説明

回転軸用振動計測装置

【課題】計測に要する労力の軽減を図り、計測可能な軸系の回転数範囲を拡大するとともに、計測値におけるS/N比の悪化を防止することができる回転軸用振動計測装置を提供する。
【解決手段】軸系10に固定される筐体2と、軸系10における軸線L方向、および周方向の加速度の少なくとも一方を測定する加速度計3A,3Bと、軸線L方向に対して対称な位置に配置され、加速度計3A,3Bから出力された加速度に関する電気信号を周波数変調して、送信する一対の送信部4A,4B,5A,5Bと、軸線L方向に対して対称な位置に配置され、加速度計3A,3Bおよび一対の送信部4A,4B,5A,5Bに電力を供給する一対の電源6A,6Bと、一対の送信部4A,4B,5A,5Bから送信された電波を受信して、加速度計3A,3Bから出力された加速度に関する電気信号を復調する受信部8A,8Bと、が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸用振動計測装置、特にディーゼルエンジンなどの発動機における回転軸の振動計測に用いて好適な回転軸用振動計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸などの軸系の縦振動や捩れ振動を検出するに場合には、以下の構成の回転軸用振動計測装置が用いられてきた。
つまり、軸系の先端に取り付けられて軸系とともに回転するロータケースと、当該ロータケースに配置され軸系の縦振動を検出する1個の加速度計、または捩れ振動を検出する2個の加速度計と、ロータケースに取り付けられ加速度計から出力された電気信号を回転軸から静止側に取り出すとともに、静止側から回転側の加速度計に電力を供給するスリップリングと、を有する回転軸用振動計測装置が用いられてきた(例えば、特許文献1および2参照。)。
【0003】
ここで、上述のスリップリングにおける静止側のブラシ端子は、計測用アンプに電気的に接続されている。計測用アンプは、スリップリングを介してロータケース内に組み込まれた加速度計に電力を供給するとともに、スリップリングを介して入力された加速度計で検出された振動に関する電気信号を増幅するものである。
【0004】
上述の回転軸用振動計測装置を使用する場合には、ロータケースが回転軸の先端に、ボルトなどを用いて取り付けられる。そして、スリップリング内部のブラシを介して、加速度計に供給される電力が静止側から回転側に供給され、加速度計から出力された縦振動または捩れ振動に関する電気信号が、回転側から静止側に出力される。このように回転軸用振動計測装置を使用することで、軸系振動が計測されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60−25928号公報
【特許文献2】実開昭59−183630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の回転軸用振動計測装置では、スリップリングにおける静止側のブラシ端子を有する部分等を静止側から固定する必要があり、この固定を行うために測定対称に合わせた治具を製作する必要があった。
【0007】
さらに、スリップリングを回転軸に固定する際には、スリップリングと回転軸との軸心を所定の範囲内に合わせる、言い換えると、スリップリングの回転軸線と、回転軸の回転軸線とを所定の範囲で一致させる必要があり、この作業に過大な労力を要するという問題があった。
【0008】
その上に、回転軸などに過大な振動が発生した場合、スリップリングに損傷が発生したり、振動に関する電気信号にノイズが混入したりするおそれがあるという問題があった。
【0009】
上述の問題を解決する方法として、スリップリング等の代わりに、振動に係る電気信号をFM変調して電波で送信するテレメータ送信機、送信アンテナ、および、駆動用電池を用いる方法も考えられる。
【0010】
具体的には、回転軸とともに回転するロータケース等にテレメータ送信機および駆動用電池が配置され、テレメータ送信機から発信された電波を受信する送信アンテナが静止側に配置されている。
【0011】
このような回転軸用振動計測装置では、テレメータ送信機からFM変調した振動に係る電気信号が送信され、静止側の送信アンテナにより受信される。受信された信号は、送信アンテナに接続された受信アンプにおいて復調等される。このように回転軸用振動計測装置を使用することで、軸系振動が計測されている。
【0012】
