説明

回転型スイッチ及び電子機器

【課題】機械的ノイズを発生させることなくクリック感の有無を切り替えると共に、機械的摩耗を低減しつつ操作反力を付与する。
【解決手段】ダイアルカバー102は回転部材101と一体となって回転可能である。回転部材101の外縁部に、凸部101aと凹部101bとが円周方向において一定の角度間隔で交互に設けられる。第1の電磁石104、第2の電磁石106は、第1の電磁石104の磁極面104aが凸部101aに正対するとき、第2の電磁石106の磁極面106aが凹部101bに正対するように、それぞれが配置されている。クリックモードでは第1の電磁石104のみ通電して磁界を発生させ、非クリックモードでは電磁石104、106の双方を通電して磁界を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置等の電子機器に搭載される回転型スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置等の電子機器に搭載される回転型スイッチにおいては、操作感触を高めるため、クリック発生機構が設けられるものがあり、クリック部材による凹凸部によって操作感を発生させものがある。しかし、例えば、電子機器としての近年のデジタルカメラで、動画撮影機能が備わっている機種においては、撮影中に回転型スイッチを操作することによるクリック音がノイズとして記録されてしまうといった問題があった。そこで、これを解決するために、磁力による引き付け力を利用し、部材同士の機械的干渉音の無いクリック発生機構を実現したものがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、電磁石のような電界発生素子と、回転部の所定角ごとに透磁率の強弱を設けた回転部材(ダイアルベース)とを用い、双方の磁力によってクリック感を発生させる。それにより、部材同士の干渉音の無いクリック発生機構を実現している。以下にその概略を記す。
【0004】
電磁石としてのコイルは、コイルの電極に通電することにより発生する磁界の2つの磁極のうち一方を、歯車形状の磁性体から成る回転部材の凸部に向けて置いている。
コイルの発する磁界により回転部材の凸部が引き付けられ、凸部はコイルの磁極面に面した状態で止まる。
【0005】
コイルが通電された状態では、回転部材の凸部がコイルの磁界に引き付けられているため、回転操作に対する反力となって回転部材は磁界が凸部を引き付ける力よりも大きい外力が加わるまで回転しない。しかし、回転部材の凸部が引き付けられている力よりも大きい回転操作が加えられると、回転部材は回転し、回転部材の凸部は磁極面から離れ、磁極面には回転操作前に面していた回転部材の凸部から回転方向に所定角度の位置にある次の凸部が正対する。
【0006】
このように、回転操作によって回転部材の凸部が次々と磁極面に面し、その度に電磁石の磁界により回転操作に対する反力が生じ、これがクリック感となる。
【0007】
ところで、動画撮影中のクロップズームや動画再生中のフレーム送り等においては、むしろクリック感の無い、スムーズな操作感が望まれることが多い。上記の従来技術を用いてそれを実現するためには、電界発生素子に磁界の発生をさせないようにすればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−174807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1の技術を用いた回転型スイッチにおいて、クリック感の無いスムーズな回転操作を行なう場合、回転操作に対する反力は回転部材を保持するメカ機構に依存することになる。そのため反力の調整はメカ機構で行なうより他無く、反力の強さを調整するのが容易でない。
【0010】
また、上記メカ機構の摩擦力のみによって回転操作に対する反力を発生させる構成とした場合、メカ部材が磨耗しやすく、耐久性が課題となる。
【0011】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、機械的ノイズを発生させることなくクリック感の有無を切り替えると共に、機械的摩耗を低減しつつ操作反力を付与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、回転操作部と、前記回転操作部と一体となって回転し、円周方向に凸部および凹部が一定の角度間隔で交互に設けられた回転部材と、回転する前記回転部材の前記凸部または前記凹部に対向するよう配置され、磁界を発生させる第1の磁界発生手段と、回転する前記回転部材の前記凸部または前記凹部に対向すると共に、前記第1の磁界発生手段が前記凸部に正対するとき前記凹部に正対するように配置され、磁界を発生させる第2の磁界発生手段とを有し、前記第2の磁界発生手段は、発生させる磁界の強さを切り替えることが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機械的ノイズを発生させることなくクリック感の有無を切り替えると共に、機械的摩耗を低減しつつ操作反力を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る回転型スイッチの要部の構成を示す模式図である。
