説明

回転電機

【課題】本発明の目的は、小型の回転電機を提供することである。
【解決手段】軸15と、軸15に取り付けられて外周に複数の磁極を周方向に配列してなる永久磁石16、17と、永久磁石16、17とエアーギャップを介して対向した位置に配置された複数の巻線20、21、22とを備える。巻線20、21、22が、軸の方向に延在する一対の軸方向延在部20a、21a、22aと、軸方向延在部20a、21a、22aの端部につながる一対の連結部20b、21b、22bで構成される。連結部20b、21b、22bが、軸に対向して周方向に配置されるとともに、隣接する巻線の連結部と一部で半径方向に重なるように配置される。連結部20b、21b、22bの少なくとも一つの隣接する巻線との重なり部の半径方向寸法が、いずれの軸方向延在部20a、21a、22aの半径方向寸法よりも小さくなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータまたは発電機とされる回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機において、巻線を備えたステータの内部に永久磁石を配設したロータを備えるモータが知られている(特許文献1)。
【0003】
このようなモータは、回転子側磁極ピッチと固定子側巻線ピッチがほぼ等しい、いわゆる全節巻で構成され、巻線に鎖交する磁束が最大となるため、高いトルクを得ることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−88078
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のモータは、磁極歯間のスロットに複数の磁極歯を跨いで巻線が施され、施された巻線の一部と半径方向に重なるように隣接する相の巻線が配置されている。そのため、各相の巻線の一部が半径方向に並んで配置される分だけモータの直径が大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、各相の巻線の半径方向の厚みを薄くして小型することができる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
本発明は、軸と、該軸に取り付けられて外周に複数の磁極を周方向に配列してなる永久磁石と、該永久磁石とエアーギャップを介して対向した位置に配置された複数の巻線とを備え、巻線は、他の巻線とは異なる位相を有する電圧が誘起されるものであり、軸の方向に延在する一対の軸方向延在部と、軸に対して周方向に配置されるとともに軸方向延在部の端部のそれぞれにつながる一対の連結部で構成され、連結部は、軸の半径方向の幅が最短の長さを有する電線束からなる連結電線束を備え、連結電線束は、軸の半径方向において、連結電線束の幅が軸方向延在部の幅よりも短くなるように設定されている回転電機を提供する。
【0009】
本発明によれば、隣接する巻線の重なり部半径方向寸法が、軸方向延在部よりも小さくなるように設定されているため、ステータの径方向の寸法を小さくすることができる。したがって、回転電機の小型化を図ることができる。
【0010】
上記発明においては、連結電線束は、連結電線束の外側表面積が軸方向延在部の外側表面積よりも大きくなるように設定されていることとしてもよい。
【0011】
このような構成によれば、連結部の少なくとも一つの隣接する巻線との重なり部の表面積が、軸方向延在部のいずれの表面積よりも大きくなるように設定されているため、連結部の重なり部は通電によって発熱する巻線の放熱する面積を大きくすることができる。
【0012】
この回転電機は、連結部の巻線どうしの重なり部の表面積が大きくなるように設定されて、連結部の巻線どうしの重なり部が軸に対向して周方向に配置されているため、軸の回転に伴う空気の流れにより巻線の温度上昇を抑制することができる。そのため、電線の電流密度が高くなるよう電線の直径を小さくすることができ、ステータの径方向寸法を小さくするこができる。したがって、回転電機の小型化を図ることができる。
【0013】
また、上記発明においては、軸方向延在部が永久磁石の一つの磁極の幅とほぼ等しい間隔に設定されていることとしてもよい。
【0014】
このような構成によれば、巻線に鎖交する磁石磁束を最大限に利用することができる。したがって、巻線抵抗を小さくして回転電機の効率を向上させることができる。なお、連結電線束は、軸の半径方向において、連結電線束の電線数が軸方向延在部の電線数よりも少なくなるように設定されていてもよい。連結電線束は、軸の半径方向において、連結電線束の電線数が一つとなるように設定されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各相の巻線の半径方向の厚みを薄くして小型することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転電機を示す斜視図である。
