説明

回転コネクタ

【課題】人体に挿入された薬液管、血液管、気管チューブの端部と外部回路の端部とを接続するためのコネクタにおいて、コネクタ内に回転機構を有しつつ取り外しを容易に行うことのできる、円錐結合の可能な回転コネクタを提供する。
【解決手段】雄端子部2と、相対回転自在な内筒体5と外筒体6とからなる円錐接合が可能な雌端子部3とを備える回転コネクタにおいて、内筒体5の外周面と外筒体6の内周面とに、外筒体の弾性変形により相互に接触してコネクタ内の回転を拘束可能とする係合手段である凸条11と溝12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に挿入された薬液管、血液管、気管チューブと外部回路とを円錐接合によって接続するための医療用回転コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用のコネクタは管路同士、あるいは管路と部材との接合を行う上で、確実な接合の確保と容易に着脱可能であるということとの相反する機能が要求されることが多い。この要求を満たす一つの手段として円錐接合があり、人工呼吸用回路、回路用部品、薬液シリンジなどの医療用製品に適用しなければならないJISやISOなどの各種規格でこの円錐接合が多数規定されている。
また、医療用コネクタに対するもう一つの要望は、接合を確保しながら接続部材同士が回転可能であるということである。この要望を満たすのが医療用回転コネクタで、自在に接合部材が回動することによって管路等の不用意な閉塞や離間または患者の苦痛を避けることができる。
これらの要求や要望を満たすさまざまな円錐接合による医療用回転コネクタが現在使用されている。しかし、従来の回転コネクタはその回動性のために取り外しが困難になるという問題があった。
例えば、気管チューブと外部回路との円錐接合においては、気管チューブの端部に取り付けられる雄端子部と、人工呼吸器回路の端部に取り付けられる雌端子部とを備えており、これら両端子部が国際的に規格化された円錐接合状態に接続される構成とされている。この場合、呼吸器回路の捻れ等によって気管チューブを挿管された患者に与えられるストレスを軽減するために、回転機構が採用されたスィーベルコネクタと呼ばれる回転コネクタが使用される。
【0003】
従来の回転コネクタの縦断面図を図3に示す。回転コネクタは雄端子部21と雌端子部22とから構成され、雌端子部22は雄端子部21に接続される内筒体23と外筒体24とから構成され、これら内筒体23と外筒体24とが相対回転自在とされている。そして雄端子部21が気管チューブ25に、雌端子部22が人工呼吸器回路26にそれぞれ取り付けられ、雌端子部22の内筒体23内に雄端子部21が円錐接合状態に接続される構成である。
【0004】
これら雄端子部21と雌端子部22との接続の取り外しはきわめて迅速に行われる必要があるが、従来の回転コネクタでは外筒体24を指で把持してねじりを加えても外筒体24が内筒体23に対して回転してしまい雌端子部22から雄端子部21を外しにくい。
【0005】
そこで、コネクタ内に回転機構を有しつつ接続の取り外しが容易に行えるコネクタとして、ラッチ機構を採用するワンタッチコネクタが提案されている(特許文献1参照)。ここで、この種のコネクタは患者の口や喉の上で継続的に使用されるものであるため小型で軽量であるほうが好ましいが、ラッチ機構を採用する特許文献1に記載のワンタッチコネクタでは、コネクタ自身のサイズおよび重量が大きくなってしまう。
【特許文献1】特開2004−344281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、円錐接合ができ、コネクタ内に回転機構を有しつつ取り外しを容易に行うことができ、しかも小型で軽量のコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供している。
【0008】
本発明に係る回転コネクタは、円錐状外周面を有する雄端子部と、その円錐状外周面に円錐接合状態に接続される円錐状内周面を有する雌端子部とを備え、前記雌端子部と前記雄端子部とのうちどちらか一方が、内筒体と該内筒体を相対回転自在に挿入した弾性変形可能な外筒体とを備え、これら内筒体の外周面と外筒体の内周面との間に、前記外筒体の弾性変形により相互に接触して前記相対回転を拘束可能とする係合手段を備えることを特徴とする回転コネクタ。
【0009】
雄端子部と雌端子部とのどちらか一方が内筒体とこれに相対回転自在な外筒体との二重筒状に構成されることによって回転コネクタは回転機構を備えることができる。さらに外筒体を指で把持して弾性変形させて内筒体と外筒体との相対回転を拘束できるので、外筒体を把持して捻りながら引っ張ることによって円錐接合している雄端子部と雌端子部とを容易に取り外すことができる。
【0010】
本発明にかかる回転コネクタにおいて、前記雌端子部が前記円錐状内周面を有する前記内筒体と該内筒体を相対回転自在に挿入した弾性変形可能な前記外筒体とを備えることを特徴とする。
【0011】
雌端子部が円錐状内周面を有する内筒体とこれに相対回転自在な外筒体との二重筒状に構成されることによってコネクタの最も外側にある外筒体を指で把持して弾性変形させて内筒体と外筒体との相対回転を拘束できる。