しかしながら、上述のテレメータ送信機等を用いた回転軸用振動計測装置では、テレメータ送信機や駆動電池などの配置位置が、回転軸の回転軸線に対してアンバランスであり、高速回転する回転軸における振動測定には使用できないという問題があった。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、計測に要する労力の軽減を図り、計測可能な軸系の回転数範囲を拡大するとともに、計測値におけるS/N比の悪化を防止することができる回転軸用振動計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の回転軸用振動計測装置は、回転する軸系に固定される筐体と、該筐体に配置され、前記軸系における軸線方向の加速度、および、前記軸系における周方向の加速度の少なくとも一方を測定する加速度計と、前記筐体における前記軸線方向に対して対称な位置に配置され、前記加速度計から出力された加速度に関する電気信号を周波数変調して、電波として送信する一対の送信部と、前記筐体における前記軸線方向に対して対称な位置に配置され、前記加速度計および前記一対の送信部に電力を供給する一対の電源と、前記一対の送信部から送信された電波を受信して、前記加速度計から出力された加速度に関する電気信号を復調する受信部と、が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、一対の送信部および一対の電源が、軸線方向に対して対称な位置に配置されているため、筐体が軸系とともに回転しても、送信部および電源における配置のアンバランスによる振動の発生が抑制される。そのため、軸系の広い回転数範囲にわたって、振動の発生が抑制される。
【0016】
その一方で、加速度計により計測された加速度に関する電気信号を、送信部および受信部を用いて回転側である軸系から静止側に取り出すため、スリップリング等を用いた計測方法のように軸心合わせを行う必要がない。さらに、振動によるノイズの発生が抑制される。
【0017】
上記発明においては、前記軸系における軸線方向の加速度を測定し、前記一対の送信部の一方と電気的に接続された縦振動用加速度計と、前記軸系における周方向の加速度を測定し、前記一対の送信部の他方と電気的に接続された捩れ振動用加速度計と、が設けられ、前記一対の送信部の一方および他方は、前記加速度に関する電気信号を、互いに異なる周波数に変調して、電波として送信することが望ましい。
【0018】
本発明によれば、軸系における軸線方向の加速度と、軸系における周方向の加速度とを同時に計測することができる。
具体的には、軸線方向の加速度に関する電気信号から周波数変調された電気信号の周波数と、周方向の加速度に関する電気信号から周波数変調された電気信号の周波数とを異ならせることにより、両者を同時に送信しても受信部において両者を分離することができる。
【0019】
上記発明においては、前記軸系における軸線方向の加速度を測定し、前記一対の送信部の両者と電気的に接続された縦振動用加速度計と、前記軸系における周方向の加速度を測定し、前記一対の送信部の両者と電気的に接続された捩れ振動用加速度計と、が設けられ、前記一対の送信部のそれぞれは、前記縦振動用加速度計および前記捩れ振動用加速度計から出力された前記加速度に関する電気信号を周波数変調し、電波として送信可能とされ、前記一対の送信部の一方から前記受信機に向けて前記電波が送信されることが望ましい。
【0020】
本発明によれば、一対の送信部の一方から、軸系における軸線方向の加速度に関する電気信号を周波数変調した電波、および、軸系における周方向の加速度に関する電気信号を周波数変調した電波の両者が送信され、一対の送信部の他方を予備として用いることができる。
言い換えると、一対の送信部の一方が故障した場合に、一対の送信部の他方を用いて電波の送信を継続することができる。つまり、回転軸用振動計測装置における冗長性を確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回転軸用振動計測装置によれば、送信部および受信部を用いて加速度計により測定された電気信号を送信するとともに、一対の送信部および一対の電源が、軸線方向に対して対称な位置に配置されているため、計測に要する労力の軽減を図り、計測可能な軸系の回転数範囲を拡大するとともに、計測値におけるS/N比の悪化を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る振動計測装置の概略を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る回転軸の振動計測装置について図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る振動計測装置の概略を説明する模式図である。
