回転電機固定子
【課題】ダブルスター結線分布巻の回転電機固定子において、並列接続される結線間の循環電流の発生を抑制することである。
【解決手段】回転電機固定子の分布巻の各相巻線は、ステータコア12の周方向の1周に配置された8個の第1群単位コイルと、第1群単位コイルと異なるスロット14を用いて、第1群単位コイルと同じ単位コイル間隔の単位コイルをステータの周方向の1周に配置された8個の第2群単位コイルとを用いる。ここでは、4個の第1群単位コイルと4個の第2群単位コイルとを直列接続して形成される第1分布巻線部U1と、第1分布巻線部U1に用いられていない4個の第1群単位コイルと4個の第2群単位コイルとを直列接続して形成される第2分布巻線部U2とが相互に並列接続される。
【解決手段】回転電機固定子の分布巻の各相巻線は、ステータコア12の周方向の1周に配置された8個の第1群単位コイルと、第1群単位コイルと異なるスロット14を用いて、第1群単位コイルと同じ単位コイル間隔の単位コイルをステータの周方向の1周に配置された8個の第2群単位コイルとを用いる。ここでは、4個の第1群単位コイルと4個の第2群単位コイルとを直列接続して形成される第1分布巻線部U1と、第1分布巻線部U1に用いられていない4個の第1群単位コイルと4個の第2群単位コイルとを直列接続して形成される第2分布巻線部U2とが相互に並列接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機固定子に係り、特に、各相コイルの結線をダブルスター結線とする回転電機固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
三相回転電機固定子における固定子巻線の配置方法として、各相巻線の一方端をそれぞれインバータ等の駆動回路に接続される動力線端子とし、各相巻線の他方端をそれぞれ相互に接続して中性点端子とするスター結線が知られている。また、スター結線の各相巻線のそれぞれについて、動力線端子と中性点端子の間に2つの巻線を並列接続するダブルスター結線も知られている。
【0003】
特許文献1には、ステータ鉄心の巻線方法として、各相コイルの結線をダブルスター結線とすることで、モータを駆動する際の印加電圧を低くできることが述べられている。ここでは、例えば、U相巻線として、同じスロットに一方のU相巻線と他方のU相巻線が配置されて、これらが並列接続され、一方のU相巻線も他方のU相巻線も、それぞれがステータの周方向に直列に接続された4つのU相コイルで構成されることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、セグメント順次接合ステータコイル型回転電機において、1つのスロットに複数の部分コイルを直列に接続したものを径方向直列コイルとして、3つの径方向直列コイルをそれぞれ異なるスロットに配置して、相互に並列接続する構成、すなわち、径方向直列、周方向並列の構成が述べられている。この場合、並列接続される3つの径方向直列コイルの起電力は互いに位相がスロット間隔分ずれるので、そのままでは、並列接続される3つの径方向直列コイルの間で起電力の差が生じ、循環電流が流れる。そこで、位相が進む部分コイルと位相が遅れる部分コイルとは互いに異なるスロットに配置されるが、径方向直列コイルは、スロットをまたいで、位相が進む部分コイルと位相が遅れる部分コイルとを組み合わせて直列接続することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−12974号公報
【特許文献2】特許第3815674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2では、固定子巻線において、スロットを異ならせて並列接続される3つの径方向直列コイルの間で循環電流が発生することを指摘している。特許文献2では、周方向並列接続、径方向直列接続である。分布巻を用いるダブルスター結線は、周方向直列、径方向並列であるが、径方向並列でスロットを異ならせると、同様に循環電流が発生することが予想される。
【0007】
本発明の目的は、分布巻を用いるダブルスター結線において、並列接続される結線間の循環電流の発生を抑制できる回転電機固定子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転電機固定子は、周方向に沿って配置され、それぞれが径方向に延びる複数のスロットを有するステータコアと、予め定めたスロット間隔を単位コイル間隔として、単位コイル間隔でコイル素線を巻回して形成されるコイルを単位コイルとして、ステータコアの周方向に予め定めた配置順序で単位コイルを4n個配置して形成される分布巻の各相巻線と、を備え、分布巻の各相巻線は、ステータコアの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第1群単位コイルと、第1群単位コイルと異なるスロットを用いて、第1群単位コイルと同じ単位コイル間隔の単位コイルをステータの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第2群単位コイルと、を用い、n個の第1群単位コイルとn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して形成される第1分布巻線部と、第1分布巻線部に用いられていないn個の第1群単位コイルと第1分布巻線部に用いられていないn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して形成される第2分布巻線部と、を並列接続して形成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る回転電機固定子において、分布巻の各相巻線は、予め、単位コイル間隔を6スロットとして、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第1巻線部と、基本第1巻線部で用いたスロットの隣のスロットを用い、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第2巻線部と、を用い、基本第1巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る回転電機固定子において、nは偶数であって、さらに、基本第1巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る回転電機固定子において、nは4の倍数であって、さらに、基本第1巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により、回転電機固定子の分布巻の各相巻線は、それぞれ、第1分布巻線部と第2分布巻線部とが並列接続されているダブルスター結線で配置されている。第1分布巻線部と第2分布巻線部とは、合計で4n個の単位コイルを用いる。4n個の単位コイルは、ステータコアの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第1群単位コイルと、第1群単位コイルと異なるスロットを用いて、第1群単位コイルと同じ単位コイル間隔の単位コイルをステータの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第2群単位コイルである。そして、n個の第1群単位コイルとn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して第1分布巻線部を形成し、第1分布巻線部に用いられていないn個の第1群単位コイルと第1分布巻線部に用いられていないn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して第2分布巻線部を形成する。
【0013】
スロットを異ならせて配置される2組のコイルをそのまま並列接続すると、回転電機が動作するときに、径方向に異なる位置にあるスロット間では、コイルに発生する起電力に差が生じる。これによって並列接続された2組のコイルの間に循環電流が発生する。上記の構成では、スロットを異ならせることで回転電機が動作するときの起電力が異なる2組のコイルを第1群単位コイルと第2群単位コイルとして区別し、2n個の第1群単位コイルと2n個の第2群単位コイルを用いる。
【0014】
そして、分布巻の各相巻線としては、n個の第1群単位コイルとn個の第2群単位コイルを直列接続したものを2組作って、それぞれを第1分布巻線部と第2分布巻線部とする。第1分布巻線部と第2分布巻線部は、回転電機が動作するときの起電力が異なる第1群単位コイルと第2群単位コイルとをそれぞれ同数ずつ用いている。したがって、回転電機が動作するとき、第1分布巻線部の全体に発生する起電力と、第2分布巻線部の全体に発生する起電力は同じである。分布巻の各相巻線は、この第1分布巻線部と第2分布巻線部とを並列接続するので、回転電機が動作するときに、並列接続される第1分布巻線部と第2分布巻線部の間に循環電流が発生しない。
【0015】
回転電機固定子において、単位コイル間隔を6スロットとして、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第1巻線部と、基本第1巻線部で用いたスロットの隣のスロットを用い、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第2巻線部とを用いる場合には、構成が簡単になる。すなわち、基本第1巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすればよい。
【0016】
同様に、回転電機固定子において、nが偶数の場合は、さらに、基本第1巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直せばよい。
【0017】