【図2】回転型スイッチを制御するための制御機構のブロック図である。
【図3】回転部材が初期位置から時計方向に回転した位置において回転部材が受ける電磁力の強さを示す図である。
【図4】磁界制御の処理のフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る回転型スイッチの要部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る回転型スイッチの要部の構成を示す模式図である。この回転型スイッチは、デジタルカメラ等の撮像装置をはじめとする電子機器に搭載され、主として、ユーザによる回転操作を検出し、それに応じた機器設定を行うためのものである。
【0017】
回転型スイッチは、基板103と、ユーザインターフェースとなる回転操作部としての円筒形のダイアルカバー102とを備える。基板103には、回転部材101、第1の電磁石(第1の磁界発生手段)104、第2の電磁石106(第2の磁界発生手段)等が配設される。回転部材101は、その回転中心となる中心軸101cが基板103に取り付けられることにより基板103上で回転可能となっている。ダイアルカバー102は回転部材101と中心位置にて結合されていて、同心である中心軸101cを中心に回転部材101と一体となって回転可能である。ダイアルカバー102から回転部材101にかけてのダイアルに関する詳細な構成については図示や説明を省略するが、上記の特許文献1(特開2005−174807号公報)で示されるものと同様である。
【0018】
回転部材101は、磁性体の鉄円板の外周に凹凸部を刻んで平面視(中心軸101cの軸方向視)で歯車形状としたものである。具体的には、回転部材101の外縁部に、半径方向に放射状に延設される凸部101aと、隣接する凸部101a間に形成される凹部101bとが、円周方向において一定の角度間隔で交互に設けられる。平面視において、凸部101aは短冊型に延設され、凹部101bはV字型に切り欠かれている。
【0019】
円周方向における凸部101aの中心及び中心軸101cを通る直線L1と、円周方向における凹部101bの中心及び中心軸101cを通る直線L2とが成す鋭角の角度をθとする。凸部101aは、回転部材101の径方向に突出形成されているので、第1の電磁石104の磁極面104aまたは第2の電磁石106の磁極面106aまでのエアギャップが小さくなる。一方、凹部101bは、回転部材101の径方向に切り欠かれているので、第1の電磁石104の磁極面104aまたは第2の電磁石106の磁極面106aまでのエアギャップが大きくなる。
【0020】
第1の電磁石104、第2の電磁石106のそれぞれに通電して励磁するための電源として、第1の直流電圧電源105、第2の直流電圧電源107が設けられている。第1の直流電圧電源105、第2の直流電圧電源107による通電により、第1の電磁石104、第2の電磁石106はそれぞれ磁界を発生させる。
【0021】
第1の電磁石104、第2の電磁石106は、いずれも回転部材101の外周側において中心軸101cの方向に向けて配置されている。第1の電磁石104と第2の電磁石106はそれぞれ、通電されることにより生じる2つの磁極のうち一方の磁極面を回転部材101に向け、できる限り回転部材101に近い位置に配置されている。第1の電磁石104の磁極面104a、第2の電磁石106の磁極面106aが、中心軸101cの方向を向いている磁極面である。凸部101aは、第1の電磁石104の磁極面104aまたは第2の電磁石106の磁極面106aまでのエアギャップが小さいので、第1の電磁石104または第2の電磁石106の磁気吸引力が強く作用する。しかし、凹部101bは、第1の電磁石104の磁極面104aまたは第2の電磁石106の磁極面106aまでのエアギャップが大きいので、第1の電磁石104または第2の電磁石106の磁気吸引力がほとんど作用しない。
【0022】
回転部材101の回転方向の位置によって、磁極面104a、106aは、凸部101aまたは凹部101bに対向することになる。後述する磁界制御(通電制御)によって、クリック感を得たり、クリック感をなくしたりするために、凸部101a、凹部101bと、第1の電磁石104、第2の電磁石106との相対的な位置関係については、次のように定めている。
