説明

回転切削装置

【課題】内部構造を簡素化し製造コストを削減させた回転切削装置の提供。
【解決手段】 回転切削装置1は、本体ケース2に収容されるモータ4を有する。本体ケース2内には、モータ4により軸心を中心に回転駆動されるスピンドルケース61を備える。本体ケース2に回動可能に支持される操作レバー24は、ピニオン25Bと連動している。スピンドルケース61内には軸心方向に摺動可能に支持され、ホルソー10が装着されるスピンドル61が配置されている。本体ケース2から伸延部材28が延出し、移動部材71の貫通孔71aを貫通している。移動部材71は、スピンドル61を回転可能に支承している。移動部材71からは、ピニオン25Bと噛合するラック72Aが形成され、軸心に関して伸延部材28とは反対側に位置する案内部材72が軸心方向に延出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
市場において販売されている回転切削装置たるボール盤は、ハウジング内に収容されるモータにより駆動される切削刃たる環状カッタが着脱可能に設けられている。環状カッタは、可動部材に回転可能に支承されており、可動部材はハウジングに対して一方向に摺動可能に構成される。可動部材からは、ラックが形成された2本の可動軸が延出しており、ハウジング内の2つのピニオンと連動している。ハウジングからは操作ハンドルが延出しており、操作ハンドルを操作することにより2つのピニオンは回転する。
【0003】
作業者は、操作ハンドルを回動させることにより、2つのピニオンを回転させてラックを一方向に稼働させ、可動部材を摺動させて環状カッタを被加工物である金属板に当接させて穿孔作業を開始する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の回転切削装置では、可動部材から延出した2本の軸のそれぞれにラックが形成され、それぞれのラックと噛合するピニオンも2個設けられていたため、内部構造が複雑なものとなり製造コストがかかっていた。さらに、可動部材に2本の軸が設けられるので、可動部材の重量が重くなってしまっていた。このため、可動部材を移動させる操作ハンドルの操作が重くなってしまっていた。そこで本発明は、内部構造を簡素化し製造コストを削減させた回転切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、モータと、該モータを収容するハウジングと、該ハウジングに収容され、該モータにより軸心を中心に回転駆動される支持部材と、該ハウジングに回動可能に支持される操作レバーと、該ハウジングに収容され、該操作レバーの回動と連動するピニオンと、該支持部材に該軸心方向に摺動可能に支持され、該ハウジング外に延びる切削刃が装着されるスピンドルと、該ハウジングに支持され、該軸心方向に該ハウジング外に延出する第1案内部材と、該スピンドルを回転可能に支持し、該第1案内部材が貫通する貫通孔が形成された移動部材と、該ピニオンと噛合するラックが形成され、該移動部材から該軸心方向に延出する第2案内部材と、を有することを特徴とする回転切削装置を提供する。
【0006】
また、本発明は、モータと、該モータを収容するハウジングと、該モータによって回転駆動される支持部材と、該支持部材に保持され、該支持部材に対して移動可能なスピンドルと、該スピンドルに保持される切削刃と、該スピンドルを回転可能に保持する移動部材と、該移動部材より延び、該ハウジングに摺動可能に保持される第1案内部材と、該ハウジングより延び、該移動部材に摺動可能に保持される第2案内部材と、を有することを特徴とする回転切削装置を提供する。
【0007】
このような構成によると、操作レバーの操作によりピニオンが回動し、ピニオンと噛合するラックが支持部材の軸心方向に移動することにより、第2案内部材及び移動部材が軸心方向に移動してスピンドルが支持部材に対して摺動する。このとき、移動部材は第2案内部材に支持されるとともに、貫通孔を貫通する第1案内部材からも支持されている。このような構成により、1組のラック及びピニオンによって、2ヶ所(第1案内部材と第2案内部材)で移動部材の軸心方向への移動を支持することが可能となり製造コストを削減することができる。さらに、移動部材の重量が小さくなるので、ハンドル操作を軽くすることができる。このため、使いやすい回転切削装置とすることができる。
【0008】
上記構成の回転切削装置において、該第1案内部材には、目盛が設けられていることが好ましい。
【0009】
