説明

回転電機

【課題】導体セグメントを用いて固定子巻線を形成した場合に溶接側のコイルエンドの耐震性を向上させることができる回転電機を提供すること。
【解決手段】車両用回転電機100は、直線部とターン部とを有するU字状の導体セグメント10を溶接にて複数本直列接続することにより形成される固定子巻線6と、複数本の導体セグメント10に含まれる直線部が収容される複数のスロットを有する固定子鉄心11とを有する固定子1を備える。導体セグメント10の反ターン部側に形成される溶接部10aにつながる2本の直線部がスロットに収容される周方向間隔である溶接側スロットピッチを、回転子2のNS磁極ピッチよりも狭くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車等に搭載される回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、U字状の導体セグメントの端部同士を接合することにより構成される固定子巻線を備えた回転電機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この回転電機では、導体セグメントのターン部側で構成されるコイルエンドのピッチをNS磁極ピッチよりも狭くすることにより、具体的には電気角で180°のNS磁極ピッチに対して導体セグメントのターン部に連続する2本の導体の周方向に沿った間隔を150°に設定することによりコイルエンド剛性を高め、耐震性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−209956号公報(第3−4頁、図1−8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された回転電機では、導体セグメントの溶接側のコイルエンドのピッチは180°に設定されているため溶接部までの長さが長くなり、特に大電流を流すために導体セグメントを太くした場合に、溶接部によって重量が増すこととも相まって、溶接側のコイルエンドの耐震性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、導体セグメントを用いて固定子巻線を形成した場合に溶接側のコイルエンドの耐震性を向上させることができる車両用回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の回転電機は、直線部とターン部とを有するU字状の導体セグメントを溶接にて複数本直列接続することにより形成される固定子巻線と、複数本の導体セグメントに含まれる直線部が収容される複数のスロットを有する固定子鉄心とを有する固定子を備える回転電機において、導体セグメントの反ターン部側に形成される溶接部につながる2本の直線部がスロットに収容される周方向間隔である溶接側スロットピッチを、回転子のNS磁極ピッチよりも狭くするとともに、固定子巻線は、同じ2個のスロットを用いて巻装される重ね巻き部と、溶接部側に配置されて異なる重ね巻き部間を相互に接続するわたり線とを有している。
【0007】
溶接側スロットピッチをNS磁極ピッチよりも狭くすることにより、溶接側のコイルエンドの長さを短くすることができ、溶接側のコイルエンドの耐震性を向上させることができる。特に、溶接部側にわたり線を配置して重ね巻き部間を相互に連結することにより、溶接部側のコイルエンドの耐震性をさらに向上させることができる。また、コイルエンドの長さが短くなるため、溶接部につながる導体セグメントの温度変化に伴う長さの変動が少なくなり、溶接部に繰り返し加わる応力を低減することができ、これによる溶接部の信頼性向上が可能となる。さらに、固定子鉄心の軸方向端面から溶接部の端部までの溶接側のコイルエンド高さを低くすることができ、これによる回転電機の小型化が可能となる。
【0008】
また、上述したわたり線には、最内周側に配置された前記導体セグメントの端部同士を接続するものと、最外周側に配置された導体セグメントの端部同士を接続するものとが含まれることが望ましい。このようなわたり線は、コイルエンドに対して径方向に突出することなく、しかも複雑な引き回しを行うことなく配置することが可能であり、固定子およびこの固定子を含む回転電機の軸方向体格を小さくすることができる。
【0009】
また、上述した導体セグメントのターン部につながる2本の直線部がスロットに収容される周方向間隔である非溶接側スロットピッチを、回転子のNS磁極ピッチよりも狭くすることが望ましい。溶接側と非溶接側の両方のコイルエンドのスロットピッチを狭くすることにより、固定子巻線全体のさらなる耐震性向上が可能となるとともに、固定子巻線全体の軸方向長さを短くすることができる。
【0010】
