説明

回転式床面用ブラシ

【課題】フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に適しており、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に積極的に寄与でき、目詰まりを起こしにくく、剥離むらを低減でき、剥離能力を向上できる剥離作業用具を提供する。
【解決手段】回転式床面用ブラシ11は、回転式床磨き機に装着され、回転しつつ床面に接触する。回転式床面用ブラシ11は、円板形状のブラシ台31と、ブラシ台31の環状のブラシ領域43に設けられたブラシ部33と、ブラシ領域43の外周45に沿って間隔を開けて配置された複数の外側パッド35と、ブラシ領域43の内周47に沿って間隔を開けて配置された複数の内側パッド37と、を備えている。複数の外側パッド35および複数の内側パッド37は周方向にずれた位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式床磨き機に装着され、回転しつつ床面に接触する回転式床面用ブラシに関し、特に、床面のフロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に適した回転式床面用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床面の樹脂フロアーポリッシュ組成物皮膜は、一定期間が経過すると剥離除去されて、再度塗り直される。剥離作業では、既設のフロアーポリッシュ組成物皮膜に、水で希釈した強アルカリの剥離剤が塗布される。それから、回転式床磨き機(ポリッシャ)に装着された床洗浄用パッドによってフロアーポリッシュ組成物皮膜がこすられて、フロアーポリッシュ組成物皮膜が剥離される。
【0003】
従来の剥離技術では、化学品である剥離剤と、剥離作業用具としての床洗浄用パッドが用いられる。このうち、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に寄与するのは主として剥離剤の化学作用である。作業用具としての床洗浄用パッドは、補助的な機能しか果たしておらず、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に積極的に寄与する機能は果たしていない。そこで、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に積極的に寄与して剥離能力を向上できる作業用具の開発が望まれる。
【0004】
また、フロアーポリッシュ組成物の改良と維持管理技術の進歩により、フロアーポリッシュ組成物皮膜の耐久性が向上し、次の剥離塗布までの周期が長くなっている。次の剥離塗布までの周期が長くなると、剥離すべきフロアーポリッシュ組成物皮膜が古くなり、固着および硬化し、剥離しにくくなる。このようにフロアーポリッシュ組成物の耐久性向上に伴ってフロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離が容易でなくなる傾向があり、この観点でも、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に積極的に寄与して剥離能力を向上できる作業用具の開発が望まれる。
【0005】
また、回転式床磨き機に装着される作業用具としては、上記のパッドのほかに、ブラシが知られている。ブラシは、円板形状のブラシ台に植毛されている。従来から各種のブラシが提案されているが、従来のブラシを使ってフロアーポリッシュ組成物皮膜を剥離しようとすると、剥離されたフロアーポリッシュ組成物皮膜によりブラシの目詰まりが生じやすいという問題がある。ブラシの目詰まりは、ブラシと床面の接触を妨げて、剥離むらを生じさせる要因になる。
【0006】
また、“ブラシ”と“たわし”とを備えた複合タイプの電動床磨き機用ブラシ台も提案されている(特許文献1参照)。同文献のブラシ台には、扇形のブラシと細長いたわしとが周方向に交互に配置される。この複合タイプのブラシ台においても、ブラシの目詰まりは生じる。たわしによって集められたフロアーポリッシュ組成物皮膜がブラシに詰まってしまうためである。また、ブラシ部分とたわし部分が交互に配置されているために、回転時の振動が大きくなる傾向がある。この振動は、作業性を低下させ、また、剥離むらを増大させて、剥離能力低下の要因になる。
