説明

回転電極式電気集塵機

【課題】 電極板や塵埃除去手段に塵埃の汚れを溜め込まず、電極板の性能を回復再生することで極板の長寿命化と火災リスクを低減させ、メンテナンスフリーの電気集塵機を実現する。
【解決手段】 複数の回転電極板11,21を駆動モーター33により回転される回転軸30A,30Bの上に並設し、各回転電極板11,21の間に回転電極板と逆極性の固定電極板12,22を並設し、回転電極板11,21および固定電極板12,22で構成した電気集塵部10,20に連接して粉塵吸引用のブロアー3を設置した回転電極式電気集塵機において、固定電極板12,22の一部に設けた切り欠き空間部12K,22Kに、回転軸30A,30Bにより搬送移動する環状帯体40,50を配置し、回転電極板11,21に吸着される塵埃を当該環状帯体40,50により電気集塵部外まで搬送可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接作業時に発生するヒューム粉塵であるとかオイルミストといった粘性の高い粉塵を吸引して、工場内での空気浄化をおこなう産業用電気集塵機に関し、特に、回転電極板に堆積する汚れを除去して再生しながら稼働する回転電極式電気集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒューム粉塵であるとかオイルミストといった粘性の高い粉塵を吸引して工場内の空気浄化をおこなう産業用電気集塵機には、微粉塵にプラス若しくはマイナスの帯電を起こさせる荷電極部と、この帯電した微粉塵を吸着するアース接地状態の集塵電極部を備え、この集塵電極において吸着させた微粉塵を堆積させて回収させる電気集塵機が使用されている。
【0003】
しかし、この種の電気集塵機では、例えば特許文献1に記載されているように、電気集塵エレメントのイオン化電極線や接触子や碍子等の汚れを除去して集塵性能を維持するために、頻繁に電気集塵エレメントを取り出して洗浄する必要があって、メンテナンスが非常に煩雑であった。
【0004】
そこで、例えば特許文献2の様に、集塵電極を回転させながらスクレーパ状のカキトリ手段が表面の汚れをそぎ落とすタイプの電気集塵機や、特許文献3の様に集塵機内部に高圧水洗浄機能を搭載した電気集塵機が開発された。
【特許文献1】特開平5−200325号公報
【特許文献2】特開平8−215605号公報
【特許文献3】特開2004−148296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献2に記載された回転電極式集塵機の堆積塵埃除去手段(カキトリ機能)のように、スクレーパー状のもので回転電極板の表面の汚れを落とすタイプの場合は、集塵する塵埃の種類によっては粘性が高いもので固着しやすく、スクレーパの上にこの塵埃が堆積して、最悪は回転極板と固定極板間に渡って堆積した塵埃によって電極がショートして火災に至る危険性があるため、定期的に堆積した塵埃を除去する必要があり、その際には複数の回転電極の間にあるスクレーパを洗浄するのには完全な分解清掃をおこなうか、或いは、電極部をユニット化して取り外して全体を洗浄液等に浸けて洗浄する必要があり、このメンテナンスには可成りの費用と長時間の稼働停止が必要であった。
【0006】
また、上記特許文献3に記載されたように、電気集塵部の内部に高圧水で洗浄するモードを設けた電気集塵機では、給水・排水設備や噴出ポンプなどの付帯設備が必要であり、装置全体が大型化しコストアップしてしまい、さらに洗浄液での洗浄式電気集塵機では乾燥時間が必要で休止時間が必要となるため、連続稼働には適さないという問題もあった。
【0007】
