説明

回転翼式気泡発生装置

【課題】 必要動力が少なく、適用できる液体が広範囲であり、メンテナンスが容易で、気泡サイズを広範囲に設定することのできる回転翼式気泡発生装置を提供する。
【解決手段】 液体中に気泡として散気するためのガスを流入するガス流入管3と、中空部22を備えて前記ガス流入管3に連通されているとともに前記液体中で円運動する回転翼2と、この回転翼2の円運動により当該回転翼2の表面上に減圧状態を生じさせる減圧面21と、前記回転翼2の中空部22から減圧面21にかけて形成されて前記ガスを前記液体中に散気するための散気孔23と、前記減圧面21の圧力が前記中空部22内の気圧以下になるように前記回転翼2を円運動させる回転手段4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に気泡を発生させる回転翼式気泡発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、気泡は様々な産業分野で利用されている。例えば、気液界面の化学反応や生化学反応を利用した金属精錬や下水浄化システム、気泡の浮力を利用したダム、湖水、港湾施設の自然循環等の産業分野で利用されている。
【0003】
また、これまでに液体中に気泡を発生させる方法や、発生させた気泡を微細化させる方法が種々提案されている。例えば、空気を水に加圧溶解させておき、その水を減圧手段で圧力開放することにより大量の微小気泡を発生させる加圧溶解法、流体を旋回させてその剪断力により気泡を分裂させるスワール法、コンプレッサーやブロアーで加圧した空気を多孔板から放出させることで気泡を発生させる多孔板法等が挙げられる。
【0004】
また、加圧溶解法とスワール法とを合わせた発明として、特開2008−307510号公報では、吐出ノズルに空気を加圧溶解させた水を流す流路が設けられ、この流路の一部で水に旋回流を起こさせる旋回流生成手段が設けられた微細気泡発生装置が提案されている(特許文献1)。この特許文献1に記載の発明によれば、旋回流の中心部に形成される低圧部によって、溶解された空気が柱状の気泡となって生成されるとともに、旋回流の下流側端部で、その発生させた柱状の気泡が砕かれ、分裂して細かい気泡を発生させることができるとされている。
【0005】
さらに、多孔板法を用いた発明として、特開平9−309485号公報では、船体の側面に、多数の小孔状の空気吹き出し口を開口させて、この空気吹き出し口より加圧空気を水中へ吹き出させて微小気泡を発生させる摩擦抵抗低減船の微小気泡発生用空気吹き出し器が提案されている(特許文献2)。この特許文献2に記載の発明によれば、前記空気吹き出し口を多角形状とすることにより、空気吹き出し口の部分から微小気泡を容易に、かつ安定して発生させることができるとされている。
【0006】
また、その他の気泡発生装置に関する発明として、特開2000−107792号公報では、処理槽内の廃水に浸漬した攪拌機のプロペラ翼面に、ブロアー等の給気装置から供給された空気を気泡として放出する散気孔を設けた散気・撹拌装置が提案されている(特許文献3)。この特許文献3に記載の発明によれば、前記散気孔が前記プロペラ翼の背面の前縁部付近における負圧側に開口させることにより、前記給気装置による加圧力を低減することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−307510号公報
【特許文献2】特開平9−309485号公報
【特許文献3】特開2000−107792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された発明を含む従来の気泡発生装置に関する発明では、気泡を発生させるためのエネルギーを度外視してきたという問題がある。すなわち、特許文献1に記載の発明では、水に空気を加圧溶解させる圧力エネルギーや水を旋回させるためのエネルギーが膨大であったし、特許文献2に記載の発明では、加圧された空気を吹き出させるためのコンプレッサーやブロアーによるエネルギーが膨大であった。そのため、従来の気泡発生装置ではランニングコストが高く、費用対効果の観点から普及が遅れている分野が多々存在していた。
【0009】
また、特許文献1に記載の発明では、金属精錬等の空気を溶解させることが困難な液体や牛乳等の液体食品のように空気を溶解させることにより変性してしまう液体には使用することができない。さらに、特許文献2に記載の発明では、多孔板を頻繁に清掃や交換する必要があり、メンテナンスが大変である。
【0010】
また、特許文献3に記載の発明では、各散気孔の圧力差により気泡の発生に偏りが生じるという問題がある。すなわち、散気孔がプロペラ翼の回転半径方向に並列されているため、プロペラ翼が回転した際の各散気孔における周速が異なり、相対的に外側の圧力が低くなって、外側の散気孔のみから気泡が発生してしまう。
