説明

回転角度検出装置

【課題】ステータ15に帯電した電荷を放電することにより、ホールICの動作不良を防止できる回転角度検出装置を提供する。
【解決手段】センサカバー6には、ステータ15と中間軸11とを電気的に導通する金属ターミナル16が組み込まれている。この金属ターミナル16は、一端側の端部がステータ15の表面に接触した状態でセンサカバー6にインサートされ、他端側の端部が、センサカバー6に形成された凹部6aに取り出されて、その凹部6aに嵌合する中間軸11と電気的に接続されている。これにより、ステータ15とステータ15に静電気が印加した時に、ステータ15から金属ターミナル16→中間軸11→スロットルボディへと静電気を逃がすことができる。その結果、ホール素子を搭載するホールICの回路面に電荷が帯電することはなく、ホールICの動作不良を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの回転角度を検出する回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホール素子等の磁気検出素子と磁石とを用いて、スロットルバルブ等の回転体の回転角度を検出する回転角度検出装置が知られている。
例えば、特許文献1に示される回転角度検出装置は、図7に示す様に、磁界を発生する磁石100と、磁気検出素子(図示せず)を搭載するIC回路110(例えばホールIC)と、磁石100が発生する磁束を磁気検出素子へ集束させるためのステータ120等より構成される。
IC回路110は、ステータ120の中央部に形成された磁気検出ギャップGに配置され、磁石100の回転に応じて磁気検出ギャップGを通過する磁束密度が変化すると、その磁束密度を磁気検出素子で検出して、磁束密度に応じた電圧信号を外部の制御装置に出力する。制御装置では、取り込んだ電圧信号を基に回転体の回転角度を検出する。
【特許文献1】特開2001−289610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記の回転角度検出装置では、強磁性体であるステータ120に静電気が直接印加した場合、あるいは、ステータ120を覆う樹脂製のセンサカバー(図示せず)に印加した静電気がステータ120に帯電した場合等に、磁気検出素子を搭載するIC回路110の回路面が電荷を帯びることにより、IC回路110の動作不良を招くと言う問題があった。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、ステータに帯電した電荷を放電することにより、IC回路の動作不良を防止できる回転角度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(請求項1の発明)
本発明は、モータに駆動されて回転するバルブの回転角度を検出する回転角度検出装置であって、バルブの回転に伴って回転する磁石と、この磁石が発生する磁界の磁束密度を検出する磁気検出素子を有し、この磁気検出素子で検出された磁束密度の変化を電気信号に変換して出力するIC回路と、磁石が発生する磁束を磁気検出素子へ集束させるためのステータと、IC回路とステータとが組み付けられる樹脂製のセンサカバーとを備え、このセンサカバーが、バルブを収容する金属製のバルブボディに固定され、且つ、センサカバーには、ステータと電気的に接続される金属ターミナルが組み付けられ、この金属ターミナルの反ステータ側の端部が、導電性を有する金属部品を介してバルブボディと電気的に接続されていることを特徴とする。
【0005】
上記の構成では、ステータと金属製のバルブボディとが、金属ターミナルと金属部品を介して電気的に導通しているので、ステータに静電気が印加した場合に、そのステータに帯電した電荷を金属ターミナルと金属部品とを介してバルブボディへ放電できる。その結果、磁気検出素子を有するIC回路の回路面に電荷が帯電することはなく、IC回路の動作不良を防止できる。
【0006】
(請求項2の発明)