また、nが4の倍数のときは、さらに、基本第1巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して基本第2巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して、基本第2巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】分布巻を用いる回転電機固定子におけるスター結線とダブルスター結線を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の回転電機固定子において、ダブルスター結線される分布巻の各相巻線の配置の様子を、U相分布巻線に代表させて説明する図である。
【図3】図2におけるU相分布巻線を抜き出して説明する図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の回転電機固定子において、循環電流が発生することが予想されるが、基本となるU相分布巻線の並列接続される2つの巻線部の1つである基本第1巻線部の配置の様子を説明する図である。
【図5】図4の基本第1巻線部と並列接続される基本第2巻線部の配置の様子を説明する図である。
【図6】図4、図5をまとめて、本発明に係る実施の形態の回転電機固定子において、基本となるU相分布巻線の単位コイルの配置の様子を模式的に説明する図である。
【図7】図6に対する等価回路図を用いて、並列接続されるU1コイルとU2コイルの間に循環電流が発生する様子を説明する図である。
【図8】図6において、回転電機が動作するときに各コイルに発生する起電力に基づく相間電圧の様子を説明する図である。
【図9】本発明に係る実施の形態の回転電機固定子における分布巻の各相巻線の結線の様子を説明する図である。
【図10】図9の等価回路図である。
【図11】本発明に係る実施の形態の回転電機固定子における分布巻の各相巻線の結線の他の例を説明する図である。
【図12】本発明に係る実施の形態の回転電機固定子における分布巻の各相巻線の結線のさらに他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、回転電機として、車両に搭載される三相同期型回転電機を説明するが、車両搭載以外に用いられるものでもよい。以下では、回転電機固定子として、三相同期型回転電機を説明するが、分布巻コイルを含む固定子であればよく、三相に限らない。また、以下では、固定子が48スロットを有し、各相巻線がそれぞれ16の単位コイルで構成されるものとして説明するが、各相巻線を構成する単位コイルの数はこれ以外でもよく、それに応じたスロット数としてもよい。また、以下では、各単位コイルは、5回巻回されるものとして説明するが、勿論これは例示であって、これ以外の巻回数であっても構わない。
【0020】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0021】
最初に、ダブルスター結線について説明する。図1は、三相同期型回転電機の固定子における各相巻線の結線の様子を説明する図で、(a)がスター結線、(b)がダブルスター結線である。スター結線では、各相巻線であるU相巻線、V相巻線、W相巻線の一方端を、それぞれインバータ等の駆動回路に接続される動力線端子PU,PV,PWとし、それぞれの他方端は中性点端子Nに接続される。各相巻線に分布巻を用いるスター結線では、各相巻線が複数のコイルの直列接続となる。図1(a)のスター結線で、各相巻線が複数の抵抗素子の直列接続として示されているのは、コイルの抵抗成分を図示したためであり、各抵抗素子がそれぞれコイルを表している。
【0022】
ダブルスター結線は、スター結線の各相巻線のそれぞれについて、動力線端子PU,PV,PWと中性点端子Nの間に2つの巻線を並列接続したものである。例えば、図1(b)のU相巻線は、動力線端子PUと中性点端子Nとの間に、U1とU2とが並列接続されている。U1,U2は、それぞれ複数のコイルを直列接続して構成される。ダブルスター結線は、例えば、回転電機の固定子に流せる最大電流を増やしたいとき等に用いられる。一例をあげると、回転電機の固定子の最大電流を2倍にしたいとき、コイルの導体線に流す電流密度を同じとすると、コイルの導体径を2倍としなければならない。この場合、太い導体線を用いることになるので、渦電流損失が増加し、また、巻線の加工性が低下する。ダブルスター結線を用いれば、同じ導体径のコイルを2組準備すれば足りるので、渦電流損失を抑制でき、コイルの加工性もそのまま維持できる。
【0023】
図2は、回転電機固定子10の様子を説明する斜視図である。この回転電機固定子10は、車両搭載用の三相同期型回転電機に用いられる固定子で、この回転電機固定子10は、円環状の電磁鋼板を複数枚積層したステータコア12と、ステータコア12に巻回される分布巻の三相巻線とで構成される。図2では、分布巻の三相巻線のうちの1相分である分布巻のU相配線の様子が示されている。なお、以下では、分布巻のU相配線のことを、U相分布巻線20と呼ぶことにする。スロット14は、ステータコア12の円環状の内周側に開口し、径方向に延び、周方向に複数個配置される溝で、ここに分布巻形式で各相巻線が配置される。図2では、スロット14がステータコア12の周方向に沿って48個配置され、そのうちの16個にU相分布巻線20が配置されている。
【0024】
図3は、回転電機固定子10に配置されるU相分布巻線20を抜き出して示す図である。U相分布巻線20は、導体線であるコイル素線をほぼ6角形に巻回された単位コイル21がステータコア12の周方向に沿って16個配置されて構成される。図3でC1からC16と示してあるのは、16個の単位コイル21を区別するためのコイル番号である。
【0025】
図3から分かるように、単位コイルC1のすぐ隣に単位コイルC2が配置され、以下、C3,C4,C5,C6,C7,C8と順次隣り合わせに配置され、円周方向に1周する。また、単位コイルC9のすぐ隣に単位コイルC10が配置され、以下、C11,C12,C13,C14,C15,C16と順次隣り合わせに配置され、円周方向に1周する。
【0026】
各単位コイルは、図2に示されるように、6スロット間隔をおいて配置される2つのスロット14の間に巻回される。
【0027】
また、単位コイルC1が配置される他方側のスロット14と、単位コイルC2が配置される一方側のスロット14は同じスロット14である。同様に、単位コイルC2からC8の間では、コイル番号をiとして、i番コイルが配置される他方側のスロット14と、(i+1)番コイルが配置される一方側のスロット14は同じスロット14である。同様に、単位コイルC9からC16の間でも、コイル番号をiとして、i番コイルが配置される他方側のスロット14と、(i+1)番コイルが配置される一方側のスロット14は同じスロット14である。
【0028】
また、図2に示されるように、単位コイルC1と単位コイルC9とは1スロット分ずれている。同様に、コイル番号をiとして、i番コイルと(i+8)番コイルとは、1スロット分ずれている。
【0029】
ここで、単位コイルC1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8の8個を順次直列に接続し、図1で説明したU1コイルとし、単位コイルC9,C10,C11,C12,C13,C14,C15,C16の8個を順次直列に接続し、図1で説明したU2コイルとすることができる。この場合には、U1コイルを構成する各単位コイルと、U2コイルを構成する各単位コイルとは、1スロット分ずれているので、回転電機が動作すると、後に詳述するように、U1コイルとU2コイルの間に循環電流が発生する。
【0030】
そこで、図3において、破線枠で囲んだ単位コイルC4,C5,C12,C13の間の接続を変更して、循環電流の発生を抑制する。具体的には、単位コイルC4の巻き終わりを単位コイルC5の巻き始めに接続するのではなく、単位コイルC13の巻き始めに接続する。そして、単位コイルC12の巻き終わりを単位コイルC13の巻き始めに接続するのではなく、単位コイルC5の巻き始めに接続する。
【0031】
このように、循環電流を抑制する構成のU相分布巻線20は、単位コイルC1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8の8個を順次直列に接続したものと、単位コイルC9,C10,C11,C12,C13,C14,C15,C16の8個を順次直列に接続したものを、並列接続した構成を基本としている。この基本的な構成を基本巻線部と呼ぶことにする。
【0032】
そこで、循環電流を抑制する構成のU相分布巻線20の説明の前に、まず、基本巻線部の構成と、その基本巻線部において循環電流が発生する様子を、図4から図8を用いて説明する。
【0033】
基本巻線部のうち、S1からS8までを基本第1巻線部と呼び、S9からS16までを基本第2巻線部と呼ぶことにすると、図4は、基本第1巻線部における単位コイル21の巻回の様子を示す模式図で、図5は、基本第2巻線部における単位コイル21の巻回の様子を示す模式図である。
【0034】
ここでは、ステータコア12の平面図とその外側に各単位コイル21の間の接続の様子が模式的に示されている。なお、ステータコア12の48個のスロット14について、説明に必要な範囲でこれらを区別するためのスロット番号が付されている。図4、図5のステータコア12に付されているスロット番号は、記載するスペースが少ないため、単に数字の1から48のみが示されているが、以下では、スロット番号をS1からS48とSの記号を付して説明する。なお、以下で説明するスロット番号の付し方は一例であって、勿論、他の付し方であっても構わない。また、以下では、スロット14の符号14は、スロット番号と混同されることを避けるため、その表示を適宜省略した。同様に単位コイル21の符号21は、単位コイル番号と混同されることを避けるため、その表示を適宜省略した。
【0035】