このような構成によると、第1案内部材には目盛が設けられているため、作業者は容易に穿孔作業時の深さを認識することができる。
【0010】
上記構成の回転切削装置において、該第1案内部材には、該軸心方向に移動可能であって該移動部材と当接することにより該移動部材を停止させるストッパが設けられていることが好ましい。
【0011】
このような構成によると、第1案内部材にはストッパが設けられているため、移動部材はストッパに当接して停止する。これにより、作業者は切削刃が被加工部材を貫いた瞬間の操作レバーの急激な回動を阻止することができる。さらに、ストッパを作業者が望む穿孔深さの位置に配置することにより、容易に切削刃を所望の位置で停止させることができる。
【0012】
上記構成の回転切削装置において、該第1案内部材は、該軸心方向に移動可能に該ハウジングに支持されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によると、第1案内部材は軸心方向に移動可能であるため、目盛の位置を調整することにより、軸心方向における長さが異なる切削刃にも対応することができる。
【0014】
上記構成の回転切削装置において、該第2案内部材は、該軸心に関して該第1案内部材とは反対側に位置していることが好ましい。
【0015】
このような構成によると、移動部材は軸心を挟んで両側から第1案内部材及び第2案内部材によって支持されているため、安定した状態でスピンドルをハウジングに対して摺動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の回転切削装置によれば、内部構造を簡素化し製造コストを削減させた回転切削装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る回転切削装置の側面断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る回転切削装置のラック、ピニオン周辺を表す側面部分断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る回転切削装置の伸延部材の構成を示す正面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る回転切削装置のスピンドル周辺を表す側面部分断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る回転切削装置のスピンドル周辺を表す側面部分断面図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る回転切削装置のスピンドル周辺を表す側面部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態による回転切削装置について図1から図5に基づき説明する。図1に示される回転切削装置の一例であるボール盤1は、本体ケース2と、電磁ベース3と、モータ4と、ギヤ機構5と、スピンドル部6と、送り機構部7と、から主に構成されており、被加工部材である金属板S上に設置され、スピンドル部6に装着されるホールソー10によって金属板Sに孔を形成することができる。
【0019】
本体ケース2は、電磁ベース3を介して、金属板S上に載置されており、モータ4等が内蔵される枠体21と、スピンドル部収容部22とから主に構成される。以下の説明においては、金属板Sから本体ケース2に向かう方向を上方向として上下方向を定義する。また上下方向と直交する方向であって本体ケース2からスピンドル部6に向かう方向を前方向として前後方向を定義する。また、図1において紙面手前側を左方向と定義し、反対を右方向として定義する。
【0020】
枠体21は、モータ4を収容するモータ収容部21Aと、電磁ベース3と接続しているベース部21Bとから構成され、モータ4のON/OFFの制御を行う図示せぬ駆動源スイッチが設けられている。スピンドル部収容部22は、枠体21の前側に位置しており、スピンドル部6が内蔵されている。またスピンドル部収容部22の上には、スピンドル部6に供給される切削液である切削油が貯留されるタンク23が配置されている。タンク23には、スピンドル部6へ供給される切削油の流量を調整する調整弁23Aが設けられている(図3)。またスピンドル部収容部22には、タンク23から下方に向けて垂下されスピンドル部6に切削油を供給する供給管24が設けられており、供給管24の切削油が吐出される開口部分はスピンドル部6内に位置している。
【0021】
