説明

回転直動変換アクチュエータ及びその製造方法

【課題】回転直動変換機構に対してロータを取り付ける際に回転筒とサンシャフトとの噛み合い部に過度に大きな負荷がかかることを抑制することのできる構造の回転直動変換アクチュエータ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】回転直動変換アクチュエータ1は、回転直動変換機構40と、この回転直動変換機構40が配置される空間を有するハウジング10と、回転直動変換機構40をこのハウジング10に対して回転可能な状態にて保持するホルダ20と、回転直動変換機構40に取り付けられるロータ29とを備えている。このホルダ20は、回転直動変換機構40とハウジング10との間に介在して回転直動変換機構40を保持する第1ホルダ21と、回転直動変換機構40のサンシャフト42を挿通させる開口部としての第2ホルダ22を備え、第1ホルダ21と第2ホルダ22は各別に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動を回転に又は回転を直動に変換するための回転直動変換アクチュエータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転動力を直動へ変換する回転直動変換アクチュエータは、例えば、自動車のエンジンにおけるインテークバルブ又はエキゾーストバルブのバルブタイミングや最大バルブリフト量を変更する可変動弁機構に用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
図14に、従来の回転直動変換アクチュエータ100の概略構成を示す。
ハウジング110の内部には、モータ127による回転運動を直線運動に変換する回転直動変換機構140が設けられている。回転直動変換機構140は、モータにより回転する回転筒141と、回転筒141の中心軸に沿って設けられたサンシャフト142と、回転筒141の回転をサンシャフトの直線運動に変換する噛み合い部148とを備えている。噛み合い部148は、回転筒141の内面に設けられたギアとサンシャフト142の外面に設けられたギアとが噛合する構成となっている。回転筒141を回転させる動力としてのモータ127は、ステータ128とロータ129とから構成されている。ステータ128は、コイルを有し、ハウジング110の内面に等間隔に配置されている。ロータ129は、ステータ128に対向して回転直動変換機構140の回転筒141に配置され、ステータ128の磁力を受けるようにされている。すなわち、回転直動変換機構140は、モータの動力により回転筒141を回転させるとともにこの回転筒141の回転運動を噛み合い部148により直線運動に変換するものである。
【0004】
また、回転直動変換機構140はホルダ130によりハウジング110に保持されている。ホルダ130は、ハウジング110の内壁に固定される固定部131を有し、固定部131には、回転直動変換機構140を保持するための保持部132、及び回転直動変換機構140のサンシャフト142を挿通させるための挿通穴138を有した開口部133が設けられている。また、ホルダ130の保持部132と回転直動変換機構140との間には、ベアリング150が介在している。
【0005】
回転直動変換アクチュエータ100は次のように組立てられる。
まず、ハウジング110にホルダ130を固定し、次いで、ベアリング150とロータ129が設けられた回転直動変換機構140をそのホルダ130に装着する。その後、ホルダ130の保持部132とベアリング150の外輪151とをナット180で締結する。すなわち、従来の組立て方法においては、ロータ129の回転直動変換機構140への装着が回転直動変換機構140のホルダ130への装着の前に行っている。
【特許文献1】特開2001−263015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本願発明者は回転直動変換アクチュエータ100の軽量化のための一案として、外輪151及び保持部132の締結方法を上記従来のものに代えて、次の締結方法を採用することを検討している。すなわち、ナット180によりホルダ130とベアリング150の外輪151とを締結することに代え、保持部132をベアリング150の外輪151に対してかしめにより固定することによってナット180を省略して回転直動変換アクチュエータ100の軽量化を図ることを検討している。
【0007】
この場合は、かしめ治具を保持部132に当接させる必要があるものの、かしめ治具を保持部132に当接させるにはロータ129が邪魔となる。そのため、かしめ作業の後にロータ129の装着を行う必要がある。
【0008】
しかしながら、このように、回転直動変換機構140のホルダ130への装着した後にロータ129を圧入する場合、上記従来の構造の回転直動変換アクチュエータ100によれば図15に示すように、サンシャフト142をクランプ治具190で固定した状態でロータ129を圧入するしかない。そのため、圧入にともない噛み合い部148に対して過度に大きな負荷が加えられる虞がある。すなわち、圧入に際して回転筒141を圧入方向とは反対側において治具により受けることが望まれるものの、回転直動変換アクチュエータ100の構造上、そうした治具による受けが許容されないために噛み合い部148に加えられる負荷の増大を招きかねないものとなっている。
【0009】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転直動変換機構に対してロータ等の補助要素を取り付ける際に回転筒と直動軸との噛み合い部に過度に大きな負荷がかかることを抑制することのできる構造の回転直動変換アクチュエータ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、回転筒の回転を直動軸の直動にまたは直動軸の直動を回転筒の回転に変換する回転直動変換機構と、この変換機構が配置される空間を有する装置本体と、前記回転直動変換機構をこの装置本体に対して回転可能な状態にて保持する保持要素と、前記回転直動変換機構とは別のものとして形成されて同変換機構に取り付けられる補助要素とを備え、前記保持要素は、当該要素を前記装置本体に固定する固定部と、前記回転直動変換機構を回転可能な状態にて保持する保持部と、前記直動軸と対応するところに設けられて前記直動軸が通過する開口部と、この開口部を前記固定部に接続する接続部とを含めて構成されるものであり、前記直動軸は、その先端が前記開口部を介して前記装置本体の外部に突出するものであり、前記補助要素は、前記回転直動変換機構において前記保持部に対して前記開口部側とは反対側に位置するところに設けられるものであり、前記回転筒または前記直動軸に入力される力により運動の変換を行う回転直動変換アクチュエータにおいて、前記保持要素は、前記固定部及び前記保持部及び前記接続部を含む第1保持要素と、前記開口部を含む第2保持要素とが各別に形成されて、この第2保持要素が前記第1保持要素の接続部に取り付けられて前記回転筒と対向した状態にて構成されるものであることを要旨としている。
【0011】
