説明

回転濾過装置

【課題】回転容器への固体粒子の付着を防止することができ、構成が簡易で安価に製造でき、維持費用が低廉で稼動効率の良好な回転濾過装置を提供する。
【解決手段】回転濾過装置は、流入管13を通して研磨液が供給されるハウジング1と、ハウジング1内に収容されて濾過材25を内蔵する円筒形状の回転容器2と、回転容器2の回転軸を兼ねると共に濾過後の研磨液を回転容器2内から排出する濾過液排出管4と、回転容器2を回転駆動するモータ5を備える。回転容器2は、周面に配列された複数の板部材を備え、板部材相互間に複数の液体流通開口を有する。回転容器2は、流入管13から吐出された研磨液が周面を流れ落ちると共に、ハウジング1内に貯留した研磨液に浸漬した状態で回転駆動される。液体流通開口は回転方向の反対方向に開口しており、固体粒子が液体流通開口に付着する度合いを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子が混在する液体を濾過する回転濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属加工装置の研磨液の再生処理、食品工場の廃液処理、下水処理場の汚水処理等では、液体から固体粒子を捕捉回収するために回転濾過装置が用いられている。
【0003】
従来の回転濾過装置として、例えば特許文献1では、液体に浸漬するよう配置され、周面が金網で形成された円筒形状の回転容器と、該回転容器内に充填された粒状の濾過材とを有する濾過槽本体と、該濾過槽本体内に同軸に配置されて濾過槽本体内の水を吸引する集水管と、濾過槽本体を軸線回りに回転駆動するモータを備えた流体濾過装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されている流体濾過装置は、集水管に接続されたポンプの動作により、液体を濾過槽本体内に外周から流入させて、小径の固体粒子である懸濁物質を濾過材で捕捉して濾過し、濾過した水を集水管から外部に吐出する。斯かる濾過運転を所定期間実行した後、濾過材に蓄積された懸濁物質を除去するため、濾過材の洗浄運転を行う必要がある。すなわち、モータで濾過槽本体を回転駆動して濾過材を攪拌し、濾過材間、濾過材表面にて捕捉された懸濁物質を分離させ、分離した懸濁物質を、回転容器の周面の金網を通して濾過槽本体外に排出している。
【0005】
一方、特許文献2では、懸濁物質を含む液体を貯留する液槽と、液槽内に配置され、ステンレス鋼製の網で形成された外筒と内筒を有する二重筒体で形成された回転容器と、回転容器の外筒と内筒の間に配置された粒状の濾過材と、回転容器の内筒内の液体を外部に排出する排液手段と、回転容器を回転駆動する回転手段と、回転容器の上方に配置されて回転容器内の濾過材に洗浄液を噴射する洗浄ノズルを備えた回転濾過装置が開示されている。特許文献2では、回転容器の上方に軸線と平行に配設されたレールに沿って、洗浄ノズルが往復動可能に形成されている。また、回転容器の内筒内には、濾過材の洗浄後の洗浄液を受ける集液容器と、集液容器から洗浄後の洗浄液を液槽内に誘導する誘導管が設けられている。
【0006】
特許文献2に開示されている回転濾過装置は、液槽に供給した液体を、液槽内の水位上昇に伴って回転容器内に流入させ、濾過材で懸濁物質を捕捉して濾過した後、排液手段により外部に排出して濾過運転を行う。濾過運転を所定期間行った後、濾過材の洗浄運転を行う。すなわち、回転手段で回転容器を回転させ、液体に浸漬していた部分を洗浄ノズルに対向させて、洗浄ノズルから洗浄液を噴射しながら洗浄ノズルを軸線方向に往復動させて濾過材を洗浄する。回転容器の回転と、洗浄ノズル対向部分の洗浄とを交互に繰り返すことにより、液体に浸漬していた全ての回転容器及び濾過材を洗浄する。濾過材を洗浄して懸濁物質を含んだ洗浄液は液槽内に誘導され、懸濁物質が液槽下部に沈殿する。液槽下部に沈殿した懸濁物質は、液槽下部に設けられたバルブの操作により液槽外に排出されるようになっている。
【特許文献1】特開平10−323510号公報