本体ケース2には、送り機構部7を操作する操作レバー25が回転軸25Aを中心に回動可能に設けられている。図2に示すように、回転軸25Aには後述するラック72Aと噛合するピニオン25Bが同軸的に設けられている。タンク23の後方であって枠体21の上方には、ボール盤1を持ち運びする際の持ち手となる把持部26が設けられている。ベース部21Bには、モータ4、電磁ベース3に電力を供給する電源ケーブル27が接続されている。
【0022】
スピンドル部収容部22から、伸延部材28が下方に延出している。伸延部材28は、その延出方向に直交する方向の断面形状が円形であり、スピンドル部収容部22に上下方向に摺動可能に支持されている。図3に示すように、スピンドル部収容部22からノブ29が延出している。ノブ29は、ネジ部29Aを有し、ネジ部29Aの先端が伸延部材28を押圧することにより、伸延部材28の鉛直方向の位置が固定される。ノブ29を回転させることにより、伸延部材28の位置決め、解除を行うことができる。伸延部材28は、後述の移動部材71に形成された貫通孔71aを貫通して、下端部近傍でベース部21Bから前方に延びる支持部材28A(図1)により上下方向に摺動可能に支持されている。図3、4に示すように、伸延部材28の前側には目盛が形成されており、各目盛には図示せぬ数値が割り振られている。作業者は図示せぬ数値を読むことにより、穿孔深さを確認することができる。伸延部材28には、上下方向に移動可能なストッパ28Bが設けられている。ストッパ28Bには、押しネジ28Cが設けられていて、押しネジ28Cによってストッパ28Bを伸延部材28の所望の位置で固定することができる。ストッパ28は、後述の移動部材71の下方向への移動を規制する。
【0023】
電磁ベース3は、ベース部21Bの下方に位置して金属板S表面上に設置されており、内部に通電することにより磁力を発する電磁石を有している。よって電磁ベース3は、金属板Sに磁力により吸着することができ、ボール盤1を金属板S上に安定して載置することが可能になる。電磁ベース3の上部であってベース部21Bの後方には、電磁ベース3の電磁石の起動・停止を行う電磁石スイッチ3Aが設けられている。
【0024】
モータ4はモータ収容部21A内に内蔵されており、回転力を出力する出力軸部41が前後方向を軸方向とするように配置されている。図示せぬ駆動源スイッチにより、モータ4の回転が制御される。
【0025】
ギヤ機構5は、スピンドル部6とモータ4との間に介在し、ピニオンギヤ51と、接続ギヤ部52と、リングギヤ53とから主に構成されている。ピニオンギヤ51は出力軸部41の前端部分に設けられており、出力軸部41と同軸一体回転している。接続ギヤ部52は、枠体21に軸支され前後方向を軸方向とする軸部52Aと、軸部52Aの後端側に固定されてピニオンギヤ51と噛合する平ギヤ52Bと、軸部52Aの前端側に固定されて平ギヤ52Bと同軸一体回転する傘歯ギヤ52Cとを有している。リングギヤ53は、スピンドル部6と同軸回転可能であり、傘歯ギヤ52Cと噛合してモータ4の回転力をスピンドル部6へと伝達している。またリングギヤ53も傘歯状のギヤであるため、傘歯ギヤ52Cと噛合することにより、その回転軸の方向を上下方向に変換している。
【0026】
図4に示されるように、スピンドル部6は、スピンドルケース61と、スピンドル62と、センターピン63とから主に構成されている。スピンドルケース61は、上下方向を軸方向とする筒状に構成され、一対のベアリング61A、61Aを介してスピンドル部収容部22に回転可能に支承されている。スピンドルケース61の外周には、前述のリングギヤ53が同軸一体回転するように設けられている。またスピンドルケース61の筒状の内周面には、上下方向に延び半径方向内方に突出する係合リブ61Bが設けられている。
【0027】
スピンドル62は、筒状部62Aと切削刃保持部62Bとから主に構成されている。筒状部62Aの外周部分には、上下方向に延びスピンドル62の半径方向外方に突出する被係合リブ62Cが設けられている。この被係合リブ62Cがスピンドルケース61の係合リブ61Bと係合するように筒状部62Aは、スピンドルケース61内に収容されている。筒状部62Aがスピンドルケース61とスプライン係合するため、スピンドル62は、スピンドルケース61に対して上下方向に摺動可能であると共に回転不能に構成されており、スピンドルケース61と同軸一体回転する。筒状部62Aの内部には、切削液通路62aが形成され、切削液通路62a内には、供給管24の下端部分が挿入されている。筒状部62Aと供給管24との間には、切削液通路62aにおいて最上部となる位置に、シール62Dが介在しており、切削油の切削液通路62aからの漏れを防止している。スピンドル62の内部には、センターピン63と嵌合可能なシール部材65が設けられている。