この発明によれば、当該回転直動変換アクチュエータを組み立てる工程において回転筒に補助要素を取り付ける際、まずは第1保持要素の接続部から第2保持要素を取り外した状態に維持し、次に回転筒を支持するための治具を同接続部の空間を介して装置本体内に挿入することができる。これにより、同治具により回転筒を的確に支持した状態のもとで補助要素を回転筒に取り付けることが可能となるため、補助要素の取り付けに起因して回転直動変換機構の噛み合い部に過度に大きな負荷がかかることを的確に抑制することができるようになる。
【0012】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、前記第1保持要素の接続部は、前記第2保持要素を取り付けるための空間が形成されるものであり、この空間は、前記補助要素を前記回転直動変換機構に取り付ける作業が行われる際に前記回転筒を前記直動軸の先端側から支持する治具について、この治具が前記第2保持要素の取り付けられる前の当該空間を介して前記装置本体の外部から内部に移動することを許容するものであることを要旨としている。
【0013】
この発明によれば、接続部として上記構成のものを備えるようにしているため、接続部に形成された空間を介して、回転筒を前記直動軸の先端側から支持する治具を装置本体の外部から内部に移動させることができる。
【0014】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、前記直動軸は、前記第2保持要素の開口部と対向する状態にて当該軸とともに軸方向に移動する突出部が設けられるものであり、前記第2保持要素は、前記直動軸の突出部と前記第1保持要素の接続部との間に位置する保持規制部が設けられるものであることを要旨としている。
【0015】
直動軸に突出部が設けられる場合には、当該アクチュエータの駆動中において直動軸の移動にともない第2保持要素の開口部が突出部により押されて同保持要素を軸方向に移動させる力が加えられたとき、第2保持要素が第1保持要素から離脱することもある。この点、上記発明によれば、直動軸とともに突出部が第2保持要素の開口部に近接する方向に移動するにともない第2保持要素が突出部により押される際、この保持規制部が第1保持要素の接続部と接触することにより第2保持要素全体のそれ以上の移動が規制されるため、第2保持要素が第1保持要素から離脱することを的確に抑制することができるようになる。
【0016】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、前記第2保持要素は、前記開口部が筒状に形成されるとともにこの開口部の端部に前記保持規制部としてのフランジが設けられるものであることを要旨としている。
【0017】
この発明によれば、フランジが第1保持要素の接続部と接触することにより第2保持要素全体のそれ以上の移動が規制される。これにより、直動軸の突出部に格別の変更を加えなくとも、第1保持要素からの第2保持要素の離脱を抑制することができるようになる。
【0018】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、前記直動軸は、前記第2保持要素の開口部と対向する状態にて当該軸とともに軸方向に移動する突出部が設けられるものであり、前記第2保持要素は、前記直動軸の突出部と対向する端面が前記第1保持要素の接続部において前記突出部と対向する端面よりも前記突出部から離れたところに設けられるものであることを要旨としている。
【0019】
この発明によれば、上記のように第1保持要素の接続部の端面及び第2保持要素の端面の位置関係が設定されているため、直動軸の移動にともない突出部が第2保持要素に近接する方向に移動した際に、突出部が接続部の端面に接触して突出部と第2保持要素との接触が回避される。これにより、第2保持要素が第1保持要素から離脱することを的確に抑制することができるようになる。
【0020】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、前記第2保持要素は、前記直動軸の突出部と対向する端面が前記第1保持要素の接続部に設けられた空間内に位置するものであることを要旨としている。
【0021】
この発明によれば、第2保持要素の端面が上記の位置に設けられていることにより、第1保持要素の接続部の端面が第2保持要素の端面よりも直動軸の突出部に近いところに設定される。これにより、直動軸の突出部に格別の変更を加えなくとも、第1保持要素からの第2保持要素の離脱を抑制することができるようになる。
【0022】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1または2に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、前記直動軸は、前記第2保持要素と対向する状態にて当該軸とともに軸方向に移動する突出部と、この突出部と前記第2保持要素との接触を回避する軸規制部とが設けられるものであることを要旨としている。
【0023】
この発明によれば、直動軸とともに突出部が第2保持要素に近接する方向に移動した際、軸規制部により突出部と第2保持要素との接触が回避される。これにより、第2保持要素が第1保持要素から離脱することを的確に抑制することができるようになる。
【0024】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、前記軸規制部は、前記直動軸の突出部において前記第1保持要素の接続部側にある端面から同接続部に向けて突出するものであり、前記直動軸が前記第2保持要素に近接する方向に移動する際に前記突出部よりも先に前記接続部に接触するものであることを要旨としている。
【0025】
この発明によれば、軸規制部が上記構成となっていることにより、直動軸の突出部と第2保持要素との接触が回避されるようになる。これにより、第2保持要素に格別の変更を加えなくとも、第1保持要素からの第2保持要素の離脱を抑制することができるようになる。
【0026】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、前記第1保持要素の保持部は、前記回転直動変換機構との間に設けられる転がり軸受を介して同変換機構を回転可能な状態に保持するものであり、前記転がり軸受は、その外輪が前記保持部に対してかしめにより固定されるものであることを要旨としている。
【0027】
この発明によれば、転がり軸受の外輪を保持部に対して固定するうえでそのための別途の要素が必要とされることはないため、例えば転がり軸受を保持するための構成として保持部にナットを設けた場合と比較して、保持部の軽量化を図ることができるようになる。
【0028】
