説明

回転運動をする移動体を備えた動作装置

【課題】視覚的癒し効果を保持しつつ、流体流れと運動との関係についての知育教材としても用いることができる、回転運動をする移動体を備えた動作装置を提供する。
【解決手段】回転軸30から所定距離離れた位置に固設され、前記回転軸の周りに回転移動できるようにされている少なくとも1つの移動体10と、流体流れ中に置かれて推進力を発生する推進力発生手段16であって、該手段が移動体に所定の角度範囲内で回転可能に立設されている推進力発生手段とを備え、少なくとも1つの移動体を流体流れ中に位置させることにより、移動体に推進力発生手段が発生する推進力が生じ、推進力発生手段が前記流体流れの方向に対して所定の角度をなして位置したときに、推進力発生手段が引き続き推進力を生ずべく、所定の角度範囲の一方の端からもう一方の端へ向けて回動して、少なくとも1つの移動体が回転軸の周りに連続的に回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転運動をする移動体を備えた動作装置に係わり、特に流体流れから推進力を生じて回転運動する移動体を備えた動作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥や飛行機、船などをモチーフとしたオブジェを適宜の数支持棒などでつないでワイヤなどで吊すことにより、それらのオブジェが風にそよぐ動きを作り出して視覚的なおもしろさやいわゆる癒し効果を見る人に与える物品は一般にモビールと呼ばれ、室内装飾品として、あるいは乳幼児をあやすための実用品としてよく知られている。このようなモビールは、例えば部屋の天井に吊されて、自然の風や室内空調の気流によって略不規則な動きを繰り返し、そのことが前記の癒し効果などに通じる。
【0003】
一方、風力をより効率的に利用して回転運動を行わせるような器具が、例えば特許文献1に開示されている。これは、花を盛った花器に風力を捉える翼やプロペラを取り付けて、その花器を回転自在に天井などから吊すことにより、風を受けると花器が回転するように構成されたものである。
【特許文献1】実用新案登録第3098993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモビールや回転式花器は、風によって不規則な揺動運動や回転運動を起こさせることによって、見る人に視覚的な効果を与えることができることは既述の通りである。しかし、風(一般化して「流体の流れ」と言ってもよい。)に吹かれることによって物体にどのような力が生じて運動することになるのかと言った、物理的、流体力学的な観点からの教育効果と言うことになると、前記した見た目の動きのおもしろさにとどまってほとんど期待することができないと考えられる。
【0005】
この発明は、上記従来のモビール等と同様の動きのおもしろさや視覚的癒し効果を保持しつつ、流体流れと運動との関係を扱う流体力学の面での学習教材の役割をも果たすことが期待される知育教材としても用いることができる、回転運動をする移動体を備えた動作装置を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の、および他の目的を達成するために、本発明の一態様は、略鉛直方向に延在する回転軸から所定距離離れた位置に固設され、前記回転軸の周りに回転移動できるようにされている少なくとも1つの移動体と、流体流れ中に置かれて推進力を発生する推進力発生手段であって、該手段が前記移動体に所定の角度範囲内で回転可能に立設されている推進力発生手段と、を備え、前記少なくとも1つの移動体を流体流れ中に位置させることにより、該移動体に前記推進力発生手段が発生する推進力が生じ、前記推進力発生手段が前記流体流れの方向に対して所定の角度をなして位置したときに、該推進力発生手段が引き続き推進力を生ずべく前記所定の角度範囲の一方の端からもう一方の端へ向けて回動して前記少なくとも1つの移動体が前記回転軸の周りに連続的に回転するように構成されている
動作装置である。
【0007】
