説明

回転軸のスリップ防止構造を有するロータ及びこれを備えるモータ

【課題】回転軸のスリップ防止構造を有するロータを備えるモータを提供する。
【解決手段】本発明によるモータは、内側に円筒形の空間部を有し、複数個の歯が内周面に中央に向かって突出形成されるステータコアと、前記空間部に回転可能に設けられ、永久磁石が挿入される複数個のポケットを備える円筒状のロータと、前記ロータの中央に結合され、前記ステータコアとロータの相互作用によって発生する回転動力が伝達される回転軸と、前記ロータが外周面に前記回転軸の軸方向に圧入され、前記回転軸は内周面に前記回転軸の軸方向に圧入され、前記ロータと回転軸とを連結するナット部材と、前記ロータとナット部材との間のスリップを防止するキーユニットと、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸のスリップ防止構造を有するロータを備えるモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータは、永久磁石と電磁石の電磁気的相互作用によって回転力を獲得できるようにロータ及びステータが設けられる。ステータは、モータハウジングに固定され、ロータはステータの中央に回転可能に設けられ、これらの間の相互作用によって回転動力を形成する。このとき、ステータが電磁石になることもあり、ロータが電磁石になることもある。一般に、ロータハウジングの内側に固設されるステータにコイルを巻線して電磁石を形成し、回転する部材であるロータには永久磁石が設けられる。
【0003】
ロータには、ステータとの電磁気的相互作用によって回転するロータの回転軸の回転動力を出力するために、回転軸が中央に圧入結合される。このとき、ロータと回転軸をそのまま圧入して結合すると、ロータの回転力によってロータと回転軸との間にスリップが発生することがある。
【0004】
このようにロータのような回転部材のスリップ現象を防止するための技術として、インペラと回転軸との間にキー及びキー溝を形成した構成が韓国登録実用第0149129号(1999.3.23.登録)に記載されている。
【0005】
しかしながら、このように回転軸と回転部材をキー結合で連結すると、回転によって発生するスリップ現象は防止することができるが、これらの圧入工程中にロータの損傷が発生し得る。
【0006】
特に、小型モータのように材料の強度が大きくない部品の場合、ロータを圧入する工程中にロータにねじれが発生するような部品変形が発生し、ステータコアとの干渉や性能不良が発生する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ロータと回転軸との間の回転動作中のスリップを防止することができ、組立工程中におけるロータの変形を最小化することができるように構造を改善したロータを有するモータに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるモータは、内側に円筒形の空間部を有し、複数個の歯が内周面に中央に向かって突出形成されるステータコア、前記空間部に回転可能に設けられ、永久磁石が挿入される複数個のポケットを備える円筒状のロータ、前記ロータの中央に結合され、前記ステータコアとロータとの相互作用によって発生する回転動力が伝達される回転軸、前記ロータが外周面に前記回転軸の軸方向に圧入され、前記回転軸は内周面に前記回転軸の軸方向に圧入され、前記ロータと回転軸とを連結するナット部材、及び、前記ロータとナット部材との間のスリップを防止するキーユニット、を含むことを特徴とする。
【0009】
前記キーユニットは、前記ロータの外周面に突出形成される少なくとも一つのキー、及び、前記ナット部材の前記キーと対応する位置に前記キーと相補的な形状で凹に形成されているキー溝、を含むことが好ましい。
【0010】
前記キーとキー溝は、複数個が同一の間隔で配置されるのがよく、本発明の好ましい一実施例によると、前記キーとキー溝は、2個が180度間隔で相互対称になるように設けられるのがよい。
【0011】
また、前記キーとキー溝は、前記ロータの回転による遠心力が作用する面が面接触され、前記キーの突出した端断面と前記キー溝の前記端断面に向かい合う面は、一定距離離隔することが好ましい。このとき、前記キーの突出した端断面と前記キー溝の前記端断面に向かい合う面の離隔距離は、0.2mm未満に形成されるのがよい。
【0012】
また、前記キーとキー溝は、四角形断面を有するように形成されるのがよい。
【0013】
また、前記ロータは、複数個の永久磁石を収容するポケットが前記歯と近接する位置に等間隔で配置され、合成樹脂材質で前記キーと一体に射出成形されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ロータとナットをキー結合で組み立て、このナットをまた回転軸と圧入結合するため、回転動作時にスリップが発生することを防止することができ、圧入工程中においてロータの損傷を最小化することができ、モータの生産性と工程能力を向上することができる。
【0015】
また、ロータの変形が最小化されるため、組立後、ステータコアとロータが互いに干渉されて、これら部品が動作中に損傷されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるモータのステータとロータを示す斜視図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】ロータ、ナット部材及び回転軸の結合状態を示す平面図である。
【図4】図3のA部分を拡大した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施例について、図面を参考しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明によるモータのステータとロータを示す斜視図、図2は、図1の分解斜視図、図3は、ロータ、ナット部材及び回転軸の結合状態を示す平面図、及び、図4は、図3の要部拡大図である。
【0019】
図示したように、本発明の好ましい一実施例によるモータは、ステータコア100、ロータ200、回転軸300、及びナット部材400を含む。
【0020】
ステータコア100は、図1及び図2に示したように、内側に円筒形の空間部を有し、複数個の歯110が内周面に中央に向かって突出形成される。ステータコア100は、一体として構成されることもでき、それぞれの歯110別に分割コアに製作され、これらを円筒状に組み立てて構成することもできる。または、一直線になるようにステータコア100を成形製造した後、丸く巻いて両端を固定して構成することも可能である。
【0021】
ロータ200は、ステータコア100の中央に形成された空間部に回転可能に設けられ、歯110に巻き取られた未図示のコイルの電磁気力によって電磁石に形成されるステータとの電磁気的相互作用によって回転することができるように、歯110と近接する位置に永久磁石201が挿入結合される。