(10)請求項10に記載の発明は、回転筒の回転を直動軸の直動にまたは直動軸の直動を回転筒の回転に変換する回転直動変換機構と、この変換機構が配置される空間を有する装置本体と、前記回転直動変換機構をこの装置本体に対して回転可能な状態にて保持する保持要素と、前記回転直動変換機構とは別のものとして形成されて同変換機構に取り付けられる補助要素とを備え、前記保持要素は、当該要素を前記装置本体に固定する固定部と、前記回転直動変換機構を回転可能な状態にて保持する保持部と、前記直動軸と対応するところに設けられて前記直動軸が通過する開口部と、この開口部を前記固定部に接続する接続部とを含めて構成されるものであり、前記直動軸は、その先端が前記開口部を介して前記装置本体の外部に突出するものであり、前記補助要素は、前記回転直動変換機構において前記保持部に対して前記開口部側とは反対側に位置するところに設けられるものであり、前記回転筒または前記直動軸に入力される力により運動の変換を行う回転直動変換アクチュエータの製造方法において、前記保持要素として、前記固定部及び前記保持部及び前記接続部を含む第1保持要素と前記開口部を含む第2保持要素とが各別に形成され、この第2保持要素が前記第1保持要素の接続部に取り付けられることにともない前記回転筒と対向するものを用意する工程Aと、前記第2保持要素を前記第1保持要素の接続部から取り外した状態にて、前記接続部において前記第2保持要素を取り付けるための空間を介して前記装置本体の外部から内部に治具の一部を挿入し、この治具により前記回転筒を前記直動軸の先端側から支持する工程Bと、前記治具により前記回転筒を支持した状態のもと、前記回転筒において前記第1保持要素の保持部に対して前記治具とは反対側から前記補助要素を取り付ける工程Cとを備えることを要旨としている。
【0029】
この発明によれば、当該アクチュエータを組み立てる工程において回転筒に補助要素を取り付ける際、治具により回転筒を的確に支持した状態のもとで補助要素の回転筒への取り付けが行われるため、補助要素の取り付けに起因して回転直動変換機構の噛み合い部に過度に大きな負荷がかかることを的確に抑制することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1実施形態)
図1〜図6を参照して、本発明の回転直動変換アクチュエータ及びその製造方法を具体化した第1実施形態について説明する。
【0031】
回転直動変換アクチュエータ1は、回転筒41に入力される力により運動の変換を行うものである。具体的には、回転直動変換アクチュエータ1は、回転筒41の回転をサンシャフト42の直動に変換する回転直動変換機構40と、この回転直動変換機構40が配置される空間を有するハウジング10と、回転直動変換機構40をこのハウジング10に対して回転可能な状態にて保持するホルダ20とを備えている。
【0032】
ハウジング10は、回転直動変換アクチュエータ1の中心軸CLと同軸とする円筒状のものであり、所定の内径を有した第1円筒部11と、この第1円筒部11の内径よりも小さい内径を有した第2円筒部12とから構成されている。第1円筒部11の後端11bは、回転直動変換機構40をハウジング10の内部に収容することができるように開口されている。また、この開口部分はキャップ15により封鎖されるように構成されている。第2円筒部12の前端部12aには、中心軸CLと同軸とする貫通穴14が設けられている。さらに、第1円筒部11の内壁11cには、等間隔にステータ28が配置されている。なお、回転直動変換アクチュエータ1の中心軸CLに、回転直動変換機構40のサンシャフト42の軸が同軸に設定されている。
【0033】
ホルダ20は、第1ホルダ21と第2ホルダ22から構成されている。
第1ホルダ21は、ハウジング10の第2円筒部12の内壁12cに固定される固定部31と、固定部31に設けられ中心軸CLと同軸に配置された円筒状の保持部32と、固定部31に設けられハウジング10の貫通穴14に嵌合し且つその中央付近に嵌合穴35が設けられた接続部34とを備えている。
【0034】
第1ホルダ21の固定部31は、第2円筒部12の内壁12cに沿うように円筒状に形成されている。
第1ホルダ21の保持部32は、固定部31の後端31bから後方に円筒状に延設され、回転直動変換機構40の回転筒41に設けられたベアリング50の外輪51が嵌合するように形成されている。また、保持部32の後端32bは、ベアリング50の外輪51を保持部32に嵌合させた状態において外輪51からはみ出すよう寸法とされ、保持部32の後端32bを外輪51に対してかしめることができるように構成されている。
【0035】
第1ホルダ21の接続部34は、固定部31の前端31aから円筒状に延設され、ハウジング10の貫通穴14に嵌合するように形成されている。また、接続部34には、図5に示す治具70の受部71が挿脱することができる寸法とされている嵌合穴35が形成されている。
【0036】
治具70は、第1ホルダ21に保持された回転直動変換機構40の回転筒41にロータ29を装着する際に用いられる治具であり、この接続部34の嵌合穴35に受部71を挿入してこの受部71を回転筒41の前端41aに当てることにより、回転筒41にロータ29を装着する際に回転筒41に加わる押圧力を受け止めるものである。
【0037】
第2ホルダ22は、第1ホルダ21の嵌合穴35に嵌合するものであり、この第2ホルダ22には、当該嵌合穴35に嵌合した状態で回転直動変換アクチュエータ1の中心軸CLと同軸となる挿通穴38が設けられている。挿通穴38は、サンシャフト42が挿通できる寸法とされている。また、第2ホルダ22の挿通穴38には、サンシャフト42に設けられた溝と噛み合うように溝が形成され、所謂スプライン嵌合するように構成されている。
【0038】
回転直動変換機構40の内部には、回転筒141の内面に設けられたギアとサンシャフト142の外面に設けられたギアとが相互に噛み合う噛み合い部が設けられている。例えば、回転直動変換機構40は遊星差動ネジ型で構成され、内面にネジを有する回転筒41と、回転筒41のネジに噛合するネジを有し回転筒41の内側に複数配置されるプラネタリシャフトと、プラネタリシャフトのネジと噛合するネジを有するサンシャフト42とを備えた構成とされる。
【0039】
また、回転直動変換機構40の回転筒41には、スナップリング43によりベアリング50の内輪52が固定されている。さらに、回転直動変換機構40の回転筒41には、この回転直動変換機構40とは別のものとして形成されるロータ29がステータ28に対向するように設けられている。そして、回転直動変換機構40のサンシャフト42の軸が、回転直動変換アクチュエータ1の中心軸CLに一致するように、回転直動変換機構40がハウジング10内に収容され、保持部32により保持されている。
【0040】
また、サンシャフト42には、ストッパ44とコネクタ47が設けられている。ストッパ44は、ハウジング10内に配置されており、サンシャフト42が設定範囲を超えて移動することを防止している。コネクタ47はハウジング10の外側に配置され、サンシャフト42とアクチュエータのコントロールシャフトとを連結するために用いられる。
【0041】
次に、回転直動変換アクチュエータ1の製造方法について説明する。
まずは、上記構成の第1ホルダ21及び第2ホルダ22を用意する。そして次に、第1ホルダ21をハウジング10に装着する。具体的には、ハウジング10の貫通穴14に第1ホルダ21の接続部34を嵌め込めつつ、第1ホルダ21の固定部31がハウジング10の第2円筒部12の内壁12cに当接するように、第1ホルダ21をハウジング10に装着する。なお、このとき、第1ホルダ21の嵌合穴35には第2ホルダ22は取り付けられていない。
