説明

回転機械系の異常診断方法

【課題】異常判定の基準と識別の設定が可能であり、従来よりも高感度な回転機械系の異常診断方法を提供する。
【解決手段】診断する電動機11の定格電流の基準正弦波信号波形から参照振幅確率密度関数fr(x)を求める第1工程と、電動機11の稼働時の電流を計測してA/D変換し、その電流波形から点検時振幅確率密度関数ft(x)を求める第2工程と、参照振幅確率密度関数fr(x)と点検時振幅確率密度関数ft(x)についてID及び/又はKIを算出する第3工程と、算出した値が、予め設定した過検出率αと見逃し率βから算出されるRID(α、β)、RKI(α、β)と比較して、ID≧RID(α、β)とKI≧RKI(α、β)のいずれか一方又は双方を満足する場合は、電動機11とこれによって駆動される機械系12からなる回転機械系に異常があると判定する第4工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機の正常時電流と稼働時(点検時)電流の状態を比較して回転機械系の異常を診断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機、又は電動機によって駆動されるポンプや減速機(歯車装置)等の機械系からなる回転機械系の状態診断には、診断精度が高いという理由から、測定パラメータとして振動を利用した方法及び装置が用いられている。しかし、回転機械系の設置位置によっては、人が近づいて振動センサー等を設置できない場合がある。
そこで、このような場合には、電動機の電流の実効値やピーク値などの有次元特徴パラメータによる状態監視方法が、一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−83686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回転機械系に異常が発生した場合、電流の実効値やピーク値には、ほとんど大きな変化がなく、逆に負荷などの変動が発生した場合に、電流の実効値やピーク値が大きく変わるため、これらのパラメータによる状態判定は不可能であった。特に、特徴パラメータは、電流波形のもつ情報の一部を定量化したものであり、得られた情報を有効に活用しているとはいえない。
つまり、特徴パラメータによる回転機械系の診断においては、機械の負荷と運転状況が変わると、異常の判定と識別基準も変化させる必要が生じるため、統一的な判定基準と識別法の設定が困難であるといった問題があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、異常判定の基準と識別の設定が可能であり、従来よりも高感度な回転機械系の異常診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法は、診断しようとする電動機の定格電流の基準正弦波信号波形から参照振幅確率密度関数fr(x)を求めて保存する第1工程と、
前記電動機の稼働時の電流を計測してA/D変換し、その電流波形から点検時振幅確率密度関数ft(x)を求めて保存する第2工程と、
前記参照振幅確率密度関数fr(x)と前記点検時振幅確率密度関数ft(x)について、以下の式(1)及び式(2)によってそれぞれ表されるIDとKIのいずれか一方又は双方の値を算出する第3工程と、
a)前記値が前記IDの値であれば、予め設定した過検出率αと見逃し率βから式(3)によって算出されるRID(α、β)と比較してID≧RID(α、β)の場合、b)前記値が前記KIの値であれば、予め設定した過検出率αと見逃し率βから式(4)によって算出されるRKI(α、β)と比較してKI≧RKI(α、β)の場合、c)前記値が前記IDと前記KIの双方の値であれば、それぞれ前記RID(α、β)及び前記RKI(α、β)と比較して、前記ID≧RID(α、β)と前記KI≧RKI(α、β)のいずれか一方又は双方を満足する場合は、1)前記電動機と2)前記電動機によって駆動される機械系からなる回転機械系に異常があると判定する第4工程とを有する。
【0007】
【数1】