【特許文献1】特開平8−131385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記背景の下でなされたものであり、その目的は、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に適しており、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に積極的に寄与でき、目詰まりを起こしにくく、剥離むらを低減でき、剥離能力を向上できる剥離作業用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様は、回転式床磨き機に装着され、回転しつつ床面に接触する回転式床面用ブラシであって、前記回転式床磨き機に装着される円板形状のブラシ台と、前記ブラシ台の環状のブラシ領域に設けられたブラシ部と、前記ブラシ領域の外周に沿って間隔を開けて配置された複数の外側パッドと、前記ブラシ領域の内周に沿って間隔を開けて、前記複数の外側パッドとは周方向にずれた位置に配置された複数の内側パッドと、を備えている。
【0009】
複数の外側パッドの各々は、ブラシ領域の外周から、ブラシ領域の外周および内周の間の所定の外側パッド終端位置まで半径方向に延びる形状を有してよく、複数の内側パッドの各々は、ブラシ領域の内周から、ブラシ領域の外周および内周の間の所定の内側パッド終端位置まで半径方向に延びる形状を有してよく、複数の外側パッドと複数の内側パッドが周方向に交互に配置されてよい。なお、本発明の実施の形態において、外側パッドはブラシ台外周側を始端とし、内側パッドはブラシ台内周側を始端として考え、外側パッドの終端と内側パッドの終端とは互いに円周方向に隣接する位置になる。また、上記の外側パッド終端位置と内側パッド終端位置が、ブラシ台の半径方向に略同位置でよい。
【0010】
本発明によれば、上記のような構成により、剥離剤の作用で膨潤したフロアーポリッシュ組成物皮膜がブラシ部によって破壊され、さらに、破壊されたフロアーポリッシュ組成物皮膜が外側パッドと内側パッドでかきとられ(スクイズされ)、これらの機能によって床面用ブラシが積極的にフロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に寄与できる。また、外側パッドと内側パッドが周方向にずれて配置されており、これらのずれた2種類のパッドが、剥離されたフロアーポリッシュ組成物皮膜を適度に散らすので、ブラシ部の目詰まりが生じにくくなり、剥離むらが低減する。また、外側パッドと内側パッドが互いにずれたパッド配置は、回転時のブラシ台の振動を低減し、これによって作業性が向上し、剥離むらも低減する。このようにして、本発明によれば、ブラシとパッドといった2種の要素が相乗的な効果を奏する好適な構成を採用したことにより、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に適しており、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に積極的に寄与でき、目詰まりを起こしにくく、剥離むらを低減でき、剥離能力を向上できる回転式床面用ブラシを提供できる。
【0011】
本発明の別の態様は、上記の回転式床面用ブラシが装着された回転式床磨き機である。
【0012】
以下に説明するように、本発明には他の態様が存在する。したがって、この発明の開示は、本発明の一部の態様の提供を意図しており、ここで記述され請求される発明の範囲を制限することは意図していない。
【発明の効果】
【0013】
上述のように、本発明は、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に適しており、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に積極的に寄与でき、目詰まりを起こしにくく、剥離むらを低減でき、剥離能力を向上できる回転式床面用ブラシを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の詳細な説明を述べる。ただし、以下の詳細な説明と添付の図面は発明を限定するものではない。代わりに、発明の範囲は添付の請求の範囲により規定される。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る回転式床面用ブラシが装着された回転式床磨き機を示している。回転式床磨き機1は、電動タイプであり、本体3とハンドル5を備える。ハンドル5は、本体3に取り付けられたハンドルポール7と、ハンドルポール7の先端のグリップ部9とで構成されている。