分布巻の場合、予め定めたスロット間隔をまたいでコイル素線23が配置される。この予め定めたスロット間隔は、単位コイル21の6角形の外形を規定することになるので、これを単位コイル間隔26と呼ぶことにする。図4、図5の例では、単位コイル間隔26は、6スロット間隔となっている。すなわち、コイル素線23が単位コイル間隔26である6スロット間隔分だけまたいで、5回巻回されることで、1つの単位コイル21が形成される。
【0036】
図4において、単位コイルC1は、基本第1巻線部の巻き始めの単位コイルである。基本第1巻線部の巻き始めは、動力線端子PUに接続されるので、図4では、単位コイルC1の巻き始めがPUとして示される。
【0037】
巻き始めの単位コイルC1は、スロットS4とスロットS10との間に渡ってコイル素線23が5回巻回される。単位コイルC1の巻き始めは、スロットS4のステータコア12の外周側である。図4の紙面の表側をステータコア12の表側、図4の紙面の裏側をステータコア12の裏側とすると、コイル素線23は、単位コイルC1の巻き始めのスロットS4の位置からステータコア12の裏側に下がり、ステータコア12の裏側において、スロットS4からスロットS10に単位コイル間隔26だけ渡る。
【0038】
そして、スロットS10でステータコア12の裏側から表側に上がり、ステータコア12の表側において、スロットS10からスロットS4に単位コイル間隔26だけ渡る。スロットS4では、再び、ステータコア12の表側から裏側に下がる。そして、ステータコア12の裏側において、先ほどのスロットS4からスロットS10に渡ったコイル素線23と重ならないように、ステータコア12の内周側に位置をずらして、スロットS4からスロットS10へ、単位コイル間隔26だけ渡る。
【0039】
スロットS10では、再び、ステータコア12の裏側から表側に上がる。そして、ステータコア12の表側において、先ほどのスロットS10からスロットS4に渡ったコイル素線23と重ならないように、ステータコア12の内周側に位置をずらして、スロットS10からスロットS4へ、単位コイル間隔26だけ渡る。
【0040】
これを繰り返して、コイル素線23をスロットS4とスロットS10の間で5回巻回して、単位コイルC1の形成は終る。つまり、単位コイルC1は、ステータコア12の内周側から見ると、反時計方向に5回コイル素線23が巻回されて形成される。
【0041】
単位コイルC1の巻き終わりは、ステータコア12の最内周側で、裏側である。そして、コイル素線23は、ステータコア12の最内周側をスロットS4からスロットS10へ単位コイル間隔だけ渡り、スロットS10を上がり、ステータコア12の表側に出て単位コイルC2の巻き始めとなる。このように、スロットS10を共通として、単位コイルC1と単位コイルC2とが隣接して接続される。なお、図4では、単位コイル間の接続が分かりやすいように、コイル素線23の巻き方の方向を丸印の中に黒点マークとXマークとで示してある。黒点マークは、コイル素線23がステータコア12の表側から裏側へ出る場合、Xマークは、コイル素線23がステータコア12の裏側から表側へ出る場合をそれぞれ示す。
【0042】
単位コイルC2は、この巻き始めからステータコア12の表側において、スロットS10からスロットS16に単位コイル間隔26だけ渡る。スロットS16に渡った後は、スロットS16でステータコア12の表側から裏側に下がり、ステータコア12の裏側において、スロットS16からスロットS10に単位コイル間隔26だけ渡る。スロットS10では、再び、ステータコア12の裏側から表側に上がる。そして、ステータコア12の表側において、先ほどのスロットS10からスロットS16に渡ったコイル素線23と重ならないように、ステータコア12の外周側に位置をずらして、スロットS10からスロットS16へ、単位コイル間隔26だけ渡る。
【0043】
スロットS16では、再び、ステータコア12の表側から裏側に下がる。そして、ステータコア12の裏側において、先ほどのスロットS16からスロットS10に渡ったコイル素線23と重ならないように、ステータコア12の外周側に位置をずらして、スロットS16からスロットS10へ、単位コイル間隔26だけ渡る。
【0044】
これを繰り返して、コイル素線23をスロットS10とスロットS16の間で5回巻回して、単位コイルC2の形成は終る。つまり、単位コイルC2は、ステータコア12の内周側から見ると、単位コイルC1と異なり、時計方向に5回コイル素線23が巻回されて形成される。
【0045】
以後、さらに、同様な巻回が単位コイルC3から単位コイルC8について繰り返される。巻き方は、単位コイルC3、単位コイルC5、単位コイルC7が単位コイルC1と同じ反時計方向で、単位コイルC4、単位コイルC6、単位コイルC8が単位コイルC2と同じ時計方向である。そして、単位コイルC8の巻き終わりがステータコア12の最外周側でスロットS46から表側に出て、これが中性点端子Nに接続される。このようにして、基本第1巻線部の形成が終了する。
【0046】
図5は、基本第2巻線部の巻回の順序を示す図である。ここでは、図4と同様に、動力線端子PUが単位コイルC9の巻き始めとなる。単位コイルC9は、単位コイルC1から1スロット分ずれて、スロットS3とスロットS9との間に渡ってコイル素線23が5回巻回される。巻き方は、基本第1巻線部の単位コイルC1と同じように、反時計方向である。単位コイルC9の巻き終わりは、ステータコア12の最内周側で、裏側である。そして、コイル素線23は、ステータコア12の最内周側をスロットS3からスロットS9へ単位コイル間隔だけ渡り、スロットS9を上がり、ステータコア12の表側に出て単位コイルC10の巻き始めとなる。このようにして、単位コイルC9と単位コイルC10とが隣接して接続される。
【0047】
以後、図4で説明したのと同様な手順が、1スロット分ずらして行われ、同様な巻回が単位コイルC10から単位コイルC16まで繰り返される。そして、単位コイルC16の巻き終わりがステータコア12の最外周側でスロットS45から表側に出たところとなる。これが基本第2巻線部の巻き終わりで、中性点端子Nに接続される。
【0048】
このように、単位コイル間隔を6スロットとして、基本第1巻線部は、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に8個直列に接続配置して形成される。また、基本第2巻線部は、基本第1巻線部で用いたスロットの隣のスロットを用い、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に8個直列に接続配置して形成される。
【0049】
図6は、図4、図5をまとめて、基本巻線部における単位コイル21の配置の様子を模式的に説明する図である。ここでは、ステータコア12におけるスロット14の内周側に、基本第1巻線部の単位コイルC1から単位コイルC8までを、実線でそれぞれ示した。また、スロット14の外周側に、基本第2巻線部の単位コイルC9から単位コイルC16までを、破線でそれぞれ示した。この基本第1巻線部の8個の単位コイル21と、基本第2巻線部の8個の単位コイル21を互いに区別するため、前者の各単位コイル21を第1群単位コイル、後者の各単位コイル21を第2群単位コイルと呼ぶことにする。
【0050】
8個の第1群単位コイルのそれぞれは、対応する8個の第2群単位コイルのそれぞれと、互いに1スロット間隔だけずらして配置される。周方向に沿って磁極が配置される通常の構造の回転子を用いるとして、その1スロット間隔のずれが、回転電機が動作するときに、回転子の磁極によって第1群単位コイルに発生する起電力と、第2群単位コイルに発生する起電力との間に差を生じさせる。具体的には、起電力の発生タイミングが、1スロット分ずれる。起電力が電気角によって変動するものであると、対応する第1群単位コイル21と第2群単位コイル21との間に起電力の差が生じる。
【0051】
図7は、基本巻線部の等価回路図である。基本巻線部は、単位コイルC1から単位コイルC8を直列に接続した基本第1巻線部と、単位コイルC9から単位コイルC16を直列に接続した基本第2巻線部を、動力線端子PUと中性点端子Nとの間に並列接続したものである。図7では、基本第1巻線部をU1、基本第2巻線部をU2として示されている。この基本第1巻線部U1を構成する各第1群単位コイルと、基本第2巻線部U2を構成する各第2群単位コイルとは、互いに1スロット間隔だけずらして配置される。そこで、回転電機が動作するときに発生する起電力の差によって、基本第1巻線部U1と基本第2巻線部U2との間に電圧差が生じる。そして、その電圧差によって、基本第1巻線部U1と基本第2巻線部U2との間に、図7の矢印で示すように、循環電流が発生する。
【0052】
図8は、回転電機の電気角と、基本巻線部の相間電圧の関係を示す図である。相間電圧としては、基本第1巻線部U1のPUとNの間の電圧、基本第2巻線部U2のPUとNの間の電圧、およびこれらの間の電圧差が示されている。この電圧差が、循環電流の原因となる電圧差である。電圧差は、電気角によって変動し、プラス側の電圧差とマイナス側の電圧差がある。図7の循環電流の矢印の方向は、基本第2巻線部U2の電圧が基本第1巻線部U1の電圧より高い場合である。
【0053】
上記で、基本巻線部の構成と、基本巻線部の場合に循環電流が発生することの説明を行ったので、次に、循環電流を抑制する構成のU相分布巻線20を説明する。図3で述べたように、循環電流を抑制する構成のU相分布巻線20は、基本巻線部の単位コイル間の接続を、基本第1巻線部と基本第2巻線部との間に跨って変更した構成を有する。すなわち、単位コイルC4の巻き終わりを単位コイルC5の巻き始めに接続するのではなく、単位コイルC13の巻き始めに接続する。そして、単位コイルC12の巻き終わりを単位コイルC13の巻き始めに接続するのではなく、単位コイルC5の巻き始めに接続する。
【0054】