【図2】図1の回転電機の正面図である。
【図3】図1の回転電機の側面断面図である。
【図4】巻線を平面状に展開した平面図である。
【図5】巻線の表面積を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る回転電機1について、図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る回転電機1は、3つの巻線を持つ3相の回転電機である。この回転電機1は、図1、図2および図3に示すように、内側に向けて突出する歯部を有する円筒状の鉄芯10と、隣接する2つの歯部12の間に形成されたスロット11に挿入された巻線20、21、22と、巻線が鉄芯の内側へ倒れ込むのを防止するくさび3と、鉄芯10の内部に配設されたロータ5とを備えている。
【0019】
ロータ5は、図1、図2および図3に示すように、円筒状の軸15と、軸15の外周面に取りつけられた、2分割されたリング状の永久磁石16、17とで構成されており、ロータ5が回転することによって、巻線に誘導起電力が発生するように構成されている。ここで、永久磁石16、17の代わりに、周方向に複数の磁極が配列された1個のリング状永久磁石で構成することもできる。
【0020】
なお、永久磁石16、17は、それぞれの磁石どうしの極性が反対となるように、軸の外周に取りつけられている。そのため、1磁極の占める角は180°となっている。
【0021】
巻線20、21、22は、他の巻線とは異なる位相を有する電圧が印加(誘起)されるものである。巻線20、21、22は、軸の方向に延在する一対の軸方向延在部20a、21a、22aと、軸方向延在部を連結する一対の連結部20b、21b、22bとで構成される。一対の軸方向延在部20a、21a、22aは、永久磁石16、17とほぼ同じ長さで軸方向に延在しており、対になる軸方向延在部は180°対角する位置のスロット11に挿入されている。一対の連結部20b、21b、22bは、一対の軸方向延在部のそれぞれの端部と連結して、永久磁石16、17の軸方向外側に、軸と対向するように周方向に配置されている。
【0022】
なお、巻線20、21、22は、端部において端子(図示せず)に結線接続されている。
【0023】
以下に巻線20、21、22について詳細に説明する。図2に示すように、巻線20、21、22は、軸15の半径方向の幅dAが最短の長さを有する電線束からなる連結電線束Sa、Sb、Scを備える。連結電線束Sa、Sb、Scは、軸15の半径方向において、連結電線束Sa、Sb、Scの幅dAが軸方向延在部20a、21a、22aの幅dBよりも短くなるように設定されている。この点について更に図4を用いながら説明する。
【0024】
図4は、巻線20、21、22を平面状に展開した平面図である。巻線20、21、22がそれぞれに対応するスロット11などに組み込まれている場合には、巻線20、21、22は所定方向に折り曲げられた状態になっている。本実施形態では、本発明の説明を容易にするために、図4では巻線20、21、22が折り曲げられていない展開状態を示している。
【0025】
図4に示すように本実施形態において、巻線20、21、22は、電線を6周回巻回されている。連結部20b、21b、22bの隣接する巻線との重なり部に相当する位置に連結電線束Sa、Sb、Scが存在している。連結電線束Sa、Sb、Scは、断面A−Aに示すとおり、電線が半径方向一列、軸方向6列に並んで配置され、軸方向延在部20a、21a、22aは、断面B−Bに示すとおり、電線が半径方向3列、周方向2列に並んで配置されている。断面A−Aは電線が半径方向に1列で、断面B−Bは3列に並んで配置されているため、断面A−Aの方が断面B−Bよりも半径方向寸法が小さくなっている。これにより、連結電線束Sa、Sb、Scは、軸15の半径方向において、連結電線束Sa、Sb、Scの幅dAが軸方向延在部20a、21a、22aの幅dBよりも短くなるように設定されることになる。なお、連結電線束Sa、Sb、Scは、軸15の半径方向において、連結電線束Sa、Sb、Scの電線数が軸方向延在部20a、21a、22aの電線数よりも少なくなるように設定されていてもよい。
【0026】
図5は、図4の連結部20b、21b、22bの隣接する巻線との重なり部に相当する位置の断面A−A、つまり連結電線束Sa、Sb、Scの断面と、軸方向延在部20a、21a、22aの断面B−Bにおける巻線の外側表面積を説明するための図である。電線の長手方向単位長さにおける巻線の外側表面積は、断面A−Aと断面B−Bともに、電線断面の輪郭を結んだ輪郭の長さに電線の長手方向単位長さを乗じた面積と定義することができる。電線直径をdとすると、断面A−Aの電線断面の輪郭を結んだ輪郭の長さは6πdとなり、断面B−Bは4πdであるため、電線の長手方向単位長さにおける巻線の外側表面積は断面A−Aの方が断面B−Bよりも大きいことになる。
【0027】