【0023】
まず、磁極面104aに垂直で磁極面104aの中心及び中心軸101cを通る直線L11と、磁極面106aに垂直で磁極面106aの中心及び中心軸101cを通る直線L12とが成す鋭角の角度をαとする。角度αは下記数式1で定義される。
[数1]
α=θ×(2N−1)
ここで、Nは、「2N−1」が回転部材101の歯(凸部101a)の数を超えないような整数である(図1の例ではN=1,2,3,4のいずれか)。本実施の形態では、一例として、角度α=角度θとすると共にN=1として構成し、第1の電磁石104と第2の電磁石106とが角度θ(=角度α)を成すように近接して隣接配置されている。
【0024】
別の表現を用いれば、第1の電磁石104、第2の電磁石106は、第1の電磁石104の磁極面104aが凸部101aに正対するとき、第2の電磁石106の磁極面106aが凹部101bに正対するように、それぞれが配置されている。従って、この状態から回転部材101を角度θだけ回転させた場合、磁極面104aが凹部101bに正対すると共に、磁極面106aが凸部101aに正対することになる。
【0025】
第1の直流電圧電源105、第2の直流電圧電源107は、それぞれ第1の電磁石104の通電用、第2の電磁石106の通電用として独立しており、それぞれ通電制御することが可能である。従って、第1の電磁石104及び第2の電磁石106のいずれか一方のみを通電する、または両方を通電する、あるいは両方とも通電しないといった制御が可能である。
【0026】
また、代表的な制御においては、電磁石104、106の双方が通電される場合に、それぞれで発生する磁界の強さが同等となるように、第1の電磁石104と第2の電磁石106のそれぞれに流れる電流量は予め調整されている。ただし、第1の電磁石104の電流量は第1の直流電圧電源105により調整可能で、第2の電磁石106の電流量は第2の直流電圧電源107により調整可能である。
【0027】
基板103にはまた、回転部材101の回転角度を検出するためのセンサ112が配設される。センサ112は、回転部材101に干渉しない範囲で、できるだけ回転部材101に近接して対向するよう配置される。センサ112は、強磁性体の接近を検出して信号を発する特性を持ち、回転部材101の回転に伴う凸部101aの接近を検出し、センサ112の対向部を通過した凸部101aの個数から、回転部材101の回転角を検出する。これにより、ユーザによる回転操作の回転角を検出することで操作位置を特定し、その値を各種の設定に用いる。センサ112は、ホール素子やフォトリフレクタ、メカニカルスイッチ等で構成されるが、回転部材101の回転角度を検出可能であれば構成は限定されない。
【0028】
図2は、回転型スイッチを制御するための制御機構のブロック図である。CPU(制御手段)31に、上記のセンサ112、第1の直流電圧電源105、第2の直流電圧電源107のほか、ROM32、記憶部33、入力部34が接続される。CPU31は、本回転型スイッチ全体の制御を司る。ROM32は、CPU31が実行する制御プログラムや各種データを記憶する。記憶部33は、不揮発メモリで構成され、各種入力情報、設定情報、バッファデータ等を記憶する。入力部34は、ユーザから各種の指示の入力を受け付ける。第1の電磁石104及び第2の電磁石106の通電制御、すなわち電流量の制御はCPU31によってなされる。
【0029】
本実施の形態では、ダイアルカバー102の操作に対してクリック感を付与する「クリックモード」と、回転操作感覚をクリック感のない滑らかな感覚とする「非クリックモード」とが切り替えられる。クリックモードでは、電磁石104、106のうち第1の電磁石104のみ通電し、第2の電磁石106は通電しない。一方、非クリックモードでは、両方の電磁石104、106を均等に通電する。
【0030】
クリックモードの動作について説明する。回転部材101の正回転方向は、図1の時計方向とする。
【0031】
クリック感を発生させるためには、第1の電磁石104のみを通電し、第2の電磁石106は通電しないことで、第1の電磁石104にだけ磁界を発生させる。第1の電磁石104に通電すると磁界が発生し、その磁界により回転部材101の凸部101aが磁極面104aに引き付けられ、凸部101aが磁極面104aに面した状態で回転部材101が止まる。ある凸部101aが磁極面104aに正対する位置を回転部材101の「初期位置」とする。
【0032】
第1の電磁石104の通電継続状態では、凸部101aが第1の電磁石104の磁界に引き付けられているため、ダイアルカバー102の回転操作に対する反力が生じる。そのため、回転部材101は、上記磁界が凸部101aを引き付ける力よりも大きい外力が加わるまでは回転しない。