【0022】
ロータ200は、永久磁石201の挿入のために永久磁石201と対応する大きさ及び形状を有する複数個のポケットを一体に構成するが、ポケットは、ロータ200の歯110と近接する位置に配置される。
【0023】
ロータ200は多様な方式で製造可能であるが、本発明の好ましい一実施例によると、金型を用いて合成樹脂材質で円筒形になるように射出成形することが好ましい。
【0024】
回転軸300は、ロータ200の中央に挿入結合され、ステータコア100との相互作用によって回転するロータ200の回転力が伝達される。
【0025】
ナット部材400は、ロータ200と回転軸300との間に介在され、ロータ200と回転軸300とを互いに連結する。
【0026】
本発明の好ましい一実施例によると、ロータ200は、ナット部材400の外周面に回転軸300の軸方向に圧入され、回転軸300は、ナット部材400の内周面に回転軸300の軸方向に圧入結合される。
【0027】
キーユニット500は、ロータ200とナット部材400との間のスリップを防止するためのものであって、図2及び図3に示したように、互いに相補的な形状に設けられるキー210とキー溝410とから構成される。
【0028】
キー210とキー溝410は、複数個が同一の間隔で配置されるのがよく、本発明の好ましい一実施例によると、キー210とキー溝410は、2個が180度間隔で相互対称になるように設けられるのがよい。
【0029】
一方、図示してはいないが、本発明の他の実施例によると、キー210とキー溝410は、少なくとも一つ以上形成されるのがよく、3個またはそれ以上の個数が一定の間隔で配置されることも可能である。
【0030】
また、キー210とキー溝410は、図4に示したように、ロータ200の回転による遠心力が作用するキー側面211とキー溝側面411とが面接触され、キー210の突出した端断面212とキー溝410の端断面212に向かい合う面412は、一定距離(d)離隔することが好ましい。このとき、キー210の突出した端断面212とキー溝410の端断面212に向かい合う面412の離隔距離(d)は、0.2mm未満に形成されるのがよい。
【0031】
また、キー210とキー溝410は、四角形断面を有するように形成されるのがよいが、これに限定するのではなく、相補的な形状の凹凸構造の形態であれば、三角形、半円、多角形など、どんな形状でも適用可能である。
【0032】
このような本発明によると、スリップ現象を防止するためにロータ200とナット部材400を公差を非常に小さく形成して圧入しなくても、回転動作中にロータ200とナット部材400が空回りしない。したがって、圧入工程に所要される圧入力を相対的に小さく形成することができるため、組立工程を行う途中に、部品が過度な力を受けて変形されることを防止することができる。
【0033】
また、圧入により力を受ける部分が、キー210とキー溝410のすべての面ではなく、ロータ200の回転による遠心力が作用するキー側面211とキー溝側面411のみが面接触されるため、圧入によってロータ200が不要に変形されなくても、回転動作中に発生されるスリップ現象を防止することが可能である。
【0034】
以上で説明し、図面に示された本発明の実施例は、本発明の技術的思想を限定するものと解釈されてはならない。本発明の保護範囲は特許請求の範囲に記載の事項のみによって制限され、本発明の技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想を様々な形態に改良変更することが可能である。したがって、このような改良及び変更は、通常の知識を有する者にとって自明なものである限り、本発明の保護範囲に属するものと認めるべきである。
【符号の説明】
【0035】
100 ステータコア
200 ロータ
300 回転軸
400 ナット部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に円筒形の空間部を有し、複数個の歯が内周面に中央に向かって突出形成されるステータコアと、
前記空間部に回転可能に設けられ、永久磁石が挿入される複数個のポケットを備える円筒状のロータと、
前記ロータの中央に結合され、前記ステータコアとロータの相互作用によって発生する回転動力が伝達される回転軸と、
前記ロータが外周面に前記回転軸の軸方向に圧入され、前記回転軸が内周面に前記回転軸の軸方向に圧入されて、前記ロータと回転軸とを連結するナット部材と、
前記ロータとナット部材との間のスリップを防止するキーユニットと、を含むことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記キーユニットは、
前記ロータの外周面に突出形成される少なくとも一つのキーと、
前記ナット部材の前記キーと対応する位置に前記キーと相補的な形状で凹に形成されているキー溝と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記キーとキー溝は、複数個が所定の間隔で配置されることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記キーとキー溝は、2個が180度間隔で相互対称に形成されることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項5】
前記キーとキー溝は、前記ロータの回転による遠心力が作用する面が面接触されることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項6】
前記キーの突出した端断面と前記キー溝の前記端断面は、所定の間隔で離隔されることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項7】
前記キーの突出した端断面と前記キー溝の前記端断面に向かい合う面の離隔距離は、0.2mm未満に形成されることを特徴とする請求項6に記載のモータ。
【請求項8】
前記キーとキー溝は、四角形断面を有するように形成されることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項9】
前記ロータは、複数個の永久磁石を収容するポケットを有し、各ポケットは、前記歯と近接する位置に等間隔で配置されることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項10】
前記ロータは、合成樹脂材質で前記キーと一体に射出成形されることを特徴とする請求項2に記載のモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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