本発明は、モータに駆動されて回転するバルブの回転角度を検出する回転角度検出装置であって、バルブの回転に伴って回転する磁石と、この磁石が発生する磁界の磁束密度を検出する磁気検出素子を有し、この磁気検出素子で検出された磁束密度の変化を電気信号に変換して出力するIC回路と、磁石が発生する磁束を磁気検出素子へ集束させるためのステータと、IC回路とステータとが組み付けられる樹脂製のセンサカバーとを備え、このセンサカバーが、バルブを収容するバルブボディに固定され、且つ、センサカバーには、ステータと電気的に接続される金属ターミナルが組み付けられ、この金属ターミナルの反ステータ側の端部が、導電性を有する金属部品を介してモータのハウジングと電気的に接続されていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成では、ステータとモータのハウジングとが、金属ターミナルと金属部品を介して電気的に導通しているので、ステータに静電気が印加した場合に、そのステータに帯電した電荷を金属ターミナルと金属部品とを介してモータのハウジングへ放電できる。その結果、磁気検出素子を有するIC回路の回路面に電荷が帯電することはなく、IC回路の動作不良を防止できる。
【0008】
(請求項3の発明)
請求項1または2に記載した回転角度検出装置において、導電性を有する金属部品は、モータの動力をバルブの回転軸に伝達するための中間ギヤを回転自在に支持する中間軸であり、この中間軸は、一端側の端部がバルブボディに支持され、他端側の端部がセンサカバーに形成された凹部に嵌合してセンサカバーに支持されると共に、凹部の中で金属ターミナルの反ステータ側の端部と電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の中間軸は、中間ギヤを支持する既存の金属部品であり、一端側の端部がバルブボディに支持されて電気的に接触しているので、ステータと中間軸との間を金属ターミナルにより電気的に接続するだけで、ステータとバルブボディとの電気的な導通を確保できる。また、中間軸は、他端側の端部がセンサカバーに形成された凹部に嵌合しているので、金属ターミナルをセンサカバーに配設(例えば、インサート成形)することが容易である。
【0009】
(請求項4の発明)
請求項3に記載した回転角度検出装置において、金属ターミナルは、反ステータ側の端部が、センサカバーに形成された凹部の中で弾性変形可能な弾性部位を形成し、その弾性部位が中間軸の他端側の端部と弾性係合することを特徴とする。
この構成によれば、例えば、中間軸が軸方向(中間軸の長手方向)に移動した時に、金属ターミナルの弾性部位が中間軸の移動に追従して弾性変形できるので、金属ターミナルと中間軸とが確実に係合できる。これにより、金属ターミナルと中間軸との電気的な接続を良好に維持できるので、放電能力が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は回転角度検出装置1のセンサカバー6を内側から見た平面図、図2はスロットルボディ3の内部構造を示す平面図である。
実施例1に示す回転角度検出装置1(図4参照)は、内燃機関の吸入空気量を調節するためのスロットルバルブ2の開度を検出するスロットルボジションセンサであり、図3に示す様に、スロットルバルブ2を収容するスロットルボディ3に取り付けられて、スロットルボディユニットとして構成されている。
スロットルボディ3には、回転軸4に固定されたスロットルバルブ2と、このスロットルバルブ2を駆動するためのモータ5(図2参照)と、このモータ5の動力をスロットルバルブ2の回転軸4に伝達するためのギヤ列が組み込まれ、これらの部品を組み込むために形成されたスロットルバルブ2の開口部が樹脂製のセンサカバー6により閉塞されている。
【0012】
上記のギヤ列は、図2に示す様に、モータ5の出力軸5aに設けられたピニオンギヤ7と、このピニオンギヤ7に噛み合ってモータ5の回転を減速する中間ギヤ8と、この中間ギヤ8と一体に回転する小径ギヤ9と、この小径ギヤ9に噛み合うバルブギヤ10とで構成され、このバルブギヤ10がスロットルバルブ2の回転軸4に取り付けられている。中間ギヤ8と小径ギヤ9は、回転中心が同一に設けられ、共通の中間軸11に回転自在に支持されている。
中間軸11は、一端側の端部がスロットルボディ3に支持され、他端側の端部がセンサカバー6に形成された凹部6a(図1参照)に嵌合している。なお、スロットルボディ3は、例えば、アルミニウム合金によりダイカスト製造され、中間軸11は、導電性を有する金属(例えば、アルミニウム、鉄等)により形成されている。
【0013】