したがって本発明の技術的課題は、電極板や塵埃除去手段に塵埃の汚れを溜め込まず、電極板の性能を回復再生することで極板の長寿命化と火災リスクを低減させることができる、メンテナンスフリーの電気集塵機を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 上記の技術的課題を解決するために、本発明の請求項1に係る回転電極式電気集塵機は、アース接地状態と成す複数枚の回転電極板を、駆動モーターにより回転する回転軸上に間隔をあけて並設し、各回転電極板の間にはプラス極性若しくはマイナス極性の電圧を印加させた固定電極板を夫々介在せしめると共に、これ等回転電極板および固定電極板で構成した電気集塵部に連接して粉塵吸引用のブロアーを設置し、且つ、電気集塵部の上流側には荷電用電極を配置した回転電極式電気集塵機であって、前記複数枚の固定電極板の夫々に、少なくとも外側部から中心部に向けて連続する空間部を切り欠き形成し、これ等各固定電極板の空間部内には、回転駆動力によって搬送移動される無端状の環状帯体を、側縁部が上記隣接する回転電極板の側面に接触、若しくは、近接するように配置して、上記回転電極板に吸着される塵埃を当該環状帯体でカキトリしながら上記電気集塵部の外まで搬送可能に構成したことを特徴としている。
【0009】
(2) また、本発明の請求項2に係る回転電極式電気集塵機は、前記環状帯体が、前記回転電極板を回転する回転軸によって搬送移動されることを特徴としている。
【0010】
(3) また、本発明の請求項3に係る回転電極式電気集塵機は、前記搬送移動される環状帯体の搬送経路中で且つ前記電気集塵部の外に、当該環状帯体に当接して環状帯体に付着して搬送されて来る塵埃を除去することができる搬送塵埃除去手段を設けたことを特徴としている。
【0011】
(4) また、本発明の請求項4に係る回転電極式電気集塵機は、前記電気集塵部の本体と前記固定電極とを絶縁する碍子に対して、当該碍子の外周に往復摺動移動可能に嵌合して堆積する塵埃を除去することができる堆積塵埃除去手段を設けて、当該堆積塵埃除去手段を前記回転電極板を駆動する駆動軸によって駆動することを特徴としている。
【0012】
(5) 更に、本発明の請求項5に係る回転電極式電気集塵機は、前記電気集塵機の内部に前記電気集塵部を複数段設け、最上流に配置した初段の電気集塵部の固定電極板上に複数の針状の荷電用電極を固定電極板の板面と平行に並設し、且つ、当該初段の電気集塵部より後段の電気集塵部には放電用電極を配置しないことを特徴としている。
【0013】
上記(1)で述べた本発明の請求項1に係る手段によれば、集塵電極に付着した塵埃を環状帯体でカキトリしながら電気集塵部外に搬送するため、集塵電極に塵埃が堆積して集塵性能が低下することがない。また、環状帯体がカキトリした塵埃を電気集塵部外に搬送するために、塵埃の堆積による電極間のショートの危険性も無く、安全な電気集塵機が実現できる。
【0014】
上記(2)で述べた本発明の請求項2に係る手段によれば、電極板を回転させるための一つの駆動力にて環状帯体を駆動し、且つ、カキトリした塵埃の搬送を同時に行なうことで、堆積した塵埃の除去と搬送に特別な動力を追加する必要もなく、集塵機のコストアップが抑えられる。
【0015】
上記(3)で述べた本発明の請求項3に係る手段によれば、塵埃を電気集塵部外に搬送したあとに別の搬送塵埃除去手段を設けたため、搬送する環状帯体に塵埃が堆積することがない。また、この外部の搬送塵埃除去手段には周囲に電極が無いために、堆積した塵埃を払い落としたり、簡単な操作で除去することが可能であると共に、連続稼働しながら塵埃の除去ができる。
【0016】
上記(4)で述べた本発明の請求項4に係る手段によれば、塵埃を吸着させる集塵部以外でも、メンテナンスなしで連続稼働させた場合に、次第に塵埃が付着すると危険な箇所として固定電極部の絶縁碍子周辺があり、ここに塵埃が堆積してショートすると最悪は火災などの危険があるが、この部分も回転電極の駆動力を利用して堆積塵埃除去手段を稼働させることで、絶縁碍子に付着した塵埃を除去することができるため、メンテナンスなしでの連続稼働による火災リスクが解消される。
【0017】
さらに上記(5)で述べた本発明の請求項5に係る手段によれば、荷電用電極を上流部にのみ配置して、上流で流入粉塵への荷電による帯電を最大限促進し、下流においては回転電極と固定電極の対向面積を最大にして集塵性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上述べた次第で、本発明に係る回転電極式電気集塵機によれば、最小限の装置構成で極板再生機能が実現でき、極板寿命の延命により電気集塵機のメンテナンスフリー化が可能となり、さらに火災リスクも低減化できたため、例えば、オイルミストの混ざった粉塵を回収して清浄空気を排出させる集塵機の連続稼働が必要な工場等に実施して、頗る有益なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、上述した本発明に係る回転電極式電気集塵機の実施の形態を図面と共に説明するが、これらの実施形態は本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