【0008】
【数2】

【0009】
【数3】

【0010】
【数4】

【0011】
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記第3工程を行った後に、該第3工程で算出された前記値の時系列変化を記録し、前記回転機械系の状態の劣化傾向を管理する工程を設けることが好ましい。
【0012】
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記第4工程で前記回転機械系に異常があると判断されることを条件として、1)電流波形の高周波成分解析による前記回転機械系の異常検出及び識別、2)電流波形の側帯波解析による前記回転機械系の異常検出及び識別、3)過度電流値のパターン分析による異常検出及びプロセス診断、4)電流波形の歪解析による前記電動機の電源品質のモニタリング解析のいずれか1又は2以上の処理を行うことが好ましい。
【0013】
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記電流波形の高周波成分解析による前記回転機械系の異常検出及び識別は、前記電動機の稼働時の電流信号を、ハイパスフィルター処理して包絡線処理し高速フーリエ変換することで高周波電流スペクトルを求め、前記回転機械系を構成する歯車の軸の回転周波数の偶数倍の周波数付近に現れる前記高周波電流スペクトルのピーク群を検出することにより、前記歯車の軸受又は該歯車の噛み合いの異常を検知するのがよい。
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記電流波形の側帯波解析による前記回転機械系の異常検出及び識別は、前記電動機の稼働時の電流信号を、高速フーリエ変換して対数変換することでスペクトルを求め、中心周波数の側帯波を検出することにより行うのがよい。
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記過度電流値のパターン分析による異常検出及びプロセス診断は、起動電流、遮断電流、又は操業電流の前記回転機械系の異常のない状態での電流実効値波形と前記電動機の稼働時の電流実効値波形とを比較することにより行うのがよい。
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記電流波形の歪解析による前記電動機の電源品質のモニタリング解析は、前記電動機の稼働時の電流信号の高調波成分と電源周波数成分の単調波比率及び全調波比率と相間電流の不平衡率を算出することにより行うのがよい。
【0014】
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記電流の計測は、前記電動機に供給される三相電源の一相について行うことができる。
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法において、前記電流の計測は、前記電動機に供給される三相電源の一相ごとについて順次切り換えて行うことが好ましい。
【0015】
前記目的に沿う第2の発明に係る回転機械系の異常診断方法は、電動機の負荷側が歯車で構成される回転機械系の異常診断方法において、
前記電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、ハイパスフィルターによるフィルター処理を行った後、包絡線検波による包絡線処理を行った電流の時系列信号に対し、更に高速フーリエ変換を行い、前記歯車の軸の回転周波数の偶数倍の周波数近傍に現れるスペクトルのピーク群を検出することで、前記回転機械系の前記歯車の軸受又は該歯車の噛み合いに異常が発生したと判断する。
【0016】
前記目的に沿う第3の発明に係る回転機械系の異常診断方法は、電動機で駆動される回転機械系の異常診断方法において、
前記電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、高速フーリエ変換した後、スペクトルを対数変換し、前記電動機の電源周波数のスペクトルピークのレベルと、該電源周波数を中心周波数として対称に、前記電動機の回転子の軸の回転周波数分だけ離れた周波数の位置に現れるスペクトルピークのレベルとの差が、予め設定した値以下となったことを条件として、前記回転機械系において伝動継手で連結されている前記電動機の前記回転子の軸と、負荷側の回転軸との間に、アライメントの異常が発生したと判断する。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明に係る回転機械系の異常診断方法は、第1工程で求めた診断しようとする電動機の定格電流の基準正弦波信号波形の参照振幅確率密度関数fr(x)と、第2工程で求めた電動機の稼働時の電流波形の点検時振幅確率密度関数ft(x)について、第3工程で二つの振幅確率密度関数の相違、即ち情報距離であるID及びKIのいずれか一方又は双方の値を求める。求められた情報距離IDとKIは、二つの振幅確率密度関数の相違を精度よく現すことができ、第4工程により、従来よりも優れた異常検出精度が得られる。
従って、異常判定の基準と識別の設定が可能となり、従来よりも高感度な回転機械系の異常診断方法を提供できる。
【0018】
また、第3工程を行った後に、第3工程で算出された値の時系列変化を記録し、回転機械系の状態の劣化傾向を管理する工程を設ける場合、回転機械系の状態の経時変化を監視することができる。これにより、例えば、回転機械系の状態を、ある程度把握できるため、整備時期や交換時期等の目安ができる。
【0019】
そして、第4工程で回転機械系に異常があると判断されることを条件として、前記した1)〜4)のいずれか1又は2以上の処理を行う場合、第1工程〜第4工程による簡易診断を行った後に、精密診断を実施できる。このように、回転機械系の異常診断を、二段階に分けて実施することで、常時、精密診断を行う必要がなく、従来よりも診断の速度を向上できる。
【0020】
更に、電流の計測を、電動機に供給される三相電源の一相について行う場合、異常診断を行う電動機の数を多くでき、例えば、診断装置の費用対効果を高めることができる。
また、電流の計測を、電動機に供給される三相電源の一相ごとについて順次切り換えて行う場合、電流の計測を全ての電流について実施でき、異常診断の精度の更なる向上が図れる。
【0021】
第2の発明に係る回転機械系の異常診断方法は、電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、フィルター処理と包絡線処理を行った電流の時系列信号に対し、更に高速フーリエ変換を行うことで、歯車の軸の回転周波数の偶数倍の周波数付近にスペクトルのピーク群が現れる。このスペクトルのピーク群は、回転機械系の歯車の軸受又は歯車の噛み合いの異常に起因して現れるため、このピーク群が現れたことを条件として、異常が発生したと判断できる。
【0022】
第3の発明に係る回転機械系の異常診断方法は、電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、高速フーリエ変換した後、スペクトルを対数変換することで、電動機の電源周波数を中心周波数として対称に、電動機の回転子の軸の回転周波数分だけ離れた周波数の位置にスペクトルピークが現れる。このスペクトルピークは、回転機械系において伝動継手で連結されている電動機の回転子の軸と負荷側の回転軸との間のアライメントの異常に起因して、そのレベルが変わるため、電動機の電源周波数のスペクトルピークのレベルと、上記したスペクトルピークのレベルとの差が、予め設定した値以下となったことを条件として、異常が発生したと判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る回転機械系の異常診断方法のフローチャートである。
【図2】同回転機械系の異常診断方法を適用する回転機械系の異常診断装置の説明図である。