【0042】
次に、図2に示すように、回転直動変換機構40を第1ホルダ21の保持部32に装着する。具体的には、回転直動変換機構40に取り付けられたベアリング50の外輪51を第1ホルダ21の保持部32に当接させ、保持部32の後端32bがはみ出すまで回転直動変換機構40を押し込む。
【0043】
続いて、図3及び図4に示すように、ローラ81を備えたかしめ治具80を用いて、保持部32とベアリング50の外輪51とを締結する。具体的には、ローラ81により保持部32の後端32bを押圧しつつ変形させる。なお、かしめ治具80を用いて行う保持部32とベアリング50の外輪51との締結は、ハウジング10と第1ホルダ21をクランプ治具により固定して行われる。
【0044】
この後、図5及び図6に示すように、ロータ29を回転直動変換機構40に圧入する。具体的には、接続部34の嵌合穴35を介してハウジング10の内部に治具70の受部71を挿し入れて、この受部71を回転直動変換機構40の回転筒41の前端41aに押し当てる。そして、このような状態で、回転直動変換機構40の後方からロータ29を圧入する。このとき、回転直動変換機構40に加わる押圧力は治具70に受け止められる。ロータ29の圧入後は、治具70を外して第2ホルダ22を接続部34の嵌合穴35に嵌め込む。
【0045】
本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1及びその製造方法によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(1)本実施形態に係る回転直動変換アクチュエータ1は、回転筒41に入力される力により運動の変換を行うものである。具体的には、回転筒41の回転をサンシャフト42の直動に変換する回転直動変換機構40と、この回転直動変換機構40が配置される空間を有するハウジング10とを備えている。さらに、回転直動変換機構40をこのハウジング10に対して回転可能な状態にて保持するホルダ20と、回転直動変換機構40とは別のものとして形成されて回転直動変換機構40に取り付けられるロータ29とを備えている。このホルダ20は、当該ホルダ20自体をハウジング10に固定する固定部31と、回転直動変換機構40を回転可能な状態にて保持する保持部32と、サンシャフト42と対応するところに設けられてサンシャフト42が通過する開口部33と、この開口部33を固定部31に接続する接続部34とを含めて構成されるものである。サンシャフト42は、その先端が開口部33を介してハウジング10の外部に突出している。ロータ29は、回転直動変換機構40において保持部32に対して開口部33とは反対側に位置するところに設けられている。
【0046】
さらに、ホルダ20は、固定部31及び保持部32及び接続部34を含む第1ホルダ21と、開口部33を含む第2ホルダ22とが各別に形成されてなり、また第2ホルダ22が第1ホルダ21の接続部34に取り付けられて回転筒41と対向した状態にて構成されるものである。
【0047】
このような構成によれば、当該回転直動変換アクチュエータ1を組み立てる工程において回転筒41にロータ29を取り付ける際、まずは第1ホルダ21の接続部34から第2ホルダ22を取り外した状態に維持し、次に回転筒41を支持するための治具70をこの接続部34にある嵌合穴35の空間を介してハウジング10内に挿入することができる。したがって、この治具70により回転筒41を的確に支持した状態のもとでロータ29を回転筒41に取り付けることが可能となるため、ロータ29の取り付けに起因して回転直動変換機構40の噛み合い部に過度に大きな負荷がかかることを的確に抑制することができるようになる。
【0048】
(2)また、第1ホルダ21の接続部34は、第2ホルダ22を取り付けるための空間としての嵌合穴35が形成されているものである。そして、この空間は、ロータ29を回転直動変換機構40に取り付ける作業が行われる際に回転筒41をサンシャフト42の先端側から支持する治具70について、この治具70が第2ホルダ22の取り付けられる前の当該空間を介してハウジング10の外部から内部に移動することを許容するものである。したがって、接続部34に形成された空間を介して回転筒41をサンシャフト42の先端側から支持する治具70をハウジング10の外部から内部に確実に移動させることができる。
【0049】
(3)また、第1ホルダ21の保持部32は、回転直動変換機構40との間に設けられるベアリング50を介して回転直動変換機構40を回転可能な状態に保持するものであり、ベアリング50は、その外輪51が保持部32に対してかしめにより固定されるものである。したがって、ベアリング50の外輪51を保持部32に対して固定するうえでそのための別途の要素が必要とされることはないため、例えばベアリング50を保持するための構成として保持部32にナットを設けた場合と比較して、保持部32の軽量化を図ることができるようになる。
【0050】
(4)本実施形態に係る製造方法では、まず、ホルダ20を用意した後、第2ホルダ22を第1ホルダ21の接続部34から取り外した状態にて、接続部34において第2ホルダ22を取り付けるための空間である嵌合穴35を介して、ハウジング10の外部から内部に治具70の一部を挿入し、この治具70により回転筒41をサンシャフト42の先端側から支持する。さらに、治具70により回転筒41を支持した状態のもと、回転筒41において第1ホルダ21の保持部32に対して治具70とは反対側からロータ29を取り付ける。すなわち、回転直動変換アクチュエータ1を組み立てる工程において回転筒41にロータ29を取り付ける際、治具70により回転筒41を的確に支持した状態のもとでロータ29の回転筒41への取り付けを行うことができる。したがって、ロータ29の取り付けに起因して回転直動変換機構40の噛み合い部に過度に大きな負荷がかかることを抑制することができるようになる。
【0051】
(第2実施形態)
図7を参照して、本発明の回転直動変換アクチュエータ1を具体化した第2実施形態について説明する。
【0052】
本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1は、上記の第1実施形態の第2ホルダ22の構造が異なるものとして構成されている。なお、本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1について、以下で説明する点以外は実質的に上記の第1実施形態の回転直動変換アクチュエータ1と同様の構成である。
【0053】
本実施形態では、サンシャフト42には、第2ホルダ22の開口部33と対向する状態にてこのサンシャフト42とともに軸方向に移動するコネクタ47が設けられている。このようなコネクタ47はサンシャフト42の側面に対して突出して設けられることとなる。そのため、回転直動変換アクチュエータ1の駆動中においてサンシャフト42の移動にともない第2ホルダ22がコネクタ47により押されてこの第2ホルダ22を軸方向に移動させる力が加えられたときには、第2ホルダ22が第1ホルダ21から離脱することもある。