前記推進力発生手段は、前記移動体に立設された棒状体に対して該棒状体の周りを所定の角度範囲内で回動しうるように取り付けられているシート状部材を備えて構成することができる。また、前記移動体を2以上備え、前記推進力発生手段が、前記流体流れから受ける押圧力に基づいて前記移動体の推進力を発生させることができる。あるいは、前記推進力発生手段は、前記流体流れから受ける揚力と前記流体流れから受ける押圧力とに基づいて前記移動体の推進力を発生させることができる。さらに、前記移動体は、前記回転軸との関係において揺動運動を成し得るように設置することができる。
【0008】
本発明の他の態様は、略鉛直方向に延在する回転軸から一定距離離れた位置に固設され、前記回転軸の周りに回転移動できるようにされている少なくとも1つの移動体と、流体流れ中に置かれて推進力を発生する推進力発生手段であって、前記移動体に立設された棒状体に対して該棒状体の周りを所定の角度範囲内で回動しうるように取り付けられているシート状部材を備え、該シート状部材が所定の角度範囲内で該移動体に対して回転可能に立設されている推進力発生手段と、を備え、前記移動体を流体流れ中に位置させたときに、前記推進力発生手段が前記流体流れの方向に対して所定の角度をなして位置すると、該推進力発生手段が引き続き推進力を生ずべく前記所定の角度範囲の一方の端からもう一方の端へ向けて回動するとともに、前記シート状部材の前記移動体に対する角度を調整することにより、前記推進力発生手段が発生する推進力を制御するための推進力制御手段が前記移動体内に設けられ、該推進力制御手段を制御することによって前記移動体の前記回転軸周りの回転速度を調節することができるように構成されている動作装置である。
【0009】
前記推進力制御手段には、前記シート状部材の前記棒状体から離れた側の端部に固定された紐状部材と、この紐状部材を所定長さ繰り出しあるいは巻き取りすることができる回転駆動手段と、該回転駆動手段の回転方向と回転量とを制御する駆動制御手段とを備えることができる。前記駆動制御手段が指令受信部をさらに備え、遠隔指令手段からの指令信号に応じて前記紐状部材の繰り出しまたは巻き取りを制御ように構成することができる。
【0010】
上記の各移動体は、前記推進力発生手段としての帆を備えた船のモデルとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、移動体の回転運動による視覚的な効果、なかんずく癒し効果を見る人に与えることができる。
【0012】
またこの発明によれば、流体流れによって移動体に生じる回転運動を観察することにより、流体力学に関する基本的な知見を得る助けとなる。さらに、移動体に生じる推進力を制御するための推進力制御手段を設けることによって、単なる移動体の運動の観察にとどまらず、移動体の持つ流力特性を能動的に変化させて回転運動との関係を体得することができるという知育上の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明を実施するに当たっての好適な実施形態につき、添付図面を参照しながら説明する。
【0014】
《第1実施形態》
図1〜図3を参照して本願発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る動作装置の模式的な斜視図、図2はその移動体の平面図、図3(a)〜(d)は本実施形態に係る動作装置の作用を説明するための模式図である。
【0015】
本実施形態の動作装置は、帆つきの船、この場合特にヨットをモチーフとした形態の2つの移動体10、各移動体10がその両端に固設されている水平支軸20、水平支軸20をその略中央部で回転自在に支持している垂直支軸30を主として備えて構成されている。
【0016】
移動体10は、前記のようにそれぞれヨットの形態を模しており、合成樹脂成形体、あるいはより簡単には可塑性線状体(針金など)によりヨットの船体の形状に形成した艇体12の上部に柱材14がほぼ垂直に立設されている。本実施形態では、この柱材14の上端が水平支軸20の両端に固接され、水平支軸20の両端に各移動体10が吊り下げ固定されている構成とされている。移動体10の固定構造としてはこれに限らず、水平支軸20の両端が各移動体10の艇体12側部に直接固接されるようにしてもよい。また、針金などによって形成する場合には、艇体12と水平支軸20とを連続した一体のものとして構成してもよい。
【0017】
