説明

回転電機のケース及び回転電機

【課題】筒状部材を固定することに起因してヨークハウジングの真円度が低下することを抑制できる回転電機のケース及び回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機のケースは、有底円筒状のヨークハウジングと、ヨークハウジングの筒状に形成された側壁部の外周に固定される筒状部材21とを備えた。筒状部材21は、帯状の本体22、本体22の一端部に設けられた切欠き23、及び本体22の他端部に設けられた係合突起24を有し、切欠き23に係合突起24を周方向に係合させることにより円筒状に形成されるように構成した。そして、係合突起24の切欠き23に係合する係合部36の機械的強度を、筒状部材21の他の部位よりも低下させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のケース及びこれを備えた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機には、筒状のヨークハウジングを有するケースと、ヨークハウジングの内周面に固定されたマグネットと対向配置される電機子とを備え、ヨークハウジングの外周にサブヨークを固定して磁気抵抗を減少させることで、出力トルクの向上を図ったものが知られている(例えば、特許文献1)。こうしたサブヨークは、略円筒状に形成されており、通常、溶接又は圧入によりヨークハウジングの外周により固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2793653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、溶接によりサブヨークを固定しようとすると、溶接する際の熱等によってヨークハウジングが変形することで、その真円度が低下する虞がある。また、圧入によりサブヨークを固定しようとすると、圧入する際に作用する荷重によってヨークハウジングが変形することで、その真円度が低下する虞がある。さらに、サブヨークをヨークハウジングの外周に遊嵌した後に同サブヨークを縮径させるようにかしめて固定することも考えられるが、この場合にはかしめる際に作用する荷重によってヨークハウジングが変形することで、その真円度が低下する虞がある。そして、このようにヨークハウジングの真円度が低下すると、マグネットと電機子とのギャップ(空隙)が周方向において変化し、例えば出力トルクの低下等を招く虞がある。
【0005】
なお、こうした問題は、磁気抵抗を減少させるサブヨークを固定する場合に限らず、例えば回転電機を車両本体等に取り付けるための取付部を有する筒状のブラケット等、他の筒状部材を溶接、圧入又はかしめによりヨークハウジングの外周に固定する場合にも、同様に生じ得る。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、筒状部材を固定することに起因してヨークハウジングの真円度が低下することを抑制できる回転電機のケース及び回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、筒状のヨークハウジングと、前記ヨークハウジングの外周に嵌合される筒状部材とを備えた回転電機のケースであって、前記筒状部材は、帯状の本体、前記本体の一端部に設けられた切欠き、及び前記本体の他端部に設けられた係合突起を有し、前記切欠きに対して前記係合突起を周方向に係合させることにより筒状に形成され、前記筒状部材には、機械的強度を低下させた低強度部が設けられたことを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、筒状部材をヨークハウジングの外周に圧入する際、又はヨークハウジングの外周に嵌合した筒状部材を縮径させるようにかしめる際に、低強度部が変形することにより、主として筒状部材にヨークハウジングを締め付ける締結力が発生し、筒状部材がヨークハウジングに固定される。これにより、ヨークハウジングが変形することを防いで、その真円度が低下することを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転電機のケースにおいて、前記係合突起は、前記筒状部材の周方向と交差する方向に延設されて前記切欠きに係合する係合部、及び前記筒状部材の周方向に延設されて前記係合部と前記本体とを連結する橋絡部とを有し、前記低強度部は、前記係合部及び前記橋絡部の少なくとも一方を含むことを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、係合部が折れ曲がることにより、又は橋絡部が伸張することにより、筒状部