【0054】
そこで、回転直動変換アクチュエータ1において、第2ホルダ22には、その前端22aの外周に、第2ホルダ22自体の移動を規制する保持規制部としてのフランジ39が設けられ、このフランジ39は、第2ホルダ22が第1ホルダ21の嵌合穴35に嵌合させた状態において接続部34の前面34aに当接するように構成されている。具体的には、フランジ39は、その外径が接続部34の嵌合穴35の直径よりも大きくされるとともに接続部34とコネクタ47との間に配置され、フランジ39が接続部34の前面34aに当接したときに第2ホルダ22が奥に移動しない構成とされている。
【0055】
本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(5)本実施形態では、サンシャフト42の突出部と第1ホルダ21の接続部34との間に位置するフランジ39が第2ホルダ22に設けられている。したがって、サンシャフト42とともにコネクタ47が第2ホルダ22の開口部33に近接する方向に移動するにともない第2ホルダ22がコネクタ47により押される際、このフランジ39が第1ホルダ21の接続部34と接触することにより、第2ホルダ22全体のそれ以上の移動を規制することができる。これにより、第2ホルダ22が第1ホルダ21から離脱することを抑制することができるようになる。
【0056】
(6)また、フランジ39を第2ホルダ22に設ける構成としていることにより、サンシャフト42のコネクタ47に格別の変更を加えなくとも、第1ホルダ21からの第2ホルダ22の離脱を抑制することができる。
【0057】
(第3実施形態)
図8を参照して、本発明の回転直動変換アクチュエータを具体化した第3実施形態について説明する。
【0058】
本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1は、上記の第1実施形態の第2ホルダ22の構造が異なるものとして構成されている。なお、本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1について、以下で説明する点以外は実質的に上記の第1実施形態の回転直動変換アクチュエータ1と同様の構成である。
【0059】
本実施形態では、サンシャフト42に、第2ホルダ22の開口部33と対向する状態にてこのサンシャフト42とともに軸方向に移動するストッパ44が設けられている。このようなストッパ44はサンシャフト42の側面に対して突出して設けられることとなる。そのため、回転直動変換アクチュエータ1の駆動中においてサンシャフト42の移動にともない第2ホルダ22の開口部33がストッパ44により押され第2ホルダ22を軸方向に移動させる力が加えられたときには、第2ホルダ22が第1ホルダ21から離脱することもある。
【0060】
そこで、回転直動変換アクチュエータ1において、第2ホルダ22は、嵌合穴35からの抜けを防止するものとして、当該第2ホルダ22を嵌合穴35に嵌合させた状態において第2ホルダ22の後面22fが嵌合穴35から突出しないように構成されている。すなわち、第2ホルダ22は、この第2ホルダ22を接続部34の嵌合穴35に嵌合した状態においてストッパ44と対向する後面22fが、接続部34においてストッパ44と対向する後面34fよりも、ストッパ44から離れたところに設けられるものとして、構成されている。
【0061】
具体的には、第2ホルダ22は、フランジ39を接続部34の前面34aに当接するまで押し込んだ状態において、第2ホルダ22は、サンシャフト42のストッパ44と対向する後面22fが第1ホルダ21の接続部34に設けられた嵌合穴35の空間内に位置するように構成されている。なお、第2ホルダ22の前端には、図8に示すように、その外周にフランジ39が設けることが好ましい。
【0062】
本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1及びその製造方法によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(7)本実施形態では、第2ホルダ22の開口部33は、サンシャフト42のストッパ44と対向する後面22fが、第1ホルダ21の接続部34においてストッパ44と対向する後面34fよりもストッパ44から離れたところに設けられるものとして構成されている。このように接続部34の後面34f及び第2ホルダ22の後面22fの位置関係が設定されているため、サンシャフト42の移動にともないストッパ44が第2ホルダ22に近接する方向に移動した際に、ストッパ44が接続部34の後面34fに接触してストッパ44と第2ホルダ22との接触が回避される。これにより、第2ホルダ22が第1ホルダ21から離脱することを抑制することができるようになる。
【0063】
(8)具体的には、サンシャフト42のストッパ44と対向する後面22fが第1ホルダ21の接続部34に設けられた嵌合穴35の空間内に位置するように第2ホルダ22が構成され、第1ホルダ21の接続部34の後面34fが第2ホルダ22の後面22fよりもストッパ44に近いところに設定されている。したがって、サンシャフト42のストッパ44に格別の変更を加えなくとも、第1ホルダ21からの第2ホルダ22の離脱を抑制することができるようになる。
【0064】
(第4実施形態)
図9を参照して、本発明の回転直動変換アクチュエータを具体化した第4実施形態について説明する。
【0065】
本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1は、上記の第1実施形態のストッパ44の構造が異なるものとして構成されている。なお、本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1について、以下で説明する点以外は実質的に上記の第1実施形態の回転直動変換アクチュエータ1と同様の構成である。
【0066】
本実施形態では、サンシャフト42には、第2ホルダ22の開口部33と対向する状態にてこのサンシャフト42とともに軸方向に移動するストッパ44が設けられている。一方、第3実施形態の場合と異なり、第2ホルダ22は、この第2ホルダ22を嵌合穴35に嵌合させた状態で第2ホルダ22の後端22bが嵌合穴35から突出するものとして構成とされている。この場合は、第3実施形態と同様の効果は奏しないため、回転直動変換アクチュエータ1の駆動中において第2ホルダ22の開口部33がストッパ44により押された場合には、第2ホルダ22が第1ホルダ21から離脱する虞がある。
【0067】
そこで、第2ホルダ22を嵌合穴35に嵌合させた状態において第2ホルダ22の後端22bが嵌合穴35から突出する第2ホルダ22に対して、ストッパ44と第2ホルダ22との衝突を回避するための軸規制部を構成するものとして、ストッパ44を次のように構成している。すなわち、ストッパ44には当接部45が設けられている。この当接部45は、ストッパ44がサンシャフト42とともに移動し第2ホルダ22に接近した際に、嵌合穴35から突出した第2ホルダ22の後端22bとストッパ44とが接触する前に、接続部34の後面34fに当接するように構成されている。具体的には、当接部45は、サンシャフト42のストッパ44における接続部34に対向する端面44aから同接続部34に向けて突出し、サンシャフト42が第2ホルダ22に近接する方向に移動する際にストッパ44の本体が第2ホルダ22に接触するよりも先に接続部34に接触するものとして構成されている。