【0033】
ダイアルカバー102にユーザによる回転操作(例えば正回転)が加えられ、その操作力が、凸部101aが引き付けられている力より上回れば、回転部材101は回転する。回転により、第1の電磁石104に引き付けられていた凸部101aは磁極面104aから離れ、やがて磁極面104aには、回転操作前に面していた凸部101aから角度θだけ回転方向後方に隣接する次の凸部101aが正対するようになる。すると、上記と同様に、当該次の凸部101aが磁極面104aに引き付けられ、それが回転操作に対する反力を生じさせ、回転操作力が磁極面104aによる引き付け力を上回るまで回転部材101は回転しない。
【0034】
ここでユーザによる回転操作が終了すれば、回転部材101は凸部101aが磁極面104aに引き付けられ、磁極面104aに正対した位置で静止する。回転操作がなおも継続する場合は、さらに次の凸部101aが磁極面104aに正対し、さらなる回転操作に対する反力を生じさせる。
【0035】
このように、回転操作によって凸部101aが次々と磁極面104aに面し、その度に第1の電磁石104の磁界により回転操作に対する反力が生じ、これがクリック感となってユーザに伝わる。これにより、剛体同士の接触とそれによる干渉音(メカノイズ)の発生の無いクリック発生機構を実現できる。
【0036】
クリック感の無いスムーズな回転操作を行いたい場合は、非クリックモードとし、第1の電磁石104と第2の電磁石106の両方とも通電し、それぞれに磁界を発生させる。
【0037】
図3は、回転部材101が初期位置から時計方向に回転角度Xだけ回転した回転位置において回転部材101が受ける電磁力の強さを示す図である。
【0038】
この例では、説明の簡単化のために、回転部材101が第1の電磁石104と第2の電磁石106のそれぞれから受ける電磁力につき、それらの最大値を2[F]、最小値を0[F]としている。ここで言う最大値とは、凸部101aが磁極面104aあるいは磁極面106aに対して最も広い範囲で向かい合っている(正対している)ときの値である。また、最小値とは、凹部101bが磁極面104aあるいは磁極面106aに対して最も広い範囲で向かい合っている(正対している)ときの値である。
【0039】
図3において、曲線201は、回転部材101が第1の電磁石104から受ける電磁力の強さの波形であり、曲線202は、回転部材101が第2の電磁石106から受ける電磁力の強さの波形である。初期位置では回転角度Xは0度であり、凸部101aが磁極面104aと正対しているため、回転部材101が第1の電磁石104から受ける電磁力は最大、すなわち2[F]となる。また、初期位置では、凹部101bが磁極面106aと正対しているため、回転部材101が第1の電磁石104から受ける電磁力は最小、すなわち0[F]となる。
【0040】
初期位置から徐々に回転部材101が回転していくと、凸部101aが磁極面104aに対して面する面積が減少するため、曲線201で示すように回転部材101が第1の電磁石104から受ける電磁力も減少していく。しかしその一方、凸部101aが磁極面106aと面する面積が増加するため、曲線202で示すように回転部材101が第2の電磁石106から受ける電磁力は増加していく。
【0041】
そして回転部材101が初期位置から角度θだけ回転したとき、凹部101bが磁極面104aと正対するため、回転部材101が第1の電磁石104から受ける電磁力は最小の0[F]となる。一方、凸部101aが磁極面106aと正対するため、回転部材101が第2の電磁石106から受ける電磁力は最大の2[F]となる。
【0042】
このように、いずれもサインカーブである曲線201、202にて、回転部材101が第1の電磁石104、第2の電磁石106から受ける電磁力を表すことができる。曲線203は、回転部材101が第1の電磁石104と第2の電磁石106とからそれぞれ受ける電磁力の和(曲線201、202の和)を表す波形である。
【0043】
曲線203は、この例では直線となる。従って、回転角度Xによらず、回転部材101が第1の電磁石104と第2の電磁石106とから受ける電磁力の和は、常に2[F]で一定である。これは、曲線201、202が互いに逆位相の正弦波であることから、それらの和が一定となることによる。よって、回転部材101は、回転角度Xによらず、常に一定の電磁力を受けることとなり、ダイアルカバー102を回転操作した際のクリック感は発生しないこととなる。その一方、一定の電磁力により、操作に対する反力は得られる。
【0044】