また、それぞれの重ね巻き部に対応する溶接側スロットピッチと非溶接側スロットピッチの両方を、回転子のNS磁極ピッチよりも狭くすることが望ましい。また、固定子巻線は、複数の相巻線によって構成されており、少なくとも一部のスロットに、異なる2つの相巻線の重ね巻き部に対応する直線部が混在して収容されていることが望ましい。このような巻線構造を採用することにより、溶接側と非溶接側の両方のコイルエンドのスロットピッチを狭くすることが可能となる。
【0011】
また、上述したわたり線は、重ね巻き部に対応するコイルエンドに対して、径方向に沿った隣接位置において周方向に延在していることが望ましい。これにより、わたり線を用いることによって軸方向の長さが長くなることを防止することができる。
【0012】
また、上述したわたり線は、重ね巻き部に対応するコイルエンドに対して、内径側および外径側に分散して周方向に延在していることが望ましい。これにより、内径側あるいは外径側に偏ってわたり線を配置する場合に比べて、わたり線の引き回しが容易となる。
【0013】
また、上述した固定子は、通電時に冷却液によって冷却され、わたり線が冷却液の供給経路に配置されていることが望ましい。これにより、わたり線に沿ってコイルエンドの広範囲にわたって冷却液を供給することが可能となり、冷却性の向上および冷却機構の簡略化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態の車両用回転電機の全体構造を示す断面図である。
【図2】固定子鉄心と固定子巻線とによって構成される固定子の外観斜視図である。
【図3】固定子鉄心と固定子巻線とによって構成される固定子の外観斜視図である。
【図4】固定子巻線の巻線構造を概略的に示す図である。
【図5】固定子巻線6の部分的な巻線仕様図である。
【図6】導体セグメントのターン部の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、一実施形態の車両用回転電機の全体構造を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態の車両用回転電機100は、固定子1、回転子2、フロントベアリング3、リアベアリング4、フレーム5を含んで構成されている。
【0017】
固定子1は、周方向に沿って配置された複数のスロットが形成された円筒形の固定子鉄心11と、Y結線された多相巻線(例えばU、V、W相からなる3相巻線)としての固定子巻線6を構成する複数本の導体セグメント10とを備えている。固定子鉄心11は、所定厚さの積層鋼板を複数枚重ねることによって形成された積層コアとして形成されている。固定子巻線6は、例えば外部の三相インバータ制御回路(図示せず)から給電されている。
【0018】
回転子2は、固定子1の内側に対向配置されており、永久磁石が内部に組み込まれている。回転子2の回転軸7がフロントベアリング3およびリアベアリング4によって回転自在に支持されている。フレーム5は、これらのフロントベアリング3およびリアベアリング4を収容する。
【0019】
端子ケース12は、固定子巻線6の各相から引き出された3本の引出しリード線9の端部に接続された3つの接続端子を内蔵する。これらの接続端子には、外部の三相インバータ制御回路が接続される。この三相インバータ制御回路から固定子巻線6に三相交流電圧を印加することにより、車両用回転電機100に電動動作を行わせることができる。一方、固定子巻線6で発生した電圧を三相インバータ制御回路によって整流することにより、車両用回転電機100に発電動作を行わせることができる。
【0020】
本実施形態では、固定子巻線6は、断面が四角形形状を有する平角のU字状の導体セグメント10を固定子鉄心11の一方の軸方向端面側から固定子鉄心11の各スロットに挿通し、スロットから各導体セグメント10の飛び出し端部を固定子鉄心11の他方の軸方向端面側に必要な長さだけ突出させ、各導体セグメント10の飛び出し端部を周方向にそれぞれ捻り、各導体セグメント導体10の飛び出し端部の先端部(接合部)を所定の組み合わせで溶接によって接合することにより構成されている。このようにして、直線部とターン部10bとを有するU字状の導体セグメント10を溶接にて複数本直列接続することにより固定子巻線6が形成されている。
【0021】
図2および図3は、固定子鉄心11と固定子巻線6とによって構成される固定子1の外観斜視図である。図2には導体セグメント10の溶接部10a側から見た外観斜視図が、図3には導体セグメント10のターン部10b側から見た外観斜視図がそれぞれ示されている。なお、これらの図では、固定子巻線6から端子ケース12に延びるリード線9は省略されている。
【0022】
次に、固定子巻線6の詳細について説明する。本実施形態の固定子巻線6は、導体セグメント10の溶接部10aが配置された側の一方のコイルエンド20と、導体セグメント10のターン部10bが配置された側の他のコイルエンド30を有している。
【0023】
上述した溶接側のコイルエンド20では、導体セグメント10の反ターン部側に形成される溶接部10aにつながる2本の直線部が固定子鉄心11のスロットに収容される周方向間隔である溶接側スロットピッチが、回転子2のNS磁極ピッチよりも狭く設定されている。