【図3】(A)は基準正弦波信号波形のグラフ、(B)〜(E)はそれぞれ電動機の稼働時の電流波形のグラフ、(F)は(A)の参照振幅確率密度関数のグラフ、(G)〜(J)はそれぞれ(B)〜(E)の点検時振幅確率密度関数のグラフである。
【図4】(A)〜(C)は三相誘導電動機の電流各相の正常時の電流波形と点検時の電流波形を比較したグラフである。
【図5】(A)〜(C)は三相誘導電動機の電流各相それぞれの電流波形の高周波成分解析を行って歯車軸受が正常と判断される場合のグラフである。
【図6】(A)〜(C)は三相誘導電動機の電流各相それぞれの電流波形の高周波成分解析を行って歯車軸受又は噛み合いが異常と判断される場合のグラフである。
【図7】(A)〜(C)は三相誘導電動機の電流各相それぞれの電流波形の側帯波解析を行った結果のグラフである。
【図8】(A)は三相誘導電動機の電流の1つの相の正常時の電流波形を示すグラフ、(B)は異常時の電流波形を示すグラフである。
【図9】(A)〜(C)は三相誘導電動機の電流各相それぞれの過度電流値である起動電流のパターン分析を行った結果のグラフ、(D)〜(F)は電流各相それぞれの過度電流値である遮断電流のパターン分析を行った結果のグラフである。
【図10】(A)〜(C)はそれぞれ電流波形の歪解析を行った結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、図2を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る回転機械系の異常診断方法を適用する回転機械系の異常診断装置(以下、単に異常診断装置ともいう)10について説明する。
異常診断装置10は、1)異常診断の対象となる交流の電動機11と(及び/又は)、2)この電動機11によって駆動される機械系12(負荷側)からなる回転機械系の診断を行う装置である。この機械系12には、例えば、ポンプや減速機(歯車装置)等があり、この機械系12に電動機11が接続され、電動機11が電力線13を介して電源(制御盤)14に接続されている。
【0025】
異常診断装置10は、例えば、電動機11と電源14を接続し、電気室や制御盤(電気盤)などに位置する電力線13に近接して配置され、電動機11の稼働時の負荷電流を検出する電流検出器15と、電流検出器15で測定したアナログの電流波形をデジタルの電流データに変換するA/D変換器16と、A/D変換器16で得られた電流データを処理する処理ユニット17とを有している。なお、A/D変換器16から処理ユニット17への電流データの送信は、LANやUSBケーブルにより行う。
ここで、電流検出器15には、例えば、検流器(CT:Current Transducer)等を使用できる。また、処理ユニット17は、RAM、CPU、ROM、I/O、及びこれらの要素を接続するバスを備えた従来公知の演算器(即ち、コンピュータ)で構成され、電動機11と(及び/又は)機械系12からなる回転機械系の診断結果を表示するモニタも有している。なお、処理ユニット17での処理は、CPUが所定のプログラムを実行することで実現される。
【0026】
続いて、本発明の一実施の形態に係る回転機械系の異常診断方法(以下、単に異常診断方法ともいう)について説明する。
異常診断を行うに際しては、まず、図2に示すように、電動機11と電源14を接続する電力線13に電流検出器15を設置し、点検時(稼働時)の電動機11の電流を計測する。なお、電動機11は三相誘導電動機であるため、ここでは、3本の電力線13にそれぞれ電流検出器15を設置しているが、例えば、1本又は2本の電力線に電流検出器を設置して、電流の計測を、電動機11に供給される三相電源の一相について行ってもよい。また、電流の計測は、電動機11に供給される三相電源の一相ごとについて順次切り換えて行ってもよい。
【0027】
上記した電流検出器の設置個数や電流の計測は、異常診断を行う対象の重要度に応じて、適宜決定するのが好ましい。例えば、異常が発生しても大きな問題に繋がりにくい場合は、一部(例えば、1又は2本)の電力線に電流検出器を設置するのがよく、また、異常の検出精度を高める必要がある場合は、全て(ここでは、3本)の電力線に電流検出器を設置して、電流の計測を同時に又は順次切り換えて行うのがよい。
そして、図1に示すステップ1(ST1)〜ステップ6(ST6)の簡易診断(異常検出)を行い、この簡易診断で異常が検出されたことを条件として、ステップ7(ST7)〜ステップ14(ST14)の精密診断(異常識別)を行う。以下、詳しく説明する。
【0028】
まず、簡易診断を行うためのステップ1では、電動機11の電源周波数である定格電流(ここでは、60Hz)の基準正弦波信号波形をその実効値で割った規格化電流信号から、参照振幅確率密度関数fr(x)を求めて、処理ユニット17の記憶手段(RAM又はROM)に保存する。基準正弦波信号波形は、図3(A)に示すように、歪みのない波形である。なお、この波形は、計算で求めて作成してもよく、また、正常時の波形を使用してもよい。
このように、電流信号を用いることで、振動信号を用いた診断と比較して、診断精度の向上が図れる。振動信号を用いた診断の場合、機器が正常と思われる状態での振動信号を計測して基準信号とする必要があるが、実際には、その中に異常の振動が含まれている可能性があり、異常の検出精度に難がある。一方、電流信号を用いた診断の場合、基準正弦波信号を基準正弦波信号発生器又は計算によって取得できるので、基準信号に異常の信号が含まれない。
そして、この基準正弦波信号波形をA/D変換し、所定のサンプリング時間で得られる複数の点データにして、図3(F)に示す参照振幅確率密度関数fr(x)を求める(以上、第1工程)。
【0029】
次に、ステップ2(ST2)では、電動機11の稼働時の三相電流を計測してA/D変換器16でA/D変換し、LAN又はUSBケーブル経由で、処理ユニット17(監視コンピュータ)に送信して、記憶手段に保存する。
電動機11の稼働時の電流波形は、図3(B)〜(E)に示すように、回転機械系の状態によって、様々な形状となっている。なお、電動機の電流の計測時間は、例えば、1〜10秒間隔(好ましくは、下限を3秒、上限を7秒)で行われる。
そして、ステップ3(ST3)では、電動機11の稼働時の電流波形の複数の点データから、図3(G)〜(J)に示す点検時振幅確率密度関数ft(x)を求め、処理ユニット17の記憶手段に保存する。なお、点検時振幅確率密度関数ft(x)は、点検時のモータ電流信号を、算出した実効値で割った規格化電流信号である(以上、第2工程)。
【0030】
ステップ4(ST4)では、ステップ1で得られた参照振幅確率密度関数fr(x)と、ステップ2、3で得られた点検時振幅確率密度関数ft(x)について、ID(Information Divergence)とKI(Kullback−Leibler Information:カルバック・ライブラー情報量)を算出する。
一般に、設備状態が変化すると、その電流波形の振幅確率密度関数も変化する。そこで、二つの振幅確率密度関数の相違、即ち、「情報距離」を求めるためにIDとKIを用いる。特に、異常診断においては、IDとKIが、二つの振幅確率密度関数の相違を精度よく現すことができるため、より優れた異常検出精度をもつことが期待される。
【0031】
このステップ4では、IDとKIの双方の値を算出しているが、必要に応じて、ID又はKIのいずれか一方のみの値を算出してもよい。
ここで、参照振幅確率密度関数fr(x)と点検時振幅確率密度関数ft(x)が、どちらも正規分布関数となる場合は、各々の分散をσ及びσとすると、σ>σであればIDの感度がよく検出精度もよい。一方、σ<σであれば、KIの感度がよく検出精度もよい。
また、参照振幅確率密度関数fr(x)と点検時振幅確率密度関数ft(x)のどちらかが正規分布関数とならない場合、又は正規分布関数であるか否か不明である場合は、IDとKIの双方の値を算出することで、検出精度が高められる。
ここで、規格化後の振幅xの電流信号に対して、fr(x)を参照分布、ft(x)をテスト分布とすると、IDの定義は、式(1)で表され、また、KIの定義は、式(2)で表される(以上、第3工程)。
【0032】
【数1】