【0011】
さらに、特許文献3に記載の発明は、液体を撹拌させながら気泡を発生させる装置において、気泡発生に必要な給気装置による加圧力の抑制を目的としたものであって、撹拌を必要としない液体に使用することができない。また、前記プロペラ翼の回転に使用されるエネルギーの多くが撹拌のための流体エネルギーとして消費され、前記加圧力の抑制に対するエネルギーにはわずかな一部しか使用されない。したがって、気泡を発生させるためのエネルギー効率が悪い。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、必要動力が少なく、適用できる液体が広範囲であり、メンテナンスが容易で、気泡サイズを広範囲に設定することのできる回転翼式気泡発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る回転翼式気泡発生装置は、液体中に気泡として散気するためのガスを流入するガス流入管と、中空部を備えて前記ガス流入管に連通されているとともに前記液体中で円運動する回転翼と、この回転翼の円運動により当該回転翼の表面上に減圧状態を生じさせる減圧面と、前記回転翼の中空部から減圧面にかけて形成されて前記ガスを前記液体中に散気するための散気孔と、前記減圧面の圧力が前記中空部内の気圧以下になるように前記回転翼を円運動させる回転手段とを有する。
【0014】
また、本発明の一形態として、前記回転翼は、その表面を前記円運動の軌道よりも突出させることにより前記減圧面を構成している。
【0015】
さらに、本発明の一形態として、前記回転翼の形状が前記円運動の軌道よりも遠心側に凸状に形成されている。
【0016】
さらにまた、本発明の一形態として、前記回転翼の形状が前記円運動の軌道よりも求心側に凸状に形成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、必要動力が少なく、適用できる液体が広範囲であり、メンテナンスが容易で、気泡サイズを広範囲に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る回転翼式気泡発生装置の一実施形態の全体構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態の回転翼を示す断面図である。
【図3】他の実施形態の回転翼を示す断面図である。
【図4】本実施形態の回転翼式気泡発生装置の全体構成を示す平面図である。
【図5】本実施形態の回転翼式気泡発生装置において、数式3に基づき、圧力係数Cが1.4である場合の臨界周速Ucと水深Hとの関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る回転翼式気泡発生装置の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の回転翼式気泡発生装置1の全体構成を示す模式図である。
【0020】
本実施形態における回転翼式気泡発生装置1は、主に、回転翼2と、ガス流入管3と、回転手段4とから構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0021】
回転翼2は、液体中で円運動することにより表面上に減圧状態を生じさせる減圧面21を有している。また、図2に示すように、回転翼2の内部には中空部22が形成されているとともに、この中空部22から前記減圧面21にかけて多数の散気孔23が形成されている。これにより、回転翼2の減圧面21から多数の気泡を発生させられるようになっている。
【0022】
また、回転翼2の形状は、円運動により減圧面21を生じさせられるものであれば特に限定されるものではなく、適宜選択してよい。例えば、流線型、涙滴型、弾丸型、楕円型等いずれの形状でもよく球形であってもよい。また、翼形状のものや平板状のものに迎角を設けることにより減圧面21を構成してもよい。さらに、二次元翼、三次元翼どちらでも構わないし、対称翼、非対称翼どちらでも構わない。
【0023】
なお、回転翼2の円運動に要する動力を抑制し、気泡の発生効率を向上させるために、回転翼2は、揚力係数Cと抗力係数Cの比である揚抗比C/Cの大きい形状のものを選択することが望ましい。
【0024】
本実施形態における回転翼2は、図2に示すように、抗力Cを抑制するために、当該回転翼2の求心側を円運動の軌道と略同一曲率の曲面形状とするとともに、遠心側を円運動の軌道よりも外側へ凸状に突出させた、非対称二次元翼に形成されている。よって、本実施形態の回転翼2では、遠心側の表面上に減圧面21が構成される。
【0025】