【0020】
図1は本発明の実施例を示す電気集塵機の外観図、図2および図3は本発明の実施例を示す電気集塵機の内部構成図、図4は本発明の実施例を示す荷電用電気集塵部のユニットを示した図、図5は本発明の実施例を示す集塵用電気集塵部のユニットを示した図、図6および図7は本発明の実施例を示す電気集塵部の動作説明図、図8および図9は本発明の他の実施例を示す電気集塵機の構成図であって、次に、これ等図面の記載に従って本発明の構成を詳細に説明する。
【0021】
図1(1)は本発明の実施例を示す電気集塵機の平面図であり、図1(2)は正面図である。これ等の図面において、夫々符号1にて全体的に示した電気集塵機には、吸気ダクト2から本体1A内に含塵空気が流入するが、吸気ダクト2と本体1Aの間には図示しない金網状のプレフィルターが配置されており、このプレフィルターにより極めて大きな粉塵と、火種を本体1Aの内部に吸引させない様になっている。また、この電気集塵機1では図1(2)で示した二点鎖線Rの様に含塵空気が流入し、本体1A左上のブロアー3を通じて排気ダクト4からは集塵後の清浄空気が排出される。尚、図1(1)と(2)において、1Sと1Tは本体1Aに設けたメンテナンス用の開閉扉を示し、図1(2)において10と20は本体1A内に設けた荷電用と集塵用の各電気集塵部、5はオイルパン、6は一次フィルター廃油部、7は排水部を示す。
【0022】
図2は本発明の実施例を示す電気集塵機1の内部構成を示し、本体1Aの内部には流入側に上述した荷電用電気集塵部10が、排気側に集塵用電気集塵部20がそれぞれユニット構成で配置されており、図1(2)で示した様に吸気ダクト2から流入した含塵空気は、まず荷電用電気集塵部10を上下に通過し、本体1Aの底部のオイルパン5の上方で図面上左に進み、次いで、集塵用電気集塵部20を下から上に通過して前述の様にブロアー3に通じている。
【0023】
更に図3は、本発明の実施例を示す電気集塵機1の内部構成を正面から見た図であって、前述の荷電用電気集塵部10と集塵用電気集塵部20のほぼ中央に水平に回転軸30A,30Bが貫装され、右側の荷電用電気集塵部10の外枠10Tのさらに右側に回転軸30Aと同軸の平歯車31が一体化され、その平歯車31にギヤヘッド32を介してモーター33からの回転駆動力が伝達される。また、左側の集塵用電気集塵部20の回転軸30Bは、本体1Aの中央部でカップリング30Xにより右の荷電用電気集塵部10の回転軸30Aと一体化され、モーター33からの回転駆動力が伝達される。
【0024】
各回転軸30A,30Bには、夫々複数枚の回転電極板11…と21…が夫々間隔をあけて回転軸30A,30Bと一体固定されており、モーター33の駆動によりこれ等各並設された回転電極板11…,21…が回転するが、その回転速度は1分間に1回転程度と極めて遅いもので、その減速手段はギヤヘッド32内部に納められている。また、各回転軸30A,30Bの正面向かって左側の突出部にはそれぞれ刷子34,35が接触していて、この刷子34,35を介して各回転電極板11,21はアース接続されており、一方、図示しない電圧供給手段より両電気集塵部10,20の各固定電極板12…,22…には、プラスの高電圧が印加されている。
【0025】
また、上記並設された各回転電極板11…,21…の各間隔内には環状帯体40…,50…がそれぞれ介在され、これら複数の環状帯体40…,50…は各電気集塵部10,20の下側にある図示しないプーリーにより適度な張力を与えられている。なお、環状帯体40と50の幅は各回転電極板11…,21…間の幅にほぼ等しく、実施例では左側の集塵用電気集塵部20の環状帯体50は幅が狭く、右の荷電用電気集塵部10は幅が広い環状帯体40を使用している。これら環状帯体40,50の幅の半分の距離隔てた位置には前述した固定電極板12,22が夫々位置しており、すなわち各回転電極板11…,21…間の距離の中間の位置に固定電極板12…,22…がそれぞれ配置されている。