【0033】
【数2】

【0034】
ステップ5(ST5)では、上記したIDとKIの経時変化により、回転機械系の状態劣化傾向を管理する。
具体的には、上記したIDとKIの定義により、二つの振幅確率密度分布が全く同一の場合、即ち、fr(x)=ft(x)の場合は、ID=0、KI=0となる。また、fr(x)とft(x)の偏移が大きくなる場合は、IDとKIも大きくなる。
【0035】
そこで、ステップ6(ST6)で、情報検定理論により二つの分布、即ちfr(x)とft(x)の情報距離ID又はKIが回転機械系の異常が推定される量(値)であるかを判断する。n回の独立観測より得た標本空間をXとし、Xを互いに交差しない集合EとEに分割、即ち、E∩E=0、X=E∪Eとする。あるサンプル点をxとすると、
帰無仮説 H:x∈E
対立仮説 H:x∈E
に対して、第一種のエラーα(過検出率)をProb(x∈E|H)、第二種のエラーβ(見逃し率)をProb(x∈E|H)とする。
【0036】
IDに対して、式(5)となれば、Hを選択する。ここで、Oは、n回独立観測の一つの標本を表し、このRID(α,β)をIDの判定基準という。なお、RID(α,β)は、式(3)で現される。
【0037】
【数5】