材にヨークハウジングを締め付ける締結力が発生するため、例えば本体に別途低強度部を設ける場合に比べ、筒状部材の形状の簡素化を図ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の回転電機のケースにおいて、前記切欠きは、前記本体の一端側に開口して形成され、前記係合突起は、前記本体の一端部に前記切欠きを設けたことにより構成される爪部が前記切欠きに対して周方向に係合するものであり、前記低強度部は、前記爪部を含むことを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、爪部が曲がる又は伸張することにより、筒状部材にヨークハウジングを締め付ける締結力が発生するため、例えば本体に別途低強度部を設ける場合に比べ、筒状部材の形状の簡素化を図ることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転電機のケースにおいて、前記ヨークハウジングには、径方向外側に突出した段差部が形成されるとともに、該段差部との間で前記筒状部材を軸方向に挟み込むかしめ部が形成されたことを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、筒状部材が段差部とかしめ部との間で挟み込まれるため、筒状部材をヨークハウジングに対してしっかりと固定することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のケースを備えた回転電機であることを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、ヨークハウジングの真円度が低下することが抑制されるため、例えば出力トルクの低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、筒状部材を固定することに起因してヨークハウジングの真円度が低下することを抑制できる回転電機のケース及び回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の回転電機の断面図。
【図2】(a)第1実施形態のヨークハウジングに筒状部材を固定した状態の斜視図、(b)筒状部材の斜視図。
【図3】第1実施形態の筒状部材の切欠き及び係合突起近傍を示す側面図。
【図4】第1実施形態の筒状部材をヨークハウジングに圧入する際の切欠き及び係合突起近傍を示す模式図。
【図5】第1実施形態のヨークハウジングにかしめ部を形成する際の模式図。
【図6】第2実施形態の筒状部材の切欠き及び係合突起近傍を示す側面図。
【図7】第2実施形態の筒状部材をヨークハウジングに圧入する際の切欠き及び係合突起近傍を示す模式図。
【図8】第3実施形態の筒状部材の切欠き及び係合突起近傍を示す側面図。
【図9】第3実施形態の筒状部材をヨークハウジングに圧入する際の切欠き及び係合突起近傍を示す模式図。
【図10】第4実施形態の筒状部材の切欠き及び係合突起近傍を示す側面図。
【図11】第4実施形態の筒状部材を縮径させるようにかしめる際の切欠き及び係合突起近傍を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す回転電機1は、ラジエータ冷却用のファンを駆動するために用いられるものである。同図に示すように、回転電機1のケース2は、有底円筒状に形成されたヨークハウジング3と、ヨークハウジング3の開口部3aを覆うカバー4とを備えている。なお、ヨークハウジング3は、磁性材料により構成されている。そして、ヨークハウジング3の円筒状に形成された側壁部3bの内周面には、複数のマグネット6が周方向に間隔を空けて固定され、各マグネット6の内側には電機子7が回転可能に収容されている。
【0019】
電機子7は、ヨークハウジング3の中央部に配置される軸状の回転軸11を備えている。回転軸11は、その先端側(図1における右側)がヨークハウジング3の底部3cから外部に突出する態様で、同ヨークハウジング3の底部3c及びカバー4に設けられた軸受12a,12bにより回転可能に支持されている。なお、回転軸11の先端には、図示しないファンが固定される。また、回転軸11におけるマグネット6と対向する部位には、電機子コア13が固定されるとともに、この電機子コア13には、コイル14が巻回されている。さらに、回転軸11の基端側(図1における左側)には、円筒状の整流子15が固定されており、ヨークハウジング3の開口部3aには、整流子15に摺接するブラシ16を保持するブラシホルダ17が固定されている。なお、ブラシ16には、図示しない給電線を介してケース2の側方に設けられたコネクタ部18と電気的に接続されている。