【0016】
本体3の下面には、本実施の形態の回転式床面用ブラシ11(以下、床面用ブラシ11という)が取り付けられている。床面用ブラシ11は、装着部13を用いて本体3の下面に取り付けられている。床面用ブラシ11は、本体3に内蔵されたモータ15によって回転される。また、本体3および床面用ブラシ11は、飛散防止用のカバー17で覆われる。なお、図1は模式図であり、発明を理解しやすくするために、図1では、ブラシ毛の一部が削除されて、両側のパッド(後述)が露出している。実際には、図1の方向から見たときは、両側のパッドはブラシ毛に隠れている。
【0017】
ハンドル5には、給水タンク19と給水レバー21が備えられている。給水タンク19はハンドルポール7に取り付けられており、給水レバー21は、グリップ部9を持つ手で操作できる位置に配置されている。給水レバー21が握られると、給水タンク19の水が本体3の下面から床面23に供給される。
【0018】
本実施の形態の回転式床磨き機1は、床面23の上で使用される。床面23は例えば塩ビ長尺タイル等の化学床である。床面用ブラシ11が装着された状態で、本体3が床面23上に置かれ、モータ15が回転する。これにより、床面用ブラシ11が、床面23上のフロアーポリッシュ組成物皮膜25に押しつけられながら回転し、フロアーポリッシュ組成物皮膜25を剥離する。回転数は、1分間に160〜300回転である。
【0019】
図2〜図4は、床面用ブラシ11を示している。図2は床面用ブラシ11を下方から見た図であり、図3および図4は、図2のラインAA、BBで床面用ブラシ11を切断した断面図である。これらの図は適当に模式化および簡略化されている。
【0020】
図示のように、床面用ブラシ11は、ブラシ台31、ブラシ部33、複数の外側パッド35および複数の内側パッド37で構成されている。
【0021】
ブラシ台31は、回転式床磨き機1に装着される円板形状の部材である。ブラシ台31の外径は、回転式床磨き機1の本体下面の外径と同様の大きさに設定されてもよいが、作業効率の点から、回転式床磨き機1の本体下面の外径より大きく設定されている。また、ブラシ台31の中央部には円形の穴41が開いている。
【0022】
ブラシ台31には環状のブラシ領域43が設けられており、ブラシ領域43にブラシ部33が設けられている。ブラシ領域43の外周45は、ブラシ台31の外周31bから所定の距離だけ内側に位置している。また、ブラシ領域43の内周47は、ブラシ台31の中央部に設けられた穴41の縁部31aよりも所定の距離だけ外側に位置している。ブラシ部33は、所定の間隔を開けて配置された複数のブラシ線束51で構成されている。図3および図4に示すように、各々のブラシ線束51は、複数本のブラシ線53の集まりである。それらブラシ線53は、ブラシ台31に設けられた円形の穴(図示せず)に植毛されている。
【0023】
次に、外側パッド35および内側パッド37について説明する。複数の外側パッド35は、ブラシ領域43の外周45に沿って間隔を開けて配置されている。また、複数の内側パッド37は、ブラシ領域43の内周47に沿って間隔を開けて、複数の外側パッド35とは周方向にずれた位置に配置されている。
【0024】
より詳細には、各々の外側パッド35は、ブラシ領域43の外周45から所定の外側パッド終端位置61まで半径方向に延びる形状を有している。また、各々の内側パッド37は、ブラシ領域43の内周47から所定の内側パッド終端位置63まで半径方向に延びる形状を有している。すなわち、ブラシ領域の外周から内周までの長さをWとしたときに、外側パッドは、ブラシ領域の外側を起点として、内周方向に0.4W〜0.7Wの位置を外側パッド終端位置とし、また、内側パッドは、ブラシ領域の内周を起点として、外周方向に0.4W〜0.7Wの位置を内周パッド終端位置として配置されてよい。本発明の範囲内で、外側パッド35の外側終端がブラシ領域43の外周45と正確に一致する必要はなく、図示の例のように外側パッド35がブラシ領域43の外周45からはみ出してもよく、その逆でもよい。この点は内側パッド37の内側端についても同様である。また、外側パッド終端位置61および内側パッド終端位置63は、それぞれ、ブラシ領域43の外周45および内周47の間の所定の位置である。