本実施形態では、本発明の振動計測装置(回転軸用振動計測装置)1をディーゼルエンジンの回転軸における振動を計測する装置に適用して説明する。
【0024】
振動計測装置1には、図1に示すように、ロータケース(筐体)2と、縦振動用加速度計3Aと、捩れ振動用加速度計3Bと、一対のテレメータ送信機(送信部)4A,4Bと、一対の送信アンテナ(送信部)5A,5Bと、一対の駆動電池(電源)6A,6Bと、受信アンテナ(受信部)7と、一対の受信機(受信部)8A,8Bと、周波数分析部9と、が設けられている
【0025】
ロータケース2は、図1に示すように、測定対象である回転軸(軸系)10に取り付けられる部材であり、縦振動用加速度計3Aや、捩れ振動用加速度計3Bなどが設けられるものである。
ロータケース2には、回転軸10側から順に、取付部21と、加速度計配置部22と、テレメータカプセル23と、テレメータ蓋24と、が設けられている。
【0026】
取付部21は、図1に示すように、ロータケース2のうち、最も回転軸10に近い部分に配置された部分であって、回転軸10の端部に取り付けられる部分である。
例えば、回転軸10の端部から回転軸線(軸線)Lに沿って延びる取り付け用の雄ネジ部11に対して、取付部21に形成された雌ネジ部(図示せず)を螺合させることにより、取付部21は回転軸10の端部に取り付けられる。
【0027】
加速度計配置部22は、図1に示すように、取付部21とテレメータカプセル23との間に配置された部材であって、縦振動用加速度計3A、および、捩れ振動用加速度計3Bが配置される部材である。
本実施形態では、加速度計配置部22を略直方体状に形成された部材であって、加速度計配置部22の長軸が、回転軸線Lに対して略直交する場合に適用して説明する。
【0028】
テレメータカプセル23は、図1に示すように、加速度計配置部22とテレメータ蓋24との間に配置された部材であって、内部にテレメータ送信機4A,4Bおよび駆動電池6A,6Bを収納する部材である。
本実施形態では、テレメータカプセル23を略円筒状の部材であって、円筒の軸線が、回転軸線Lと略一致する場合に適用して説明する。
【0029】
テレメータ蓋24は、図1に示すように、テレメータカプセル23における端部の開口部に配置され、送信アンテナ5A,5Bが配置された部材である。
本実施形態では、略円筒状に形成されたテレメータカプセル23の開口部を塞ぐ略円板状に形成された部材に適用して説明する。
【0030】
縦振動用加速度計3Aは、図1に示すように、加速度計配置部22における回転軸線L上の位置に配置されたセンサであって、回転軸10における回転軸線L方向の加速度、つまり、回転軸線L方向の振動を計測し、当該加速度に関する電気信号を出力するセンサである。
その一方で、縦振動用加速度計3Aには駆動電池6Aから電力が供給されているとともに、縦振動用加速度計3Aからテレメータ送信機4Aには、回転軸10における回転軸線L方向の加速度に関する電気信号が出力されている。
【0031】
一対の捩れ振動用加速度計3Bは、図1に示すように、加速度計配置部22における回転軸線Lに対して線対称な位置、言い換えると、加速度計配置部22の両端部に配置されたセンサであって、一対の捩れ振動用加速度計3Bは、電気的に接続されている。
このように、一対の捩れ振動用加速度計3Bを加速度計配置部22の両端部に配置することで、回転軸10が重力に対して交差する方向、例えば水平方向に延びて配置された場合であっても、重力による回転軸10の変形の影響を取り除くことができる。
【0032】
さらに、一対の捩れ振動用加速度計3Bは、回転軸10における周方向の加速度、つまり、回転軸10における回転軸線Lまわりの捩れ振動、さらに言い換えると、回転軸10の回転速度の変動を計測し、当該周方向の加速度に関する電気信号を出力するものである。
【0033】
その一方で、一対の捩れ振動用加速度計3Bには駆動電池6Bから電力が供給されているとともに、一対の捩れ振動用加速度計3Bからテレメータ送信機4Bには、回転軸10における周方向の加速度に関する電気信号が出力されている。
【0034】