回転角度検出装置1は、図4に示す様に、磁界を発生する2個の磁石12と、この2個の磁石12を挟み込んで磁気回路を形成する一組のヨーク13と、2個の磁石12が発生する磁界の磁束密度に応じて電気信号を出力するホールIC14と、このホールIC14へ磁束を集束させるためのステータ15等より構成される。
2個の磁石12は、同一極性の磁極同士がヨーク13を介して周方向に対向する向きに着磁されている。つまり、2個の磁石12によって形成される磁界が、ヨーク13の内部で互いに反発し合う様に配置されている。
一組のヨーク13は、それぞれ半円弧状に設けられて、互いの周方向両端面の間に磁石12を挟み込んでリング状に組み合わされている。この一組のヨーク13は、バルブギヤ10と共に、スロットルバルブ2の回転軸4に取り付けられている。
【0014】
ホールIC14は、磁束密度に応じた電圧(ホール電圧)を出力するホール素子と、ホール素子の出力電圧を増幅する増幅回路等を半導体チップに集積化した本発明のIC回路である。
ステータ15は、鉄等の強磁性体により略円柱形状に設けられ、ヨーク13及び磁石12の内周に僅かなエアギャップを有して配置される。また、ステータ15には、平行磁場を形成するために一定の幅で開口する長孔15aが形成され、この長孔15aの内部にホールIC14が挿入されている。このステータ15及びホールIC14は、上記のセンサカバー6に組み付けられている。
【0015】
センサカバー6には、ステータ15と中間軸11とを電気的に導通させるための金属ターミナル16が組み込まれている。この金属ターミナル16は、ステータ15と中間軸11との間を直線状に配設される細長い板状に形成され、図5に示す様に、一端側の端部がステータ15の表面に接触した状態でセンサカバー6にインサートされ、他端側の端部が、センサカバー6に形成された凹部6aに取り出されて、その凹部6aに嵌合する中間軸11と電気的に接続されている。
なお、センサカバー6の凹部6aに取り出された金属ターミナル16の端部は、弾性変形可能な弾性部位16aを形成しており、その弾性部位16aが中間軸11の端部と弾性係合している。
【0016】
次に、回転角度検出装置1の作動を説明する。
回転角度検出装置1は、図4に矢印で示す様に、2個の磁石12から発生する磁束が、N極から一方のヨーク13→ステータ15→ホールIC14→ステータ15→他方のヨーク13の経路でS極に戻っている。ここで、スロットルバルブ2の回転に伴ってヨーク13及び磁石12が所定角度だけ回転すると、その回転角度に応じてステータ15の長孔15aを通過する磁束密度が変化する。この磁束密度の変化に応じてホール素子の出力電圧が変化するため、そのホール素子の出力電圧(増幅された電圧)から2個の磁石12の位置、すなわち、スロットルバルブ2の回転角度が検出される。
【0017】
(実施例1の効果)
本実施例の回転角度検出装置1は、強磁性体であるステータ15と導電性を有する中間軸11とが金属ターミナル16を介して電気的に導通され、さらに、中間軸11が金属製のスロットルボディ3と電気的に接触しているので、ステータ15に静電気が印加した時に、ステータ15から金属ターミナル16→中間軸11→スロットルボディ3へと静電気を逃がすことができる。これにより、ホール素子を搭載するホールIC14の回路面に電荷が帯電することはなく、ホールIC14の動作不良を防止できる。
【0018】
また、本実施例では、センサカバー6の凹部6aに取り出された金属ターミナル16の端部(反ステータ側の端部)が、弾性変形可能な弾性部位16aを形成しており、その弾性部位16aが中間軸11の端部と弾性係合している。この場合、例えば、中間軸11が軸方向(中間軸11の長手方向)に移動した時に、金属ターミナル16の弾性部位16aが中間軸11の移動に追従して弾性変形できるので、金属ターミナル16と中間軸11とが確実に係合できる。その結果、金属ターミナル16と中間軸11との電気的な接続を良好に維持できるので、放電能力が安定する。
【実施例2】
【0019】
図6はスロットルボディ3の模式図である。