【0028】
切削刃保持部62Bは、スピンドル62の下方に設けられており、スピンドル62の半径方向に移動可能な押さえ部62Eを有する。押さえ部62Eには、孔部62bが形成されており、孔部62bに専用工具を挿入して押さえ部62Eを回転させ半径方向内方に移動させることにより、後述の工具であるホールソー10の被保持部10Bを保持する。これにより、ホールソー10はスピンドル62と一体に回転する。
【0029】
センターピン63は、略棒状に構成され、上端がシール部材65を貫通して切削液通路62a内に上下動可能に挿入されている。センターピン63において最下端は、鋭角に尖っており、ボール盤1で金属板Sに穿孔する際の芯だしに用いられている。またセンターピン63において、シール部材65と嵌合する位置には、上下方向と直交する断面で円形を成しシール部材65と全周に亘って密着する弁部63Aと、弁部63Aの下側に位置してシール部材65との間に隙間を形成する隙間形成部63Bとが規定されている。よってセンターピン63がシール部材65に対して下側から上側へと移動することにより、切削液通路62aと後述の貫通孔10aとの間を連通した状態にすることができる。またセンターピン63の上方に位置する切削液通路62a内にはバネ64が内蔵されており、バネ64によりセンターピン63が下方へと付勢されている。このとき、弁部63Aがシール部材65と嵌合して切削液通路62aと後述の貫通孔10aとの間が遮断された状態に保たれる。またセンターピン63が下方へ付勢されることにより、図4に示されるようにセンターピン63の下端が、ホールソー10の下端より下方に位置することになる。
【0030】
送り機構部7は、主に移動部材71から構成されている。移動部材71は、ベアリング71Aを介してスピンドル62を回転可能に支承している。移動部材71の左右方向の一端部(スピンドル62の右側)には、伸延部材28が貫通する貫通孔71aが形成されている。貫通孔71aの断面積は伸延部材28の断面積と、略同一か僅かに大きくなっている。これにより、伸延部材28は貫通孔71a内を抵抗なく摺動可能となり、円滑に移動部材71を案内することができる。移動部材71の下面における貫通孔71aと伸延部材28との交点が目盛読取部71Bとなる。作業者は目盛読取部71Bの目盛を読取ることで、移動部材71の上下方向の移動距離を把握することができる。
【0031】
移動部材71の左右方向の他端部であってスピンドル62を挟んで貫通孔71aが形成されている側と反対側(スピンドル62の左側)には案内部材72が設けられている。案内部材72は、その延出方向に直交する方向の断面形状が円形となっている。案内部材72は、移動部材71から上方に向けて延出している。図2に示すように、案内部材72の後側には、ピニオン25Bと噛合するラック72Aが上下方向の所定距離に亘って形成されている。移動部材71は、スピンドル62の左側で案内部材72によって上下方向に案内され、スピンドル62の右側で伸延部材28によって摺動可能に支持されている。つまり、移動部材71はスピンドル62を挟んで左右方向両側から支持されているため、安定して上下方向に移動することができる。
【0032】
ボール盤1に装着されるホールソー10(スチールコア、環状カッタともいう)は、筒状の切削刃10Aと、切削刃10Aに接続される被保持部10Bとから構成されており、筒状の切削刃10Aによって金属板Sを円形に切り抜いて穿孔することができる。またホールソー10の中心軸位置には、被保持部10Bの上面から切削刃10A内を貫通し、センターピン63が挿通される貫通孔10aが形成されている。この貫通孔10aの径は、センターピン63の外径と略同一に構成されている。上述したような構成により、スピンドルケース61と、スピンドル62と、ホールソー10とは同一の軸心を中心に回転駆動される。
【0033】
次に、ボール盤1の動作について説明する。作業者は、穿孔作業前に伸延部材28のゼロ点調整及びストッパ28Bの位置調整を行う。具体的には、モータ4の停止状態で操作レバー25を回動させて切削刃10Aの先端と金属板Sとを当接させる。この状態で、ノブ29を操作して伸延部材28の固定を解除し、目盛読取部71Bの位置に目盛のゼロを合わせて、伸延部材28を固定する。これにより、作業者は穿孔作業時に伸延部材28の目盛を読むことで、切削刃10Aがどの程度の深さに位置しているかを把握することができる。さらに、ストッパ28Bの位置を金属板Sの板厚t(図3)よりも僅かに大きい数値に合わせて固定する。