【0024】
同様に、非溶接側のコイルエンド30では、導体セグメント10のターン部10bにつながる2本の直線部が固定子鉄心11のスロットに収容される周方向間隔である非溶接側スロットピッチが、回転子2のNS磁極ピッチよりも狭く設定されている。
【0025】
図4は、固定子巻線6の巻線構造を概略的に示す図である。また、図5は固定子巻線6の部分的な巻線仕様図である。これらの図では、固定子巻線6に含まれるUVWの各相の中でU相巻線のみが示されている。また、数字はスロット番号を示している。また、図4では10本の同心円でスロット内の導体の収容位置を示している。図5に示す巻線仕様図では、上側が溶接部10aが配置された一方のコイルエンド20を、下側がターン部10bが配置された他方のコイルエンド30をそれぞれ示している。
【0026】
本実施形態では、回転子2のNS磁極ピッチが固定子鉄心11の6スロットに対応しており、溶接側スロットピッチおよび非溶接側スロットピッチがこのNS磁極ピッチである6スロットよりも狭い5スロットに設定されている。例えば、番号8と番号14の2つのスロットを用いて溶接側スロットピッチおよび非溶接側スロットピッチが5スロットになるように巻数が4.5の重ね巻きが行われている。同様に、番号15と番号20の2つのスロットを用いて溶接側スロットピッチおよび非溶接側スロットピッチが5スロットになるように巻数が4.5の重ね巻きが行われている。そして、これら2つの重ね巻きされた巻線同士が、2本のわたり線c、dによって相互に接続されている。図4に示すように、一方のわたり線cは、最内周側に配置された導体セグメント10の端部同士を相互に接続するために用いられ、他方のわたり線bは、最外周側に配置された導体セグメント10の端部同士を相互に接続するために用いられる。図5に示した他のわたり線a、dについても同様であり、最内周側あるいは最外周側に配置された導体セグメント10の端部同士を接続するために用いられる。
【0027】
最内周側に配置されたわたり線c、dが、図2では10dの符号で示されており、最外周側に配置されたわたり線a、bが、図2では10cの符号で示されている。図2に示すように、これらのわたり線10c、10dは、コイルエンド20に対して、径方向に沿った隣接位置において周方向に延在している。これにより、わたり線10c、10dを用いることによってこれらのわたり線を含めたコイルエンド20の軸方向長さ(高さ)が長くなることを防止している。また、内径側のわたり線10dと外径側のわたり線10cとに分散することにより、わたり線を内径側あるいは外径側に偏って配置する場合に比べてわたり線10c、10dの引き回しが容易になる。なお、引き回しを工夫してこれらのわたり線を内径側あるいは外径側に集中して配置するようにしてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、番号14のスロットのようにU相の10本の導体が収容されるスロットを挟んで、番号13、15のスロットのように同じU相の5本の導体が収容されるスロットが配置されている。番号13、15の一方のスロットでは、残りの収容スペースにV相の5本の導体が収容され、他方のスロットでは、残りの収容スペースにW相の5本の導体が収容される。このように、本実施形態では、UVWの中の2相について部分的に重複するように巻線を行うことにより、5スロットの溶接側スロットピッチおよび非溶接側スロットピッチを実現している。
【0029】
さらに、本実施形態では、非溶接側のコイルエンド30を構成する各導体セグメント10のターン部10bは、階段形状に形成されている。図6は、ターン部10bの形状を示す図である。ターン部10bのほぼ中央部にはねじりを伴わないクランク部10eが形成されている。クランク部10eは、ターン部10bの固定子鉄心11から最も離れた位置にクランク形状に形成されており、固定子鉄心11の軸方向端面に平行に形成されている。このクランク部10eのクランク形状によるずれ量は、導体セグメント10の線材のほぼ幅分に一致する。これにより、径方向に隣接している導体セグメント10のターン部10b同士を密に巻回することができる。その結果、コイルエンド30の径方向の幅が小さくなるため、コイルエンド30が径方向外側に張り出すことを防止することができる。
【0030】
また、各スロットから固定子鉄心11の外に突出するターン部10bの突出箇所に、1本の導体セグメント10がまたがって挿入されているスロット同士に向けて固定子鉄心11の軸方向端面に沿って段部10fが形成されている。これにより、図6に示すように、スロットから突出しているターン部10bの突出箇所の間隔、言い換えればターン部10bが形成する三角形状部分の底辺の長さは、導体セグメント10がまたがって挿入されているスロット同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、コイルエンド30の高さが低くなる。しかも、すべてターン部10bの突出箇所に、固定子鉄心11の軸方向端面に沿った段部10fが形成されている。これにより、固定子鉄心11から突出している導体セグメント10(コイルエンド30)の形状全体が小さくなる。