移動体10の柱材14には、ヨットの帆に相当する略直角三角形の平面形状を有する可動シート状部材16が、柱材14に対してその一辺を沿わせて配設されている。可動シート状部材16の前記一辺の両端部は柱材14の周りに回動可能な2ヶ所の回動支持部18によって、可動シート状部材16が柱材14の周りに回動自在となるように取り付けられている。(図1に破線両矢印で示している。)すなわち、可動シート状部材16は艇体12の長手方向となす角度が可変とされるように柱材14に取り付けられている。なお、可動シート状部材16を柱材14に固設して、柱材14が艇体12に対して回動できるように取り付けられる構成としてもよい。可動シート状部材16を形成する材料は、移動体10の大きさにもよるが、一般には布材を用い、状況によってプラスチックシートなどの合成樹脂材を適宜用いることができる。
【0018】
水平支軸20は、略中央部で垂直支軸30の上端部に回転自在に取り付けられている。垂直支軸30はほぼ垂直に立設された棒状の部材であり、水平支軸20との間には垂直支軸30を中心として水平支軸20が回転できるよう適宜の支持構造が介設されている。この支持構造は、例えば、水平支軸20の下面に設けた凹面部を垂直支軸30の上端から上方へ突設したニードル状部材(図示しない)の尖端で支持するといった簡易な構造であってよく、もちろん一般的な回転軸受構造を用いても、その他の適宜な支持構造としてもよい。また、水平支軸20と垂直支軸30とを一体として構成し、垂直支軸30の下端部を支える垂直支持部32に回転支持構造を設けて水平支軸20が回転しうるようにしてもよい。なお、垂直支持部32は動作装置100全体を安定に支持するための適当なベースに設ければよい。ただし、垂直支軸30の上端面上に単に載置したり、浅い凹面で支持したりした場合には、移動体10が強い風を受けたときに水平支軸20ごと飛ばされてしまうおそれがあるので、垂直支軸30の上面に穿設した孔部に水平支軸20下面から突設させたピン状部材を差し込むといった構成をとって確実に接続することが好ましい。
【0019】
なお、上記のように水平支軸20を垂直支軸30で回転可能に支持するほか、水平支軸20の中央付近を回転可能に吊り下げる構成とすることができる。
【0020】
図2を参照すると、移動体10の艇体12にあってその船尾側両側部には、それぞれ回動規制部材12aが設けられている。本実施形態では、各回動規制部材12aは艇体12の上面に立設された柱状突起ないしピンであって、ヨットの帆に相当する可動シート状部材16がそれぞれの回動規制部材12aの位置まで回動するとこれに当接して、可動シート状部材16がそれ以上回動するのを防ぐ、可動シート状部材16の回動範囲を制限するための部材として機能する。なお、図1においては、艇体12の中心線上に立設したフォーク状の部材が同じ役割を果たしている。つまり、そのフォーク状部材の二股に分かれた分岐部の間に可動シート状部材16が挟み込まれる構成となっていて、それら各分岐部が回動規制部材12aとなっている。これは、可動シート状部材16がなんら制約を受けずに柱材14の周りに回動する構成であれば、風(空気流)から受ける力を効率よく推進力に変換することができず、移動体10を十分に回転運動させることができなくなるからである。
【0021】
回動規制部材12aの機能は、実物のヨットにおいて帆(セイル)の角度を調整するためのロープ(ヨット帆走の分野では「シート」という用語が慣用されるが、本明細書中では他の用語との混乱を避けるため一般的な「ロープ」の用語を用いる。)が果たす役割に相当する。なお、本実施形態では回動規制部材12aを艇体12上面に設けた突起物とする構成としているが、これに限定されることなく、回動規制部材12aの構成としては、可動シート状部材16の下端縁部を挟み込むように略U字状の部材を設置する(この場合、U字状部材の開口部を挟んで対向する腕状部がそれぞれ回動規制部材12aとして作用する。)等の、他の適宜な構成を採用することができる。
【0022】
なお、本実施形態では移動体10が机や棚の上などの平面上に支持され回転するようになっている構成を示したが、室内の天井から水平支軸20を回転自在となるように吊すといった他の構成を採用することも可能である。
【0023】