【0025】
本実施の形態の例では、上記の外側パッド終端位置61と内側パッド終端位置63が、ブラシ台の半径方向に略同位置であって、外周45と内周47の略中間である。要するに、本実施の形態では、外側パッド35および内側パッド37が、それぞれ、ブラシ領域43の真中から外側半部および内側半部に配置されている。
【0026】
また、複数の外側パッド35と複数の内側パッド37は、周方向に交互に配置されている。本実施の形態の例では、4本の外側パッド35と4本の内側パッド37が45度ずつ間隔を開けて、等間隔かつ交互に備えられている。
【0027】
各外側パッド35および各内側パッド37は直方体形状を有している。また、図2に示されるように、外側パッド35および内側パッド37とパッド周囲のブラシ線束51の間には隙間65が設けられている。
【0028】
なお、図5および図6に例示されるように、パッド形状は直方体に限定されない。図5の例1〜3では、高さ方向(ブラシ台31に垂直な方向)から見たときに、パッド形状が三角形、楕円および長円である。また、図5では、高さ方向から見たときに、中央部の幅が狭くなるパッド形状の例4も示している。
【0029】
また、図6は、例5〜例9の各々につき、パッド長手方向から見た図と斜視図を示している。図6の例5では、パッド形状は直方体であるが、上面(ブラシ台31に垂直な方向から見た面)に複数のV溝(V字型の溝)が設けられている。複数のV溝は、パッド長手方向(ブラシ台31の半径方向)に沿って平行に伸びている。また、パッド長手方向の中央付近にて、パッド上面に幅方向(長手方向に対して垂直方向)のV溝が設けられている。また、例6では、パッド上面が斜面であり、パッド長手方向から見たときの形状が台形である。また、例7では、パッド上面が2つの斜面で構成されており、幅方向に沿って両端から中央に向かって傾斜しており、中央部が両端より低い。また、例8では、パッド長手方向から見たときに、2つの山型の曲線の並んだ形状をパッド断面が有しており、例9では、パッド断面が、3つの山型の曲線が並んだ形状をパッド断面が有している。例8、例9では、各々の山型部分の稜線にてパッドが床面と接する。
【0030】
上記に各種のパッド形状を説明した。これらのパッド形状から、フロアーポリッシュ組成物皮膜の状態、床材、回転式床磨き機1等の仕様に応じて適当な形状が選択されてよい。
【0031】
次に、床面用ブラシ11の好適な寸法設定について説明する。図1に示されるように、回転式床磨き機1の本体3の外径をaとし、ブラシ台31の外径をbとする。本体3とブラシ台31の外径比は例えば以下のように設定される。a:b=16:18。詳細な数値としては、本体径a=400mm、ブラシ台径b=450mmである。ただし、ブラシ台径(b)は上記に限定されず、本体径とブラシ台径の比率(a:b)も上記に限定されないことはもちろんである。適宜、ポリッシャ本体径に応じて、本体径(a)に対するブラシ台径(b)が、同等ないしはブラシ台径(b)が大きくなるように設定されてよい。
【0032】
因みに、通常の洗浄用パッドの場合、本体径aとパッド径bの比は、a:b=12:13であり、パッド径と本体径がほぼ同一である。これに対して、本実施の形態では、ブラシ台31が通常の洗浄用パッドよりも大きく、そして本体3より大きく設定されている。
【0033】
また、ブラシ部33において、ブラシ線束51間のピッチPb(中心間距離、図2〜図4)は10〜30mmであり、より好ましくは20mmである。また、ブラシ台31の内縁31aから、最も内側に位置するブラシ線束51(中心)までの距離は、10〜20mmである。さらに、ブラシ台31の外縁31bから、最も外側に位置するブラシ線束51(中心)までの距離は、10〜20mmである。
【0034】
また、各ブラシ線束51のブラシ台31からの突出高さHb(図3、図4)は、12〜50mmであり、より好ましくは15〜25mmである。
【0035】