なお、減圧面21が構成される方向は遠心側に限定されるものではなく、適宜選択可能である。例えば、求心側に減圧面21を構成させるためには、図3に示すように、遠心側を円運動の軌道と略同一曲率の曲面形状とするとともに、求心側を円運動の軌道よりも内側へ凸状に突出させた回転翼2の形状にすればよい。
【0026】
また、図示しないが、前記円運動の軌道に対して遠心側と求心側の両方向に突出させて各面に減圧面21を構成してもよく、上方向や下方向に突出させて、上下面の両面又はいずれかの面に減圧面21を構成してもよい。
【0027】
さらに、遠心側や求心側といった二次元方向に突出させるのみならず、例えば遠心側と上方向等の三次元的に突出させて、三次元方向に減圧面21を構成するようにしてもよい。
【0028】
また、回転翼2の数は、単数、複数どちらでも構わないが、複数の場合、振動を抑制するため円運動の軌道上に等間隔で配置されるようにすることが望ましい。また、そのとき隣接する回転翼2の流れに影響を及ぼさない程度に間隔を設けることが望ましい。本実施形態では、図4に示すように、4枚の回転翼2を円運動の軌道上に中心軸に対して90度間隔に配置されている。
【0029】
また、中空部22は、ガス流入管3に連通されており、このガス流入管3から回転翼2内にガスを流れ込ませるための空隙であり、流れ込むガスの圧力が、散気孔23に対して均等に付与されるようにするための緩衝部分でもある。本実施形態における中空部22は、回転翼2の外形と略相似形の一回り小さな空間として形成されている。なお、散気孔23が単数である場合や散気孔23とガス流入管3とが一対一に対応している場合等においては、中空部22とガス流入管3とが一体的に構成されていてもよい。
【0030】
散気孔23は、ガス流入管3から流入してきた中空部22内のガスを液体中に散気させるための流通路であり、中空部22から減圧面21にかけて形成されている。本実施形態における散気孔23は、複数の孔により構成されているが、その数は特に限定されるものではなく、単数の孔でも構わない。また、減圧面21に多孔質部材を設けて散気孔23として構成してもよい。さらに、散気孔23の大きさは、所望する気泡の大きさに応じて任意に選択すればよい。このように散気孔23の大きさと回転翼2の回転速度を制御することにより気泡のサイズを任意に制御することが可能である。
【0031】
ガス流入管3は、パイプ状に形成されており、内部を空気等のガスを流入可能に構成されている。そして、ガス流入管3は、上述したように中空部22と連通されており、所望するガスを中空部22へと流入させるように構成されている。
【0032】
また、回転手段4は、減圧面21の圧力が中空部22内の気圧以下になるように回転翼2を円運動させるように構成されている。
【0033】
本実施形態において、上記ガス流入管3と、上記回転手段4とは一体的に形成されている。すなわち、本実施形態における回転手段4は、回転翼2を回転運動させるための動力源41と、この動力源41の回転力を伝達する伝達軸42と、この伝達軸42の回転運動を回転翼2の円運動へと変換する回転翼支持アーム43とからなり、これらのうち前記伝達軸42と前記回転翼支持アーム43はガス流入管3を兼ねている。
【0034】
本実施形態における動力源41は、回転数を任意に制御する機能を有する電気モーターからなり、液面上方に設置されている。なお、動力源41は回転運動を発揮するものから適宜選択されるものであり、例えば、レシプロエンジン、水車、風車等であってもよい。
【0035】
本実施形態における伝達軸42は、ガス流入管3として機能するために中空管部材から構成されており、その上部を動力源41に接続され、液面に対して略垂直に設けられている。また、伝達軸42の上方には、液体面よりも上にガス流入部31が設けられている。本実施形態におけるガス流入部31は、管内に連通させた複数の孔からなり、大気が流入できるように構成されている。
【0036】
本実施形態における回転翼支持アーム43は、回転翼2を円運動させるためのものであり、その基端側は前記伝達軸42の下端に固定され、先端側は前記回転翼2に固定されている。また、回転翼支持アーム43は、ガス流通管3として機能するために中空管部材から構成されており、伝達軸42と回転翼2の中空部22とを流通可能に連通している。なお、回転翼支持アーム43の先端側において、回転翼2を支持する部分に任意に迎角を付けられるような角度調節機能を有していてもよい。
【0037】
次に、本実施形態の回転翼式気泡発生装置1の各構成の作用について、図面および数式を交えながら説明する。
【0038】
回転手段4の動力源41が回転数ωで回転すると、伝達軸42および回転翼支持アーム43に連動して回転翼2が円運動を開始する。このとき、回転翼2の表面上には減圧面21が構成される。本実施形態においては、回転翼2の遠心側に減圧面21が構成される。
【0039】
このときの減圧面21における圧力pは以下の数式1によって表される。
【0040】
【数1】