【特許文献2】特開2001−120911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来のいずれの濾過装置も、回転容器の周面が網で形成されていることから、網を通過しない大径の固体粒子が回転容器の周面に付着し、付着した固体粒子によって液体の流れが妨げられて濾過効率が低下するという問題点があった。回転容器に付着した固体粒子は、回転容器を通過する液体の流れによって網に固着する場合が多く、従来のいずれの濾過装置においても、固着した固体粒子を洗浄運転で除去することは困難であった。
【0008】
また、特許文献2に開示されている回転濾過装置は、回転容器に付着した固体粒子を洗浄運転で除去することができる。しかし、洗浄ノズルの駆動機構、洗浄液の供給機構等が必要となることから装置構成が複雑となり、製造コストが増大するという問題点があった。また、洗浄運転を行うための洗浄液が必要となることから、維持費用も増大するという問題点もあった。さらに、洗浄運転は、回転容器の回転と、洗浄ノズル対向部分の洗浄とを交互に繰り返すため相当の時間を要することから、濾過運転の稼働時間の減少を招き、稼動効率が低下するという問題点もあった。
【0009】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、回転容器への固体粒子の付着を防止することができ、しかも構成が簡易で比較的安価に製造でき、維持費用が低廉で稼動効率の良好な回転濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために第1発明に係る回転濾過装置は、濾過対象となる液体が供給される液槽と、該液槽内に回転することが可能に配置され、液体を濾過する濾過材を内蔵する略円筒形状の回転容器と、前記濾過材にて濾過された液体を前記回転容器から前記液槽の外部へ排出する排出部と、前記回転容器を回転駆動する駆動部とを有する回転濾過装置において、前記回転容器は、回転方向の反対方向に開口している複数の液体流通開口を周面に備えることを特徴とする。
【0011】
第1発明では、液槽に液体が供給され、回転容器が駆動部により回転駆動される。回転駆動される回転容器の複数の液体流通開口から、液槽内の液体が回転容器内に流入する。回転容器内に流入した液体は濾過材で濾過され、濾過された液体は排出部によって回転容器から液槽の外部へ排出される。回転容器の液体流通開口は、回転容器の回転方向とは反対側に向かって開口されているので、従来のように網が周面に設けられた回転容器と比較して、液体に含まれる大径の固体粒子が液体流通開口から吸引されることがない。したがって、回転容器に大径の固体粒子が付着することがなく、目詰まり頻度を低減することができる。その結果、付着した固体粒子によって液体の流れが妨げられることがなく、濾過効率の低下を未然に防止することが可能となる。
【0012】
また、従来のように洗浄ノズルの駆動機構、洗浄液の供給機構を用いることなく固体粒子の付着を防止することができるので、従来よりも簡易な構成で安価に製造することができる。また、回転容器に付着した固体粒子を除去する手間が大きく低減されることからメンテナンスに要する時間を短縮することができ、稼動効率の良好な回転濾過装置を提供することができる。
【0013】
また、第2発明に係る回転濾過装置は、第1発明において、前記回転容器は、周面の接線方向に対して傾斜した傾斜面を少なくとも一部に有する周方向に配列された複数の板部材を備え、前記複数の板部材相互間に前記液体流通開口が形成されていることを特徴とする。
【0014】
第2発明では、回転容器は、周面の接線方向に対して傾斜した傾斜面を少なくとも一部に有する周方向に配列された複数の板部材を備えており、複数の板部材相互間に液体流通開口が形成されている。回転容器が回転して板部材が周方向に回転した場合、板部材の傾斜面から固体粒子に遠心力が作用する。これにより、大径の固体粒子を液体流通開口から遠ざけることができ、大径の固体粒子が液体流通開口に付着することを未然に防止することが可能となる。
【0015】
また、第3発明に係る回転濾過装置は、第2発明において、前記板部材は、前記回転容器の周面の接線方向に延びる周面部と、該周面部と前記回転容器の周面との間に設けられた傾斜面部とを有し、一の前記板部材の周面部の先端部と、前記回転容器の反回転方向にて隣接する他の板部材の傾斜面部との間に、スリット状の前記液体流通開口が形成されていることを特徴とする。
【0016】