また、各ブラシ線束51の植毛数(ブラシ線の本数)は13〜34本であり、より好ましくは20本である。各ブラシ線53の径は1〜1.6mmであり、より好ましくは1.3mmである。好適な例では、ブラシ台31に直径7.5mmのブラシ穴が設けられる(多数のブラシ穴がブラシピッチPbをあけて設けられる)。各ブラシ穴には、直径1.3mmのブラシ線53が20本、植毛される。これにより、各ブラシ線束51において、先端の径が約15mmになる。
【0036】
次に、外側パッド35および内側パッド37の寸法設定について説明する。パッド高さHp(外側パッド35および内側パッド37の高さ、図3、図4)は、11〜49mmであり、より好ましくは14〜22mmである。また、“ブラシ−パッド段差Hbp”(外側パッド35および内側パッド37とブラシ部33との高さの差)が、1〜10mmであり、より好ましくは、3〜5mmである。
【0037】
このような段差設定により、使用状態でブラシ線53が少し撓み、ブラシ先端とパッド先端が同じ高さになり、両構成が好適に機能する。因みに、パッド高さHpを20mmに設定し、ブラシ高さHbを23〜25mmに設定することにより、ブラシ−パッド段差Hbpが3〜5mmになる。
【0038】
また、パッド−ブラシ隙間Dbp(外側パッド35および内側パッド37とパッド周囲のブラシ線束51の中心との最小距離、図2〜図4)が、10〜30mmであり、より好ましくは20mmに設定される。
【0039】
外側パッド35および内側パッド37の寸法としては、好ましくは、ベース台31の半径方向に沿ったパッド長さが40〜80mmであり、上記半径方向に垂直なパッド幅が20〜40mmであり、上述したパッド高さHpが11〜49mmである。より好ましくは、パッド長さ×パッド幅×パッド高さが、60mm×30mm×20mmである。
【0040】
以上に床面用ブラシ11の好適な寸法設定について説明した。次に、ブラシおよびパッドの材質について説明する。ブラシ材質は、ナイロン、グリッドナイロンまたはポリプロピレンである。また、ブラシ線53は、ブラシ材に研磨剤を練り込み、モノフィラメント加工した線材である。好ましくはブラシ材質がナイロンであり、ブラシ線53はナイロン素材繊維に研磨剤を練り込み、モノフィラメント加工した線材である。
【0041】
また、パッド材質は、ポリエチレン、ウレタン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ナイロンまたはシリコーンである。好ましくは外側パッド35および内側パッド37が、ポリエチレン樹脂を基材とし、適度な硬度と弾力性を併せ持つポリエチレンフォームである。パッド仕様としては、引張強さが1.0〜2.0MPaであり、伸びが100〜300%であることが好ましい。例えば、商品名「オプセルLC300#2」(三和化工社製)、商品名「オプセルLC300#3」(三和化工社製)、商品名「サンペルカC600」(三和化工社製)などが、適当なパッド材として挙げられる。
【0042】
以上に本実施の形態に係る床面用ブラシ11の構成について説明した。次に、床面用ブラシ11の動作について説明する。床面用ブラシ11を使用してフロアーポリッシュ組成物皮膜25を剥離する際は、まず、強アルカリの剥離剤が床面23に塗布される。剥離剤は水で所定の倍率にて希釈されている。
【0043】
床面用ブラシ11は、回転式床磨き機1の本体3に装着され、回転される。これにより、床面用ブラシ11が床面23のフロアーポリッシュ組成物皮膜25に接触しながら回転する。このとき、本体3の自重によって床面用ブラシ11が床面23に押圧され、ブラシ部33の各ブラシ線束51が撓み、ブラシ先端とパッド先端は同一高さになり、ブラシおよびパッドの両方がフロアーポリッシュ組成物皮膜25に接する。
【0044】
床面用ブラシ11が床面23に接触しながら回転すると、フロアーポリッシュ組成物皮膜25がブラシ部33によってひっかかれ、破壊される。より詳細には、フロアーポリッシュ組成物皮膜25が剥離剤の作用で膨潤している。この膨潤したフロアーポリッシュ組成物皮膜皮膜25が、各々のブラシ線53の先端によって破壊される。さらに、破壊されたフロアーポリッシュ組成物皮膜25が、外側パッド35と内側パッド37によりかきとられ(スクイズされる)、かきとられたフロアーポリッシュ組成物皮膜25が床面用ブラシ11の外へとはきだされる。このかきとり動作(スクイズ動作)は、パッドが床面に密着しながら、ワイパーのように床面上の物質を除去する動作である。