【0038】
【数3】

【0039】
また、KIに対して、式(6)となれば、Hを選択する。このRKI(α,β)をKIの判定基準という。なお、RKI(α,β)は、式(4)で現される。
【0040】
【数6】

【0041】
【数4】

【0042】
上記したRID(α,β)とRKI(α,β)のαとβに対する変化は、以下のようになる。
α≧1−βのとき、RID(α,β)とRKI(α,β)は単調増加関数となる。
また、βを一定としてαが大きくなると、RID(α,β)とRKI(α,β)が小さくなり、αを一定としてβが大きくなると、RID(α,β)とRKI(α,β)が小さくなるため、判定基準が厳しくなる。
そこで、上記した参照振幅確率密度関数fr(x)と点検時振幅確率密度関数ft(x)から求めたID又はKIを用い、それぞれについて、前記した式(5)及び式(3)と、式(6)及び式(4)により、異常の有無を判断する。
【0043】
このように、稼働時に求めた(算出された)IDとKIの値の時系列変化を記録することにより、回転機械系の状態の劣化傾向を管理できると同時に、予め設定した判定基準RID(α,β)、RKI(α,β)と比較することにより、回転機械系の簡易診断を実施する。即ち、ステップ6で、IDとKIの双方が条件を満足(ID<RID(α,β)かつKI<RKI(α,β))した場合は、回転機械系に異常の兆候が現れなかったと判断し、またID及びKIのいずれか一方又は双方が前記条件を満足しなかった場合(ID≧RID(α,β)とKI≧RKI(α,β)のいずれか一方又は双方を満足する場合)は、回転機械系の異常の兆候が現れたと判断する。なお、αとβは、それぞれ異常診断の過検出率と見落し率であり、設備の異常検出の要求に従って予め設定できる。例えば、αは0.05以上0.3以下(好ましくは、下限を0.1、上限を0.2)、βは0.05以上0.3以下(好ましくは、下限を0.1、上限を0.2)である。
このステップ6においては、前記したステップ4でIDのみの値を算出した場合、ID≧RID(α,β)の条件を満足するか否か、またステップ4でKIのみの値を算出した場合、KI≧RKI(α,β)の条件を満足するか否かの判断を行う(以上、第4工程)。
【0044】
そして、ステップ6で、回転機械系に異常の兆候が現れなかったと判断した場合には、上記したステップ2からステップ6までを、順次繰り返し行う。また、回転機械系に異常の兆候が現れたと判断した場合には、ステップ7(ST7)で異常のメッセージをモニタに表示し、以下の精密解析を行う。
具体的には、1)電流波形の高周波成分解析による回転機械系の異常検出及び識別、2)電流波形の側帯波解析による回転機械系の異常検出及び識別、3)過度電流値のパターン分析による異常検出及びプロセス診断、4)電流波形の歪解析による電動機の電源品質のモニタリング解析のいずれか1又は2以上(好ましくは、全て)の処理を行う。以下、各処理について説明する。
【0045】
まず、ステップ8(ST8)で行う、1)電流波形の高周波成分解析による回転機械系の異常検出及び識別とは、例えば、歯車装置や、軸系のミスアライメント(軸の位置調整ミス)やアンバランス(軸のバランスのずれ)などの異常を識別する方法である。
ここでは、図4(A)〜(C)にそれぞれ示す正常時の電流波形(電流信号:図4中の太線)と点検時の電動機の電流波形(電流信号:図4中の細線)に対し、1000Hz(例えば、500〜1500Hzの範囲内)のハイパスフィルターによるハイパスフィルター処理を行った後、包絡線検波による包絡線処理を行った電流の時系列信号に対し、更に高速フーリエ変換(FFT変換:Fast Fourier Transform)を行う。なお、高速フーリエ変換は、信号を周波数領域に変換する方法であり、周波数成分や位相を観察するのに用いる従来公知の方法である(以下、同様)。
【0046】
これにより、例えば、図5(A)〜(C)と図6(A)〜(C)に示す高周波電流スペクトルが得られる。
歯車の軸受が正常な場合、図5(A)〜(C)に示すように、高周波電流スペクトルは、電源周波数のほとんど偶数倍の周波数(ここでは、120Hzと240Hz)にだけピークが現れる。一方、歯車の軸受又は歯車の噛み合いに異常が発生した場合は、図6(A)〜(C)に示す長円で囲まれた領域、即ち歯車の軸の回転周波数が29.7Hzの場合、その偶数倍の周波数付近(この場合、59.4Hz、118.8Hz、178.2Hz、237.6Hz、及び297Hz)に、高周波電流スペクトルのピーク群が現れる。なお、正常な場合にも現れる電源周波数のほとんど偶数倍のピークと重なる周波数では、ピークは確認できない。また、偶数倍の周波数付近とは、滑りを考慮した歯車の軸の回転周波数(ここでは、29.7Hz)の偶数倍の周波数を中心として、例えば、±10Hz(好ましくは、±5Hz)の範囲内を意味する。
【0047】
ここで、異常の判断は、歯車の軸の回転周波数の偶数倍の周波数付近に現れるスペクトルのピーク群が、予め設定した値を超えたことを条件として判断してもよい。なお、予め設定した値とは、例えば、電源周波数のほとんど偶数倍のピークのレベル(最も高い)の10%以上、好ましくは20%以上、更に好ましくは、30%以上である。
従って、歯車軸の回転周波数の偶数倍の周波数付近に、高周波電流スペクトルのピーク群を検出することにより、回転機械系の異常の精密診断を実施できる。
なお、上記した歯車の軸受又は歯車の噛み合いに異常が発生したか否かの判断は、前記したステップ1〜ステップ6の簡易診断(異常検出)を行うことなく、実施してもよい。即ち、電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、フィルター処理を行った後、包絡線処理を行った電流の時系列信号に対し、更に高速フーリエ変換を行い、歯車の軸の回転周波数の偶数倍の周波数付近に現れるスペクトルのピーク群を検出する。
【0048】