【0068】
本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1及びその製造方法によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(9)本実施形態では、ストッパ44と第2ホルダ22との接触を回避する当接部45が設けられている。これにより、サンシャフト42とともにストッパ44が第2ホルダ22の開口部33に近接する方向に移動した際、当接部45によりストッパの本体44bと開口部33との接触が回避されることとなる。したがって、第2ホルダ22が第1ホルダ21から離脱することを抑制することができるようになる。
【0069】
(10)具体的には、当接部45は、ストッパにおける第1ホルダ21の接続部34側に対向する端面44aから同接続部34に向けて突出し、サンシャフト42が第2ホルダ22に近接する方向に移動する際に、ストッパ44の本体44bが第2ホルダ22に接触するよりも先に接続部34に接触するものとして構成されている。この構成により、サンシャフト42のストッパ44と第2ホルダ22との接触が回避されるので、第2ホルダ22に格別の変更を加えなくとも、第1ホルダ21からの第2ホルダ22の離脱を抑制することができるようになる。
【0070】
(第5実施形態)
図10及び図11を参照して、本発明の回転直動変換アクチュエータ及びその製造方法を具体化した第5実施形態について説明する。
【0071】
本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1の製造方法は、上記の第2実施形態における保持部32のかしめの方法が異なるものとして構成されている。なお、本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1の製造方法について、以下で説明する点以外は実質的に上記の第2実施形態の回転直動変換アクチュエータ1と同様の構成である。
【0072】
回転直動変換機構40の回転筒41には、回転筒41の回転運動による力やサンシャフト42の直線運動による力等、力が多方向から加わるため、保持部32における回転直動変換機構40の固定、すなわち保持部32とベアリング50の外輪51とのかしめによる固定は、確実に行う必要がある。
【0073】
図10を参照して、かしめによる残留軸力の発生のメカニズムを説明する。同図は、外輪51と保持部32との締結状態における残留軸力を示している。
かしめによる締結状態は、ベアリング50の外輪51の弾性変形による力と、かしめにより塑性変形した状態からの保持部32の弾性変形による力との均衡により維持される。
【0074】
具体的には、外輪51は、かしめの圧縮荷重により変形特性曲線に沿って変位する。また、かしめによる押圧力が開放された時には、外輪51は元の形状に戻ろうとして除荷特性曲線に沿って復元する(「ベアリング外輪の変形特性線」及び「ベアリング外輪の除荷特性曲線」を参照。)。保持部32は、かしめによる圧縮荷重が所定値を超えたときに外輪51に沿って塑性変形し、さらに塑性変形した状態からかしめ治具と外輪51との間にある当該保持部32の先端部分が弾性的に変形する。また、かしめによる押圧力が開放された時、保持部32は、塑性変形した形状に復元として除荷特性曲線に沿って復元する(「保持部の変形特性線」及び「保持除荷特性曲線」を参照。)。
【0075】
保持部32が塑性変形状態にまで復元する際の変位量は、外輪51の復元による変位量よりも小さい。したがって、かしめによる押圧力が開放された時、保持部32と外輪51とが互いに押圧し合うこととなり、これにより残留軸力が発生し両部材の締結力が生じることとなる。残留軸力が大きい程、両部材の締結力が大きくなるので、残留軸力を大きくするためには、外輪51の変位が高い状態において外輪51と保持部32とが互いに押圧し合うことが必要となる。すなわち、保持部32を塑性変形させた後に除荷した際における保持部32の変位の戻り量を少なくすることで、残留軸力を高めることができる。
【0076】
ここで、保持部32の塑性変形の際の戻りを少なくする方法の一例を次に挙げる。
図11には、当接面82に角度をつけたローラ81を有したかしめ治具80が示されている。すなわち、保持部32の変形後に予定されている外形に対し、この外形を超えて変形させうる角度に設定されている。具体的には、保持部32の変形後の外形はベアリング50の外輪51に沿った形状とされるので、通常は、ローラ81の角度は90度でとされるが、本実施形態では、ローラ81の当接面82は90度未満の角度とされる。そして、回転直動変換アクチュエータ1の製造工程において、保持部32とベアリング50の外輪51とを締結する際に、上記のローラ81を備えたかしめ治具80により保持部32を塑性変形させる。
【0077】
本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1及びその製造方法によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(11)本実施形態では、ローラ81の当接面82は、保持部32の変形後に予定されている外形に対し、この外形を超えて変形させうる角度に設定されている。従って、かしめの際における保持部32の後端32bへの押圧力を増大させることができ、これにより、第1ホルダ21の保持部32を的確に塑性変形させて、ベアリング50の外輪51と保持部32とを強固に固定することができる。
【0078】
(第6実施形態)
図12を参照して、本発明の回転直動変換アクチュエータ及びその製造方法を具体化した第6実施形態について説明する。
【0079】
回転直動変換アクチュエータ1の製造方法において用いられるかしめ治具80には、保持部32に肩部32cを形成するための肩形成部83が設けられている。肩形成部83は、保持部32の後端32bの根元部32dを塑性変形させるものとして、ローラ81の当接面82よりも外側に設けられ、ローラ81の当接面82が保持部32の後端32bを押圧するとともにその根元部32dを押圧するものとして構成されている。そして、回転直動変換アクチュエータ1の製造方法において、ローラ81に肩形成部83を備えたかしめ治具80が用いて、保持部32とベアリング50の外輪51とが締結される。
【0080】
本実施形態の回転直動変換アクチュエータ1及びその製造方法によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(12)本実施形態では、かしめ治具80にはローラ81の肩形成部83が設けられている。このかしめ治具80により保持部32を変形させるとき、ローラ81の肩形成部83は、保持部32の後端の根元部32dに接触し、根元部32dを外輪51側に押し付けるように押圧し、保持部32に肩部32cを形成する。このような保持部32の変形の際、根元部32dは肩形成部83により外輪51に押し付けられるため、保持部32の後端32bへの押圧力の逃げを抑制することができる。したがって、第1ホルダ21の保持部32を的確に塑性変形させることができ、ベアリング50の外輪51と保持部32とを強固に固定することができる。