【0045】
これらの過程で、ブラシ線は、先端の“点”でフロアーポリッシュ組成物皮膜25に接触して、効果的にフロアーポリッシュ組成物皮膜25をひっかき、破壊する。また、パッドは、“面”または“線”でフロアーポリッシュ組成物皮膜25に接触して、効果的にフロアーポリッシュ組成物皮膜25をかきとる。これらの2つの機能によって、床面用ブラシ11が積極的にフロアーポリッシュ組成物皮膜25の剥離に寄与する。
【0046】
上記のブラシのひっかき動作と、パッドのかきとり動作との両方を合わせて、スクラブ動作ということができる。スクラブとは、ひっかきまわされることである。本発明では、このスクラブ動作が床面用ブラシ11により実現されて、フロアーポリッシュ組成物皮膜25が好適に剥離する。
【0047】
また、本実施の形態では、外側パッド35と内側パッド37が周方向にずれて配置されており、このようなパッド配置はブラシ部33の目詰まりを生じにくくする効果を奏する。全面にブラシ部が設けられていたとした場合、剥離されたフロアーポリッシュ組成物皮膜により、ブラシ部の目詰まりが生じてしまう。
【0048】
また、本実施の形態のパッドの代わりに、ブラシ領域を外周から内周まで横切る1種類の細長いパッドのみが、間隔をあけて複数本、設けられたとする。この場合も、剥離されたフロアーポリッシュ組成物皮膜が長いパッドによって過度に集められてブラシ部に残り、ブラシ部の目詰まりが生じやすい。ブラシ部の目詰まりは、ブラシ部と床の接触を妨げ、剥離むらの原因になる。
【0049】
一方、本実施の形態では、外側パッド35と内側パッド37が周方向にずれて配置されている。このようなずれたパッド配置により、剥離されたフロアーポリッシュ組成物皮膜25が、過度に集められることなく、適度に散らされる。その結果、ブラシ部33の目詰まりが生じにくくなる。そして、目詰まりが生じにくいので、ブラシ部33と床面23の接触が保たれ、剥離むらも防止できる。
【0050】
また、外側パッド35および内側パッド37のパッド配置は、回転時のブラシ台31の振動を低減する効果も奏する。この点についても、上述の細長いパッドを備える構成との比較の下に説明する。この場合、ブラシ領域が各パッドにより外周から内周まで横切られ、ブラシ部が複数の扇形に寸断され、また、パッド配置が適当な分散配置でなくなる。このような配置では、回転時のブラシ台の振動が大きくなり、そのために作業性が低下したり、剥離むらが生じやすくなる傾向がある。
【0051】
一方、本実施の形態では、外側パッド35と内側パッド37がずれて交互に配置されており、ブラシ部33がパッドによって完全に横切られるような場所がなく、そして、複数のパッドが適当に分散して配置される。このようなパッド配置により、回転時のブラシ台31の振動が低減する。これにより、作業性が向上し、剥離むらも低減して、剥離能力を向上できる。
【0052】
このように、本実施の形態では、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に寄与でき、床面用ブラシ11が目詰まりを起こしにくく、剥離作業の能力を向上できる。特に、本実施の形態では、ブラシおよびパッドの高さ、位置、間合いが好適に設定されており、こうした設定によって上述の目詰まり防止、剥離能力向上の効果がより顕著に得られる。
【0053】
以上に本実施の形態のフロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離動作について説明した。なお、本実施の形態では、回転式床面磨き機1が、作業者が手動で操作する小型タイプの機械であった。しかし、別のタイプの回転式床磨き機が適用されてよいことはもちろんであり、より大型の磨き機が適用されてよい。例えば、作業者が乗車するタイプの磨き機が適用されてよい。
【0054】
また、本発明の床面用ブラシ11は、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離以外の用途にも用いられててよい。例えば化学床面の洗浄に床面用ブラシ11が用いられてもよい。
【0055】