第3発明では、回転容器の板部材は、周面の接線方向に延びる周面部と、該周面部と回転容器の周面との間に設けられた傾斜面部とで構成されている。板部材の周面部の先端部と、回転容器の反回転方向にて隣接する他の板部材の傾斜面部との間に、スリット状の液体流通開口が形成されている。これにより、回転容器の周面に回転方向の反対方向に開口してある液体流通開口を形成することができ、回転容器の回転に伴って板部材の傾斜面部から固体粒子に遠心力を作用させることができる。したがって、液体流通開口に大径の固体粒子が吸引されにくく、液体流通開口から大径の固体粒子を遠ざけることができ、大径の固体粒子が液体流通開口に付着することを未然に防止することが可能となる。
【0017】
また、第4発明に係る回転濾過装置は、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記液槽の下部に、沈殿物を排出する沈殿物排出管が接続されていることを特徴とする。
【0018】
第4発明では、液槽の下部に、沈殿物を排出する沈殿物排出管が接続されることにより、回転容器に付着することなく液体に残留して液槽の下部に沈殿した大径の固体粒子等の沈殿物を、沈殿物排出管を通して外部に排出することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
上記構成によれば、回転容器の液体流通開口は、回転容器の回転方向とは反対側に向かって開口されているので、従来のように網目が周面に設けられた回転容器と比較して、液体に含まれる大径の固体粒子が液体流通開口から吸引されることがない。したがって、回転容器に大径の固体粒子が付着することがなく、目詰まり頻度を低減することができる。その結果、付着した固体粒子によって液体の流れが妨げられることがなく、濾過効率の低下を未然に防止することが可能となる。
【0020】
また、従来のように洗浄ノズルの駆動機構、洗浄液の供給機構を用いることなく固体粒子の付着を防止することができるので、従来よりも簡易な構成で安価に製造することができる。また、回転容器に付着した固体粒子を除去する手間が大きく低減されることからメンテナンスに要する時間を短縮することができ、稼動効率の良好な回転濾過装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る回転濾過装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態では、金属加工装置としての研磨装置に接続されて用いられる回転濾過装置であって、研磨装置から排出される研磨処理後の研磨液を濾過し、固体粒子としての研磨屑及び研磨材を捕捉回収する装置を例に挙げて説明する。
【0022】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の側面図であり、図1(b)は、本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の正面図である。また、図2は、本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の平断面図である。
【0023】
図1(a)に示すように、本発明の実施の形態に係る回転濾過装置は、略直方体形状の液槽であるハウジング1と、ハウジング1内に回転することが可能に収容された概ね円筒形状の回転容器2と、回転容器2の一方の端面に固定されてハウジング1の背面から突出した駆動軸3と、回転容器2の他方の端面を貫通して回転容器2内の濾過後の研磨液をハウジング1の外部に排出する排出部である濾過液排出管4と、駆動軸3に連結されたモータ5と、ハウジング1の底面に接続された沈殿物排出管6と、沈殿物排出管6に介設されたバタフライバルブ7とを備えている。
【0024】
ハウジング1は、図1(b)に示すように、下部が回転容器2と同心の弧状に形成されている。ハウジング1の下端部は、横断面積が縮小するテーパ状に形成されており、沈殿物排出管6に連結されている。ハウジング1の正面と背面とには貫通孔が設けられており、背面の貫通孔に隣接して、図2に示すように駆動軸3を支持するウッドベアリング11が設けられている。
【0025】