【0081】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記各実施形態にて例示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。
【0082】
・第2及び第3実施形態には、第2ホルダ22の第1ホルダ21からの離脱を抑制するための構成が挙げられているが、このような離脱を抑制する構成はこれらに限定されるものではない。例えば、第2ホルダ22の側面にネジを設けておき、これを嵌合穴35にねじ入れる構成としてもよい。
【0083】
・第4実施形態には、ストッパ44と第2ホルダ22との衝突を回避するための軸規制部の構成例を挙げているが、軸規制部の構成はこれに限定されない。例えば、第2ホルダ22を嵌合穴35に嵌合させた状態ときに第2ホルダ22の後端22bが嵌合穴35から突出する場合において、接続部34の嵌合穴35の周囲に、第2ホルダ22の突き出した部分よりも高い当接部を形成してもよい。すなわち、この当接部は、接続部34においてストッパ44に対向する後面34fからストッパ44に向けて突出するとともに、サンシャフト42が第2ホルダ22に近接する方向に移動する際にストッパ44の本体が第2ホルダ22に接触するよりも先にこの当接部に接触するものとして構成されている。
【0084】
・上記各実施形態では、保持部32は、ベアリング50の外形に沿って塑性変形させているが、ベアリング50の外形はこれに限定されるものではない。
例えば、図13のように、ベアリング50の外輪51に段差53を設けておき、保持部32を塑性変形させたときに、この段差53に、保持部32の後端32bが係合するように構成してもよい。
【0085】
・上記各実施形態では、ベアリング50の外輪51と保持部32とをかしめにより締結する例を挙げているが、本発明におけるベアリング50の外輪51と保持部32との締結はこれに限定されるものではない。
【0086】
・上記各実施形態では、回転直動変換機構40は、ベアリング50を介して保持されているが、ベアリング50を介さず保持されるように構成してもよい。例えば、第1ホルダ21の保持部32による回転直動変換機構40の回転筒41の保持構造はすべり軸受により構成してもよい。
【0087】
・上記各実施形態では、回転直動変換機構40は、遊星差動ネジ型の回転直動変換機構により構成されているが、これに限定されない。
・上記各実施形態では、回転直動変換機構40として、回転筒41の回転によりサンシャフト42が直動する構造のものを挙げているが、本発明は、このような構造を有する回転直動変換機構40に限定されるものではなく、サンシャフトの直動により回転筒が回転する回転直動変換機構にも適用される。
【0088】
・上記各実施形態では、ロータ29としてロータ29が回転筒41に圧入される回転直動変換アクチュエータ1において、同圧入にともない回転直動変換機構40にかかる負荷を治具70により受ける製造方法を想定したが、ロータ29とは別のものがロータ29として取り付けられる場合においても同様に治具70を用いることができる。要するに、ロータ29がいずれのものであれ、これを回転直動変換機構40に取り付ける際にはロータ29を取り付ける場合と同様に回転直動変換機構40のギアやねじの噛み合い部に過度に大きな負荷がかかることが想定されるため、治具70による支持を行うことにより上記各実施形態の効果に準じた効果を奏することができる。
【0089】
・上記各実施形態では、ハウジング10と第1ホルダ21とを各別に形成し、これらを組み合わせる構成を採用したが、これらハウジング10及び第1ホルダ21を一体に形成することもできる。なおこの場合にあっても、第2ホルダ22については第1ホルダ21の接続部34とは各別に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の回転直動変換アクチュエータ及びその製造方法を具体化した第1実施形態について、同アクチュエータの断面構造を示す断面図。
【図2】同実施形態の回転直動変換アクチュエータについて、回転直動変換機構をハウジングに装着する際の状態を示す断面図。
【図3】同実施形態の回転直動変換アクチュエータについて、保持部と外輪を締結する前の状態を示す断面図。
【図4】同実施形態の回転直動変換アクチュエータについて、保持部と外輪を締結した後の状態を示す断面図。
【図5】同実施形態の回転直動変換アクチュエータについて、ロータを回転筒に圧入する状態を示す断面図。
【図6】同実施形態の回転直動変換アクチュエータについて、第2ホルダを嵌合穴に嵌め込む状態を示す断面図。
【図7】本発明の回転直動変換アクチュエータを具体化した第2実施形態について、サンシャフト周辺の断面構造を示す断面図。
【図8】本発明の回転直動変換アクチュエータを具体化した第3実施形態について、サンシャフト周辺の断面構造を示す断面図。
【図9】本発明の回転直動変換アクチュエータを具体化した第4実施形態について、サンシャフト周辺の断面構造を示す断面図。
【図10】本発明の回転直動変換アクチュエータ及びその製造方法を具体化した第5実施形態について、転がり軸受の外輪及びホルダの保持部をかしめる際のそれぞれの変形量と圧縮荷重との関係を示すグラフ。
【図11】同実施形態の回転直動変換アクチュエータについて、保持部と外輪とをかしめる際の状態を示す断面図。
【図12】本発明の回転直動変換アクチュエータ及びその製造方法を具体化した第6実施形態について、保持部と外輪とをかしめる際の状態を示す断面図。
【図13】本発明の回転直動変換アクチュエータ及びその製造方法を具体化したその他の実施形態について、ベアリング及びその周辺の断面構造を示す断面図。
【図14】従来の回転直動変換アクチュエータについてその断面構造を示す断面図。
【図15】同従来の回転直動変換アクチュエータについて、ロータを回転筒に装着する際の状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0091】
1…回転直動変換アクチュエータ、10…ハウジング(装置本体)、11…第1円筒部、11b,12b…後端、11c,12c…内壁、12…第2円筒部、12a…前端部、