【0026】
図4は本発明の実施例を示す荷電用電気集塵部10であり、図4(1)は荷電用電気集塵部10のユニットの外観を示し、図4(2)はその要部の構成を示している。前述した様に、左側のベアリング36より外側に突出した回転軸30Aの突出部には、刷子34が接触しており、この刷子34はリン青銅等の弾性を有する材料で製作されているが、回転軸30Aとの接触部だけは図示しないがカーボン材が一体化されており、ちょうどモーターの整流子のような構造を採用していて、その固定側は単に外枠から立ち上がった取付け部に固定されているだけであり、基本的には外枠10Tを含めて荷電用電気集塵部10の本体はアース接続されている。また外枠10Tの側平面部には碍子取付け板13が固定され、碍子取付け板13は外枠の側平面部から直角に外側に向けて水平に立ち曲げられ、その部分に円柱状の電気的絶縁性を有する碍子14が4本固定されている。それらの碍子14…には上下にそれぞれ分かれて取り付けられた固定電極取付板15…を介して固定電極板12…が取り付いているが、稼働時にはこれらの固定電極板12…には前述の様に図示しない電圧供給手段よりプラスの高電圧が印加される。なお、刷子34を除いてこれら碍子取り付けけ板13、碍子14…、固定電極取付板15…は反対側の外枠10Tの側平面部にも同様に構成されている。
【0027】
ユニットの要部を説明すると、図4(2)で示した様に固定電極板12…は複数本の導電スペーサ16…で一定の間隔をもって並設されており、これらの固定電極板12…には針状の荷電用電極12T…が溶接やカシメ等の手段で複数取り付けられている。そして図の様にそれらの荷電用電極12T…の特に先端部分が極力効率よく放電をおこなうよう、荷電用電極12T…の先端部分を解放するように固定電極板12…には大きな開口部12H…が設けられている。また、回転軸30Aの周辺で環状帯体40の周囲を逃げるように、外側より中心部に向けて長溝状の切欠き空間部12Kが設けられていて、この形状・構成の固定電極板12が図では8枚が回転軸30Aに沿って並設されている。
【0028】
また、回転電極板11は図4(2)では一番手前のものを二点鎖線の想像線で示しているが、全部で9枚並設されており、それら回転電極板11…の間にはその間隔とほぼ同じ幅を有する幅が広い環状帯体40…が回転軸30Aと一体の駆動側プーリー34と、下方のベルト軸60に嵌合して回転可能なプーリー61との間に巻装されており、また、環状帯体40は固定電極板12と同じ数で8本用いられている。これらの環状帯体40…はその幅の中央部には丸孔41…が長手方向に一定間隔で設けられており、この丸孔41にかみ合うように駆動側プーリー34には半円球状の突起(図示省略)を有し、すなわちスプロケット構造で各環状帯体40…に伝達駆動力を作用させる仕組みになっている。
【0029】
さらに、環状帯体40…の下方でプーリー61…のすぐ近くには、先端が剣状にとがった搬送塵埃除去手段としてのスキージ70が、環状帯体40…のすべてに接触若しくは近接する様に配置されている。なお、これらの要部の構成を示した図4(2)は、各々の部材は図示しない他の部材によって指示されている状態で、その支持部材を省略して示したものであり、図4(2)の図示構成部材だけではこの様な配置に固定されるものではなく、あくまでも図4(1)の内部構造を説明するために、要部のみを示したものである。
【0030】
図5は本発明の実施例を示す集塵用電気集塵部20の構成を示したものであり、図5(1)は集塵用電気集塵部20のユニットの外観を示し、図5(2)はその要部の構成を示した図であって、前述の図4(2)と同様に図5(2)はあくまでも図5(1)の内部構造を説明するために、要部のみを示したものである。
【0031】
前述した図4の荷電用集塵部10と同様に、左側のベアリング37より突出した回転軸30Bの突出部には刷子35が接触しており、基本的には外枠20Tを含めて集塵用電気集塵部20の本体はアース接続されている。また外枠20Tの側平面部には碍子取付け板23が固定され、碍子取付け板23は外枠20Tの側平面部から直角に外側に向けて水平に立ち曲げられ、その部分に円柱状の電気的絶縁性を有する碍子24が2本固定されている。それらの碍子24,24には固定電極取付板25がその上側に取り付いているが、稼働時にはこれらの固定電極取付板25には前述の様に図示しない電圧供給手段よりプラスの高電圧が印加される。