【0031】
また、固定子鉄心11の軸方向端面に沿った段部10fの長さをD1、周方向に隣接するスロット同士の間隔をD2とすると、D1≦D2になっている。したがって、段部10fが周方向に隣り合うスロットから突出する導体セグメント10と干渉することを防止することができる。これにより、周方向に隣接するスロットから突出する導体セグメント10同士が互いに干渉することを避けるために、コイルエンド30の高さが高くなったり、あるいは、コイルエンド30の径方向の幅が大きくなることを防止することができる。その結果、コイルエンド30の高さが低くなる。さらに、コイルエンド30の径方向の幅が小さくなるため、固定子巻線6が径方向外側に張り出すことを防止することができる。
【0032】
さらに、導体セグメント10のターン部10bには、ほぼ中央のクランク部10eと両端近傍の2箇所の段部10fの間に、それぞれ1個の段部10gが形成されている。これにより、段部10f、10gやクランク部10eが形成されていない三角形状のターン部の高さに比べて、ターン部10bの高さが大幅に低くなる。段部10gの形状も、段部10fと同様に、固定子鉄心11の軸方向端面に平行に形成されている。したがって、ターン部10bは、クランク部10eを挟んで両側に固定子鉄心11の軸方向に段部を複数有する階段形状に形成されている。このとき、固定子鉄心11の軸方向端面に平行な段部10gの長さD3はいずれも、周方向に隣り合うスロット同士の間隔D2以下の長さになっている。これにより、ターン部10bが隣接するスロットから突出するターン部10bと干渉することを防止することができる。結果として、干渉を避けるために、コイルエンド30の高さが高くなったり、あるいは、コイルエンド30の径方向の幅が大きくなることを防止することができる。
【0033】
このように、本実施形態の車両用回転電機100では、溶接側スロットピッチをNS磁極ピッチよりも狭くすることにより、溶接側のコイルエンド20の長さを短くすることができ、溶接側のコイルエンドの耐震性を向上させることができる。また、コイルエンド20の長さが短くなるため、溶接部10aにつながる導体セグメント10の温度変化に伴う長さの変動が少なくなり、溶接部10aに繰り返し加わる応力を低減することができ、これによる溶接部10aの信頼性向上が可能となる。さらに、コイルエンド20の長さが短くなるとともに、溶接部10aにつながる導体と重なる他の導体の本数が1本減ることにより軸方向寸法の公差積み上げ代が減るため、固定子鉄心11の軸方向端面から溶接部10aの端部までの溶接側のコイルエンド20の高さを低くすることができ、これによる車両用回転電機100の小型化が可能となる。特に、溶接側と非溶接側の両方のコイルエンド20、30のスロットピッチを狭くすることにより、固定子巻線6全体のさらなる耐震性向上が可能となるとともに、固定子巻線6全体の軸方向長さを短くすることができる。
【0034】
また、溶接部10a側にわたり線a、b、c、dを配置して重ね巻き部間を相互に連結することにより、溶接部10a側のコイルエンド20の耐震性をさらに向上させることができる。特に、これらのわたり線a、b、c、dには、最内周側に配置された導体セグメント10の端部同士を接続するものと、最外周側に配置された導体セグメント10の端部同士を接続するものとが含まれており、このようなわたり線a、b、c、dは、コイルエンド20に対して径方向に突出することなく、しかも複雑な引き回しを行うことなく配置することが可能であり、固定子1およびこの固定子1を含む車両用回転電機100の軸方向体格を小さくすることができる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、車両用回転電機100の外部に三相インバータ制御回路が接続されるものとして説明を行ったが、これを内蔵するようにしてもよい。また、車両用回転電機100は電動動作および発電動作のいずれか一方を行うようにしてもよい。
【0036】
また、上述した実施形態では、各スロットに10本の導体が収容されるようにしたが、導体の収容本数を10本以外としてもよい。また、上述した実施形態では、図2に示すように、溶接側のコイルエンド20に隣接させてわたり線10c、10dを配置したが、これらのわたり線10c、10dをスロット内を通して引き回して非溶接側のコイルエンド30に隣接するように配置してもよい。
【0037】
また、上述した実施形態では、基本的に重ね巻きを行って例外的にわたり線を用いたが、波巻を行って、溶接側のコイルエンド20のみのスロットピッチを5スロットに設定し、非溶接側のコイルエンド30のスロットピッチを5スロット以外(例えば、6スロット等)に設定するようにしてもよい。