また、ステップ9(ST9)で行う、2)電流波形の側帯波解析による回転機械系の異常検出及び識別とは、例えば、固定子の異常、巻線の異常、回転子の偏心、回転子の磁極部の損傷、軸系のミスアライメントやアンバランスなどの異常を識別する方法である。
ここでは、図4(A)〜(C)にそれぞれ示す正常時の電流波形(電流信号)と点検時の電動機の電流波形(電流信号)に対し、高速フーリエ変換した後、対数変換(log10Z)を行う。これにより、図7(A)〜(C)に示すように、大きな値は小さなピークのスペクトルにでき、一方、小さな値は大きなピークのスペクトルにできる。
そして、電源周波数を中心周波数として対称に、この電源周波数の側帯波が存在するかどうか、また、そのスペクトルレベルがいくらかを確認する。なお、中心周波数は、例えば、固定子のスロット通過周波数や回転子バーの磁極部の通過周波数でもよく、この場合、電源周波数の側帯波の代わりに、中心周波数から回転周波数や極通過周波数分だけ離れた周波数のスペクトルのピークのレベルを確認する。
【0049】
これにより、例えば、固定子、回転子、回転軸系の状態を診断することができる。
例えば、図7(A)〜(C)に示すように、電源周波数f(ここでは、60Hz)を中心として、極通過周波数f(ここでは、60Hzを中心として±1〜5Hzずれた周波数)の側帯波が存在すると共に、そのピークレベルと中心周波数のピークレベルとの差が予め設定した差を超えた場合に、回転子バーに異常が発生したと判断する。
また、電源周波数を中心周波数として対称に、電動機の回転子の軸の回転周波数分、即ち電動機の回転子の回転数(ここでは、滑りを考慮して1760回/分)を電源周波数(ここでは、60Hz)で除した値だけ離れた周波数(ここでは、30.7Hzと89.3Hz)の位置では、カップリング(伝動継手)で繋がれて(連結されて)いる電動機の回転子の軸と負荷側の回転軸の軸芯がずれている場合に、ピークが現れる。
【0050】
そこで、図8(A)、(B)に示すように、電動機の電源周波数のスペクトルピークのレベルと、中心周波数から対称に離れた周波数の位置に現れるスペクトルピークのレベルとの差のうち、どちらか一方が、予め設定した値以下となったことを条件として、アライメントの異常が発生したと判断する。ここで、各スペクトルピークのレベルの差は、必要とする検知精度に応じて、例えば、30〜50デシベル(以下、dBともいう。ここでは、40dB)の範囲内(好ましくは、下限を36dB、上限を48dB)で設定できる。
ここで、dBとは、20log(Iline/Ishaft)で表される。なお、Ilineは電流スペクトル電源周波数部の電流成分であり、Ishaftは電流スペクトル電源周波数を中心とした軸回転周波数側帯波部の電流成分である。
従って、回転機械系の異常の精密診断を実施できる。
なお、上記したアライメントの異常が発生したか否かの判断は、前記したステップ1〜ステップ6の簡易診断(異常検出)を行うことなく、実施してもよい。即ち、電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、高速フーリエ変換した後、スペクトルを対数変換し、電動機の電源周波数のスペクトルピークのレベルと、電源周波数から電動機の回転子の軸の回転周波数分だけ離れた周波数の位置に現れるスペクトルピークのレベルとの差を求める。
【0051】
ステップ10(ST10)で行う、3)過度電流値のパターン分析による異常検出及びプロセス診断とは、被駆動回転機の状態及びプロセスを診断する方法である。
ここでは、図9(A)〜(C)に示す起動電流解析や操業電流解析、また図9(D)〜(F)に示す遮断電流解析や操業電流解析を行う。この起動電流解析とは、回転機械系に異常のない正常状態での起動電流パターン(電流実効値波形、以下同様)と、電動機の稼働時の電流実効値波形とを照合(比較)する方法であり、遮断電流解析とは、正常状態の遮断電流パターンと、電動機の稼働時の電流実効値波形とを照合する方法であり、操業電流解析とは、正常状態の操業電流パターンと、電動機の稼働時の電流実効値波形とを照合する方法である。
ここで、点検時の電動機の電流波形が、正常状態の電流パターンに対して±10%(好ましくは±5%)を超える場合に、回転機械系に異常が発生したとして精密診断できる。
【0052】
以上に示したステップ8〜ステップ10を同時又は順次行い、ステップ11(ST11)で異常パターンが認められない場合には、ステップ2に戻って簡易診断を繰り返し行い、異常パターンが認められたと判断された場合には、ステップ14(ST14)で異常識別結果を処理ユニット17のモニタで表示する。
【0053】
また、ステップ12(ST12)で行う、4)電流波形の歪解析による電動機の電源品質のモニタリング解析とは、電動機の稼働時の電流信号の高調波成分と電源周波数成分の単調波比率及び全調波比率と相間電流の不平衡率を算出することにより行う解析である。
ここでは、図4(A)〜(C)にそれぞれ示す正常時の電流波形(電流信号)と電動機の稼働時の電流波形(電流信号)に対し、図10(A)〜(C)に示すように、電動機の電源周波数の50次(50倍)までの高調波(歪)解析を実施する。なお、図10(A)〜(C)の縦軸は、基本波に対する各高調波の比率である。
理想的な電源の品質は、電流(電圧)信号の電源周波数f成分が圧倒的に強く、電源周波数の高調波成分がほとんど現れないものである。
【0054】
このため、50次までの高調波成分と電源周波数成分との比率、即ち電流信号の単調波比率idis及び全調波比率(総合電流歪率)Idisと、相間電流のアンバランス、即ち電流不平衡率Iubを求める。この単調波比率idis、全調波比率Idis、及び電流不平衡率Iubは、それぞれ式(7)〜式(9)で現される。
dis={n次高調波電流の実効値(In)}/{基本電流(I)}×100(%)
・・・(7)
dis={高調波電流の実効値}/{基本電流(I)}×100(%) ・・・(8)
【0055】
【数7】