図9は、その様子を説明する図である。この図は、基本巻線部の図6に対応する図である。ここでは、第1群単位コイルであるC4の巻き終わりは、第2群単位コイルであるC13の巻き始めに接続される。すなわち、単位コイルC1から単位コイルC4までの4個の第1群単位コイルと、単位コイルC13から単位コイルC16までの4個の第2群単位コイル21が直列に接続される。また、第2群単位コイルであるC12の巻き終わりは、第1群単位コイルであるC5の巻き始めに接続される。すなわち、単位コイルC9から単位コイルC12までの4個の第2群単位コイルと、単位コイルC5から単位コイルC8までの4個の第1群単位コイル21が直列に接続される。
【0055】
図10は、図9の等価回路図である。ここでは、U相分布巻線20について、動力線端子PUと中性点端子Nとの間に、単位コイルC1から単位コイルC4の4個と、単位コイルC13から単位コイルC16の4個が直列接続されるU1と、単位コイルC9から単位コイルC12の4個と、単位コイルC5から単位コイルC8の4個が直列接続されるU2が並列接続されることが示される。U1,U2がダブルスター結線のそれぞれの分布巻線部であるので、U1を第1分布巻線部、U2を第2分布巻線部と呼ぶことができる。
【0056】
回転電機が動作するとき、第1群単位コイルの8個にそれぞれ発生する起電力は同じで、図8で説明したU1の相間電圧の1/8に相当する値を有する。同様に、第2群単位コイルの8個にそれぞれ発生する起電力は同じで、図8で説明したU2の相間電圧の1/8に相当する値を有する。上記のように、第1分布巻線部U1は、基本巻線部の第1群単位コイルを4個、第2群単位コイルを4個、直列に接続したものである。また、第2分布巻線部U2も、基本巻線部の第1群単位コイルを4個、第2群単位コイルを4個、直列に接続したものである。したがって、回転電機が動作したときに各単位コイル21に発生する起電力に起因する電圧を考えると、第1分布巻線部の電圧は、第2分布巻線部の電圧と同じとなる。したがって、循環電流は発生しない。
【0057】
循環電流を発生させないようにするには、第1分布巻線部U1における第1群単位コイルの数と、第2群単位コイルの数を同じとし、第2分布巻線部U2における第1群単位コイルの数と、第2群単位コイルの数を同じとすればよい。例えば、単位コイルの総数を4n個として、第1群単位コイルの総数を2n個、第2群単位コイルの総数を2n個とするとき、第1分布巻線部U1は、n個の第1群単位コイルと、n個の第2群単位コイルとを直列に接続し、第2分布巻線部U2は、n個の第1群単位コイルと、n個の第2群単位コイルとを直列に接続すればよい。大事なのは、個数であって、どこで接続を変更するかは任意に行うことができる。
【0058】
図10では、4個の第1群単位コイルと4個の第2群単位コイルとを接続変更の単位としたが、これを2個の第1群単位コイルと2個の第2群単位コイルとを接続変更の単位とすることができる。図11はそのような構成のU相分布巻線の構成を示す図である。
【0059】
ここでは、第1分布巻線部U1は、単位コイルC2の巻き終わりを単位コイルC11の巻き始めに接続し、単位コイルC12の巻き終わりを単位コイルC5の巻き始めに接続し、単位コイルC6の巻き終わりを単位コイルC15の巻き始めに接続する。また、第2分布巻線部U2は、単位コイルC10の巻き終わりを単位コイルC3の巻き始めに接続し、単位コイルC4の巻き終わりを単位コイルC13の巻き始めに接続し、単位コイルC14の巻き終わりを単位コイルC7の巻き始めに接続する。
【0060】
この構成で、第1分布巻線部U1は、単位コイルC1と単位コイルC2と単位コイルC5と単位コイルC6の4個の第1群単位コイルと、単位コイルC11と単位コイルC12と単位コイルC15と単位コイルC16の4個の第2群単位コイルを直列接続したものとなっている。また、第2分布巻線部U2は、単位コイルC3と単位コイルC4と単位コイルC7と単位コイルC8の4個の第1群単位コイルと、単位コイルC9と単位コイルC10と単位コイルC13と単位コイルC14の4個の第2群単位コイルを直列接続したものとなっている。したがって、回転電機の動作時に、第1分布巻線部U1と第2分布巻線部U2との間に循環電流が発生しない。
【0061】
図12は、2個の第1群単位コイルと2個の第2群単位コイルとを接続変更の単位としたU相分布巻線の構成を示す図である。ここでは、第1分布巻線部U1は、単位コイルC1の巻き終わりを単位コイルC10の巻き始めに接続し、単位コイルC10の巻き終わりを単位コイルC3の巻き始めに接続し、単位コイルC3の巻き終わりを単位コイルC12の巻き始めに接続し、単位コイルC12の巻き終わりを単位コイルC5の巻き始めに接続し、単位コイルC5の巻き終わりを単位コイルC14の巻き始めに接続し、単位コイルC14の巻き終わりを単位コイルC7の巻き始めに接続し、単位コイルC7の巻き終わりを単位コイルC16の巻き始めに接続する。
【0062】
また、第2分布巻線部U2は、単位コイルC9の巻き終わりを単位コイルC2の巻き始めに接続し、単位コイルC2の巻き終わりを単位コイルC11の巻き始めに接続し、単位コイルC11の巻き終わりを単位コイルC4の巻き始めに接続し、単位コイルC4の巻き終わりを単位コイルC13の巻き始めに接続し、単位コイルC13の巻き終わりを単位コイルC6の巻き始めに接続し、単位コイルC6の巻き終わりを単位コイルC15の巻き始めに接続し、単位コイルC15の巻き終わりを単位コイルC8の巻き始めに接続する。
【0063】
この構成で、第1分布巻線部U1は、単位コイルC1と単位コイルC3と単位コイルC5と単位コイルC7の4個の第1群単位コイルと、単位コイルC10と単位コイルC12と単位コイルC14と単位コイルC16の4個の第2群単位コイルを直列接続したものとなっている。また、第2分布巻線部U2は、単位コイルC2と単位コイルC4と単位コイルC6と単位コイルC8の4個の第1群単位コイルと、単位コイルC9と単位コイルC11と単位コイルC13と単位コイルC15の4個の第2群単位コイルを直列接続したものとなっている。したがって、回転電機の動作時に、第1分布巻線部U1と第2分布巻線部U2との間に循環電流が発生しない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る回転電機固定子は、ダブルスター結線の分布巻固定子を用いる回転電機に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
10 回転電機固定子、12 ステータコア、14 スロット、20 U相分布巻線、21 単位コイル、23 コイル素線、26 単位コイル間隔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機固定子に係り、特に、各相コイルの結線をダブルスター結線とする回転電機固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
三相回転電機固定子における固定子巻線の配置方法として、各相巻線の一方端をそれぞれインバータ等の駆動回路に接続される動力線端子とし、各相巻線の他方端をそれぞれ相互に接続して中性点端子とするスター結線が知られている。また、スター結線の各相巻線のそれぞれについて、動力線端子と中性点端子の間に2つの巻線を並列接続するダブルスター結線も知られている。
【0003】
特許文献1には、ステータ鉄心の巻線方法として、各相コイルの結線をダブルスター結線とすることで、モータを駆動する際の印加電圧を低くできることが述べられている。ここでは、例えば、U相巻線として、同じスロットに一方のU相巻線と他方のU相巻線が配置されて、これらが並列接続され、一方のU相巻線も他方のU相巻線も、それぞれがステータの周方向に直列に接続された4つのU相コイルで構成されることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、セグメント順次接合ステータコイル型回転電機において、1つのスロットに複数の部分コイルを直列に接続したものを径方向直列コイルとして、3つの径方向直列コイルをそれぞれ異なるスロットに配置して、相互に並列接続する構成、すなわち、径方向直列、周方向並列の構成が述べられている。この場合、並列接続される3つの径方向直列コイルの起電力は互いに位相がスロット間隔分ずれるので、そのままでは、並列接続される3つの径方向直列コイルの間で起電力の差が生じ、循環電流が流れる。そこで、位相が進む部分コイルと位相が遅れる部分コイルとは互いに異なるスロットに配置されるが、径方向直列コイルは、スロットをまたいで、位相が進む部分コイルと位相が遅れる部分コイルとを組み合わせて直列接続することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−12974号公報
【特許文献2】特許第3815674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2では、固定子巻線において、スロットを異ならせて並列接続される3つの径方向直列コイルの間で循環電流が発生することを指摘している。特許文献2では、周方向並列接続、径方向直列接続である。分布巻を用いるダブルスター結線は、周方向直列、径方向並列であるが、径方向並列でスロットを異ならせると、同様に循環電流が発生することが予想される。
【0007】