【0038】
また、上述した実施形態では、図2に示すように溶接側のコイルエンド20に隣接するようにわたり線10c、10dが配置されているため、これらの周方向に延在するわたり線10c、10d(特に外周側のわたり線10c)を利用して、固定子巻線6の通電時の冷却を冷却液(冷却油)を用いて行う液冷式を採用した場合の冷却性改善を行うことができる。例えば、図1において、冷却液(冷却油)の供給管200が点線で示されてている。この供給管200から供給される冷却液が、図2に示す外径側のわたり線10cの近傍に供給されると、この供給された冷却液は、周方向に延在するわたり線10cに沿ってコイルエンド20の広範囲にわたって広がるため、コイルエンド20全体を効率よく冷却することが可能となる。また、内周側のわたり線10dが存在することにより、コイルエンド20内に冷却液が滞留する時間を長くすることができるため、高温になったコイルエンドと冷却液との間での熱の交換効率を上げることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上述したように、本発明によれば、溶接側スロットピッチをNS磁極ピッチよりも狭くすることにより、溶接側のコイルエンド20の長さを短くすることができ、溶接側のコイルエンド20の耐震性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 固定子
2 回転子
3 フロントベアリング
4 リアベアリング
5 フレーム
6 固定子巻線
7 回転軸
10 導体セグメント
10a 溶接部
10b ターン部
10c、10d わたり線
10e クランク部
10f、10g 段部
11 固定子鉄心
20、30 コイルエンド
100 車両用回転電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線部とターン部とを有するU字状の導体セグメントを溶接にて複数本直列接続することにより形成される固定子巻線と、複数本の前記導体セグメントに含まれる前記直線部が収容される複数のスロットを有する固定子鉄心とを有する固定子を備える回転電機において、
前記導体セグメントの反ターン部側に形成される溶接部につながる2本の前記直線部が前記スロットに収容される周方向間隔である溶接側スロットピッチを、前記回転子のNS磁極ピッチよりも狭くするとともに、
前記固定子巻線は、同じ2個の前記スロットを用いて巻装される重ね巻き部と、前記溶接部側に配置されて異なる前記重ね巻き部間を相互に接続するわたり線とを有することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1において、
前記わたり線には、最内周側に配置された前記導体セグメントの端部同士を接続するものと、最外周側に配置された前記導体セグメントの端部同士を接続するものとが含まれることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記導体セグメントのターン部につながる2本の前記直線部が前記スロットに収容される周方向間隔である非溶接側スロットピッチを、前記回転子のNS磁極ピッチよりも狭くすることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項3において、
それぞれの前記重ね巻き部に対応する前記溶接側スロットピッチと前記非溶接側スロットピッチの両方を、前記回転子のNS磁極ピッチよりも狭くすることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項4において、
前記固定子巻線は、複数の相巻線によって構成されており、
少なくとも一部のスロットに、異なる2つの相巻線の前記重ね巻き部に対応する前記直線部が混在して収容されていることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記わたり線は、前記重ね巻き部に対応するコイルエンドに対して、径方向に沿った隣接位置において周方向に延在していることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項6において、
前記わたり線は、前記重ね巻き部に対応するコイルエンドに対して、内径側および外径側に分散して周方向に延在していることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記固定子は、通電時に冷却液によって冷却され、
前記わたり線が前記冷却液の供給経路に配置されていることを特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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