以上、本実施の形態に係る回転式床面用ブラシについて説明した。上述したように、本発明によれば、剥離剤の作用で膨潤したフロアーポリッシュ組成物皮膜がブラシ部によって破壊され、さらに、破壊されたフロアーポリッシュ組成物皮膜が外側パッドと内側パッドでかきとられ(スクイズされ)、これらの機能によって床面用ブラシが積極的にフロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に寄与できる。また、外側パッドと内側パッドが周方向にずれて配置されており、これらのずれた2種類のパッドが、剥離されたフロアーポリッシュ組成物皮膜を適度に散らすので、ブラシ部の目詰まりが生じにくくなり、剥離むらが低減する。また、外側パッドと内側パッドが互いにずれたパッド配置は、回転時のブラシ台の振動を低減し、これによって作業性が向上し、剥離むらも低減する。このようにして、本発明によれば、ブラシとパッドといった2種の要素が相乗的な効果を奏する好適な構成を採用したことにより、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に適しており、フロアーポリッシュ組成物皮膜の剥離に積極的に寄与でき、目詰まりを起こしにくく、剥離むらを低減でき、剥離能力を向上できる剥離作業用具を提供できる。
【0056】
本発明では、複数の外側パッドの各々は、ブラシ領域の外周から、ブラシ領域の外周および内周の間の所定の外側パッド終端位置まで半径方向に延びる形状を有してよく、複数の内側パッドの各々は、ブラシ領域の内周から、ブラシ領域の外周および内周の間の所定の内側パッド終端位置まで半径方向に延びる形状を有してよく、複数の外側パッドと複数の内側パッドが周方向に交互に配置されてよい。
【0057】
また、ブラシ部は、間隔を開けて配置された複数のブラシ線束を含み、複数のブラシ線束の各々は、複数本のブラシ線の集まりであってよい。
【0058】
また、複数のブラシ線束間のピッチが10〜30mmでよく、各ブラシ線束の前記ブラシ台からの突出高さが12〜50mmでよく、各ブラシ線束の植毛数が13〜34本でよい。また、外側パッドおよび内側パッドの高さが、11〜49mmであってよく、外側パッドおよび内側パッドとブラシ部との高さの差であるブラシ−パッド段差が、1〜10mmであってよく、外側パッドおよび内側パッドとパッド周囲のブラシ線束の中心との距離が10〜30mmであってよい。また、外側パッドおよび内側パッドが、ベース台の半径方向に沿ったパッド長さが40〜80mm、半径方向に垂直なパッド幅が20〜40mm、ベース台からの突出高さが11〜49mmのサイズを有してよい。このような寸法設定により、ブラシおよびパッドの高さ、位置、間合いが好適に設定され、上述の目詰まり防止、剥離能力向上の効果がより顕著に得られる。
【0059】
また、ブラシ部の材質が、ナイロン、グリッドナイロンまたはポリプロピレンであってよい。ブラシ部は、ブラシ材料に研磨剤を練り込み、モノフィラメント加工した線材で構成されてよい。また、外側パッドおよび内側パッドの材質が、ポリエチレン、ウレタン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ナイロンまたはシリコーンであってよい。このような好適な材料設定により、上述の目詰まり防止、剥離能力向上の効果がより顕著に得られる。
【0060】
以上に現時点で考えられる本発明の好適な実施の形態を説明したが、本実施の形態に対して多様な変形が可能なことが理解され、そして、本発明の真実の精神と範囲内にあるそのようなすべての変形を添付の請求の範囲が含むことが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明にかかる回転式床面用ブラシは、古くなったフロアーポリッシュ組成物皮膜を剥離する作業に使用でき、床面清掃作業に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る回転式床面用ブラシを装着した回転式床磨き機を示す図である。
【図2】回転式床面用ブラシを下方から見た図である。
【図3】外側パッドを通る線で回転式床面用ブラシを切断した断面図である。
【図4】内側パッドを通る線で回転式床面用ブラシを切断した断面図である。
【図5】パッド形状の変形例を示す図である。
【図6】パッド形状の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 回転式床磨き機
3 本体
11 回転式床面用ブラシ