ここで、歯部12が複数備えられているため、それらの間には空隙であるスロット11が形成されることになる。そのスロット11のそれぞれに軸方向延在部20a、21a、22aが備えられることにより、回転電機1内の空スペースを利用して巻線の軸方向の部分を適切に束ねることができる。
【0028】
一方、軸方向延在部20a、21a、22aの端部は、スロット11のそれぞれから出ている部分であり、連結部20b、21b、22bが連結される部分である。これにより、軸方向延在部20a、21a、22aがスロット11のそれぞれに上手く収容されたとしても、そのスロット11のそれぞれから出ている軸方向延在部20a、21a、22aの端部は、連結部20b、21b、22bと連結されるため、軸15の半径方向に大きく飛び出す場合がある。これにより、軸方向延在部20a、21a、22a及び連結部20b、21b、22bにおける電線配列によっては回転電機1の全体を小型化することができない場合がある。
【0029】
本実施形態において、連結部20b、21b、22bの半径方向の幅において最短の幅を有する連結電線束Sa、Sb、Scは、連結電線束Sa、Sb、Scの幅が軸方向延在部20a、21a、22aの幅よりも短くなるように設定されている。これにより、連結部20b、21b、22bが軸15の半径方向に大きく飛び出さないようにすることができるとともに、回転電機1内の空スペースを利用して巻線の軸方向の部分を適切に束ねることができるため、回転電機1の全体を小型化することができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0031】
例えば、上記実施形態においては、円筒状の鉄芯10のスロット11に挿入された巻線を例示して説明したが、スロットレスの環状ヨークに挿入された巻線であってもよいし、ヨークを用いない巻線でもよい。また、巻線20、21、22は、電線を6周回巻回して形成され、連結部20b、21b、22bの隣接する巻線との重なり部は、半径方向一列、軸方向6列に並んで配置され、軸方向延在部20a、21a、22aは、半径方向3列、周方向2列に並んで配置されていることとしたが、巻数や電線の並び方はこれに限定されるものではない。
【0032】
なお、連結部20b、21b、22b(連結電線束Sa、Sb、Sc)の状態を保持する保持手段(図示せず)が備えられていてもよい。保持手段には、バンドや、電線束を収容するとともに弾性変形可能な収容部などが挙げられる。これにより、連結部20b、21b、22b(連結電線束Sa、Sb、Sc)の電線束の型崩れを防止することができ、回転電機1をより確実に小型化することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 回転電機
3 くさび
5 ロータ
10 鉄芯
15 軸
16,17 永久磁石
20,21,22, 巻線
20a,21a,22a 軸方向延在部
20b,21b,22b 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、該軸に取り付けられて外周に複数の磁極を周方向に配列してなる永久磁石と、該永久磁石とエアーギャップを介して対向した位置に配置された複数の巻線とを備え、
前記巻線は、他の巻線とは異なる位相を有する電圧が誘起されるものであり、前記軸の方向に延在する一対の軸方向延在部と、前記軸に対して周方向に配置されるとともに前記軸方向延在部の端部のそれぞれにつながる一対の連結部で構成され、
前記連結部は、前記軸の半径方向の幅が最短の長さを有する電線束からなる連結電線束を備え、
前記連結電線束は、前記軸の半径方向において、前記連結電線束の幅が前記軸方向延在部の幅よりも短くなるように設定されている回転電機。
【請求項2】
前記連結電線束は、前記連結電線束の外側表面積が前記軸方向延在部の外側表面積よりも大きくなるように設定されている請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記軸方向延在部は、前記永久磁石の一つの磁極の幅とほぼ等しい間隔に設定されている請求項1または請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記連結電線束は、前記軸の半径方向において、前記連結電線束の電線数が前記軸方向延在部の電線数よりも少なくなるように設定されている請求項1に記載の回転電機。
【請求項5】
前記連結電線束は、前記軸の半径方向において、前記連結電線束の電線数が一つとなるように設定されている請求項4に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−55657(P2011−55657A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203133(P2009−203133)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】