本発明の目的は、分布巻を用いるダブルスター結線において、並列接続される結線間の循環電流の発生を抑制できる回転電機固定子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回転電機固定子は、周方向に沿って配置され、それぞれが径方向に延びる複数のスロットを有するステータコアと、予め定めたスロット間隔を単位コイル間隔として、単位コイル間隔でコイル素線を巻回して形成されるコイルを単位コイルとして、ステータコアの周方向に予め定めた配置順序で単位コイルを4n個配置して形成される分布巻の各相巻線と、を備え、分布巻の各相巻線は、ステータコアの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第1群単位コイルと、第1群単位コイルと異なるスロットを用いて、第1群単位コイルと同じ単位コイル間隔の単位コイルをステータの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第2群単位コイルと、を用い、n個の第1群単位コイルとn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して形成される第1分布巻線部と、第1分布巻線部に用いられていないn個の第1群単位コイルと第1分布巻線部に用いられていないn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して形成される第2分布巻線部と、を並列接続して形成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る回転電機固定子において、分布巻の各相巻線は、予め、単位コイル間隔を6スロットとして、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第1巻線部と、基本第1巻線部で用いたスロットの隣のスロットを用い、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第2巻線部と、を用い、基本第1巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る回転電機固定子において、nは偶数であって、さらに、基本第1巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る回転電機固定子において、nは4の倍数であって、さらに、基本第1巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により、回転電機固定子の分布巻の各相巻線は、それぞれ、第1分布巻線部と第2分布巻線部とが並列接続されているダブルスター結線で配置されている。第1分布巻線部と第2分布巻線部とは、合計で4n個の単位コイルを用いる。4n個の単位コイルは、ステータコアの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第1群単位コイルと、第1群単位コイルと異なるスロットを用いて、第1群単位コイルと同じ単位コイル間隔の単位コイルをステータの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第2群単位コイルである。そして、n個の第1群単位コイルとn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して第1分布巻線部を形成し、第1分布巻線部に用いられていないn個の第1群単位コイルと第1分布巻線部に用いられていないn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して第2分布巻線部を形成する。
【0013】
スロットを異ならせて配置される2組のコイルをそのまま並列接続すると、回転電機が動作するときに、径方向に異なる位置にあるスロット間では、コイルに発生する起電力に差が生じる。これによって並列接続された2組のコイルの間に循環電流が発生する。上記の構成では、スロットを異ならせることで回転電機が動作するときの起電力が異なる2組のコイルを第1群単位コイルと第2群単位コイルとして区別し、2n個の第1群単位コイルと2n個の第2群単位コイルを用いる。
【0014】
そして、分布巻の各相巻線としては、n個の第1群単位コイルとn個の第2群単位コイルを直列接続したものを2組作って、それぞれを第1分布巻線部と第2分布巻線部とする。第1分布巻線部と第2分布巻線部は、回転電機が動作するときの起電力が異なる第1群単位コイルと第2群単位コイルとをそれぞれ同数ずつ用いている。したがって、回転電機が動作するとき、第1分布巻線部の全体に発生する起電力と、第2分布巻線部の全体に発生する起電力は同じである。分布巻の各相巻線は、この第1分布巻線部と第2分布巻線部とを並列接続するので、回転電機が動作するときに、並列接続される第1分布巻線部と第2分布巻線部の間に循環電流が発生しない。
【0015】
回転電機固定子において、単位コイル間隔を6スロットとして、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第1巻線部と、基本第1巻線部で用いたスロットの隣のスロットを用い、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第2巻線部とを用いる場合には、構成が簡単になる。すなわち、基本第1巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすればよい。
【0016】
同様に、回転電機固定子において、nが偶数の場合は、さらに、基本第1巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直せばよい。
【0017】
また、nが4の倍数のときは、さらに、基本第1巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、基本第2巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して基本第2巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して、基本第2巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】分布巻を用いる回転電機固定子におけるスター結線とダブルスター結線を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の回転電機固定子において、ダブルスター結線される分布巻の各相巻線の配置の様子を、U相分布巻線に代表させて説明する図である。
【図3】図2におけるU相分布巻線を抜き出して説明する図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の回転電機固定子において、循環電流が発生することが予想されるが、基本となるU相分布巻線の並列接続される2つの巻線部の1つである基本第1巻線部の配置の様子を説明する図である。
【図5】図4の基本第1巻線部と並列接続される基本第2巻線部の配置の様子を説明する図である。
【図6】図4、図5をまとめて、本発明に係る実施の形態の回転電機固定子において、基本となるU相分布巻線の単位コイルの配置の様子を模式的に説明する図である。
【図7】図6に対する等価回路図を用いて、並列接続されるU1コイルとU2コイルの間に循環電流が発生する様子を説明する図である。
【図8】図6において、回転電機が動作するときに各コイルに発生する起電力に基づく相間電圧の様子を説明する図である。
【図9】本発明に係る実施の形態の回転電機固定子における分布巻の各相巻線の結線の様子を説明する図である。
【図10】図9の等価回路図である。
【図11】本発明に係る実施の形態の回転電機固定子における分布巻の各相巻線の結線の他の例を説明する図である。
【図12】本発明に係る実施の形態の回転電機固定子における分布巻の各相巻線の結線のさらに他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、回転電機として、車両に搭載される三相同期型回転電機を説明するが、車両搭載以外に用いられるものでもよい。以下では、回転電機固定子として、三相同期型回転電機を説明するが、分布巻コイルを含む固定子であればよく、三相に限らない。また、以下では、固定子が48スロットを有し、各相巻線がそれぞれ16の単位コイルで構成されるものとして説明するが、各相巻線を構成する単位コイルの数はこれ以外でもよく、それに応じたスロット数としてもよい。また、以下では、各単位コイルは、5回巻回されるものとして説明するが、勿論これは例示であって、これ以外の巻回数であっても構わない。
【0020】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0021】
最初に、ダブルスター結線について説明する。図1は、三相同期型回転電機の固定子における各相巻線の結線の様子を説明する図で、(a)がスター結線、(b)がダブルスター結線である。スター結線では、各相巻線であるU相巻線、V相巻線、W相巻線の一方端を、それぞれインバータ等の駆動回路に接続される動力線端子PU,PV,PWとし、それぞれの他方端は中性点端子Nに接続される。各相巻線に分布巻を用いるスター結線では、各相巻線が複数のコイルの直列接続となる。図1(a)のスター結線で、各相巻線が複数の抵抗素子の直列接続として示されているのは、コイルの抵抗成分を図示したためであり、各抵抗素子がそれぞれコイルを表している。
【0022】
ダブルスター結線は、スター結線の各相巻線のそれぞれについて、動力線端子PU,PV,PWと中性点端子Nの間に2つの巻線を並列接続したものである。例えば、図1(b)のU相巻線は、動力線端子PUと中性点端子Nとの間に、U1とU2とが並列接続されている。U1,U2は、それぞれ複数のコイルを直列接続して構成される。ダブルスター結線は、例えば、回転電機の固定子に流せる最大電流を増やしたいとき等に用いられる。一例をあげると、回転電機の固定子の最大電流を2倍にしたいとき、コイルの導体線に流す電流密度を同じとすると、コイルの導体径を2倍としなければならない。この場合、太い導体線を用いることになるので、渦電流損失が増加し、また、巻線の加工性が低下する。ダブルスター結線を用いれば、同じ導体径のコイルを2組準備すれば足りるので、渦電流損失を抑制でき、コイルの加工性もそのまま維持できる。
【0023】