ウッドベアリング11のハウジング1内部側に隣接して、駆動軸3の外周面とウッドベアリング11との間を密閉する回転軸シール12が設けられている。ハウジング1の正面の貫通孔には、濾過液排出管4が挿通された状態で固定されている。ハウジング1の側面の上部には、研磨装置から研磨液が導かれる流入管13が設けられており、流入管13の先端部がハウジング1内で屈曲している。これにより、流入管13の先端の開口から吐出された研磨液が、矢印Aで示すように、回転容器2の周面を流れ落ちるようになっている。ハウジング1は、研磨装置から圧送される研磨液の圧力を保持するため、密閉構造となっている。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の回転容器の斜視図である。図4は、本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の回転容器の回転軸直角方向の部分断面図である。図3に示すように、本実施の形態に係る回転濾過装置の回転容器2は、円筒形状の両端面を形成する2つの円盤状の端面板21、21と、各端面板21の外周側に連結された環状枠22と、環状枠22の外周側に周方向に配列された複数のブラケット23、23、・・・と、各ブラケット23に固定されて周方向に配列された複数の板部材24、24、・・・とを有する。複数の板部材24、24、・・・の内径側には、ステンレス鋼のメッシュを筒状に形成してなる濾過材25が収容されている。
【0027】
一方の端面板21の外側面には駆動軸3が固定されている一方、他方の端面板21には、濾過液排出管4が挿通される貫通孔が設けられている。他方の端面板21の内側には、図2に示すように、貫通孔に隣接してウッドベアリング26が設けられており、このウッドベアリング26を介して、回転容器2の他方の端面板21側が濾過液排出管4に支持されている。ウッドベアリング26の回転容器2の外側には、濾過液排出管4の外周面とウッドベアリング26との間を密閉する回転軸シール27が設けられている。
【0028】
図5は、本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の回転容器のブラケットの斜視図である。図5に示すようにブラケット23は、扁平台形断面を有する板状体からなり、環状枠22の外周面に密着するように湾曲した底面23cと、底面23cと概ね平行の天面23aと、天面23aに対して10〜20°の角度をなして傾斜させた傾斜面23bとを有している。ブラケット23は、傾斜面23bが天面23aに対して回転方向に位置するように環状枠22に固定される。ブラケット23の天面23aの縁部は、底面23cの縁部よりも回転方向とは反対の方向に張り出している。これにより、ブラケット23を環状枠22に連ねて配置したとき、ブラケット23の天面23aの縁部が、回転容器2の回転方向の反対方向にて隣接するブラケット23の傾斜面23bの縁部の外径側に向かって張り出すようになっている。
【0029】
図3及び図4に戻って、板部材24は、回転軸と平行に延在する細長の矩形状を有しており、ブラケット23を貫通して環状枠22に螺着するネジ28によって固定されている。板部材24は、回転容器2の周面の接線方向と略平行となる周面部24aと、回転容器2の周面の接線方向に対して傾斜している傾斜部24bとを有している。板部材24の傾斜部24bは、周面部24aに対して10〜20°の角度をなして傾斜している。周面部24aと傾斜部24bとは、周方向にて略同じ長さとなるように形成されている。
【0030】
板部材24は、周面部24aがブラケット23の天面23a上に沿うとともに、傾斜部24bがブラケット23の傾斜面23b上に沿うように、ブラケット23に固定されている。板部材24は、傾斜部24bが周面部24aよりも回転容器2の回転方向に位置すると共に、回転方向に向かうにつれて傾斜部24bが径方向内側に向かって傾斜するように固定されている。ブラケット23に固定された複数の板部材24、24、・・・は、隣り合う板部材24、24、・・・との間で、周方向に傾斜部24b、24b、・・・と周面部24a、24a、・・・とが重なり合うと共に、傾斜部24b、24b、・・・の端部の径方向外側に周面部24a、24a、・・・の端部が位置するように配列される。これにより、隣り合う板部材24、24、・・・の傾斜部24b、24b、・・・と周面部24a、24a、・・・との間に、回転容器2の回転方向とは反対方向に開口しているスリット状の液体流通開口29、29、・・・が形成される。