【0020】
図1及び図2(a),(b)に示すように、ヨークハウジング3の側壁部3bの外周には、磁性材料からなる円筒状の筒状部材21が圧入されることで固定されている。つまり、本実施形態の筒状部材21は、マグネット6の磁束が流れる磁路面積を増加させて磁気抵抗を減少させるサブヨークとして機能する。筒状部材21は、円弧状に湾曲した帯状の本体22、本体22の周方向(長手方向)一端部22aに設けられた複数の(本実施形態では、2つ)切欠き23、及び本体22の周方向(長手方向)他端部22bに設けられた複数(本実施形態では、2つ)の係合突起24を有している。そして、筒状部材21は、切欠き23に係合突起24を周方向に係合させることにより筒状に形成されている。
【0021】
詳述すると、図2(a),(b)に示すように、本体22は、筒状部材21の軸方向に沿った幅が全周に亘って略一定に形成されるとともに、円弧状に湾曲して形成されている。また、本体22には、径方向外側に延出される複数(本実施形態では、3つ)の取付部25が一体形成されている。そして、回転電機1は、取付部25に形成された貫通孔26に図示しないボルト等が挿通されることにより、車両本体(図示略)に取り付けられるようになっている。つまり、本実施形態の筒状部材21は、回転電機1を車両本体に取り付けるためのブラケットとしても機能する。
【0022】
図3に示すように、切欠き23は、本体22の周方向一端部22aにおいて、筒状部材21の軸方向(図3における上下方向)に間隔を空けて2つ設けられている。各切欠き23は、本体22の周方向一端側に開口する幅狭部31と、幅狭部31に連続するとともに筒状部材21の軸方向に沿った幅が幅狭部31よりも大きい幅広部32とから構成されている。
【0023】
係合突起24は、本体22の周方向他端部22bにおいて、筒状部材21の軸方向に間隔を空けて2つ設けられている。各係合突起24は、本体22の周方向他端部22bから同方向に沿って延出される橋絡部33と、橋絡部33から筒状部材21の軸方向両側にそれぞれ延出されて切欠き23の幅狭部31と幅広部32との間の係合面35に係合する一対の係合部36とを有している。また、係合突起24は、橋絡部33における係合部36よりも先端側(図3における左側)の位置から同係合部36との間に間隔を空けて筒状部材21の軸方向両側にそれぞれ延出される一対の補強部37を有している。そして、係合部36は、筒状部材21の他の部位よりも細く形成されており、筒状部材21を拡径させる荷重が作用した場合に、当該他の部位やヨークハウジング3の側壁部3bが変形するよりも先に折れ曲がり易くなっている。つまり、本実施形態では、係合部36が機械的強度を低下させた低強度部に相当する。そして、係合部36は、筒状部材21がヨークハウジング3の側壁部3bの外周に固定された状態で折れ曲がっている。
【0024】
図1に示すように、側壁部3bにおけるヨークハウジング3の開口部3a側には、その底部3c側よりも大きな外径を有する段差部41が形成されており、筒状部材21の軸方向一端部が当接している。そして、同図において拡大して示すように、側壁部3bにおけるヨークハウジング3の底部3c側には、筒状部材21の軸方向他端部に当接して段差部41との間で筒状部材21を挟み込むかしめ部42が形成されている。
【0025】
次に、ケースの製造方法について説明する。
上記にように構成された筒状部材21のヨークハウジング3への組み付けは、図4に示すように、係合突起24を切欠き23に係合させて筒状部材21を円筒状に形成した状態で、側壁部3bの外周に圧入し、筒状部材21の軸方向一端部を段差部41に当接させる。このとき、筒状部材21に、筒状部材21を拡径させる荷重Fが作用し、この荷重Fによって係合突起24の係合部36が折れ曲がる(図3参照)。これにより、主として筒状部材21にヨークハウジング3を締め付ける締結力が発生し、同筒状部材21がヨークハウジング3に固定される。
【0026】
続いて、図5に示すように、治具43によって、段差部41との間で筒状部材21を挟み込むようにヨークハウジング3の側壁部3bをかしめることでかしめ部42を形成する。これにより、筒状部材21がヨークハウジング3の外周にしっかりと固定される。
【0027】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)筒状部材21に機械的強度を他の部位よりも低下させた係合部36を設けたため、筒状部材21を固定する際に、主として筒状部材21にヨークハウジング3を締め付ける締結力が発生してヨークハウジング3に固定される。これにより、ヨークハウジング3が変形することを防いで、その真円度が低下することを抑制でき、例えば回転電機1の出力トルクの低下を抑制できる。また、係合突起24の係合部36が折れ曲がるため、例えば本体22に別途低強度部を設ける場合に比べ、筒状部材21の形状の簡素化を図ることができる。