次に、図3を参照しつつ、本実施形態に係る動作装置の作用について説明する。図3は、本動作装置の模式的な平面図である。いま図3にあっては、紙面上方からの空気流(以下簡単のため必要に応じて「風」とも言う。)がある場合を考える。2つの移動体10を説明の便宜上移動体10Aと10Bとして識別すると、図3(a)の状態では、移動体10A、10Bとも艇体12の側方から風を受けており、それぞれの可動シート状部材16は風下側の回動規制部材12aに当接している。このとき移動体10A、10Bは、おもに風が可動シート状部材16の風上側の面に対して及ぼす押圧力の船首方向分力を推進力として時計回りに推進される。
【0024】
移動体10A、10Bが移動して図3(b)の状態になると、風が可動シート状部材16を風上側から押圧する力は減少する一方、空気流の可動シート状部材16周りの流れによって生じる揚力が、推進力を発生するようになる。このときに可動シート状部材16が空気流から受ける力の様子を図3(d)に概略図示している。可動シート状部材16が空気流の向きに対して角度をもって位置しており、可動シート状部材風上側に沿った流速は、可動シート状部材風下側の流速よりも小さくなるため、両者の静圧の差によって可動シート状部材16には角度に応じた揚力が作用する。そして、この揚力の船首方向分力が、移動体10Aの推進力となる。このとき、もう一方の移動体10Bは、引き続き船尾側からの追い風による推進力を得ている。
【0025】
図3(b)及び(c)に示す90°(空気流の向きに対して左右±45°)の範囲は、移動体10Aにとって船首に対する向かい風の角度が左右それぞれ45°より小さくなる範囲を示す。おおむねこの範囲においては、前記した揚力が十分に得られず可動シート状部材16が風から受ける抗力の影響がより大きくなるために、移動体10Aは風から推進力を得ることができない。しかし、この範囲ではもう一方の移動体10Bが引き続き追い風によって推進力を得ているので、移動体10A、10Bは一体として回転し続ける。移動体10A、10Bがそれぞれ空気流の方向に対して左から右へとその船首の向きのなす角度が変わるとき、可動シート状部材16は一方の回動規制部材12aに当接している状態から他方の回動規制部材12aに当接する状態に回動する。これは実物のヨットにおいて「タック」あるいは「ジャイブ」と呼ばれる挙動に対応し、これによって移動体10A、10Bの可動シート状部材16は連続して効率的に推進力を発生させることができる。
【0026】
なお、移動体10を一つのみ設けた構成では、前記した風向きが船首に対して45°より小さい角度となる範囲では推進力が得られず、また他の移動体10が推進力を補完することもできないが、このような範囲を惰性で通過するのに必要な速度が当該範囲進入前に得られるのであれば一つの移動体10のみが連続的に回転する動作装置が得られる。ただし、可動シート状部材16として樹脂等で形成した平板を用いる場合には、シート状部材16のたわみによる揚力発生が期待できないため、1つの移動体10のみを設ける構成では向かい風を受けて移動体10が止まってしまい、連続回転運動を維持できない。したがって、この場合には2以上の移動体10を設けて一つの移動体10が向かい風からの抵抗を受けるときには他の移動体10が受ける推進力でこれを補完する。
【0027】
次に、この実施形態の変形例について、図4を参照して説明する。図4の動作装置は、図1〜図3に示した第1実施形態に係る動作装置と基本的に同等の構成を有しているが、第1実施形態の水平支軸20に相当する水平支持体20’の構成と、この水平支持体20’への各移動体10の取り付け構造が異なっている。
【0028】
水平支持体20’は移動体10A、10Bの取り付け位置を低くするために垂直支軸30の支持部から略Z字状に腕を垂下させたような形状としているが、これは一例であって、前記第1実施形態のように、単なる棒状の水平支軸の形状のほか、適宜の形態とすることができる。
【0029】