【0031】
ハウジング1の正面の貫通孔に貫通して固定され、かつハウジング1の内部で回転容器2を回転することが可能に支持する濾過液排出管4は、回転容器2内の先端に、研磨液を吸入して外部に排出するための開口が設けられている。濾過液排出管4は図示しない液送ポンプに接続されており、回転容器2内の濾過後の研磨液が液送ポンプによって吸引されて回転濾過装置外部に排出されるようになっている。排出された研磨液は、研磨装置に戻されて研磨処理に再利用される。このように、研磨装置と回転濾過装置との間を研磨液が循環するように構成されている。
【0032】
以下、上記構成の回転濾過装置の動作について説明する。研磨装置の起動に伴い、回転濾過装置のモータ5が起動され、駆動軸3を介して回転容器2が矢印Bで示すように回転駆動される。また、図示しない液送ポンプが起動され、濾過液排出管4を通してハウジング1内が吸引される。
【0033】
研磨装置でワークの研磨処理に用いられた研磨液は、ワークの研磨屑、研磨剤、砥石屑等の固体粒子が含まれた状態で、流入管13を介してハウジング1内に導かれる。流入管13に導かれた研磨液は、流入管13の開口からハウジング1内に吐出され、回転容器2の周面に接しながら流れ落ちる。回転容器2の周面において、研磨液が流れる方向と、回転容器2の周面が回転する方向とは逆向きとなる。回転容器2の周面を流れ落ちた研磨液はハウジング1の底部に貯留され、ハウジング1内の液面が上昇し、回転容器2の下半分が研磨液に浸漬した状態となる。
【0034】
ハウジング1内に貯留された研磨液、回転容器2の周面を流れ落ちる研磨液等が、回転容器2の液体流通開口29から回転容器2内に流入し、研磨液に含まれる研磨屑及び研磨材等の固体粒子が濾過材25で捕捉されて、研磨液が濾過される。濾過された研磨液は、回転容器2の濾過材25の内側に開口する濾過液排出管4の先端から吸入され、濾過液排出管4を介して回転濾過装置外に排出される。一方、液体流通開口29に流入しない主に大径の固体粒子は、ハウジング1内の底部に沈殿して、テーパ状の下端部に集められる。ハウジング1の下端部に集められた固体粒子は、バタフライバルブ7が開操作されることにより、沈殿物排出管6を介して外部に排出される。
【0035】
ここで、回転容器2の液体流通開口29が回転容器2の回転方向とは反対の方向を向いているので、従来の開口を有する網が周面に設けられた回転容器と比較して、研磨液に含まれる大径の固体粒子が液体流通開口29に吸い込まれにくい。また、回転容器2の外周に配列された板部材24が回転するのに伴って、板部材24の傾斜部24bから固体粒子に遠心力が作用し、大径の固体粒子を効果的に液体流通開口29から遠ざけることができる。したがって、大径の固体粒子が液体流通開口29に付着することがなく、液体流通開口29における研磨液の流れが妨げられず、研磨液の濾過効率の低下を未然に防止することが可能となる。
【0036】
また、本実施の形態に係る回転濾過装置によれば、従来のように洗浄ノズルの駆動機構、洗浄液の供給機構等が不要であることから、回転容器2への固体粒子の付着を防止することができる回転濾過装置を、簡易な構成で安価に提供できる。また、回転容器2に付着した固体粒子を除去する手間を削減することもできるので、メンテナンス頻度を低減することができ、稼動効率の良好な回転濾過装置を提供することができる。
【0037】
本実施の形態のように、研磨処理後の研磨液を回転濾過装置で濾過して研磨装置で再利用する場合、研磨装置と回転濾過装置との間に研磨剤の循環流れを形成することから、回転容器2の液体流通開口29に固体粒子が付着した場合、以下のような問題が生じる。すなわち、固体粒子の付着によって液体流通開口29における流量損失が増大し、液送ポンプの負荷が増大する。このような液体流通開口29での流量損失を見込んで研磨液流量を確保しようとした場合、液送ポンプの大型化、研磨液の配管径の大型化等が必要となり、研磨装置と回転濾過装置とのコストアップ要因となる。さらに、液体流通開口29における流量損失を補うために、液送ポンプによる研磨液の圧力を高めた場合、研磨液の温度上昇を招き、研磨装置におけるワークの加工精度に悪影響を及ぼす可能性も残されている。