14…貫通穴、15…キャップ、20…ホルダ(保持要素)、21…第1ホルダ(第1保持要素)、22…第2ホルダ(第2保持要素)、22a…前端、22b…後端、22f…後面(端面)、28…ステータ、29…ロータ(補助要素)、31…固定部、31a…前端、31b…後端、32…保持部、32b…後端、32c…肩部、32d…根元部、34…接続部、34a…前面、34f…後面(端面)、35…嵌合穴、38…挿通穴、39…フランジ、40…回転直動変換機構、41…回転筒、41a…前端、42…サンシャフト(直動軸)、43…スナップリング、44…ストッパ(突出部)、44a…端面、44b…ストッパの本体、45…当接部(軸規制部)、47…コネクタ(突出部)、50…ベアリング(転がり軸受)、51…外輪、52…内輪、53…段差、70…治具、71…受部、80…かしめ治具、81…ローラ、82…当接面、83…肩形成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転筒の回転を直動軸の直動にまたは直動軸の直動を回転筒の回転に変換する回転直動変換機構と、この変換機構が配置される空間を有する装置本体と、前記回転直動変換機構をこの装置本体に対して回転可能な状態にて保持する保持要素と、前記回転直動変換機構とは別のものとして形成されて同変換機構に取り付けられる補助要素とを備え、前記保持要素は、当該要素を前記装置本体に固定する固定部と、前記回転直動変換機構を回転可能な状態にて保持する保持部と、前記直動軸と対応するところに設けられて前記直動軸が通過する開口部と、この開口部を前記固定部に接続する接続部とを含めて構成されるものであり、前記直動軸は、その先端が前記開口部を介して前記装置本体の外部に突出するものであり、前記補助要素は、前記回転直動変換機構において前記保持部に対して前記開口部側とは反対側に位置するところに設けられるものであり、前記回転筒または前記直動軸に入力される力により運動の変換を行う回転直動変換アクチュエータにおいて、
前記保持要素は、前記固定部及び前記保持部及び前記接続部を含む第1保持要素と、前記開口部を含む第2保持要素とが各別に形成されて、この第2保持要素が前記第1保持要素の接続部に取り付けられて前記回転筒と対向した状態にて構成されるものである
ことを特徴とする回転直動変換アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、
前記第1保持要素の接続部は、前記第2保持要素を取り付けるための空間が形成されるものであり、この空間は、前記補助要素を前記回転直動変換機構に取り付ける作業が行われる際に前記回転筒を前記直動軸の先端側から支持する治具について、この治具が前記第2保持要素の取り付けられる前の当該空間を介して前記装置本体の外部から内部に移動することを許容するものである
ことを特徴とする回転直動変換アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、
前記直動軸は、前記第2保持要素の開口部と対向する状態にて当該軸とともに軸方向に移動する突出部が設けられるものであり、
前記第2保持要素は、前記直動軸の突出部と前記第1保持要素の接続部との間に位置する保持規制部が設けられるものである
ことを特徴とする回転直動変換アクチュエータ。
【請求項4】
請求項3に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、
前記第2保持要素は、前記開口部が筒状に形成されるとともにこの開口部の端部に前記保持規制部としてのフランジが設けられるものである
ことを特徴とする回転直動変換アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、
前記直動軸は、前記第2保持要素の開口部と対向する状態にて当該軸とともに軸方向に移動する突出部が設けられるものであり、
前記第2保持要素は、前記直動軸の突出部と対向する端面が前記第1保持要素の接続部において前記突出部と対向する端面よりも前記突出部から離れたところに設けられるものである
ことを特徴とする回転直動変換アクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、
前記第2保持要素は、前記直動軸の突出部と対向する端面が前記第1保持要素の接続部に設けられた空間内に位置するものである
ことを特徴とする回転直動変換アクチュエータ。
【請求項7】
請求項1または2に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、
前記直動軸は、前記第2保持要素と対向する状態にて当該軸とともに軸方向に移動する突出部と、この突出部と前記第2保持要素との接触を回避する軸規制部とが設けられるものである
ことを特徴とする回転直動変換アクチュエータ。
【請求項8】
請求項7に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、
前記軸規制部は、前記直動軸の突出部において前記第1保持要素の接続部側にある端面から同接続部に向けて突出するものであり、前記直動軸が前記第2保持要素に近接する方向に移動する際に前記突出部よりも先に前記接続部に接触するものである
ことを特徴とする回転直動変換アクチュエータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の回転直動変換アクチュエータにおいて、
前記第1保持要素の保持部は、前記回転直動変換機構との間に設けられる転がり軸受を介して同変換機構を回転可能な状態に保持するものであり、
前記転がり軸受は、その外輪が前記保持部に対してかしめにより固定されるものである
ことを特徴とする回転直動変換アクチュエータ。
【請求項10】
回転筒の回転を直動軸の直動にまたは直動軸の直動を回転筒の回転に変換する回転直動変換機構と、この変換機構が配置される空間を有する装置本体と、前記回転直動変換機構をこの装置本体に対して回転可能な状態にて保持する保持要素と、前記回転直動変換機構とは別のものとして形成されて同変換機構に取り付けられる補助要素とを備え、前記保持要素は、当該要素を前記装置本体に固定する固定部と、前記回転直動変換機構を回転可能な状態にて保持する保持部と、前記直動軸と対応するところに設けられて前記直動軸が通過する開口部と、この開口部を前記固定部に接続する接続部とを含めて構成されるものであり、前記直動軸は、その先端が前記開口部を介して前記装置本体の外部に突出するものであり、前記補助要素は、前記回転直動変換機構において前記保持部に対して前記開口部側とは反対側に位置するところに設けられるものであり、前記回転筒または前記直動軸に入力される力により運動の変換を行う回転直動変換アクチュエータの製造方法において、
前記保持要素として、前記固定部及び前記保持部及び前記接続部を含む第1保持要素と前記開口部を含む第2保持要素とが各別に形成され、この第2保持要素が前記第1保持要素の接続部に取り付けられることにともない前記回転筒と対向するものを用意する工程Aと、
前記第2保持要素を前記第1保持要素の接続部から取り外した状態にて、前記接続部において前記第2保持要素を取り付けるための空間を介して前記装置本体の外部から内部に治具の一部を挿入し、この治具により前記回転筒を前記直動軸の先端側から支持する工程Bと、
前記治具により前記回転筒を支持した状態のもと、前記回転筒において前記第1保持要素の保持部に対して前記治具とは反対側から前記補助要素を取り付ける工程Cとを備える
ことを特徴とする回転直動変換アクチュエータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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