ヨットの形態とした各移動体10は、実物のヨットにおける「キール」あるいは「センターボード」の形態を模した板状の弾性部材12bを介して水平支持体20’の両腕外端部に固設されている。本変形例において移動体10が垂直支軸30の周りに回転する作用は第1実施形態と同様であるが、本変形例にあっては、可動シート状部材16が空気流(風)に押されると弾性部材12bがたわんで、ヨットが「ヒール」する(風下側に傾く)挙動も再現することができるため、ヨット型移動体10の動きが視覚的によりおもしろいものとなるとともに、実物のヨットの風に対する挙動を学ぶ助けにもなる。なお、弾性部材12bとしては、形状にこだわらず種々の材質のばねやゴムなど、一般的な弾性材料を用いることができる。あるいは、移動体10を水平支持体20’に対して回転軸などを介して揺動自在に取り付けるとともに、移動体10の下部にキール等に模したおもりを設けておく振り子のような構成とすることもできる。
【0030】
図5に、第1実施形態の別の変形例を示す。これは、前記した第1実施形態あるいはその変形例に係る動作装置100全体を覆うようにドーム状のカバー50を設けた構成である。図示の変形例ではカバー50に電動ファン52を設け、動作装置100に関して対向する位置に開口部54を設けている。このような構成とすれば、例えば適宜のフィルターなどを併せて採用することによって、動作装置100にほこりや汚れがたまるのを防ぐことができるとともに、周囲が無風の状態であっても電動ファン52を作動させて動作装置100に風を送ることで移動体10を回転させることができる。また、カバー50の材質は透明プラスチック材料ほか種々のものを用いることができ、またその形状も自由に設計することができるとともに、LED等の発光素子などを組み合わせることによってカバー50の表面に幻想的な色彩や模様を表出させることができるといった効果を奏する。なお、電動ファン52を省略して対向する開口部54を風の通路として2ヶ所設けるようにしてもよく、その場合カバー50は主としてほこり除けや装飾材として作用することになる。
【0031】
以上説明してきた、本発明の第1実施形態とその変形例については、微風でも移動体10が回転するように、水平支軸20、水平支持体20’とこれを支持する垂直支軸30との間の回転摩擦は極力小さくすることが望ましい。しかし、そうした場合に、移動体10が連続してある程度強い風を受けたときには移動体10の回転が速くなりすぎてしまい、癒し効果が期待できるような視覚効果が得られなくなるという問題が考えられる。このような問題を簡易に解決しうる水平支軸20等の支持構造を図6に示す。水平支軸20のほぼ中央部に垂設された細い棒状の水平支軸支え22が、垂直支軸30の上端面に凹設された支持孔32に差し込まれている。水平支軸支え22にはこれを取り囲むように筒状のブレーキ部材24が取り付けられている。ブレーキ部材24はゴムなどの摩擦係数が大きい材料で形成し、その側面と支持孔32の内側面との間に適度の間隙が生じるように形成する。このような構成とすることにより、移動体10、すなわち水平支軸20の回転速度が過大となって水平支軸支え22が傾斜するとブレーキ部材24と支持孔32の内側面とが接触して水平支軸20の回転にブレーキがかかるようになり、強い風にも回転が過大とならない効果が得られる。なお、水平支軸20の垂直支軸30による支持部付近上面に適当な大きさの倒立振り子を設けるようにすれば、水平支軸20のわずかな傾斜で水平支軸支え22と支持孔32内側面との摩擦によるブレーキが作用するように構成することができる。
【0032】
《第2実施形態》
次に、本発明の第2実施形態について、図7〜図9を参照して説明する。この第2実施形態は、第1実施形態及びその変形例において、ヨットの形態に構成した移動体10の可動シート状部材16(「メインセイル」に相当)の艇体12に対する角度を一定の範囲で制御することができるようにしたものであり、これにより実物のヨットを帆走させる際の操作感を再現するとともに、例えば2つ以上の移動体(ヨット)10の速さを競うレースを行うことができるようになる。
【0033】
図7に第2実施形態における移動体10の模式的な平面図を示す。これまでの実施形態と同様に、艇体12には柱材14が立設され、これに対して回動可能となるように、可動シート状部材16が取り付けられている。前記した実施形態にあっては、可動シート状部材16は一枚の略直角三角形状に形成された布材又は薄板状部材として構成していたが、本実施形態にあっては、可動シート状部材16の下端縁に沿って棒状のブーム16aが設けられており、可動シート状部材16の下端縁外端部がブーム16aの一端部に固接されている。このブーム16aは柱材14の周りに回動自在に取り付けられており、したがって可動シート状部材16はブーム16aとともに回動し、ブーム16aの移動が規制されれば可動シート状部材16の位置もブーム16aとともに規制される。