【0012】
また、本発明に係る回転コネクタは、前記係合手段が前記内筒体の外周面と前記外筒体の内周面とのいずれか一方に形成された突起と他方に形成されこの突起に係合可能な凹部とから構成されていることを特徴とする。
【0013】
外筒体を指で把持し弾性変形させ内筒体の外周面と外筒体の内周面とを接触させると、突起と凹部とが係合して相対回転を拘束できる。
【0014】
さらに、本発明に係る回転コネクタは、前記突起が雌端子部の軸方向に沿って形成された凸条であり、前記凹部はこの凸条に係合可能な溝であることを特徴とする。
【0015】
突起と凹部とを軸方向に沿った凸条と溝との組み合わせにすると、軸方向に長さを持たせられるので指で把持して回転を拘束できる把持位置を広くとることができる。
【0016】
また、本発明にかかる回転コネクタは、気管チューブと人工呼吸器回路とを接続するためのものであることを特徴とする。
【0017】
このような回転コネクタを気管チューブと人工呼吸器回路との接続のために用いると、円錐接合ができ、コネクタ内に回転機構を有しつつ取り外しを容易に行うことができ、しかも小型で軽量の気管チューブ用回転コネクタを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、円錐接合ができ、コネクタ内に回転機構を有しつつ、雌端子部の外筒体を指で把持して捻りながら引くことで容易に接続を取り外せて、しかも小型で軽量の回転コネクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態である気管チューブ用回転コネクタを図1と図2とに基づいて説明する。
図1は本実施形態の縦断面図を示し、図2(a),(b)は図1中A−A’における横断面図を示す。ここで図2(b)は雌端子部の外筒体を指で把持したときの状態を示している。
【0020】
本実施形態の気管チューブ用回転コネクタ1は、図1に示すように気管チューブ51の端に接続される雄端子部2と人工呼吸器回路52の端に接続される雌端子部3とによって構成される。雄端子部2は全体として筒状に形成されており、その基端部を除く先端部の外周面がわずかに先細り状となる円錐状外周面4とされている。一方雌端子部3は相対回転自在な内筒体5と外筒体6との二重筒状に構成されている。内筒体5はその基端部を除く内周面が、雄端子部2の円錐状外周面4と円錐接合状態に接続される円錐状内周面7とされている。また内筒体5と外筒体6とにおいて、人工呼吸器回路52に接続される側の内筒体5の外周面に環状凹部8が形成されているとともに外筒体6の内周面に環状凸部9が形成されており、これら環状凹部8と環状凸部9とが嵌合状態とされることによって内筒体5と外筒体6との抜け止めがされている。
【0021】
そして、これら内筒体5と外筒体6とにおいて雄端子部2との接続側の先端部では、図2(a)に示すように、内筒体5の外周面にはその軸10方向に沿う凸条11が周方向に間隔をおいて全周にわたって複数形成され、外筒体6の内周面には内筒体5の各凸条11に係合可能なそれらと同数の溝12が凸条11と係合可能な相互間隔をおいて全周にわたり形成されている。この場合溝12は凸条11よりわずかに大きく形成されている。
さらに外筒体6の溝形成領域13は薄肉形状に形成されていて指で把持することで弾性変形するようになっている。この場合溝形成領域13の長さは人の指の幅より大きく形成されている。
内筒体5の外周面の凸条形成領域14と前記環状凹部8との間には舌状突片15が周方向に沿って形成され、これが外筒体6の溝形成領域13と前記環状凸部9との間の内周面に形成されたシール部16に弾性接触している。このことによって気管チューブ用回転コネクタ1内を流れる空気が外部へ漏れるのを防止している。
【0022】
気管チューブ用回転コネクタ1の雄端子部2と雌端子部3が接続されている状態では雄端子部2と雌端子部3の内筒体5とが円錐接合状態に接続され容易には外れないようになっている。雄端子部2と雌端子部3との接続を解除するには、外筒体6を指で把持しつつ捻りながら雌端子部3を呼吸器回路52方向へ移動させて雄端子部2を抜くことになる。すなわち、外筒体6の溝形成領域13を図2(b)に白抜き矢印で示すように指で把持すると、指で把持された部分とその周辺部分が撓みこれらの部分が内筒体5の外周面に接触する。すると内筒体5の外周面に形成された凸条11と外筒体6の内周面に形成された溝12が図2(b)に示すように係合し、内筒体5と外筒体6との相対回転は拘束される。そして外筒体6に加えられた捻り力によって内筒体5と外筒体6とを一緒に回転させることができ、内筒体5を雄端子部2から容易に取り外すことができる。すなわち、凸条11と溝12とにより本発明の係合手段が構成される。
なお、外筒体6の溝形成領域13を指で把持したときに凸条11と溝12がずれていても、捻りが加えられると外筒体6は内筒体5に対して回転自在であるので外筒体6の内周面に形成された溝12は内筒体5の外周面を周に沿って移動し、やがて内筒体5の外周面に形成された凸条11が溝12に嵌まり込んで内筒体5と外筒体6との相対回転は拘束される。
【0023】
本実施形態の円錐接合ができ小型で軽量な気管チューブ用回転コネクタは、コネクタ内に回転機構を有しつつ、雌端子部を指で把持して捻りながら引っ張ることで容易に雄端子部から取り外すことができる。