【0032】
ユニットの要部を説明すると、図5(2)で示した様に複数枚の固定電極板22は複数本の導電スペーサ26…で一定の間隔をもって並設されており、回転軸30Bの周辺で環状帯体50の周囲を逃げるように、少なくとも外側より中心部に向けて長溝状の切欠き空間部22Kが設けられており、この形状の固定電極板22が図では計13枚が回転軸30Bに沿って間隔をあけて並設された状態に成っている。
【0033】
また、回転電極板21は図5(2)では一番手前のものを二点鎖線の想像線で示しているが、全部で14枚並設されており、それら各回転電極板21…の間には、その間隔とほぼ同じ幅を有する幅が狭い環状帯体50…が、回転軸30Bと一体の駆動側プーリー44と、下方のベルト軸65に嵌合して回転可能なプーリー66との間に掛け渡されており、また、環状帯体50は固定電極板22と同じ数で13本用いられている。これらの環状帯体50…には、その幅の中央部には丸孔51…が長手方向に一定間隔で設けられており、この丸孔51にかみ合うように駆動側プーリー44には半円球状の突起(図示省略)を有し、集塵側と同様なスプロケット構造で各環状帯体50…に伝達駆動力を作用させる仕組みになっている。
【0034】
さらに、環状帯体50…の下方でプーリー66…の近傍には、先端が剣状にとがった搬送塵埃除去手段としてのスキージ71が、環状帯体50…のすべてに接触若しくは近接する様に配置されている。なお図では太矢印で回転方向を示しており、この方向は前述の荷電用電気集塵部10も同じであり、これは図3で示した様に本体1Aの中央部でカップリング30Xで軸30Aと30Bを連結していることによる。
【0035】
これらの取付け状態においては、各導電スペーサ26…の末端は外枠20Tの逃げ孔20Hを通して固定電極取付板25に固定されており、固定電極取付板25は碍子24,24によって本体1Aの全体とは絶縁状態にある。また、逃げ孔20Hと導電スペーサ26…は適度な空間で隔てられており、稼働時に導電スペーサ26…と外枠20Tの逃げ孔20Hが接触するようなことはない。さらに、これらの外枠20Tの逃げ孔20Hと導電スペーサ26…を介して固定電極取付板25に固定する構造は、左右両方の外枠20Tで同様な構造となっているが、刷子35とカップリング30Xの構成だけは図3で示した様に各電気集塵部10,20の片方にのみ設けられている。
【0036】
図6は本発明の実施例を示す電気集塵部の動作説明図を示し、図6(1)は荷電用電気集塵部10、図6(2)は集塵用電気集塵部20をそれぞれ側面から見た図を示す。図6(1)において、含塵空気は矢印の如く上方から下方に向けて流入してくるが、含塵空気には前述のプレフィルターで除去できない塵埃が大量に混入しているため、まず荷電用電極12T…において特に先端部からは高電圧のコロナ放電により含塵空気の塵埃粒子をプラス側に帯電させると、図の矢印方向に回転している回転電極板11はアース接続されているため、プラスに荷電された塵埃Dの粒子が回転電極板11に吸着されることになる。本発明にて想定した最も有効な利用分野であるオイルミストや溶接のヒュームなどの塵埃Dは、非常に粘り気のあるため、回転電極板11に吸着した塵埃Dは次第に回転電極板11の上に堆積してくるが、ある程度堆積すると回転電極板11とプラスに荷電された塵埃Dの粒子との間に堆積したプラス荷電の粒子が介在することになり、次第に吸着されにくくなってくる。そのために前記引用文献2で示したような粉塵除去手段を設けるのが有効であるが、本発明ではそれを環状帯体40により作用させていることが第一の特徴である。
【0037】
回転電極板11上で堆積した塵埃Dは、回転電極板11と側面が接する様に配置された環状帯体40によって、回転電極板11上から環状帯体40によって図の様にかき集められ、その結果肥大化した塵埃DGは環状帯体40の搬送方向に搬送され、回転電極板11の外側に搬送されていくが、その状態で自然に落下しない場合には、環状帯体40に接触する剣先を有するスキージ70により環状帯体40の表面から再度かきとられ、図1(2)と図3に示したオイルパン5の中に落下回収されることになる。
【0038】
