説明

回転数計測装置

【課題】対象物の回転数を検知し、検出した回転数に基づき、正常回転数の上限及び下限を設定し、対象物の回転数がこれらの回転数からずれた場合は、これを検知して警報出力を発生する回転数計測装置を提供する。
【解決手段】測定対象物の回転数を検知する近接スイッチ14と、近接スイッチ14からのパルス信号を受ける制御部11と、制御部11に接続される表示器34とを有し、制御部11に設けられた回転数演算手段によってパルス信号から測定対象物の回転数を求めて、表示器34に対象物の回転数を表示する回転数計測装置10において、制御部11に、ボタン操作によって、測定した回転数を基準回転数とする基準回転数設定手段と、基準回転数から上限回転数と下限回転数を設定する上下限設定手段と、測定対象物の回転が上下限回転数の範囲を超えた場合、警報出力を発する警報信号発生手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転する対象物の回転数を近接センサーによって計測し、異常の場合、警報を発する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転する回転部材に一体的に形成された検知部を、近接スイッチ等で検知し、回転部材の回転数を計測する回転検出装置が提案されている。この回転検出装置には、第1、第2の表示器が設けられ、回転軸の回転数と、回転異常を表示するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−246732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、加工工具(例えば、キリ)に対して設けられたものであり、標準回転数、異常回転数は予め分かっているものであり、万能タイプの回転検出装置ではなかった。即ち、測定対象物が任意であると、正常回転数及び異常回転数は対象物によって変わるものであり、特許文献1記載の回転検出装置においては、各対象物に対してその設定を容易に変えることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、測定対象物(以下、「対象物」ともいう)の回転数を検知し、検出した回転数に基づき、正常回転数の上限及び下限を設定し、測定対象物の回転数がこれらの回転数からずれた場合は、これを検知して警報出力を発生する回転数計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る回転数計測装置は、測定対象物の回転数を検知する近接スイッチと、該近接スイッチからのパルス信号を受ける制御部と、該制御部に接続される表示器とを有し、前記制御部に設けられた回転数演算手段によって前記パルス信号から前記測定対象物の回転数を求めて、前記表示器に前記測定対象物の回転数を表示する回転数計測装置において、
前記制御部に、ボタン操作によって測定した回転数を基準回転数として記憶する基準回転数設定手段と、該基準回転数から上限回転数と下限回転数を設定する上下限設定手段と、前記測定対象物の回転が前記上限回転数と前記下限回転数の範囲を超えた場合、警報出力を発する警報信号発生手段が設けられている。
【0007】
また、本発明に係る回転数計測装置において、前記制御部には、電源投入後、前記回転数演算手段を不動作とする起動タイマーが設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る回転数計測装置は、測定した実際の回転数から基準回転数を記憶し、この基準回転数から適正範囲の上限回転数と下限回転数を決めて、異常判定を行うようにしているので、高速回転する対象物及び低速回転する対象物であっても簡単に基準回転数を設定して、実際の対象物の回転の異常を検知できる。
そして、回転異常を発見した場合、警報出力を発するようにしているので、この警報出力によって、次の対策を取ることができる。
【0009】
本発明に係る回転数計測装置において、電源投入後、回転数演算手段を不動作とする起動タイマーを設けた場合は、この回転数計測装置が正常に動作するまでの時間、対象物が起動から正常回転に移るまでの過渡状態の測定を回避できるので、より正確に対象物の回転状態を監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る回転数計測装置の説明図である。
【図2】同回転数計測装置の内部構成図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれ同回転数計測装置の部分回路図である。
【図4】同回転数計測装置の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1(A)、(B)、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る回転数計測装置10は、内部にマイクロクコンピュータを含む制御部11を有し、外側がプラスチックケースからなる計測装置本体12と、計測装置本体12から露出した接続端子群13を介して接続される近接スイッチ(近接センサー)14と、接続端子群13に接続された信号灯15とを有している。
【0012】
計測装置本体12の下部には接続端子群13を構成する端子16〜24を有し、端子16、17は電源端子となって、直流24Vの直流電源(例えばアダプター)25(又は交流電源)に接続されている。端子18〜20は、警報出力の端子であって、端子18をコモン(COM)にして異常時に信号灯15に接点出力を出すようにしている。信号灯15は商用電源100Vを電源とし、測定した回転数Nが上限回転数Nuを上回った時に、端子18と端子19が閉となって例えば橙色のランプが点灯し、測定した回転数Nが予め設定された下限回転数Ndより小さくなった場合に、端子18と端子20が閉となって、赤色のランプが点灯するようになっている。
【0013】
端子21、22は近接スイッチ14を接続するためのもので、図3(A)に示すように、2線式の近接スイッチ14に適用される。図3(B)に示すように、3線式の近接スイッチ27を使用する場合は4.7kΩの抵抗28を出力と電源との間に接続して、端子21、22に接続する。なお、近接スイッチ14、27のパルス信号はフォトカプラー29を介して制御部11に入力される。