【0056】
なお、高調波電流の実効値は、第n次高調波電流の実効値をIとすると、式(10)で現される。
【0057】
【数8】

【0058】
そして、ステップ13において、単調波比率idis及び全調波比率Idisと電流不平衡率Iubの全てが予め設定した基準値(例えば、単調波比率idisは3%、全調波比率Idisと電流不平衡率Iubは5%)を超えない場合、電動機に供給される電源品質とインバータに異常が発生しなかったと診断し、ステップ2に戻って繰り返し簡易診断を行う。一方、単調波比率idis、全調波比率Idis、又は電流不平衡率Iubのうち一つでも、基準値以上の場合には、電源品質又はインバータに異常が発生したと診断し、ステップ14(ST14)で異常識別結果を処理ユニット17のモニタで表示する。
なお、ステップ12も、ステップ8〜10と同時又は順次行うことができる。
以上の方法により、異常判定の基準と識別の設定が可能であり、従来よりも高感度に回転機械系の異常診断を実施できる。
【0059】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の回転機械系の異常診断方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10:回転機械系の異常診断装置、11:電動機、12:機械系、13:電力線、14:電源、15:電流検出器、16:A/D変換器、17:処理ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断しようとする電動機の定格電流の基準正弦波信号波形から参照振幅確率密度関数fr(x)を求めて保存する第1工程と、
前記電動機の稼働時の電流を計測してA/D変換し、その電流波形から点検時振幅確率密度関数ft(x)を求めて保存する第2工程と、
前記参照振幅確率密度関数fr(x)と前記点検時振幅確率密度関数ft(x)について、以下の式(1)及び式(2)によってそれぞれ表されるIDとKIのいずれか一方又は双方の値を算出する第3工程と、
a)前記値が前記IDの値であれば、予め設定した過検出率αと見逃し率βから式(3)によって算出されるRID(α、β)と比較してID≧RID(α、β)の場合、b)前記値が前記KIの値であれば、予め設定した過検出率αと見逃し率βから式(4)によって算出されるRKI(α、β)と比較してKI≧RKI(α、β)の場合、c)前記値が前記IDと前記KIの双方の値であれば、それぞれ前記RID(α、β)及び前記RKI(α、β)と比較して、前記ID≧RID(α、β)と前記KI≧RKI(α、β)のいずれか一方又は双方を満足する場合は、1)前記電動機と2)前記電動機によって駆動される機械系からなる回転機械系に異常があると判定する第4工程とを有することを特徴とする回転機械系の異常診断方法。
【数1】