本発明の実施例では、まずこのように基本的な電気集塵の手段を環状帯体40で搬送してスキージ70でカキトリされる構成とした。通常、荷電用電気集塵部10では荷電用電極12Tの本数を極力増やして塵埃Dの粒子の荷電量を極力増加させる方がよいが、針状の放電電極12Tを大量に配置した場合に、固定電極板12と回転電極板11の間隔をあまり近づけすぎると何らかの原因により絶縁破壊や、最悪の場合は針先が回転電極板11に接触してショートする危険性が増える、といった各種の問題が発生する可能性もある。
【0039】
そのため本発明の実施例では、荷電用電気集塵部10とは別に集塵用電気集塵部20を設けた。その動作は図6(2)で示し、この場合は図では下から上に含塵空気が流通することになるが、それ以外は図6(1)と同様で、プラスに荷電された塵埃Dの粒子は固定電極板22のプラス極性には反発し、アース接続された回転電極板21に吸引され、回転電極板21の表面に吸着する。前述の荷電側とは異なり固定電極板22が回転電極板21の範囲を全面カバーしてプラス極性を発揮するために、この経路を流通するプラスに荷電された塵埃Dの粒子は効率よく回転電極板21に吸着され、後は前述と同様の作用で肥大化した塵埃DGがオイルパン5に落下回収される。
【0040】
この様に構成した本発明の実施例に係る電気集塵機1によれば、オイルミストや溶接のヒュームなど非常に粘り気の高い塵埃Dの捕集には回収効果が高く、回収した塵埃Dのオイルパン5への落下回収もスムーズにできる。また、長時間稼働するうちに環状帯体40及び50上への塵埃Dの堆積が残るといった心配もなく、スキージ70,71により確実に環状帯体40,50から回収されるが、さらにこのスキージ70,71上に堆積した塵埃Dに関しては、すでに回転電極板11,21や固定電極板12,22などの並設範囲から外部に搬送されているため、特に高電圧の印加やブロアー3の運転を停止させて一次休止させる必要もなく、稼働中でもスキージ70,71を簡単に清掃やメンテナンス可能に開口部や小扉部等を設けておけば、連続稼働させながらでも塵埃の堆積の処理が可能である。
【0041】
図7には本発明の実施例に係る環状帯体40,50の動作を説明するモデル図を示す。図7(1)はまだ塵埃Dの堆積が少ない状態、図7(2)は塵埃Dの堆積が多い状態を示す。図の矢印方向に回転電極板11,21が移動しているとして、複数の回転電極板11,21の間に環状帯体40,50が配置されているが、これらは必ずしも回転電極板11,21に接触している必要はなく、若干の隙間を有して近接していればよい。すなわち、図7(1)の様にまだ塵埃Dがそれほど多く回転電極板11,21に付着していない状態では、環状帯体40,50にカキトリされる塵埃Dも少なく、カキトリされないで円板上に付着したまま回転していく塵埃Dも若干ある。その後堆積塵埃が増加してくると図7(2)で示した様に環状帯体40,50と回転電極板11,21の隙間をカキトリされずに通過する塵埃Dは変わらないが、環状帯体40,50でカキトリされて環状帯体40,50によって搬送される塵埃Dが増加する。この様に本発明の実施例における環状帯体40,50は必ずしも回転電極板11,21に接触させなくても、長時間の連続稼働中に回転電極板11,21の荷電粉塵粒子の吸着性能が低下してない程度の付着はそのまま堆積量が増すまでは放置すればよい。もちろん、回転電極板11,21上に接触させながらのカキトリは効果が高く、本発明の実施例においても環状帯体40,50の幅と回転電極板11,21との間隔の設定だけで、接触度合いを可変させることは可能であり、集塵対象となる塵埃Dの状態や環状帯体の厚みや材質の選定によって適宜選択すればよい。
【0042】
ところが、本発明の実施例において実際に長時間稼働を連続させ、休止状態での分解清掃のメンテナンス等をおこなわない場合に、回転電極板11,21への堆積粉塵は効率よく回収されて問題ないが、唯一、含塵空気の漏れによる塵埃Dの堆積の問題が残る。これを図8で説明すると、図8(1)に示した太矢印Zの様に通常であれば含塵空気は外枠10Tの内側だけをブロアーの吸引作用に含塵空気が流通するため、外枠10T外への含塵空気の流出は当然外枠10Tの周囲を隙間無く塞いでおけば流出することはないが、固定電極板12の取付けのために導電スペーサ16…を絶縁空間を隔てて貫通させる逃げ孔10Hに関しては、完全に遮蔽させることは出来ない。また、この箇所を絶縁空間ではなく絶縁部材によって充填(閉塞)した場合には、連続稼働中にこれらの絶縁部への粉塵が若干づつではあるが蓄積されてきて、最悪の場合は高電圧部とアース部が短絡する様に堆積してしまい、沿面放電が発生して火災に至るといった危険性も否定できない。従ってこの種の逃げ孔10Hには絶縁物は用いずに、空間を隔てて配置したほうがよいが、そうすると今度はその逃げ孔10Hを通じて含塵空気が外枠10Tの外へ漏れ出すことが考えられる。