【0024】
本実施形態の気管チューブ用回転コネクタを22mm/15mmの同軸円錐接合の国際規格品に適用する場合、例えば、雄端子部2と雌端子部3とにはともにロックウェル硬度80から105のポリプロピレン樹脂が用いられる。また内筒体5の内径が約15mmで外筒体6の外径が約22mmであり、凸条形成領域14における内筒体5の肉厚aは1.4mm、凸条11の高さbが0.6mmとされるのに対し、溝形成領域13における外筒体6の肉厚cは弾性変形を容易とするために1.0mmと薄肉形状であり、溝12の深さdが0.5mmとされる。
また、材質はポリプロピレン樹脂のほか変形させても破損しない結晶性樹脂であれば使用可能であり、必要に応じて内筒体5に硬い材料を用い外筒体6に柔らかい材料を用いるなど、別材料を組み合わせることも可能である。
なお、本発明に係る回転コネクタは気管チューブだけでなく気管切開用チューブにも使用でき、本発明における気管チューブは気管切開チューブを含むものとする。
【0025】
本発明に係る回転コネクタは、実施形態の気管チューブ用回転コネクタのように気体が流れるチューブと外部回路との接続のみではなく、薬液や血液といった液体の輸液経路中に使用しても良い。
【0026】
また、本発明に係る係合手段は前記実施形態では内筒体5と外筒体6との軸方向に沿う凸条11と溝12とにより構成されるものとしたが、外筒体を把持したときに係合して両筒の相対回転を拘束できるものであれば、軸方向に沿って形成されるものでなくてもよく、例えば単なる突起と凹部との組み合わせや、微細な凹凸を有する粗面等でもよい。
【0027】
さらに、本発明に係る回転コネクタは、前記実施形態では雌端子部に回転機構とこの回転機構の拘束手段を設けたが、これらを雄端子部に設けても良い。
【0028】
また、本発明に係る回転コネクタは、前記実施形態では15mm/22mm同軸円錐接合の回転コネクタであったが、これに限らず15mm円錐コネクタ、22mm円錐コネクタ、30mm円錐コネクタや、ルアーコネクタ、エルボコネクタ、延長コネクタその他の医療機器用円錐コネクタを採用する人工呼吸用回路、人工鼻(HME)、ウォータトラップ、フィルタなどの回路用部品、薬液シリンジ、経腸栄養ライン、フローセンサなどの医療用製品に使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る気管チューブ用回転コネクタの縦断面図である。
【図2】(a)図1A−A‘における気管チューブ用回転コネクタの横断面図、(b)雌端子部の外筒体を指で把持したときの図1A−A‘における気管チューブ用回転コネクタの横断面図である。
【図3】従来の回転コネクタの縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1・・・気管チューブ用回転コネクタ(回転コネクタ)、2・・・雄端子部、
3・・・雌端子部、4・・・円錐状外周面、5・・・内筒体、6・・・外筒体、
7・・・円錐状内周面、8・・・環状凹部、9・・・環状凸部、10・・・軸、
11・・・凸条、12・・・溝、13・・・溝形成領域、14・・・凸条形成領域、
15・・・舌状突片、16・・・シール部、
51・・・気管チューブ、52・・・人工呼吸器回路
a・・・内筒体の凸条形成領域での肉厚、b・・・凸条の高さ、
c・・・外筒体の溝形成領域での肉厚、d・・・溝の深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐状外周面を有する雄端子部と、その円錐状外周面に円錐接合状態に接続される円錐状内周面を有する雌端子部とを備え、
前記雌端子部と前記雄端子部とのうちどちらか一方が、内筒体と該内筒体を相対回転自在に挿入した弾性変形可能な外筒体とを備え、
これら内筒体の外周面と外筒体の内周面との間に、前記外筒体の弾性変形により相互に接触して前記相対回転を拘束可能とする係合手段を備えることを特徴とする回転コネクタ。
【請求項2】
前記雌端子部が、前記円錐状内周面を有する内筒体と該内筒体を相対回転自在に挿入した弾性変形可能な外筒体とを備えることを特徴とする請求項1に記載の回転コネクタ。
【請求項3】
前記係合手段は、前記内筒体の外周面と前記外筒体の内周面とのいずれか一方に形成された突起と、他方に形成され前記突起に係合可能な凹部とから構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転コネクタ。
【請求項4】
前記突起は雌端子部の軸方向に沿って形成された凸条であり、前記凹部はこの凸条に係合可能な溝であることを特徴とする請求項3に記載の回転コネクタ。
【請求項5】
気管チューブと人工呼吸器回路とを接続するためのものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の回転コネクタ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−236567(P2007−236567A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61889(P2006−61889)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】