【0028】
(2)ヨークハウジング3の側壁部3bに、径方向外側に突出した段差部41を形成するとともに、段差部41との間で筒状部材21を軸方向に挟み込むかしめ部42を形成したため、筒状部材21をヨークハウジング3に対してしっかりと固定することができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図6に示すように、各係合突起24は、本体22の周方向他端部22bから延出される板状の橋絡部51と、橋絡部51の先端から軸方向両側に延出され、切欠き23の係合面35に係合する係合部52とから構成されている。そして、橋絡部51は、筒状部材21の他の部位よりも細く形成されており、筒状部材21を拡径させる荷重が作用した場合に、当該他の部位やヨークハウジング3の側壁部3bが変形するよりも先に周方向に伸張し易くなっている。つまり、本実施形態では、橋絡部51が低強度部に相当する。そして、橋絡部51は、筒状部材21がヨークハウジング3の側壁部3bの外周に固定された状態で周方向に伸張している。
【0031】
このように構成された筒状部材21の組み付けは、図7に示すように、係合突起24を切欠き23に係合させて筒状部材21を円筒状に形成した状態で、側壁部3bの外周に圧入し、筒状部材21の軸方向一端部を段差部41に当接させる。このとき、筒状部材21に、筒状部材21を拡径させる荷重Fが作用し、この荷重Fによって係合突起24の橋絡部51が周方向に伸張する(図6参照)。これにより、主として筒状部材21にヨークハウジング3を締め付ける締結力が発生し、筒状部材21がヨークハウジング3に固定される。なお、筒状部材21を圧入した後に、上記第1実施形態と同様にヨークハウジング3にかしめ部42が形成される。
【0032】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図8に示すように、各係合突起24は、その基端部から中央部までは筒状部材21の軸方向に沿った幅が徐々に大きくなる一方、当該中央部から先端部までは徐々に幅が小さくなるように形成されている。そして、各係合突起24における筒状部材21の軸方向両端には、その中央部から基端部に向かうにつれて互いに近接するように傾斜した傾斜面61が形成されている。
【0034】
各切欠き23は、本体22の周方向一端側に開口するとともに、その開口部から中央部までは、筒状部材21の軸方向に沿った幅が徐々に大きくなる一方、当該中央部から底部までは、徐々に幅が小さくなるように形成されている。そして、本体22の周方向一端部22aには、切欠き23を設けたことにより、一対の爪部62が軸方向両端に構成されており、係合突起24は、爪部62が軸方向両側からかしめられることにより切欠き23の傾斜面61に対して周方向に係合している。これら各爪部62は、筒状部材21の他の部位よりも細く形成されており、筒状部材21を拡径させる荷重が作用した場合に、当該他の部位やヨークハウジング3の側壁部3bが変形するよりも先に曲がり易くなっている。つまり、本実施形態では、爪部62が低強度部に相当する。そして、係合部36は、筒状部材21がヨークハウジング3の側壁部3bの外周に圧入された状態で曲がっている。
【0035】
このように構成された筒状部材21の組付けは、図9に示すように、治具63により爪部62をかしめて係合突起24を切欠き23に係合させ、筒状部材21を円筒状に形成してから、同筒状部材21をヨークハウジング3の外周に圧入する。このとき、筒状部材21を拡径させる荷重Fが作用し、この荷重Fによって切欠き23の開口が大きくなるように爪部62が曲がる(図8参照)。これにより、主として筒状部材21にヨークハウジング3を締め付ける締結力が発生し、筒状部材21がヨークハウジング3に固定される。なお、筒状部材21を圧入した後に、上記第1実施形態と同様にヨークハウジング3にかしめ部42が形成される。
【0036】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(3)筒状部材21をヨークハウジング3の外周に固定する前に爪部62をかしめることで係合突起24が切欠き23に周方向に係合するようにしたため、例えば筒状部材21を圧入する際に係合突起24の切欠きに対する係合が外れてしまうことを抑制できる。
【0037】
(第4実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0038】