【0043】
これも考慮のうえで、絶縁用の碍子14を固定電極取付板15と碍子取付板の間に設けて絶縁性と粉塵の堆積が起きても導通しない様に構成されているが、本発明の実施例の様に全くのメンテナンスフリーで分解清掃をおこなわない連続稼働を続けた場合には、当該碍子14の周辺への粉塵Dの堆積とそれの積み重ねによる絶縁部のショートによる火災の発生までも考慮に入れるべきであると考えなければならない。
【0044】
そここで本発明の他の実施例において、図8の(1)および(2)で示した様に、碍子14の部分の粉塵の堆積を抑える様、碍子のカキトリ手段、即ち、堆積塵埃除去手段を設けることを開発した。図の様に各碍子14…は、絶縁性の素材を用いて平板状に形成された堆積塵埃除去手段としてのスライド80の上下の左右両端に設けられた嵌合丸孔81…に上下摺動可能に嵌合し、また、スライド80は引張スプリング80Sにより上方向に付勢されている。スライド80の中央部には角窓80Aが開口し、その中には回転軸30Aに固定されて偏芯したカム部82が位置しており、回転軸30Aが回転するとそれにともなってカム部82が回転する。カム部82の偏芯した先端R部はスライド80の角窓80A内を回転して次第にスライド80を下方向に押圧する様になる。その結果スライド80は下方向に移動し、碍子14…はスライド80の嵌合丸孔81…よって表面を摺動される。その際に碍子14…の表面に多少でも粉塵Dが堆積していれば、スライド80の嵌合丸孔81…によって下方に寄せ集められる。カム部82の回転に連動してスライド80はその後は元に戻るが、この動きは回転軸30Aが回転している限りは継続される。
【0045】
従って碍子14…表面への粉塵Dの堆積による碍子14…を渡っての沿面放電に至ることはなく、長時間の連続稼働も安全におこなうことが出来る。また、この碍子14…の粉塵除去手段と前述の環状帯体40による堆積粉塵の搬送も、どちらももともと回転電極板11を回転させるためのモーター33の駆動力のみによって成されているために、これらの安全手段を実装した場合にも電気集塵機1全体のコストアップにはほとんど至ることは無く、逆にメンテナンス費用の節約に寄与することは言うまでもない。
【0046】
尚、上述した堆積塵埃除去手段の実施例として、図8ではスライド80を荷電用電気集塵部10に用いた場合の実施例を説明しているが、この堆積塵埃除去手段は図示はしていないが同一の構成にて前述した集塵用電気集塵部20にも実施可能であることはいうまでもない。
【0047】
図9には本発明のもう一つの他の実施例を示すが、これは通常の小型の電気集塵機においては前述の様に荷電用電気集塵部10と集塵用電気集塵部20を分離せず、一台の回転電極式電気集塵部で電気集塵機1を構成すればよく、その例を示している。この様に環状帯体40を含塵空気の流通方向Rに沿って掛け渡し、スキージ70をプーリー下側に垂直に配置して塵埃Dの回収をおこなうことで、スキージ70上の粉塵Dは堆積しても自重だけで落下するため、堆積をほとんど気にせずに連続運転が可能であり、機器の構成もシンプルであり小型で加工機械の内部にビルトインする電気集塵機1としても好適なものであり、この様な配置のバリエーションも本発明の請求範囲に含まれていて、本発明の応用例である。尚、図9は当該応用例を便宜的に前記荷電用電気集塵部10の構成を利用して説明したものであって、図9において図6(1)に記載されているものと同じ部材は同じ符号を付して、その説明は省略する。なお、本発明の実施例においては固定電極板及び荷電極に印加する高電圧の極性をプラスとして説明したが、マイナスの高電圧を印加して構成する場合であっても、本発明の請求範囲に記載の通りその技術範囲に含まれることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例を示す電気集塵機の外観を示したもので、(1)は平面図、(2)は正面図。