図2は、回転電機固定子10の様子を説明する斜視図である。この回転電機固定子10は、車両搭載用の三相同期型回転電機に用いられる固定子で、この回転電機固定子10は、円環状の電磁鋼板を複数枚積層したステータコア12と、ステータコア12に巻回される分布巻の三相巻線とで構成される。図2では、分布巻の三相巻線のうちの1相分である分布巻のU相配線の様子が示されている。なお、以下では、分布巻のU相配線のことを、U相分布巻線20と呼ぶことにする。スロット14は、ステータコア12の円環状の内周側に開口し、径方向に延び、周方向に複数個配置される溝で、ここに分布巻形式で各相巻線が配置される。図2では、スロット14がステータコア12の周方向に沿って48個配置され、そのうちの16個にU相分布巻線20が配置されている。
【0024】
図3は、回転電機固定子10に配置されるU相分布巻線20を抜き出して示す図である。U相分布巻線20は、導体線であるコイル素線をほぼ6角形に巻回された単位コイル21がステータコア12の周方向に沿って16個配置されて構成される。図3でC1からC16と示してあるのは、16個の単位コイル21を区別するためのコイル番号である。
【0025】
図3から分かるように、単位コイルC1のすぐ隣に単位コイルC2が配置され、以下、C3,C4,C5,C6,C7,C8と順次隣り合わせに配置され、円周方向に1周する。また、単位コイルC9のすぐ隣に単位コイルC10が配置され、以下、C11,C12,C13,C14,C15,C16と順次隣り合わせに配置され、円周方向に1周する。
【0026】
各単位コイルは、図2に示されるように、6スロット間隔をおいて配置される2つのスロット14の間に巻回される。
【0027】
また、単位コイルC1が配置される他方側のスロット14と、単位コイルC2が配置される一方側のスロット14は同じスロット14である。同様に、単位コイルC2からC8の間では、コイル番号をiとして、i番コイルが配置される他方側のスロット14と、(i+1)番コイルが配置される一方側のスロット14は同じスロット14である。同様に、単位コイルC9からC16の間でも、コイル番号をiとして、i番コイルが配置される他方側のスロット14と、(i+1)番コイルが配置される一方側のスロット14は同じスロット14である。
【0028】
また、図2に示されるように、単位コイルC1と単位コイルC9とは1スロット分ずれている。同様に、コイル番号をiとして、i番コイルと(i+8)番コイルとは、1スロット分ずれている。
【0029】
ここで、単位コイルC1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8の8個を順次直列に接続し、図1で説明したU1コイルとし、単位コイルC9,C10,C11,C12,C13,C14,C15,C16の8個を順次直列に接続し、図1で説明したU2コイルとすることができる。この場合には、U1コイルを構成する各単位コイルと、U2コイルを構成する各単位コイルとは、1スロット分ずれているので、回転電機が動作すると、後に詳述するように、U1コイルとU2コイルの間に循環電流が発生する。
【0030】
そこで、図3において、破線枠で囲んだ単位コイルC4,C5,C12,C13の間の接続を変更して、循環電流の発生を抑制する。具体的には、単位コイルC4の巻き終わりを単位コイルC5の巻き始めに接続するのではなく、単位コイルC13の巻き始めに接続する。そして、単位コイルC12の巻き終わりを単位コイルC13の巻き始めに接続するのではなく、単位コイルC5の巻き始めに接続する。
【0031】
このように、循環電流を抑制する構成のU相分布巻線20は、単位コイルC1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8の8個を順次直列に接続したものと、単位コイルC9,C10,C11,C12,C13,C14,C15,C16の8個を順次直列に接続したものを、並列接続した構成を基本としている。この基本的な構成を基本巻線部と呼ぶことにする。
【0032】
そこで、循環電流を抑制する構成のU相分布巻線20の説明の前に、まず、基本巻線部の構成と、その基本巻線部において循環電流が発生する様子を、図4から図8を用いて説明する。
【0033】
基本巻線部のうち、S1からS8までを基本第1巻線部と呼び、S9からS16までを基本第2巻線部と呼ぶことにすると、図4は、基本第1巻線部における単位コイル21の巻回の様子を示す模式図で、図5は、基本第2巻線部における単位コイル21の巻回の様子を示す模式図である。
【0034】
ここでは、ステータコア12の平面図とその外側に各単位コイル21の間の接続の様子が模式的に示されている。なお、ステータコア12の48個のスロット14について、説明に必要な範囲でこれらを区別するためのスロット番号が付されている。図4、図5のステータコア12に付されているスロット番号は、記載するスペースが少ないため、単に数字の1から48のみが示されているが、以下では、スロット番号をS1からS48とSの記号を付して説明する。なお、以下で説明するスロット番号の付し方は一例であって、勿論、他の付し方であっても構わない。また、以下では、スロット14の符号14は、スロット番号と混同されることを避けるため、その表示を適宜省略した。同様に単位コイル21の符号21は、単位コイル番号と混同されることを避けるため、その表示を適宜省略した。
【0035】
分布巻の場合、予め定めたスロット間隔をまたいでコイル素線23が配置される。この予め定めたスロット間隔は、単位コイル21の6角形の外形を規定することになるので、これを単位コイル間隔26と呼ぶことにする。図4、図5の例では、単位コイル間隔26は、6スロット間隔となっている。すなわち、コイル素線23が単位コイル間隔26である6スロット間隔分だけまたいで、5回巻回されることで、1つの単位コイル21が形成される。
【0036】
図4において、単位コイルC1は、基本第1巻線部の巻き始めの単位コイルである。基本第1巻線部の巻き始めは、動力線端子PUに接続されるので、図4では、単位コイルC1の巻き始めがPUとして示される。
【0037】
巻き始めの単位コイルC1は、スロットS4とスロットS10との間に渡ってコイル素線23が5回巻回される。単位コイルC1の巻き始めは、スロットS4のステータコア12の外周側である。図4の紙面の表側をステータコア12の表側、図4の紙面の裏側をステータコア12の裏側とすると、コイル素線23は、単位コイルC1の巻き始めのスロットS4の位置からステータコア12の裏側に下がり、ステータコア12の裏側において、スロットS4からスロットS10に単位コイル間隔26だけ渡る。
【0038】
そして、スロットS10でステータコア12の裏側から表側に上がり、ステータコア12の表側において、スロットS10からスロットS4に単位コイル間隔26だけ渡る。スロットS4では、再び、ステータコア12の表側から裏側に下がる。そして、ステータコア12の裏側において、先ほどのスロットS4からスロットS10に渡ったコイル素線23と重ならないように、ステータコア12の内周側に位置をずらして、スロットS4からスロットS10へ、単位コイル間隔26だけ渡る。
【0039】
スロットS10では、再び、ステータコア12の裏側から表側に上がる。そして、ステータコア12の表側において、先ほどのスロットS10からスロットS4に渡ったコイル素線23と重ならないように、ステータコア12の内周側に位置をずらして、スロットS10からスロットS4へ、単位コイル間隔26だけ渡る。
【0040】
これを繰り返して、コイル素線23をスロットS4とスロットS10の間で5回巻回して、単位コイルC1の形成は終る。つまり、単位コイルC1は、ステータコア12の内周側から見ると、反時計方向に5回コイル素線23が巻回されて形成される。
【0041】
単位コイルC1の巻き終わりは、ステータコア12の最内周側で、裏側である。そして、コイル素線23は、ステータコア12の最内周側をスロットS4からスロットS10へ単位コイル間隔だけ渡り、スロットS10を上がり、ステータコア12の表側に出て単位コイルC2の巻き始めとなる。このように、スロットS10を共通として、単位コイルC1と単位コイルC2とが隣接して接続される。なお、図4では、単位コイル間の接続が分かりやすいように、コイル素線23の巻き方の方向を丸印の中に黒点マークとXマークとで示してある。黒点マークは、コイル素線23がステータコア12の表側から裏側へ出る場合、Xマークは、コイル素線23がステータコア12の裏側から表側へ出る場合をそれぞれ示す。
【0042】
単位コイルC2は、この巻き始めからステータコア12の表側において、スロットS10からスロットS16に単位コイル間隔26だけ渡る。スロットS16に渡った後は、スロットS16でステータコア12の表側から裏側に下がり、ステータコア12の裏側において、スロットS16からスロットS10に単位コイル間隔26だけ渡る。スロットS10では、再び、ステータコア12の裏側から表側に上がる。そして、ステータコア12の表側において、先ほどのスロットS10からスロットS16に渡ったコイル素線23と重ならないように、ステータコア12の外周側に位置をずらして、スロットS10からスロットS16へ、単位コイル間隔26だけ渡る。
【0043】
スロットS16では、再び、ステータコア12の表側から裏側に下がる。そして、ステータコア12の裏側において、先ほどのスロットS16からスロットS10に渡ったコイル素線23と重ならないように、ステータコア12の外周側に位置をずらして、スロットS16からスロットS10へ、単位コイル間隔26だけ渡る。
【0044】
これを繰り返して、コイル素線23をスロットS10とスロットS16の間で5回巻回して、単位コイルC2の形成は終る。つまり、単位コイルC2は、ステータコア12の内周側から見ると、単位コイルC1と異なり、時計方向に5回コイル素線23が巻回されて形成される。
【0045】
以後、さらに、同様な巻回が単位コイルC3から単位コイルC8について繰り返される。巻き方は、単位コイルC3、単位コイルC5、単位コイルC7が単位コイルC1と同じ反時計方向で、単位コイルC4、単位コイルC6、単位コイルC8が単位コイルC2と同じ時計方向である。そして、単位コイルC8の巻き終わりがステータコア12の最外周側でスロットS46から表側に出て、これが中性点端子Nに接続される。このようにして、基本第1巻線部の形成が終了する。