【0038】
それに対して本実施の形態に係る回転濾過装置によれば、液体流通開口29への固体粒子の付着を防止することができるので、液体流通開口29における流量損失を効果的に安定して低く保持することができ、上述の問題を効果的に防止することができる。すなわち、研磨装置、回転濾過装置等のコストアップを招くことなく、研磨装置の加工精度を安定して良好に維持することができる。
【0039】
上述した実施の形態では、回転容器2の周面に、周面部24aと傾斜部24bとを有して屈曲した板部材24を配列したが、平坦な板部材を接線方向に対して傾斜させて配列してもよいことは言うまでもない。
【0040】
また、上述した実施の形態では、回転容器2の周面に配列した板部材24の相互間にスリット状の液体流通開口29を形成しているが、液体流通開口はスリット状に限定されるものではなく、矩形状、円形状等の種々の形態にて形成しても良い。例えば、回転容器2の周面を筒状の板材で形成し、該板材に複数の貫通孔を設け、設けられた貫通孔の縁に、開口を回転容器2の回転方向の反対方向に向ける庇状の部材を取り付けて液体流通開口29を形成してもよい。
【0041】
また、上述した実施の形態では、回転濾過装置は、研磨装置から排出される研磨液の濾過に用いているが、他の金属加工装置の排出液の濾過に用いても良い。また、金属加工装置の排液処理に限られず、食品工場における廃液処理、下水処理場における汚水処理等の他の用途に本発明の回転濾過装置を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の側面図であり、(b)は、本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の平断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の回転容器の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の回転容器の回転軸直角方向の部分断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る回転濾過装置の回転容器のブラケットの斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ハウジング(液槽)
2 回転容器
3 駆動軸
4 濾過液排出管
5 モータ
6 沈殿物排出管
13 流入管
24 板部材
24a 周面部
24b 傾斜部
29 液体流通開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過対象となる液体が供給される液槽と、
該液槽内に回転することが可能に配置され、液体を濾過する濾過材を内蔵する略円筒形状の回転容器と、
前記濾過材にて濾過された液体を前記回転容器から前記液槽の外部へ排出する排出部と、
前記回転容器を回転駆動する駆動部と
を有する回転濾過装置において、
前記回転容器は、回転方向の反対方向に開口している複数の液体流通開口を周面に備えることを特徴とする回転濾過装置。
【請求項2】
前記回転容器は、周面の接線方向に対して傾斜した傾斜面を少なくとも一部に有する周方向に配列された複数の板部材を備え、
前記複数の板部材相互間に前記液体流通開口が形成されていることを特徴とする請求項1記載の回転濾過装置。
【請求項3】
前記板部材は、前記回転容器の周面の接線方向に延びる周面部と、該周面部と前記回転容器の周面との間に設けられた傾斜面部とを有し、
一の前記板部材の周面部の先端部と、前記回転容器の反回転方向にて隣接する他の板部材の傾斜面部との間に、スリット状の前記液体流通開口が形成されていることを特徴とする請求項2記載の回転濾過装置。
【請求項4】
前記液槽の下部に、沈殿物を排出する沈殿物排出管が接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の回転濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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