図1の例で説明すると、図1の初期位置から僅かに時計方向に回転部材101が回転すると、磁極面104aに最も近い凸部101aが磁極面104aに引き戻されるように作用し、回転部材101が反時計方向に付勢される。それと同時に、当該凸部101aに反時計方向において隣接する(次の)凸部101aが磁極面104aに引き付けられ、回転部材101が時計方向に付勢される。それらの付勢力の合計が常に一定となるため、クリック感は生じないのである。
【0045】
ここで、第1の電磁石104と第2の電磁石106とに流す電流量を調整するだけで、回転部材101にかかる電磁力(曲線203の値)の強弱を変えることが出来る。例えば、第1の電磁石104と第2の電磁石106との電流量を均等にしつつ増減すれば、回転操作反力の強弱を容易に制御することができる。
【0046】
特に、回転操作に対する反力を生じさせる上で、従来のように回転部材を押さえ付ける等して摩擦による反力を生み出すメカ機構を必要としないため、メカ機構の磨耗が減り、耐久性に優れる。
【0047】
このような、クリックモード及び非クリックモードの動作は、CPU31による磁界制御によってなされる。図4は、磁界制御の処理のフローチャートである。本処理は、例えば、電子機器の電源投入により開始される。
【0048】
まず、CPU31は、初期設定を行う(ステップS401)。回転部材101に関する初期設定の情報の一部として、クリックモードまたは非クリックモードのいずれかを設定する情報が予めROM32に格納されている。これら各種の設定情報は、前回の磁界制御の処理時に記憶されたものであってもよい。
【0049】
初期設定の情報に従って、CPU31は、通電制御を行う。例えば、クリックモードとするような情報であれば、第1の電磁石104のみを通電し、第2の電磁石106は通電しないように制御する。この初期設定の情報は、別途の記憶装置に記憶させるようにして、ユーザが事後的に変更できるようにしてもよい。
【0050】
次に、ステップS402では、CPU31は、クリック感の発生が必要であるか(クリックモードとする指示が受け付けられているか)否かを判別する。ここで、クリックモードまたは非クリックモードとするための指示は、任意のタイミングで入力部34によってユーザから受け付けられ、その情報が記憶部33に記憶されているものとする。初期設定のままである場合は、クリックモードとする指示が受け付けられている状態と同じとして扱う。
【0051】
その判別の結果、クリック感の発生が必要な場合は、CPU31は、クリックモード処理SA(ステップS403〜S406)を実行する。一方、クリック感の発生が必要でない場合は、非クリックモード処理SB(ステップS407〜410)を実行する。
【0052】
すなわち、クリックモード処理SAにおいて、ステップS403で、CPU31は、片方の電磁石(ここでは第1の電磁石104)のみ通電して磁界を発生させると共に、他方の電磁石(ここでは第2の電磁石106)は通電しないよう制御する。次に、ステップS404では、CPU31は、回転方向に対する反力の大きさ(ここではクリック感の程度)を変更するか否かを判別する。ここで、回転方向に対する反力の変更に関する指示(変更指示と変更の程度)についても、任意のタイミングで入力部34によってユーザから受け付けられ、その情報が記憶部33に記憶されているものとする。後述するステップS408で用いる情報も同様とする。
【0053】
その判別の結果、CPU31は、回転反力の大きさを変更しないと判別した場合は、電磁石104、106への通電状態を現状維持とする(ステップS405)。従って、ここでは第2の電磁石106は通電しないままとする。一方、CPU31は、回転反力の大きさを変更すると判別した場合は、現在通電されている方の電磁石(ここでは第1の電磁石104)の電流値を、記憶部33に記憶されている情報に従って変更する(ステップS406)。この場合、第1の電磁石104の電流値の変更により磁界の強さを調節することとなり、電流量を増やせば反力(クリック感)が大きくなり、電流量を減らせば反力が小さくなる。
【0054】
一方、非クリックモード制御SBにおいて、ステップS407で、CPU31は、両方の電磁石(電磁石104、106)に通電してそれぞれ磁界を発生させる。次に、CPU31は、記憶部33に記憶されている情報に基づき、回転反力の大きさ(回転操作の重さ)を変更するか否かを判別する(ステップS408)。
【0055】
その判別の結果、CPU31は、回転反力の大きさを変更しないと判別した場合は、電磁石104、106への通電状態を現状維持とする(ステップS409)。従って、ここでは電磁石104、106の双方を通電したままとする。一方、CPU31は、回転反力の大きさを変更すると判別した場合は、両方の電磁石(電磁石104、106)の電流値をいずれも、記憶部33に記憶されている情報に従って同じ量だけ変更する(ステップS410)。この場合、電磁石104、106の各電流値の変更により磁界の強さを共に調節することとなり、電流量を増やせば反力が大きくなり、電流量を減らせば反力が小さくなる。