本実施形態では、ヨークハウジング3の外周に筒状部材21を遊挿し、同筒状部材21を縮径させるようにかしめることで固定する。詳述すると、図10に示すように、各係合突起24は、上記第3実施形態と同様に形成されており、各係合突起24における筒状部材21の軸方向両端には、その中央部から基端部に向かうにつれて互いに近接するように傾斜した傾斜面71が形成されている。
【0039】
各切欠き23は、上記第3実施形態と同様に形成されており、本体22の周方向一端部22aには、切欠き23を設けたことにより、一対の爪部72が軸方向両端に構成されている。各爪部72の周方向に沿った長さは、各係合突起24の周方向長さよりも短く形成されており、各爪部72の先端部72aと、本体22の周方向他端部22bとの間には、隙間が形成されている。また、各先端部72aは、係合突起24側に向かって突出した形状に形成されている。そして、これら各爪部72は、筒状部材21の他の部位よりも細く形成されており、当該他の部位やヨークハウジング3の側壁部3bが変形するよりも先に周方向に伸張し易くなっている。つまり、本実施形態では、爪部72が低強度部に相当する。そして、爪部72は、筒状部材21がヨークハウジング3の側壁部3bの外周に固定された状態で周方向に伸張している。なお、本実施形態では、ヨークハウジング3に固定する前の状態において、筒状部材21の内径は、ヨークハウジング3の側壁部3bの外径よりも大きく形成されている。
【0040】
このように構成された筒状部材21の組み付けは、係合突起24を切欠き23に係合させることにより筒状部材21を円筒状に形成した状態で、側壁部3bの外周に遊挿し、筒状部材21の軸方向一端部を段差部41に当接させる。そして、図11に示すように、治具73によって爪部72を軸方向両側からかしめ、その先端部72aを係合突起24の傾斜面71の形状に倣って移動させることで、筒状部材21の内径が側壁部3bの外径よりも小径となるように同筒状部材21を縮径させる。このとき、爪部72は、側壁部3bから筒状部材21を拡径させる荷重が作用することで周方向に伸張するとともに、切欠き23の開口が小さくなるように曲がる(図10参照)。これにより、主として筒状部材21にヨークハウジング3を締め付ける締結力が発生し、筒状部材21がヨークハウジング3に固定される。なお、筒状部材21をかしめた後に、上記第1実施形態と同様にヨークハウジング3にかしめ部42が形成される。
【0041】
以上記述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
【0042】
・上記第1実施形態において、係合突起24に補強部37を形成しなくてもよい。
・上記第1及び第2実施形態では、切欠き23を周方向一端側に開口するように形成したが、これに限らず、切欠き23が軸方向に開口するように形成してもよい。
【0043】
・上記第1実施形態では、係合部36の機械的強度を他の部位よりも低く形成し、筒状部材21をヨークハウジング3の外周に圧入する際に係合部36が折れ曲がるように構成したが、これに限らず、例えば係合部36が折れ曲がるとともに、橋絡部33が伸張するようにしてもよい。同様に、上記第2〜第4実施形態において、橋絡部51や爪部62,72とともに筒状部材21の他の部位が変形するようにしてもよい。
【0044】
・上記各実施形態において、例えば本体22の一部を筒状部材21の他の部位よりも細く形成する等、本体22に別途低強度部を設けてもよい。
・上記各実施形態では、筒状部材21に切欠き23及び係合突起24をそれぞれ2つずつ設けたが、これに限らず、切欠き23及び係合突起24を1つずつ形成してもよく、
また、3つ以上形成してもよい。
【0045】
・上記各実施形態では、本体22に取付部25を形成し、筒状部材21が車両本体への取付用のブラケット及びサブヨークとして機能するようにしたが、これに限らず、取付部25を形成せず、磁気抵抗を減少させるサブヨークとしてのみ機能するようにしてもよい。また、筒状部材21を非磁性材料(例えば、ステンレス綱等)により構成することで、ブラケットとしてのみ機能するようにしてもよい。
【0046】
・上記各実施形態では、整流子15を有する回転電機1に適用したが、その他の構成の回転電機、例えばブラシレスモータ等に適用してもよい。
・上記各実施形態では、本発明をラジエータ冷却用のファンの駆動源として用いられる回転電機に適用したが、これに限らず、他の駆動源として用いられる回転電機に適用してもよい。
【0047】
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの作用効果とともに以下に追記する。