【0041】
この数式1において、patmは中空部22内の圧力であって本実施形態では大気圧である。また、ρは液体の密度を、gは重力加速度を、Hは回転翼2が設けられている水深を、Rは回転翼2の円運動の回転半径を、Cは回転翼2より予め定められる圧力係数をそれぞれ表している。
【0042】
ここで、減圧面21における圧力pが中空部22内の圧力patmよりも低くなると、中空部22内のガスは、圧力の高い方から低い方へと流れ、液体中へと散気される。すなわち、気泡が発生する条件は、以下の数式2によって表される。
【0043】
【数2】

【0044】
従って、本実施形態の回転翼式気泡発生装置1では、各回転翼2の回転数が上記式2で表される臨界回転数ωよりも大きくなると、散気が開始される。同様に、上記数式2より、気泡の発生開始を示す臨界周速Uを求めると、以下の数式3で表される。
【0045】
【数3】

【0046】
この数式3に基づき、水深Hに対する臨界周速Uを算出することができる。図5は、上記数式3に回転翼2の圧力係数Cを1.4として代入した場合の臨界周速Uと水深Hとの関係を示したグラフである。
【0047】
よって、この臨界周速Uを越えると、中空部22内のガスは散気孔23から液体中へと流れだし、散気される。このとき、散気されたガスは、減圧面21上で液体の境界層内の剪断力により引きちぎられて気泡になる。さらに、回転翼2は、常に回転させておくものであるため、散気孔23に塵等が詰まるおそれがほとんどない。
【0048】
なお、ガス流入部31からは、空気が伝達軸42および回転翼支持アーム43を通して順次流入してくるため、連続的に気泡を発生させることができる。
【0049】
以上の数式1〜3に示された関係は、いかなる液体においても同様であり、本実施形態の回転翼式気泡発生装置1は、原理的に液体の種類を選ばないことを示している。よって、金属精錬、食品、下水等でも使用することができる。
【0050】
また、数式2や数式3は、回転数ωや回転半径Rの条件として物理的に製造できる範囲内であれば、いかなる水深Hでも気泡を発生させることができることを示している。
【0051】
次に、気泡発生に必要な動力について説明する。まず、動力源41の回転に使用される動力Lは、以下の数式4に示すように、動力源に作用するトルクTと動力源の回転数ωの積により表される。
【0052】
【数4】

【0053】
ここで、動力源41の内部的な動力損失を無視すれば、Lを回転翼2を回転させるための動力、Lを伝達軸42を回転させるための動力、およびLを回転翼支持アーム43を回転させるための動力とすると、以下の数式5〜8が得られる。
【0054】
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【0055】
ここで、N(またはn)は回転翼2の枚数、Aは回転翼2の表面積、Cは伝達軸42の摩擦係数、Dは伝達軸42の直径、dは回転翼支持アーム43の直径をそれぞれ示している。
【0056】
上記数式5に数式6〜8をそれぞれ代入して数式を整理すると、動力源41の回転に使用される動力Lは、以下の数式9で表される。
【0057】
【数9】

【0058】
一方、発生させた気泡を動力に換算することができる。このときの動力である気泡発生獲得動力Lは、気泡発生体積流量Qと発生位置Hでの静圧増加分の積により表され、以下の数式10として表示できる。
【0059】
【数10】

【0060】
なお、上記数式10は、従来のコンプレッサー等により直接的に気泡を発生させた場合の動力にも相当する。
【0061】
ここで、動力源41の動力Lに対する気泡発生獲得動力L(またはL)の比である気泡発生動力効率(または動力成績係数)ηを求めると、以下の数式11が得られる。
【0062】
【数11】