なお、縦振動用加速度計3A、および、捩れ振動用加速度計3Bとしては、公知の加速度計を用いることができ、特に限定するものではない。
【0035】
テレメータ送信機4Aおよびテレメータ送信機4Bは、図1に示すように、それぞれ、縦振動用加速度計3A、および、捩れ振動用加速度計3Bから出力された加速度に関する電気信号を周波数変調(FM変調)するものである。
本実施形態では、テレメータ送信機4Aおよびテレメータ送信機4Bにおいて用いられる搬送波の周波数が異なる場合について説明する。具体的には、テレメータ送信機4Aでは80MHzの搬送波が用いられ、テレメータ送信機4Bでは90MHzの搬送波が用いられる場合に適用して説明する。
【0036】
さらに、テレメータ送信機4Aおよびテレメータ送信機4Bは、テレメータカプセル23の内部であって、回転軸線Lに対して線対称な位置に収納されている。
【0037】
テレメータ送信機4Aには駆動電池6Aから電力が供給されるとともに、縦振動用加速度計3Aから回転軸線L方向の加速度に関する電気信号が入力されている。その一方で、テレメータ送信機4Aから送信アンテナ5Aには、周波数変調された回転軸線L方向の加速度に関する電気信号が出力されている。
【0038】
テレメータ送信機4Bには、駆動電池6Bから電力が供給されるとともに、捩れ振動用加速度計3Bから周方向の加速度に関する電気信号が入力されている。その一方で、テレメータ送信機4Bから送信アンテナ5Bには、周波数変調された周方向の加速度に関する電気信号が出力されている。
【0039】
送信アンテナ5Aおよび送信アンテナ5Bは、図1に示すように、それぞれテレメータ送信機4Aおよびテレメータ送信機4Bから出力された周波数変調された電気信号を電波として送信するものである。
送信アンテナ5Aおよび送信アンテナ5Bは、円板状に形成されたテレメータ蓋24に配置されたアンテナであって、テレメータ蓋24の周辺部に沿って延びる円弧状のアンテナである。さらに、送信アンテナ5Aおよび送信アンテナ5Bは、回転軸線Lに対して線対称に配置されている。
【0040】
なお、テレメータ送信機4A,4Bおよび送信アンテナ5A,5Bとしては、公知のテレメータ送信機やアンテナを用いることができ、特に限定するものではない。
【0041】
駆動電池6Aおよび駆動電池6Bは、図1に示すように、テレメータカプセル23内に配置され、テレメータ送信機4A,4Bなどに電力を供給するものである。
具体的には、駆動電池6Aは、縦振動用加速度計3Aおよびテレメータ送信機4Aに電力を供給するものである。駆動電池6Bは、捩れ振動用加速度計3Bおよびテレメータ送信機4Bに電力を供給するものである。
【0042】
その一方で、駆動電池6Aおよび駆動電池6Bは、テレメータ送信機4A,4Bと同様に、テレメータカプセル23の内部であって、回転軸線Lに対して線対称な位置に収納されている。
【0043】
受信アンテナ7は、図1に示すように、送信アンテナ5A,5Bから送信された電波を受信するアンテナであって、受信した電波を電気信号として受信機8A,8Bに出力するものである。
なお、本実施形態としては、受信アンテナ7を送信アンテナ5A,5Bに対向配置された円環状のアンテナに適用して説明するが、特にその形状等を限定するものではない。
【0044】
受信機8Aおよび受信機8Bは、図1に示すように、それぞれテレメータ送信機4Aおよびテレメータ送信機4Bに対応したものであって、受信アンテナ7から入力された電気信号から所定の電気信号を抽出して復調するものである。
【0045】
具体的には、テレメータ送信機4Aと対応する受信機8Aは、受信アンテナ7から入力された電気信号から80MHzを中心とする周波数帯域を有する電気信号を抽出するとともに、当該抽出した電気信号を復調するものである。
その一方で、テレメータ送信機4Bと対応する受信機8Bは、受信アンテナ7から入力された電気信号から90MHzを中心とする周波数帯域を有する電気信号を抽出するとともに、当該抽出した電気信号を復調するものである。
【0046】
周波数分析部9は、図1に示すように、受信機8A,8Bにおいて復調された電気信号の周波数分析を行うものである。
周波数分析部9において分析された測定データ、つまり、縦振動用加速度計3A、および、捩れ振動用加速度計3Bにより測定された加速度のデータは、以下の式(1),(2)を用いることにより、回転軸線L方向の変位である縦振動変位(A)や、周方向の振動角である捩れ振動角(θ)などの物理量に変換される。
=α/ω ・・・(1)
θ=α/(rω) ・・・(2)