【0056】
ステップS405、S406、S409、S410の処理後は、CPU31は、処理をステップS411に進め、電源状態を把握し、電源がON状態であるか否かを判別する。そして、CPU31は、電源がON状態であれば、処理を前記ステップS402に戻す一方、電源がOFF状態であれば現在の設定を記憶部33に記憶させたまま本磁界制御処理を終了させる。
【0057】
本実施の形態によれば、円周方向に透磁率の強弱を設けた回転部材101に対して、第1の電磁石104の磁極面104aが凸部101aに正対するとき、第2の電磁石106の磁極面106aが凹部101bに正対するようにした。そして、クリックモードでは第1の電磁石104のみを励磁し、非クリックモードでは電磁石104、106の双方を励磁するようにした。このように、実質的に第2の電磁石106が発生させる磁界の強さを切り替えることで、クリック感の有無を切り替えられると共に、クリックモードではメカ機構によるノイズを発生させることなくクリック感を付与することができる。しかも、クリック感がない場合においても、摩擦等の機械的機構に依らずとも回転操作反力を確保することができる。よって、機械的ノイズを発生させることなくクリック感の有無を切り替えると共に、機械的摩耗を低減しつつ操作反力を付与することができる。
【0058】
ところで、電磁石104、106は、それぞれ別個に、発生させる磁界の強さを任意に調節可能である。クリックモード処理SAにおいて、第2の電磁石106に、全く通電しないのではなく、第1の電磁石104より小さい値の電流を流したとしても、クリック感を付与することは可能である。その場合、第2の電磁石106の電流量の変更の程度によって、クリック感の程度を任意に制御可能である。このように操作負荷を電気的に制御が可能であるので、操作感覚の調節が容易である。
【0059】
なお、第1の電磁石104と第2の電磁石106との制御の態様を、逆の関係としてもよい。
【0060】
ところで、発生磁界が変更制御される磁界発生手段としては、電磁石に限られるものではない。例えば、第1の電磁石104及び第2の電磁石106の少なくとも一方は、永久磁石としての性質を持っていてもよい。永久磁石の性質を持てば、その性質を持たない電磁石に流す電流値より少ない電流値で発生磁界の制御可能となり、消費電力の削減を図ることができる。
【0061】
また、一方の磁界発生手段(第1の電磁石104が相当する)を常に磁界を発生させるようにし、他方の磁界発生手段は磁界発生を切り替えられる構成としてもよい。その場合は、上記一方の磁界発生手段については、電磁石として構成せず永久磁石としてのみ構成し、一定の磁界が常に発生するようにしてもよい。
【0062】
ところで、回転部材101の外縁部において、透磁率が高い部分と低い部分とは、肉部と欠肉部という形態によって設けたが、これに限るものではない。円盤部材の外縁部に透磁率が異なる素材を円周方向において交互に異ならせて配置する等によって実現してもよい。
【0063】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る回転型スイッチの要部の構成を示す模式図である。
【0064】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態に対して、第3の電磁石108、第3の直流電圧電源109、第4の電磁石110及び第4の直流電圧電源111が追加された点が異なり、その他の構成は同様である。第3の電磁石108、第4の電磁石110の構成は、第1の電磁石104、第2の電磁石106と同様である。第3の直流電圧電源109、第4の直流電圧電源111の構成は、第1の直流電圧電源105、第2の直流電圧電源107と同様である。CPU31に制御される第3の直流電圧電源109、第4の直流電圧電源111による通電により、第3の電磁石108、第4の電磁石110がそれぞれ磁界を発生させる。
【0065】
第3の電磁石108の磁極面108aに垂直で磁極面108aの中心及び中心軸101cを通る直線をL21とする。第4の電磁石110の磁極面110aに垂直で磁極面110aの中心及び中心軸101cを通る直線をL22とする。直線L21と直線L22とが成す鋭角は角度αであり、角度θと同じである。直線L21、直線L22は、それぞれ、直線L11、L12の延長線に一致する。すなわち、第1の電磁石104と第3の電磁石108とは、回転部材101の中心軸101cを挟んで点対称の位置に配置された対で成る。第2の電磁石106と第4の電磁石110とは、回転部材101の中心軸101cを挟んで点対称の位置に配置された対で成る。