【数2】


【数3】

【数4】

【請求項2】
請求項1記載の回転機械系の異常診断方法において、前記第3工程を行った後に、該第3工程で算出された前記値の時系列変化を記録し、前記回転機械系の状態の劣化傾向を管理する工程を設けたことを特徴とする回転機械系の異常診断方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の回転機械系の異常診断方法において、前記第4工程で前記回転機械系に異常があると判断されることを条件として、1)電流波形の高周波成分解析による前記回転機械系の異常検出及び識別、2)電流波形の側帯波解析による前記回転機械系の異常検出及び識別、3)過度電流値のパターン分析による異常検出及びプロセス診断、4)電流波形の歪解析による前記電動機の電源品質のモニタリング解析のいずれか1又は2以上の処理を行うことを特徴とする回転機械系の異常診断方法。
【請求項4】
請求項3記載の回転機械系の異常診断方法において、前記電流波形の高周波成分解析による前記回転機械系の異常検出及び識別は、前記電動機の稼働時の電流信号を、ハイパスフィルター処理して包絡線処理し高速フーリエ変換することで高周波電流スペクトルを求め、前記回転機械系を構成する歯車の軸の回転周波数の偶数倍の周波数付近に現れる前記高周波電流スペクトルのピーク群を検出することにより、前記歯車の軸受又は該歯車の噛み合いの異常を検知することを特徴とする回転機械系の異常診断方法。
【請求項5】
請求項3記載の回転機械系の異常診断方法において、前記電流波形の側帯波解析による前記回転機械系の異常検出及び識別は、前記電動機の稼働時の電流信号を、高速フーリエ変換して対数変換することでスペクトルを求め、中心周波数の側帯波を検出することにより行うことを特徴とする回転機械系の異常診断方法。
【請求項6】
請求項3記載の回転機械系の異常診断方法において、前記過度電流値のパターン分析による異常検出及びプロセス診断は、起動電流、遮断電流、又は操業電流の前記回転機械系の異常のない状態での電流実効値波形と前記電動機の稼働時の電流実効値波形とを比較することにより行うことを特徴とする回転機械系の異常診断方法。
【請求項7】
請求項3記載の回転機械系の異常診断方法において、前記電流波形の歪解析による前記電動機の電源品質のモニタリング解析は、前記電動機の稼働時の電流信号の高調波成分と電源周波数成分の単調波比率及び全調波比率と相間電流の不平衡率を算出することにより行うことを特徴とする回転機械系の異常診断方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転機械系の異常診断方法において、前記電流の計測は、前記電動機に供給される三相電源の一相について行うことを特徴とする回転機械系の異常診断方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転機械系の異常診断方法において、前記電流の計測は、前記電動機に供給される三相電源の一相ごとについて順次切り換えて行うことを特徴とする回転機械系の異常診断方法。
【請求項10】
電動機の負荷側が歯車で構成される回転機械系の異常診断方法において、
前記電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、ハイパスフィルターによるフィルター処理を行った後、包絡線検波による包絡線処理を行った電流の時系列信号に対し、更に高速フーリエ変換を行い、前記歯車の軸の回転周波数の偶数倍の周波数付近に現れるスペクトルのピーク群を検出することで、前記回転機械系の前記歯車の軸受又は該歯車の噛み合いに異常が発生したと判断することを特徴とする回転機械系の異常診断方法。
【請求項11】
電動機で駆動される回転機械系の異常診断方法において、
前記電動機の稼働時の電流信号をサンプリングし、高速フーリエ変換した後、スペクトルを対数変換し、前記電動機の電源周波数のスペクトルピークのレベルと、該電源周波数を中心周波数として対称に、前記電動機の回転子の軸の回転周波数分だけ離れた周波数の位置に現れるスペクトルピークのレベルとの差が、予め設定した値以下となったことを条件として、前記回転機械系において伝動継手で連結されている前記電動機の前記回転子の軸と、負荷側の回転軸との間に、アライメントの異常が発生したと判断することを特徴とする回転機械系の異常診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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