【図2】本発明の実施例を示す電気集塵機の内部構成を示した斜視図。
【図3】本発明の実施例を示す電気集塵機の内部構成を説明した構成図。
【図4】本発明の実施例を示す荷電用電気集塵部の構成を示したもので、(1)はユニットの外観図、(2)は要部の構成を説明した斜視図。
【図5】本発明の実施例を示す集塵用電気集塵部の構成を示したもので、(1)はユニットの外観図、(2)は要部の構成を説明した斜視図。
【図6】本発明の実施例を示す電気集塵部の動作説明図で、(1)は荷電用電気集塵部の動作説明図、(2)は集塵用電気集塵部の動作説明図。
【図7】本発明の実施例を示す環状帯体の動作説明図で、(1)は堆積塵埃が少ない状態を示し、(2)は堆積塵埃が多い状態を示す。
【図8】本発明の他の実施例を示す電気集塵機の構成図であって、(1)は外観斜視図、(2)は側面図。
【図9】本発明の他の実施例を示す電気集塵機の構成図。
【符号の説明】
【0049】
1 電気集塵機
1A 本体
3 ブロアー
10 荷電用電気集塵部
20 集塵用電気集塵部
10T,20T 外枠
10H、20H 逃げ孔
11,21 回転電極板
12,22 固定電極板
12T,22T 荷電用電極
12K,22K 切り欠き空間部
14,24 碍子
16,26 スペーサー
30A,30B 回転軸
33 モーター
40,50 環状帯体
60,65 ベルト軸
70,71 搬送塵埃除去手段としてのスキージ
80 堆積塵埃除去手段としてのスライド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アース接地状態と成す複数枚の回転電極板を、駆動モーターにより回転する回転軸上に間隔をあけて並設し、各回転電極板の間にはプラス極性若しくはマイナス極性の電圧を印加させた固定電極板を夫々介在せしめると共に、これ等回転電極板および固定電極板で構成した電気集塵部に連接して粉塵吸引用のブロアーを設置し、且つ、電気集塵部の上流側には荷電用電極を配置した回転電極式電気集塵機であって、
前記複数枚の固定電極板の夫々に、少なくとも外側部から中心部に向けて連続する空間部を切り欠き形成し、これ等各固定電極板の空間部内には、回転駆動力によって搬送移動される無端状の環状帯体を、側縁部が上記隣接する回転電極板の側面に接触、若しくは、近接するように配置して、上記回転電極板に吸着される塵埃を当該環状帯体でカキトリしながら上記電気集塵部の外まで搬送可能に構成したことを特徴とする回転電極式電気集塵機。
【請求項2】
前記環状帯体が、前記回転電極板を回転する回転軸によって搬送移動されることを特徴とする請求項1に記載の回転電極式電気集塵機。
【請求項3】
前記搬送移動される環状帯体の搬送経路中で且つ前記電気集塵部の外に、当該環状帯体に当接して環状帯体に付着して搬送されて来る塵埃を除去することができる搬送塵埃除去手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転電極式電気集塵機。
【請求項4】
前記電気集塵部の本体と前記固定電極とを絶縁する碍子に対して、当該碍子の外周に往復摺動移動可能に嵌合して堆積する塵埃を除去することができる堆積塵埃除去手段を設けて、当該堆積塵埃除去手段を前記回転電極板を駆動する駆動軸によって駆動することを特徴とする請求項1に記載の回転電極式電気集塵機。
【請求項5】
前記電気集塵機の内部に前記電気集塵部を複数段設け、最上流に配置した初段の電気集塵部の固定電極板上に複数の針状の荷電用電極を固定電極板の板面と平行に並設し、且つ、当該初段の電気集塵部より後段の電気集塵部には放電用電極を配置しないことを特徴とする請求項1に記載の回転電極式電気集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−262007(P2009−262007A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111421(P2008−111421)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000101617)アマノ株式会社 (174)
【Fターム(参考)】