【0066】
かかる構成において、第3の直流電圧電源109、第4の直流電圧電源111は、それぞれ、第1の直流電圧電源105、第2の直流電圧電源107と全く同じように同じタイミングで制御がなされる。従って、CPU31は、図4の磁界制御の処理において、第1の電磁石104、第2の電磁石106に対するのと同様の通電制御を第3の電磁石108、第4の電磁石110に対して行う。
【0067】
電磁的な作用は第1の実施の形態と同様となる。従って、クリックモード及び非クリックモードが実現可能である。第2の実施の形態においては、励磁された第1の電磁石104と第3の電磁石108とは、同じ電磁力で中心軸101cを挟んで両側から回転部材101を引き付けようとする。また、励磁された第2の電磁石106と第4の電磁石110とは、同じ電磁力で中心軸101cを挟んで両側から回転部材101を引き付けようとする。これらから、いずれのモードにおいても、引き付け力が半径方向に偏ることがなく、中心軸101cはその場に留まろうとする。その結果、第1の実施の形態のように片側から引き付けられる構成と比較すると、回転部材101の機械的摩擦が減少し、耐久性の向上が見込まれる。
【0068】
よって、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏すると共に、機械的摩耗の低減においてより大きい効果を奏する。
【0069】
ところで、第1、第2の実施の形態において、回転部材101における凸部101a、凹部101bの数はそれぞれ8個であったが、これに限るものではない。
【0070】
また、第2の実施の形態では、同じ通電制御が適用されるグループ内の電磁石は2つ(例えば、第1の電磁石104及び第3の電磁石108)であったが、同じグループ内の電磁石の数を3つ以上としてもよい。特に、回転部材101の中心軸101c周りにおける機械的摩耗を低減する観点からは、同じグループ内において、回転部材101の中心軸101cを中心に円周方向に一定の角度間隔で、同じ通電制御が適用される複数の電磁石を配置すればよい。ただしそのように複数の電磁石を配置するためには、同じグループ内の電磁石の数は、回転部材101の歯(凸部101a)の数の約数とする必要がある。例えば、凸部101aを12個としたとき、同じグループ内の電磁石を3個とし、120°間隔の正三角形の配置とする。
【符号の説明】
【0071】
31 CPU
101 回転部材
101a 凸部
101b 凹部
101c 中心軸
102 ダイアルカバー
104 第1の電磁石
106 第2の電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作部と、
前記回転操作部と一体となって回転し、円周方向に凸部および凹部が一定の角度間隔で交互に設けられた回転部材と、
回転する前記回転部材の前記凸部または前記凹部に対向するよう配置され、磁界を発生させる第1の磁界発生手段と、
回転する前記回転部材の前記凸部または前記凹部に対向すると共に、前記第1の磁界発生手段が前記凸部に正対するとき前記凹部に正対するように配置され、磁界を発生させる第2の磁界発生手段とを有し、
前記第2の磁界発生手段は、発生させる磁界の強さを切り替えることが可能であることを特徴とする回転型スイッチ。
【請求項2】
前記第2の磁界発生手段は電磁石でなり、通電する電流量を調節することで発生させる磁界の強さを調節することが可能であることを特徴とする請求項1記載の回転型スイッチ。
【請求項3】
前記第1の磁界発生手段は電磁石でなり、前記第2の磁界発生手段とは独立して、通電する電流量を調節することで、発生させる磁界の強さを調節することが可能であることを特徴とする請求項2記載の回転型スイッチ。
【請求項4】
前記第1の磁界発生手段及び前記第2の磁界発生手段は、それぞれ、前記回転部材の回転中心を中心に円周方向に一定の角度間隔で複数が配置されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転型スイッチ。
【請求項5】
前記第1の磁界発生手段及び前記第2の磁界発生手段の少なくとも一方は、永久磁石としての性質を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転型スイッチ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の回転型スイッチを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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