【0034】
ブーム16aの下端縁外端部には、実物のヨットと同じように、ロープ74の一端部が結びつけられている。ロープ74は主として、可動シート状部材16(メインセイル)の風に対する角度を適切に調整して風からセイルが受ける力を常にできるだけ効率的にヨットの推進力として利用することができるようにするための制御具として捉えることができる。すなわち、追い風を受けてジャイブ(艇体に対するセイルの向きが追い風を受けて左右入れ替わる動き)した後は、向かい風になるまでセイルに対して最も効率的に風が当たるようにロープ74を巻き取っていく。そして、向かい風に変わりセイルがタック(艇体に対するセイルの向きが向かい風を受けて左右入れ替わる動き)したら、風に合わせてジャイブするまで徐々にロープ74を繰り出していくことになる。またロープ74はブーム16aが柱材14に対して所定の角度以上回動しないように規制する第1実施形態における回動規制部材12aと同等の機能も有する。
【0035】
ロープ74の他端部は、ガイド78に設けられた貫通孔78aを通して駆動装置70の出力軸70aに固接されたプーリ72に巻き付けられている。ガイド78は、ブーム16aがマスト14の周りを回動したときに絡まないようロープ74を貫通孔78aによって案内する。駆動装置70はロープ74を繰り出し、及び巻き取るために出力軸70aを回転駆動させるためのモータ(図示せず)及びモータと出力軸70aとの間に介設された、ギヤボックス等の減速伝動機構(図示せず)を収装してなる。駆動装置70のモータ回転方向を変えて出力軸70aを回転させることにより、プーリ72に巻き付けられているロープ74を巻き取ったり繰り出したりすることができる。ロープ74を巻き取ればブーム16aの回動範囲は狭くなり、ロープ74を繰り出せばブーム16aの回動範囲は広くなる。なお、ステッピングモータなどを用いれば、モータ出力軸により直接プーリ72を駆動することで、前記減速伝動機構を省略することもできる。
【0036】
ロープ74には、ガイド78の貫通孔78aを挟んで2つのストッパ76が固定されていて、所定の長さを超えてロープ74が繰り出され、あるいは巻き取られるのを防止するようになっている。すなわち、いずれかのストッパ76がガイド78の貫通孔78aに引っかかると、ロープ74はそれ以上繰り出され、あるいは巻き取られることなくブーム16aの回動範囲もその範囲に規制される。
【0037】
駆動装置70の動作は、制御部60によって制御される。この制御部60は例えば後述するコントローラ64及び通信インターフェイス62からの制御指令を受信する制御用プロセッサ、プロセッサからの出力信号に基づいてモータ制御用の駆動電流を生成するドライブ回路、通信インターフェイス62、制御部60及びモータ駆動に要する電力を供給するための電源等を備えて構成される。
【0038】
通信インターフェイス62は、例えば市販の汎用赤外線コントローラ64(テレビ、ビデオ等の民生汎用AV機器の遠隔制御に用いられるいわゆる赤外線リモコンを利用することができる。)が射出する赤外線制御信号を受信して所定の変換を行い制御部60に転送するもので、赤外線受信ポートと所要の信号処理回路とを備えて構成することができる。通信インターフェイス62、制御部60、駆動装置70の間は、所要の信号線で接続されている。
【0039】
図8に本第2実施形態におけるロープ74の巻き取り、繰り出し制御の一例を示す。前述の通り、本発明の移動体、すなわちヨット操縦を簡単に楽しめるように、コントローラ64としては家庭でテレビやビデオなどのAV機器用に使用されているいわゆるリモコンユニットを利用している。ここでは簡単のためにコントローラ64を以下「リモコン」と略称する。民生汎用リモコンの出力信号は、約70msのオンパルス信号とそれに続く約30msのオフ期間の約100msを1サイクルとしている。リモコンの操作ボタンを操作し続けることで、このサイクルを反復するパルス信号が赤外線にエンコードされて射出される。このリモコンから移動体10へ与える指令としては、(1)ロープの巻き取り又は繰り出しの種別、(2)ロープの巻き取り又は繰り出し量の2つの情報が伝達できればよい。