【0034】
その後、電磁石スイッチ3AをONにして電磁ベース3を金属板Sに吸着させ、図示せぬ駆動源スイッチをONにしてモータ4を駆動し、ホールソー10を回転させる。このとき、センターピン63の弁部63Aがシール部材65と嵌合しており、切削液通路62aと貫通孔10aとは連通していない。次に、操作レバー25を回動させると、これに連動してピニオン25Bが回転し、ラック72A及び移動部材71が下方向に移動する。このとき、移動部材71は貫通孔71aを貫通している伸延部材28によって下方向に案内される。同時に、スピンドル62が押し下げられて穿孔が開始される。操作レバー25の回動により、センターピン63が先ず金属板Sに当接し、その後に切削刃10Aが金属板Sに当接するため、センターピン63はバネ64の付勢力に抗してスピンドル62に対して上側に移動する。この移動に伴い、センターピン63のシール部材65と弁部63Aとの嵌合が解除されて、切削液通路62aと貫通孔10aとが連通して切削刃10Aに切削液が供給される。
【0035】
穿孔作業時は、切削刃10Aと金属板Sとの抵抗によって操作レバー25の回動力が強くなるため、案内部材72が移動部材71を押す力が大きくなり、移動部材71の左右方向の一端(案内部材側)に大きな力が加わることとなる。しかし、移動部材71はスピンドル62を挟んで右側にて案内部材72に摺動可能に支持されているため、安定した状態で移動部材71を下降させることができる。
【0036】
作業者が操作レバー25をさらに回動させて、切削刃10Aが金属板Sを貫くと穿孔作業が終了する。このとき、図5に示すように、移動部材71はストッパ28Bに当接して停止し、操作レバー25もこれ以上回動不可となる。センターピン63は、バネ64の付勢力により自動的に下方へと移動する。この移動により、センターピン63のシール部材65が弁部63Aと嵌合し、シール部材65とセンターピン63との間の隙間が消滅する。これにより、切削油が不要に流れ出ることが抑制される。作業者は、操作レバー25を操作することにより移動部材71を上昇させる。このときも、移動部材71は貫通孔71aを貫通している伸延部材28によって上方向に案内されているため、円滑に移動部材71を上昇させることができる。
【0037】
上述の構成によると、操作レバー25の操作によりピニオン25Bが回動し、ピニオン25Bと噛合するラック72Bが軸心方向に移動することにより、案内部材72及び移動部材71が上下方向に移動してスピンドル62がスピンドルケース61に対して摺動する。このとき、移動部材71は案内部材72に支持されるとともに、貫通孔71aを貫通する伸延部材28からも支持されている。このような構成により、1組のラック及びピニオンによって、2ヶ所(伸延部材28と案内部材72)で移動部材71の上下方向への移動を支持することが可能となり製造コストを削減することができる。
【0038】
また、上述の構成によると、伸延部材28には目盛が設けられているため、作業者は目盛読取部71Bの数値を読み取ることにより容易に穿孔作業時の深さを認識することができる。
【0039】
また、上述の構成によると、伸延部材28にはストッパ28Bが設けられているため、穿孔作業が完了すると移動部材71はストッパ28Bに当接して停止する。これにより、作業者は切削刃が金属板Sを貫いた瞬間の操作レバー25の急激な回動を阻止することができる。さらに、ストッパ28Bを作業者が望む穿孔深さの位置に配置することにより、容易にホールソー10を所望の位置で停止させることができる。
【0040】
また、上述の構成によると、伸延部材28は上下方向に移動可能であるため、目盛の位置を調整することにより、上下方向における長さが異なるホールソーにも対応することができる。
【0041】
次に第2の実施の形態について図6に基づいて説明する。第1の実施の形態と同一の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