【0063】
上記数式11より、気泡発生動力効率ηは、回転翼2や伝達軸42、回転翼支持アーム43の寸法や形状により決定され、これらのパラメータを最適化することで、この気泡発生動力効率ηを最大化することができる。
【0064】
ここで、上記数式11の回転翼2に係る項以外の伝達軸42および回転翼支持アーム43に係る項を無視できると仮定し、さらに気泡発生体積流量Qを、以下の数式12に示すようなボイド率を使って表した場合、数式11は数式13のように表される。
【0065】
【数12】

【数13】

【0066】
ここで、上記数式13に上記数式12を代入すると、以下の気泡発生動力効率ηを示す数式14が得られる。
【0067】
【数14】

【0068】
さらに、この数式14に、上記数式3を代入すると、以下の臨界気泡発生動力効率ηを示す数式15を得ることができる。
【0069】
【数15】

【0070】
なお、この数式15における右辺は、液体が単相の場合に、回転翼2に作用する揚力Cがそのまま減圧状態を作る原因となるため、圧力係数Cと揚力係数Cとがほぼ等しくなる関係に基づいている。
【0071】
従って、上記数式15により、本実施形態の回転翼式気泡発生装置1の臨界気泡発生動力効率ηは、揚抗比C/Cに比例して増大するため、回転翼2の設計条件によって、効率が1を越えることができる。すなわち、動力源41に用いられる動力Lにより、従来のコンプレッサー等の動力Lにより直接発生させた場合の気泡よりも、多くの気泡を得ることができる。
【0072】
次に、最適化の例として動力節減率γについても説明する。この動力節減率γは、水深Hで本来必要な動力Lに対して、本実施形態の回転翼式気泡発生装置1によって削減される動力L−Lの割合を意味する。この動力節減率γは、以下の数式16によって表される。
【0073】
【数16】

【0074】
すなわち、動力節減率γは、圧力係数C、動力源41の回転数ω、回転半径Rにそれぞれ比例しており、これらのパラメータが大きいほど動力節減率γが高くなることを示している。
【0075】
以上のような本実施形態の回転翼式気泡発生装置1によれば、以下の効果を得ることができる。
1.必要な深度に応じて任意の深さHの液中で気泡を発生させることができる。特に動力が水深に影響を受けないため深い位置でも大量に気泡を発生させられる。
2.原理的には、いかなる液体でも気泡を発生させることができ、広範な分野に適用することができる。
3.発生させられる気泡のサイズについて、従来の一般的な気泡発生法によれば、例えば加圧熔解法であれば50〜200μm、スワール法であれば100μm〜1mm、多孔板法であれば200〜500μmであるところ、本実施形態の回転翼式気泡発生装置によれば、散気孔23のサイズや回転数ωの制御によって200μm〜5mmまで広範に制御可能である。
3.本実施形態の回転翼式気泡発生装置1を適宜設計することにより、従来の気泡発生装置に比べて格段に動力を低減すことができる。
4.散気孔23が汚れにくい構造であるためメンテナンスが容易である。
【符号の説明】
【0076】
1 回転翼式気泡発生装置
2 回転翼
3 ガス流入管
4 回転手段
21 減圧面
22 中空部
23 散気孔
31 ガス流入部
41 動力源
42 伝達軸
43 回転翼支持アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に気泡として散気するためのガスを流入するガス流入管と、
中空部を備えて前記ガス流入管に連通されているとともに前記液体中で円運動する回転翼と、
この回転翼の円運動により当該回転翼の表面上に減圧状態を生じさせる減圧面と、
前記回転翼の中空部から減圧面にかけて形成されて前記ガスを前記液体中に散気するための散気孔と、
前記減圧面の圧力が前記中空部内の気圧以下になるように前記回転翼を円運動させる回転手段と
を有する回転翼式気泡発生装置。
【請求項2】
前記回転翼は、その表面を前記円運動の軌道よりも突出させることにより前記減圧面を構成している請求項1に記載の回転翼式気泡発生装置。
【請求項3】
前記回転翼の形状が前記円運動の軌道よりも遠心側に凸状である請求項1または請求項2に記載の回転翼式気泡発生装置。
【請求項4】
前記回転翼の形状が前記円運動の軌道よりも求心側に凸状である請求項1または請求項2に記載の回転翼式気泡発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173076(P2011−173076A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39873(P2010−39873)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】