【0040】
そこで、本実施形態では、制御部60において、通信インターフェイス62からの信号受信開始から約400ms経過後の信号受信有無によってロープの巻き取りか繰り出しかの判別を行っている。より具体的には、図8(a)、(b)に示すように、約100ms/サイクルの赤外線リモコン信号パルスの有無を、約120msのリトリガラブルワンショットパルスによって検出するように構成した。ワンショットパルスはリモコン信号のオンパルス立ち上がりエッジで約100msごとにリトリガがかかるようにした。図8(a)の例では、リモコン信号の3サイクル目で信号が途絶していて、リトリガされたワンショットパルスはリモコン信号途絶後の約320ms時点でリモコン信号がなくなっていることを検出している。これにより、制御部60はリモコン信号の継続期間が400ms未満であったことを検知し、そのリモコン信号がロープ巻き取り指令であると判定する。そして、駆動装置70のモータを所定の回転方向に一定時間駆動してロープを巻き取る。リモコン操作者の操作としては、操作ボタンをいわゆる「ちょん押し」する動作がロープの巻き取り指令を表すことになる。
【0041】
一方、図8(b)の例では、リモコン信号が5サイクル目も継続しており、リトリガされたワンショットパルスはリモコン信号が400msを超えて存在していることを検出することができる。これにより、制御部60はリモコン信号の継続期間が400ms以上であったことを検知し、そのリモコン信号がロープ繰り出し指令であると判定する。そして、駆動装置70のモータを巻き取りとは逆の所定の回転方向に400msを超えてリモコン信号が継続している時間だけ駆動して、ロープを繰り出す。リモコン操作者の操作としては、操作ボタンをいわゆる「長押し」する動作がロープの繰り出し指令を表すことになる。上記の経過時間として設定した400ms、ワンショットパルスの長さ、一の指令に対応する巻き取りあるいは繰り出し量は、実験的に好適な値を見いだして定めればよい。
【0042】
図9に、第2実施形態による動作装置100の外観を模式的に示す。図9ではヨットの形態の移動体10が一つだけ設けられており、水平支軸20には移動体10と反対側の端部に釣り合いおもり80を取り付けてバランスをとっている。移動体10を取り付け高さや回転半径が互いに異なるように2以上設け、制御信号のチャンネルが異なる複数のリモコンでそれぞれ独立して制御できるように構成すれば、それら複数の移動体による模擬ヨットレースを行うことも可能である。
【0043】
本実施形態の場合、移動体10が空気流(風)を受けたときの作用は第1実施形態に関して説明したのと同様であるが、セイル周りの構成がより実物に近づけてあるため、より実物に近い挙動を視覚的に楽しむことができ、また実物のヨットを帆走させる場合に近い操作感を味わうことができる。それによって、単なる動きの視覚的なおもしろさや癒し効果を得られるだけでなく、流体力学理論に基づいたヨットの帆走原理を学ぶ助けとなる知育教材としても活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態に係る動作装置の全体斜視図である。
【図2】図1の動作装置に設けられるヨット型移動体の平面図である。
【図3】(a)〜(c)は図1の動作装置の作用を示す説明図、(d)は空気流が図1の移動体に及ぼす力の説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態の変形例を示す全体斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態の他の変形例を示す全体斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る動作装置の水平支軸支持構造を示す部分断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る動作装置に設けられるヨット型移動体の平面図である。