端子23、24には近接スイッチ14(27)の検出信号がオープンコレクター方式で出力されている。
【0014】
制御部11には操作ボタン31〜33と、表示器34が連結されていると共に、制御部11には、発光ダイオードからなる表示灯35〜39が接続されている。表示灯35は電源表示ランプで電源投入時に点灯する。表示灯36は近接スイッチ14(27)の入力がある場合に点灯する。表示灯37、38は異常(即ち、それぞれ回転数がその上限を超えたか、又は下限値を下回った)が発生した時に点灯する。これらは異常があった場合常時点灯し、その後リセットすることなく異常が解除された場合は点滅する。表示灯39は、端子23、24から出力パルスを送る場合にそれに合わせて点灯する。
【0015】
表示器34はデジタル表示器からなって、近接スイッチ14が計測したパルス信号をカウントして回転数(RPM)として表示するようになっている。この近接スイッチ14は、測定対象物の金属製凸部や、対象物に取付けた金属製の突起を検知して、オンオフ信号を発するようになっている。
【0016】
制御部11には、近接スイッチ14からのパルス信号から回転数を求める回転数演算手段と、操作ボタン33を5秒以上長押ししたことによって、そのときの回転数を基準回転数とする基準回転数設定手段と、この基準回転数から上限回転数と下限回転数を設定する上下限設定手段と、対象物の回転が上限回転数と下限回転数の範囲を超えた場合、警報出力を発する警報信号発生手段が設けられている。
【0017】
続いて、図4を参照しながら、制御部11内のマイコンに記載されているプログラムについて説明する。
この回転数計測装置10の電源をオンにすると、起動タイマーが作動し、予め設定された起動時間(例えば、10秒)をカウントする(ステップS11)。起動時間のカウント終了後、近接スイッチ14から送られるパルスの数をカウントし(ステップS12)、対象物の回転数(RPM)を算出する(ステップS13)。なお、起動タイマーのカウント終了までは、回転数演算手段を不動作とする。
【0018】
操作ボタン33を5秒以上長押しする(ステップS14)と、その時の回転数を基準回転数Nsとして記憶する。ここで、測定している対象物の回転数N(基準回転数Ns)に対して、予め設定された数値の上限回転数(例えば、Ns×1.05=Nu)を設定すると共に、予め設定された数値の下限回転数(例えば、Ns×0.9=Nd)を決定する(ステップS15)。なお、この上限及び下限を設定する数値(1.05、0.9)は必要に応じて変えることは可能である。
【0019】
ステップS14で操作ボタン33を長押ししない又は押さない場合は、基準回転数Nsが既に設定されているか否かを判断し(ステップS14a)、基準回転数Nsが設定されている場合は、ステップS16に移る。基準回転数Nsが設定されていない場合は、予め設定された初期値を上限下限の基準回転数とし(ステップ14b)、ステップS12に戻り、パルス信号の数をカウントし、回転数を算出する。
次に、対象物の回転数Nを測定し、回転数Nが上限回転数Nuより上になった場合(ステップS16)に、警報1(警報出力の一例)を発信する。具体的には、端子18と端子19に閉接点出力を発する(ステップS17)。この閉接点出力は、制御部11にリレーを接続することによって容易に達成でき、操作ボタン31、32のいずれか一方又は双方の操作によるリセット信号があれば停止する(ステップS18、S19)
【0020】
そして、回転数Nが下限回転数Ndを下回った場合(ステップS20)、警報2(警報出力の一例)を発信する(ステップS21)。この場合、端子18と端子20を閉接点にする。この警報2は、操作ボタン31、32のいずれか一方又は双方の操作によるリセット信号があれば停止する(ステップS22、S23)。
以上のリセットが完了した後は、ステップ12に戻って通常の回転数の表示を表示器34に表示する。なお、前述のように表示灯37、38は上記異常があった場合に点灯する。また、上限回転数Nuを上回った場合、下限回転数Ndを下回った場合のいずれであっても警報1、2の出力を出すようにすることもできる。この場合、警報1、警報2の回路は独立となっている。
【0021】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない場合での、回路の構成、上限値、下限値の値、表示方法等の変更を行うこともできる。
【符号の説明】
【0022】
10:回転数計測装置、11:制御部、12:計測装置本体、13:接続端子群、14:近接スイッチ、15:信号灯、16〜24:端子、25:直流電源、27:近接スイッチ、28:抵抗、29:フォトカプラー、31〜33:操作ボタン、34:表示器、35〜39:表示灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の回転数を検知する近接スイッチと、該近接スイッチからのパルス信号を受ける制御部と、該制御部に接続される表示器とを有し、前記制御部に設けられた回転数演算手段によって前記パルス信号から前記測定対象物の回転数を求めて、前記表示器に前記測定対象物の回転数を表示する回転数計測装置において、
前記制御部に、ボタン操作によって測定した回転数を基準回転数とする基準回転数設定手段と、該基準回転数から上限回転数と下限回転数を設定する上下限設定手段と、前記測定対象物の回転が前記上限回転数と前記下限回転数の範囲を超えた場合、警報出力を発する警報信号発生手段が設けられていることを特徴とする回転数計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転数計測装置において、前記制御部には、電源投入後、前記回転数演算手段を不動作とする起動タイマーが設けられていることを特徴とする回転数計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233855(P2012−233855A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104439(P2011−104439)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000146238)株式会社松島機械研究所 (1)