成されている。このため、回転コネクタ1は、図2に示すように、ローラ8と回転ケース2との間のクリアランスC2がローラ8と外筒部材4の外筒部4bとの間のクリアランスC3よりも大きくなる。例えば、回転コネクタ1において、環状の空間Sの半径方向の外径が82.6mm、内径が49mm、ローラ8の直径が14.85mmのとき、クリアランスC2=1.15mm、クリアランスC3=0.8mmであった。
【0014】このように設定された回転コネクタ1(実施例)と、フラットケーブル7をフラットケーブル6と同じ厚さとした回転コネクタ(比較例)を、それぞれ5個用い、90℃の環境に2時間程放置した。その結果、実施例の回転コネクタ1は、比較例の回転コネクタに比べて3〜4dB、即ち、約半分から40%、発生する突発音の音圧が低減されていた。
【0015】尚、上記実施形態の回転コネクタ1は、フラットケーブルを2本したが、使用するフラットケーブルは回転コネクタの使用目的に応じて3本或いは4本等、複数であれば種々の本数を使用することができ、特に2本に限定されるものないことは言うまでもない。
【0016】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、突発音を一層低減可能な回転コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転コネクタの平面図(a)と、図1(a)のC1−C1線に沿って切断した断面正面図(b)である。
【図2】図1の回転コネクタからカバー部材を外した状態を示す平面図である。
【符号の説明】
1 回転コネクタ
2 回転ケース
3 固定ケース
4 外筒部材
5 カバー部材
6,7 フラットケーブル
8 ローラ
C1,C2 クリアランス
S 環状の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】 互いに相対回転自在に組み合わされ、内部に環状の空間が形成される回転ケースと固定ケース及び渦巻き状に巻回されると共に、中間に配置されるローラによってU字状に巻き返され、一端が前記回転ケースに、他端が前記固定ケースに、それぞれ支持されて前記環状の空間に収容される複数の帯状伝送線を備え、前記帯状伝送線の巻き締りや巻き緩みによって前記両ケースが複数回相対的に回転可能な回転コネクタにおいて、前記複数の帯状伝送線は、最短の帯状伝送線を除く他の帯状伝送線の厚さが、最短の帯状伝送線の厚さよりも薄いことを特徴とする回転コネクタ。

【図2】
image rotate


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2003−197339(P2003−197339A)
【公開日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−394990(P2001−394990)
【出願日】平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)