【図8】図7の移動体を制御するための制御信号の一例を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る動作装置の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
10 移動体
12 艇体
12b 弾性部材
14 柱材(棒状体)
16 可動シート状部材(推進力発生手段)
16a ブーム
20 水平支軸
30 垂直支軸(回転軸)
60 制御部(駆動制御手段)
62 通信インターフェイス(指令受信部)
64 コントローラ(遠隔指令手段)
70 駆動装置(回転駆動手段)
74 ロープ(紐状部材)
100 動作装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略鉛直方向に延在する回転軸から所定距離離れた位置に固設され、前記回転軸の周りに回転移動できるようにされている少なくとも1つの移動体と、
流体流れ中に置かれて推進力を発生する推進力発生手段であって、該手段が前記移動体に所定の角度範囲内で回転可能に立設されている推進力発生手段と、を備え、
前記少なくとも1つの移動体を流体流れ中に位置させることにより、該移動体に前記推進力発生手段が発生する推進力が生じ、前記推進力発生手段が前記流体流れの方向に対して所定の角度をなして位置したときに、該推進力発生手段が引き続き推進力を生ずべく前記所定の角度範囲の一方の端からもう一方の端へ向けて回動して前記少なくとも1つの移動体が前記回転軸の周りに連続的に回転するように構成されている
動作装置。
【請求項2】
前記推進力発生手段が、前記移動体に立設された棒状体に対して該棒状体の周りを所定の角度範囲内で回動しうるように取り付けられているシート状部材を備えて構成されている請求項1に記載の動作装置。
【請求項3】
前記移動体を2以上備え、前記推進力発生手段が、前記流体流れから受ける押圧力に基づいて前記移動体の推進力を発生させる請求項1に記載の動作装置。
【請求項4】
前記推進力発生手段が、前記流体流れから受ける揚力と前記流体流れから受ける押圧力とに基づいて前記移動体の推進力を発生させる請求項1に記載の動作装置。
【請求項5】
前記移動体が、前記回転軸との関係において揺動運動を成し得るように設置されている請求項1に記載の動作装置。
【請求項6】
略鉛直方向に延在する回転軸から一定距離離れた位置に固設され、前記回転軸の周りに回転移動できるようにされている少なくとも1つの移動体と、
流体流れ中に置かれて推進力を発生する推進力発生手段であって、前記移動体に立設された棒状体に対して該棒状体の周りを所定の角度範囲内で回動しうるように取り付けられているシート状部材を備え、該シート状部材が所定の角度範囲内で該移動体に対して回転可能に立設されている推進力発生手段と、を備え、
前記移動体を流体流れ中に位置させたときに、前記推進力発生手段が前記流体流れの方向に対して所定の角度をなして位置すると、該推進力発生手段が引き続き推進力を生ずべく前記所定の角度範囲の一方の端からもう一方の端へ向けて回動するとともに、前記シート状部材の前記移動体に対する角度を調整することにより、前記推進力発生手段が発生する推進力を制御するための推進力制御手段が前記移動体内に設けられ、該推進力制御手段を制御することによって前記移動体の前記回転軸周りの回転速度を調節することができるように構成されている
動作装置。
【請求項7】
前記推進力制御手段が、前記シート状部材の前記棒状体から離れた側の端部に固定された紐状部材と、この紐状部材を所定長さ繰り出しあるいは巻き取りすることができる回転駆動手段と、該回転駆動手段の回転方向と回転量とを制御する駆動制御手段とを備えている請求項6に記載の動作装置。
【請求項8】
前記駆動制御手段が指令受信部をさらに備え、遠隔指令手段からの指令信号に応じて前記紐状部材の繰り出しまたは巻き取りを制御することができる請求項7に記載の動作装置。
【請求項9】
前記移動体が、前記推進力発生手段としての帆を備えた船のモデルである請求項1又は6に記載の動作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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