(イ)筒状のヨークハウジングと、前記ヨークハウジングの外周に嵌合される筒状部材とを備え、前記筒状部材は、帯状の本体、前記本体の一端部に設けられた切欠き、及び前記本体の他端部に設けられた係合突起を有し、前記切欠きに前記係合突起を周方向に係合させることで筒状に形成されるとともに、機械的強度を低下させた低強度部を有する回転電機のケース製造方法であって、前記筒状部材を、前記切欠きに前記係合突起を係合させて筒状に形成した状態で前記ヨークハウジングの外周に圧入することにより、該ヨークハウジングに固定することを特徴とする回転電機のケース製造方法。上記構成によれば、筒状部材を圧入する際に、低強度部が変形することにより、主として筒状部材にヨークハウジングを締め付ける締結力が発生し、筒状部材がヨークハウジングに固定される。これにより、ヨークハウジングが変形することを防いで、その真円度が低下することを抑制できる。
【0048】
(ロ)筒状のヨークハウジングと、前記ヨークハウジングの外周に嵌合される筒状部材とを備え、前記筒状部材は、帯状の本体、前記本体の一端部に設けられた切欠き、及び前記本体の他端部に設けられた係合突起を有し、前記切欠きは、前記本体の一端側に開口して形成され、前記係合突起は、前記本体の一端部に前記切欠きを設けたことにより構成される爪部を前記切欠きに周方向に係合させることで筒状に形成されるとともに、前記爪部の機械的強度を低下させた回転電機のケース製造方法であって、前記筒状部材を、前記切欠きに前記係合突起を係合させて筒状に形成した状態で前記ヨークハウジングの外周に嵌合した後、前記筒状部材が縮径するように前記爪部をかしめることにより、該ヨークハウジングに固定することを特徴とする回転電機のケース製造方法。上記構成によれば、筒状部材をかしめる際に、爪部が曲がることで、主として筒状部材にヨークハウジングを締め付ける締結力が発生し、筒状部材がヨークハウジングに固定される。これにより、ヨークハウジングが変形することを防いで、その真円度が低下することを抑制できる。
【符号の説明】
【0049】
1…回転電機、2…ケース、3…ヨークハウジング、4…カバー、6…マグネット、7…電機子、21…筒状部材、22…本体、23…切欠き、24…係合突起、25…取付部、31…幅狭部、32…幅広部、33…橋絡部、35…係合面、36…係合部(低強度部)、37…補強部、41…段差部、42…かしめ部、51…橋絡部(低強度部)、52…係合部、62,72…爪部(低強度部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のヨークハウジングと、前記ヨークハウジングの外周に嵌合される筒状部材とを備えた回転電機のケースであって、
前記筒状部材は、帯状の本体、前記本体の一端部に設けられた切欠き、及び前記本体の他端部に設けられた係合突起を有し、前記切欠きに対して前記係合突起を周方向に係合させることにより筒状に形成され、
前記筒状部材には、機械的強度を低下させた低強度部が設けられたことを特徴とする回転電機のケース。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機のケースにおいて、
前記係合突起は、前記筒状部材の周方向と交差する方向に延設されて前記切欠きに係合する係合部、及び前記筒状部材の周方向に延設されて前記係合部と前記本体とを連結する橋絡部とを有し、
前記低強度部は、前記係合部及び前記橋絡部の少なくとも一方を含むことを特徴とする回転電機のケース。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機のケースにおいて、
前記切欠きは、前記本体の一端側に開口して形成され、
前記係合突起は、前記本体の一端部に前記切欠きを設けたことにより構成される爪部が前記切欠きに対して周方向に係合するものであり、
前記低強度部は、前記爪部を含むことを特徴とする回転電機のケース。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転電機のケースにおいて、
前記ヨークハウジングには、径方向外側に突出した段差部が形成されるとともに、該段差部との間で前記筒状部材を軸方向に挟み込むかしめ部が形成されたことを特徴とする回転電機のケース。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のケースを備えたことを特徴する回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−93935(P2013−93935A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233290(P2011−233290)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】