23 床面
25 フロアーポリッシュ組成物皮膜
31 ブラシ台
33 ブラシ部
35 外側パッド
37 内側パッド
43 ブラシ領域
45 外周
47 内周
51 ブラシ線束
53 ブラシ線
61 外側パッド終端位置
63 内側パッド終端位置
Pb ブラシピッチ
Hb ブラシ高さ
Hp パッド高さ
Hbp ブラシ−パッド段差
Dbp パッド−ブラシ隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式床磨き機に装着され、回転しつつ床面に接触する回転式床面用ブラシであって、
前記回転式床磨き機に装着される円板形状のブラシ台と、
前記ブラシ台の環状のブラシ領域に設けられたブラシ部と、
前記ブラシ領域の外周に沿って間隔を開けて配置された複数の外側パッドと、
前記ブラシ領域の内周に沿って間隔を開けて、前記複数の外側パッドとは周方向にずれた位置に配置された複数の内側パッドと、
を備えたことを特徴とする回転式床面用ブラシ。
【請求項2】
前記複数の外側パッドの各々は、前記ブラシ領域の外周から、前記ブラシ領域の外周および内周の間の所定の外側パッド終端位置まで半径方向に延びる形状を有し、
前記複数の内側パッドの各々は、前記ブラシ領域の内周から、前記ブラシ領域の外周および内周の間の所定の内側パッド終端位置まで半径方向に延びる形状を有し、
前記複数の外側パッドと前記複数の内側パッドが周方向に交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転式床面用ブラシ。
【請求項3】
前記ブラシ部には、間隔を開けて配置された複数のブラシ線束を含み、前記複数のブラシ線束の各々は、複数本のブラシ線の集まりであることを特徴とする請求項1または2に記載の回転式床面用ブラシ。
【請求項4】
前記複数のブラシ線束間のピッチが10〜30mmであり、
各ブラシ線束の前記ブラシ台からの突出高さが12〜50mmであり、
各ブラシ線束の植毛数が13〜34本であることを特徴とする請求項3に記載の回転式床面用ブラシ。
【請求項5】
前記外側パッドおよび前記内側パッドの高さが、11〜49mmであり、
前記外側パッドおよび前記内側パッドと前記ブラシ部との高さの差であるブラシ−パッド段差が、1〜10mmであり、
前記外側パッドおよび前記内側パッドとパッド周囲の前記ブラシ線束の中心との距離が10〜30mmであることを特徴とする請求項4に記載の回転式床面用ブラシ。
【請求項6】
前記外側パッドおよび前記内側パッドが、前記ベース台の半径方向に沿ったパッド長さが40〜80mm、前記半径方向に垂直なパッド幅が20〜40mm、前記ベース台からの突出高さが11〜49mmのサイズを有することを特徴とする請求項5に記載の回転式床面用ブラシ。
【請求項7】
前記ブラシ部の材質が、ナイロン、グリッドナイロンまたはポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の回転式床面用ブラシ。
【請求項8】
前記ブラシ部は、ブラシ材料に研磨剤を練り込み、モノフィラメント加工した線材で構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の回転式床面用ブラシ。
【請求項9】
前記外側パッドおよび前記内側パッドの材質が、ポリエチレン、ウレタン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ナイロンまたはシリコーンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の回転式床面用ブラシ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の回転式床面用ブラシが装着された回転式床磨き機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−194122(P2008−194122A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30229(P2007−30229)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(598028648)ジョンソンディバーシー株式会社 (30)
【Fターム(参考)】