【0046】
図5は、基本第2巻線部の巻回の順序を示す図である。ここでは、図4と同様に、動力線端子PUが単位コイルC9の巻き始めとなる。単位コイルC9は、単位コイルC1から1スロット分ずれて、スロットS3とスロットS9との間に渡ってコイル素線23が5回巻回される。巻き方は、基本第1巻線部の単位コイルC1と同じように、反時計方向である。単位コイルC9の巻き終わりは、ステータコア12の最内周側で、裏側である。そして、コイル素線23は、ステータコア12の最内周側をスロットS3からスロットS9へ単位コイル間隔だけ渡り、スロットS9を上がり、ステータコア12の表側に出て単位コイルC10の巻き始めとなる。このようにして、単位コイルC9と単位コイルC10とが隣接して接続される。
【0047】
以後、図4で説明したのと同様な手順が、1スロット分ずらして行われ、同様な巻回が単位コイルC10から単位コイルC16まで繰り返される。そして、単位コイルC16の巻き終わりがステータコア12の最外周側でスロットS45から表側に出たところとなる。これが基本第2巻線部の巻き終わりで、中性点端子Nに接続される。
【0048】
このように、単位コイル間隔を6スロットとして、基本第1巻線部は、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に8個直列に接続配置して形成される。また、基本第2巻線部は、基本第1巻線部で用いたスロットの隣のスロットを用い、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に8個直列に接続配置して形成される。
【0049】
図6は、図4、図5をまとめて、基本巻線部における単位コイル21の配置の様子を模式的に説明する図である。ここでは、ステータコア12におけるスロット14の内周側に、基本第1巻線部の単位コイルC1から単位コイルC8までを、実線でそれぞれ示した。また、スロット14の外周側に、基本第2巻線部の単位コイルC9から単位コイルC16までを、破線でそれぞれ示した。この基本第1巻線部の8個の単位コイル21と、基本第2巻線部の8個の単位コイル21を互いに区別するため、前者の各単位コイル21を第1群単位コイル、後者の各単位コイル21を第2群単位コイルと呼ぶことにする。
【0050】
8個の第1群単位コイルのそれぞれは、対応する8個の第2群単位コイルのそれぞれと、互いに1スロット間隔だけずらして配置される。周方向に沿って磁極が配置される通常の構造の回転子を用いるとして、その1スロット間隔のずれが、回転電機が動作するときに、回転子の磁極によって第1群単位コイルに発生する起電力と、第2群単位コイルに発生する起電力との間に差を生じさせる。具体的には、起電力の発生タイミングが、1スロット分ずれる。起電力が電気角によって変動するものであると、対応する第1群単位コイル21と第2群単位コイル21との間に起電力の差が生じる。
【0051】
図7は、基本巻線部の等価回路図である。基本巻線部は、単位コイルC1から単位コイルC8を直列に接続した基本第1巻線部と、単位コイルC9から単位コイルC16を直列に接続した基本第2巻線部を、動力線端子PUと中性点端子Nとの間に並列接続したものである。図7では、基本第1巻線部をU1、基本第2巻線部をU2として示されている。この基本第1巻線部U1を構成する各第1群単位コイルと、基本第2巻線部U2を構成する各第2群単位コイルとは、互いに1スロット間隔だけずらして配置される。そこで、回転電機が動作するときに発生する起電力の差によって、基本第1巻線部U1と基本第2巻線部U2との間に電圧差が生じる。そして、その電圧差によって、基本第1巻線部U1と基本第2巻線部U2との間に、図7の矢印で示すように、循環電流が発生する。
【0052】
図8は、回転電機の電気角と、基本巻線部の相間電圧の関係を示す図である。相間電圧としては、基本第1巻線部U1のPUとNの間の電圧、基本第2巻線部U2のPUとNの間の電圧、およびこれらの間の電圧差が示されている。この電圧差が、循環電流の原因となる電圧差である。電圧差は、電気角によって変動し、プラス側の電圧差とマイナス側の電圧差がある。図7の循環電流の矢印の方向は、基本第2巻線部U2の電圧が基本第1巻線部U1の電圧より高い場合である。
【0053】
上記で、基本巻線部の構成と、基本巻線部の場合に循環電流が発生することの説明を行ったので、次に、循環電流を抑制する構成のU相分布巻線20を説明する。図3で述べたように、循環電流を抑制する構成のU相分布巻線20は、基本巻線部の単位コイル間の接続を、基本第1巻線部と基本第2巻線部との間に跨って変更した構成を有する。すなわち、単位コイルC4の巻き終わりを単位コイルC5の巻き始めに接続するのではなく、単位コイルC13の巻き始めに接続する。そして、単位コイルC12の巻き終わりを単位コイルC13の巻き始めに接続するのではなく、単位コイルC5の巻き始めに接続する。
【0054】
図9は、その様子を説明する図である。この図は、基本巻線部の図6に対応する図である。ここでは、第1群単位コイルであるC4の巻き終わりは、第2群単位コイルであるC13の巻き始めに接続される。すなわち、単位コイルC1から単位コイルC4までの4個の第1群単位コイルと、単位コイルC13から単位コイルC16までの4個の第2群単位コイル21が直列に接続される。また、第2群単位コイルであるC12の巻き終わりは、第1群単位コイルであるC5の巻き始めに接続される。すなわち、単位コイルC9から単位コイルC12までの4個の第2群単位コイルと、単位コイルC5から単位コイルC8までの4個の第1群単位コイル21が直列に接続される。
【0055】
図10は、図9の等価回路図である。ここでは、U相分布巻線20について、動力線端子PUと中性点端子Nとの間に、単位コイルC1から単位コイルC4の4個と、単位コイルC13から単位コイルC16の4個が直列接続されるU1と、単位コイルC9から単位コイルC12の4個と、単位コイルC5から単位コイルC8の4個が直列接続されるU2が並列接続されることが示される。U1,U2がダブルスター結線のそれぞれの分布巻線部であるので、U1を第1分布巻線部、U2を第2分布巻線部と呼ぶことができる。
【0056】
回転電機が動作するとき、第1群単位コイルの8個にそれぞれ発生する起電力は同じで、図8で説明したU1の相間電圧の1/8に相当する値を有する。同様に、第2群単位コイルの8個にそれぞれ発生する起電力は同じで、図8で説明したU2の相間電圧の1/8に相当する値を有する。上記のように、第1分布巻線部U1は、基本巻線部の第1群単位コイルを4個、第2群単位コイルを4個、直列に接続したものである。また、第2分布巻線部U2も、基本巻線部の第1群単位コイルを4個、第2群単位コイルを4個、直列に接続したものである。したがって、回転電機が動作したときに各単位コイル21に発生する起電力に起因する電圧を考えると、第1分布巻線部の電圧は、第2分布巻線部の電圧と同じとなる。したがって、循環電流は発生しない。
【0057】
循環電流を発生させないようにするには、第1分布巻線部U1における第1群単位コイルの数と、第2群単位コイルの数を同じとし、第2分布巻線部U2における第1群単位コイルの数と、第2群単位コイルの数を同じとすればよい。例えば、単位コイルの総数を4n個として、第1群単位コイルの総数を2n個、第2群単位コイルの総数を2n個とするとき、第1分布巻線部U1は、n個の第1群単位コイルと、n個の第2群単位コイルとを直列に接続し、第2分布巻線部U2は、n個の第1群単位コイルと、n個の第2群単位コイルとを直列に接続すればよい。大事なのは、個数であって、どこで接続を変更するかは任意に行うことができる。
【0058】
図10では、4個の第1群単位コイルと4個の第2群単位コイルとを接続変更の単位としたが、これを2個の第1群単位コイルと2個の第2群単位コイルとを接続変更の単位とすることができる。図11はそのような構成のU相分布巻線の構成を示す図である。
【0059】
ここでは、第1分布巻線部U1は、単位コイルC2の巻き終わりを単位コイルC11の巻き始めに接続し、単位コイルC12の巻き終わりを単位コイルC5の巻き始めに接続し、単位コイルC6の巻き終わりを単位コイルC15の巻き始めに接続する。また、第2分布巻線部U2は、単位コイルC10の巻き終わりを単位コイルC3の巻き始めに接続し、単位コイルC4の巻き終わりを単位コイルC13の巻き始めに接続し、単位コイルC14の巻き終わりを単位コイルC7の巻き始めに接続する。
【0060】
この構成で、第1分布巻線部U1は、単位コイルC1と単位コイルC2と単位コイルC5と単位コイルC6の4個の第1群単位コイルと、単位コイルC11と単位コイルC12と単位コイルC15と単位コイルC16の4個の第2群単位コイルを直列接続したものとなっている。また、第2分布巻線部U2は、単位コイルC3と単位コイルC4と単位コイルC7と単位コイルC8の4個の第1群単位コイルと、単位コイルC9と単位コイルC10と単位コイルC13と単位コイルC14の4個の第2群単位コイルを直列接続したものとなっている。したがって、回転電機の動作時に、第1分布巻線部U1と第2分布巻線部U2との間に循環電流が発生しない。
【0061】
図12は、2個の第1群単位コイルと2個の第2群単位コイルとを接続変更の単位としたU相分布巻線の構成を示す図である。ここでは、第1分布巻線部U1は、単位コイルC1の巻き終わりを単位コイルC10の巻き始めに接続し、単位コイルC10の巻き終わりを単位コイルC3の巻き始めに接続し、単位コイルC3の巻き終わりを単位コイルC12の巻き始めに接続し、単位コイルC12の巻き終わりを単位コイルC5の巻き始めに接続し、単位コイルC5の巻き終わりを単位コイルC14の巻き始めに接続し、単位コイルC14の巻き終わりを単位コイルC7の巻き始めに接続し、単位コイルC7の巻き終わりを単位コイルC16の巻き始めに接続する。
【0062】