本実施例は、回転角度検出装置1のステータ15とモータ5のハウジング(モータハウジングと呼ぶ)とを電気的に導通させた一例である。具体的には、図6に示す様に、スロットルボディ3にボルト17で固定されるモータハウジングのフランジ部5aを延長して、そのフランジ部5aに中間軸11を電気的に接続させている。なお、ステータ15と中間軸11とは、実施例1と同じく、金属ターミナル16を介して電気的に導通されている。これにより、ステータ15に静電気が印加した時に、ステータ15からスロットルボディ3とモータハウジングの両方へ静電気を逃がすことができるので、放電能力がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】センサカバーを内側から見た平面図である。
【図2】スロットルボディの内部構造を示す平面図である。
【図3】スロットルボディユニットの側面図である。
【図4】回転角度検出装置の平面図である。
【図5】金属ターミナルをインサートしたセンサパッケージの断面図である。
【図6】スロットルボディの模式図である(実施例2)。
【図7】回転角度検出装置の断面図である(従来技術)。
【符号の説明】
【0021】
1 回転角度検出装置
2 スロットルバルブ(バルブ)
3 スロットルボディ(バルブボディ)
4 スロットルバルブの回転軸
5 モータ
6 センサカバー
6a センサカバーに形成された凹部
8 中間ギヤ
11 中間軸(導電性を有する金属部品)
12 磁石
14 ホールIC(IC回路)
15 ステータ
16 金属ターミナル
16a 金属ターミナルの弾性部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに駆動されて回転するバルブの回転角度を検出する回転角度検出装置であって、 前記バルブの回転に伴って回転する磁石と、
この磁石が発生する磁界の磁束密度を検出する磁気検出素子を有し、この磁気検出素子で検出された磁束密度の変化を電気信号に変換して出力するIC回路と、
前記磁石が発生する磁束を前記磁気検出素子へ集束させるためのステータと、
前記IC回路と前記ステータとが組み付けられる樹脂製のセンサカバーとを備え、
このセンサカバーが、前記バルブを収容する金属製のバルブボディに固定され、且つ、前記センサカバーには、前記ステータと電気的に接続される金属ターミナルが組み付けられ、この金属ターミナルの反ステータ側の端部が、導電性を有する金属部品を介して前記バルブボディと電気的に接続されていることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
モータに駆動されて回転するバルブの回転角度を検出する回転角度検出装置であって、 前記バルブの回転に伴って回転する磁石と、
この磁石が発生する磁界の磁束密度を検出する磁気検出素子を有し、この磁気検出素子で検出された磁束密度の変化を電気信号に変換して出力するIC回路と、
前記磁石が発生する磁束を前記磁気検出素子へ集束させるためのステータと、
前記IC回路と前記ステータとが組み付けられる樹脂製のセンサカバーとを備え、
このセンサカバーが、前記バルブを収容するバルブボディに固定され、且つ、前記センサカバーには、前記ステータと電気的に接続される金属ターミナルが組み付けられ、この金属ターミナルの反ステータ側の端部が、導電性を有する金属部品を介して前記モータのハウジングと電気的に接続されていることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した回転角度検出装置において、
前記導電性を有する金属部品は、前記モータの動力を前記バルブの回転軸に伝達するための中間ギヤを回転自在に支持する中間軸であり、
この中間軸は、一端側の端部が前記バルブボディに支持され、他端側の端部が前記センサカバーに形成された凹部に嵌合して前記センサカバーに支持されると共に、前記凹部の中で前記金属ターミナルの反ステータ側の端部と電気的に接続されていることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載した回転角度検出装置において、
前記金属ターミナルは、反ステータ側の端部が、前記センサカバーに形成された凹部の中で弾性変形可能な弾性部位を形成し、その弾性部位が前記中間軸の他端側の端部と弾性係合することを特徴とする回転角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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