伸延部材228がスピンドル部収容部22から下方に延出している。伸延部材228は、その延出方向に直交する方向の断面形状が円形となっている。伸延部材228は、スピンドル部収容部22に上下方向に摺動可能に支持されている。伸延部材228の下端部には、切屑除去部材228Bが設けられている。切屑除去部材228Bは、先端部228Cと、係止ネジ228Dとを有し、切屑除去部材228Bには長孔228Eが形成されている。切屑除去部材228Bは、係止ネジ228Dを緩めて長孔228E内の位置を移動させることにより、上下方向及び左右方向に移動可能且つ、前後方向を回転軸として所定角度回動可能に構成されている。作業者は、係止ネジ228Dを調整して先端部228Cの位置を切削刃10Aの近傍に位置させることにより、穿孔作業で発生した切屑を除去することができる。これにより、ホールソー10が異なる径のものに交換された場合であっても先端部228Cを切削刃10Aの近傍に位置させることができる。
【0043】
本発明による回転切削装置は上述した実施の形態によるボール盤に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、伸延部材28や案内部材72は断面形状が円形だったが、断面形状が矩形で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1・・ボール盤 2・・本体ケース 3・・電磁ベース 3A・・電磁石スイッチ 4・・モータ 5・・ギヤ機構 6・・スピンドル部 7・・送り機構部 10・・ホールソー10A・・刃部 10B・・被保持部 21・・枠体 22・・スピンドル部収容部 23・・タンク 24・・供給管 25・・操作レバー 26・・把持部 27・・電源ケーブル 28・・伸延部材 29・・ノブ 41・・出力軸部 51・・ピニオンギヤ 52・・接続ギヤ部 52A・・軸部 52B・・平ギヤ 52C・・傘歯ギヤ 53・・リングギヤ 61・・スピンドルケース 61A・・ベアリング 61A・・リブ 62・・スピンドル 62A・・筒状部 62B・・係合リブ 62C・・被係合リブ 62a・・切削液通路 63・・センターピン 63A・・弁部 63B・・隙間形成部 64・・バネ 71・・移動部材 71A・・ベアリング 71B・・目盛読取部 72・・案内部材 72A・・ラック 228B・・切屑除去部 228C・・先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
該モータを収容するハウジングと、
該ハウジングに収容され、該モータにより軸心を中心に回転駆動される支持部材と、
該ハウジングに回動可能に支持される操作レバーと、
該ハウジングに収容され、該操作レバーの回動と連動するピニオンと、
該支持部材に該軸心方向に摺動可能に支持され、該ハウジング外に延びる切削刃が装着されるスピンドルと、
該ハウジングに支持され、該軸心方向に該ハウジング外に延出する第1案内部材と、
該スピンドルを回転可能に支持し、該第1案内部材が貫通する貫通孔が形成された移動部材と、
該ピニオンと噛合するラックが形成され、該移動部材から該軸心方向に延出する第2案内部材と、
を有することを特徴とする回転切削装置。
【請求項2】
該第1案内部材には、目盛が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転切削装置。
【請求項3】
該第1案内部材には、該軸心方向に移動可能であって該移動部材と当接することにより該移動部材を停止させるストッパが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転切削装置。
【請求項4】
該第1案内部材は、該軸心方向に移動可能に該ハウジングに支持されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転切削装置。
【請求項5】
該第2案内部材は、該軸心に関して該第1案内部材とは反対側に位置していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の回転切削装置。
【請求項6】
モータと、
該モータを収容するハウジングと、
該モータによって回転駆動される支持部材と、
該支持部材に保持され、該支持部材に対して移動可能なスピンドルと、
該スピンドルに保持される切削刃と、
該スピンドルを回転可能に保持する移動部材と、
該移動部材より延び、該ハウジングに摺動可能に保持される第1案内部材と、
該ハウジングより延び、該移動部材に摺動可能に保持される第2案内部材と、を有することを特徴とする回転切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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