また、第2分布巻線部U2は、単位コイルC9の巻き終わりを単位コイルC2の巻き始めに接続し、単位コイルC2の巻き終わりを単位コイルC11の巻き始めに接続し、単位コイルC11の巻き終わりを単位コイルC4の巻き始めに接続し、単位コイルC4の巻き終わりを単位コイルC13の巻き始めに接続し、単位コイルC13の巻き終わりを単位コイルC6の巻き始めに接続し、単位コイルC6の巻き終わりを単位コイルC15の巻き始めに接続し、単位コイルC15の巻き終わりを単位コイルC8の巻き始めに接続する。
【0063】
この構成で、第1分布巻線部U1は、単位コイルC1と単位コイルC3と単位コイルC5と単位コイルC7の4個の第1群単位コイルと、単位コイルC10と単位コイルC12と単位コイルC14と単位コイルC16の4個の第2群単位コイルを直列接続したものとなっている。また、第2分布巻線部U2は、単位コイルC2と単位コイルC4と単位コイルC6と単位コイルC8の4個の第1群単位コイルと、単位コイルC9と単位コイルC11と単位コイルC13と単位コイルC15の4個の第2群単位コイルを直列接続したものとなっている。したがって、回転電機の動作時に、第1分布巻線部U1と第2分布巻線部U2との間に循環電流が発生しない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る回転電機固定子は、ダブルスター結線の分布巻固定子を用いる回転電機に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
10 回転電機固定子、12 ステータコア、14 スロット、20 U相分布巻線、21 単位コイル、23 コイル素線、26 単位コイル間隔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に沿って配置され、それぞれが径方向に延びる複数のスロットを有するステータコアと、
予め定めたスロット間隔を単位コイル間隔として、単位コイル間隔でコイル素線を巻回して形成されるコイルを単位コイルとして、ステータコアの周方向に予め定めた配置順序で単位コイルを4n個配置して形成される分布巻の各相巻線と、
を備え、
分布巻の各相巻線は、
ステータコアの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第1群単位コイルと、
第1群単位コイルと異なるスロットを用いて、第1群単位コイルと同じ単位コイル間隔の単位コイルをステータの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第2群単位コイルと、
を用い、
n個の第1群単位コイルとn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して形成される第1分布巻線部と、第1分布巻線部に用いられていないn個の第1群単位コイルと第1分布巻線部に用いられていないn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して形成される第2分布巻線部と、を並列接続して形成されることを特徴とする回転電機固定子。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機固定子において、
分布巻の各相巻線は、
予め、
単位コイル間隔を6スロットとして、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第1巻線部と、
基本第1巻線部で用いたスロットの隣のスロットを用い、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第2巻線部と、
を用い、
基本第1巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、
基本第2巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることを特徴とする回転電機固定子。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機固定子において、
nは偶数であって、さらに、
基本第1巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、
基本第2巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることを特徴とする回転電機固定子。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機固定子において、
nは4の倍数であって、さらに、
基本第1巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、
基本第2巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることを特徴とする回転電機固定子。
【請求項1】
周方向に沿って配置され、それぞれが径方向に延びる複数のスロットを有するステータコアと、
予め定めたスロット間隔を単位コイル間隔として、単位コイル間隔でコイル素線を巻回して形成されるコイルを単位コイルとして、ステータコアの周方向に予め定めた配置順序で単位コイルを4n個配置して形成される分布巻の各相巻線と、
を備え、
分布巻の各相巻線は、
ステータコアの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第1群単位コイルと、
第1群単位コイルと異なるスロットを用いて、第1群単位コイルと同じ単位コイル間隔の単位コイルをステータの周方向の1周に予め定めた配置順序で配置された2n個の第2群単位コイルと、
を用い、
n個の第1群単位コイルとn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して形成される第1分布巻線部と、第1分布巻線部に用いられていないn個の第1群単位コイルと第1分布巻線部に用いられていないn個の第2群単位コイルとを予め定めた接続方法で直列接続して形成される第2分布巻線部と、を並列接続して形成されることを特徴とする回転電機固定子。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機固定子において、
分布巻の各相巻線は、
予め、
単位コイル間隔を6スロットとして、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第1巻線部と、
基本第1巻線部で用いたスロットの隣のスロットを用い、隣接する単位コイルの一方の巻き終わりスロットと他方の巻き始めスロットを共通にして、ステータコアの周方向の1周に2n個直列に接続配置して形成した基本第2巻線部と、
を用い、
基本第1巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、
基本第2巻線部のn番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の(n+1)番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることを特徴とする回転電機固定子。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機固定子において、
nは偶数であって、さらに、
基本第1巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、
基本第2巻線部の(n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/2)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/2)+1}番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることを特徴とする回転電機固定子。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機固定子において、
nは4の倍数であって、さらに、
基本第1巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第1巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第2巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第1分布巻線部とし、
基本第2巻線部の(n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(3n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(3n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(5n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(5n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直し、基本第2巻線部の(7n/4)番目の単位コイルの巻き終わりを基本第1巻線部の{(7n/4)+1}番目の巻き始めに接続し直して第2分布巻線部とすることを特徴とする回転電機固定子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−222962(P2012−222962A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86345(P2011−86345)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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