【0047】
ここで、Aは縦振動変位(mm)、αは計測された振動加速度(mm/s)、θは捩れ角度(deg.)、rは加速度計取付半径(mm)、ωは回転角速度(rad/s:2πf)、iは各周波数成分を表すものである。
【0048】
次に、上記の構成からなる振動計測装置1における計測方法について説明する。
本実施形態に係る振動計測装置1を用いて回転軸10における回転軸線L方向の変位である縦振動変位(A)や、周方向の振動角である捩れ振動角(θ)などの物理量を測定する場合には、図1に示すように、回転軸10の端部に振動計測装置1が取り付けられる。
【0049】
回転軸10が回転駆動されると、回転軸10に回転軸線L方向の変位や、周方向の振動が発生する。すると、これらの変位や振動は、ロータケース2の取付部21および加速度計配置部22を介して、縦振動用加速度計3Aおよび捩れ振動用加速度計3Bに測定される。
【0050】
縦振動用加速度計3Aは、上述の回転軸線L方向の変位、つまり、回転軸線L方向の加速度を測定し、当該加速度に関する電気信号をテレメータ送信機4Aに出力する。
一方で、捩れ振動用加速度計3Bは、上述の周方向の振動、つまり、周方向の加速度を測定し、当該加速度に関する電気信号をテレメータ送信機4Bに出力する。
【0051】
テレメータ送信機4Aは、回転軸線L方向の加速度に関する電気信号を信号波として、80MHzの搬送波の周波数を信号波に基づいて変調する周波数変調を行う。
一方で、テレメータ送信機4Bは、周方向の加速度に関する電気信号を信号波として、90MHzの搬送波の周波数を信号波に基づいて変調する周波数変調を行う。
【0052】
上述のようにテレメータ送信機4Aおよびテレメータ送信機4Bにより周波数変調された電気信号は、それぞれ、テレメータ送信機4Aおよびテレメータ送信機4Bから送信アンテナ5Aおよび送信アンテナ5Bに出力される。
【0053】
送信アンテナ5Aは、テレメータ送信機4Aから入力された変調後の電気信号に基づいて電波を送信し、送信アンテナ5Bは、テレメータ送信機4Bから入力された変調後の電気信号に基づいて電波を送信する。
【0054】
送信アンテナ5Aおよび送信アンテナ5Bから送信された両電波は、受信アンテナ7に受信される。受信アンテナ7は、受信した電波を電気信号に変換し、受信機8Aおよび受信機8Bに当該電気信号を出力する。
【0055】
テレメータ送信機4Aに対応する受信機8Aは、受信アンテナ7から入力された電気信号から、80MHzを中心とする周波数帯域を有する電気信号を抽出するとともに、当該抽出した電気信号を復調する。
その一方で、テレメータ送信機4Bに対応する受信機8Bは、受信アンテナ7から入力された電気信号から、90MHzを中心とする周波数帯域を有する電気信号を抽出するとともに、当該抽出した電気信号を復調する。
【0056】
復調された電気信号は、受信機8Aおよび受信機8Bから周波数分析部9に入力され、周波数分析部9において周波数分析される。
周波数分析後の測定データは、上述の式(1)および式(2)を用いて、回転軸線L方向の変位である縦振動変位(A)や、周方向の振動角である捩れ振動角(θ)などの物理量に変換される。
【0057】
上記の構成によれば、テレメータ送信機4Aおよびテレメータ送信機4Bや、駆動電池6Aおよび駆動電池6Bが、回転軸線Lに対して対称な位置に配置されているため、ロータケース2が回転軸10とともに回転しても、テレメータ送信機4Aおよびテレメータ送信機4Bや、駆動電池6Aおよび駆動電池6Bにおける配置のアンバランスによる振動の発生が抑制される。
【0058】
その結果、本実施形態の振動計測装置1では、広い回転数範囲にわたって振動の発生を抑制することができることから、計測可能な回転軸10の回転数範囲を拡大することができる。
【0059】
その一方で、縦振動用加速度計3Aおよび捩れ振動用加速度計3Bにより計測された加速度に関する電気信号を、テレメータ送信機4A,4B等および受信機8A,8B等を用いて回転側から静止側に取り出すため、スリップリング等を用いた計測方法のように正確な軸心合わせを行う必要がない。
【0060】
そのため、本実施形態の振動計測装置1では、計測に要する労力の軽減を図ることができる。さらに、振動によるノイズの発生が抑制されることから、計測値とノイズのとの比率(S/N比)の悪化を防止することができる。
【0061】
さらに、回転軸線L方向の加速度に関する電気信号から周波数変調された電気信号の周波数と、周方向の加速度に関する電気信号から周波数変調された電気信号の周波数とを異ならせるため、両者を同時に送信しても受信部において両者を容易に分離することができる。
そのため、本実施形態の振動計測装置1では、回転軸10における回転軸線L方向の加速度と、周方向の加速度とを同時に計測することができる。
【0062】
なお、上述の実施形態のように、縦振動用加速度計3Aと、テレメータ送信機4Aおよび送信アンテナ5Aとを電気的に接続するとともに、捩れ振動用加速度計3Bと、テレメータ送信機4Bおよび送信アンテナ5Bとを電気的に接続してもよいし、縦振動用加速度計3Aおよび捩れ振動用加速度計3Bを、テレメータ送信機4A等に電気的に接続するとともに、テレメータ送信機4B等にも電気的に接続し、テレメータ送信機4A等およびテレメータ送信機4B等の一方からのみ電波を送信するようにしてもよく、特に限定するものではない。
【0063】
このようにすることで、テレメータ送信機4A等およびテレメータ送信機4B等の一方から、回転軸10における軸線方向の加速度に関する電気信号を周波数変調した電波、および、回転軸10における周方向の加速度に関する電気信号を周波数変調した電波の両者が送信され、テレメータ送信機4A等およびテレメータ送信機4B等の他方を予備として用いることができる。
【0064】
言い換えると、テレメータ送信機4A等およびテレメータ送信機4B等の一方が故障した場合に、テレメータ送信機4A等およびテレメータ送信機4B等の他方を用いて電波の送信を継続することができる。つまり、回転軸用振動計測装置における冗長性を確保することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 振動計測装置(回転軸用振動計測装置)
2 ロータケース(筐体)
3A 縦振動用加速度計(加速度計)
3B 捩れ振動用加速度計(加速度計)
4A,4B テレメータ送信機(送信部)
5A,5B 送信アンテナ(送信部)
6A,6B 駆動電池(電源)
7 受信アンテナ(受信部)
8A,8B 受信機(受信部)
10 回転軸(軸系)
L 回転軸線(軸線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する軸系に固定される筐体と、
該筐体に配置され、前記軸系における軸線方向の加速度、および、前記軸系における周方向の加速度の少なくとも一方を測定する加速度計と、
前記筐体における前記軸線方向に対して対称な位置に配置され、前記加速度計から出力された加速度に関する電気信号を周波数変調して、電波として送信する一対の送信部と、
前記筐体における前記軸線方向に対して対称な位置に配置され、前記加速度計および前記一対の送信部に電力を供給する一対の電源と、
前記一対の送信部から送信された電波を受信して、前記加速度計から出力された加速度に関する電気信号を復調する受信部と、
が設けられていることを特徴とする回転軸用振動計測装置。
【請求項2】
前記軸系における軸線方向の加速度を測定し、前記一対の送信部の一方と電気的に接続された縦振動用加速度計と、
前記軸系における周方向の加速度を測定し、前記一対の送信部の他方と電気的に接続された捩れ振動用加速度計と、
が設けられ、
前記一対の送信部の一方および他方は、前記加速度に関する電気信号を、互いに異なる周波数に変調して、電波として送信することを特徴とする請求項1記載の回転軸用振動計測装置。
【請求項3】
前記軸系における軸線方向の加速度を測定し、前記一対の送信部の両者と電気的に接続された縦振動用加速度計と、
前記軸系における周方向の加速度を測定し、前記一対の送信部の両者と電気的に接続された捩れ振動用加速度計と、
が設けられ、
前記一対の送信部のそれぞれは、前記縦振動用加速度計および前記捩れ振動用加速度計から出力された前記加速度に関する電気信号を周波数変調し、電波として送信可能とされ、
前記一対の送信部の一方から前記受信機に向けて前記電波が送信されることを特徴とする請求項1記載の回転軸用振動計測装置。



【図1】
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【公開番号】特開2010−160105(P2010−160105A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3708(P2009−3708)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】